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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved.

米国大統領選挙の結果および

経済・産業・通商の現状と課題

2012 年 11 月

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 【免責条項】 本レポートで提供している情報は、ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。 ジェトロでは、できるだけ正確な情報の提供を心掛けておりますが、本レポートで提供した 内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、ジェトロ及び 執筆者は一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. アンケート返送先 FAX 03-3587-2485 日本貿易振興機構 海外調査部 北米課宛 ● ジェトロアンケート ● 調査タイトル:米国大統領選挙の結果および経済・産業・通商の現状と課題 ジェトロでは、海外展開にご関心をお持ちの皆様への情報提供を目的に本報告書を作成いたしました。 報告書をお読みいただいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。今後の調査テーマ選定など の参考にさせていただきます。 ■質問1:本報告書は参考になりましたか?(○をひとつ) 1:参考になった 2:まあ参考になった 3:あまり参考にならなかった 4:参考にならなかった ■ 質問2:①使用用途、②上記のように判断された理由、③その他、本報告書に関するご感想をご記 入下さい。 ① ② ③ ■ 質問3:今後のジェトロの調査テーマについてご希望等がございましたら、ご記入願います。 ■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入) □企業・団体 □個人 会社・団体名 部署名 お名前 ~ご協力ありがとうございました~

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目次

はじめに ...2 1.大統領・議会・州知事選挙の結果 ...3 (1)選挙結果(要旨) ...3 ①大統領選挙 ...3 ②議会選挙 ...3 ③州知事選挙 ...4 (2)大統領選挙の結果:オバマ大統領が再選 ...4 (3)議会選挙の結果:上院は民主党、下院は共和党が多数党を維持 ...9 2.経済・産業・通商の現状と課題および大統領候補者の選挙戦時の主張 ... 14 (1)現状と課題(要旨) ... 14 (2)経済 ... 16 (3)自動車・製造業 ... 18 (4)エネルギー ... 20 (5)再生可能エネルギー ... 23 (6)ヘルスケア ... 25 (7)イノベーション・科学技術 ... 27 (8)通商政策 ... 29

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 2 はじめに 近年、BRICs 諸国やその他の新興国の台頭を受けて、米国の相対的な地位は低下したと みる向きもある。しかし、依然として世界第1 位の経済力を持ち、国際経済・社会に確固 たる影響力を維持していくであろう国が置かれている現状、そして今後その国を率いてい くリーダーについて、その方針を把握しておくことには価値がある。 本報告書ではまず、2012 年 11 月 6 日に行なわれた大統領・議会・州知事選挙の結果に つき、速報する。それに続き、米国の経済・産業・通商政策の現況と課題を捉えるととも に、今回の選挙結果を踏まえて、今後それらがどのように展開していくかにつき、概観し ている。 大統領選挙に合わせて行われた議会選挙の結果から、2013 年以降も上院は民主党が、下 院は共和党が多数を占めることになる。今後の政策動向をみる上では、民主党、共和党双 方の主張を把握しておくことが肝要である。その観点から、本報告書では、各論のところ でオバマ大統領とロムニー候補が選挙戦で掲げていた主張も取り扱っている。 経済と通商に加えて、自動車・製造業、エネルギー(再生可能エネルギーを含む)、ヘル スケア、イノベーション・研究開発に焦点を当てて現状と課題を解説した。本報告書が、 米国の経済・産業・通商政策に関わりを持つ方々の参考になれば幸いである。 2012 年 11 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) ニューヨーク事務所 サンフランシスコ事務所 ヒューストン事務所 海外調査部北米課

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 3 1.大統領・議会・州知事選挙の結果 (1)選挙結果(要旨) ①大統領選挙 11 月 6 日に行われた大統領選挙で、民主党のオバマ大統領が再選を果たした。共和党の ロムニー候補は経済回復の緩慢さ、失業率の高さ、財政赤字の拡大などを指摘し、選挙戦 終盤に猛追したが、オバマ大統領が接戦を征した。 米国東部時間7 日午後 8 時現在の CNN の予測によると、選挙人獲得数(全 538 人)で は、オバマ大統領が303 人、ロムニー候補が 206 人を獲得した模様(残りフロリダ州の 29 人が未定)。得票数でもオバマ大統領が6,057 万票と、ロムニー候補の 5,774 万票を上回っ ている。 接戦州のオハイオ、バージニア、コロラド、ウィスコンシン、ニューハンプシャーなど 各州はオバマ大統領がおさえた。 ②議会選挙 連邦議会選挙は2 年おきに、上院では議席数 100 のうち約 3 分の 1 が(今回は 33 議席)、 下院では435 議席全てが改選される。今回の結果では、上院で民主党、下院で共和党が多 数を維持した(表1、2)。上下両院は異なる党が多数を握るねじれの状況が続くことになる。 米国では予算を伴う政策の遂行には議会の立法行為が必要であり、再選を果たしたオバ マ大統領は、2011 年以降続くねじれ議会との調整で政策遂行を試みる必要があり、前進が 表1:上院議員選挙の結果 民主党 共和党 独立 選挙前 51 47 2(民主寄り) 改選数 21 10 2(民主寄り) 選挙後 53 45 2(民主寄り) 出所:CNN(米国東部時間11月7日午後8時現在) 表2:下院議員選挙の結果 民主党 共和党 選挙前(注1) 190 240 選挙後(注2) 194 233 注1:選挙前、辞職などにより5議席が欠員だった。 注2:8議席が未定ながら共和党は過半数218を確保 出所:表1に同じ。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 4 難しい政治情勢が今後も続くとみられる。改選後に確定したメンバーで構成される第113 議会は2013 年 1 月に開会予定である。 2012 年内の案件は、選挙前の議会勢力で審議されることになる。大型案件として、2012 年末には「財政の崖」「連邦債務上限引き上げ」問題への対応が控えている。 ③州知事選挙 州知事選挙は11 州(民主党系 8、共和党系 3 州)で行われた。その結果、民主党が 6 州、 共和党が4 州を獲得した模様で、残りワシントン州が未定。共和党は改選対象州での知事 ポストを3→4 州へ増やしており、現在の勢力図(民主党系 20 州、共和党系 29 州、独立系 1 州)からは僅かに共和党系の知事が増える。 (2)大統領選挙の結果:オバマ大統領が再選 11 月 6 日に行われた大統領選挙で、オバマ大統領が再選を果たした。ロムニー候補は経 済回復の緩慢さ、失業率の高さ、財政赤字の拡大などでオバマ大統領を批判し終盤に猛追 したが、最終的にはオバマ大統領が主要接戦州を征して勝利した。 <得票数でもリード> 11 月 6 日に行われた大統領選挙で、民主党のオバマ大統領が再選を果たした。共和党の ロムニー候補は経済回復の緩慢さ、失業率の高さ、財政赤字の拡大などを指摘し、選挙戦 終盤に猛追したが、オバマ大統領が激戦を征した。 米国東部時間7 日午後 8 時現在の CNN の予測によると、選挙人獲得数(全 538 人)で は、オバマ大統領が303 人、ロムニー候補が 206 人を獲得した模様(残りフロリダ州の 29 人が未定)。得票数でもオバマ大統領が6,057 万票と、ロムニー候補の 5,774 万票を上回っ ている。接戦州のオハイオ、バージニア、コロラド、ウィスコンシン、ニューハンプシャ ーなど各州はオバマ大統領がおさえた。 フロリダ州での再集計問題に発展した2000 年の選挙では、ブッシュ共和党候補が選挙人 数でゴア民主党候補を上回ったものの、得票数で下回り(ブッシュ候補5,046 万 5,000 票、 ゴア候補 5,099 万 6,000 票)、国民からの信認を十分得られなかったとする議論が起きた。 オバマ大統領は選挙人のみならず、得票数でもロムニー候補を上回っている。 <オハイオ州はオバマ大統領へ> 「変革(CHANGE)」から「前進「(FORWARD)」へ。挑戦者の立場から、現職として

