として,砂,泥,微生物(藻類,死骸,排泄物),前処理 で使用される凝集剤などが挙げられ,溶存有機物として は,海水由来のたんぱく質,フミン質,多糖類(代謝物) が挙げられる。とりわけ,植物プランクトンやバクテリ アから排出される透明細胞外重合物質粒子(Transparent Exopolymer Particles:以下TEP)や,溶存有機物の内, 有機炭素検出型高速液体クロマトグラフィー(Liquid chromatography-organic carbon detection: 以 下 LC-OCD)で測定されるバイオポリマー区分の有機物は,そ れ ら の 濃 度 が 高 い 場 合 に UF 膜 の 膜 間 差 圧(Trans-Membrane Pressure:TMP)増加速度を速めたり,砂ろ 過やDAFでは除去しきれず,RO膜のファウリングが進 行することが報告されている1)〜 3)。そこで,今回それら 有機物が RO膜の処理性能に与える影響をラボ試験にお いて定量的に把握した。また,従来の前処理プロセスの 粗処理として泡沫分離装置(Foam Fractionator)を組 み込んだ海水淡水化前処理プロセスを開発し,それら膜 汚染の原因となっている有機物の除去について検討した。 逆浸透(RO)膜を用いた海水淡水化施設では,RO膜の性能を維持するために砂ろ過やUF膜などの前処理装置を設置 する。これらの固液分離装置の安定化処理のために,前段に泡沫分離装置を設置するプロセスを考案した。ここでは,泡 沫分離装置で除去可能な濁度成分の他,RO 膜のファウリングの原因物質となる TEP(Transparent Exopolymer Particles)やバイオポリマーの除去効果について報告する。ラボ試験では泡沫分離装置の性能を確認するとともに,TEP がRO膜の処理性能に与える影響について調査した。パイロット試験では,東京湾の海水,及びインドネシアの海水を対 象に海水淡水化連続試験を行い,泡沫分離の設置効果について検証した。
Seawater desalination facilities based on reverse osmosis (RO) membranes use pretreatment equipment, such as sand filters and UF membranes to maintain the performance of RO membranes. To ensure that these solid-liquid separators provide stable pretreatment, we have designed a process in which a foam fractionator is located before the pretreatment equipment. This paper describes how a foam fractionator can remove tubidity as well as TEPs (transparent exopolymer particles) and biopolymers, which cause RO membranes to become fouled. In laboratory testing, we have verified the performance of the foam fractionator and studied the effect of TEPs on the treatment performance of RO membranes. We also conducted pilot tests to continuously desalinate seawater from Tokyo Bay and from the sea around Indonesia to verify the effectiveness of the foam fractionator.
