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報の単筒機関における結果をターボ過給式多気筒エンジンで検証することであり, 上記単筒機関に燃焼系諸元を合わせてある. エンジン B は本遮熱技術の実用化適用対象として, 最新の排気規制に対応し, 実用環境対応がなされた量産プロトタイプでの効果検討を行うものである. それぞれのエンジン諸元を表 2 に

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Academic year: 2021

シェア "報の単筒機関における結果をターボ過給式多気筒エンジンで検証することであり, 上記単筒機関に燃焼系諸元を合わせてある. エンジン B は本遮熱技術の実用化適用対象として, 最新の排気規制に対応し, 実用環境対応がなされた量産プロトタイプでの効果検討を行うものである. それぞれのエンジン諸元を表 2 に"

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研究論文

壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第3報)

― 列型過給直噴ディーゼルエンジンへの適用 ―

川口暁生)  立野学)  山下㻌 英男   猪熊洋希   山下晃   高田倫行   

山下親典   小山石直人   脇坂佳史  

Heat Insulation by Temperature Swing in Combustion Chamber Walls (Third report)

- Application for Multi Cylinder Turbo Charged Direct Injection Diesel Engines -

Akio Kawaguchi Manabu Tateno Hideo Yamashita Hiroki Iguma Akira Yamashita Noriyuki Takada Chikanori Yamashita Naoto Koyamaishi Yoshifumi Wakisaka

In the former report (Second report), authors investigated the novel insulation technology by a single cylinder DI diesel engine, and showed the effectiveness of this concept. In this report, it was applied to multi cylinder diesel engines, to investigate the effectiveness in real field application. The results of single cylinder engine were confirmed in the study with the multi cylinder engine, but in higher EGR ratio condition, surface roughness of the insulation coating on piston deteriorated fuel efficiency improvement. By keeping the surface roughness of machined finish in the cavity, it was showed that the deterioration of the fuel efficiency due to the roughness was recovered.

KEY WORDS: Heat Engine, Engine Component, Efficiency, Combustion Analysis, Heat Insulation (A1) .緒 言 近年,自動車の動力源多様化が進んでおり,電気自動車 や燃料電池車の発展は目覚ましいものがある.一方で先進 国・都市部を除いては、今後も燃料の調達や取扱いが容易 な内燃機関に求められる役割は拡大が予想され,その効率 向上への要求はますます高まっている.本研究ではエンジ ンの熱効率向上を目指し,筒内からの熱損失低減に取り組 んできた. ディーゼルエンジンにおいては,1980年頃から燃焼室壁 面を遮熱化する研究が多く実施されてきた.代表的な例と しては,熱伝導率が低く,耐熱性も兼ね備えたセラミック スで燃焼室壁面を構成し,その背面を空気層として遮熱化 を図ったエンジンがある    . これらの遮熱手法は,壁面の遮熱化により燃焼室から冷 却水への熱損失を低減し,そのエネルギーをピストン仕事 に振り分け,あるいは増加する排気エネルギーをターボチ ャージャにより回収して熱効率を向上することを狙いとし ている.しかし一方で,燃焼室壁温が常時上昇することに より作動ガスを加熱し,吸気効率の悪化・NOx排出量の増 加を招いてしまうこと,また遮熱層が高温となるためにそ の信頼性が低下するなどの欠点が報告されている  .また 上記遮熱手法をガソリンエンジンに適用すると,吸気効率 の悪化のみならずノッキングの悪化を招く悪影響があった.



