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358 医学教育第 45 巻 第 5 号 2014 年 10 月 Conclusion: We believe that the educational session about sexual minorities is meaningful for and valued by medical s

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(1)

医学教育 2014,45(5):357~362

短 報

性的マイノリティについての講義を受けて医学科 1 年生が

学んだこと:感想カードを用いた質的研究

青 木   昭 子

*1

 榊 原   秀 也

*2

 長 嶋   洋 治

*3

星 野   慎 二

*4

 向 原     圭

*5

 後 藤   英 司

*6 要旨: 目的:医学科 1 年生が性的マイノリティ(SM)についての 90 分の講義から何を学んだか検討した. 対象と方法:2012 年 7 月医学部 1 年生を対象に,内科医が性差について,産婦人科医が生殖医学,性感染症について, SM 支援団体代表者が同性愛をカミングアウトした高校生の語り(DVD 動画)を流し,SM に対する偏見やカミングアウ トについて講義した.授業後に学生が提出した感想カードの自由記載を質的に分析した. 結果:多くの学生が SM は稀ではないことに驚き,自分自身や社会における偏見や差別をなくすための知識の重要性に言 及していた. 結語:今後は SM の人たちが必要としている医療を学べる授業を考えていきたい. キーワード:性的マイノリティ,医学部学生,講義

Learning from a lecture about sexual minorities for first-year medical students

Akiko Aoki*1 Hideya Sakakibara*2 Youji Nagashima*3

Shinji Hoshino*4 Kei Mukaihara*5 Eiji Goto*6 Abstract

Objectives: The aim of this study was to explore the first︲year medical studentsʼ perception of their learning from a lecture about sexual minorities.

Methods: In September 2012, a physician and a gynecologist first lectured about sex differences, reproductive medicine, and sexually transmitted infections. Next, the representative of a support group for a sexual minority talked about the prejudice and discrimination toward sexual minorities. He showed a video about a high school student who had publicity revealed his sexual orientation. We analyzed the studentsʼ reports by the qualitative data analysis method Step Coding and Theorization. The studentsʼ descriptions were extracted, coded by contents, and then grouped into several categories.

Results: Many students were surprised at the percentage of persons belonging to a sexual minority. By watching the DVD they came to realize that homosexuals are just like other persons in most ways. They mentioned the need for correct knowledge about sexual minorities.

*1 東京医科大学八王子医療センター総合診療科,Tokyo Medical University Hachioji Medical Center, General medicine

[〒 193︲0998 東京都八王子市館町 1163]

*2 横浜市立大学医学部産婦人科,School of Medicine Obstetrics and Gynecology, Yokohama City University *3 横浜市立大学医学部分子病理,School of Medicine Pathology, Yokohama City University

*4 特定非営利活動法人 SHIP 代表,SHIP authorized NPO

*5 国立病院機構長崎医療センター,National Hospital Organization Nagasaki Medical Center, General internal medicine *6 横浜市立大学医学部医学教育学,School of Medicine Medical education, Yokohama City University

(2)

背景と目的

 性的マイノリティとは社会のなかで「普通」

「あ

るべき」とされている「性のあり方」に当てはま

ら な い 人 た ち の 総 称 で, 同 性 愛 者 Lesbian,

Gay, 両 性 愛 者 Bisexual, 性 同 一 性 障 害 者

Transgender などが含まれ,その頭文字をとっ

て LGBT と呼ばれることもある.現代社会にお

いて LGBT の人たちは“マイノリティ”ではな

く,2012 年に日本で実施されたインターネット

調査では人口の 5.2%と報告され

1)

,すべての医

療者が性的マイノリティのケアに関わる可能性が

あると言える.しかし医療者の性的マイノリティ

についての知識や態度は必ずしも適切ではなく,

日本でも,米国でも ケアの場で差別を感じた

り,不愉快な思いをしたりした LGBT 患者は少

なくないという

1, 2)

 すべての医療者や将来医療に関わる学生に対し

て性的マイノリティに関する教育が重要である.

しかし日本の医学部教育の必須項目を列挙した

「医学教育モデル・コア・カリキュラム」

3)

は,AIDS,性行為感染症の項目はあるが,性的

マイノリティや LGBT を総括した項目は含まれ

ていない.卒前,卒後を通して性的マイノリティ

について学ぶ機会は少ないと思われる.

