の視線方向(LoS:line of sight)は,ascendingではほぼ 東向き,descendingではほぼ西向きとなる.
Table 1 に示した BPERPとは,本地震を挟む前後の観測 1.はじめに
合成開口レーダー(SAR: Synthetic Aperture Radar)は, 人工衛星や航空機に搭載されたアンテナから地表に向け てマイクロ波を射出し,後方散乱波を受信して地表画像 を得る技術である.平成23年(2011年)東北地方太平洋 沖地震(以下「本地震」という)は, Mw9.0の巨大地震で あり,本地震が多数の地すべり性地表変動を生じさせた ことが,現地調査や写真判読によって明らかになってい る(Wartman et al., 2013).
筆者は,人工衛星「だいち」(ALOS: Advanced Land Observing Satellite)に搭載のPALSAR(Phased Array L-band SAR)のデータを使い,本地震による地殻変動の成 分を排除してから,現地調査や写真判読では確認が難し い,本地震による微小な変位を伴う地すべり性地表変動 を検出した(佐藤ほか,2014;以下「既報」という). ALOSの軌道上の進行の向きは,Table 1の脚注に示 すように,北行(ascending)と南行(descending)があ る.Table 1に示すように,PALSARセンサから地表へ
佐 藤 浩
Synthetic Aperture Radar (SAR) is the technique to obtain ground surface images using microwave that is emitted from and received on the antenna. In the previous study the author explained Advanced Land Observing Satellite (ALOS)/Phased Array L-band SAR (PALSAR) data and reported InSAR-detecting method of the landslide surface defor-mation triggered by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku earthquake, as a result, 22 areas were detected. However, due to space limitation, geomorphological and geological characteristics of the detected landslide surface were not fully explained in the previous study. In this paper the author shows SAR interferometry image at each area and explains out-line of the characteristics.
Keywords : geomorphology, geology, landslide, Synthetic Aperture Radar (SAR), the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake, SAR interferometry image
SAR干渉画像で検出した2011年東北地方太平洋沖地震に関わる
地すべり性地表変動の地形・地質的特徴の概略
Outline of Geomorphological and Geological Characteristics of InSAR-detected landslide Surface
Deformation Triggered by the 2011 Off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake
Hiroshi P. SATO
(Received November 17, 2014)Department of Geography, College of Humanities and Sciences, Nihon University, 3−25−40, Sakurajosui, Setagaya−ku, Tokyo, 156−8550 Japan
日本大学文理学部地理学科:
〒156−8550 東京都世田谷区桜上水3−25−40
Table 1 SAR image (Master, Slave) using in this study (Sato et al., 2014)
Path Master Slave Orbit* B PERP
55 Sep 18, 2010 Mar 21, 2011 Des +1197 m 56 Nov 20, 2010 Apr 7, 2011 Des +998 m 59 Nov 25, 2010 Apr 12, 2011 Des +937 m 400 Jan 11, 2011 Apr 13, 2011 Asc +1125 m 401 Oct 28, 2010 Mar 15, 2011 Asc +1459 m 402 Sep 29, 2010 Apr 1, 2011 Asc +1212 m 403 Mar 3, 2011 Apr 18, 2011 Asc +358 m 404 Feb 2, 2011 Mar 20, 2011 Asc +847 m 405 Feb 19, 2011 Apr 6, 2011 Asc +406 m 408 Feb 24, 2011 Apr 11, 2011 Asc +522 m 411 Mar 1, 2011 Apr 16, 2011 Asc +508 m *Des, descending; Asc, ascending
日でSAR干渉解析の基準とした画像(Master)と共役を 採る画像(Slave)において,Master画像のLoSに対する Slave 画像の LoS の垂直成分の長さである.BPERPが小さ
