香 川 大 学 経 済 論 叢 第71巻 第2号 1998年9月 115-172
データベース
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マーケティング戦略
原
田
保
1.緒 言 米 国 に お い て パ ー ソ ナ ル ・ マ ー ケ テ ィ ン グ 革 命 が 現 出 し て, 我 が 固 に お い て もマーケテイングのまさにこの新たなマーケティング戦略の構築と, ま た こ れ に基づく実践活動が強く期待され始めている。すなわち, これはマーケティン グ ・ パ ラ ダ イ ム の 転 換 に よ る 経 営 戦 略 の 全 面 的 な 転 換 の 要請 な の で あ る 。 言 い 換えれば, これはカスタマー・ロイヤルティ経営の追求と, これを可能にする データベース・システムの戦略的な導入が必要とされることである。 こうして, まさにデータベース・マーケテイング戦略が, リレーションシップ・マーケティ ン グ と と も に 特 に 重 点 的 に 推 進 さ れ る べ き 時 代 が 到 来 し つつ あ る 。 こ れ は , 今 ゃ い わ ば 顔 の 見 え る 顧 客 に 対 す る 個 別 の 対 応 が 期 待 さ れ てい る こ と を 意 味 し て いる。 そ こ で 現 在 , 我 々 が 直 面 し て い る パ ー ソ ナ ル ・ マ ー ケ テ ィン グ 革 命 を 成 功 的 に実現するには, こ の デ ー タ ベ ー ス ・ マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 の 可能 性 を 期 待 す る (1) カスタマ}・ロイヤルティ経営カスタマー・ロイヤルティを基軸とした経営である。 すなわち、企業の発展をまさに顧客のロイヤルティに求める経営がいわゆるカスタマー・ ロイヤルティ経営なのである。顧客が,企業や,庖舗,ブランド等に対して強く支持する ことで,顧客の囲い込みが可能になる。 (2 ) リレーションシツプ・マーケティング:顧客との関係に焦点を置いた,まさにロイヤル ティ獲得を指向するマーケティング手法である。したがって,単なる販売よりは,むしろ 継続取引に重点を震いた展開を指向している。昨今では,データベース・マーケティング との統合展開によってさらなるパワーを発揮し始めている。-116 香川大学経済論叢 310 ことになる。そのためにも,データベース・マーケティングの実践にあたって 必要と思われる事項について多面的な考察が必要とされてくる。そこで,この ような問題意識に立脚して,以下に論述する 4点に及ぶ、戦略発想からの議論を 行うことにする。すなわち,具体的には,第
1
はデータベース・マーケティン グの誕生と意義,第2はデータベース・マーケティングの戦略的意義,第 3は データベース・マーケティングの戦略的活動,第4
はデータベース・マーケティ ングの多彩な影響,についての論述なのである。1
1
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データベース・マーケティングの誕生と意義 マーケテインク、戦略のマス・マーケティングからパーソナル・マーケティン グへの転換とは,データベース・システムが整備されることでデータベース・ マーケティングが容易に展開できるようになったことに依拠している。また, このデータベ}ス・マ}ケティングとは実は情報システムとマーケティングが 統合された概念でもあり,その意味ではまさに科学的なアプローチと感覚的ア プローチの双方からの統合戦略なのである。 そこで,本節においては,データベース・マーケティングの誕生と意義につ いての概括的な要約を行ってみる。そこでその上で,まずデータベース・マー ケティング発展の背景を総括して,続いてこれをベースにして,データベース・ マーケティングの将来方向を探る視点から,特に以下の3点について絞り込ん だ論述を行った。すなわち,第1
はマーケティング戦略の個人回帰指向への転 換,第2はデジタル化に伴う先進情報通信技術の発展,第3は米国の先進デー タベ}ス・マーケティング,についての考察なのである。 1 , データベース・マーケテイング発展の背景 データベース・マーケティングは,他のほとんどのマーケティング戦略と同 様に米国において誕生した,昨今の成熟時代におけるマーケティングとして急 速に発展しつつあるマーケティング戦略の新潮流である。それは,まさに従来 のマス・マーケティングでは対応できないいわば個人を重視したマーケティン-117-データベース・マ}ケテイング戦略 311 またこれはカスタマー・ロイヤルティを経営戦略の基 こうして,いわば次世代マーケティング 軸 に 設 定 し よ う と い う 試 み で も あ る 。 戦略ともいうべきパーソナル・マーケティングの世界的な興隆が現出してきて きている。 この新たなマーケティングにおける特徴は,顧客や取引先との間でコラボ レーション経営を指向して,これによって互いに顔の見える関係を維持してい わが国の産業界においては,構造的 こうという考え方に見い出される。現在, な不況に晴ぐような苦境からの脱出, プロシューマー化をみせ始めた顧客への戦略対応,等の変化要因 このような状況 また急に襲いかかってきたピックパンへ の戦略対応, i I 1 2 + l f l j 1 1 i i l l f i i t t i l l ! ; l i t -e } } j グへの戦略転換であり, をポジティブに捉えた経営革新が強く望まれている。そして, これらの閉塞状況を一挙に解決すべく多様な戦略が構築されそして実践 下で, そのような活動を支えるべくまさにデータベース・マーケ ティングが最も時代特性を捉えた対応として期待されている。 このような状況下で, されているのだが, データベース・マーケティングの本質を正 まず米国におけるデータベース・マーケティングの発展 確に理解するために, 経緯について概括的なトレースを行っておく。 ここでは, わが国におけ これについては, るデータベース・マーケテイング研究の第一人者である江尻宏が詳細に提示し ここでは,彼の主張について簡単な紹介を行うことでこれへの対 このデータベース・マーケティング ているので, このことからも, 応に代えることにする。 これを可能にした要因とは の発展とはまさに前述のように時代の要請であり, 実は技術の発展であることが容易に理解できる。 ここでまずこの時代の要請とは一体どんなものなのかについて考 (3 ) コラボレーション:協調。従来の企業間関係は,一方が勝てば一方が負けるという,い わばWin-Loseの関係に基づいたものであった。これが,昨今のオープン・ネットワーク 化の流れに影響を受けて,企業間関係においても双方が共に勝つといういわばWin -Loseの関係へと転換しつつある。 (4 ) プロシューマー:アルビン・トフラーが『第三の波』において提言した未来の消費者像 である。消費者(コンシューマー)であると向時に生産者(プロデューサー)でもあるこ とから,まさにプロシューマーという新たな概念が創造されたわけである。そして,昨今 のデジタル化の進展によっていよいよプロシューマ一時代の本格的な到来が予見されて いる。 それでは,
118 香川大学経済論叢 312 察を行ってみる。第
1
の理由は,顧客指向のマーケティング理念を追求する時 代が到来したいことである。昨今の米国企業においては, それらのミッション に顧客満足をあげる企業が増大しつつある。そうなると,当然ながら顧客一人 ひとりのレベルでの満足が実現されるべきであり, また顧客一人ひとりの満足 のためには各人のニ}ズやウォンツが充足されるべきであるというような認識 が高まってくるからである。 第2