 我々は性差や性自認,性的マイノリティ,生殖

医学について,医学生が医学的に正しい知識を習

得するとともに,性的マイノリティに対する偏見

をなくすことを目的に,平成 18 年から内科,産

婦人科医師と性的マイノリティの当事者が協力し

て講義を実施している.講義の内容を学生がどの

ように受け止めているか,上記の目的を達成する

ため,今度どのような授業をすべきかを検討する

ため,平成 24 年度の授業感想カードの内容を解

析したので報告する.

対象と方法

 横浜市立大学の医学部 1 年生を対象とした医学

入門講座(5~7 月,90 分× 15 回)の 1 回で性的

マイノリティについての授業を実施した.平成

24 年 7 月 12 日に実施した授業の構成を表 1 に示

す. 受 講 者 は 医 学 部 1 年 生 187 人( 医 学 科 87

人,看護学科 100 人),国際総合科学部生 1 人,

高大連携の高校生 10 人の合計 198 人であった.

授業終了後,学生は A5 判のカード(氏名,学籍

番号記入欄と罫線のない感想記入欄)に授業に対

する感想を自由に記載し提出した.

 198 人の感想カードのうち,今回は医学科学生

の 87 人の記載をデータ分析手法 Steps for coding

and theorization (SCAT)

4)

を用いて解析した.

SCAT は大谷が開発した質的データ分析のため

の手法で,観察記録や面接記録などの言語データ

をセグメント化した後,4 つのステップのコー

ディングを行い,ストーリー・ラインと理論を記

述するものである.4 ステップとは,(1) データ

の中の着目すべき語句を抽出,(2) それをデータ

外の語句に変換,(3) (2)を説明する背景や原

因,結果などの概念を作成,(4)そこから浮き上

Conclusion: We believe that the educational session about sexual minorities is meaningful for and valued by medical students, and medical care for sexual minorities should be taught to medical students.

Key words: sexual minority, medical student, lecture

表 1 90 分授業の構成

担当者 講義時間 講義内容 1 内科医 30 分 生物学的な性(外性器と内性器,染色体と遺伝子),心理的な性(性同一性障害), 社会的な性(ジェンダールール,男女共同参画),性指向(同性愛,両性愛) 2 性的マイノリティ(SM) 支援団体代表者 30 分 SM とは,SM が経験する困難,支援の必要性と支援団体の紹介,同性愛をカミ ングアウトした高校生の語り(DVD 動画) 3 産婦人科医 30 分 2 次性徴と月経と妊娠の仕組み,避妊と中絶,望まない妊娠・10 代の妊娠,性感 染症 sexually transmitted infection(STI)

(3)

がるテーマ・構成概念を記述,である.本研究で

は感想カードに記載された文章を内容ごとに区

切って(セグメント化),エクセルに入力した.

各セグメントについて 1 名の研究者が(1)~(4)

のコーディング作業を行った後,他の 2 名の共同

研究者が結果をチェックし,コーディングの調整

を行った.

 (4)の構成概念をもとにカテゴリに分類し,そ

の後,ストーリー・ラインを全研究者で作成し

た.

 倫理的配慮:授業に出席した医学科学生に文書

で本研究についての説明書を配布し,感想カード

の利用に同意できない場合は,研究責任者に連絡

することとした.説明書には同意しない場合も不

利益を被らないことを明記した.本研究は横浜市立

大学倫理委員会で承認された(番号 A140123015).

結 果

 87 枚の感想カードからセグメントを抽出し,

コーディングを行った.(4)の構成概念をもとに

5 つカテゴリに分類した.5 つのカテゴリと記載

の一部を示す(表 2).

カテゴリ 1:性的マイノリティが稀ではないこ

と」に対する驚き・思い

 学生たちは,講義で性的マイノリティは稀では

ないことを聞き,自分の周囲にも性的マイノリ

ティがいるという認識を持つとともに,これまで

ほとんど出会うことがなかったのは,性的マイノ

リティの人たちがカミングアウトしない,できな

いためではないかと考え,さらにカミングアウト

の困難さに言及していた.

カテゴリ 2:自分自身の偏見や誤解の自覚

 性的マイノリティに対して偏見を持っていたこ

とや,自分の認識が違っていたことに気づき,変

えようと考える学生がいた.一方,偏見を持って

しまうと自覚する学生や「抵抗を感じる」と記載

した学生もいた.