そこで筆者らは,従来遮熱手法の欠点を克服するために, 吸気行程での燃焼室壁温を上げない遮熱手法を提案し,実現 を目指してきた.基本とする考え方は,ガス温度に応じて壁 表面温度を変化させることで,吸気・圧縮行程では壁温の上 昇を抑制して吸気加熱を防止し,膨張・排気行程ではガスと 壁面との温度差を減少させ,吸気加熱防止と熱損失低減を実 現するものである   本報では,上記遮熱手法の列型過給直噴ディーゼルエンジ ンへの適用を試み,その効果およびメカニズムを解析するこ とで,実用化への可能性を検討した結果を報告する. 2.壁温スイング遮熱法 以下に筆者らが検討してきた壁温スイング遮熱法  のコン セプトを示す.壁面に形成する遮熱層の熱伝導率(以下λ), 体積比熱(以下ρC)を小さくしていくと,1 サイクル中でも 遮熱膜の表面温度は大きく変化する(図1;Wall temperature of swing insulation).図 1 に示すように燃焼期間中では燃焼ガス の温度上昇に追従して遮熱層の表面温度が上昇し,その結果 ガスとの温度差が減少して熱損失が低減する.遮熱壁表面が 常に高温となる従来遮熱手法と,本遮熱手法を比較すると, 遮熱膜の熱容量が小さいため表面温度は排気行程で急速に低 下し,吸気行程において吸気の加熱が発生しない点が最も大 きな差であると言える.この結果吸気効率を悪化させず,圧 縮端温度上昇によるNOx の増加も抑制できる.特に SI エンジ ンにおいては,適切な膜形成を行うと吸気行程での遮熱膜  年  月  日受理. 年  月  日自動車技術会春季 学術講演会において発表.  ・ ・ ・ ・ ・ トヨタ自動車 株   静岡県裾野市御宿  番地)  ・ 同上( 愛知県豊田市トヨタ町  番地)  株 豊田中央研究所(愛知県長久手市横道 )

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201340 20164028

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

Fig.1 Wall temperature of heat insulation 

表面温度は通常の燃焼室壁面温度よりも低下するため,ノッ

キング発生頻度をむしろ低下させることができる 

本報告ではこの壁温スイング遮熱法を実現する遮熱膜とし て第2 報  及び第4 報  で報告した,シリカ強化多孔質陽極

酸化被膜 Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum (以下 SiRPA)を適用した.その構造を図 2 に示す.

Fig.2 Schematic drawing of Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum (SiRPA)

Table1 Thermophysical Properties of SiRPA Volumetric Specific Heat Capacity

@500K 1300kJ/m3K Thermal Conductivity @500K 0.67W/m・K 表1 に SiRPA の物性値を示す.この材質は,ピストン材と して使用されている高シリコンのアルミ合金に厚膜の陽極酸 化膜  を成膜したのちに,燃焼圧によるガス侵入防止と膜強 度向上のため,高耐熱性のシリカ系封孔材を塗布含侵・焼成 し,厚さ数μm の保護被膜を形成したものである.細孔構成 は,第4 報  を参照されたい.SiRPA の熱物性を他の代表的 な材料と比較して図3 に示す.ジルコニアなどのセラミック ス溶射の遮熱材に対し,約1/3 の低熱伝導率,約 1/2 の低体 積比熱が実現できている. 3.供試エンジン 本報告では 2 種類のエンジンにて遮熱膜の評価を行った.そ れぞれのエンジン評価の狙いとしては,エンジンA では第 2 報の単筒機関における結果をターボ過給式多気筒エンジンで 検証することであり,上記単筒機関に燃焼系諸元を合わせて ある.エンジンB は本遮熱技術の実用化適用対象として,最 新の排気規制に対応し,実用環境対応がなされた量産プロト タイプでの効果検討を行うものである.それぞれのエンジン 諸元を表2 に,燃焼室形状を図 4 に示す.

