• 検索結果がありません。

はじめに 東日本大震災後 内閣府などにおいて その経験 教訓を踏まえた今後の防災対策のあり方や 特に近い将来発生が予測される南海トラフ地震 津波防災対策など様々な検討が進められてきました 平成 24 年 25 年の二次にわたって災害対策基本法の 制定以来の大改正 と言われる改正が行われたほか 平成

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "はじめに 東日本大震災後 内閣府などにおいて その経験 教訓を踏まえた今後の防災対策のあり方や 特に近い将来発生が予測される南海トラフ地震 津波防災対策など様々な検討が進められてきました 平成 24 年 25 年の二次にわたって災害対策基本法の 制定以来の大改正 と言われる改正が行われたほか 平成"

Copied!
32
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

神戸市防災会議南海トラフ地震・津波対策専門部会報告書

神戸市における南海トラフ地震・津波対策のあり方について

平成 26 年 3 月 25 日

(2)

はじめに 東日本大震災後、内閣府などにおいて、その経験・教訓を踏まえた今後の防災対策のあ り方や、特に近い将来発生が予測される南海トラフ地震・津波防災対策など様々な検討が 進められてきました。平成 24 年、25 年の二次にわたって災害対策基本法の「制定以来の 大改正」と言われる改正が行われたほか、平成 25 年 11 月には南海トラフ地震防災対策推 進特別措置法が成立、施行されるなど、各自治体においても様々な検討・対応が必要な状 況にあります。また、本年 2 月には、兵庫県による南海トラフ地震による最大クラスの津 波想定結果がようやく公表されたところです。 こうした中、神戸市では、東日本大震災の経験・教訓を踏まえて、近い将来の発生が予 測される南海トラフ地震・津波への防災対策を進める上で、様々な立場から専門的な意見 を聴取するため、平成 25 年 6 月、神戸市防災会議に「南海トラフ地震・津波対策専門部 会」を設置することとなりました。 東日本大震災後関心が高まっている事項や、南海トラフ地震による広域災害対応の重要 性を考慮して選定された 5 つのテーマ「広域連携」「避難システム」「都心部の津波避難・ 帰宅困難者対策」「避難所運営~男女双方の視点、災害時要援護者への配慮~」「物資の調 達・供給」にもとづいて議論を進めました。第 1 回目は全体を通した議論、2 回目以降は、 5 つのテーマを 2 つにグループ分けし、各2回ずつの議論として進めました。 学識経験者、地域団体、ボランティア・NPO 関係等、幅広い分野で日頃ご活躍されてい る方々に委員として参画いただき、有意義で活発なご議論がいただけたのではないかと思 います。 本報告書は、その議論を踏まえ、今後の神戸市の地域防災計画改定をはじめ様々な防災 施策の検討・推進に活かしていただくための提言をまとめたものです。 今後、神戸市において、本報告書の提言を活かし、災害に強い安全で安心なまちづくり が進められることを期待しています。 神戸市防災会議南海トラフ地震・津波対策専門部会 部会長 京都大学防災研究所巨大災害研究センター センター長・教授 林春男

(3)

目次 Ⅰ 想定される南海トラフ地震・津波と防災対策の考え方 1 想定される南海トラフ地震・津波 2 防災対策の考え方 3 海と津波に向き合う姿勢 Ⅱ シナリオ(想定される被害の様相)の明確化と共有の必要性 Ⅲ 神戸市における南海トラフ地震・津波対策への提言 1 基本理念 2 基本方針 3 おもな施策の方向性 (1)広域連携の強化 (2)避難システム (3)都心部の津波避難・帰宅困難者対策 (4)避難所運営 (5)物資の調達・供給 〔参考資料〕 1 神戸市防災会議南海トラフ地震・津波対策専門部会委員名簿 2 神戸市防災会議南海トラフ地震・津波対策専門部会開催経過 3 東日本大震災の経験・教訓 4 東日本大震災を踏まえた国の取り組み(主に津波対策に関するもの)と神 戸市専門部会の関係 5 兵庫県南海トラフ巨大地震津波浸水想定図:神戸市(東部) 6 兵庫県南海トラフ巨大地震津波浸水想定図:神戸市(西部) 7 神戸市における南海トラフの地震・津波に係る被害様相(地震動) 8 神戸市における南海トラフの地震・津波に係る被害様相(津波) 9 レベル2被災シナリオ(東灘区) 10 レベル2被災シナリオ(兵庫区) 11 レベル2被災シナリオ(中央区) 3 3 4 5 6 8 8 9 12 12 12 13 15 16 18 19 20 24 25 26 27 28 29 30 31