カテゴリ 3:社会の現状,偏見や差別の認識とど

のような社会になってほしいか

 複数の学生が,性的マイノリティの理解が不足

し,偏見があることを述べるとともに,そのよう

な現状を変える必要があると記載していた.

カテゴリ 4:問題解決の方法

 具体的な記載はなかったが,複数の学生が知識

と教育の必要性に言及していた.「同じ境遇の仲

間を作る」という提案,国としての対策が必要と

いう記載もあった.

カテゴリ 5:医療者としての学び

 少数であったが,医学科の学生として,将来の

医療者として,今回の授業をどのようにとらえた

かの記載があった.

 5 つのカテゴリをまとめたストーリー・ライン

は以下のとおりである.

 医学科 1 年生の性的マイノリティに対する知識

は十分ではなく,自分たちの周囲にも悩みを抱え

ながら生活している性的マイノリティの人がいる

ことを初めて認識する学生が多かった.授業を受

けることで性的マイノリティに対する認識が変わ

り,偏見をなくしたいと記載する学生がいる一

方,率直な気持ちとして,同性愛に対する抵抗や

偏見をなくすことは難しいと書いた学生もいた.

学生たちは偏見や差別のない社会を作る必要性を

記載していたが,どうすればそのような変革がで

きるのかを考えた記載は少なかった.

考 察

 我々の大学では 6 年間のカリキュラムで独立し

た項目として性的マイノリティに関する授業はこ

の 1 回のみである.性についての幅広い知識を盛

り込んでいるため,概論の域をでないが,講師と

して招いた性的マイノリティ支援団体代表者が,

DVD に登場する高校生の語りを解説すること

で,当事者の思いがより伝わりやすくなっている

と考えている.学生の感想は授業に対して肯定的

なものが多く,実施する意義はあると考えた.

 疾病や障害などの何らかの生活上の課題をもっ

た,いわゆる「当事者」と呼ばれる人たちが自ら

の体験を語る授業は当事者参加型授業とも呼ば

れ,学生の考え方に影響を与え,ひいては実習態

度が変容させる可能性があることが報告されてい

5)

.本授業においても当事者の語りを聴くこと

で,多くの学生が自分自身の誤解や偏見に気づ

(4)

表 2 SCAT による感想カード記載の分析(1)