いほど,位相の分散が小さく明瞭なSAR 干渉画像が得 られる. 既報では,Table 1のパス(同一軌道上の観測帯)で観 測されたPALSARデータを用いたSAR干渉画像(地上分 解能は10 ∼20m)を使い,LoSが3.4 cm以上で,山地斜 面の変動域の面積が2.25 ha 以上であるなど,既報の基 準を満たす多角形の領域を検出した.その数は22 であ り,変動域のうち,更新統の火山岩・火山砕屑岩の占め る面積が952.5 haと最多だった. 検出した22 ヶ所の変動域はFig. 1(既報)に示されて いるが,既報では紙面の都合で,そのうち3 ヶ所,すな わち焼石岳東麓(Fig. 1 の ID の 12 番),栗原市南部(ID の13番),南蔵王(IDの17番)の4ルックのSAR干渉画 像と地形図,地質図のみを示した.ID の 14 番も 13 番の すぐ南に隣接して既報のSAR 干渉画像に報告済みであ る.そこで本原稿では,残りの18 ヶ所について,概ね Fig. 1 の ID 番号の順に,4 ルックまたは 8 ルックの SAR 干渉画像を示しながら本地震で想定される変動の向きを 説明する.ID の 1 ∼ 22 番の場所については,Table 2 に 示した緯度・経度を参照されたい. 以下のSAR 干渉画像に示す赤枠の多角形は既報の検 出基準に基づく本地震による地すべり性地表変動域であ る.その背景の地形の陰影図は国土地理院による基盤地 図情報の数値地図10 mメッシュ(標高)による. また,本文に個々の変動域の地形・地質の概略を示す. SAR 干渉画像に示す地すべり地形(移動土塊が閉曲線 で,滑落崖は土砂が落ちる向きにケバ付の曲線で表示) は,防災科学技術研究所(2013)による.地質の説明に ついては,産業技術総合研究所(2014; https://gbank. gsj.jp/seamless/maps.html)に基づく. 2.各変動域の特徴 2.1 ID の 1 番の変動域
Fig. 2 に,ID の 1 番を含むパス 56 の SAR干渉画像を示
す.既報のとおり,Fig. 2に示したB→R→Yのように青
→赤→黄色に変化し,B 付近を無変動とすると,LoS に
Fig. 1 Location of InSAR-detected landslide deformation area (Sato et al., 2014). Center of the area is shown in black solid circle. Gray rectangle with the number indicates observation path and path ID (corresponding with Ta-ble 1) observed by PALSAR. The star indicates the epicenter.
Table 2 Location and characteristics of the detected landslide deformation areas (Sato et al., 2014, modified)
ID P Lon(E) (N)Lat Color change D
1 56 141.512722 º 39.02172 º B→R→Y W, D 2 56 141.515159 º 38.846731 º B→Y E 3 56 141.493026 º 38.811947 º B→Y E 4 56 141.291272 º 38.59666 º B→Y→R E 5 56 141.304591 º 38.570872 º B→Y E 6 56 140.911659 º 37.073238 º B→Y E 7 56 140.729213 º 36.9584 º B→Y E 8 56 140.56608 º 36.556864 º B→Y E 9 59 138.75098 º 35.52907 º B→Y E 10 400 141.7477 º 39.161508 º B→R→Y E, D 11 402 140.433523º 41.005702 º B→Y→R W 12 403 140.88655 º 39.143575 º B→R→Y E, D 13 403 140.81771 º 38.78955 º B→R→Y→B→R E, D 14 403 140.825059 º 38.751379 º B→R E, D 15 403 140.755352 º 38.47201 º B→R E, D 16 403 140.777845 º 38.466554 º B→R→Y E, D 17 403 140.503592 º 38.105769 º B→R→Y E, D 18 403 140.839788 º 37.843628 º B→Y W 19 403 140.903917 º 37.097148 º B→R E, D 20 404 140.318533 º 37.694055 º B→R→Y E, D 21 404 140.732863 º 36.8393 º B→R→Y E, D 22 411 136.633124 º 36.468992 º B→Y W
Note 1) Column P shows the number of path shown in Fig. 1., 2) Column Lon and Lat shows longitude and latitude of the center of the detected landslide defor-mation area, 3) Column of Color change indicates color such as B, blue; R, red; Y, yellow in Figs. 2-16., 4) Column D shows direction of movement of the detected landslide deformation area such as W, westward; E, eastward; D, downward.
