NII-Electronic Library Service
自動
車
デザ
イ
ン
と
標
準
化
〜
「トヨタデザ ィ
ンにお
ける
標準
化 (共
通
化 ) の考
え方
」Standardization
inAutomobile
Design
御園秀
一
MISONO
Hideichi
小 西
誠
KONISHI
Makoto
トヨタ 自動 車 株式会 社 デ ザイン本 部
Design
Center,
Toyota
Motor
Corporation
1.
は じめに デ ザインにお け る標準化を考え る とき、
ともすれ ば、
創 造 的な 活 動 に何らかの枠 組み が 設けられ るような、
ネ ガ ティブ な 側 面 だ け が意識 され ることも多い。
しか し実 際のところ、
標 準 化という概 念はデ ザ イ ナー
(作り手 )と ユー
ザー
の 両方にメリットをもたらす、
重 要 な 考え方で あると思う。な ぜ な ら「標 準 化とは物 事の本 質的な ところ を掴むこ と」であり
、
デ ザ イナー
が そのような 能 力 を 磨 くことは良 い 商品 を提供 することの根 本の ひとつ と考えているか ら であ る。本稿で は その視 点に おい て弊 社で の標 準化に 纏わ るいくつ かの 足 跡 と考え方にっ い て 紹介したい。
まず 始めに運 転 席 周りの操 作・
表 示類の 標 準 化に つ いて紹介し、
次に昨 今 多くの関心 を集めているユ ニ バー
サル デ ザイン に関し ての 取り組み に触 れ たい。 後 半ではハー
ド面 での 標準化の事 例 を挙 げな が ら、
さら には弊社での デ ザイン的 な 戦 略 面 での 応用 とし て車の 顔につ いての 事 例を紹 介し、標準 化 そして 共 通 化とは デ ザインにとっ てどの ような もの であ るかを述べ る。
2.
コントロー
ル類、
ディスプレイ類の配置 2.
1.
表示操作 の標 準化 (1
)CDS
弊 社デ ザ インで約 20 年ほど前から取 り組ん できた標 準化 とし て表示操 作 類の レイアウトに 関するルー
ル がある
.
弊 社のHMI
(=Human
Machine
lnterface
)の フ ィロソフ ィ
ー
を(図1
)に示す。
運転 中の認知・
判断のた め に は な るべ く「視 線 移 動は少 なく/ 表示は遠 く大 きく」、
操 作 をしや す くす るた め に は な るべ く「良く使 うスイッチ はわ かりや すく配置 /手 を離さずに操 作」出 来るように すべ きであ る。
また、
それ らの配置のあ りか た は、
「ユー
ザー
がトヨタ のどの車に乗り換えてもまっ た く違 和 感 無 く操 作 でき」かつ 「レ ンタカー
やセカンドカー
等 異 な る 車 両 を利 用 され た 場合に 戸惑うことの 無い 様」ルー
ル 化して い る。
弊社で はこれ を「表示・
操 作の標 準化=Controls
図1HM1
のフィ ロソ フィー
and
Displays
Standardization」す なわちCDS と呼び、
以下に述べ るガ イ ドラインに 沿っ た 室内デ ザインを行 なっ て いる
。
基 本の 考え方: コ ントロー
ル / ディ スプレイ共その 重 要 度に従っ た プライオ リティ付 け を行 うこと。
配置につ い ては 運転 席廻 りを 区分し,
操 作 / 視 認 しや すいゾー
ンに 重 要度の 高いコ ン トロー
ル / ディ スプレイを配 置し ていく。 その 際以 下も併せ て考 慮してい る。 (i
) 誤操 作の 無い様に左右に分 離するな ど 特 別 な 配慮をする重 要コ ントロー
ル (例;ライテ ィングSW
対ワイパー
SW )(
li
) 操 作したい 対 象 に 感覚的 に 近い 配 置(例 :パ ワー
ウインドウSW
) (Ul) 助手席からの 操 作 も必要なコ ン トロー
ル はセン ター
に(例:オー
ディオ等 ) これ らの 他、
コ ントロー
ル の操 作 方 向につ い ても細 か く定 めてい る。
こ の ため に特にモー
ション ステレオタイプ (Motion stereotype )の研究を行 ないその成果 を反映さ せて いる。
通常、
右回り、
右方 向、
上 方 向はON
方 向 とな るが、
ワイパー
S W だ けは例外 的にレバー
を下方 向に操 作し てON
として いる。
これは対 向 車に泥 水を浴び せ られ 視 界を一
瞬に し て失っ た 時 な ど 、咄嗟にレ バー
を叩くこ とによりワイパー
を作動 させ ることが出 来 るように して いる30 sPECIAL IssuE oF JssD vol
.