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 5 守る立場に変わった今回の選挙で、オバマ大統領は改革の灯を絶やさず、これまで 4 年の 取り組みをさらに前に進める必要性を訴えてきた。ただし、2008 年の選挙でことごとく勝 利した接戦州では、ロムニー候補との戦いは最終盤まで熾烈を極めた。 3 度にわたるテレビ公開討論会のうち 10 月 3 日に行われた第 1 回では、大統領は積極的 に議論を展開するロムニー候補に比べて精彩を欠き、比較的優勢だった接戦州でも世論調 査でロムニー候補に並ばれ、また抜かれる局面もあった。第2 回、3 回の討論会では力強さ を前面に出し、また中間層軽視ととられるロムニー候補の過去の発言や、外交面での経験 不足を追及し、各州の支持率は投票日時点でごく僅差で大統領優勢の情勢に回復してきた。 投票日の11 月 6 日時点で、政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティックスは獲得選 挙人数の比較で、オバマ大統領優勢が201 人、ロムニー候補優勢が 191 人。いずれもが獲 得する可能性があるのは11 州 146 人とみていた。オバマ大統領は 10 月末に東海岸に上陸 し多数の死傷者、インフラへの被害を出したハリケーン「サンディ」への対応明けには、 ウィスコンシン、ネバダ、コロラド、オハイオ、ニューハンプシャー、フロリダなど接戦 各州を回り、支持者の投票所への動員、新たな支持獲得に専念した。 中でも注目されたのは18 人の選挙人を擁するオハイオ州。ロムニー候補は熾烈な追い上 げを図ったが、オバマ大統領が制した。ちなみにオハイオ州の失業率は 7.0%(2012 年 9 月)で、全米平均の 7.9%(10 月)に比べて 1 ポイント近くも下回った。雇用が最大の争 点とされる今回の選挙で、オハイオ州の状況が全米平均よりは改善していたのは、オバマ 大統領に吉と出たかもしれない。 <優先課題の前進は1 期目の前半に集中> オバマ大統領が鮮烈な全米デビューを果たしたのは、2004 年 7 月の民主党全国大会で行 った演説である。歴史に残るフレーズ「リベラルな米国というものも、保守の米国という のもない、あるのはアメリカ合衆国だ」「黒人の米国、白人の米国、ラティーノの米国、ア ジア人の米国というのはない、あるのはアメリカ合衆国だ」と国民の統合を唱え、会場を 沸かせた。上院議員に当選後は、ブッシュ共和党政権が推進する包括エネルギー法への賛 成や、所属した外交委員会の共和党重鎮リチャード・ルーガー議員との世界の核問題をめ ぐる協力、これに類まれな弁舌の力もあり、超党派で行動する政治家像を国民に印象付け た。選挙に勝利し、政権発足時点の支持率は、各社世論調査で6 割を超えていた。 しかし、第2 次世界大戦後最長となる 18 ヵ月の景気後退、その後の景気の緩やかな回復 ペース、高止まりする失業率、2009 会計年度以降 4 年連続で続く 1 兆ドル以上の財政赤字