Keywords: Foam Fractionator, Pretreatment, Transparent Exopolymer Particles (TEP), Biopolymers, Sea water desalination, Fouling, Reverse osmosis, Sand filter, Ultrafiltration, Turbidity
泡沫分離装置を併設した海水淡水化前処理プロセス
Pretreatment with Foam Fractionator for Sea Water Reverse Osmosis (SWRO) Desalination Process
島 村 和 彰
*秦 良 介
*林 益 啓
*Kazuaki SHIMAMURA Ryosuke HATA Masuhiro HAYASHI
角 田 一 郎
**Claudius E. Wendianto
**Paul Somadjaja
**Ichiro TSUNODA
* 水ing㈱
** PT. Beta Pramesti Asia
「環境浄化技術vol.15 No.6 2016」に掲載した内容を一部加筆・修正し て転載した。
1.は じ め に
水が不足している地域において,海水淡水化は有望な 選択肢とされている。しかしながら,比較的汚染が進行 した海域における逆浸透(RO)膜を用いた海水淡水化処 理では,RO膜のファウリングが進行し,透水量の低下や 操作圧の上昇が課題となっている。そのため,近年,RO 膜の前処理として,従来行われている凝集砂ろ過の他に, UF(Ultra-Filtration)膜を用いたり,加圧浮上(Dissolved Air Flotation: DAF)を併用したりと,より高度な処理を 行うケースも増加している。それら前処理プロセスにお いて,海水由来の汚濁負荷が高い場合には,ろ過抵抗の 上昇や,汚泥の発生量の増加,一部処理水へのリークが 確認される。汚濁負荷となる物質としては,粒子状物質ここでは,泡沫分離装置の基礎試験による検証結果,海 水浄化を目的とした実証試験(ジャカルタ市内)の結果, 泡沫分離装置を砂ろ過装置に組み込んだパイロットプ ラントによる実証試験(東京湾)の結果を紹介し,新し い海水淡水化前処理プロセスを提案する。
2.試 験 方 法
2-1 膜汚染物質が RO 膜の処理性能に与える影響 ラボ試験において,RO膜汚染有機物がRO膜の処理性 能に与える影響を調査した。試験は,TEP源としてキサン タンガム(以下XG)を添加した海水を対象として,RO 膜の水透過係数を定量的に把握した。ラボ試験装置を図1 に示す。原水は海水をUF膜ろ過した透過水20 Lに,XG 0 〜 1200 mgを添加した液を用いた。試験では,原水を5.5 L/minで通水するとともに,操作圧を5.0 MPaにして透 過水を得た。濃縮水及び透過水は常時原水槽に返送する 循環運転を行い,XGを添加してから24時間後の透過水 量を測定した。その後,更に所定量の XG を添加して, 上記同様に24時間後の透過水量を測定した。以後,上記 を繰り返した。 2-2 泡沫分離装置の処理性能確認基礎試験 (1)泡沫分離装置の概要 泡沫分離装置のイメージ図を図2に示す。装置構造は シンプルで,原水の供給管と,処理水の流出管,エアの 供給管,及び発生した泡沫の排出管からなる。基本的な 原理は,図3に示すように,気泡の表面に疎水性部分を 有する物質を付着,濃縮させて,装置上部から泡沫を分 離,排出する。泡沫分離装置の特長として,接触時間は1.5 〜 3分程度と短いことから,装置容積が小さく設置面積 が少なくて済むこと,また装置コストが安いことが挙げ られる。泡沫分離装置の処理水は,後段に設置される固 液分離装置(砂ろ過や膜ろ過)で処理した後,RO 膜に 供給する。 (2)試験方法 泡沫分離装置の各種除去性能を調べるために,まずラ ボ試験(図4)で各種除去率を把握した。評価は,濁度 UF透過水 RO透過水 (流量測定時だけ。 通常は原水槽へ返送する) XG(所定量0∼1200 mg/L) ※原水槽:初期の容積は20 L。水温25 ℃。 