11 No.
4 2004 デ ザ イ ン学研究 特 集 号NII-Electronic Library Service からであ る
。
こ の様に配置と操 作方向 につ い ては、習慣 に よ り異 なるステレオ タイ プ や 車 特 有のニー
ズな ど、
多 様 な 要 素 を検 討した 上でないと軽々に は 決 定できない。
〈コ ントロー
ル類〉 緊 急 度 重要度 ● 総合 優 先 度 使 用頻 度一
→AA 、
A 、
B、C
走 行 中の操f
装 着 率幽
鯲
1
驗
」
一騨
ディスプレイの 適正配置ゾー
ンは(図3
)に示す。
蜘
, 左ハ ンドル車団
ll
《kPper
糶{bOwee灘韓
・γ
一 … ゆ鱗
m
,自
コントロー
ル類の適正配置ゾー
ンは(図2
)に 示 す。
圃
[
塹コ
議1Iq
r}11Io 越脚 } 厰e 勸 魍匪 , ハ ンドル車 図 2 コントロー
ル類の適正配 置ゾー
ン自
瞬
肥
、 右ハンドル車 各スイッチ は機 能 毎に優 先 度を 判 定 しいず れ かの 配置 ゾー
ンを推 奨してい る。例 え ばマ スター
ライ テ ィン グSW
は総 合 優先度が「AA =
最も使いやすい位 置に配 置す る」という基準で、
適正配 置ゾー
ンは「1
= ステ ア リ ングコラム・
パ ッド 」で ある。
〈ディスプレイ類〉轗
人命に 関 わる車 両の重 大 な 損 傷 長 期的に 見 ると危 険 が 及 ぶ状態 表 示 便利 表 示 等 → ●総 合 優 先度AA
、A
、B
、C
響
回
灘由
田
− 図3
ディ スプレイ類の適 正 配置ゾー
ン ディスプレイ も同様の 考え方で、
例 え ばスピー
ドメー
ター
は、
「AA=
最も 見 やすい位 置に配 置する」という基 準で、
適正配 置 ゾー
ンは 「1
屆かIo
」である。
さらに 走 行中に操 作が 必要なもの に加 えて、
停 車 中 に行なうべ き操 作 (例え ばナ ビ の詳 細設定 など)や 表 示 も区 別した 上で優 先 付け を行 ない 検討 してい る。 最近 の課 題とし て は、
機 能 増 加に よりスイッチ 数 が増え、
物理的にも配 置 し切 れ な くなる恐 れ が あ ること、
ステアリングスイッチやバ イワイヤ
ー
化 に伴 なうさらな る配 置の自由度 増 加 や、
運転 支 援システム等の 運転 席廻 りの表示の 増加に 対 応 したル
ー
ル作り など が ある。
(2)シンボルマー
ク[注1 ]自動 車の デ ザインと標 準 化のもう
一
つ の 関わ りは、
計 器 板な どに表示するシ ンボルマー
クであっ た。
1948
年; 国連に 国際 交通 標 識 提案1957
年: フォー
ドタウナスが自 動 車のコ ントロー
ル にシ ンボル マ
ー
クを採用 した。そ れ まで は シ ンボル表示 そのものが 無 かっ た 。 1964年: 日本 各 社 (5社 )がシンボルマー
クを採用。
こ の時 点で は 各 社 ご とに 独 自 にシンボルマ
ー
クを考 案して お り、
同一
機 能 を表 示 す るた め にい くつ かの シ ン ボル が存 在し てい た。
しか し前に述べ た通 りユー
ザー
デ サ イ ン学 研 究 特 集 号 sPECIAL IssuE QF JSSD vol
,
11 No.
4 20G4 31NII-Electronic Library Service が 異 な る 車両を利 用 された場 合に も戸惑うこと無 く使 え るように 日本 国 内に お け るシ ンボル マ
ー
クの標 準 化が 始まった。
国際 的に は1966年 頃
ISO
[注2
]/TC22
/SCI3
(国 際標 準化 機構/自動 車 専 門 委 員 会 /人間工学分 科会)にWG5
(ワー
キンググルー
プ )を設置。ISO
2575
を発 行。
1967 年 にJASO
[注3
ココントロー
ル ノブの識別方 法部「
会が発足し、
翌 年JASO
6805
「コントロー
ル ノブの 識 別 記 号」が 発行 され た(収 録シ ンボル マー
ク数18
、機 能17
種 類 )。CDS
配置ゾー
ンに 当ては め たもの を図4
に示す。
シ ンボル マ
ー
クの 国 際化で難しいの は国や地域に よ り図のイメー
ジ が 必ずしも共通の 意 味を持た ない こと で、
例 え ばテストの採 点でレ点は 西 洋ではOK
だ が日 本 で はNG の 意味 をもち、正反 対になるような場 合であ る。 ま た業 種によ り同じ意 味 を持 ちながら異 なっ たシ ン ボルマー
クが併 存し統一
が困難 なことな どがあ る。 こ の た めISO の シ ンボル マー
クの 取 り決め に は 長 期 間 を 要 することが多い。
国 際的なパー
セプションギャップの例 として有名 なの は 非 常口の シン ボルマー
ク である(図5
)。外へ 逃げ る人 をモチー
フ に し て いる が、
見ように よ っ て は火の 中に飛 び 込 む 絵とし て捉え られてしまう、
というもの であ る。 さら には年々 充 実 する 装 備、
エ レクトロニ クスを 始 めとする新技術の 発 展、
ユー
ザー
の ニー
ズ の 変 化、
国 際 化へ の対 応、
社 図5
非 常 ロシンボル 会 環 境の変化 (イン フラな ど )等の 様々 な観点 に より、
継 続 的に審議、
改 定 が 行 な わ れて い る。 2.
2.