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 6 など、経済・財政をめぐる不満は、大統領の支持率に影響していった。2011 年半ばには各 社世論調査で不支持が5 割を超えることもあった。 就任直後から優先的に取りくんだ大型政策課題の多くは実現した。2009 年 2 月の 80 兆 円規模の景気対策である米国再生・再投資法の成立、2009 年前半の相次ぐ GM とクライス ラーの救済、2010 年 3 月の医療保険制度(ヘルスケア)改革関連法の成立、そして 2010 年 7 月の金融規制改革法の成立などだ。しかし、これらの成果を挙げられたのは、ひとえ に議会上下両院の多数を民主党議員がおさえていたためである。議会民主党の全面的な支 持を得る一方、共和党からの支持を得ることはなく、超党派の協力には至らなかった。2010 年中間選挙で国民が出した答えは共和党の躍進。上院はかろうじて民主党系が多数を維持 したものの59 議席から 53 議席へ減らし、下院では共和党が多数党の地位を奪還した。 2011 年以降は議会が上院を民主党が、下院を共和党が支配するねじれ状態となり、あら ゆる政策課題が議会審議のこう着状態により前進しなくなった。連邦債務上限の引き上げ 問題をめぐっては、徹底した歳出削減を迫る共和党と、歳出削減と富裕層向け増税を組み 合わせようとする民主党が対立し、2011 年には政府機関の閉鎖が危ぶまれる事態にも発展 した。 国内ではガソリン価格の上昇、失業率の高止まり、外的要因では欧州債務危機やアジア など新興市場の成長率の陰りなど世界経済の先行き不透明感が強まる中、オバマ大統領は 2011 年 9 月、給与税減税や求職者の就職支援などを柱とする 35 兆円規模の雇用法案を提 案した。しかし、激化する党派対立を前にその実現には至らなかった。 2012 年半ば以降のピューリサーチセンターによる世論調査では、オバマ大統領はロムニ ー候補と比べて外交や医療保険制度、社会問題などで優れた仕事をするとみられていたが、 雇用、財政など経済対策ではロムニー候補の後塵を拝する傾向にあった。経済の現状に対 する不満が、オバマ大統領の苦戦の最大の要因となっていた。 <喫緊の課題は経済> ギャラップによると、第2 次世界大戦後に再選を果たした大統領のうち、2 期目の支持率 は1 期に比べて、トルーマン(民)、アイゼンハワー(共)、ジョンソン(民)、ニクソン(共)、 ブッシュ(子、共)はいずれも下げている。逆に上がったのはレーガン(共)、クリントン (民)の2 人である。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 7 オバマ大統領は2009 年 12 月、核兵器のない世界を目指すビジョンが評価され、ノーベ ル平和賞を受賞したが、歴史に名を残せるかどうかの大きなカギは、今後の経済運営にか かる。「財政の崖」など待ったなしの経済課題を、党派対立著しい議会と協調しながらいか にマネージしていくか、失業率の低減、雇用機会の創出を拡大できるか、最近底打ち反転 の兆しがみえる住宅市場の回復を軌道に乗せられるか、そして2%前後と今一つ盛り上がり に欠ける成長率を潜在成長率とされる2%半ば以上に押し上げていけるかなどだ。 2014 年までの 5 年で輸出額の倍増を目指す国家輸出イニシアチブも、2012 年に入りペ ースダウンし、実現には黄色信号が灯る。輸出拡大による企業業績の改善で、雇用の拡大 も期待しているだけに、気がかりなところだ。2012 年 3 月に韓国、5 月にコロンビア、10 月にパナマとのFTA がそれぞれ発効した。今後自由貿易推進の機運をどのように盛り上げ るのか、環太平洋パートナーシップ(TPP)や欧州との FTA 構想の行方も含めて、政権の かじ取りに注目が集まる。同時に、オバマ政権がこれまで注力してきた、既存の通商協定 などの執行強化では、議会でも中国に対する見方が厳しさを増す中、政権は引き続きルー ルの遵守の徹底を求めていくことになろう。 その他、移民制度改革も課題として残っている。外交・安全保障分野でも、公約に掲げ る2014 年のアフガニスタンからの撤退、イランへの制裁、核兵器削減に向けた取り組みな ど山積している。 合衆国憲法修正22 条は、大統領の 3 選を禁止している。再選を果たしたオバマ大統領は 8 年間の大統領職の折り返し地点に立つ。強い経済を取り戻すため、今回の選挙のスローガ ン「前へ(FORWARD)」を実現できるか。オバマ大統領の 2 期目は 2013 年 1 月 20 日に 始まる。 表:歴代大統領の支持率 (単位:%) 大統領 党派 任期 平均支持率 1期目の 平均支持率 2期目の 平均支持率 最高支持率 最低支持率 トルーマン 民主 1945-53 45.4 55.6 36.5 87 22 アイゼンハワー 共和 1953-61 65.0 69.6 60.5 79 48 ケネディ 民主 1961-63 70.1 70.1 - 83 56 ジョンソン 民主 1963-69 55.1 74.2 50.3 79 35 ニクソン 共和 1969-74 49.0 55.8 34.4 67 24 フォード 共和 1974-77 47.2 47.2 - 71 37 カーター 民主 1977-81 45.5 45.5 - 75 28 レーガン 共和 1981-89 52.8 50.3 55.3 68 35 ブッシュ(父) 共和 1989-93 60.9 60.9 - 89 29 クリントン 民主 1993-01 55.1 49.6 60.6 73 37 ブッシュ(子) 共和 2001-09 49.4 62.2 36.5 90 25 オバマ 民主 2009- 49.0 49.0 ? 69 38 注:オバマ大統領の平均支持率は11月3日までの平均。 出所:ギャラップの資料を基に作成。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 8 添付資料:2000年以降の大統領選挙結果 08年 04年 00年 ロ ム ニ ー オ バ マ 共和173 共和286 共和271 206 303 民主365 民主251 民主266 アラバマ ( 9 ) 9 共和 共和 共和 アラスカ ( 3 ) 3 共和 共和 共和 アリゾナ ( 11 ) 11 共和 共和 共和 アーカンソー ( 6 ) 6 共和 共和 共和 カリフォルニア ( 55 ) 55 民主 民主 民主 コロラド ( 9 ) 9 民主 共和 共和 コネティカット ( 7 ) 7 民主 民主 民主 デラウェア ( 3 ) 3 民主 民主 民主 ワシントンDC ( 3 ) 3 民主 民主 民主 フロリダ ( 29 ) 未 定 未 定 民主 共和 共和 ジョージア ( 16 ) 16 共和 共和 共和 ハワイ ( 4 ) 4 民主 民主 民主 アイダホ ( 4 ) 4 共和 共和 共和 イリノイ ( 20 ) 20 民主 民主 民主 インディアナ ( 11 ) 11 民主 共和 共和 アイオワ ( 6 ) 6 民主 共和 民主 カンザス ( 6 ) 6 共和 共和 共和 ケンタッキー ( 8 ) 8 共和 共和 共和 ルイジアナ ( 8 ) 8 共和 共和 共和 メーン ( 4 ) 4 民主 民主 民主 メリーランド ( 10 ) 10 民主 民主 民主 マサチューセッツ ( 11 ) 11 民主 民主 民主 ミシガン ( 16 ) 16 民主 民主 民主 ミネソタ ( 10 ) 10 民主 民主 民主 ミシシッピ ( 6 ) 6 共和 共和 共和 ミズーリ ( 10 ) 10 共和 共和 共和 モンタナ ( 3 ) 3 共和 共和 共和 ネブラスカ ( 5 ) 5 共和 共和 共和 ネバダ ( 6 ) 6 民主 共和 共和 ニューハンプシャー ( 4 ) 4 民主 民主 共和 ニュージャージー ( 14 ) 14 民主 民主 民主 ニューメキシコ ( 5 ) 5 民主 共和 民主 ニューヨーク ( 29 ) 29 民主 民主 民主 ノースカロライナ ( 15 ) 15 民主 共和 共和 ノースダコタ ( 3 ) 3 共和 共和 共和 オハイオ ( 18 ) 18 民主 共和 共和 オクラホマ ( 7 ) 7 共和 共和 共和 オレゴン ( 7 ) 7 民主 民主 民主 ペンシルベニア ( 20 ) 20 民主 民主 民主 ロードアイランド ( 4 ) 4 民主 民主 民主 サウスカロライナ ( 9 ) 9 共和 共和 共和 サウスダコタ ( 3 ) 3 共和 共和 共和 テネシー ( 11 ) 11 共和 共和 共和 テキサス ( 38 ) 38 共和 共和 共和 ユタ ( 6 ) 6 共和 共和 共和 バーモント ( 3 ) 3 民主 民主 民主 バージニア ( 13 ) 13 民主 共和 共和 ワシントン ( 12 ) 12 民主 民主 民主 ウェストバージニア ( 5 ) 5 共和 共和 共和 ウィスコンシン ( 10 ) 10 民主 民主 民主 ワイオミング ( 3 ) 3 共和 共和 共和 出所:Statistical AbstractおよびCNN(米東部時間7日午後8時現在)を基に作成 州(12年の選挙人数) 12年 注1:2000年選挙はブッシュ共和党候補(テキサス州知事)対ゴア民主党候補(副大統領)。2004年選 挙はブッシュ大統領対ケリー民主党候補(上院議員)。2008年選挙はマケイン共和党候補(上院議 員)対オバマ民主党候補(上院議員)。 注2:網掛・接戦州は11月6日時点、政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」に基づく。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 9 (3)議会選挙の結果:上院は民主党、下院は共和党が多数党を維持 連邦議会選挙は、上院で民主党、下院で共和党が多数を維持した。2013 年 1 月に始まる 第113 議会でも、上下両院では異なる党が多数を握ることとなる。米国では予算を伴う政 策の遂行には議会の立法行為が必要であり、再選を果たしたオバマ大統領は、2011 年以降 続くねじれ議会との調整で政策遂行を試みる必要がある。 <上院では民主党が多数を維持> 11 月 6 日、大統領選挙と同時に連邦議会選挙が行われた。米国時間 11 月 7 日午後 8 時 現在のCNN の報道によると、上院では民主党が単独で 53 議席を確保し、多数党を維持し た(表1)。民主党は改選前に比べて 2 議席を増やした。 上院議員は任期が6 年で、定員が 100 人。2 年ごとに約 3 分の 1 ずつが改選を迎える。 選挙では一般的に、改選数が多く、とくに現職の引退などに伴い新人候補が擁立される議 席が多い党は議席の維持、拡大が容易ではない。民主党は選挙前の議席の4 割が改選対象 だった。また、政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティックスは投票日の6 日時点で、 11 議席が激戦(Toss-up)と報じる中、そのうち民主党の現職が引退などにより新人が立つ 議席が7 を占めた。景気回復の緩慢さや、失業率の高さがオバマ大統領の選挙戦を難しく したように、経済情勢も民主党の多数党維持には逆風だった。 <共和党には誤算も> 一方、NBC ニューズとウォールストリート・ジャーナル紙が 10 月 17~20 日に実施した 世論調査では、議会の多数党として民主党を好む回答者が45%、共和党を好む回答者は 43% だった。同調査は2011 年 6 月以降 1、2 ヵ月ごとに実施されているが、常に僅差で民主党 議会を支持する回答が多く、経済に対する不満は必ずしも共和党の支持拡大につながって いないようだ。 また、共和党有力議員の引退表明や、候補者の問題発言などの誤算も足かせとなった。 立候補をすれば再選が確実とみられたメーン州のオリンピア・スノウ議員は2012 年 6 月、 表1:上院議員選挙の結果 民主党 共和党 独立 選挙前 51 47 2(民主寄り) 改選数 21 10 2(民主寄り) 選挙後 53 45 2(民主寄り) 出所:CNN(米国東部時間11月7日午後8時現在)

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 10 今期限りの引退を表明し、同州では民主党と会派を一にすることが予想されるアンガス・ キング元州知事が最有力候補となった(結果、キング候補は勝利)。 また、共和党重鎮で穏健派のインディアナ州選出のリチャード・ルーガー議員は予備選 で敗退し、ルーガー氏に代わり共和党候補となった茶会党支持のリチャード・マードック 候補が10 月のテレビ討論で、女性蔑視ととられる発言をし、物議を醸した(後述。結果、 マードック候補は敗退)。ミズーリ州でもトッド・アキン候補(現職下院議員)が同様に女 性蔑視ととられる発言で問題となり(アキン候補も敗退)、共和党を守勢に回らせた。 <上院選マサチューセッツ州:共和党現職が民主党の大物新人候補に敗退> マサチューセッツ州での共和党現職のスコット・ブラウン議員と、民主党新人のエリザ ベス・ウォレン候補の選挙は、現職と、オバマ政権の高官を務めた大物候補の対決として 注目された。結果はウォレン候補が勝利した。 ブラウン候補は2009 年 8 月に死去したエドワード・ケネディ元上院議員(民)の補欠選 挙に立候補し、2010 年 1 月に行われた選挙で民主党の牙城であるマサチューセッツ州で勝 利を収めた。特に、ブラウン候補の勝利により、上院共和党の議席が41 に増え、上院民主 党が議事妨害(フィリバスター)を阻止できる60 議席を割ったことで全米の注目を集めた。 ウォレン候補は2008 年不良債権救済プログラム(TARP)のための議会監視パネル委員長 を務め、またオバマ大統領特別補佐官として2010 年 7 月に成立した金融規制改革法の下、 財務省消費者金融保護局の創設に尽力した。 <上院選バージニア州:元州知事対決は民主党が勝利> バージニア州では、元州知事対決をティム・ケイン民主党候補が激戦の末、制した。ケ イン候補はバージニア州知事(2006 年 1 月~2010 年 1 月)、民主党全国委員長(2009 年 1 月~2011 年 4 月)を歴任した。民主党全国委員長といった党派色の強い経歴はあるが、中 道穏健派の支持固めに注力した。元バージニア州知事(1994 年 1 月~1998 年 1 月)で、 元上院議員(2003 年 1 月~2007 年 1 月)のジョージ・アレン候補は、オバマ政権による 防衛費の削減は州内の軍事産業を、また環境保護庁(EPA)による環境規制強化は州内の 石炭産業をそれぞれ脅かすなどとして批判してきた。しかし、2006 年選挙での敗退の雪辱 を果たすことができなかった。 <穏健中道派の大物、引退相次ぐ> 今回の上院選に先立ち、穏健中道派の大物議員が予備選で敗退、あるいは引退を表明し た。上院はかねて、任期が6 年と下院の 2 年に比べて、長期の視野で判断を行う議員が多