Fig.3 Comparison of thermopysical property

Table2 Specifications of applied diesel engines



Piston cavity of engine A

Piston cavity of engine B

Fig.4 Schematic drawing of each piston cavities 

Engine A Engine B Bore×Stroke φ86mm×96mm φ92mm × 103.6mm Displacement 2231 cm3 2755 cm3

Compression Ratio 14.1 15.6

Port Swirl Ratio 2.1 2.2

Fuel Injection System Common Rail, G3P Common Rail, G4S Nozzle Type Mini Sac Mini Sac

φ86 15.5 φ58.7 0.01 0.1 1 10 100 1000 1 10 100 1000 10000

Volumetric specific heat kJ/m3K

The rm al c ond uc tivi ty W /mK Aluminum alloy Aluminum oxide Air Glass balloon** SiRPA*** YSZ* • Yttria-Stabirized Zirconia ** Heat-resistant Glass balloon *** SiRPA plotted by bulk density

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

Fig.1 Wall temperature of heat insulation 

表面温度は通常の燃焼室壁面温度よりも低下するため,ノッ

キング発生頻度をむしろ低下させることができる 

本報告ではこの壁温スイング遮熱法を実現する遮熱膜とし て第2 報  及び第4 報  で報告した,シリカ強化多孔質陽極

酸化被膜 Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum (以下 SiRPA)を適用した.その構造を図 2 に示す.

Fig.2 Schematic drawing of Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum (SiRPA)

Table1 Thermophysical Properties of SiRPA Volumetric Specific Heat Capacity

@500K 1300kJ/m3K Thermal Conductivity @500K 0.67W/m・K 表1 に SiRPA の物性値を示す.この材質は,ピストン材と して使用されている高シリコンのアルミ合金に厚膜の陽極酸 化膜  を成膜したのちに,燃焼圧によるガス侵入防止と膜強 度向上のため,高耐熱性のシリカ系封孔材を塗布含侵・焼成 し,厚さ数μm の保護被膜を形成したものである.細孔構成 は,第4 報  を参照されたい.SiRPA の熱物性を他の代表的 な材料と比較して図3 に示す.ジルコニアなどのセラミック ス溶射の遮熱材に対し,約1/3 の低熱伝導率,約 1/2 の低体 積比熱が実現できている. 3.供試エンジン 本報告では2 種類のエンジンにて遮熱膜の評価を行った.そ れぞれのエンジン評価の狙いとしては,エンジンA では第 2 報の単筒機関における結果をターボ過給式多気筒エンジンで 検証することであり,上記単筒機関に燃焼系諸元を合わせて ある.エンジンB は本遮熱技術の実用化適用対象として,最 新の排気規制に対応し,実用環境対応がなされた量産プロト タイプでの効果検討を行うものである.それぞれのエンジン 諸元を表2 に,燃焼室形状を図 4 に示す.

Fig.3 Comparison of thermopysical property

Table2 Specifications of applied diesel engines



Piston cavity of engine A

Piston cavity of engine B

Fig.4 Schematic drawing of each piston cavities 

Engine A Engine B Bore×Stroke φ86mm×96mm φ92mm × 103.6mm Displacement 2231 cm3 2755 cm3

Compression Ratio 14.1 15.6

Port Swirl Ratio 2.1 2.2

Fuel Injection System Common Rail, G3P Common Rail, G4S Nozzle Type Mini Sac Mini Sac

φ86 15.5 φ58.7 0.01 0.1 1 10 100 1000 1 10 100 1000 10000

Volumetric specific heat kJ/m3K

The rm al c ond uc tivi ty W /mK Aluminum alloy Aluminum oxide Air Glass balloon** SiRPA*** YSZ* • Yttria-Stabirized Zirconia ** Heat-resistant Glass balloon *** SiRPA plotted by bulk density