マル チ メディア のHMl
自動 車のIT
化の 進展に伴ない、
デ ザイナー
が グ ラフ ィックの みな らず、
ユー
ザビリティ、
インタラ ク ションデ ザ インを含め た 取 り組 み を すべ きとの 機 運が弊 社 内でも 高 ま り、デ ザ イン部 門が ナビゲー
ションシステ ムを始め とするカー
マ ル チメディア のインター
フェ一一
スデ ザイン に本 格 的に関 与し始め たの は ごく最 近からである。 そ れ以前は ナ ビゲー
ション シ ステムも黎 明 期で、
開 発メー
カー
のデ ザイナー
がデ ザインした もの に 対 してグ ラフ ィ ックや 配色の ア ドバ イスを行 なっ て いた程 度であった。
右ハン ドル車ン群
騨 eSb《働 踐r クー
う一
赫 A−
《 姻P碗 TACcu 薩γkM シ7鑓励 癬 黐 AMpuru 魑轟脅 Otm Cり飢A瞬 S隠AV
量 1看
葬
ム
彦
曾魯
網 卿絢 蘭 ゆ
Y
ム
畑 睡 マ闘購▼V
。。 ♂ 丁皀廓s 禰 醐 幽E照 耀 脚 鰍 黼 vllkWr
:串
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6
れ し丁 TELEsoO1
』Wo
儲
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韆
♂ o
の
注)麗
ζ
濾
7
孕躍
響
用 件 に てH 推 嚢位無 {1k疫 は第一
優梅} {明碍にしマ の み配載tる。
図4
コ ントロー
ル の適正配 置 ゾー
ン32 sPEclAL IssuE oF JssD vol
.
11 No.
4 2004 デ サ イ ン学 研 究 特 集 号NII-Electronic Library Service
2001
年モデル まで は仕 向 け地 ご とに 文化 習 慣や嗜 好 に 配慮したHMI
デ ザインを行 なっ てきた が、2003
年 モ デル より各仕 向 け 地の 文 化習慣 に は 配慮をしながら も、HMI
のグロー
バ ル スタンダー
ド化 を試み た(図6
)。
その 後2003
年モ デル は発 売 開始 か らまだ1 年に 満 た な いが、
特に問 題は発 生し て いない。
言語 や 地 図記号 な どの 地 域 差があるため、
完 全 なる標 準 化に はまだ課 題 が多
い が、
将 来的に は 国際 的な 標 準 化 を 提案出来る 様に し て行 きたい。 その第一
歩とし て、2003
年モ デルの
GUI
(Graphical
User
Interface
)を世に問 う意 味 も含め (財 )日本産 業 デ ザイン振興会 [注
4
]の グッドデ ザイ ン賞にエ ントリー
した ところ、
特別賞として 「インタラクシ ョンデ ザイン賞
」を頂いた。これ までの 取 り組 み が 高 く評 価され たことで、
今 後こ のデ ザ イン領 域のプレゼンスが より高 まり,
更 なる発展に向 けて前 進 することを期 待し たい。
その2003 年 ナビの事 例 として弊社の 工場装着オ プ ションとし て上 級 車ク ラスを 中 心に幅 広 く設 定 されている
EMV
(Electro
Multi
Vision
)ナ ビのHMI
デ ザ インを紹 介したい。EMV
(図7)は カー
ナビゲー
ションを始め、
車種に よ って異なるが、G
−Book
各種情 報コ ンテンツ、
エ アコ ン、
オー
ディオ、
車 両情 報、
周辺監 視カメラ画 像な ど様々 なシステムの表示を行 なって いる。
設 計のロジックをそのま ま表 現し て し まうと、
各システ ム の操作の ロジックや 画 面 遷 移等が まち まちとなりユー
ザー
に混 乱を 与 えてしまう。
インター
フェー
スデ ザイナー
として は、
操 作、
表示のデ ザインをなんとか一
貫性の あ るものに す る 必 要 が あ る。この ときの 「一
貫性」の意 味 図7EMV
(エレク トロ マル チビジョン) の例 図6
ナビ画 面デザインテー
マの統一
化デ ザ イン学 研 究 特 集 号 sPEciAL ISsuE oF JssD voP
.
11 No.
4 2004 33 N工 工一
Eleotronio LibraryNII-Electronic Library Service としては; 前述した
CDS
的な「スイッチ等 要 素の ルー
ル 化 (定 型 サイ ズ)」や「文宇 高さ、SW
配置のフォー
マ ット化」等の 人間工学 的ルー
ルEMV
を情報の出口ととらえ た、
異 なるシ ステム間の デザイン整 合 性 (画 面デ ザ イン テー
マ ) とい う2
つ の 意 味で各システム 間に一
貫性を持たせ る べ き 、 と考 えている。その一
方でユー
ザー
が操 作 中 に 自分のいる場所(階 層)が 常にわか るような 操作自体の ナビゲー
ション機 能 も忘 れて はな らない。Web
デ ザ イン 等で 研究され てい るよ うな工 夫が今 後一
層必 要であ る。
また、
各メニュー
画 面がパター
ン化されつ つ あ る な か で、
今 後 さらなる操 作 性 向上や、
業 界内で の標 準 化 を急ぎたい。
3 .