(4)

Ⅰ 想定される南海トラフ地震・津波と防災対策の考え方 1 想定される南海トラフ地震・津波 東日本大震災後の平成 23 年 4 月、国において「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地 震・津波対策に関する専門調査会」が設置され、同年 9 月に報告がとりまとめられていま す。その中で、防災対策で対象とする地震・津波の考え方として、あらゆる可能性を考慮 した最大クラスの巨大な地震・津波を検討すること、また、津波対策を構築するにあたっ てのこれからの想定津波の考え方として、いわゆる「レベル 1」「レベル 2」の 2 つのレベ ルの津波を想定することが謳われています。 神戸市において、南海トラフ地震・津波対策を進める上でも、この 2 つのレベルの津波 を想定して対策に臨む必要があります。 (1) レベル1:発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす地震・津波 概ね 100 年に一度程度発生してきた地震・津波。従来、内閣府の 2003 年想定や兵庫 県津波被害想定調査(2000 年)等で想定されてきた、M8 クラス。 (2) レベル2:発生頻度は極めて低いものの、甚大な被害をもたらす最大クラスの地震・ 津波 あらゆる可能性を考慮した最大クラスとして、内閣府が想定した南海トラフにおける M9 クラスの想定。1,000 年に一度かそれより低い頻度。 表1 レベル1とレベル2の地震・津波の比較 比較項目 レベル1 レベル2 発生頻度 比較的高い高い高い高い (100100100100 年に一度年に一度年に一度年に一度程度) 極めて低い 極めて低い 極めて低い 極めて低い (1111,,,,000000000000 年に一度年に一度年に一度かそれ以下) 年に一度 地震規模 過去に発生してきた M MM M8クラス8クラス8クラス8クラス あらゆる可能性を考慮した M M M M9クラス9クラス9クラス 9クラス 想定被害 大きな大きな被害をもたらす 大きな大きな 甚大な甚大な甚大な甚大な被害をもたらす レベル1(2003 年想定、3連動) レベル2(最大クラス、最大震度重ね合わせ) 図1 レベル1、レベル2の推定震度分布・震源域の比較(内閣府資料より)

(5)

2 防災対策の考え方 想定される 2 つのレベルに対して、それぞれ以下のような考え方で対策に臨むことが望 まれます。 (1)「レベル1」には基本は被害抑止策 人命保護に加え、財産の保護、地域の経済活動の安定化等の観点から、海岸保全施設 等を整備し、できる限り被害を抑止する必要があります。 (2)「レベル2」には基本は被害軽減策 最大クラスの津波に対しては、海岸保全施設等の現在のハード対策では物的な被害を 防ぎきれませんが、人命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸としたソフト対策と ハード対策を組み合わせた総合的な津波対策を推進する必要があります。 そして、この 2 つのレベルを組み合わせると、神戸市域は以下の3つの地域にして、そ れぞれに適した対策を講ずる必要があることになります。 ①大きな津波被害が想定され、津波対策が必須な地域・・・「レベル2」でも「レベル1」 でも浸水が想定される区域 ②ある程度津波被害が出る可能性があり対応が必要な地域・・・「レベル2」の場合のみ 浸水が想定される区域 ③津波被害がないと想定される地域・・・「レベル2」でも浸水が想定されない区域 図2 レベル 1 及びレベル2の津波浸水想定区域 ※津波浸水想定区域図については、参考資料5,6参照。 レベル 1 (兵庫県 H12.3) レベル 2 (兵庫県 H26.2) 東灘区 灘区 長田区 兵庫区 須磨区 垂水区 中央区 北区 西区

(6)