の理由は,経済社会における生活者のニーズの多様化が急速に進展して いることである。そうなると,顧客はマスとしての存在ではなし まさに一人 ひとりが意識の点でも行動の点でもまったく個別な存在になるからである。そ こで,顧客を個として捉えるためには,当然ながら個人のデータベースの掌握 が不可欠になるあけである。 第3の理由は,顧客自身が一人ひとりの個に対する適切で高度なサービスを 重視する傾向を強めてきたからである。 だからこそ,顧客をサービス面で満足 させるためには顧客データベースの整備が不可欠の条件になっている。 続いて,技術の発展による促進理由としては,特にデータベースにかかわる 技術の飛躍的な進化をあげることができる。とりわけパソコン,データベース・ システム, スキャニング・システム, テレ・コミュニケーション等がそれらの 代表的なものである。 こうして, マーケッターサイドにおいても,顧客を個人 として捉えたデータベ)スの収集と運用が現実性を帯び始め, これを活用した データベース・マーケティングの実践が本格的に問われてきた。 それでは, このデータベース・マーケティングにおける伝統的マーケティン グであるマス・マーケティングとの差異を捉え, ここでも江尻宏の見解をベー スにしながらデータベース・マーケティングについての要約的な論述を行って みる。 第1
の見解は,データベース・マーケティングとは,顧客創造のみならず, 同時に顧客維持をも指向するマーケティングということである。 したカまって, とりわけ顧客のリテンションがこのデータベース・マーケティング国有の最大 の戦略課題になっている。313 データベース・マーケティング戦略 -119-第
2
の見解は, マス・マーケティングにおいても顧客のニーズやウォンツを 軽視していたわけではないが,データベースを活用していないため正確な補足 が困難であるという認識を持つことである。一方,先進的な技術に裏付けられ たデータペース・システムを活用してデータベース・マーケティングを展開す るならば, まさに個客として顧客を捉えたパーソナル・マーケティングの実現 はそう難しくはない。 第3
の見解は,顧客を個的存在として捉えるには, もちろん属性の把握は必 要なのだが,その上で,さらに将来の行動が予測できなければパーソナル・マー ケティングへの適用は不十分であるということである。そこで,この課題をデー タベース・システムと統計解析によって推論することが,まさにデータペース・ マーケティングを展開する上での要諦になっている。 第4の見解は,市場創造重視のマス・マーケティングではややもすると効率 を軽視した対応に陥りやすく, また利益指向のマーケティングを実践するには それにふさわしい方法が必要になるということである。そこで, このような課 題をクリアすべく期待されているのがデータベース・マーケティングなのであ る。 第5
の見解は, これからのマーケティングの評価は広告の評価ではなくて, まさにマーケティング活動そのものの評価が不可欠であるということである。 そのためには,例えばなぜ顧客は購買するのかまたそのプロセスはどうなのか というような問題の解明が必要であって,そのためには,まさにデータベース・ マーケティングの適用なしに応えることは不可能だからである。 このような優位点を持ったデータペース・マーケティングが,米国において はパーソナlレ・マーケテイングの典型的な手法として注目されて,既に多くの 業界において多大な成果を実現するまで発展を遂げている。 このような米国で の成果を踏まえて, わが国においても既に幾つかの先進的な企業においては, 顧客を個として捉えるパーソナル・マーケティングへの取組みが模索され始め ており,そのなかでも,とりわけ先進情報通信技術に支えられたデータベース・ マーケティングが,それらの最強の戦略的手法としておおいに期待されている。120ー 香川大学経済論叢 314
2
“ マーケティング戦略の個人回帰指向への転換 マス・マーケティングからパーソナル・マーケティングの転換とは,実はマー ケティング戦略のターゲット,マスとしての消費者から個的存在としてのパー ソナノレな顧客へと転換したことを意味している。したがって,データベース・ マーケティングに対する要請とは,このようなマーケティング戦略の根本から の要請なのである。それは,言い換えればパーソナル・マーケティングが,実 は一人ひとりの顧客のより良い生活へ向けたライフ・サポート・システムであ ることを意味している。このことは,米国のダイレクト・マーケティングをわ が国に継続して紹介している荒川圭基等も長年強調し続けていることである (図表2-
1)。 この荒川圭基も強調しているように,今やまさに顧客への現点なくしてマー 図表2- 1 データベース・マーケティングの基本概念 0顧客に関する情報を収集し,コンピューター・メモリーに保管する。 0顧客のデ タを統合化し,マーケティング活動に活用する。 0顧客の顔を知る 誰がロイヤノレティ 客 で Oリレーションシツプ・マーケティングを展開する。 Oリテンション・マ ケティングを展開する。 0データベース・マーケテイングは3つのR。 Relationship Retention 誰 が と ん な ラ イ フ ス タ イノレをもっているか Refenal 荒川主基『ダイレクト販売より』 (5 ) ダイレクト・マーケティング:見込み客にパーソナルなプロモーションを通して商品 やサービスを提供することである。具体的には,プロモーションの結果がレスポンスとし て測定できること,顧客データベースとその活用に依存していること等が特徴であるイ ンタラクティブなマーケティング手法である。315 デ」タベース・マーケティング戦略 -121ー ケティングは始まらないような段階にさしかかっている。すなわち,今後のマー ケティングにおいて大切なことは,顧客にフォーカスを置いた, いわばカスタ マー・レディへ向けた発想、転換なのである。このことは,顧客の満足を第
1
義 においた経営理念に基づく企業行動が何よりも優先することを意味している。 まさにデータベース・マーケティングが不可欠な条 これはまた,顧客の声が事実を伝達していることを十分理解し たマーケティングを行うことを意味している。その意味では,いわば顧客指向 そのためにこそ, 件なのである。 そして, というサプライ発想からの顧客重視ではなく, まさに顧客主導によるカスタ マー・レディ発想でのマーケティングの実践こそが大切なのである。 このような認識から,顧客との長期的な関係を前提としたマーケティングが 期待され,データベース・マーケティングによる3R (
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革命が現出することになる。これは,まさに企業と個的存在としての 顧客との間でにおける関係構築のニュー・パラダイムなのである。すなわち, この第1のリレーションシップ,第2のリテンション,第3のリファレlレこそ が, まさにデータベース・マーケティングの戦略的特徴なのである。そして, この3R革命の実現によってこそ,既存顧客の維持に重点、を置くパーソナル・ マーケティングが実践できるのである。 第lのリレーションシップとは,企業における顧客との聞の良好な関係の継 続を意味している。その意味では,心の触れ合い等というきわめて人間的な関 係を重視している。第2のリテンションとは,一度獲得した顧客の継続的な維 持を目的にしたポジティブなアプローチである。また,第3のリファレルとは, いわばアドボケイトからパートナーへというような口コミをベースにしたきわ めて紳の強い関係型態の構築である。このようにして,次第にロイヤルティの 高い顧客を囲い込むことが可能になってくる。 また, このようなデータベース・マーケティングを展開するには, まず顧客 (6 ) アドボケイト:唱導者。企業にとって最もロイヤルティの高い顧客を意味している。企 業にとって,まさにパートナーとも言うべき関係の顧客であって,口コミでの宣伝を行っ たり,場合によっては修理等のサービスまで行ってくれる存在である。-122- 香川大学経済論叢 316 の区分とこれをベースにした一人ひとりの顧客についての固定化プログラムの 構築が不可欠になる。すなわち,言い換えれば,ロイヤルティに基づいた顧客 区分とロイヤルティ階梯にふさわしい的確なプログラム構築が必要になること である。具体的には,サスペクト