ユ ニ バー
サルデザイン(UD
) 最 近 急 激に関心 が高まってきた分 野だ が、
この 言 葉 は米国 ノー
スカロライナ大 学 ロナルド・
メイス教 授によ っ て初めて提 唱 され た。
「人々 の性、
年 齢や 身体的 特 性に か かわ らず できるかぎりすべ ての人々が快適に使用 し、
参加し、
かつ 豊か で充 実した体 験ができる デ ザ イン の 提 供。
」 ン適合度」と呼 ば れ る評 価 基 準 を定 義 し、これ を客 観的 な評価 指 標とし て、
2003 年5
月に発 売され た新型 ラウム 以降の開発 車両に適用し て い る。
こ れ に よ り、
使いやす さの指 標が明 確になり、
開 発 者の 間での 共 通の尺度と なっ てい る ば か りで な く、
ユー
ザー
の 商品 選 択の 判 断 材 料ともなる。 ユー
ザビリ テ ィの標 準 化という視点で、弊 社で のUD
の指 標 化の考 え方 を述べ たい。
表1
ユニ バー
サ ルデ ザインプ リンシ プル [注5
] ユ ニ バー
サル デ ザ インプリン シプル (ロナルド メイス) 1)誰にでも公平に使用できる 2) 使 う上で 自 由度が高い 3) 簡 単で直 感 的に わ かる使 用方法4
) 必 要 な 情 報 が す ぐに理 解できる5
)エ ラー
や 危険につ な がらないデ ザイ ン 6) 無理な姿 勢 や 強い力 なしに楽に使 用できる 7) 充 分な サ イズ、
ス ベー
スとなっている 表2
トヨタ ユ ニ バー
サル プリンシプル トヨタ ユ ニ バー
サル プリン シプル 1)シ ンプル で直 感 的に わ かる操 作・
使用方 法2
)見 やすくわか りや すい表 示 3)身体に負担の少 ない乗降動 作や姿勢 4) 操 作 が楽で簡 単 な運 転 操 作 系 5) 便 利で扱いや すい 内装部品6
) 周辺状 況 がつ か み や すい こと7
)広範囲 な使用環 境で使いや すいこと3.
1.
自動 車のユ ニ バー
サルデ ザ イン 弊 社がユ ニ バー
サル デ ザイ ン(UD
)に着目 し始 め た の は、
約10 年 前からだが、
そ れ 以前か らウェ ル キャブ シリー
ズに よ るバ リアフリー
デ ザインを行 なっ て いた。
当 時はべ一
スとな る車 を 個々 の ユー
ザー
の事 情に応じて カス タマイズ していた が、その 後、 高齢 者、妊 婦 や 様々 な体 格 差のユー
ザー
(運 転者と同 乗者)により使い易く なるような工夫 を重ねてきている。
狭 義の バリアフリー
で は、
特定 個人に使い 易くなっ ても、
他の 人 に は必 ずしも そうで はない ことが多か った。標 準 化の観点 か らも「す べ ての 人に使い やすい 」UD
の原 則 [注5 ]を表1に 示 し、
その精 神 を弊 社での 車 両 開 発に落 とし込んだ 原 則 を 表2に 示 す。
弊 社のユ ニ バー
サル デ ザインで は、
人 間工学 的 な 指 標と し て後 述 する「エ ル ゴインデックス [注6]/シー
(1)指標1
:エ ルゴ インデックス エル ゴインデックスとは体 格 や 身 体 機 能 差 を考 慮し た、
使いや す さを 表 す 指 標 で あ る。
人 間工学の視 点か ら、
表3
に示すように6
つ のカテゴリー
、180
の評価項 目 を設定し、
人 間特 性から各 項目を評 価、
点 数 付け を行 な う。
各カ テゴリー
毎に点 数を合 計 する ことに よ り、
各車 両の優 劣比較、
目 標 設定 など に利 用し、
客 観 的 な開 発 デー
ター
として活 用 してい る。
具 体 例 として、
乗 降 性の 評 価 項 目の 1つ で あ る「重 心移動のしや す さ (図8
)」では、
足 腰の 筋肉へ の 負 担 とヒップポイント(シー
ト着 座位 置)高 さとの 関 係 を5段 階 評価して いる。
これ ら各 項 目の得 点に より人 間工学 性 能の定量的な 評価が可能となっ た。
さらに、
「すべ ての 人が使い や すく、
様々 なシー
ン に おいて快適に使いこなせ るiレベル へ の 到 達 度 を「ユ ニ34 SPEclAL IssUE OF JssD vol
,
lt No,
4 20D4 デ ザ イン学 研 究 特 集 号NII-Electronic Library Service バ
ー
サル デ ザイン マー
ク」の 数で 図9の よ うに表 現し た。
図9
の 「新型 車」とは新型ラウムを示 す。
(2
)指 標皿:シー
ン適 合 度 ユー
ザー
調 査に基づい て、
車 両 を使 うシー
ン/ 使わ れ方を約100 項 目 に わ たっ てデー
ター
ベー
ス化 をおこ なっ た(表4
)。 車 両 毎 に アンケー
トやヒア リング 調 査 を 行ない、
ユー
ザー
の クル マ に対 する要 求 (シー
ン/ 使 われ方 )をデー
ター
ベー
ス化し、
その 中から重要 な3
0
項目 を 選 び 出し、
そ れ らの 実現程 度 を点 数 評 価し 「シー
ン適 合 度」とい う尺度をマー
クで 表 示した(表5
)。
そ れ に よっ て開発項 目 を 明 確 に して、その実現の た めの アイテム、
アイデア開 発につ なげてゆく。 (3
)今後に向けて エ ル ゴインデックスとシー
ン適 合 度での 定 量化 に よ り、
以 下の こ とが確認 され て い る。
車の コ ンセプト毎に一
定の レ ベ ル 以上の 性 能が 標準 化 され たこと。 こ の ことは 走行性 能等と同 様 に 車の基 本 性 能の ひとつ とし て重 要 視 されてきたこと。従っ てスポ
ー
ツカー
やミニ バ ン の 様にコンセプ ト の 異な る車では その 重 点の 置き方 その もの が車 両 企画となる。
3.