3 海と津波に向き合う姿勢 東日本大震災では、1,000 年に一度とも言われる大津波による甚大な被害を目の当たり にし、自然の恐ろしさを改めて思い知らされました。また、その後、全国各地で津波想定 が見直される中で、南海トラフの地震についても科学的に考えうる最大クラスの地震・津 波の検討が行われ、従来の想定をはるかに超える巨大津波が発生する可能性が発表されて、 人々の不安は広がっています。 今回想定された津波があまりに大きいため、津波が来たら助からないものだと決めつけ て避難することをあきらめてしまう避難放棄という問題、あるいは、津波のリスクを過大 にとらえ、住まいや産業活動の場はできる限り海辺でなく内陸を選択するべきだ、という ような極端な考えに陥るケースもあります。 神戸は港町として、海の恩恵を受けながら発展してきました。海は恵みをもたらす一方 で、時に災害ももたらすものであることは事実です。しかし、だからと言って、海を避け、 海に背を向けて暮らしていくのではなく、事実は事実として受け止め、災害への備えは日々 怠らないようにしながら、海を愛し、神戸のまちに愛着と誇りを持って暮らしていくのが 神戸市民に求められる姿勢ではないでしょうか。 海という自然が時折もたらす災害を完全になくすことはできませんが、想定される2つ のレベルの津波に対して、ハード・ソフトの対策を組み合わせ、命を守るための避難の重 要性を第一に考えた上で、可能な限り被害を最小化する努力を払いながら海と向き合い、 海の恵みを受けながら生活していくのが、神戸のあるべき姿であると言えます。

(7)

Ⅱ シナリオ(想定される被害の様相)の明確化と共有の必要性 南海トラフ地震が発生した場合の神戸市におけるそれぞれのレベルでの地震動や津波 の様相を明らかにするとともに、市内各地区の特性を踏まえた被害の様相、対応にあた る際の留意点等を明確化し、情報提供、共有することが、神戸市全体として各主体の意 識も高めながら対策を推進していく上で不可欠です。 ※想定される被害の様相の詳細については参考資料7~11参照。 (1)神戸市における地震動や津波の様相 ①地震動にかかわるもの レベル1 ○市内全域で震度5弱以上の揺れ。東灘区、垂水区・西区の一部で震度6弱。 レベル2 ○市内沿岸部を中心に震度6弱の揺れ。垂水区・西区の一部で震度6強。 そのため ○低地部、特に沿岸埋立地等で液状化が発生する可能性有。 ○急傾斜地の崖崩れや、造成盛土の崩壊が一部発生。 ○耐震性の低い木造住宅を中心に全壊・半壊が発生。 ○木造密集地等で火災が発生し、延焼・拡大の可能性あり。 ○長周期地震動により、超高層・高層ビルでは、長時間大きなゆれが続く可能性有。ま た、エレベーター閉じ込めの発生。 ②津波にかかわるもの ○地震発生後ただちに(約 3 分以内)大津波警報または津波警報が発令。M8を超える 巨大地震では、地震規模が精度よく求められた時点で(約 15 分後)更新報が発表さ れる場合がある。 レベル1 ○約 80 分後に津波第1波が到達する。最高津波潮位は最大で 2.5mに及び、東灘区及 び兵庫区の沿岸部で防潮扉が閉鎖できなかった場合に浸水。繰り返し津波来襲。 レベル2 ○約 80 分後に津波第1波が到達する。最高津波潮位は 3.9mに及び、沿岸部で海岸保 全施設を越え浸水。繰り返し津波来襲。 そのため ○沿岸部・河川下流部等で浸水発生。 ○津波漂流物からの出火による津波火災の可能性有。 ○地下街、地下鉄、地下施設で一部浸水の可能性有。 (2)各地区の被害の様相(おもなもの) ①東灘区 耐震性の低い木造住宅を中心に全壊・半壊が発生 深江、本庄、魚崎、御影地区の住民は、国道 2 号以北へ避難 住吉地区の住民は、住吉公園、住吉小学校へ避難

(8)