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擬似客),プロスペクト(
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継続客) という顧客階梯を上昇させるべく,アテンション(
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:注目),インタレ スト(
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欲求), そ し て ア ク シ ョ ン(
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行動)というマーケティング・サイクルの継続した展開が実際に期 待されている。 このように,顧客階梯を上昇させるべく顧客の固定化プログラムの効果的な 展開が要請されてくる。そして,この代表的なプログラムとしては,第lには ポイント制のプログラム,第2には会員制のプログラム,第3
にはホットライ ン,が著名な事例としてあげられる。これらはともに,顧客は購入すればする ほどより大きな特典が入手できるきわめて公平な対応であって,そのための顧 客階梯を上昇させるべくインセンティブを前提としたマーケティング手法であ る。 武田哲夫によるならば,データベース・マーケティングとは,実は,顧客づ くり,顧客つなぎ,そして顧客つづきという,まさにデータベース・システム による顧客情報の管理ということになる。すなわち,ただ単に顧客の情報を集 めそしてまた蓄えるだけではなしいわば顧客の情報をベースにしてこれらの 情報活用によるパーソナル・マーケティングの実践が大切なのである。これは, マーケティングの依って立つ根拠とは,実は科学的に裏打ちされたデータベー スの存在によって初めて成立するという考え方でもある。 第lの顧客づくりとは,顧客維持プログラムをスタートさせるために新規顧 客の獲得を行うべき段階である。もちろんこの段階では,未だパーソナノレ・マー (7) サスペクト:一般答。庖舗の場合,ただの道路における有効任のような存在である。こ れが,底舗の場合,例えばショーウインドー等に意味を持って,底舗なり,商品なりに興 味を持った存在である。317 データベース・マーケティング戦略 -123-ケティングにおいてはまさに準備段階なのである。この段階における狙いとし ては,主に新市場の開拓,新規需要の開拓,新規顧客の開拓であって,そのた めには,新製品の開発,戦略的情報システムの整備,新たな営業力の開発,等 の主に人聞に依存した対応が重点課題なのである。 第
2
の顧客つなぎとは,データベースの整理や分析によって顧客を繋いでお くための施策が期待される段階である。この段階における主な狙いとしては, 主にリピート・オーダー・システム,リピーターシステムの構築,顧客の離脱 防止策の策定,各種販促策の展開等であり,そのためには,顧客管理システム のためのデータベース・システムの整備が必要になってくる。また,この段階 では人間的は要素も大切になり,そのため販売員による顧客へのリレーション シップも大切な課題である。 第3の顧客つづきとは,販売員と顧客との高密度なリレーションシツプの構 築へ向けたネットワークの構築段階である。この段階における主な狙いとして は,主に顧客の固定化,顧客の永続化,需要の固定化等の追求であり,そのた めには,サービスのクオリティの向上や顧客満像プログラムの策定等が期待さ れてくる。 このように,顧客づくり,顧客つなぎ,顧客つづきという顧客維持へ向けた 3段階の戦略対応によって,顧客の臨定化へ向けたデータベース・マーケテイ ングが実現するわけである。こうして,個人のニーズやウォンツを捉えたいわ ばパーソナルな関係構築と,これを基軸としたパーソナル・マーケティングの 展開が本格的に展開されてくる。 3 デジタル化に伴う先進情報通信技術の発展 データベース・マーケティングの展開は,超並列コンビューターの登場や大 型データベースの開発によって,小売に代表される膨大な客数を保持している 業種においても容易になってきた。また,多様な統計解析手法の本格的な導入 によって,既にデータベースの情報を効果的に活用することも可能になってい る。こうして,データベ}ス・システムによるデータベース・マーケティング-124ー 香川大学経済論叢 318 が今後のマーケティングの主流を占めるまでに発展したのである。 もちろん, このデータベースの構築も大切ではあるが,実際には, これをど う顧客との関係構築に役立てていくかがもっと大切な課題なのである。 このよ うな観点から, ここで特に,荒川圭基も提言している今後期待されるべき統合 型のデ}タベース・システムについての概略的な解釈を行っておく。この統合 型データベースとは,概略的に要約するならばインテリジェント・システムと コミュニケーション・システムから構成されている (図表2-2)。これがあっ てこそ,いわばデータベース・マーケティングの実践的な展開が可能になった わけである。 前者のインテリジェント・システムについては, これはデータベース・マー ケティングを展開するための前提になる,これはいわばマーケティング・スタッ フ向けのシステムなのである。 これはまた,販売促進の効果の追跡や分析,市 場調査,市場のセグメント等に顧客のデータを活用する方法なのである。具体 的には, アンケートを取ったりモニターを活用するのではなく, あくまで実際 のデータに基づく実態の掌握を行うことである。 後者のコミュニケーション・システムについては,顧客とのパーソナノレな関 係を構築するためにコミュニケーションを実践するためのシステムである。具 図表2-2 イ ン テ リ ジ ェ ン ト ・ シ ス テ ム と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ シ ス テ ム 販売促進効 果の追跡と 分析 随時の要請 による分析 市場調査 市場のセグ メント化 OROI報告 O分析基準(媒体別,製品別,地 離別,販売地区別,顧客セグメン ト別,チャネル別, リスト別) 。オンライン・アクセス 0モデル作成 。統計的分析 0プロファイル分析 0カラスター分析 。ライフスタイル分析 ダイレクト メール テレ・マー ケティング フlレフイlレ メント セーノレス・ サポート 0キャンペ}ンメ}ル Oリテンションメール 0インバウンド・フリーダイヤ Jレ・レスポンス O顧客サービス OアウトノTウンド 0販売促進用資料出荷 O商品説明書出荷 0契約処理と商品出荷 0見込み客(リード)開発 Oセールス訪問結果 荒川圭基『データベース・マーケティングの進め方』より
319 データベース・マーケティング戦略 -125-体的には,これは,ターゲ、ツトたる顧客に対して,ダイレクトメーノレを出した りまたはテレ・マーケティングを