2.
業 種 を超えた標 準 化 日用 品や 建 築 等の 他 業 種で は車より早 く個々 にUD
の標準化に 取 り組 んでいるが、
今 後のUD
で は 業 種 を 超え た標 準 化が重 要となる。 業 種 を超え た取り組 みへ の気運 を受けて、IAUD
(国 際ユ ニヴァー
サルデ ザ イン 協 議 会 [注 8 ])の 立ち上げが昨 年 行 な われた。
本 会は 表 3 エルゴ インデックス (カテゴ リー
別評価 項 目例) [注7]韈 難
欝韆
鑾
纛
縫
灘
纖
勞 励 轟 矯 臨、
囁
、
螺w.
那 説 冨 覗 駁 解狐
F
解
菖
鮪 濯 ぐ鋸
丶 翁乱
.
翻旨
¢ 掛 幽 凝 磁弾
縮 轍猟
誨 翫 韓 蛇 燃鄲
菖 鍬紹
勝 炉 寒 ゆ研
π
り
塘漁
臓 鳰 黙 醗謡
齢
嚇 誘撫
蠹 鵬 瓶戦
滅
臓 も錘
謡 鵜 讖鞘
熱 鷲 鶴 爵 聯 恥 麟 麒 黛 サ柵
購 灘辮
織
描 螻響
魔 鷺.
無、
繰 貯騨
嚇 藤.
,
ー
尸
畿 騨 羅 鵜 勲 蝉 蠻難
靆
難
難即
灘 齢 爨 齢 舞 懸 羅.
脚
轍 轡 齢 驚 鑞 龝”
翻
縫
鑿
鑾
蠻
’
嫁 論 灘 孅鱗 難灘 難騰 覊 饑 蠹 畷 齢 鑰髓
疆驤
灘 鑛 騨 爨 羅 鰈 驫 罅 繼 韆 鄰 釁 蟹鑞
羅
齢 鯲 緲 潔 灘 顯 鞭 靆 韓 髴.
簸 鱒 鏤 軸 慧 鱒 譲 鰕 膨 聯 鋤 鵬 欝、
蠏 藩罹
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覊 鑞
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〆
、
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瓢 櫞 瑛 瓣 響 潔 醸 轡 蟹ー
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感 蜘 鱗 齦 齢 篭 勲 雌 塑 玲 残 翻 鰯 鶴 色 賦叺
鷲 継 際 弘 歇 鞭 顕 翫 毅 炉.
勝 葛 噂 ψ 縮 輪 縫 鵯 か 鰭 滯 蘇縦
罪靴
賢 韓 噸舳
鴇
嚇 汐鵠
鞭 甥 ゆ 箏 騨 設 喉 弧糠
雌 翻 ぜ 麟ρ
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畑 評 磐備
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一
藷ふ
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罷 蛾 綜 隷 嚇 笥 参 讃跚
驪
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卵 し ど囁
縛
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ー
“
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貞
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沿
甲
嫁 購 驚 鞭 瓢 黔敵
ザ
ぞ 》臨
騒
艶 鵬へ
謬
賜
癜 襲沿
劉
唄
瓢
慧 藻r
津
腎
恥
采眠
紗 儲、
一
捲い
誤 熟 諞算
郵 ぎ ∵
眠
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魁“
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瓢 ×く
環 夢、
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蕩窃
一
咢 郵 毒 韓
・
継
們
、
誇 ひ 蝋 詠籍
ド
.
翁 翻 蘇 献伽
鄭 鑓 無 黙 認 離粥
ド
ぽ 驚σ
广
譲 蟻 罅 識 倉 傘 ゴ 臨 黔 憲 協 誤 澄 撫 斡・
犠
鞘
腔 群瑠
し
喬喚
(
∴.
“
熱 麟 鎗 鋸 欝輪
靭 贊 野ワ
磯 鞭 墅 黛 黙 磁鯨 叡 黔 鯨 蠍 難 総 瓣
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黌今
》 隷 君が
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W…
総
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歎 ひ甜
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晦 絵 曾 穀 鍾 ξ 静罫
.
報 黛 購 晶離
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、
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1
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1
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縣
町 鯉獄
騒 磯 轟齢
蜘 縦 藻 鰹 灣 鞭 撃鰓
惨 寓 罪螂
監 験 ダ賻
総 郎 芻齢
籌
移 襲点
図8
重心移 動のしやすさの評 価 点 [注7
] 図9
乗降 性 評価結果 (各 評価 項 目 の 合 計 点 ) [注7]デ ザ イ ン学研究 特集号 sPEcIAL IssuE oF JssD vol
.
