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本誌に関する問合せ先みずほ総合研究所 調査本部アジア調査部香港駐在稲垣博史 * 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本 資料は 当社が

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2007 年 11 月 15 日発行

最近の香港ドル切り上げ圧力について

~為替政策変更は依然時期尚早か~

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* 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本 資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証する ものではありません。また、本資料に記載された内容は、予告なしに変更されることもあります。 本誌に関する問合せ先 みずほ総合研究所㈱ 調査本部 アジア調査部 香港駐在 稲垣博史 ℡ 852-2103-3590 E-mail hiroshi.inagaki@mizuho-cb.com

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- 1 - はじめに 2007 年 10 月終盤、しばらく影を潜めていた香港の為替政策変更観測(方向性は香港ドル の切り上げ)が、にわかに台頭してきた。以下、時系列で見てゆきたい。 (1)香港ドル売り介入の開始 個人による香港株式投資の解禁が8月 20 日に中国政府により示されたことを手掛かりに、 香港株の先高観が生まれたことから、このところ香港では海外からの資金流入が続いてき た。そうしたなか、10 月 23 日に予定されていたアリババドットコムの大型IPOを前に、 一時的1に資金流入が急増した。香港は、通貨を1米ドル=7.75~7.85 香港ドルという狭い 範囲で連動させる為替政策を採用しているが、前述の大型IPOを背景に香港ドルが変動 幅の上限付近に到達した(図表1)。これと同時に香港ドルの切り上げ観測が高まり、香 港ドルは先物で急上昇した。 図表 1 香港ドルの対米ドル為替レート (香港ドル/米ドル) 7.72 7.73 7.74 7.75 7.76 7.77 7.78 7.79 10/02 10/04 10/06 10/09 10/11 10/13 10/16 10/18 10/22 10/24 10/26 10/29 10/31 11/02 11/05 11/07 11/09 11/12 6ヶ月先物 スポット 上限 (資料)香港銀行公会 (年・月・日) そしてIPO当日の 10 月 23 日、為替レートが1米ドル=7.75 香港ドルに到達したこと で、香港金融管理局(以下 HKMA)は7億 7,500 万香港ドル相当の香港ドル売り・米ドル買 いの市場介入を実施した。香港ドル売り介入は約2年ぶりである。HKMA は、同月 25 日にも 再び7億 7,500 万ドルの米ドル買い介入を実施した。ロイター通信2は、「人民元が上昇し 米ドルが下落していることから香港の輸入物価が上昇しており、香港はいずれ、香港ドル の上昇を容認するため米ドルとのペッグ制廃止または目標相場圏の拡大に迫られるとの見 1 中国企業が香港で資金を調達(IPO、公募増資)すると、一時的に大量の資金が香港に流入する。た だし調達された香港ドルは、その中国企業が中国本土や米国など香港以外の地域での事業に資金を充て るのであれば、まもなく換金のため売却される。したがって、IPOや公募増資に伴う資金流入は、中 期的にみればほとんど香港ドル高の要因とはならないはずである。 2 『香港金融管理局、香港ドル売り介入を実施』(「ロイター通信」2007 年 10 月 23 日)

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方が一部にある」と報じた。 (2)HKMA 総裁の早期退任説の流布 消息筋の話しとして 10 月 27 日に伝えられたところによると3、これまで現行為替政策の 維持を主張してきたジョセフ・ヤム HKMA 総裁について、一部で 12 年まで職に止めるべき との意見が出ていたにもかかわらず、政府は 09 年に退任させる方向という。早期に退任さ せる理由については明らかではないが、為替政策の変更に向けた地ならしとみる向きもあ るようだ。 (3)HSBC 幹部の政策変更を促す発言 10 月 29 日に報じられたところによると4、香港最大手行である HSBC の幹部5は、香港ドル は香港経済の実態をよく反映する通貨に連動させるべきだが、中国経済の急発展により香 港経済と米国経済の連動性が低下していると発言した。要すれば、米ドルではなく人民元 に香港ドルを連動させるべきタイミングが近付いている、ということである。さらに同幹 部は、10 年以内に人民元が交換可能な通貨になると見込まれ、そのときこそ香港ドルが変 わるべきタイミングとし、現行政策変更の検討を開始するよう香港政府に促している。 (4)投機筋の大規模な香港ドル買い・HKMA の防戦売り 香港政府が自らの為替政策変更を中国政府に打診したとのメドレー・グローバル・アド バイザーズのレポートが 10 月 30 日に発表された6ことや、10 月 31 日の米利下げ観測など を手がかりに、31 日に市場で香港ドル買いが進展。主な買い手はヘッジファンドとみられ ている。現行為替政策を維持するため、HKMA は5度にわたり合計 78 億 2,800 万香港ドルも の大規模な香港ドル売り介入を行なった。 結局、米国の政策金利であるFFレートは 10 月 31 日に 4.75%から 4.5%に 0.25 ポイン ト引き下げられたが、本来これと概ね連動するはずの HIBOR O/N(香港銀行間市場の翌日物 金利)は、HKMA による介入で香港ドルがだぶついたため急低下。11 月 12 日午前 11 時時点 で約 0.34%となっている。 政策変更に関する当研究所の従来の見解 みずほ総合研究所ではこれまで、今後 10 年以内に香港が現行為替政策を変更する可能性 はあるが、ここ2~3年の話しではなく、おそらく5年後(12 年)以降ぐらいに段階的に 行われるであろうと主張してきた7。変更がありうると考える理由は、①景気が(従来のよ うな対米輸出ではなく、中国経済の発展によって)中国内需との連動を強めれば、金利を