循環水量=5.5 L/min 操作圧=5.0 MPa RO膜試験装置 原水槽※ クーラー 図 1 ラボ試験装置 気泡 濁質 有機物 浮上 疎水基 親水基 ・疎水基が気泡表面に付着 ・気泡は浮上し,系外へ排出 図 3 汚濁物質の除去原理 P 泡沫分離部 流量計 泡沫分離装置 サンプル瓶 泡沫分離水 エアストーン エアポンプ 図 4 泡沫分離装置 気泡分離部 気液接触部 泡沫 泡沫分離水 排出管 処理水 流出管 原水 供給管 気泡 エア 供給管 図 2 泡沫分離装置イメージ図blocks,humic-like substance,LMW acids,LMW neutralsに分画し,各々の画分の有機炭素濃度を定量的 に評価するとともに,UVD及びONDの測定結果も活用 することで各有機物の特性に関する情報も部分的に取得 することが可能である。上記の内,バイオポリマーに区 分される有機物が膜のファウリングに強く影響を及ぼす 可能性が指摘されている5)。 2-3 パイロット試験による泡沫分離の性能確認試験 海水水質の変動が大きいインドネシアのアンチョール 海水淡水化施設に,泡沫分離パイロット試験装置を設置 し,除去性能の確認試験を実施した。さらに,泡沫分離 装置を従来法である凝集砂ろ過の前段に併設し,従来法 との性能比較試験を,パイロット試験装置を用いて実施 した。それぞれの試験方法の詳細を以下に示す。 (1)インドネシアにおける海水浄化実証試験 インドネシアのアンチョール海水淡水化プラント内に おいて,泡沫分離装置を用いた海水浄化の粗処理の検証 試験を実施した。アンチョール海水淡水化プラントの概 要は以下のとおりである。 アンチョール海水淡水化プラントの概要 ロケーション:ジャカルタ市内 プラント構成:取水,DAF,UF膜,RO膜 造 水 量:4500 m3/d 試験処理フローを図5に示す。実プラントの海水貯槽 から海水を取水し,海水を泡沫分離装置に導入し,各種 除去率を調査した。処理条件を表1に示す。処理量は1.2 〜 2.2 m3/h,接触時間は2.1 〜 3.8分とした。なお,泡沫 分離装置に導入する海水量は,実プラントの0.5 %であ り,実プラントに与える影響はほぼない。 の除去率の他,膜のファウリングに寄与する有機物を測 定する指標とされているTEPやバイオポリマーとした。 供試原水は東京湾の海水を用いた。試験手順は以下のと おりである。 ①泡沫分離装置に,海水1.9 Lを供給する。 ②装置をセットする(泡沫分離部,エアストーン等) ③所定の空気量で,所定時間(1 〜 4分)通気する。 ④ 泡沫分離水が泡沫分離装置上部から流出するので, サンプル瓶で捕集する。 ⑤所定時間後,試験終了。 ⑥ 泡沫分離装置内の残留液を処理水としてサンプリン グ。容積を測定。 ⑦各分析。 (3)評価方法 有機物の測定方法として,全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)が一般的に用いられるが,膜のファウリン グの原因となる有機物は,TOCの中でも限定的な有機物 である。ここでは,RO 膜のファウリングに影響を与え る有機物の定量方法として,先に述べたTEPやバイオポ リマー等を測定した。なお,TEPは,Passowら4)によっ て測定方法が提唱され,アルシアンブルー染色液で染色 されたムコ多糖類の濃度と定義づけされる。測定方法の 手順を簡単に示すと以下となる(Passowらの方法を一 部アレンジ)。 ① サンプル水を,孔径0.4μmのポリカーボネート紙(以 下PC紙という)を用いて吸引ろ過する(20 kPa以下)。 ② PC 紙に残留した物質を純水でリンスし,吸引ろ過 する。 ③ アルシアンブルー染色液をろ過に添加し,残留物の 一部を染色する。 ④ 再び純水でリンスし,吸引ろ過する。 ⑤ PC 紙をろ過セットから取り外し,80 wt% の硫酸 (10 mL)に浸漬させる。 ⑥ 約2時間浸漬させた後,上澄み液の波長787 nmの吸 光度を測定する。 ⑦ あらかじめキサンタンガムを標準液とした検量線か ら定量する。濃度はキサンタンガム換算となる (mg-XG/L)。 バイオポリマーは,LC-OCD を用いて測定される。 LC-OCDは,液中の各有機物成分をサイズ排除クロマト グラフィーで分画し,有機炭素検出器(OCD),紫外部 吸光度検出器(UVD),有機態窒素検出器(OND)によっ て,それぞれの有機物成分の相対比を求める分析装置で あ る。 本 分 析 に よ っ て, バ イ オ ポ リ マ ー,building 表 1 処理条件 条件 泡沫分離装置 処理量 m 3/h 1.2 〜 2.2 接触時間 min 2.1 〜 3.8 〈テストユニット〉 DAF RO膜 海水 UF膜 〈実プラント〉 ブライン 透過水 ※テストユニットで使用する海水量は実プラントの処理量の0.5 %程度、 泡沫分離 Air 処理水 濃縮水 P 図 5 アンチョール海水淡水化プラントにおける試験フロー