沿って約7 cm,衛星から遠ざかる向きの(斜面方位を考 えると西向きの,あるいは西向きに沈降の成分が加わっ た)変動を示した. 現地の稜線と斜面下方の標高(Fig. 2 のそれぞれ B 付 近とY 付近)は,それぞれ約 420 m と 200 m である.地 質は,ペルム紀の堆積岩類(海成層)である.Fig. 2では, 赤枠の多角形は,同図に示される地すべり地形と一致し ておらず,赤枠の多角形の周囲でも地すべり地形は散見 される程度である.したがって,地すべりの痕跡が残さ れているような比較的新しい時代の地すべりが,本地震 によって再活動したのではないと考えることができる. 仮に再活動によるとしても,B 付近から南西に延びる山 稜を滑落崖の冠頂部と想定するような地すべりは,かな り古い時代に生じたのであろう. 2.2 ID の 2 番及び 3 番の変動域
Fig. 3 に,ID の 2 番と 3 番を含むパス 56 の SAR 干渉画
像を示す.既報のとおり,IDの2番については,Fig. 3に 示したB(ID=2の近傍)→ Yのように青→黄色に変化し, B 付近を無変動とすると,LoS に沿って約 4 cm,衛星に 近づく向きの(斜面方位を考えると東向きの)変動を示 した.Y 付近の標高は 240 m,その斜面の上部の山稜と 下部の河川の標高はそれぞれ,320 m と 150 m である. 240 m 付近から斜面下方は,上方と比較してやや緩傾斜 である. ID の 3 番については Fig. 3 に示した B(ID=3 の近傍) →Y のように青→黄色に変化し,B 付近を無変動とする と,LoS に沿って約4 cm,衛星に近づく向きの(斜面方 位を考えると東向きの)変動を示した.Fig. 3 を見ると, 弱いながらもR(赤色)も認められる.もし,赤色まで 変化が連続していると,B(ID=3の近傍)→Y→Rのよう に青→黄→赤色に変化し,B付近を無変動とすると,LoS に 沿 っ て 同 様 に7 cm の 変 動 を 示 す 可 能 性 も あ る.B (ID=3 の近傍)付近の河川と Y 付近の山稜の標高はそれ ぞれ,270 mと40 mである. ID の 2 番と 3 番ともに,地すべり地形とは一致せず, 地すべりの痕跡が残されているような比較的新しい時代 の地すべりの再活動とは認められない.また,周辺には 地すべり地形が疎らであり,その規模(面積)はIDの2 番と同程度か,IDの3番よりも,かなり小さい. 2.3 ID の 4 番及び 5 番の変動域
Fig. 4 に,ID の 4 番と 5 番を含むパス 56 の SAR 干渉画
像を示す.既報のとおり,IDの4番については,Fig. 4に
示したB(ID=4 の近傍)→ Y → R のように青→黄→赤色 に変化し,B 付近を無変動とすると,LoS に沿って約 7 cm,衛星に近づく向きの(斜面方位を考えると東向き の)変動を示した.ただし,赤色の発色は弱く,赤枠の
Fig. 2 SAR interferometry image (path 56) at location ID=1.
