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構造生物学と創薬

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Academic year: 2021

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構造生物学と創薬

大阪府立大学大学院理学系研究科 木下 誉富

最近の構造生物学の進展により、疾患の原因となる蛋白質の立体構造が数多く決 定されるようになり、創薬研究において、標的蛋白質の構造情報に基づくStructure-

Based Drug Design (SBDD) に力点をおいた薬剤探索が大きな潮流となってきた。例

えば、抗HIV薬リトナビル(プロテアーゼ阻害剤) 、慢性骨髄性白血病治療薬グリベ ック(Bcr-Ablキナーゼ阻害剤) 、抗インフルエンザ薬タミフル(シアリダーゼ阻害 剤等)といった分子標的医薬品の開発に大きく寄与している。この薬剤探索法は少 人数で行えることから、ベンチャー企業やアカデミアの創薬に重用されている。

SBDD 研究の草創期に製薬企業で行われたアデノシンデアミナーゼ( ADA )を標 的とした創薬研究は、ADA と基質型阻害剤(核酸類縁体)との複合体結晶構造を

基にした de novo デザインから始まり、 nM オーダーの活性を有する非核酸骨格化合

物の創出に至った (1)。この間に、わずか 4 人でスタートした瀬踏み研究が、大人 数が関与する正式テーマへと昇格した。この経緯はアカデミアから製薬企業への技 術移転モデルに成りうるのではないかと考えた。そこで、アカデミア創薬だったら と仮定して ADA 研究の成功要因を見つめ直してみた。さらにアカデミア創薬のレ ベルアップのために構造生物学が今なすべき課題を提言したい。

参考文献

1. Terasaka, T., Kinoshita, T., Kuno, M., Nakanishi, I.: A highly potent non-nucleotide adenosine deaminase inhibitor: efficient drug discovery by intentional lead hybridization.

J. Am. Chem. Soc., 126: 34-35, 2004.

略歴

1992 年 大阪大学大学院工学研究科修士課程修了 2003 年 学位取得 博士(大阪大学・工学)

1992 年 藤沢薬品工業(株)物性研究所 研究員

1999 年 藤沢薬品工業(株)探索研究所 主任

2004 年 藤沢薬品工業(株)探索研究所 主任研究員

2005 年 大阪府立大学大学院理学系研究科 助教

2008 年 大阪府立大学大学院理学系研究科 准教授

(2)

2013/2/19

1

遺伝子工学の急速な進歩、大型放射光の普及、計算機の進化

標的蛋白質の立体構造に基づいて阻害剤を設計する

Structure‐Based Drug Design (SBDD)

が創薬研究の大きな潮流に

1990年代からの構造生物学の進展

Structure-Based Drug Design (SBDD)

SBDD

+ -+

標的蛋白質

シード化合物 デザイン化合物

X線結晶構造解析

アデノシンデアミナーゼ (ADA)  阻害剤の分子設計 無からnMオーダーの化合物を創出(約6カ月)

薬理1名

計算化学1名合成1名 構造生物1名

Compound 3 O

OH

HO N

N N

N NH2

OH

S S N N H

N N HN

NH2 H2N

O NH

adenosine

High‐through‐put screening

活性部位の異な る場所に結合して いる2つの化合物 をハイブリッド化 X‐ray

Compound‐3 Ki = 1200 nM

Compound‐1 Ki= 54000 nM

(racemate)

Compound‐2 Ki = 5900 nM

(racemate)

Compound‐5 Ki = 7.7 nM

N N

OH O

NH2

N N

OH O

NH2

NH O

N N

N OH O

NH2 N

N Me

Medicinal SBDD

グアニジル基

⇒毒性に関与 De novo 

SBDD

結合予想から 構造最適化

J. Am. Chem. Soc. 126, 34‐35 (2004) X‐ray

Hybridization

ADA阻害剤の開発体制推移

アカデミア創薬→製薬企業 モデルケース

~6ヶ月 瀬踏みテーマ → 化合物5

薬 合成 員増強 臨床開発 ベ 合物

SBDD, HTS 正式テーマに

4名

主に薬物動態改善

・合成展開可能な骨格

・複数のシード

・薬理評価系

・高分解能構造解析

・薬理活性向上の明確な指針

(・顕著な毒性がないこと)

~5年 薬理、合成人員増強 → 臨床開発レベルの化合物

正式テーマ昇格時の状況

アカデミアが競争に勝つために大事なこと

2.独自の標的(他者にまねされない)

1.心技体

ADA阻害剤開発研究から学んだこと

3.活性向上の予測精度向上 4.副作用の乖離、薬物動態の改善

浮き彫りになった構造生物学の課題

ATP 結合部位に 同様の結合様式で結合

Lys68 Val116

2.89 Å 2.86 Å

Val66 Val53 Val116

M 163

2.89 Å 2.86 Å

フ ンデルワ ルス相互作用 cc4791 cc4820

2 箇所の水素結合 疎水的環境

両阻害剤の相互作用の差 Lys68

Val66 Val53

活性向上の予測精度向上

熱力学的分析により結合の真髄を知る

Δ G = Δ H - T Δ S

-80 -60 -40 -20 0 20

⊿H

―T⊿S

⊿G

kJ/mol cc4820 cc4791

Met163 Ile174

Met163

Ile174

ファンデルワールス相互作用

cc4791 > cc4820

エンタルピー項

(kJ / mol)

⊿H ―T⊿S ⊿G cc4791 -61.34 11.92 -49.42 cc4820 -51.51 3.12 -48.38

IC50

9.2 nM 8.0 nM

エントロピー項

蛋白質-阻害剤結合における熱力学的 諸因(エンタルピー・エントロピー)の解析

矛盾

副作用の乖離、薬物動態の改善 パラレルSBDD

+ -+

標的蛋白質

非選択的阻害剤 選択的阻害剤

パラレル

Off‐target  蛋白質

パラレル SBDD

SAR News(日本薬学会活性相関部会ニュースレター) 21, 7-12 (2011)

参照

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