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子ったりすることである。 もちろん,このデータベース・マ}ケティングは,単に顧客とのリレーショ ンシップが構築できれば万事上手くいくというものではない。このデータベー ス・マーケティングを成功させるためには,同時に以下のような項目をクリア することもまた大切な条件なのである。すなわち,それらの条件とは,第1は 経営トップのゴー・サイン,第2は顧客リストのデータベース化,第3は商品 とサービスの選定,第4はクリエイティブ能力,第5はデータベース・マーケ テイング・テクノロジー,という 5点である。 また,とりわげデータベース・マーケテイングを展開するためには,顧客の レスポンスについての分析ツールを整備することが特に大切な条件になる。そ のために必要とされる手法こそが多次元データ分析なのである。これは,分析 したい次元が例えば5とおりまで対応できるものならば,第1次元は計画や実 績,第2次元は顧客件数とか利用回数,第3次元は時間,第4次元は性別や年 齢,第5次元は活用方法,というような構造になっている。 そして,この多次元モデルを利用した先進的な分析手法がまさにRFMセル コードなのである。このR(Recency), F (Frequency), M (Monetary Value) の3つの要素から特定される顧客へのアプローチが,今後に期待されるデータ ベース・マーケティングの先進主法などである。また,このRFMによる多次元 分析をより高度化させていくためには,今話題のデータ・マイニングの導入が きわめて有効な方法である。また,このマイニングという技術とは,一つの技 術ではなくて多数のデータ項目を関連づけて分析するツールであり,これの導 入によってデータベース・マーケティングの精度は飛躍的に改善したのである。 また,このデータ・マイニングのアプリケーションでは,第1
にはマーケット・ バスケット分析,第2
にはカスタマー・プロフィール・セグメンテーション, ( 8 ) データ・マイニング:POS,クレジットカード,電話の通話履歴,生命保険の顧客情報 等の蓄積された膨大な量の生データとの対話を通じて,経営やマーケティングにとって 必要な傾向動向,相関関係,パターン等を導き出すための技術や手法を意味している。j 126 香川大学経済論叢 320 第3には不正発見・防止分析,というようなソリューションの提供が指向され ている。 それでは以下に,この多次元分析による顧客データの活用視点について概括 的な要約を行ってみる。すなわち,先進的な情報通信技術の入手によって可能 になるデータベース・マーケティングの展開についての考察である。 第
1
は,RFM
による優良ターゲットの探索である。これは,まさに2
0
-
8
0
の 法則に基づくマーケティングの実施なのである。具体的には,20%
の優良顧客 へのリレーションシップ・マーケティング,継続購入の促進,テレ・マーケテイ ングによるコミュニケーションの実行等である。 第2
は,新規顧客のリアルタイム・フォローである。これは,新規顧客の約70%
がリピート顧客になるということへの対応なのである。具体的には,3
ク 月以内のRに対する徹底したフォロー,電話やダイレクトメールによる新規顧 客リストへの徹底フォローの実行等である。 第3は,購買商品からの次回購入商品の予測である。これは,顧客の興味や ライフステージを捉えた関連商品の推奨,関連商品販売ノウハウの蓄積,プロ モーション単位での反応分析からの予測の実行等である。 第4
は,クラブ化によって顧客への密着度を固めることである。具体的には, ニーズ単位のクラブ組織の構築,クラブカードの発行,参加型プロモーション の実施,クラブメディアの導入の実行等である。 こうして,先進情報通信技術の活用によって,次第にパーソナル・マ}ケティ ングは次世代型のアグレツシブな展開が期待されてくる。そこで,このような データベ‘ース・マーケティングをマーケティング課題に対するより効果的なソ リューションとすべく,以下にデータペース・マーケティングにおける 6つの 基本要素について要約を行っておく。 第1は,データベースそのものの構築である。第2は,顧客リストにおける (9) 20-80の法則:パレートの法則のメルクマールである。上位20%の優良顧客から得ら れる利益は,全体の利益の80%になるという法則である。アメリカン・エアラインがデー タベース・マーグティングを行って発見した法則である。321 データベース・マーケテイング戦略 -127ー 価値の増大である。第3は,クロスセルに対する果敢な挑戦である。第4は, フリークエンシー・プログラムやロイヤルティ・プログラムの積極的な展開で ある。第
5
はいわばアドボカシ一段階の顧客への育成である。このなかで, と りわけ重要な課題としては,特に第4
のフリークエンシー・プログラムやロイ ヤルティ・プログラムにかかわるノウハウがあげられる。このように,今後に おいても,データベース・マーケティングの本格的な展開に向けでは未だ多大 な課題が残されている。 4わ 米国の先進データベース・マーケテイング このようなデータベース・マーケティングは,我が国においてはやっと実験 段階に入ったばかりだが,米国においては多くの業種において,既に実際にデー タベース・マーケティングが本格的に展開されており,同時に成功企業も少し ずつ現出しはじめている。すなわち,データベース・マーケティングは,消費 財メーカー,小売業,サービス業,そして金融業にいたるまで広範に展開が行 われている。 第1
の消費財メーカーにおけるデータベース・マーケティングにおいては, シーグラムのそれがとりわけ高名のようである。このシーグラムでは,いわば ライバルメ}カーからのブランド・スイッチングのためにデータベース・マー ケティングPの展開を行っている。例えば,ファッショングラスのサービスや値 引券をつけたダイレクトメーノレの投入を行って 1万人もの新規顧客の獲得に 成功しているし,既存顧客に対するフリークエンシー・マーケティングの展開 も行っている。これは,あのシーパスリーガノレ愛好者向けのクラブの組織化で あり,特に優良顧客に対してはフリークエンシー・バイヤー・リウォード・プ ログラムの提供を行っている。また,フォードにおいても既にデータベース・ (10) フリークエンシー・プログラム:優良顧客に対する,価格のインセンティブ等を持ち手 継続取引を促進するマーケティング戦略である。 (11) プランド・スイッチング:あるブランドから他のブランドに顧客をチェンジさせるプ ロモーションである。顧客の増大を図るため,ライバル企業の顧客をいかにして寝返らし て自社の顧客にすることが出来るかが大事なのである。322 香川大学経済論叢 -128-このフォードが展開す マーケティングの本格的な展開が行われている。実は, 自動車メーカーに共通している顧客ごとの現在所有する るデータベースとは, 車のメーカー,車種,排気量等についての情報をデータベース化したものなの である。 第
2
の小売業におけるデータベース・マーケティングにおいては,サックス・ まさに顧客が商品を これは, フィフス・アベニューのそれが特に高名である。 買えば買うほど得をするという,いわば段階的なインセンティブから設定され このプログ また, ているサックス・ファーストというプログラムなのである。 ラムおいては,年間の購買額によって,サックス・ファースト,サックス・ファーj
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サックス・ファースト・プラチナという3