Table3 Engine test conditions



 Fig.5 Comparison of Cylinder pressure and ROHR, between

Base and SiRPA 

Fig.6 Heat balance comparison in engine A .エンジン性能試験  エンジンA;単筒エンジン結果の検証 表  に示したSiRPA 膜をエンジンAのピストン頂面全面に 成膜して性能試験を実施した.試験条件は表  に示す. 図  はエンジンA の指圧と熱発生率を,図  は熱バランスを,遮 熱膜が無い場合(以後,Base と記す)と SiRPA 膜ありの場 合で比較している.熱バランスは下から,正味仕事,摩擦損 失,ポンプ損失,冷却損失,排気損失,未燃損失の順である. 正味仕事は動力計のトルク,摩擦損失はポンプ損失を除く図 示仕事と正味仕事との差,ポンプ損失は指圧計で計測した負 の仕事,未燃損失は排気分析計からTHC,CO 成分の熱量を 算出,排気損失はIMEP をサイクル効率で除算し、冷却損失 は全体から各種損失を引くことで算出した. SiRPA 膜ありの方が Base よりも熱損失が低減し,図示仕事 と排気エネルギーが増加しており,スイング遮熱による熱効 率の向上と排気エネルギーの増加の両立が実現できている.   エンジンB;実用化検討   全面被膜ピストンによる実機燃費試験  単筒機関での正味仕事改善効果が多気筒エンジンでも確認 されたため,SiRPA 膜の実用化を前提としたプロトタイプエ ンジンBのピストン頂面全面に被膜して評価を行った. 評価は各種計測器の誤差を最小限にするため,同一個体のエ ンジン・計測器を使用また評価時の状態量のバラつきを抑え るため 1 増し試験を実施し,十分に条件が一致したデータを 採用した.同一点における燃料消費率の繰り返し計測誤差は 以下であった.  図  は表  の試験条件における,エンジンAとBのSiRPA 膜追加による燃費効果を比較したものである.Aに対してB では効果が大幅に目減りしていることがわかる.この時のエ ンジンBの熱バランスは,エンジンAにおいて図6で見られ たような冷却損失の低減が実現できておらず,正味仕事の増 加も少ないことがわかった.        

Fig.7 BSFC improvement comparison between engine A and B  この差が生じる要因として,表  のエンジンの試験条件に 着目すると,エンジンAに対しエンジンBはEGR率が大幅 に高いことがわかる.このEGR率は対応する排気規制や車 両重量に応じて適合されている.筆者らは第  報にて,(*5 率増加に伴う燃焼重心の遅角化により,本研究での削減対象 となっている冷却損失の割合自体が減少し,結果として燃費 効果が目減りする影響を示した.ただし,この燃費効果の目 減りは燃焼遅角化だけでは説明できず,表面粗度の影響につ いても簡単に言及したが,これについて本報で詳細に検討を 行った.   単筒機関による燃費影響因子の解析  機械加工の燃焼室壁面の表面粗さが 5DμP 以下であるのに 対し,遮熱膜である 6L53$ 膜の表面粗さは 5D~μP と大き くなっている.これは 6L などアルミ合金中に分布する晶出物 が陽極酸化により生成するアルミナの成長量を不均一にする ことに起因し,ピストン用の高シリコン合金に厚い陽極酸化 被膜を成膜する場合,特に顕著となる.図  にその断面顕微 鏡写真の一例を示す. Engine A Engine B Engine Speed (rpm) 2000 1400 Common Rail Pressure (MPa) 55 58

EGR Ratio (%) 0 40 Fuel Injection Quantity(mm3/stroke) 10 10

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

        

Fig.8 Structure and surface roughness of porous anodized aluminum  図  は燃焼室キャビティー,スキッシュ面,バルブリセス からなる頂面の表面粗さを 5DμP とした通常の機械加工面の ピストンと,これを 5DμP までサンドブラストで粗くしたピ ストンをそれぞれ装着した単筒機関で,それぞれ (*5 率を変 化させた時の図示燃費への影響を示す.単筒機関の燃焼系諸 元は表  のエンジンAに同じで、運転条件は USP,燃料噴 射量 PPVW である.いずれのピストンでも (*5 率の増加と 共に燃費は悪化するが,表面粗さの増大のみでも燃費は悪化 し,高 (*5 率側ではさらにその差が拡大している.図  はこ の表面粗度の差による燃費への影響が,(*5 率の増加によって 拡大する割合としてプロットし直したものである.高 (*5 率 ほど表面粗さ悪化の影響が拡大することが明確に確認できる.  