多角形より北東側の鮮やかな発色の赤色まで変化が連続 しているとは考えづらい.Y 付近の山頂の標高は 150 m, B(ID=4の近傍)の谷底平野の標高は5 mである. ID の 5 番については Fig. 4 に示した B(ID=5 の近傍) →Y のように青→黄色に変化し,B 付近を無変動とする と,LoS に沿って約4 cm,衛星に近づく向きの(斜面方 位を考えると東向きの)変動を示した.B(ID=5の近傍) 付近の山稜の標高は150 ∼ 180 m であり,局所的である が,定高性の丘陵背面をなしている.赤枠の多角形のす ぐ西側の河川の標高は5mである. ID の 4 番と 5 番ともに,地すべり地形とは一致せず, 地すべりの痕跡が残されているような比較的新しい時代 の地すべりの再活動とは認められない.また,周辺には 地すべり地形が疎らであり,その規模(面積)はIDの4 番及び5番と比較してかなり狭い. 2.4 ID の 6 番の変動域
Fig. 5 に,ID の 6 番を含むパス 56 の SAR干渉画像を示 す(ID の 19 番の赤枠の多角形も掲げてあるが,後述す る).ID の 6 番については,Fig. 5 に示した B → Y のよう に青→黄色に変化し,B 付近を無変動とすると,LoS に 沿って約4 cm,衛星に近づく向きの(斜面方位を考える と東向きの)変動を示した(既報では変色をB → R とし たが,Fig. 5のとおりB→Yが正しい). Y 付近の山稜は 130 m であり,地すべり地形と一致す ることから,本地震で地すべりが再活動したと考えるこ とができる.この地すべり地形の移動土塊の末端部の標 高は50 mであり,B付近の谷底平野の標高は15 mである. 地質は前∼中期更新世の堆積岩類(海成または非海成) である. 赤枠の多角形の中の黄色の変色は,東向きのみならず 西向き斜面にも認められるが,西向き斜面の変動の向き の解釈を,地すべりの再活動に求めるのは難しく,今後 の更なる検討が必要である. 2.5 ID の 7 番の変動域
Fig. 6 に,ID の 7 番を含むパス 56 の SAR干渉画像を示 す. B → Y のように青→黄色に変化し,B 付近を無変動 とすると,LoSに沿って約4 cm,衛星に近づく向きの(斜 面方位を考えると東向きの)変動を示した. Y付近の山稜は220 ∼270 mであり,Yのすぐ北東のダ ム湖面の標高は50 ∼ 60 m である.地すべり地形と一致 せず,地すべりの再活動とは認められない.周辺には地 すべり地形が疎らであるが,その規模(面積)はIDの7 番とあまり変わらない.地質は,白亜紀の低∼中圧の変 成岩である.この付近は2011 年 4 月 11 日に本地震の余 震(福島県浜通りの地震,Mw6.8;気象庁,2011)による 地殻変動の影響を受けているが,Fig. 6 に示した SAR 干 渉画像(パス56)の観測期間は,Table 1に示すように福 島県浜通りの地震の発生日をまたがっていないため,そ の影響を考慮する必要は無い. 2.6 ID の 8 番の変動域
Fig. 7 に,ID の 8 番を含むパス 56 の SAR干渉画像を示
す.B→Yのように青→黄色に変化し,B付近を無変動と すると,LoS に沿って約4 cm,衛星に近づく向きの(斜 面方位を考えると東向きの)変動を示した(既報では変 色をB→Rとしたが,Fig. 7のとおりB→Yが正しい). Y 付近の山稜と B 付近の谷底平野の標高はそれぞれ, 210 ∼240 mと30 mである.地すべり地形とは一致せず, 周辺には地すべり地形が疎らであるが,その規模(面積) はID の 8 番より小さい.地質は,白亜紀の低∼中圧の
2.8 ID の 10 番の変動域
Fig. 9 に,ID の 10 番を含むパス400 の SAR 干渉画像を
示す.B→R→Yのように青→赤→黄色に変化し,B付近 を無変動とすると,LoS に沿って約 7 cm,衛星から遠ざ かる向きの(斜面方位を考えると東向きの)変動を示し た.なお,これまでのパス56,パス 59 と異なり,パス 400 は北行軌道(衛星から地表への視線方向は西から東 向き)であることに注意する必要がある. B 付近の山稜の標高は 810 ∼ 890 m,R 付近と Y 付近の 標高はそれぞれ700 m と 640 m であり,地すべり地形と 一部,一致する.また,その規模(面積)はID の 10 番 より大きいものがあることが注目される.地質は,白亜 紀の花崗岩類である. 2.9 ID の 11 番の変動域