約 110 分で津波第一波が到達 津波により 6 箇所の避難所が浸水被害 東水環境センターと地域備蓄拠点 4 箇所が浸水被害 東部第 1、第 2 工区は、浸水するが浸水深は深くないため、コンビナート地区の危険物 施設はタンク本体、付属配管共に被害は発生しない 避難者が殺到し、収容が困難となり、指定避難所内の屋内空間や指定外施設で避難生活 が開始 ②兵庫区 入江・明親地区の住民が大開通り以北へ避難 和田岬地区及び浜山地区のほとんどの住民がノエビアスタジアム神戸へ避難 一部の避難者が避難ビル(緊急待避所)へ待避 約 89 分で津波第一波が到達 総合備蓄拠点でもあるノエビアスタジアム神戸の周辺が浸水被害 地域備蓄拠点4箇所が浸水被害 交通渋滞により国道2号横断部等で、避難者が滞留してしまう場所が発生 主要道路の浸水により、国道2号以南との物資搬出入が困難 避難者が殺到し、避難所の収容能力を超過 ③中央区・都心部(三宮、元町、神戸) 長周期地震動により高層建物に被害の可能性 高層ビルの窓ガラス落下等による被害 約 91 分で津波第一波が到達 三ノ宮エリア:旧居留地は大部分が 1~2m 浸水、東遊園地は浸水しない 元町エリア:JR 付近まで浸水、国道 2 号より 1 区画北側までは 1~2m浸水する 神戸エリア:JR 線以北も一部浸水するが、大部分は 0.3~1m 未満、地下街のデュオ神戸 で浸水発生 道路は浸水による通行不能で大渋滞となり、緊急車両の東西への通行に支障が発生 浸水被害の少ない三宮駅周辺や浸水区域外の道路・公園・県庁・神社等の公的屋外空間 にも人が溢れる 表2 各区の津波想定(兵庫県 H26.2) 最高津波水位(m) 最短到達時間(分) 東灘区 3.3 110 灘区 3.2 109 中央区 3.9 91 兵庫区 3.5 89 長田区 2.7 88 須磨区 3.0 85 垂水区 2.6 83

(9)

Ⅲ 神戸市における南海トラフ地震・津波対策への提言 1 基本理念 ~神戸市民の自己決定力の向上を図る~ 神戸市民の力・主体性を伸ばす、神戸らしい防災対策の推進 最大クラス「レベル2」の想定における大規模広域災害では、緊急時の情報伝達や物資の 流通など通常なら期待できる短期・長期の社会的な支援が機能しないことが想定されます。 そのため、日頃からの備えと災害時の行動について、市民一人ひとりが自ら考えて備え、 判断し行動していくことがきわめて重要になります。 ハザードマップ等で浸水域・浸水深など災害想定を事前に知ることをはじめ、防災行政 無線だけでなくひょうご防災ネット等の複数の情報伝達手段による情報収集、あるいは、 情報伝達手段が途絶えても 1 分間以上継続した揺れがあったら津波が来ると判断して避難 するなどの避難行動の原則を知ることなど、個人の力が被害軽減に大きな役割を果たしま す。 日頃の備えについても、阪神・淡路大震災の経験からこれまで 3 日分と言われてきた備 蓄を、大規模広域災害を想定すると 7 日分まで拡充する必要があると言われるようになっ てきており、行政だけでなく市民や企業による備蓄の重要性が一層増していると考えられ ます。 市民一人ひとりや企業の力を高めるためには、そのための啓発、防災教育が重要です。 行政には啓発や防災教育を一層推進し、阪神・淡路大震災の教訓である自助・共助をこれ まで以上に強化していく必要があります。 (1)神戸市民の強みを生かす 阪神・淡路大震災の甚大な被害を受けた神戸市民は、お互いに助け合いながら、また、 国内外から多くの温かい支援を受けながら、復興の長い道のりを歩んできました。その経 験を通して、地域を中心とした人と人との絆の大切さ、防災における自助、共助の重要性 という教訓を得ました。その経験と教訓を生かし、後世に、あるいは他都市へ、ひいては 世界へ伝えるため、市民、事業者、行政がそれぞれの役割を認識し、様々な取り組みが行 われてきています。こうした努力をこれからも継続し、より一層強固なものにする必要が あります。 神戸市では、阪神・淡路大震災を教訓として、平成 7 年から防災福祉コミュニティの事 業が進められ、平成 20 年度には市内全域で計 191 地区に結成されるに至っています。神 戸型の自主防災組織である防災福祉コミュニティは、概ね小学校区単位での組織づくりが なされているため、日頃の防災訓練や災害時の避難所運営などで、小学校を拠点に 1 つの 地域としてまとまった活動ができることが強みであると言えます。消防署を中心として行 政の支援を受けながら各地域で数多くの防災訓練が行われており、災害時の活動に直結す る地域防災力向上の取り組みが進められています。 神戸市民には、阪神・淡路大震災時の市民のつながり・支え合いによる克服の経験とい う強みがあります。また、震災時には被害の少なかった西神・北神から物資が供給される など神戸の地理的な強みが発揮されました。今後も、日頃からの人と人とのつながり、都 市と農村との交流などが、大規模災害時の助け合いにつながることも念頭に置いた取り組 みが重要です。