テクスト <1> テクスト中の注 目すべき語句 <2> <1> の語句 の言いかえ <3> <2> を説明 するテクス ト外の概念 <4> テーマ・構成概念 1 人口の 3 ~ 5%というのは決して少ない人数ではないので,必 ず私たちの周囲にもいるのだと思う. 人口の 3 ~ 5% SM の頻度 SM は稀で はなく,自 分の周りに もいるはず 【 カ テ ゴ リ 1】 性 的マイノリティが 稀ではないことに 対する驚き・思い 講義で SM は稀で は な い こ と を 聞 き,自分の周囲に も SM の人たちが いるはずだという 認識を持つととも に,これまでほと んど出会うことが な か っ た の は, SM の人たちがカ ミングアウトしな い,できないため で は な い か と 考 え,さらにカミン グアウトの困難さ に言及している. 2 私は同性に対して性的魅力を感じたことはないが,同性愛者が 40 人に 1 人もいることに衝撃を受けた. 同 性 愛,40 人 に 1 人 SM の頻度 3 今まで生きてきた中で男は男で女は女というのが当たり前だと 思っていて,遺伝子的に男女に分けられない人や同性愛者など の人がいることは知ってはいたが,自分からは遠い話だと思っ ていた.だけど今回の授業でそういう人たちはこの社会に存在 している訳だし,思ったより多いということを知った. 当たり前,自分 からは遠い話, 思ったより多い SM の頻度 4 同性愛者の割合が 5%ということは学年に何人かいるというこ とで,他人事ではないと思った. 同性愛者の割合 SM の頻度 5 同性愛について考えたことがなかったので,詳しいことを知る ことができて良かった.私の周りには SM はいないと思ってい たのですが,クラスに 1,2 人いると聞いて驚きました. 同性愛,いない と思っていた, クラスに 1, 2 人 SM の頻度 6 同性愛者の頻度が想像していたよりも多くてとても驚いた. 同性愛者,多く て驚いた SM の頻度 7 ゲイの人が 1 クラスに 1 人の割合でいるなんて驚きました. ゲイ,クラスに 1 人の割合 SM の頻度 8 私の高校の友人の一人がゲイであったが,会ったことがあるの はその人だけである.従って多くの SM の人は他の人に伝えら れないでいるのではないかと思う. 高校の友人,ゲ イ,伝えられな いでいる カミングア ウトできな い人たち 会ったこと がないのは 少ないから で は な い. カミングア ウトの困難 さの気づき. 9 性的マイノリティの人が 40 人に 1,2 人いるということで,私 が今まで会った人の中にも実はいるんだろうなと思うと,なか なかカミングアウトできないマイノリティーの辛さを感じまし た. 染色体,カミン グアウト,マイ ノリティーのつ らさ カミングア ウトできな い人たち 10 高校は男子校だったが,ゲイのような人が 2 人いました.当時は 偏見をもっていてその人たちに近づかないようにしていました. 高校,ゲイ,偏 見 自分自身の 偏見 偏見の自覚 【 カ テ ゴ リ 2】 自 分自身の偏見や誤 解の自覚 SM に対して偏見 を持っていたこと や,自分の認識が 違っていたことに 気づき,変えよう と考える学生がい た.一方,偏見を 持ってしまうと自 覚する学生や「抵 抗を感じる」と記 載 し た 学 生 も い た. 11 同性愛者に対して少なからず偏見を抱いていた.無意識のうち に同性愛者は別枠というようなとらえ方をしていた.しかし高 校生の動画を見てゲイの人が自分の人生に誇りを持って生きて いる姿が素晴らしいと思った. 同性愛に対して 偏見,別枠,高 校生の動画,人 生に誇り 自分自身の 偏見 偏見の自覚 とカミング アウトした 高校生に対 する賞賛 12 なんとなく自分には関係ないどこか遠い話のような気がしてい ましたが,自分にもかなり関わりがあるように感じることがで きました.性同一性障害に対してはまだ少し偏見がありますが, 少しずつ解消するよう意識改革をしたいと思います. 偏見,意識改革 自分自身の 偏見 偏見の自覚 と新しい認 識 13 ゲイの人は不幸という偏見がどこかにあったが,高校生の動画 を見て堂々と強く生きている人もいるんだと実感した. ゲイ,不幸,偏 見,高校生,堂々 と強く生きる 自分自身の 偏見 偏見の自覚 と新しい認 識 14 同性愛についてはあまり良い印象をもっていなかったというの が正直な感想です.しかし動画の中に明るく話している子がい て,また同性愛について悩んで孤独になっている人がいると聞 いて,偏見を持ってはいけないと思いました. 同性愛,良い印 象を持っていな かった,偏見 自分自身の 偏見 偏 見 の 自 覚,高校生 に対する共 感 15 動画のなかで「ゲイ」が自分の全てではなく自分の性格の一つ として「ゲイ」があるだけだという話を聞いて,今まで自分は ゲイであることが大きな要素と感じていたことが間違いである ことに気づいた.自分のように誤解している多くの人にわかっ てもらいたいと切実に思った ゲイ,性格,誤 解 ゲイに対す る認識の変 化 高校生に対 す る 共 感, 認識の変化

(5)