Fig. 10 に,ID の 11 番を含むパス 402 の SAR 干渉画像
を示す.B→Y→Rのように青→黄→赤色に変化し,B付 近を無変動とすると,LoS に沿って約 7 cm,衛星に近づ く向きの(斜面方位を考えると西向きの)変動を示した. Y 付近の山稜と R 付近の斜面下方の標高はそれぞれ, 40 ∼ 50 m と 20 m であり,起伏がなだらかな丘陵の西縁 に相当する.北東∼東の地すべり地形が密集する場所か らは離れており,地すべり地形とは一致しない.その規 模(面積)は,ID の11番の変動域と比較して,小さいも のが目立つ.地質は,後期中新世∼鮮新世の堆積岩類(海 成及び非海成層)である. 既報では,本地震による最大加速度及び最大速度が他 のID の変動域よりも比較的小さいことから,ID の 11 番 の変動の要因を本地震ではなく別の要因に求めた. 変成岩である. この変動域では,西向きの斜面方位が変動の向きと整 合しない.この変動域の実際の変動については,より検 討の余地がある. 2.7 ID の 9 番の変動域
Fig. 8 に,ID の 9 番を含むパス 59 の SAR干渉画像を示
す.B→Yのように青→黄色に変化し,B付近を無変動と すると,LoS に沿って約 4cm,衛星に近づく向きの(斜 面方位を考えると東向きの)変動を示した. Yの北方の山頂とB付近の扇状地の標高はそれぞれ, 1380mと850mである.地すべり地形とは一致せず,Fig. 8 を見る限り,周辺には地すべり地形は存在しない.地質 は,中∼後期中新世の火山岩(デイサイト・流紋岩類)で ある.既報では,本地震による最大加速度及び最大速度 が他のIDの変動域よりも比較的小さいことから,IDの9 番の変動の要因を本地震ではなく別の要因に求めた.
Fig. 8 SAR interferometry image (path 59) at location ID=9. Fig. 7 SAR interferometry image (path 56) at location ID=8.
Fig. 9 SAR interferometr y image (path 400) at location ID=10.
2.10 ID の 15 番及び 16 番の変動域
Fig. 11 に,ID の 15 番及び 16 番を含むパス 403 の SAR 干渉画像を示す.既報のとおり,IDの15番については, Fig. 11 に示した B → R のように青→赤色に変化し,B 付 近を無変動とすると,LoS に沿って約 4 cm,衛星から遠 ざかる向きの(斜面方位を考えると東向きの)変動を示 した.R 付近の標高は 250 m であり,地すべり地形と一 致する.赤枠の多角形の西寄りの最も近い滑落崖の冠頂 部の標高は,約310 m である.移動土塊が本地震により 再活動したと判断される.地質は,前期更新世の安山岩・ 玄武岩類である. ID の 16 番については Fig. 11 に示した B → R → Y のよ うに青→赤→黄色に変化し,B 付近を無変動とすると, LoS に沿って約7 cm,衛星から遠ざかる向きの(斜面方 位を考えると東向きの)変動を示した.地すべり地形と 一部一致し,R 付近の標高は 200 m,赤枠の多角形の西 寄りの最も近い滑落崖の冠頂部の標高は,約250 m であ る.これも,移動土塊が本地震により再活動したと判断 される.地質は前期更新世の安山岩類・玄武岩類であり, 滑落崖よりさらに斜面の上方は後期中新世∼鮮新世のデ イサイト・流紋岩類である. 2.11 ID の 18 番の変動域