Fig.9 Effect of surface roughness and EGR ratio for ISFC          

Fig.10 ISFC deterioration by the difference of piston surface roughness (Ra1μm → Ra5μm) with EGR ratio variation           

Fig.11 Heat balance comparison of different surface roughness in high EGR ratio

11 はEGR率 22%の時の熱バランスを,5DμP と 5D μP の燃焼室表面粗さについて比較したものである. 表面粗 さが大きいと冷却損失が  ポイント増加していることがわ かる.図示しないが,EGR率 %の場合の表面粗さ増大に よる冷却損失の増加は  ポイントであったことから,高E GR率の場合ほど表面粗さが冷却損失増大に及ぼす影響は, 大きくなることが示された.   急速圧縮装置による燃焼可視化解析  表面粗さの影響が最も大きいのは壁面上の流動速度が最大 となる燃焼室噴霧衝突部であると推定し,この部分を模擬し た構成を急速圧縮装置(5DSLG&RPSUHVVLRQ0DFKLQH以下5&0) にて再現し,噴霧燃焼観察を行った.その装置の構成を図 に,諸元と運転条件を表に示す.尚,効果を明確にするため に噴霧衝突面の表面粗さの水準は5Dと5DμPとした. 

Table 4 Specification of ambient and injection condition             

Fig.12 Schematic overview of rapid compression machine Silica

Micro pore Surface of porous anodized aluminum

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

        

Fig.8 Structure and surface roughness of porous anodized aluminum  図  は燃焼室キャビティー,スキッシュ面,バルブリセス からなる頂面の表面粗さを 5DμP とした通常の機械加工面の ピストンと,これを 5DμP までサンドブラストで粗くしたピ ストンをそれぞれ装着した単筒機関で,それぞれ (*5 率を変 化させた時の図示燃費への影響を示す.単筒機関の燃焼系諸 元は表  のエンジンAに同じで、運転条件は USP,燃料噴 射量 PPVW である.いずれのピストンでも (*5 率の増加と 共に燃費は悪化するが,表面粗さの増大のみでも燃費は悪化 し,高 (*5 率側ではさらにその差が拡大している.図  はこ の表面粗度の差による燃費への影響が,(*5 率の増加によって 拡大する割合としてプロットし直したものである.高 (*5 率 ほど表面粗さ悪化の影響が拡大することが明確に確認できる.  

Fig.9 Effect of surface roughness and EGR ratio for ISFC          

Fig.10 ISFC deterioration by the difference of piston surface roughness (Ra1μm → Ra5μm) with EGR ratio variation           

Fig.11 Heat balance comparison of different surface roughness in high EGR ratio

11 はEGR率 22%の時の熱バランスを,5DμP と 5D μP の燃焼室表面粗さについて比較したものである. 表面粗 さが大きいと冷却損失が  ポイント増加していることがわ かる.図示しないが,EGR率 %の場合の表面粗さ増大に よる冷却損失の増加は  ポイントであったことから,高E GR率の場合ほど表面粗さが冷却損失増大に及ぼす影響は, 大きくなることが示された.   急速圧縮装置による燃焼可視化解析  表面粗さの影響が最も大きいのは壁面上の流動速度が最大 となる燃焼室噴霧衝突部であると推定し,この部分を模擬し た構成を急速圧縮装置(5DSLG&RPSUHVVLRQ0DFKLQH以下5&0) にて再現し,噴霧燃焼観察を行った.その装置の構成を図 に,諸元と運転条件を表に示す.尚,効果を明確にするため に噴霧衝突面の表面粗さの水準は5Dと5DμPとした. 