11 No.
4 2004 35NII-Electronic Library Service
2002
年11月 に 行 わ れ た 国 際UD 会議2002 での 成 果 を踏
まえ、
業種・
業態 を超 え た情 報共有・
テー
マ研 究、
事 業 開 発 を通じた実 践、
評 価、
そして情 報発信 まで、
一
貫してUD
の視 点で推 進し、UD
の 更なる普及 と実現 を 目指し、2003 年 11月 に設立され た。 発足 時の会 員企業109
社をは じめ、
国内 外に幅広い ネットワー
ク に よ り、
実 践 的なユ ニ バー
サル デザ イン の研 究と実 現 を推 進して いく。
業 種を超え た 活動の 詳細は、
現在 企画中 だが、
具 体 的 な成 果 を 出 せ るように したい。4 .
広 義の標 準化 (共 通化 ) こ こまでは トヨタデ ザインでの ルー
ル、
ガイドライン、
規 格とい っ た ど ち らか とい え ば 狭義としての標準化の 取 り 組みを紹 介した。
こ こか らは モ ノや 戦 略といった 広義 的 な面 での標準化 又 は 共 通 化の 事例に触れてみた い。
4.
1.
ボデー
の共 通 化 車の構 成は大 別 するとプラットフ ォー
ム (車 台 )とアッ パー
ボデー
(車 体 )に2
分 され る。
プ ラットフォー
ムの 開 発 に は膨 大 な 時間 と経 費が か か るか ら、
効率 的 な 車 種 間の プ ラットフ ォー
ム共 通化は経 営 戦 略の重 要な一
要 素となる。
こ れ に対しユー
ザー
のニー
ズや嗜 好に対 応 しや すい アッパー
ボ デー
部 分は数 多 くの バ リエー
ション を生み 出す。
経 営 的に投 資 効 率を高めることと個別ニー
ズの両 立 に は 悩 み が あ る が その 解決 例 として カロー
ラの 事 例が ある。 図10
は弊社のグロー
バ ルスタンダー
ドを 目指し て い るカロー
ラの アジア、
米国、
欧 州、
日本の 各 仕 向け地 毎 の顔の 比 較 を示 す。
プ ラットフ ォー
ムや ドアパ ネル な ど 各 仕 向け 地で共 通のニー
ズ によっ てデ ザ イン・
設 計 さ れ る基 本 部 分は共通とし、
地 域・
文 化・
環 境な どへ の理 表 4 シー
ン/使 わ れ 方デー
ター
ベー
ス例 [注7
]分類
シー
ン 車 両の適 合度
を評 価 する具 体的シチュ エー
シ ョ ン 旅 行・
初めての 道を走 行・
高 速 道 路を長 時 間走行・
運 転 手が途 中で交 代・観
光地 での駐 車・
頻 繁に 地図を見て道を調べ ながら 運転・
CD/MD をこま め に 入 れ替え・一
定 速 度で長い 時間走 行・
同 じ姿
勢で長い時 間 走 行・
普 段 やら ない縦 列 駐車 をする 買い 物・
母親が 子供を連
れ て買い 物・
街での駐
車・
ホー
ム セ ン ター
で の 買い物・
コ ン ビニ で の買い物・
子供を後 席に乗せ、
そのま ま運 転 席へ 移 動・
ベ ビー
カー
ご と車に乗り 込み、
チャイル ドシー
トの 移 動を行 う・
幅の 狭い 駐 車場で荷
物 を 載せ る・
両 手で荷
物 を 持っ た状 態で ドアを 開 け 閉めする●
●
●
●
9
・
o
・
●
●
●
●
●
送 迎・
祖父母の送 り迎え・
子 供の 送り迎え・
妊婦の 送 り 迎 え・
祖父母が後 席に乗る・
車いす に 乗っ てい る 人 を助手席に座らせ る。
・
車いすか らの 移 動 後、
車いすを収 納 表5
ラウ ムにお け るユー
ザー
対 話 型 開発 [注 7 ] 艦 羅 e“
舞驚 軽.
蒙
蠶
総 纈
籍轟、
忌 凋 髯 韆 騨 難購 飆・
靉 難 覊 翻 壕鱗 嬲翻
1
灘
難
撚
撫
講1
灘
鼎
鐙 購 鱗難 譏 鑼 燭購 繕麝糊 亀鍼”
聽
縄鸚
嚢
賊 畿 織 鱒36 sPEcIAL IssuE oF JSSD vol
.
11 No.
4 2Do4 デ ザ イ ン学研究 特 集 号NII-Electronic Library Service 解 や配慮 を行 ない
、
各 市 場の嗜 好 差が現われる顔の デ ザインを 打 ち 分 け ることに よ り両者をバ ラン スさせ よう と試 みている例であ る。 図 10 カm一
ラの アジア、
米 国、
欧州、
日本 の各仕 向け 地 ご とのフロントフェ イスの比較 4
.
2.