Fig. 12 に,ID の 18 番を含むパス 403 の SAR 干渉画像 を示す.既報のとおり,Fig. 12 に示したB→Yのように 青→黄色に変化し,B付近を無変動とすると,LoSに沿っ て約4 cm,衛星に近づく向きの(斜面方位を考えると西 向きの)変動を示した. Y 付近の標高は 100 m であり,地すべり地形と一部, 一致する.赤枠の多角形の東寄りの最も近い滑落崖の冠 頂部の標高は,約150 m である.移動土塊が本地震によ り再活動したと判断される.地質は,前期∼後期更新世 の堆積岩類(海成及び非海成層)である. 2.12 ID の 19 番の変動域
Fig. 13 に,ID の 19 番を含むパス 403 の SAR 干渉画像 を示す.既報のとおり,Fig. 13 に示したB→Rのように 青→赤色に変化し,B付近を無変動とすると,LoSに沿っ て約4 cm,衛星から遠ざかる向きの(斜面方位を考える と東向きの)変動を示した.なお,IDの19番はFig. 6の パス56のSAR干渉画像(南行軌道)にも示されているが, 干渉縞は明瞭ではない.逆に,Fig. 13 に現れている ID の6 番も,干渉縞は明瞭ではない.北行軌道と南行軌道 のSAR 干渉画像を組み合わせて,実際の変動を今後, 明らかにしていく必要がある.
Fig. 11 SAR interferometry image (path 403) at location ID=15, 16.
Fig. 12 SAR interferometry image (path 403) at location ID=18.
Fig. 10 SAR interferometry image (path 402) at location ID=11.
は,後期更新世∼完新世の堆積岩類(海成及び非海成層) である. Fig. 14のY付近で黄色の隣に青色が認められる.この ことから,Y 付近より斜面下部の,別の地すべり地形の 土塊の動きを独立に捉え,この土塊もY 付近より斜面上 部の土塊と同様に,LoS に沿って同じだけ(約 7 cm)東 向きの変動を示した可能性があり,または,両者の土塊 の活動は一連であって,Y 付近より斜面下部の土塊は, 上部よりも変動量がより大きかった可能性がある. 2.14 ID の 21 番の変動域
Fig. 15 に,ID の 21 番を含むパス 404 の SAR 干渉画像 を示す.Fig. 15 に示した B → R → Y のように青→赤→黄 色に変化し,B 付近を無変動とすると,LoS に沿って約 7 cm,衛星から遠ざかる向きの(斜面方位を考えると東 向きの)変動を示した. 地すべり地形と一致しないが,近傍には地すべり地形 が疎らに散見される.その規模(面積)は,ID の21番と ほぼ同じである.R 付近の標高は 150 m,赤枠の多角形 の西寄りの山稜の標高は170 ∼ 180 m である.地質は, 前∼中期中新世の堆積岩類(海成層及び非海成層)であ る. 2.15 ID の 22 番の変動域
Fig. 16 に,ID の 22 番を含むパス 411 の SAR 干渉画像 を示す.既報のとおり,Fig. 16 に示したB→Yのように 青→黄色に変化し,B付近を無変動とすると,LoSに沿っ て約4 cm,衛星に近づく向きの(斜面方位を考えると西 向きの)変動を示した.地質は,前∼中期中新世の火山 岩(デイサイト・流紋岩類)であり,一部,中期更新世 R 付近の標高は 150 m であり,B 付近の谷底平野の標 高は40m である.地すべり地形とは一致しないが,南 側の地すべり地形と隣接する.赤枠の多角形の南寄りの 最も近い滑落崖の冠頂部の標高は,150 ∼170 mである. 地質は,前期∼後期更新世の堆積岩類(海成及び非海成 層)である. 2.13 ID の 20 番の変動域
Fig. 14 に,ID の 20 番を含むパス 404 の SAR 干渉画像 を示す.この図は,佐藤ほか(2012)の内容と同じであ る.Fig. 14 に示した B → R → Y のように青→赤→黄色に 変化し,B付近を無変動とすると,LoSに沿って約7 cm, 衛星から遠ざかる向きの(斜面方位を考えると東向き の)変動を示し,地すべり地形とほぼ一致することから, 地すべりの再活動を捉えたと考えることができる.地質
Fig. 13 SAR interferometry image (path 403) at location ID=19.