(2)東京湾における泡沫分離装置を併設した砂ろ過(パ イロット試験) 2 系列の海水淡水化ミニプラントを㈱荏原製作所袖ヶ 浦事業所内に設置し,東京湾の海水を対象に,泡沫分離 装置の連続処理実証試験を実施した(図6)。1系列目は 従来法である凝集ろ過を前処理とした比較系,2 系列目 は,砂ろ過の前段に泡沫分離装置を設置した試験系であ る。それぞれの処理条件を表2に示す。試験系の泡沫分 離装置の処理量は2.3 m3/h,液接触時間は2.0分とした。 なお,後段の砂ろ過は,比較のため比較系と同じ条件で 通水し,泡沫分離処理水を砂ろ過装置に供給した。
3.試 験 結 果
3-1 膜汚染物質が RO 膜の処理性能に与える影響 ラボ試験で得られた XG 添加量と RO 膜の水透過係数 の関係を図 7 に示す。XG 添加量が多いほど水透過係数 が低下する傾向は明らかであり,XG 無添加の場合に比 べ て,XG 添 加 量 750 mg の 場 合 の 水 透 過 係 数 は 5.1×10−9 m/(s・kPa)であり初期の水透過係数に比べ 約87 %であった。また,添加量1200 mgの場合の水透 過係数は4.8×10−9 m/(s・kPa)であり,初期値に比べ 約77 %であった。この結果から,TEPとしてカウント される有機物が,RO 膜表面に付着することで透過水量 が低下することが明らかとなった。このような透過水量 の低下は,XG の RO 膜表面での付着によって濃度分極 が促進されるためと考えられる。濃度分極の増加は,透 過水を得る実質的な推進力となる有効圧(操作圧から RO 膜近傍の浸透圧や圧力損失を引いた値)の減少とな り,その結果透水性が低下したと考えられる。XG の付 着量が増加すると,更に濃度分極が増加し,有効圧の減 少によって透水性が更に低下したと考えられる。筆者ら は,実海水を用いた連続処理試験において,RO 膜供給 水のTEP濃度とRO膜ファウリング進行速度の関係を調 査したところ正の相関があることを報告しており1),本 試験結果はそれを裏付ける結果であった。 3-2 泡沫分離装置の処理性能確認基礎試験 ラボ回分試験で実施した泡沫分離の各除去性能を確認 した。図8は,各除去率を示したグラフである。濁度は, 原水3.3度に対して,濁度除去率は80 %であった。TEPは, 原水 1.52 mg-XG/L に対して,除去率は 56 % であった。 TOCの除去率は16 %,孔径1μmのガラスフィルターを 通したS-TEP除去率は34 %,バイオポリマーは14 %の 除去率であった。TOC,TEP,バイオポリマーはそれぞ れ有機物量を測定しているが,除去率に相違が出るのは 測定方法が異なるためであり,TEPとバイオポリマーは, 表 2 処理条件 比較系 試験系 泡沫分離装置 処理量 m 3/h 設置無 2.3 接触時間 min 2.0 砂ろ過 ろ過方式 − 重力式DMF 重力式DMF ろ過速度 m/d 177 177 RO膜 仕様 − ポリアミド系 ポリアミド系 スパイラルRO膜 スパイラルRO膜 運転方法 − 透過水量一定制御 透過水量一定制御 比較系 凝集剤 砂ろ過 RO膜 透過水 ブライン H2SO4SBS H2SO4SBS 逆洗排水 試験系 凝集剤 泡沫分離 砂ろ過 RO膜 透過水 ブライン 逆洗排水 泡沫分離水 NaOCl 図 6 連続処理フロー 4.0E-09 4.4E-09 4.8E-09 5.2E-09 5.6E-09 6.0E-09 0 250 500 750 1000 1250 1500 水透過係数 m/ (s ・kPa) XG添加量 mg/20L-原水 図 7 XG添加量と水透過係数の関係 14 34 56 16 80 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 バイオポリマー S-TEP TEP TOC 濁度 除去率 % 図 8 各有機物の除去率10月から12月上旬までは,おおむね10 NTU以上であり, 最大75 NTUとなった。