部品共通化 シ ンボル やパ ッケー
ジ、
レイア ウ トの ルー
ルか らさらに一
歩 踏み 込 ん だのが、
部品の共 用化である。
自動 車 業 界の世 界 的 な開発競 争の中、
新 技 術 開発 に よる安 全、
環 境、
快 適といった商品価 値をい かに安価に 提 供 す る か、
という課 題 に対し てコ スト低減と商品 力の 更 な る向 上の 両 立 を 目指したのが、
弊 社の 共 用 化 戦 略である。 インテ リアは、
CDS
やUD
的観点 か らの標 準 化のニー
ズ 似て非なるデ ザ インを束ね ることに よる、
より良い 部 品の展 開 等の メリットが あ り、
一
方 デメリットは、
共用 品を使 うことで全 体のデ ザインその もの が定 型化して くる傾向そ して新規 性 あ るデ ザイン提案に デ ザ イ ナ
ー
が 消極 的にな り易いこと が ある。従っ て共 用 品は、
間 断なき共用 部 品のリニ ュー
アル スケ ジュー
ル を 精 度 良く作り実施 すること。
更 に 特 徴的なコ ンセプ ト/ デ ザイン の車 に は、た め らい無 く新しい部品 を 起こすこと。
デ ザイナ
ー
に対し共 用 化の本 当の 考 え 方 を理解 させ、
新しい 部品 を 作 る 必 要 性の 判 断 能 力 を持 た せ るマ ネジメントが 肝 要。
これ らの ことは 外 形 部 品 で も同 様である。
デ ザ イナー
は 自分のデ ザインは全て の部 位にわ た っ て新しい と信 じて いる か ら共 通 部 品の採 用 に しばし ば難色 を示す。 しか し、 限 られ た リソー
セス の 中では 本 当 に 重 要 な 部 分 とそ うでない部 分 を自身でプ ライ オ リテ ィをっ け、
重要 部 分に集 中すべきであ る。
ボデー
やトリム の 内 側にある内 機の ようにユー
ザー
に直 接見 えない ところ は もとよ り、
最近 で は、
直 接見 え るところや 手で触るところにも共通 化に伴 うデ ザ イン的 な工 夫 を行 なっ て いる。
ボデー
パ ネル やバ ン パー、
イ ン ス トル メン トパ ネル な ど、
車両デ ザイン毎に異 な る基 本 デ ザイン部分 と、
車両毎に似て非 な るデ ザインを繰り 返 してい た部品 を分別 し、
後 者は良い物を幅広く共用 する ことで、
高い品 質のものをユー
ザー
に提 供 すること が 出来る様にしてい る。
例 え ば、レ バー
コ ンビネー
ション スイッチ やアシ ストグ リップ、
内外 ドアハ ンドル な ど機 能 部 品 を共 用 化 する こ とは、
開 発コ ストの削減や 大 量 生 産 に よ るコ ス トダウン によ り、
良い物 を低 価 格の車でも使 用可能にする。
一
方、
課題 とし ては、
異 なる車両の デ ザインに もマ ッチ し つ つ、
どの 車もそ れ がつ い ていることで、 車 全 体 が似た よ うな印象 を 与 え ない ような デ ザ インをい か に行なうか である。弊社製品で の具体的 事例を表6
に 示 す。
5 ,
ブランドデザイン戦 略と標 準 化 現 在、
トヨタ は全世 界 で 約100 種 類のボ ディシ ル エ ッ トを持っ ている。
これま でトヨタは、
ほとんどの 場 合、
個 々 の モデル ご とに、
デ ザイン の最 適化 を 図っ てきた。
こ の ことは、
色で 例 え る と、
各々 の色 が鮮や かであっ て も、
遠目では、
グレー
に見えて しまうことに似て い る。
こ の結 果、
残 念なことに 「トヨタ のデ ザインは、
特 色が見え ない 」とい う評 価に繋が ることが あっ た。 そこでこれ か ら の トヨタブ ランドは、
図11 に 示 す ように「Change& Consistency 」とい う考え方で
、
各々 の クル マ の コ ン セ プ トを 明快に して行こうとしてい る。
ラインナップの中で の 役割 や位 置付 けに応 じた商品群として の 「一
貫 性」と、
差 別 化に メリハ リを持 たせた「変 革」とを組み合 わせ た 新しい やり方である。
図11
の右 側の 円の 中心は 「一
貫性」をテー
マとした モ デル 群 を示 し、
その 周囲に 「変 革」をテー
マ に したモ デル 群 を配 し、全 体 を7
つ の 「モ デル 群」に戦 略 的 に グデ ザ イン学 研 究 特 集 号 sPEclAL IssuE oF JssD vol
.
11 No.
4 2004 37NII-Electronic Library Service ル
ー
ピング す ることでフ ォー
メー
ションを 作っ てい く。
そ うする ことで、
トヨタの ライン ナップの 可 能 性 を 広 げつ つ、
明快な ブランドア イデン テ ィテ ィを築い て いきたい と 思っ てい る。
その フォー
メー
ション の 中で、
世 界 展 開 す る主 要 車 種 が 属 す る、
グロー
バ ル コア群は、
(図12 )に 示 すように フロントグ リル、
トヨタマー
クの取付 け位 置な ど に 明快 な 共 通性 を持たせ、
一
目見て、
トヨタの ク ルマ だ とわ か るよ うな 持 続 性 あ るブランドア イデンティティを 創 造していこうとしているところであ る。 こ の ことも 広 義の 標準化 と言えよう。