段階の顧客階梯が設 スト・プラス, もちろん,購入時のベースポイントはどのクラスも同様なので 定されている。 ファースト・リウォード・ポイントというボーナスポイントについ はあるカむ ては,まさにロイヤノレティの度合いにリンクした設定が導入されている。また, ノTーガー・キングにおいても,子供用にキッズクラブの組織を構策する等によっ このクラ てデータベース・マーケティング?に積極的に取組んでいる。顧客が, ここのメンバーとしてスーパー・オフィシャノレ・トータノレ・ ブに入会すると, シークレツト・メンバーズ・キットを入手することができる。 第3のサービス業のデータベース・マーケティングにおいては,マリオツト・ ホテルのそれがとりわけ高名である。マリオット・ホテルの展開している手法 とは,実は航空会社では当たり前のフリークエント・マーケティングの展開な ここでは,利用金額に応じてポイントの提供を行うという顧客固定 のである。 化プログラムが導入されており,例えば一定のポイントになると無料宿泊のイ このオーナーズ・ゲ また, ンセンティブが提供される仕組が導入されている。 アメリカン・エアラインとの提携 スト・アウォード・プログラムにおいては, これらの顧客をも対象にしたサービスが展開されている。 を1
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って, ブルークロス・ 第 4の金融業のデータペース・マーケティングにおいては, ここでは,いわばライ フサイクノレに合わせたイベントによってデータベース・マーケティングの展開 アンド・ブルーシールドのそれがとりわけ高名で、ある。323 データベース・マーケティング戦略 -129ー か行われている。すなわち,具体的には,学校の卒業,結婚,子供の誕生,住 宅の独立,退職というような人生の各節目ごとにプロモーションの投入を行っ ている。 一方,わが国においても,次第にデータベース・マーケティングに対する関 心は次第に高まっている。すなわち,それは,このデータベース・マーケティ ングの提供するサービスがきわめて効果的であるからである。今後は,不特定 多数の顧客から優良顧客を探索して,いわば顧客を固い込むような企業が益々 増大する傾向にある。このような状況下で,わが国においては特に以下のよう なデータベース・マーケティングの効用が期待されている。すなわち,第1は 中間管理職を大幅に削減することができる,第2は社員一人当たりの仕事効率 が大巾に向上する,第3は大規模な投資やシステムが不要になる,第4は消費 者のニーズに直結することができる,第
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は規制緩和や競争激化のなかで生き 延びていける,という5
点にあたる効用である。こうして,我が国においても, 米国型のデータベース・マーケティングの本格的な発展段階か現出しつつある。 このように,わが国においてもいよいよマス・マーケティングの時代は終鷲 して,データベースを基軸としたリレーション・マーケティングの時代が到来 している。だからこそ,まさに時代の要請に立脚したマーケティングの展開が 強く期待されてくる。そして,このデータベース・マーケティング戦略の策定 こそが,今後のパーソナノレ時代における競争戦略の転換へ向けた戦略的なトリ ガーとしておおいに期待されてくる。そして,このようなことからも,今後は カスタマー・バリューの増大へ向けた戦略対応が不可欠な状況が現出すること が理解できる。 III.データベース・マーケティングの戦略的意義 米国においては,既にデータベ}ス・マーケティングは本格的な展開期を迎 えている。しかしながら,一方我が国においては,先進的な企業においでさえ 未だ実験的な取組みの段階に留まっているのが実態である。また,いわば顔の 見える顧客に対するパーソナル・マーケティングの実践に向けでは,先進的な324 香川大学経済論叢 130-ー 情報システムと顧客維持を可能にする統計解析手法の獲得が不可欠の条件なの このような課題を克服すべく,今後の企業戦略の目指すべき そこで, である。 そのためには,特 まさに話題のロイヤルティ経営ということになり, 方向は, にカスタマー・ロイヤルティの獲得について最優先に取り組むことが不可欠で ある。 このような観点に立脚して,本節においては,特に企業が展開すべきデータ ベース・マーケティングの戦略的意義について以下のような要約的な総括を 行ってみる。すなわち,具体的には,第
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は,顔の見えるマーケティングへの 戦略的活用,第2は,サスペクトの発掘へ向けた戦略的活用,第3は,ブラン ド・ビlレディング、への戦略的活用,第4
は,収益逓増経営の追求へ向けた戦略 という4
点についての論述である。これによって,今後の経営戦略に 的活用, おけるデータベース・マーケティングの重要性について理解を深めることがで t i l t } t t t l f i t t f t r i i -l f i l -I 1 1 t i s きる。 顔の見えるマーケティングへの戦略的活用 マーケティング戦略 第1
のデータベース・マーケティングの戦略的意義は, を,いわばマス・マーケティングから一人ひとりの顔の見えるパーソナル・マー ケティングに転換させたことにある。すなわち, 入によって,従来の不特定多数のマス顧客をターゲットにしたマーケティング から優良顧客を探索して固い込むというマーケテイングへの転換が可能になっ こうして,売上指向一辺倒ではないいわば利益指向の経営の追求がいよい データベース・システムの導 h ,'-。 よ行われてくる。 まさに超優 良企業の企業戦略における根幹からの転換に見い出せる。すなわち,航空会社 の昨今の積極的なグローパノレ・アライアンスは, このデータベース・マーケティングの画期的な意義とは, 実は, このデータベース・システム が現出させたといっても過言ではないような企業戦略の転換なのである。この 戦略転換によって,航空会社が推進している顧客の囲い込みへ向けたFFP
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:フリークエント・フライヤ}ズ・プログラム)325 データベース・マーケテイング戦略 131-は,このアライアンスによってまさに自担の路線のみならず他社の路線にも適 用することが可能になっている。 昨今わが国では,例えば後発である全日空においては,英国航空やスイス航 空等の欧州系,キャセイ・パシフィック等のアジア系,デノレタ航空や
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エア等 の米国系との積極的なアライアンスを推進している。このように,今や世界の 航空会社は,FFP
の適用が全世界どこにおいても可能になる状況の実現へ向け た対応を行っている。すなわち,このことは,FFP