(10)

他にも、震災をきっかけにボランティア・NPO などの新たな力が根付いてきていること など、神戸市民がこれまで育んできた強みを再認識し、市民の力・主体性を生かし、さら に伸ばす視点で防災対策に取り組んでいくことが望まれます。 (2)市・市民・事業者の役割の明示 神戸市民は、阪神・淡路大震災の経験から、大規模災害においては公助に限界があるこ と、自助・共助が重要であることを知り、防災福祉コミュニティの活動、ボランティア・ NPO 活動など今日の神戸の強みが培われてきています。 市は、まずは、想定される南海トラフ地震・津波における広域で甚大な人的・物的被害 を最小限に留めるとともに、さまざまな社会機能を最大限維持するために、事前の備えと 災害発生時の対応のあり方を総合的に整備すべきです。防潮堤の整備などの予防対策、情 報伝達手段の充実など応急対応のための対策において、南海トラフ地震発生までの残され た時間の中で、市としてできることは何か、できないことは何か(公助の限界)を明示す る必要があります。その上で、市は着実に事業を実施していく一方、市民・事業者の役割 を明確に示し、災害への備えの働きかけと、災害発生時の的確な行動のための訓練の支援 や啓発に努めることが望まれます。 2 基本方針 基本理念のもと、各主体において様々な施策・取り組みを進める上で共通認識として持 つべき主要な観点として以下の 5 点を挙げます。 (1)自己決定力向上の観点からの協働と参画 神戸市民の自己決定力の向上を図る、市民の力・主体性を生かし、伸ばす視点で防災 対策を進める上では、協働と参画の考え方がきわめて重要です。 協働と参画は、これまでも、そしてこれからも、神戸市のまちづくりの基本理念であ り続けるものです。 神戸市では、基礎的・伝統的な地域組織である自治会、婦人会などに加え、ふれあい のまちづくり協議会、防災福祉コミュニティ、まちづくり協議会など、各部局がそれぞ れに施策目的型の地域組織の設置を進めてきています。また、ボランティア元年と呼ば れた平成 7 年の阪神・淡路大震災以降は、様々な分野のボランティア団体や NPO が新 たな地域の担い手として登場し活躍しています。 防災福祉コミュニティをはじめこうした協働の取り組みは、阪神・淡路大震災の経験 をもつ神戸市ならではの強みと言えます。 一方で、こうした状況の中、社会経済情勢の変化等により複雑多様化する新たな地域 課題、例えば、災害時要配慮者支援体制の構築といった防災・福祉・まちづくりなど複 数の分野にまたがる課題への対応が求められていますが、地域組織等の連携がまだ十分 に進んでいるとは言い難い現状にありますのも事実です。 防災に関するコミュニティ活動の支援においても、普段からのコミュニティ活動の取 り組みが、要配慮者の対応などに活きることから、防災のみの視点にとらわれずに進め ることが重要です。「防災の主流化」が求められる中、神戸市の各部局が危機感を持ち、 主体的に、着実に取り組む必要があることは言うまでもありませんが、各部局で個別に 支援するのではなく、相互に連携・協調して施策を行えるような推進体制を整備するこ とが望まれます。

(11)