インドネシアでは11月〜 4月が 雨季シーズンであり,この時期は雨季シーズンの始まり の時期と重なる。12月中旬から2月末までは,穏やかな 濁度が継続し,おおむね6 NTU以下であり,最も低いと きで1.1 NTUであった。しかしながら,3月以降再び濁 度が変動し,高いときで40 〜 50 NTUとなった。 泡沫分離の濁度除去率を図10に示す。除去率は高いと きで80 %,低いときで20 %,平均すると約50 %であっ た。濁度除去率のばらつきは,海水の水質の変化によっ てもたらされると考えられ,気泡に付着しやすい濁度が 多い場合は濁度除去率が上昇し,逆に濁度が付着しにく い場合には低下すると考えられる。図10から,原水の濁 度が 1.1 〜 75 NTUの変動の中で,泡沫分離処理水の濁 度はおおむね30 NTU以下に抑制できており,泡沫分離 TOCとしてカウントされる有機物の内,特に膜に付着し やすい有機物を測定している。ラボ回分試験ではわずか 3分程度の処理(泡沫分離水の流出しない時間があるの で実質的には 2 分程度)で,原水の汚濁負荷(濁度や TEP)を50 %以上低減することができることから,汚 濁物質の粗処理としての役割は十分に果たし,また,原 水の汚濁負荷が変動した場合においても,負荷の平準化 に貢献すると考えられる。 3-3 パイロット試験による泡沫分離の性能確認試験 (1)インドネシアにおける海水浄化実証試験 アンチョール海水淡水化プラント内に設置した泡沫分離 装置の処理の様子を図9に示す。装置の直径は350 mm, 高さは約2 mであり,原水の滞留時間2分で通水した場 合には,この装置で約55 m3/dの処理が可能である。塔 中央部が原水と気泡が向流で接触する気液接触部であり, エジェクターによって吸引された空気は,塩類が高い海 水では微細化し,塔全体が白濁した様子となっている。 塔上部は泡沫分離部であり,泡沫に付着した濁度や溶解 性の有機物が濃縮され,海水由来の発泡成分や一部の処 理水とともに越流し系外に排出されている。目視でも, 泡沫に付着した汚濁物は原水よりも高濃度になっており, 濃縮されているのが観察される。滞留した泡沫は3分に 一度に噴射されるシャワー水によって消泡され速やかに濃 縮槽に排出される。 取水した海水の濁度変動を図10(上図)に示す。また, 併せて泡沫分離処理した処理水の濁度,及び濁度除去率 を示す。海水の濁度は大きく変動し,調査を開始した 図 9 泡沫分離装置 80 70 60 50 40 30 20 10 0 9/27 10/17 11/6 11/26 12/16 1/5 1/25 2/14 3/6 3/26 4/15 泡沫分離 海水 泡沫分離処理水 濁度 NTU 100 80 60 40 20 0 濁度除去率 % 9/27 10/17 11/6 11/26 12/16 1/5 1/25 2/14 3/6 3/26 4/15 図 10 濁度の変化(上図は濁度の変化,下図は除去率の変化)
装置は粗処理として海水濁度の平準化,及び 50 %の負 荷低減に貢献できた。 膜汚染の原因となる有機物の除去性能を図11に示す。 色度の除去率は30 %,TOC除去率は43 %,TEPの除去 率は47 %,バイオポリマー除去率は32 %であった。膜 汚染の原因となる有機物の粗処理という観点でも,後段 の前処理プロセスの負荷を低減することが可能であると 言える。 (2)東京湾における泡沫分離装置を併設した砂ろ過 図12は,試験系(泡沫分離+砂ろ過)と比較系(砂ろ 過)において,砂ろ過の逆洗直後からの代表的なろ過抵 抗の変化をそれぞれ示す。ろ過抵抗が10 kPaに達する時 間は,従来法である比較系が約5.5時間に対して,試験系 は約13.5時間であり,ろ過時間は明らかに試験系の方が 伸びた。また,ろ過抵抗の上昇速度を比較すると,比較 系が1.35 kPa/h,試験系が0.49 kPa/hであり,上昇速度 は約1/3に抑えられた。