Table 4 Specification of ambient and injection condition             

Fig.12 Schematic overview of rapid compression machine Silica Micro pore Surface of porous anodized aluminum Aluminum alloy

Fig.13 Effect of surface roughness on the flame mixing speed

   

Fig.14 Schematic image of the influence of surface roughness for diesel mixture formation

 直接観察画像を図  に示す.5DμP では噴霧衝突後,壁 面沿いに火炎が高速で移動・拡散する様子が見られる一方で, 5DμP では上記に比較して壁面上とその近傍で火炎の伸展が 遅くなっていることが観察される.さらに燃料噴射後 PV の画像において,5DμP では噴霧衝突面近傍に依然として輝 炎が滞留していることが観察できる. これを燃焼室内に当てはめて,現象を模式的に推定したの が図  である.表面粗さが大きい場合は壁面上の噴霧・混合 気の移動速度が低下し,拡散が遅くなる.また,高 (*5 率の 状態では酸素濃度が低いため,噴霧により形成された燃料蒸 気が燃焼可能な空燃比となるためには,低 (*5 率の時よりも 広い空間に拡散されることが必要になる.このため (*5 率が 高いほど表面粗さの影響が大きくなったものと考えられる. この現象についてCFD を用いた傾向の再現を試みた.ソフ トウエアは市販のSTAR-CD を使用し,噴霧壁面衝突モデルは Bai モデルを用いた. なめらかな表面には標準壁関数を使用 し,粗い表面には”Specify”のオプションを用いて,差を明確 にするためにD=100μm と大きめの粗さ設定とした.エンジ ン運転条件は2000rpm,平均有効圧 1.64MPa である.図  はその当量比分布・温度分布を噴霧軸線上断面で時系列に示 したものである.なめらかな表面の場合は混合気の運動量減 衰が少なく,衝突面から壁面沿いに反転した後,中央突起部 より上方に拡散が進む.一方,面粗さが大きくなるとウォー ルジェット流の減衰により混合気移動速度が遅くなり,キャ ビティー内部での滞留時間が長くなる.この時の温度分布も 同様に,キャビティー内部の燃焼室壁面に近い部分に高温ガ スが滞留し続ける様子が観察され,このような現象が冷却損 失の増大につながっていることが示唆された.                         

Fig.15 Equivalence ratio and temperature Distribution by CFD simulation 面粗度による影響としては,ほかに表面積の増大による熱 伝達量の増加も考えられるが,EGR率の高さにより燃費効 果差異を生ずる要因としては影響が小さいと考えられるため, 今回は解析の対象から除外した. また,面粗度悪化による散乱放射の増加に関しても,筒内 の熱伝達の大部分は乱流熱伝達であり,放射による熱伝達は 全体の 程度  と相対的に低く影響は小さいと考えられる.   遮熱と燃焼の両立  高(*5率の燃焼適合において,噴霧衝突部の表面粗さの重 要性が明確になったため,遮熱効果と適正な燃焼を両立す るための方策を検討した. 噴霧の衝突・拡散が行われるキャビティー内は面粗度が 低い機械加工面のままとし,遮熱膜はリップ上のテーパー 面より外側のみを成膜するという思想で構築した燃焼室被 膜範囲を図に示す.

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

 図はエンジンBにて,当初のピストン燃焼室全面に 6L53$膜を形成した時と,図の部分にのみ6L53$膜を形成 した時の,%DVHに対する燃費改善効果を示す.試験条件は 表に同じである.キャビティー内の混合気形成・燃焼を阻 害していた表面粗さの増大を,金属加工面をそのまま残す ことで防止し,本来の混合気形成とそれに連なる燃焼過程 に戻すことで,燃費効果も大幅に改善した.また,図は 同様に%DVHに対する排気温の差(上昇代)を比較したもの である.6L53$膜の面積割合が減ったにもかかわらず,排     

Fig.16 Schematic drawing of SiRPA formed area except cavity        

Fig.17BSFC improvement comparison between SiRPA Including Cavity and Except Cavity

      