(2)災害時要配慮者に配慮した防災対策の推進 全ての市民一人ひとりが尊重されなければならないことは、平常時でも災害時でも同 じです。防災対策のあらゆる施策において、災害時要配慮者の方々のそれぞれの状況や ニーズに応じた配慮をしながら取り組みを進める必要があります。 また、神戸市では、いち早く「災害時要援護者支援条例」を制定し、災害時要配慮者 の支援団体の構築、名簿の作成や共有、防災訓練などの取り組みの推進を図っています。 こうした取り組みを推進する上では、これまでの実績を踏まえ、必ずしも全市一律の施 策を推進するのではなく、災害時要配慮者の分布を分析・把握し、個々の地域の状況を 捉えた上で、より実効性のある対策を検討していくことが望まれます。 共助の役割を担う地域では、要配慮者の個人情報を管理することへの不安感がありま す。このため、自治会や管理組合など「顔の見える」小規模の単位で取り組んだり、情 報を提供する支援者や内容を限定したりするなどの工夫が必要です。 また、地域では、支援者になることへの責任感・負担感があります。このため、要配 慮者と支援者の1対1のマッチングに拘らず、平常時は要配慮者の居所の把握のみに留 め、いざというときに地域全体で支える仕組みを構築していくことや、福祉施設や介護 関係者等に人材協力を求めていくことが必要です。 さらに、医療現場でのトリアージのように要配慮者の支援を事前にランク付けするな ど、避難支援が円滑に出来るような対応も有効です。 (3)男女共同参画の視点からの防災対策の推進 男女が共に尊重され、災害発生時の活動はもちろん、事前の防災計画の策定過程や復 興段階の意思決定など災害対応のあらゆる場面において参画の機会が確保されるととも に、双方の視点に配慮して各施策を進める必要があります。 特に避難所運営における役割分担や避難者への対応、備蓄物資の充実等の対応におい ては、東日本大震災の教訓を踏まえ、男女双方の視点に配慮した対応を早急に進めるこ とが望まれます。 (4)市内被害への対処と他都市への支援 神戸市は、阪神・淡路大震災においては受援側、東日本大震災においては応援側とし て得た経験・教訓があります。それをもとに、支援を要する業務や受入体制を予め具体 的に「災害受援計画」として定めるとともに、その重要性を全国に発信しています。 想定される南海トラフの地震・津波による大規模広域災害においては、阪神・淡路大 震災の場合とは違い、神戸市だけでなく全国の数多くの都市が同時被災することが想定 されています。したがって、神戸市では、人員や物資の応援がほとんどない事態も想定 し、限られた人員・物資を有効に活用して、被災した市民への必要かつ十分な対応を行 っていかなければなりません。 また、数多くの都市が被災する中では、相対的に被害の軽い都市では、可能な限り早 期に災害から立ち直りを図り、余力を見出し、甚大な被害を受けて大きな困難を抱える 他都市への支援を可能な限り早期に開始できるようにしていくことも望まれます。震災 を経験した神戸として、可能な限り市内完結の自立型対応体制を構築するとともに、自 治体間の日頃からの顔の見える関係づくりを大切にしながら、都市間相互応援という発 想で備えを進める全国的な枠組みの構築を働きかけていくことも検討すべきです。

(12)

(5)戦略にもとづく防災対策の推進 最大クラス「レベル2」の地震では、津波に対する人命保護を最優先し被害の軽減を 優先させず、住民の避難を軸としたソフト対策とハード対策を組み合わせた総合的な津 波対策を推進する必要があります。一方で、「レベル1」の地震では、人命保護に加え、 財産の保護、地域の経済活動の安定化等の観点から、海岸保全施設等を整備し、被害抑 止を基本とする必要があります。 「レベル1」への対策として、神戸市地域防災計画の事業計画である現行の「安全都市 づくり推進計画」に関して速やかにフォローアップを行い、緊急的に実施すべき事業を 整理し、可能なものはできるだけ早期に着手、実施していく必要があります。 また、「レベル2」対策としては、既に着手しているソフト対策の推進に引き続き取り 組むとともに、「レベル1」以上の整備水準を持つハード対策についても、実施できるも のから合理的に、可能な限り検討、実施していくことが望まれます。 過去数回の南海トラフ地震は、概ね 100 年から 150 年程度の間隔で発生していますが、 直近では昭和 21 年(1946 年)に昭和南海地震が発生しており、その後約 70 年が経過し ています。次の南海トラフ地震・津波がどの程度の規模なのか、何年後のいつ起こるの か、事前に知ることはできませんが、海溝型地震である限りは、周期的に必ず発生しま す。「その時」への備えを着実に進めるため、行政として長期的な事業目的を定め、その 実現に向けた中期計画をしっかり構築し、進捗を管理しながら、各施策を着実に実施し ていく試みを積み重ねる必要があります。

(13)