16 同性愛が特別なものではないと言われても正直強い抵抗を感じ るし,その分け目は人それぞれである面もあるのではと思った 同性愛,抵抗を 感じる 心理的な抵 抗 17 芸能界にはゲイやオカマ(キャラ)の人が沢山いるのでその存 在は知られていると思うが,実際に知人がゲイだとわかったら 偏見をもってしまう. 芸能界,知人, ゲイ,偏見 自分自身の 偏見 偏見の自覚 18 アメリカの映画などではゲイやレズビアンがよく登場するの で,理解者も多くなっていると思うが,ゲイやレズビアンの人 たちがカミングアウトしやすい世の中であるとは言えないと思 う. ア メ リ カ の 映 画,カミングア ウトしやすい世 の中ではない カミングア ウトの困難 さ カミングア ウトについ て 【 カ テ ゴ リ 3】 社 会の現状,偏見や 差別の認識とどの ような社会になっ てほしいか 偏見や差別の認識 とどのような社会 になってほしいか 複数の学生が,性 的マイノリティの 理解が不足し,偏 見があることを述 べるとともに,そ のような現状を変 える必要があると 記載していた. 19 自分が同性愛者であることを周囲に言うことができず苦しんで いる人が大勢いると思う.同性愛に対する偏見が少なくなり, 同性愛者が住みやすい世の中になっていけばよいと思った. 周囲に言うこと ができず苦しん でいる,偏見, 住みやすい世の 中 カミングア ウトの困難 さ カミングア ウト.偏見 の存在とそ の克服 20 性的マイノリティに関する認識が不十分だったり,偏見があっ たりすると思う.性的マイノリティの人に「同性愛」というレッ テルを張って,その人を見てしまうのはある程度は仕方ないが, 社会の認識が変わることでレッテルを乗り越えた人と人の付き 合いを成立させることができると思った. 認識が不十分, 偏見,レッテル, 認識,人の付き 合合い 仕方がない と こ ろ と, 乗り越える べきところ 現状の克服 21 昔は同性愛が治療対象になっていたことに驚いたが,その頃に 根付いた偏見が今も残っているのだろうか.いかに偏見を乗り 越えて同性愛者と付き合うかが重要な問題だろう. 昔は治療対象, 根付いた偏見, 乗り越えて 昔からの偏 見 偏見の存在 とその克服 22 グレーゾーンの人たちが生きやすい寛容な世の中となり,お互 いの性的指向を認めあえるようになればよいと思います.(普 通に)当てはまらない人を排除することのない世の中にしたい と思います. 寛容な世の中, 排除することの ない世の中 寛容な世の 中 あるべき社 会 23 性的マイノリティの人が一人で抱え込まず,周りの人に相談で きる環境を作らなければいけないと思った. 抱え込まず,相 談できる環境 相談の必要 性 あるべき社 会 24 皆が正しい知識を持って自分らしく生きられる社会に変える必 要がある. 正しい知識,自 分らしく生きら れる社会 知識の必要 性 性的マイノ リティの人 たちに対す る偏見がな い社会を作 り,住みや すい世の中 にするため には 【 カ テ ゴ リ 4】 問 題解決の方法 具体的な記載はな かったが,複数の 学生が知識と教育 の必要性に言及し ていた.「同じ境 遇の仲間を作る」 という提案,国と しての対策が必要 という記載もあっ た. 25 きちんと教育をして正しい知識をもつことが性的マイノリティ の人たちが孤立しないきっかけになっていくと思います. 正しい知識,孤 立しない 知識の必要 性 26 性的マイノリティについての知識が必要で,教育が進むとよい と思う. 知識と教育 知識と教育 28 国として取り組んでいくべきであると強く思った. 国として取り組 む 国の取り組 み 29 どんな領域でもマイノリティに属する人は同じ境遇の仲間を作 ることが一番大切だと思った. 同じ境遇の仲間 仲間を作る 30 インターセクシャルの話は漫画で読んだことがあったが,医学 的に話が聞けて良かった.医療者は色々な人に会って関わるの で,よく知り理解していなくてはならないと思った. 医学的な話,医 療者 医学科学生 としての感 想 【 カ テ ゴ リ 5】 医 療者としての学び 医学科の学生とし て,将来の医療者 として,今回の授 業をどのようにと らえたかの記載が あった. 31 医師は様々な人とコミュニケーションをとる職業なので性的マ イノリティの人とも会うかもしれない.そういう時のためにき ちんと勉強していきたい. 医師,コミュニ ケーションを取 る職業 32 医療従事者になるにあたって性的マイノリティの人たちへの偏 見をなくしていかなければならない. 医療従事者,偏 見 33 これから医療関係者になるにあたってこういうこと(インター セックスや同性愛のこと)を知れてよかった. 医療関係者

(6)

き,これまでの体験を振り返り,動画に登場した

高校生の言葉に感銘を受けていた.短時間の授業

の中で教員が同じ内容を伝達するよりも当事者の

語りが大きな影響を与えたのではないかと考え

た.

 カナダと米国の医学校を対象とした調査では 4

年間の課程で LGBT 関連の授業が全くない学校

は約 7%(138 校中 9 校)のみで,十分な教育が

行われているように見えるが,合計授業時間の中

央値は約 5 時間と少なく,HIV 以外の LGBT の

医療問題についてはカリキュラムに入っていない

学校が多いと報告されている

6)

.この調査では

LGBT に関する重要な医療問題として,「LGBT

のひとたちが医療を受けるにあたっての障壁」

「飲

酒・喫煙・薬物依存の問題」「安全なセックス」

など 16 項目が抽出されている.臨床実習前の学

生を対象に,LGBT 患者の医療問題やトランス

ジェンダー患者へのホルモン治療などについての

講義と模擬患者を対象とした医療面接実習の授業

を実施し,その意義を検討した報告がなされてい

7)

.我々も LGBT の医療について,より専門的

な内容の授業が必要であると考えている.