にまつわる顧客囲い込み戦 略が実は世界の航空会社の再編までをも誘発する影響力を持っていることの証 明なのでもある。そして,このような方向性もあってか,現実に,既に世界の 航空業界は,米国のアメリカン航空,デノレタ航空,ユナイテッド航空,ノース ウエスト航空を軸にしたグローパルな 4大グループへと再編成され始ている。 こうして,今後においては,この航空産業のみならず,小売業,金融業,レ ジャー産業等多くの他の産業界においても,また単に大企業のみならず、中小企 業をも含めた形態において,このデータベース・システムの導入によるデータ ベース・マーケティングの展開によってまさに業界再編を伴うマーケティング 革新が指向されてくる。このように,顔の見えるマーケティングを可能にする データベース・マーケテイングの最大の意義とは,実はグローパル・レベルで の企業や事業についての再編成を現出することである。 それでは,この顔の見える顧客をターゲットにしたマーケティングを展開す るには,今後は一体どんなデータベースが必要なのだろうか。それは,まさに 顧客データペース・システムの構築が前提になるのである。そして,またこの 顧客データベース・システムの特徴とは,まさに購入した顧客を基点としたデー タベース・システムとして構築されることである。具体的には,誰が,いつ, どこで,いかなる価格で,何を,どれだけ購入したか等についての特定化から スタートするマーケティングを可能にする構築なのである。言い換えれば,こ の顧客データベース・システムの導入によって,いわば顔の見えるマーケティ ングを可能にすることが期待されている。こうして,顧客の属性,顧客のレス ポンス,顧客の購入行動の掌握を前提としたマーケティングの実践が可能に132 香川大学経済論議 326 なってくる。 ジャクソンとワングの調査分析によれば, このデータベース・システムの用 途は急速に拡大しつつあり, そのためデータペース・マーケティングの可能
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生 についても飛躍的に増大していることが容易に理解できる。 そこで, この顔の 見える段階のマーケティングであるデータベース・マーケテイングを実践する には, まさに以下の 12項目を可能にするデータベース・システムの活用が検討 されるべきである。 第1は,優良顧客を明確化するためのデータベース活用である。これは, も しデータベースをヒューズの提唱でもあるRFM(
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によって評価するならば,顧客のなかの優良顧客が容易に明らかに なることを意味している。 第2は,商品購入(または利用)状態にリンクしたメッセージ伝達に向けた データベース活用である。すなわち,対象顧客が,少量購入顧客か適量購入顧 客かまたは大量購入顧客なのかを特定化して, その上で以下のような的確な対 応を行うことである。すなわち,少量購入顧客にはその顧客が定常的に商品を 購入にいたるまで反復的にメッセージを伝える,適量使用顧客には価格訴求型 のメツセ!ージを止め商品の良さを訴える,大量使用顧客には商品に対するロイ ヤルティを高揚させるようなメッセージを伝えるというような使い分けであ る。 第3
は,消費者の購入意志決定に向けたデータベース活用である。すなわち, 顧客には商品購入状況に応じた感謝の気持ちを表すべきで, とりわけ再購入を 促すメッセージを伝えることが大切なのである。 第 4は,関連商品や補完商品を推奨するためのデータペース活用である。具 体的には,顧客特性を知ってその特性に適合する関連商品を顧客に推奨する, または対象顧客と同様のタイプの他顧客が好んで使用している商品を同時にそ の顧客に対しても推奨するというような対応なのである。 第5
は,販売促進手段の改善に向けたデータベース活用である。具体的には, 販売促進に高い反応を示す顧客を特定化してその顧客に対して販売促進手段の-133ー データベース・マーケテイング戦略 327 または,米国では重要なクーポン有効顧客を発見してその顧客に 投入を行う, のみクーポンを送付するというような対応なのである。 干 《ーーー マーケティング過程の洗練化に向けたデータベース活用である。 第6は, れは,最適な顧客をターゲツトにして適切な内容のコミコニケーションを企画 また,提供する することでコミュニケーション活動の有効性を向上させたり, 商品の構成の変更を行うというような対応なのである。 ブランド価値の維持に向けたデータベース活用である。すなわち, 第7は, どのような方法でこのメッセージを送 一体どのようなメッセージを語るのか, また誰に対してこのメッセージを送るのか等についてよく考えること これは,具体的 チャネル管理の強化等 への活用を意味している。 自由 ステイルス・コミュニケーションの実施へのデータベース活用であ 第
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は, ターゲット データベースに基づき顧客を選別することによって, これは, る。 に選定されない顧客に対しては情報を秘匿することを意味している。 マーケティングp調査の革新へのデータベース活用である。これは, 具体的には,顧客調査の刷新,効率的な商品調査,メディア調査の革新,流通調 査の改革,コミュケーション調査の効率化へ向けたデータベースの活用である。 第11は,顧客サービスの個人化へ向けたデータベース活用である。すなわち, 第1
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るのか, である。 第8は,経営資源の強化へ向けたデータベース活用である。 には,広告の刷新,市場調査の充実,商品開発の促進, これにフィットした これは,顧客の一人ひとりのニーズやウォンツを知って, サービスの提供を行うためのデータベースの活用である。 第 12は,重複排除と統合促進のためのデータベース活用である。これは,コ ミュニケーションの重複を避けるべくその排除に努力するとか, ケーションの統合化によって情報活動の効率化を最大化することを狙ったデー またコミュニ (12) クーポン:一定の優待条件つきのチケットで,消費者の購入促進をはかるもの。日本で は米国のようにクーポンは盛んではない。 (13) ステイJレス・コミュニケーション:スチーノレを通じたコミュニケーションである。ス チールとは静止画像のことである。134- 香川大学経済論叢 328 タベースの活用である。 このように,
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項目にも及ぶ戦略的な視点から,データベースの活用はおお いに期待がかけられている。 こうして, このデータベース・システムの導入に よって,まさに顔の見えるマーケティングの効果的な実践が可能になってくる。 そのために, データベース・マーケティングの本格的な展開が促進されること まさに個としての存在に意義を認めるいわば顧客指向のマーケティン になり, グを重視する時代が到来しつつある。 2 サスベクトの発掘へ向けた戦略的活用 データベース・マーケティングの第2
の意義は,いわばプロスペクト(
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:見込顧客)を発掘するためのマーケ ティング活動に見い出せる。 もちろん,顔の見える顧客であっても,最初はた だのマス顧客であったわけだから,最初の段階では, マス顧客を自社に引き付 けるマーケティングの展開は避けて通れないわけである。すなわち,単なる疑 似客であるサスペクトをどうやって見込み客であるプロスペクトに転換するか カま, このデータベース・マーケティングの最初の段階における要諦なのである。 また, このデータベース・マーケティングにおける最大の特徴とは,第1