3 おもな施策の方向性 (1)広域連携の強化 ①受援計画の検証・充実とBCPの作成 東日本大震災では、一部の自治体において首長が亡くなり、役場が壊滅的被害を受ける などにより行政の執行機能が失われるというこれまで想定されていなかった事態が起こり、 大規模災害時の行政機能の維持が課題として認識されました。また、サプライチェーンの 途絶、燃料供給の停滞等があり、企業においても事業継続マネジメント(BCM)の重要 性が再認識されました。 神戸市では、阪神・淡路大震災と東日本大震災において受援側、応援側の両方を経験し、 教訓として受援計画の作成と普及に努めています。今後、事業継続能力の向上を目指して 受援計画の検証・充実、継続業務の絞込み、事業継続計画(BCP)の作成等に取り組ん でいく必要があります。 また、市民の日常生活を早期に取り戻せるようにするためには、企業の事業継続が重要 になるため、BCP の作成を推進するための取り組みも検討する必要があります。 ②業務の標準化 行政における同じ業務でも、各自治体によって日頃の進め方には多少の相違があること が多く、応援・受援の際の調整に多大な時間と労力を費やしてしまうことは、東日本大震災 を含め過去の災害で共通して見られる課題です。その調整コストを下げるために、自治体 間での業務の標準化が進められることが望まれます。 ③協定の広域化 政令市の協定、関西広域連合と九州地方知事会、9都県市の協定など、様々な応援の枠 組みがあります。こうした枠組みを活かす一方で、東日本大震災で効果があったとされる 相互応援について、日頃からの関係づくりの重要性も含めた仕組みづくりを検討していく 必要があります。 また、自治体間の相互応援協定は、近隣自治体間で多く見られますが、広域災害の場合 には互いに同時に被災してしまうことを想定しておかなければなりません。東日本大震災 では、遠隔自治体間の応援協定が有効に機能した事例が報告されていることから、協定の 広域化を検討することが望まれます。 (2)避難システム ①避難行動の明確化と啓発 東日本大震災では、地震発生直後に避難所に避難して命を落とす例がありました。命を 守るために待避する避難場所としての機能(evacuation)と、長期に渡る避難生活を送る 場所としての機能(sheltering)を峻別して、的確に避難先を選択することができなかっ たことが原因でした。 津波警報の第 1 報で発表された地震の規模や津波高さの予想よりも、実際の地震の規模 や津波の高さが大きく上回っていたことが原因で、逃げ遅れたり、一度は避難したものの 戻ってしまって命を落とすなどして、被害が大きくなった、という指摘もあります。

(14)

また、その後のGPS波浪計の観測値を受けて予想される津波の高さは段階的に引き上 げられたものの、停電等により津波警報の続報や津波の観測情報が十分に伝わらなかった ために、被害が大きくなった、という指摘もあります。 迅速で的確な避難判断・行動のためには、ハザードマップ等で浸水域・浸水深などの想 定を事前に知っておくことをはじめとして、防災行政無線だけでなくひょうご防災ネット や緊急速報メール等、複数の情報伝達手段を知っておき、自ら情報を取る姿勢で情報収集 に努めること、あるいは、情報伝達手段が途絶えたとしても、1 分間以上地震の揺れが継 続する場合は、海溝型の大地震による可能が高く、津波が来ることを前提として避難を開 始するなど、避難行動の啓発や防災教育を進めることが重要です。 市民の自己決定を支援するため、地域の詳細なリスク情報を提供するとともに、安全確 保の判断の考え方についての情報提供に努める必要があります。 ハザードマップによる想定浸水域や浸水深、到達時間等の情報提供においては、神戸市 における被害の様相と、市内各地区の特性を踏まえた避難行動を明確にイメージできるよ うにした上で、訓練や啓発に取り組む必要があります。また、浸水想定のない区域の市民 の意識を高めるため、避難受入に協力することなど地域の役割、位置付けを明確にし、啓 発していくことが重要です。 避難を支援するためには、行政として適切なハード対策を着実に実施していく必要があ ります。橋梁など構造物について、耐震化だけでなく、耐津波対策についても、今後の国 の動向等に適切に対応していくとともに、係留船舶やコンテナ等についての対策や危険物 対策なども検討していく必要があります。 ②防災教育の重要性 東日本大震災における釜石市の例では、日頃から防災教育に取り組んできた結果、中学 生が率先避難者となって周辺住民の避難行動につながり、また、小学生等の避難を助ける などして、人的被害の抑止に大きく貢献したと考えられます。 災害の怖さを教え、正しい知識を与えるだけの防災教育では限界があります。様々な状 況の変化を体験したりイメージしながら、どう対応していくかを考え、議論することで、 主体的な姿勢を育み、判断力、行動力など「生き抜く力」を身につけるような防災教育が 必要です。 神戸市では、阪神・淡路大震災の経験・教訓を伝えるため、副読本「しあわせ運ぼう」 により学校での防災教育に取り組んできており、また、東日本大震災後にはその内容を改 定し津波防災の意識向上にも取り組んでいるところです。 災害の教訓を後の世代に受け継いでいくためには常に内容を更新ながら、こうした小中 学校等における防災教育等を通じて、継続的に啓発に努めていくことがきわめて重要です。 (3)都心部の津波避難・帰宅困難者対策 ①都心部の津波避難対策 神戸市の沿岸部において想定される津波浸水域は、東灘区や兵庫区の住宅地や工業地域、 中央区の三宮からハーバーランドにかけての都心部など、様々な地域特性の異なるエリア を含んでいます。 津波避難を考えるとき、神戸は坂のまちであり、また、地震発生から到達まで 80 分間と いう時間的余裕があることから、基本は浸水域を離れる水平避難(坂道避難)、それが難 しい場合の次善の策として垂直避難(階段避難)、という考え方で、啓発が進められ、地