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 11 いとされ、超党派協力を惜しまない議員がいると言われる。しかし、穏健中道派議員の引 退により、議会の超党派協力は一層、難しくなる懸念がある。 共和党の重鎮、外交通でリチャード・ルーガー議員(共、インディアナ州)は、茶会党 の支持するリチャード・マードック候補に2012 年 5 月の予備選で敗退し、引退に追い込ま れた。ルーガー議員は上院外交委員長だった2005 年、民主党のオバマ上院議員と共に核関 連施設の視察でロシア、アゼルバイジャン、そしてウクライナを訪問するなど、オバマ大 統領とは核兵器の不拡散に向けて緊密な関係を構築していた。 オバマ大統領は5 月の予備選後、ルーガー議員はよく党派を超えて協力し、仕事をやり ぬく人物だったと、これまでの功績をたたえる声明を出した。ルーガー議員の超党派行動 としては米自動車産業救済への賛成、不法移民に市民権付与の道をひらくドリームアクト への賛成、軍縮への賛成などが挙げられるが、予備選ではこうしたところに加え、オバマ 大統領との近さが仇となった。ちなみに、共和党が優勢のインディアナ州で、マードック 候補は優位にあったが、10 月半ばにレイプによる妊娠も神の意図によるものとした発言が 物議を醸し、民主党のジョー・ドネリー候補に敗退した。 2005 年、ブッシュ大統領による最高裁判事指名をめぐる承認手続きのこう着状況を打開 するために動いた超党派議員グループ「14 人のギャング」(共和党7 人、民主党 7 人の議員 で構成)のメンバーの一部も引退した。最もリベラルな共和党議員とも評された前述のオ リンピア・スノウ議員(メーン州)、逆に民主党ながら保守色のあるベン・ネルソン議員(ネ ブラスカ州)、そして民主党系のジョー・リーバーマン議員(コネティカット州)である。 スノウ議員は2012 年 2 月に表明した引退の理由で、選挙や政治機構において、対立、そ して「私のやり方に従わないなら出ていけ」といった空気が蔓延しているなどと指摘。党 派対立の激しい現在の議会の情勢に警鐘を鳴らした。 リーバーマン議員は2000 年大統領選挙で、民主党のゴア候補(当時副大統領)の副大統 領候補。2001 年 9 月の同時多発テロ以降は国土安全保障省の創設に尽力した。2006 年の 上院議員選挙では、州内の党予備選で敗退すると独立民主党を標榜して最終的に勝ち残り、 会派は民主党と一にしてきた。時に党派を超えた判断もあり、2008 年大統領選挙の共和党 大会では、安全保障分野で盟友であるジョン・マケイン候補の応援演説を行った。 これら超党派議員の引退は、一般的な世代交代として整理すべきものではなさそうだ。 賛否の割れる重要法案を前進させるに当たり、超党派議員はその実現に向けて調整に動い

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 12 てきた。党派対立が年々厳しくなる議会にあって、いわば対立の緩衝材の役割を果たす中 道穏健派の議員の引退により、一層物事を決めにくい環境が生まれる可能性がある。 <アジア外交に精通するウェブ議員も引退> その他、112 議会で引退する議員をみる。バージニア州選出のジム・ウェッブ議員(民主) は、ベトナム戦争に従事経験ある退役軍人で、2006 年選挙で上院議員に当選し、2007 年 1 月にはブッシュ大統領の一般教書演説の野党反ばく演説者に抜擢された。上院外交委員会 東アジア太平洋小委員会委員長を務め、民主党内では日本を含むアジアとの安全保障、経 済、外交に精通する議員である。 ノースダコタ州選出のケント・コンラッド議員(民主)は上院予算委員長を務め、2006 年タイム誌ではベスト議員10 の 1 人に挙げられた実力者である。コンラッド議員も超党派 協力で名を挙げ、オバマ大統領が推進した医療保険制度改革、また2011 年の米国債務上限 引き上げ問題の際には共和党議員と協力して打開の道を探るべく尽力した。 ニューメキシコ州選出のジェフ・ビンガマン議員(民主)は上院エネルギー資源委員長 を務め、2007 年エネルギー自立・安全保障法(いわゆる新エネルギー法)の成立に尽力し た。ビンガマン議員は環境保護派の代表格で、クリーンエネルギーの推進、キャップ・ア ンド・トレード方式による温室効果ガスの排出削減、そして石油・天然ガス企業への税控 除の削減を訴えた。 <下院民主党では、ペローシ院内総務の去就に注目> 下院選挙(任期2 年で、全 435 議席が改選)では、共和党が多数を維持した(表 2)。共 和党は1994 年、ギングリッチ議員が主導して財政均衡や減税、福祉改革などを柱とする「ア メリカとの契約」を公約に掲げ下院の過半数をとり、10 年にわたって多数党を維持してき た。ブッシュ政権期の2006 年の中間選挙ではイラク政策をめぐる国民の反発から民主党に 多数党の地位を譲った。しかし、2010 年の中間選挙で過半数を奪還、今回の結果をうけて 共和党は2014 年まで下院の主導権を握ることとなる。 表2:下院議員選挙の結果 民主党 共和党 選挙前(注1) 190 240 選挙後(注2) 190 231 注1:選挙前、辞職などにより5議席が欠員だった。 注2:14議席が未定ながら共和党は過半数218を確保 出所:表1に同じ。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 13 今回の勝利を受け、下院共和党の指導部は、ジョン・ベーナー下院議長、エリック・カ ンター院内総務の続投が11 月 11 日の週に行われる予定の党内選挙で確認されるとみられ ている(10 月 24 日付ナショナル・ジャーナル誌)。一方、民主党は前回選挙に続いての敗 北を受けて、院内総務のナンシー・ペローシ議員が続投するのかどうかに注目が集まる。 下院民主党は指導部選挙を11 月 29 日に実施すると報道されている(ブルームバーグ、 10 月 25 日)。政治専門誌ロールコール(11 月 3 日)は、「民主党関係者は、一部は公に、 同党が下院の多数党支配を取り戻す見込みがない中、選挙後に院内総務を退任するかもし れないとみている」「ただし、ペローシ議員に近い人物は、序列2 位の院内幹事ステニー・ ホイヤー議員ではない、ペローシ議員が好む後継者を推すことになることから、即時の退 任は選ばないだろう」と紹介している。併せて同誌では、ペローシ議員の報道官がこうし たシナリオを否定するコメントも紹介している。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 14 2.経済・産業・通商の現状と課題および大統領候補者の選挙戦時の主張 (1)現状と課題(要旨) ①経済 米国経済は、第2 次大戦後、最長となる 18 ヵ月の景気後退(07 年 12 月~09 年 6 月) を経て、緩やかな回復を続けてきた。実質GDP 成長率は 2012 年に入り、第 1 四半期が前 期比・年率換算で2.0%、第 2 四半期が 1.3%、第 3 四半期が 2.0%で推移している。連邦 公開市場委員会(FOMC)が 12 年 9 月に公表した予測でも、12 年は 1.7~2.0%、13 年は 2.5~3.0%、14 年は 3.0~3.8%と徐々に上向きとなる見通し。 しかし、「財政の崖」と「連邦債務の上限引き上げ」の2 つの課題により、今後の経済成 長の先行きには不透明感がある。「財政の崖」とはブッシュ減税や給与税減税が2012 年末 に期限を迎え、消費者にとって実質的な大幅増税が始まることと、2011 年 8 月に成立した 予算管理法に基づき、13 年 1 月から政府の支出が大幅に削減されることを指す。一方「連 邦債務の上限引き上げ」については、議会が上限を引き上げる法案を可決できない場合、 公的部門のサービス停止、公的部門の職員の給与停止など、行政機能や経済の多方面に悪 影響が出ると見込まれている。2011 年 8 月の議会両党での合意により上限は増額されたも のの、債務水準は2012 年の年末にも再び上限に達するとみられ、「財政の崖」と同様に早 急の対策が求められる。 年内の議会審議は、選挙前の議会勢力で行われる。党派対立が激しさを増している議会 において、有効な解決策が合意されるか、政府および議会の取り組みに注目が集まる。 ②主要産業 自動車産業は、新車(乗用車と小型トラック合計)の販売台数が2012 年に入り、概ね年 換算1,400 万台を上回る月が続いており、好調だ。これまで購買を先延ばしにしてきた消 費者による需要が旺盛なことや、自動車ローン金利の低下と審査基準の緩和で借り入れが しやすくなっていることなどが影響しているとみられる。雇用数も徐々に回復している。 2012 年 10 月の自動車および同部品の製造業従事者数は 77 万 4,900 人と、2009 年 7 月に 記録した直近の底の62 万 3,900 人から、15 万 1,000 人分増加した。政府は 12 年 8 月、2025 年までに1 ガロン当たり 54.5 マイルという厳しい新燃費基準を発表しており、産業界は本 規制への対応が必要となる。 製造業全般では、雇用者数は1979 年の 1,942 万 6,000 人をピークに徐々に減尐し、2010 年には1,152 万 8,000 人へ、79 年比で 6 割の水準まで減尐した。オバマ政権は製造業の雇 用が拡大している点を成果に掲げ、今後も第2 期目の 4 年間で 100 万人の雇用を生み出す