3 Yam tipped to step down (“The Standard” 2007 年 10 月 27 日)。なお、あくまで 09 年に退任させる方

向という観測記事が出たということであり、実際に退任することが確定したわけではない。

4 Rethink US$ peg, top banker urges (“The Standard” 2007 年 10 月 29 日) 5 ピーター・ウォン専務(executive director)。

6 $7.8b cash injection (“The Standard” 2007 年 11 月1日)

7 『人民元上昇と香港の通貨・経済~大きな影響はない見通し~』(「みずほアジアインサイト」2007 年 2

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- 3 - 米国に合わせることによる弊害が増大する8、②ユーロ・人民元の台頭で米ドル連動にメリ ットを感じる企業・投資家の割合が低下、将来的には米ドルよりも人民元連動を望む声が 多くなる可能性がある、という2点である。 では、なぜ制度変更は5年後以降なのか。まず、人民元の対米ドル上昇ペースが年4~ 5%程度という前提を置けば、それだけでマクロ経済に大きな影響が及ぶほどの輸入イン フレは起こらないと考えられる。従って、香港が直ちに為替政策の変更を迫られていると いうことにはならず、仮に為替政策を変更する場合でも長期的な視野に立脚して行なうで あろう。もしそうならば、複数の理由により(図表2)、当面は為替政策を変更しない方 が得策と判断される。人民元の対米ドル上昇ペースが年4~5%程度で、かつ 05 年の改革 実施前の人民元が米ドルに対し 30%程度割安であったと仮定すると、人民元の上昇が一服 するのは概ね4~5年後とみられ、香港の為替政策変更はおそらくその後になるであろう と考えられた(図表2③)。 図表 2 香港が当面為替政策を変更しない理由 ① 香港の景気動向に及ぼす米国経済の影響は依然大きい。人民元取引の自由化はまだ 始まったばかりであり、人民元需要の飛躍的増大はまだ視野に入っていない。 →香港と中国のさらなる経済一体化、人民元取引の自由化進展が必要 ② 香港当局はすでに再三為替政策を変更しない旨表明しており、それを前提にビジネ スが行なわれている以上、急に変更すれば国際金融センターとしての信認を失う。 →変更に向けた市場との対話が必要 ③ 人民元上昇が続くなかで為替政策を変更すると、取引が自由化されていない人民元 の代理通貨として、香港ドルが投機筋に狙われる。 →足元の人民元上昇が一服する必要 (資料)みずほ総合研究所 さて、為替政策変更が足元でにわかに注目を集めているが、上記の当社見解を大きく修 正しなければならないほどの、状況変化があったのだろうか。 政策変更の時期は早まったか ここ数ヶ月のあいだに、いくつか注目すべき状況変化がみられたことは事実であろう。 まず輸入インフレの問題である。当研究所は前述の通り、年に4~5%程度人民元が米 ドルに対して上昇しても(その他の条件は考慮せず)、香港経済に大きな影響は及ばない と考えてきた。しかし、このところの人民元上昇ペースは年率換算で5%を超え続け、さ らに足元で相当加速している(図表3)。中国でインフレ懸念が高まっていることを考慮 すれば、中国政府が人民元上昇ペースをこのまま高めに維持することも考えられる。 これに加え、原油などの鉱産物価格もいっそう上昇しており、さらに主要通貨に対する 米ドルの先安観も台頭している。香港においても、08 年のインフレはそれなりに高まると 8 この部分では、前出の HSBC 幹部と基本的な認識は同じである。