 Sanchez ら

8)

は学生が臨床実習で LGBT 患者

に出会うことでより理解が高まると述べている

が,現在の日本の診療現場でカミングアウトした

LGBT 患者さんを学生が担当する機会は少ない

と考えられ,今回のような講義を実施する必要が

あると考えられた.

 今回の授業では性的マイノリティの人たちが必

要とする医療や福祉に関する内容にはほとんど触

れなかったが,「医療従事者になるにあたって性

的マイノリティの人たちへの偏見をなくしていか

なければならない」,「医療者は色々な人に会って

関わるので,(インターセクシャルについて)よ

く知り理解していなくてはならないと思った」な

ど数人の学生が,医学科学生としての抱負を述べ

ていた.性的マイノリティの患者に偏見なくケア

を提供できることはもちろん,必要な情報を収集

しニーズにあった医療を提供できることを目標と

したより授業内容が必要と考えている.

文 献

1) 東洋経済 on line, 変わりゆく世界の性 LGBT 最

前線 http://toyokeizai.net/articles/︲/14514 (2014

年 10 月確認)

2) Eliason MJ, Dibble SL, Robertson PA. Lesbian,

gay, bisexual, and transgender (LBGT)

physiciansʼ experiences in the workplace. J

Homosexuality 2011; 58: 1355︲71.

3) 医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成 22

年 度 改 訂 版 ):http://www.mext.go.jp/b_menu/

shingi/chousa/koutou/033︲1/toushin/1304433.

htm

4) 大谷尚.4 ステップコーディングによる質的デー

タ分析手法 SCAT の提案―着手しやすく小規模

データにも適用可能な理論化の手続き―. 名古屋

大学大学院教育発達科学研究科紀要.2008; 54:

27︲44.

5) 柴田貴美子.病や障害を抱えた当事者が語る

「当事者参加型授業」の現状と教育効果に関す

る文献レビュー.文京学院大学保健医療技術学

部紀要 2010; 3: 23︲31.

6) Obedin︲Maliver J, Goldsmith ES, Stewart L, et

al. Lesbian, gay, bisexual, and transgender︲

related content in undergraduate medical

education. JAMA 2011; S306: 971︲7.

7) Sequeira GM, Chakraborti C, Panunti BA.

Inte-grating lesbian, gay, bisexual, and transgender

(LGBT) content into undergraduate medical

school curricula: a qualitative study. The

Ochsner Journal 2012; 12: 379︲82.

8) Sanchez NF, Rabatin J, Sanchez JP, et al.

Medical studentsʼ ability to care for lesbian,

gay, bisexual, and transgendered patients. Fam

Med 2006; 38: 21︲7.

表 1 90 分授業の構成 担当者 講義時間 講義内容 1 内科医 30 分 生物学的な性(外性器と内性器,染色体と遺伝子),心理的な性(性同一性障害), 社会的な性(ジェンダールール,男女共同参画),性指向(同性愛,両性愛) 2  性的マイノリティ(SM) 支援団体代表者 30 分 SM とは,SM が経験する困難,支援の必要性と支援団体の紹介,同性愛をカミングアウトした高校生の語り(DVD 動画)  3 産婦人科医 30 分 2 次性徴と月経と妊娠の仕組み,避妊と中絶,望まない妊娠・10 代の妊娠,性感
表 2 SCAT による感想カード記載の分析(1) テクスト &lt;1&gt; テクスト中の注 目すべき語句 &lt;2&gt;&lt;1&gt; の語句の言いかえ &lt;3&gt;&lt;2&gt; を説明するテクス ト外の概念 &lt;4&gt; テーマ・構成概念 1 人口の 3 ~ 5%というのは決して少ない人数ではないので,必 ず私たちの周囲にもいるのだと思う. 人口の 3 ~ 5% SM の頻度 SM は稀で はなく,自 分の周りに もいるはず 【 カ テ ゴ リ 1】 性的マイノリティが稀で

参照

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