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 15 としている。そのため、海外に雇用を移転する企業への税控除を廃止する一方、国内で雇 用を拡大する企業へのインセンティブを供与するとしている。 エネルギー分野では長年、米国は石油消費量の約半分を諸外国に依存してきた。石油価 格の乱高下に経済が左右されるのみならず、安全保障上も懸念されてきた。それがここ数 年で、採掘技術の革新により地中深くのシェール層に眠る膨大な天然ガス、原油資源にア クセスすることが可能となった。オバマ政権は、環境への影響をみながら、これら資源の 開発を推進する立場である。一方、雇用創出と絡めて推し進めてきたクリーンエネルギー 分野に関しては、財政上の制約から支援策の規模が縮小に向かうかが今後の焦点である。 医療保険制度(ヘルスケア)改革は、関連法が成立した2010 年以降、既に動き出してい る。さらに、現行法がそのまま推進されると、2014 年 1 月には、保険に加入しない国民へ の罰金の開始や、低所得層向け医療保険(メディケイド)の適用範囲の拡大、50 人以上を 雇用する企業に対する従業員への保険提供の要求、保険商品を比較できるエクスチェンジ 市場の創設など、改革の目玉の政策が一斉に始まる予定である。保険加入者が増加し、医 療市場が拡大する意味では医療機関、保険会社、医薬品メーカー、医療機器メーカーには プラスに働く。一方、これら医療産業に加えて従業員向けの保険提供を求められる企業な どには、改革の実現に必要な財政負担が伴う。 米国経済の底力である、イノベーション・科学技術の振興に関して、オバマ大統領は、 2013 年に向けて具体的な研究開発(R&D)政策を発表。2013 年度の R&D 予算について 2011 年とほぼ同額(約 1,408 億ドル)を要求し、製造業を中心に引き続き積極的な投資を 進めていく方針である。しかし、財政ひっ迫の折、連邦政府が拠出可能な予算は縮小する 見込みだ。2011 年 8 月に成立した予算管理法に基づき、2013 年 1 月から連邦予算の一律 的な削減が予定され、政府はR&D 予算も 8.2%削減されることになるとしている。しかし、 過去の事例から、必ずしもR&D 支出がイノベーションに直結するわけではなく、政府予算 の削減で米国のイノベーションの活力が減退すると捉えるのは時期尚早だろう。 ③通商政策 オバマ政権は第1 期目同様、雇用創出・産業保護と絡めた通商政策を維持していくとみ られる。その根幹は、2010~2014 年の 5 年間での輸出倍増計画である。その一環で、輸出 関連機関の統合、輸出規制の緩和などを推進する構えだが、法案を通す必要があるものは、 議会の党派対立が先鋭化する中、実現の見通しが立たない。その中で着実に取り組みが進 むのが、中国をはじめ、不公正な貿易慣行を行う国への圧力である。2012 年 2 月には、通 商代表部(USTR)の下に省庁間通商執行センター(ITEC)を創設した。貿易関連の省庁