図 11 トヨタブ ランドデザイ ン の考え 方 表6
共用部 品 事 例 部 品 名 トヨ タ シンボルマー
ク ドアハ ン ドル ドア ミ ラー
レ バー
コ ン ビネ
ー
シ ョ ン ス イ ツチ インサイ ド ドアハ ン ドル ア シ ス トグリップ 天井フ ァブ リッ ク材
デ
ザイ ン統合化状
況 ※ サ イズ種 類 数 を1
/10
に統合
化デザ
イン種類
を1 /10
に統 合化
デザ
イン種 類 を1 /
8
に統合
化 お お よ そ 各 プ ラッ トフ ォー
ム毎にデザ
イ ン 、 設 計 されて い た が、 1 デ
ザイ ンに統合化
。 デザ
イン種 類 を1 / 5
に統合
化 デ ザイ ン種類
を1
/10
に統 合 化デザ
イン種 類 を1 / 5
に統合
化 具 体 例甲
鱒轡
轟 験 鞭 蜘韆
靆 覊 ※ 注:現在 生産 中の 車両の意匠形状 種類 数の削 減 率を示す。
38 SPEclAL IssuE OF JssD vol
,
11 No.
4 2004 デ サ イ ン学 研究特集 号NII-Electronic Library Service 図
12
トヨタグロー
バ ルコア商品 群 のフロントフェイス 6.
まとめ本 稿で取り上げた事 例か ら、 自 動 車の デ ザインに お ける標準 化の段階は
、
社内での製品 開 発のた めの基準 作り(
CDS
、
ナビHMI 、
UD
)国内
、
業 界内での取 り決め(UD )国際 的な取り決め(シンボル マ
ー
クの標準化) 周 辺他 分野 との整合性確保 (シンボル マー
クの 標 準 化、UD
) であ るとい え よう。
()内は本 稿で述べ た標準化事 例 が どの段 階 に あ るかを示す。
ガ イ ドライン
、
ルー
ル 等、
デ ザインの ソ フト面で の標 準化は人 間工学的に大切な もの で あ る。
ハー
ド面では 外 板パ ネルや 部品等の標準化は より安 価でさらに品質 の高いものの提供を可能に し、
ユー
ザー
に もベ ネフ ィ ッ トをもたらすと言え よう。
さらにユー
ザー
の 視 点 で は、
ど のメー
カー
のものも迷わずに同 じように 使 や す くなっ て いることは、
工業 デ ザイナー
の使 命としても大変 重 要な ことで はないだ ろ うか。こうし て弊 社の標準化という視点でのデ ザイン の取り 組 みをい くつ か振りかえると
、
標 準 化 はデ ザイン に とっ て、
デ ザイン 自由 度という観点 か らは 制 約 とな る場合も あ るかもしれないが、
その一
方で何も 制 約 が 無い 状 態 でデ ザインした としても案 外 似て非 なる物が出てくること もよくある。そ れ は 単 に 周 り(先 行 事 例 )を よく把 握せず に作 業 をした結果という揚 合もあるが、
な かには 表 面 的 な部 分に とらわ れ 過ぎて本 質 的な部 分を掴め ず に仕事 をした 場 合 もあ ると思 う。
す な わ ち工業 デ ザインに おい て
、
標 準 化とは、
デザ イン の根 幹 を成 すもの のひ とつ とし て考えて良い。 工業 デ ザイナー
は様々 な製品 をデ ザインするとき、
アイデア を考え、
そ れ を視 覚 化 (絵 )し、
立体 化し、
図 面 化(CAD
デー
ター
化)という作 業 を何 度も繰り返 す わ け だ が、
こう した活 動に 没頭す る余 り、
ともすれ ば本 質を見 失い が ちになる。
ax十ay+az;
a(X+y十Z) とい う簡 単な 因 数分 解の数 式で説 明 す れば、
デザイ ナー
は新し いものを考え ようと左項のように様々 なパ ター
ンを考 える。
し か し、
多くの場 合、
その本質は共 通 因 数でくくることが 出来ると考えてい る。 共通 因 数の 部 分とa ニー
クであ るべ き部分 を 明確に区分し、
その バ ランス 取りを行なっ てい くことがデ ザイン の仕 事の 中で 重要であると思 う。
い か に本 質を抽 出し、
それをよ り良くしてい くか。一
方で 自 己の ア イデアの ユ ニー
クな部 分 をいかによ り魅 力 的に してゆくのか、広 義 に とらえ れば 標 準 化の考え 方はデザ イナー
の採 るべ き道筋 を示し てい る。
注 1)清水行 雄 他;コ ントロー
ル・
ディスプレイ類の表 示、
自 動 車 技術 Vol.
39、
No .
10,
1985
2
)ISO
(lnternational Organization forStandardization
)
http
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iso.
ch/iso
/en/【SOOnline.
frontpage3
) 社 団 法 人自動車技術 会;
http
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jsae
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/cat500.
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) (財 )日本 産 業 デザイン振 興 会 http://www.
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mark.
org/5
)Principles
ofUniversal
Design
http
://www,
design.
ncsu.
edu /cud /univ_
design
/P点nc
−
overview,
htm
http
://www.
design
.
ncsu.
edu /cud/6)エ ル ゴインデックス :人間工学:
Ergonomics
と指 標:Indexを合わせ た トヨタ の造語
7) トヨタ自動 車株式会 社;ラウム広報 資料
8) 国際ユ ニ ヴァ
ー
サルデ ザ イン協議 会http
://www.
iaud.
net/デサ イン学 研 究 特 集 号 sPEclAL IsSuE oF JsSD vol