にサ スペクトの発掘,第2に顧客の固定化, そして第3に顧客のリテンションを, まさに一つの統合データベースによってコンカレントに展開する科学的なマー ケティング手法ということにある。 その意味では, まずサスペクトからプロスペクトへの転換手法こそが, ア ー タベース・マーケティングを展開する上できわめて重要な課題であることが十 分に理解できるはずである。 このように, データベース・マーケティングとは, 実質的には, まず見込み客の発掘からスタートを切るマーケティングである。 もし, このプロセスが効果的に展開されれば, これによって始めて顧客化が可 能になるし, またそれらの顧客の固定化も可能になってくる。その意味では, このデータベース・マーケティングの第 1段階に展開すべきことはリ}ド・ジェ ネレーション(
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の仕組み作りと,同時にその運用ということ-135ー データベース・マーケティング戦略 329 プロスペクトを,未だに購買するかどうか確定してい になる。言い換えれば, まさ ない疑似客ともいうべきサスペクトのなかから選択していく作業こそが, にここでいうリード・ジェネレーションなのである。 一般的には,ダイレクト・レスポンス 広告に代表されるマス広告等によってプロスペクトを発見して,順次デ}タ ベースへと登録していく方法が採用されている。具体的には,ダイレクト・レ このリード・ジェネレーションには, スポンス広告向けのフリーダイヤノレによってレスポンスを入手する方法が多い たとえ電話であってもまた葉書 メディアについては, もちろん, ょうである。 この方法によってプロスペクトを獲 であってもよいわけである。一般的には, 得する確率は概ね配布数の0..1%と想定されている。このように,マス広告によ る人のプロスペクト化はきわめて効率が悪いプロセスである。 告の効率を示すCPO(Cost Per Order)においても,当然ながら効率が悪くなる のが一般的な現象なのである。ちなみに,このCPOとは一顧客を獲得するため tこ一体いくらかかったのかを示す生産性指標なのである。例えば,新聞広告の そのかかった広告費用を獲得顧客数で割って算出するという方法で したがって,広 i i t } 4 t i I ; i t -3 1 2 i 9 b T t t i f 場合には, このCPOをいかに制減させるかがまさにデータベース・ したがって, ある。 マーケティングPの成否を握っているわけである。 そこで,このような非効率なプロスペクト化からの脱却を可能にする方法と まずもって富士通とドゥ・ハウスのジョイントビジネスである iMiに しては, よるインターネット活用のリパース・マーケティングが注目されるべきである。 このiMiにおいては,電子メールを利用したコミュニケーション・サービスが 行われていることがその最大の特徴なのである。それは, まさに情報市場とい う場における顧客とマーケッターとのコミュニケーションであって, iMiがまさに担おうという構想が契機になっている。 この情報市場とは,生活者が自分の意思で自分の要望をはっきりという市場 これを ここでは,生活者の意思、はエージェントの力を借りて企業のエー (14) iMi:富土通とドゥハウス(マーケテイング会社)がジョイントで展開するネットワー クを利用したエージェントビジネスの実験的な取組み紙織である。従来のダイレクト・ なのである。
330 香川大学経済論叢 -136 ジェントにある特定のバーチャルな場所で出会う仕組みが形成されている。 ここで巡り合った 2つのエージェントは互いの条件を交換し合って商談 そ して, それぞれ それぞれのエージェントは, その結果は, を終了させるわけである。 にメールで発進してそれぞれに判断の要求を (生活者と企業) のクライアント 行うことになる。 まさに目指すべき情報市場の理想型であるが,実際にはこの前 これこそが, 段階の測定的な対応が行われている。すなわち,具体的にはまず生活者がニー そしてこれらからプライパシー情報を除いたものが企 ズのメールを発進して, そうすると,多くの企業ではそのデータを購入 業サイドへと提供されていく。 もしこれ して電子メールによるプレゼンテーション千子うことになる。そして, が良いサービスであれば,生活者がそれに答えるという仕組みによるオベレー このように, iMiにおいてはまさに情報を発進するの が企業であって情報を受信するのが企業なのである,その意味では,ここでは, いわばリパース・マーケティングというべき新たなマーケティングが展開され ていると考えられる。 データベースを持つ これを一体どう ていない企業にとってはまず行わなければならないことだが, 効率的に展開するかが, ションが行われている。 リード・ジェネレーション活動とは, いずれにしても, d o r -4 a l l i t -i l i a t } ! i T U M B i l i -i i その後のマーケティング活動に対して多大な影響を与 この米国においては支配的である 以下においては, そこで, えることになる。 リード・ジェネレーションについての理論的な枠組みの概括的な解説を行って リードの意味であるが,原語に忠実に翻訳すればこれは売上高をもた らしそうな手がかりを示したものであるが,実際の使われ方としては,広告に みる。 まず, ジェネレー また, 対して反応のあった照会者と捉えるのが一般的なのである。 したカ古って, マーケティングに比較して効率の良いマーケティング予であって,いわばリパース・マーケ ティング(消費者が発進して企業が応えるというコミュニケーション形態)というインタ ラクティブなダイレクト・マーケティングの確立を狙っている。 ションの方はまさに実際に何かを生み出すことを意味している。
-137-ー データベース・マーケテイング戦略 331 リード・ジェネレーション活動とは売上高に結びつきそうな照会客を発見して 確認する連続した活動ということができる。また,このリード・ジェネレーショ ン活動のフローについては例えば以下のように概念化することも可能なのであ まず大きく
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つの このリード・ジェネレーション活動については, る。なお, (図表2- 3)。
ステップに分解して考察することが一般的なようである マス媒体などによってサスペクトに対して商品の告知を 第1ステップでは, プロスペクトを確認するための方法論としては,現時点では広 行う。それは, その際 には,当然ながら第2
ステップにつなげる努力を行うことも大切なことである。 例えば,詳細情報を希望するサスペクトに対する呼びかけ等はとりわけ必要な 3 1 1 1 l p t ? i l i -t i l l } │ j e -l J くマス媒体に訴えかけるしか的確な方法がないからである。もちろん, メッセージなのである。 マーケッターサイドがサスペクトからの照会を待つこと 第2ステップでは, この照会のあった者こそがいわばサスペクトからプロスペク プ したがって, ロスペクトの氏名,住所,電話番号等は,正確に聞いておくことが大切なので この際には,当然ながら, そして, トに転換した見込み客なのである。 になる。 この段階で初めてデータベース・マーケティングを展開する こうして, ある。 ためのデータベースが構築されてくる。 マーケッターがあらかじめ広告で約束した詳細情報を無 第3ステップでは, リード・ジェネレーション・システムの基本構造 企 業 O 広 告ハ