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 16 間の足並みを揃えて、諸外国の不公正貿易慣行を監視し、法執行を強化していく構えだ。 オバマ大統領は世界の成長センターであるアジア太平洋地域へのコミットメントを明確 に打ち出しており、TPP はその実現の枠組みと位置づけて、交渉に注力している。 (2)経済 [現状と課題]  2012 年第 3 四半期の実質 GDP 成長率は前期比・年率換算で 2.0%と、緩やかな回復が 続いている。連邦公開市場委員会(FOMC)が 12 年 9 月に公表した予測では、12 年 は1.7~2.0%、13 年は 2.5~3.0%、14 年は 3.0~3.8%と回復は徐々に上向きになって いく見通しである。  国内では住宅市場の低迷やガソリン価格の高止まり、失業率の高さ、財政赤字など懸 念材料が多く、さらに欧州債務危機や新興国経済の減速といった世界経済の情勢も先 行きを不透明にしている。議会は党派対立が先鋭化し、力強い回復に向けて有効な手 立てを打ち出せていない。こうした状況下、連邦準備制度理事会(FRB)は 12 年 9 月、 尐なくとも15 年半ばまでの実質ゼロ金利政策の維持、住宅ローン担保証券の追加購入 による量的緩和策第 3 弾(QE3)などを立て続けに発表するなど、実質的なかじ取り 役として経済を支えてきている。  米国の GDP の 7 割を占める個人消費は底堅さをみせている。小売売上高は 09 年第 3 四半期以降拡大しており、12 年 9 月には前年同月比 5.4%増の 4,129 億ドルを記録し た。自動車の新車販売台数をみても、12 年に入ってからはほぼ毎月、年換算で 1,400 万台を上回っている。  消費動向に影響を与えうる要因をいくつか挙げてみる。住宅価格は長く低迷を続け、 消費の抑制要因となってきたが、最近好転の兆しがみえている。民間住宅投資は12 年 第3 四半期に前期比年率 14.4%増となり、6 四半期連続で増加した。住宅価格も 12 年 9 月に 6 ヵ月連続で上昇、住宅着工件数は 3 年ぶりに年換算 80 万件を超えた。この回 復振りがどこまで続くのかは注目点となる。  高い水準にあるガソリン価格も気になるところである。自動車社会である米国ではガ ソリン価格の上昇は消費の抑制要因となる。レギュラーガソリンの全米平均価格は 1 ガロン当たり3.5 ドル(12 年 11 月 5 日までの 1 週間平均)と、9 月半ばの 3.9 ドル近 くからは下がったが、歴史的には依然高水準にあるのに変わりはない。  消費者心理に影響を及ぼしうる雇用情勢は、足元では改善に向いつつある。12 年 8~ 10 月の 3 ヵ月は月平均で 17 万人増と拡大している。失業率も 12 年 10 月は 7.9%と前 年同月比で 1 ポイントも低下した。ただし、依然として失業率は高い水準にあり注視 が必要である。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 17  政府、議会が対処しなければならない喫緊の課題がある。1 つは、12 年末に迎える「財 政の崖」問題である。これは(1)ブッシュ減税や給与税減税といった大型の減税措置 の終了、そして(2)11 年 8 月に成立した予算管理法の下、13 年 1 月 1 日から政府支 出の大幅削減が同時に発生することを意味する。新たな対策を講じない場合には、議 会予算局は2013 年初めのマイナス成長の可能性を指摘している。  もう 1 つの課題は、上述の(2)に関連した「連邦債務の上限引き上げ」問題。11 年 8 月に成立した予算管理法で、上限額はいったん16 兆 3,940 億ドルまで引き上げられた が、債務水準は12 年末にもその上限に達するとみられている。11 年にはデフォルトを 回避した一方、債務削減の幅が不十分とのことで、スタンダード・アンド・プアーズ は米国債の長期格付けを、史上初めてAAA から AA+に下げた。  年内の議会審議は、選挙前の議会勢力で行われる。党派対立が激しさを増している議 会において、有効な解決策が合意されるか、政府、議会の取り組みに注目が集まる。 [今後の展開]  上下両院は、2012 年中は、選挙前の勢力で法案を審議する。「財政の崖」と「連邦債務 の上限引き上げ」問題の解決は、難航することが予想される。ただし、財政の崖の解 決なしには2013 年初めのマイナス成長入りの可能性も指摘されており、年末までにオ バマ政権も含めて、本件にどのような対応がなされるかが焦点となる。 [両党候補の主張] 争点 オバマ大統領 ロムニー候補 税制(個人) ・ブッシュ減税の延長を、単身者で 年収20 万ドル、夫婦で 25 万ドル未 満の所得層に限る。 ・給与税の減税措置の延長に関して は立場を表明していない。 ・所得税率についてブッシュ減税を維 持。 ・年収20 万ドル未満の世帯のキャピタ ルゲイン・配当税を撤廃。 ・相続税を撤廃。 税制(法人) ・法人税を現行の 35%から 28%に 引き下げ。 ・米国内で雇用創出に貢献した製造 業に対する税率を引き下げ。 ・海外工場を閉鎖して国内回帰する 企業への税額控除。 ・米国企業の海外事業利益に対する 国 際 最 低 税 ( international minimum tax)を課し、海外移転費 用の控除を廃止。 ・法人税を現行の 35%から 25%に引 き下げ。 ・現行の「全世界所得課税(worldwide system)」を「領土内課税(territorial system)」に変更し、国外所得を免税 にする。 財政 ・今後10 年間のうちに 4 兆ドルの 歳出削減を実施。うち1 兆ドルは、 11 年 8 月に成立した予算管理法に よる。 ・1 期目の終了時までに、連邦政府の 歳出をGDP の 20%より下に抑制。 ・裁量経費の5%削減および 200 億ド ルの年間連邦予算の削減。 ・オバマ政権による医療保険制度改革 を撤廃することで歳出を削減。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 18 雇用創出 ・2016 年までに、製造業で 100 万 人の雇用増を実現。 ・国内エネルギー資源の開発を促 進。天然ガス分野のみで 60 万人の 雇用増を見込む。 ・米企業が国際市場で外国企業と同 等に競争できるよう、中国などによ る不公正な貿易慣行を是正する。 ・15~20 の製造業関連のイノベー ション研究機関のネットワークを 形成し、研究とビジネスをつなげ る。 ・中小企業向けの減税や、中小企業 による海外市場、資本へのアクセス を支援。 ・理数系の教師を 10 万人新たに採 用。200 万人の労働者向けにコミュ ニティカレッジで職業訓練の機会 を提供。 ・第1期中に、1,200 万人の雇用を創 出すると公約。そのために、(1)国内 エネルギー資源の開発促進、(2)貿易 の促進(新興市場の開拓と中国への対 抗)、(3)米国民により良い教育、職業 訓練の機会を提供、(4)連邦債務の削 減および小さな政府の実現、(5)中小 企業のビジネス活性化に向けた税制・ 規制改革、を掲げる。 (出所)両候補者ウェブサイトなどを基に作成 (3)自動車・製造業 [現状-自動車産業]  米国の新車(乗用車と小型トラック合計)の販売台数は 2012 年に入り好調である。概 ね年換算 1,400 万台を上回る月が続いている。これまで購買を先延ばしにしてきた消 費者による需要が旺盛なことや、自動車ローンの金利の低下と審査基準の緩和で借り 入れがしやすくなっていることなどが影響している模様。米自動車業界ではクライス ラーが2009 年 4 月、ゼネラル・モーターズ(GM)が 2009 年 6 月、連邦破産法 11 条 の適用を申請した。しかし、新会社への資産譲渡手続きはクライスラーが2009 年 6 月、 GM は同年 7 月に完了。工場・車種の削減などのリストラ、米国自動車市場の改善な どを通じて両社の業績は回復してきている。GM は 2010 年 11 月、ニューヨーク証券 取引所に再上場を果たした。GM、クライスラー、そしてこれら金融関連企業に提供さ れた公的融資の合計は800 億ドル超に上る。  2012 年 1~10 月のメーカー別販売台数(オートデータ)をみると、シェアは GM の 18.0%、フォードの 15.5%、トヨタの 14.4%、クライスラーの 11.2%、ホンダの 9.8% と続く。前年同期比でみると、デトロイトスリーではGM が 3.6%増、フォードが 4.9% 増となり、特にクライスラーには 21.0%増と勢いがある。日系メーカーではトヨタが 30.0%増、ホンダが 22.5%となるなど、東日本大震災によるサプライチェーンの寸断 やタイの洪水被害で落ち込んだ前年に比べて回復してきた。その他外資系では韓国系 キア(シェア4.0%)が 17.8%増、フォルクスワーゲン(同 3.0%)が 35.6%増と伸び ている。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 19  自動車産業の雇用数も徐々に回復してきた。2012 年 10 月の自動車および同部品の製 造業従事者数は77 万 4,900 人。データ取得可能な 1990 年以降のピーク、2000 年 2 月 の134 万 4,400 人の 6 割弱の水準だが、2009 年 7 月に記録した直近の底の 62 万 3,900 人からは、15 万 1,000 人分の雇用が回復している。  ガソリン価格の上昇は、燃費に優れた小型車、中型車の購買選択を促している模様。 2012 年 1~10 月の新車販売台数は前年同期比 13.8%増となる中、このうち乗用車(シ ェア51.7%)の販売が 18.9%増と好調なのに対し、小型トラック(同 48.3%)は 8.8% 増に留まる。さらに、乗用車でみていくと、小型車(シェア 37.3%)が 24.9%増、中 型車(同 49.2%)が 19.9%増なのに対して、大型・高級車(同 13.5%)は 2.4%増に 留まる。  政府は、自動車の燃費改善を促している。オバマ大統領は 2011 年 7 月、大手自動車メ ーカー13 社と新車の燃費基準を 2025 年までに、現在の約 2 倍の 1 ガロン当たり 54.5 マイルに引き上げることで合意し、2012 年 8 月に新基準を発表した。 [現状-製造業全般]  製造業全般をみると、雇用者数は 1979 年の 1,942 万 6,000 人をピークに徐々に減尐し、 2010 年には 1,152 万 8,000 人へ、79 年比で 6 割弱の水準まで減尐した。カーター政権 以降の各政権期の製造業雇用者数推移をみると、拡大したのはカーター政権(1977~ 80 年)の 120 万 2,000 人増と、クリントン政権(1993~2000 年)の 46 万 4,000 人増。 減尐したのはレーガン政権(1981~88 年)の 82 万 7,000 人減、ブッシュ(父)政権 (1989~92 年)の 110 万 7,000 人減、そしてブッシュ(子)政権(2001~08 年)の 385 万 7,000 人減。オバマ政権下では 2011 年に 20 万 5,000 人増となり、1998 年以来 13 年ぶりの前年比増となったが、2012 年 10 月時点の製造業雇用数は 1,201 万 9,000 人で、政権発足時の2009 年 1 月と比べて、いまだ 43 万 1,000 人尐ない水準にある。  オバマ政権は製造業の雇用が拡大している点を成果に掲げ、今後、海外に雇用を移転 する企業への税額控除を廃止する一方、国内で雇用を拡大する企業にインセンティブ を供与するとしている。 [今後の展開]  経済成長率は 2%前後(2012 年第 1 四半期・前期比年率 2.0%、第 2 四半期 1.3%、第 3 四半期 2.0%)で緩やかだが、自動車販売は好調に推移している。ただし、今後の販 売は景気情勢と、これに左右される消費者の購買意欲次第である。目先の最大の経済 課題は、2012 年末に訪れる「財政の崖」(ブッシュ減税などの失効と、予算管理法の下 で実施される歳出削減)であり、選挙後の政府、議会による調整に注目が集まる。自 動車販売の推移にも政治、そしてマクロの景気動向が関わってくる。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 20  製造業で 100 万人の雇用創出を掲げるオバマ大統領。税制改正や教育・訓練の提供な どの公約を掲げるが、財政赤字をこれ以上拡大できない条件下では政策努力に限界が ある。一方、ここ数年、中国など新興国での人件費上昇や、金融危機後の米国内の賃 金低下などの要因から、販路を北米市場に求める製品の製造拠点が米国内に回帰する リショアリングの事例が散見される。ボストン・コンサルティングは2012 年 9 月、2020 年までにリショアリングに加えて、米国からの輸出増により最大 500 万人の雇用が創 出される可能性があると発表した。「製造業100 万人の雇用創出」の公約が、政策の実 行や国内ビジネス環境の改善、輸出増などにより実現するかは今後の見所となる。 [両党候補の主張] 争点 オバマ大統領 ロムニー候補 自 動 車 産 業 の救済策 ・不良資産救済プログラム(TARP)の 下、米自動車大手のGM およびクライ スラーの救済策が実施されなければ、 100 万人の雇用が犠牲になるところだ ったと主張。 ・自動車産業救済のために投じられた 公的資金は、労働組合を優遇する一環 だったと指摘。 ・2008 年 11 月の新聞への寄稿で、管 理された破産手続きが本格的なリスト ラへの唯一の道と指摘。 自 動 車 の 新 燃費基準 ・2012 年 8 月に発表。自動車メーカー は米国内で販売する新車(乗用車・小 型トラック)の燃費を、2025 年までに 現在の約2 倍の 1 ガロン当たり 54.5 マ イルに引き上げ。 ・政府による行き過ぎた規制であり、 立証されていない技術のために支払う コストで、燃費の改善で実現されると いう節約分が帳消しになると批判す る。 製 造 業 の 雇 用拡大 ・(2 期目が終了する)2016 年末までに 新規の製造業雇用を100 万人分創出す る。 ・海外に雇用を移転する企業への税控 除をなくし、国内の雇用拡大を促進。 ・国内に建設されるクリーンエネルギ ー事業への税控除を維持。 ・輸出倍増による雇用拡大を目指す。 ・国内エネルギー資源の開発を通じて 60 万人の雇用を維持。 ・コミュニティカレッジと企業と協力 し、200 万人に職業訓練を実施。 ・第1 期目の 4 年で 1,200 万人の雇用 を創出する(製造業に限定せず)。 ・国内エネルギー資源の開発推進によ りエネルギー部門のほか、国産の廉価 なエネルギーの恩恵を受ける製造業で 数百万人の雇用を創出。 ・その他、外国との競争条件の均一化、 教育・訓練を通じた技能の提供、雇用 創出の動力源である中小企業を守るた めに包括的な減税の実施(法人税率の 35→25%への削減)、などを公約に掲 げる。 (出所)両候補者ウェブサイトおよび各種報道を基に作成。 (4)エネルギー [現状と課題]  これまで米国は長期にわたって、エネルギー源、特に石油を輸入資源に頼っており、 諸外国への依存が安全保障の観点からも懸念との認識が高まっている。中東情勢の不 安定化による影響から、2012 年半ばには一時、ガソリン価格が 1 ガロン 4 ドル近くま で高騰。経済全体にも影響する問題であり、戦略的なエネルギー政策が求められる。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 21  カナダからオイルサンドを輸送するための「キーストン XL」パイプラインの建設計画 が進められてきたが、オバマ政権は2012 年 1 月、パイプライン敷設地域への環境影響 評価が完了していないことを理由に計画案を却下した。同計画はエネルギー安全保障 上、また雇用の創出上重要であるとされ、共和党はこの却下を厳しく批判している。  このような中、技術革新により国内の豊富なシェールガス・オイル資源の採掘が可能 になったことで、エネルギーの海外依存度が低下する見通しが出てきた。2016 年には 米国が天然ガスの純輸出国に転じるとの試算もある。エネルギー安全保障強化の観点 から、さらなる開発に期待が高まる一方、水圧破砕(フラッキング)手法に伴う地下 水の汚染など環境への影響が懸念されており、政府による規制の方向性が焦点の一つ。 現在の米国のエネルギーに関する課題は、(1)エネルギー需要増を踏まえた、資源の 確保・エネルギー効率の向上、(2)景気回復への悪影響の回避、(3)石油価格の低減、 (4)環境に与える負荷の低減、にある。  これらの課題に対してオバマ大統領は、以下の政策を実施: ① 2009 年に米国再生・再投資法を成立させ、再生可能エネルギーや省エネ分野に 900 億ドルの予算を拠出。 ② 再生可能エネルギーの研究開発促進のために、石油・ガス企業に対する年間 40 億 ドルの税控除制度の取り止めを提案。政府所有地での坑井掘削許可を50%削減。 ③ 環境保護庁(EPA)による二酸化炭素の排出量の規制を許可。 ④ エネルギー効率を上げるため、2025 年までに自動車・軽トラックの燃費基準を 1 ガロン当たり54.5 マイルまで引き上げる規制を発表。 ※なお、再生可能エネルギー、環境規制に関しては次項で詳述する。 [今後の展開]  オバマ大統領は基本的に、第 1 期目のエネルギー政策を継続する見込みだ。クリーン エネルギーの導入促進と同時に石油、天然ガス開発も重視し、あらゆる資源を全て活 用する「包括的アプローチ」(An All-Out, All-of the-Above Strategy)を提唱。なお、 再生可能エネルギーや省エネ部門への公共投資や税制優遇措置などを中心とする政策 には、政権は引き続き関心を持ち続けるとみられる。また、気候変動問題への対応に 国際社会と協調して取り組む可能性がある。  一方、キーストーン XL パイプラインの建設計画が進まない場合、パイプライン建設に 関わる約 2 万人の雇用が喪失されると共に、エネルギー安全保障の観点からもマイナ スの影響を与えかねないと指摘されている。本計画が推進されるかが、今後の注目点。  シェールガス・オイルの増産を背景に国内エネルギー自給率の向上と石油輸入依存度 の低下が進むことが予想される。また、安価な原料と電力コストの低下により化学工 業など製造業の生産力が拡大する可能性がある。  原子力発電については、クリーンエネルギーの定義に含めて、今後も電力供給のベー