Fig. 14 SAR interferometry image (path 404) at location ID=20.
Fig. 15 SAR interferometry image (path 404) at location ID=21.
の高位段丘堆積物を載せる. 地すべり地形と一部,一致し,Y 付近の北西の滑落崖 の冠頂部の標高は350 ∼400 m,Y付近の北東の滑落崖の 冠頂部の標高は400 ∼ 450 m である.Y 付近より南の赤 枠の多角形の内部には地すべり地形は認められないの で,同じ赤枠の多角形でも,Y 付近を境に,北側は地す べりの再活動,南側は初生の地すべりか痕跡が不明瞭な 古い地すべりの再活動を示しているのかもしれない.既 報では,本地震による最大加速度及び最大速度が他の ID の変動域よりも比較的小さいことから,地すべりの 要因を本地震ではなく別の要因(例えば融雪水の影響) に求めた. 3.まとめ 既報では,SAR干渉画像に含まれるさまざまなノイズ の影響を極力排除して,地すべり性地表変動域を検出し た.本稿では,既報で示せなかったその変動域のSAR 干渉画像を,地形・地質的特徴の概略とともに示した. また,その範囲を分かりやすくするため,既報の検出基 準に基づいた赤枠の多角形をSAR干渉画像に重ねた. 本稿で示した変動域については,既報で述べたよう に,必ずしも現地の調査や観測で変動を全て認定してい るのではない.ID の 6 番と 8 番のように,変動の向きと 斜面方位が整合しないような,より検討の余地のある変 動域もある.以上のような不確定な要素が含まれている ことを理解されたい. 謝辞 使用したALOS/PALSAR データの所有権は,経済産業省お よび宇宙航空研究開発機構(JAXA)にある.また,これらの データは,JAXA との共同研究協定に基づき国土地理院が提 供を受けている.本稿では,JAXA 土砂ワーキンググループ 課題別研究計画の枠組みに基づき,既報で利用した国土地理 院の解析結果を利用し,その解析には国土地理院の宮原伐折 羅課長にお世話になった. 気象庁 (2011):4 月 11 日 福島県浜通りの地震−近地強震波 形による震源過程解析(暫定) http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/sourcepro-cess/event/20110411near.pdf 佐藤 浩・宮原伐折羅・岡谷隆基・小荒井衛・関口辰夫・八 木浩司(2014):SAR 干渉画像で検出した 2011 年東北地 方太平洋沖地震に関わる地すべり性地表変動, 日本地す べり学会誌, 51, 41-49. 佐藤 浩・岡谷隆基・山中雅之・鈴木 啓・関口辰夫・小荒 井 衛・ 宮 原 伐 折 羅・ 神 谷 泉・ 原 哲 也・ 八 木 浩 司 (2012):SAR干渉画像で捉えた東北地方太平洋沖地震に よる地すべり性地表変動, 日本地理学会発表要旨集, 参考文献 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2012s/0/2012s_ 100227/_pdf 産業技術総合研究所地質調査総合センター(編)(2014):20 万分の1 日本シームレス地質図データベース(2014 年 1 月14日版),産業技術総合研究所地質調査総合センター. 防災科学技術研究所 (2013):地すべり地形分布図データベー ス(2013年11月6日公開版).
Wartman, J., Dunham. L., Tiwari, B., and Pradel, D. (2013): Landslides in eastern Honshu induced by the 2011 off the Pacific Coast of Tohoku Earthquake, Bulletin of the Seis-mological Society of America, 103, 1503-1521.
Fig. 16 SAR interferometry image (path 411) at location ID=22.