Fig.18 Exhaust gas temperature difference from Base           

Fig.19 Cylinder pressure and ROHR comparison of each cavity         

Fig.20 Heat balance comparison between Base and SiRPA except cavity 気温の上昇代はほとんど変わっていない.これは6L53$膜の 面積割合減少による熱損失増加分と,キャビティー内の面 粗度を%DVHと同等に維持し,燃焼の遅延・高温ガスの燃焼 室壁面近傍での滞留を防止したことによる熱損失抑制分が, 相殺できたためと考えられる.図はベース,全面6L53$ 被膜,図の部分へ6L53$被膜をしたピストンの指圧と熱発 生率を示す. 図の部分へ6L53$被膜をしたピストンでは 上死点後の熱発生率ピークに若干の増大が見られ,これは 冷損低減により見かけの熱発生率が増加したものと考えら れる.燃焼の遅延については,さほど大きな差は見られな かった.図は,この時の熱バランスをベースと比較した ものである.図7で示した時の燃費改善効果を大幅に上回 り,またベースよりも冷却損失が低減し,正味仕事と排気 損失が増加していることが確認できた.  筆者らはこのキャビティー内には遮熱膜を加工しない手 法が最終的なものとは考えておらず,さらなる燃費効果の 拡大には遮熱面積の拡大が重要であることは認識しており, 今後もその取り組みは続けていく.しかしながら現在得ら れる表面粗度の遮熱膜を効果的に燃費効果につなげる現実 解としては,この手法は当を得たものであると考えている.  .まとめ及び結論 ガス温度に追従して表面温度を変化させる,壁温スイン グ遮熱膜を4気筒過給直噴ディーゼル機関に適用し,熱効 率向上効果を検討した.その結果,以下の知見を得た. (1) 第  報での単筒機関と燃焼系・適合条件を合わせた4気 筒過給直噴ディーゼル機関での評価にて,冷却損失が低 減し,正味仕事と排気損失が増加し,その結果として 燃費が改善していることが確認できた. (2) 実用化を前提としたプロトタイプエンジンにそのまま遮 熱膜を適用すると,上記燃費改善効果が大幅に目減りし た.これは膜形成による表面粗さの増大が,高 (*5 率の 燃焼に及ぼす悪影響が大きいためと考えられる. (3) 噴霧衝突部の表面粗さによる混合気拡散への影響を急速

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壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 3 報)

 図はエンジンBにて,当初のピストン燃焼室全面に 6L53$膜を形成した時と,図の部分にのみ6L53$膜を形成 した時の,%DVHに対する燃費改善効果を示す.試験条件は 表に同じである.キャビティー内の混合気形成・燃焼を阻 害していた表面粗さの増大を,金属加工面をそのまま残す ことで防止し,本来の混合気形成とそれに連なる燃焼過程 に戻すことで,燃費効果も大幅に改善した.また,図は 同様に%DVHに対する排気温の差(上昇代)を比較したもの である.6L53$膜の面積割合が減ったにもかかわらず,排     

Fig.16 Schematic drawing of SiRPA formed area except cavity        

Fig.17BSFC improvement comparison between SiRPA Including Cavity and Except Cavity

      