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 22 スロードとして維持していくと見込まれる。 [両党候補の主張] 争点 オバマ大統領 ロムニー候補 基本方針 ・2035 年までにエネルギー発電量 の 80%を再生可能エネルギーで賄 う(風力、太陽光、バイオ燃料など)。 ・安全で社会に責任ある開発を前提 に、化石燃料の国内開発を支持。 ・エネルギー政策における連邦政府 の積極的な介入を擁護。 ・クリーンエネルギーを核としつ つ、天然ガス、原子力、クリーンコ ールを含む利用可能な全エネルギ ー源の最大活用を目指す「包括的ア プローチ(All-out, all-of-the-above approach)」を提唱。 ・従来型エネルギーの開発を推進 (石油、天然ガス、石炭など)。 ・国内での化石燃料生産の増大によ り「2020 年における北米のエネル ギー自立」を確立し、雇用創出、貿 易赤字削減、歳入増加を図る。 ・政府は基礎研究への投資に集中 し、勝者の決定は市場に任せる政府 非介入を強調。 ・All-out, all-of-the-above 政策を基 本的には支持するも、国内の化石燃 料の生産拡大に主眼を置く。 化石燃料産業への 補助策 ・石油・ガス企業に対する年間 40 億ドルの税控除の撤廃。 ・国内に眠るオフショア石油・ガス 源の75%以上の開発を推進。 ・公有地ではシェールガス採掘事業 者に化学物質使用の情報公開を義 務付けるなど、環境に配慮しつつ採 掘を推進。 ・環境に配慮したクリーンコール技 術の開発を促進。 ・2013 年度予算案でシェールガス 開発を含む化石燃料プログラムの 予算を前年度比15.3%増とし、関連 の技術開発を支援。 ・石油・ガス企業に対する年間 40 億ドルの税控除の継続。 ・国内の化石燃料生産・採取の大幅 な拡大を主眼に、公用地での許認可 促進などによる採掘を推進。 油田の掘削許可 ・太平洋・大西洋岸での坑井掘削を 制限。 ・すべての海洋での坑井掘削を許 可。 石炭産業 ・発電所、ボイラー、セメント工場 からの水銀、有毒成分、スモッグ、 すすなどの排出量を制限する規制 を実施。 ・石炭開発に積極的。石炭産業を崩 壊へと導きつつある環境規制を撤 廃。 キーストーンXL パ イプライン ・パイプライン建設の環境影響の分 析を優先。 ・パイプラインの建設を促進。 原子力発電 ・クリーンエネルギー源の一つとし て開発を継続。原子力規制委員会 (NRC)の開発許可を得た第一の原 子力発電所を財政支援。 ・温室効果ガス削減に向けた最良策 として開発を推進。NRC の原子力 発電所開発許可の提供権限の拡大。 国有地でのエネル ギー資源の開発 ・政府所有地での坑井掘削許可の提 供権限を内務省に付与。 ・政府所有地での坑井掘削許可の提 供権限を、内務省から各州に移転。 (注)再生可能エネルギー、環境規制に関しては次項を参照のこと。 (出所)両党候補者のウェブサイトなどを基に作成