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みるべきであろう。IMFは、香港の 07 年の消費者物価上昇率を 2.0%と見込んでいるの に対し、08 年は 3.2%に高まると予測している(図表4)。IMFの見通し発表後に確認 された、HKMA による香港ドル売り介入や原油価格上昇など最近の金融・物価情勢を踏まえ れば、さらに高まる可能性がある。 図表 3 人民元の対ドル為替レートの上昇ペース(年率) 1.1 2.6 1.1 8.6 4.3 5.0 3.8 6.0 5.4 10.4 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 05 06 07 (年・四半期) (%) 人民元制度改革 05年7月21日 (注)1.前期末値と当期末値の変化率を年率換算。 2.直近値は 07 年 11 月9日まで。 (資料)CEIC 図表 4 消費者物価上昇率 11.3 10.2 10.3 3.2 2.0 ▲ 6 ▲ 4 ▲ 20 2 4 6 8 10 12 14 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 (年) (%) 予測 (注)07・08年はIMFによる予測(07年10月時点)。 (資料)香港政府統計處、IMF 一方、貯蓄預金の金利は現在2%程度である。資金のだぶつきから今後さらに低下する かもしれないが、仮に 08 年も同程度の水準で推移するとしても、実質金利はおそらくマイ ナスになる(預金金利は消費者物価上昇率を下回る)。すなわち、預金残高の実質的な価 値は時間の経過とともに目減りしてゆくことになり、貯蓄を取り崩して生活する高齢者な どにとっては厳しい時期となる。家計には、預金よりも株式投資、不動産投資、消費によ

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- 5 - り資金を振り向ける誘引が働くため、景気は過熱感を強めそうである。 なお、株式市場は足元で既に過熱感を強めている。ハンセン総合指数構成銘柄の株価収 益率(PER)は、ついに 20 倍を突破した(図表5)。特に過熱感があるのはH株、レッ ドチップといった中国関連銘柄で、PERはかつてない高水準で推移している。そのうえ、 実質金利がマイナスに突入すれば、株式市場はますます過熱感を強める可能性がある。一 般論で言えば株価上昇は悪いことではないが、現局面においては、景気をさらに過熱させ るリスクや、将来的な米ドルの反転上昇・中国経済の下方屈折といった局面における株価 急落リスクを大きくし過ぎているように見える。 図表 5 ハンセン総合指数構成銘柄のPER 5 10 15 20 25 30 35 40 02/01 02/05 02/09 03/01 03/05 03/09 04/01 04/05 04/09 05/01 05/05 05/09 06/01 06/05 06/09 07/01 07/05 07/09 (年・月) (倍) 総合指数 H株指数 レッドチップ指数 (注)月末値。ただし07年11月のデータは9日時点。 (資料)CEIC 為替政策の修正による香港ドルの事実上の切り上げは、資金流入に伴う景気過熱を政策 的に回避する有力な一手段であることは間違いない。HSBC 幹部に検討開始を促されるまで もなく、実際には香港政府は、政策変更に向けた様々な議論やシミュレーションを、既に 重ねていると推測される。 しかし図表2でみたような問題は、一部を除き現時点ではあまり解消されておらず、実 際問題として、香港政府は為替政策の変更に踏み切りづらい。少なくとも、政策変更を直 ちにしたいとは思っていないであろう。無論、インフレ高進から政策変更に追い込まれる という可能性は捨て切れないが、香港は 89~91 年に2桁の高インフレを甘受してまで現行 為替政策を維持してきた実績もあり(図表4)、多少のインフレには耐えてゆく覚悟であ ろう。 政策に頼らなくとも、香港ドル買いの根底にある株価上昇が、何らかのきっかけ(中国 経済の変調など)で止まる可能性もある9。香港政府としては、市場介入を続けながら、し ばらくは様子を見るのではないか。 9 個人による香港株式投資の早期解禁について、中国の温家宝首相が 07 年 11 月4日に否定的な見解を示 したことで、現時点(07 年 11 月 12 日)では株価は頭打ちとなっている。

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以上を考慮すると、当面の金利と為替レートを注視してゆく必要はあるにせよ、為替政 策変更の時期が、当社見通しである「概ね5年後以降」よりも劇的に早まる可能性は、現 時点で判断する限りさほど高くないと思われる。ただ、人民元の上昇ペースが速まったと いうことは、図表2③の問題がより早期に解消されることを意味する。このため、香港の 為替政策変更の時期が多少早まるということはあるかもしれない。 以上

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