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送付 消 資 者 図 表2-3 弘 r事例分析データベース・マーケティングVより 江 尻-138 香川大学経済論叢 332 料で提供すると共に,調査表を送付してプロスペクトの商業,商品の関心度, 購入意志の強弱等の情報を入手する。こうして,データベースの精度が次第に 高まっていくわけである。 このように,このリード・ジェネレーション活動を行うならば,固定顧客を 保持していない場合においても,データベース・マーケティングの展開につい ては誰でもいつからでも容易に可能になってくる。したがって,新たに事業を スタートさせる場合等においても,また,これからデータベース・システムを 導入する企業にとっても,まさにデータベース・マーケテイングを実践するこ とは容易に可能なのである。 3. ブランド・ビルデイングへの戦略的活用 ドン・ペパーズの
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マーケティングが紹介されてから,データ ベース・マーケティングとは,実は顧客との関係を捉えたマーケティング手法 であるという考え方が根づいている。このデータベース・マーケテイングはも ちろん顧客との関係を重視するマーケティングではあるのだが,大切なことは, このデータベース・マーケティングが販売すべき商品のマーチャング、イジング 計画と密接な関係があることである。1
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大会においてドン・シュルツも述べていたように,データベース・ マーケティングにおいても,今後はブランド開発がきわめて大切な戦略課題に なっている。 このシュルツによれば,今後のダイレクト・マーケティングにおいては,顧 客を捉えた事業開発の促進と共に,同時にブランド開発についてもデータベー ス・マーケッターの取り組むべき重要な課題なのである。前述したように,デー タベース・マーケティングにおいては,よい商品,よいオファー,そしてクオ リティの高い顧客リストがその事業の成立のための要諦なのである。だからこ そ, CPOの効率を増大させることに各マーケッターは最大のエネルギーを注い できたわけである。しかしながら,昨今のインターネット革命は,従来のこの データベース・マーケティングについての考え方に対して,まさに根本的な修333 データベース・マーケティング戦略 -139-正を要請していると考えるべきである。 すなわち,このことは取りも直さず,将来の消費者と企業との聞におけるコ ミュニケーションの形態が根本的に転換することを意味している。すなわち, 過去においてはメーカーが流通業者に情報を流していたのだが,現在では流通 業者が消費者に情報を提供しており,また将来的には消費者が多様なメディア を駆使して情報を得るという形態への変化が予見されている。そうなると,消 費者から情報にアクセスしてもらうためには,まさにブランドを超えるものを 考えることはきわめて困難なのである。すなわち,このブランドこそが消費者 を顧客としてボンディングするためには最強のツールになってくる。 こうして,データベース・マーケティングにおいてもブランドによるリレー ションシップが要請されてくる。すなわち,ブランド開発によって,第
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は消 費者から評判とリレーションシップが獲得できる,第 2はそれが結果的にはリ レーションに結びついていく,第3は顧客からの信頼が獲得できて商品の受容 が確実のものになり,第 4は事業への参入が容易になりアソシエートづくりが 容易になるというようなメリットがもたらされる。 このデータベース・マーケティングの展開は,実はカスタマー・インベスト メント・マーケティングの展開とほぽ同義と考えることができる。したがって, 当然ながら,カスタマーのROI(Return on Investment)を高めることが大切に なり,そのためには, CPOよりはブランド開発のほうがより有効性が高いと想 定できるのである。すなわち,今後はブランド開発を顧客とのリレーションシッ プの一部分として捉えることが大切であり,このブランドを知的資本として捉 える考え方が大切なのである。そして,こうしてリレーションシップのルール としてのブランドは,第1は価格競争からの脱却,第2はマーケティング費用 の削減,第3は容易な新製品の販売,というメリットの享受を可能にするよう になる。すなわち,今後のマ}ケティングにおいては,製品やサ}ビスの価値 以上にブランドの価値が増大することが予見できる。 (15) ROI:資本生産性を計る指標である。投資に対する利益の効率を表している。昨今で は,企業の実力を計る指標としてバランスをベースにした考え方が重視されている。140← 香川大学経済論叢 334 顧客を基軸に据えたマーケティングとしては,新規顧客の拡大を指向するコ ンクエスト・マーケティングと既存顧客の維持を指向するリテンション・マー ケテイングのことおりの方法があげられる。昨今,マーケティングの議論は, ややリテンション・マーケティングに重点、が置かれているのだが,実際には, 顧客を集めることからスタートせざるをえない場合が多いこともあって, コン クエスト・マーケティングもまたないがしろにはできない重要なものなのであ る。 そこで, ここではブランド重視という観点との関連から, このコンクエス ト・マーケテイングにおけるブランド・スイッチングの手法についてを概括的 な論述を行うことにする。 このブランド・スイッチングの方法は,実はリード・ジェネレーションの方 法ときわめて類似した形態なのである。 この基本的な特徴については,概ね以 下の4点に要約することができる。第1は, 競合ブランドの顧客を発見するた めにリード・ジェネレーション活動を実施することである。第
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は,競合ブラ ンドの顧客のなかからリード広告反応者に対してニーズやウォンツの調査を行 うことである。第3は, そのニーズやウォンツの分析からターゲットに対する 魅力的な条件の提示を行いまさにブランド・スイッチングの仕掛けを展開する ことである。第4
は, この結果多くの競合ブランドの顧客を自社ブランドの顧 客に転換させることである。 このようなプロセスを経ることで,実際にプラン ド・スイッチングが展開されていくわけである。今後のダイレクト・マーケティ ングにおいては, こうして獲得された顧客を自社のデータベースに蓄積して, その上でこれらの顧客に対してきめ細かなデータベース・マーケティングを展 開することがおおいに期待されている。 ブランド開発が重要である理由は,実はブランドビジネスの本質が売上指向 のマス・マーケティングではなく, むしろ価値や夢を売るいわばパーソナノレ・ マーケティングの考え方に近いからである。すなわち,優れたブランドには多 くの優位点があるが, そのなかから, ここでは片平秀貴が強調しており同時に 筆者の長年の主張でもある,いわゆるクラブ組織とスーパー・カスタマーにつ いて以下に簡単に言及を行っておく。335 データベース・マーケティング戦略 -141-顧客と企業の関係を,アドボケイトやパートナーという関係にまで高めるこ とがボンデイングの目標であるが,このボンディングを最も有効に実現する方 法の一つがこのブランドなのである。したがって,いわゆるパワー・ブランド の確立こそがまさに顧客のリレーションを高めることにもなっている。このパ ワー・ブランドの特徴とは,消費者の商品そのものを持ちたいというよりはむ しろ仲間に入ってみたいというようなニーズに基づいている。すなわち,商品 を持つことでその機能性よりは,例えばプラダ仲間やナイキ仲間というクラブ 組織への参画を望んでいるのである。このようなブランドで共有化された価値 に基づく連帯はきわめて強聞なもので,これを打ち破るコンクエスト・マーケ