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 23 (5)再生可能エネルギー [現状と課題]  化石燃料の枯渇、地球温暖化への懸念が世界規模で広がる中、米国においても、「環境」 に消極的とされる共和党支持者も 80%は「代替エネルギー発展の政策は重要」とする 調査結果もみられる。  オバマ政権は、エネルギー安全保障と環境保護の観点から、再生可能エネルギー、ス マートグリッドなど、環境技術の促進をテコとした景気回復、雇用拡大をエネルギー 政策の最優先事項に掲げ、連邦政府による財政支援を積極的に展開してきている。  その柱が、2009 年米国再生・再投資法(ARRA)での財政的支援である。「債務保証プ ログラム」(注)では、エネルギー省が 145 億ドル以上の融資を行った。しかし 2011 年に入り、円筒型太陽光発電モジュールメーカーのソリンドラ、蓄電装置のビーコン パワーなど、政府融資を受けたクリーンテック関連の企業が相次いで破綻し、共和党 からの批判を受けた。  その後、2012 年に入りオバマ政権は、天然ガス、原子力、クリーンコールもクリーン エネルギーとみなし、国内のエネルギー資源すべての開発・活用を推進する「包括的 アプローチ(all-out, all-of-the-above approach)」を打ち出した。また財政難の中、エ ネルギー関連の研究開発や導入促進への予算配分は厳しい見直しを迫られている。 (注)企業が民間金融機関から借り入れし不履行となった場合に、政府が借入金や利 子支払を保証する制度。 [今後の展開]  景気回復のペースが緩やかで家計が苦しく、ガソリン価格の高騰が拍車をかけている 現状では、経済成長、雇用確保に向けた取り組み、国民の大半に手が届く価格のエネ ルギーの供給確保を優先課題とせざるを得ない。  連邦議会では上院で民主党、下院で共和党が多数を占め、2013 年以降も立法行為は難 しいことから、引き続き包括的な環境・エネルギー政策の改革には困難が伴う。した がって、特定の分野に焦点を絞り込んだアプローチになるとみられる。  オバマ大統領の再選により、温室効果ガスの排出や、火力発電所を対象とした環境保 護庁(EPA)による一連の環境規制は、引き続き強化の方向に向うとみられる。ただ し、一連の環境規制は、発電部門での石炭離れを加速化させるが、それだけで再生可 能エネルギーの導入促進を後押しする原動力としては不十分な可能性がある。

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Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 24 [両党候補の主張] 争点 オバマ大統領 ロムニー候補 再 生 可 能 エ ネルギー ・補助金、助成金、税控除を維持。2012 年末で終了する風力発電を対象とする 生産税控除(Production Tax Credit) の継続を目指す。 ・ARRA に基づき、債務保証プログラ ムに計145 億ドル以上を投入。 ・2013 年度予算案で、エネルギー効率・ 再生可能エネルギー(EERE)プログ ラムへの大幅な増額(前年度比 29.1% 増)を提案。 ・バイオ燃料開発を通したエネルギー の安定供給を目指すも、食物系からセ ルロース系等の非食物系へのシフトを 促進(ARPA-E での研究開発資金提供)。 ・補助金、助成金、税控除の縮小。風 力発電を対象とする生産税控除の廃止 を目指す。 ・特定のエネルギー源を焦点とした政 府の資金援助を批判、勝者の決定は市 場の自由競争に任せ、費用効率の高い 技術のみを採用する政府非介入のアプ ローチを支持。 地 球 温 暖 化 問 題 へ の 姿 勢 ・炭素の価格付けや排出上限量の策定 による温室効果ガス削減の推進。 ・燃費基準の強化による排出削減。 ・大気浄化法(Clean Air Act)に基づ く環境保護庁(EPA)の温室効果ガス 排出規制、その他火力発電所を対象と した一連の規制導入の推進。 ・地球温暖化の人為的要因は認めるも のの、その影響とリスクの度合いは不 透明として、経済成長を阻害する気候 変動政策に反対。市場の競争力と経済 成長を阻害するとして炭素税やキャッ プ・アンド・トレード政策を批判。 ・納税者に多大な犠牲を強いるとして EPA による温室効果ガス規制に反対。 省エネ、燃費 基準 ・自動車業界と共同で、2025 年までに 乗用車・軽トラックのガソリン燃費基 準54.5MPG(1 ガロン当たり走行マイ ル)の達成を宣言。現在の燃費基準は 2016 年までに 34.1MPG。 ・100 万軒以上に上る家庭の省エネ化 改築に対し補助金を支給。 ・「燃費基準は米国自動車メーカーを不 利にし、外国製を有利にする」と主張。 国民の選択の権利を制限するような 「行き過ぎた基準」には反対。新規の 54.5MPG の基準に反対するだけでな く、現存の2016 年までに 34.1MPG の 基準も撤廃する意向。 連 邦 政 府 に よる規制 ・EPA の役割の強化。 ・連邦レベルでのクリーンエネルギー 基準(Clean Energy Standard: CES) の策定。 ・EPA の影響力の抑制。 ・連邦政府所有地におけるエネルギー 開発を州に委任。連邦政府による規制 を簡素化し、エネルギー調査・研究へ の承認プロセスを迅速化。 連 邦 政 府 に よ る 研 究 開 発(R&D)支 援 ・投資リスクが高く民間単独での研究 開発が困難な分野を対象とするエネル ギー先端研究計画局(ARPA-E)への予 算を増大(2013 年度大統領予算案では 前年度比27.3%増の 3 億 5,000 万ドル へ増額)。 ・2013 年エネルギー省予算案は前年度 比3.2%増の 271 億 5,507 万ドル、うち 物理・化学の基礎研究・開発を担当す る科学局も同2.4%増を要求など、エネ ルギー研究開発に継続的に注力。 ・ARPA-E を基本的に支持。ただし、 連邦政府によるクリーンエネルギー研 究はあくまで基礎研究を焦点とし、 ARPA-E 以外のエネルギー研究開発予 算は削減。 (出所)両党候補者のウェブサイトなどを基に作成

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