上昇速度が抑制できた理由として, 泡沫分離装置では,海水由来の濁度や凝集剤由来の濁度 等が,泡沫分離水として排出され,濁度負荷が低減した 処理水が砂ろ過装置に流入したためと考えられる。 泡沫分離装置は,汚濁を含む泡沫を連続排出すること が可能であり,特に逆洗工程を必要としない。そのため, 処理水を連続的に砂ろ過装置に供給することが可能であ る。また,砂ろ過装置では,泡沫分離装置の設置によっ てろ過継続時間が長くなることから逆洗頻度を低下させ ることができ,またろ過抵抗上昇速度を抑えられること から,処理水質が悪化しない限りLV(Liner Velocity; 線速度)を上昇させることもできるので,ろ過装置の小 型化にも貢献すると考えられる。 図 13は,原水及び砂ろ過処理水のTEP濃度を比較し たグラフである。原水の TEP 1.2 mg-XG/L に対して, 処理水の TEP は,比較系が 0.25 mg-XG/L,試験系が 0.19 mg-XG/Lであり,試験系が約20 %低下した。砂ろ 過処理水のTEP濃度が低下することは,RO膜へのTEP 負荷が低下することになり,RO 膜のファウリング進行 の抑制に貢献すると考えられる。
4.お わ り に
海水由来の有機物がRO膜の性能低下に与える影響の 基礎試験と,海水淡水化の前処理プロセスの粗処理とし て泡沫分離装置を設置した新たなプロセスの検証試験結 果について述べた。基礎試験では,TEPがRO膜に付着 すればするほどRO膜の水透過係数が低下し,透水性能 に影響していることを明らかにした。前処理プロセスの 粗処理や海水浄化として設置した泡沫分離装置は,それ らTEP等の膜汚染物質の粗除去も可能であることや,濁 度負荷の平準化が可能であることを今回明らかにし,従 来の前処理プロセスの改善に貢献できることを示した。 本技術が,水の不足する地域の安定的な水供給に寄与す ることを期待している。 参 考 文 献1) Taro Miyoshi, Masuhiro Hayashi, Kazuaki Shimamura, Hideto Matsuyama , Important fractions of organic matter causing fouling of seawater reverse osmosis (SWRO) membrans, Desalination 390, p.72-80 (2016).
2) ファウリングの原因と対策・抑制技術,S&T出版 P.69(2016). 3) 島村 和彰,RO前処理におけるUF膜の運転と洗浄,環境浄
化技術,Vol.14,No.4,P.52-55(2015).
4) U. Passow and A. L.. Alledredge, “A dye-binding assay for the spectrophotometric measurement of transparent exopolymer particles (TEP)” Limnology and Oceanograghy, 40 (7), 1326-1335 (1995).
5) Loreen O. Villacorte, S. Assiyeh Alizadeh Tabatabai, Donald M. Anderson, Gary L. Amy, Jan C. Schippers, Maria D. Kennedy, Seawater reverse osmosis desalination and (harmful) algal blooms, Desalination 360, p.61-80 (2015). 32 17 47 43 30 0 10 20 30 除去率 % 40 50 バイオポリマー S-TEP TEP TOC 色度 図 11 各有機物の除去率 試験系 比較系 0.25 1.2 1.2 0.19 0 0.2 0.4 0.6 0.8 TEP mg-XG/L 1 1.2 1.4 海水 砂ろ過処理水 図 13 TEP濃度の変化 0 2 4 6 8 10 12 0 3 6 9 12 15 ろ過時間 h 試験系 比較系 ろ過抵抗 k Pa 図 12 ろ過抵抗の変化