Fig.18 Exhaust gas temperature difference from Base           

Fig.19 Cylinder pressure and ROHR comparison of each cavity         

Fig.20 Heat balance comparison between Base and SiRPA except cavity 気温の上昇代はほとんど変わっていない.これは6L53$膜の 面積割合減少による熱損失増加分と,キャビティー内の面 粗度を%DVHと同等に維持し,燃焼の遅延・高温ガスの燃焼 室壁面近傍での滞留を防止したことによる熱損失抑制分が, 相殺できたためと考えられる.図はベース,全面6L53$ 被膜,図の部分へ6L53$被膜をしたピストンの指圧と熱発 生率を示す. 図の部分へ6L53$被膜をしたピストンでは 上死点後の熱発生率ピークに若干の増大が見られ,これは 冷損低減により見かけの熱発生率が増加したものと考えら れる.燃焼の遅延については,さほど大きな差は見られな かった.図は,この時の熱バランスをベースと比較した ものである.図7で示した時の燃費改善効果を大幅に上回 り,またベースよりも冷却損失が低減し,正味仕事と排気 損失が増加していることが確認できた.  筆者らはこのキャビティー内には遮熱膜を加工しない手 法が最終的なものとは考えておらず,さらなる燃費効果の 拡大には遮熱面積の拡大が重要であることは認識しており, 今後もその取り組みは続けていく.しかしながら現在得ら れる表面粗度の遮熱膜を効果的に燃費効果につなげる現実 解としては,この手法は当を得たものであると考えている.  .まとめ及び結論 ガス温度に追従して表面温度を変化させる,壁温スイン グ遮熱膜を4気筒過給直噴ディーゼル機関に適用し,熱効 率向上効果を検討した.その結果,以下の知見を得た. (1) 第  報での単筒機関と燃焼系・適合条件を合わせた4気 筒過給直噴ディーゼル機関での評価にて,冷却損失が低 減し,正味仕事と排気損失が増加し,その結果として 燃費が改善していることが確認できた. (2) 実用化を前提としたプロトタイプエンジンにそのまま遮 熱膜を適用すると,上記燃費改善効果が大幅に目減りし た.これは膜形成による表面粗さの増大が,高 (*5 率の 燃焼に及ぼす悪影響が大きいためと考えられる. (3) 噴霧衝突部の表面粗さによる混合気拡散への影響を急速

圧縮装置での観察と &)' により解析し,面粗度が大きい 場合はウォールジェット流の減衰により混合速度が低下 し,高温の燃焼ガスの壁面近傍滞留時間が長くなること が示唆された.これが燃焼速度低下と熱損失増加の要因 の1つと考える. (4) 表面粗さに起因する燃焼悪化に対応するために,ピスト ンキャビティー内は面粗度が良好な機械加工面のまま とし,スキッシュリップ上から外側のみ遮熱膜を成膜 することにより,高 (*5 条件においても冷却損失低減 効果が得られ,燃費が改善することを確認した.   謝辞

本技術は“Thermo Swing Wall Insulation Technology”, 略称”TSWIN“と名付けられ,/(67(&*' エンジンの日本 国内向けに世界で初めて実用化された.ここに至るまでの研 究開発の過程で,㈱豊田中央研究所 中北清己氏,トヨタテクニカルデ ィベロップメント㈱ 瀬口和比古氏、トヨタ自動車㈱岩田一康氏, 鈴木隼人氏,仲野泰彰氏,岸本岳氏,伊藤寿記氏,肘井巧氏, 梶川義明氏,その他多くの関係者に貴重な助言とご協力を頂 いた.ここに感謝の意を表する.  参 考 文 献

(1) Roy Kamo, Walter Bryzik: Adiabatic Turbocompound Engine Performance Prediction, SAE technical Paper 780068 (1978) (2) Hideo Kawamura and Mitsuru Akama: Development of adiabatic engine installed energy recover turbines and converters of CNG fuel, SAE technical Paper 2003-01-2265 (2003)

(3) Katsuyuki Osawa, Roy Kamo, Edgars Valdmanis: Performance of Thin Thermal Barrier Coating on Small Aluminum Block Diesel Engine, SAE technical Paper 910461 (1991)

(4) 神本武征ほか,夢の将来エンジン P103-128 自動車技術叢 書1 (公社) 自動車技術会(2009) (5) 小坂英雅ほか;壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損 失低減(第  報),自動車技術会論文集,9RO1R S   (6)脇坂佳史ほか;壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損 失低減(第  報),自動車技術論文集,9RO1RS;;;;;;   (7)西川直樹ほか;壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損 失低減(第  報),自動車技術論文集,9RO1RS;;;;;;   (8) JIS H 0201 アルミニウム表面処理用語, (1998)

(9) Takeshi Hashizume et-al, Low Cooling Heat Loss and High Efficiency Diesel Combustion using Restricted In-Cylinder Flow, COMODIA 2012 proceedings, JSME No.12-201, P43-49, (2012) 

p39-45,

Table 4 Specification of ambient and injection condition
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参照

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