(15)

域ごとの津波避難計画づくりとして「地域津波防災計画」作成の支援事業が行われてきま した。 一方、都心部では、昼間人口が多いこと、来街者など地理に不案内な方々が多いことを 考慮した避難のあり方を考える必要があります。同じ都心部であっても、三宮、元町、神 戸の 3 地区を比較すると、想定浸水域の広がり、避難ビルとなりうる丈夫な建物の分布、 道路や街区の状況など、地区の様子は多様です。 エリアにより人の混雑の程度、避難先までの距離、大きな道路の横断箇所の制限、道路 閉塞の可能性等、避難を考える上で考慮すべきリスクは異なります。混雑した中では転倒 の危険、ビルの上層階にいた場合にはエレベーターの停止などの可能性も考慮が必要です。 災害時要配慮者について考えると、場合によっては、水平避難行動をとること自体が新た なリスクとなることもありえます。 そこで、神戸市の場合、基本的には山側、北側への水平避難が津波避難の原則になりま すが、地域によって、あるいは人それぞれの状況によっては、堅牢な建物の十分な階高が あれば、その場に留まることも有効な選択肢となり得るということも考えておく必要があ ります。 例えば三宮、旧居留地を想定すると、フラワーロードはもともと天井川であった生田川 の流路の付け替えにより埋立ててできた道路であるため、周辺に比べて標高が高く、フラ ワーロードやその周辺、東遊園地、市役所 1・2 号館などは、有効な避難先の選択肢として 考慮に入れていい場所と言えます。 それぞれのエリアにおいて想定される被害の様相と、その場所でとりうる安全な避難行 動としてどのような選択肢があり、どのように選択すべきなのかを知り、的確な情報収集 と合わせて、状況に応じた個々人が自分の置かれた状況に応じて最良の判断・行動ができ るよう、情報提供と啓発を進めることが必要です。 ②帰宅困難者対策の推進 東日本大震災では、地震の影響が広範囲に及び、首都圏において鉄道の多くが運行を停 止したため、多くの帰宅困難者が発生しました。そして、多くの人がすぐに帰宅しようと 行動したため、駅周辺や路上等で混雑・混乱が発生しました。また、帰宅が困難な施設利 用者の保護について、管理者によって対応にばらつきがあり、混乱が生じました。帰宅困 難者対策の必要性が改めて強く認識されることとなり、その後、東京をはじめ各地で帰宅 困難者対策が進められています。 神戸市でも帰宅困難者の大量発生が危惧される三宮地区を中心に、一時滞在施設の確保、 三宮駅周辺での訓練等の取り組みが行われるとともに、神戸市において対策の基本指針が 制定され、本年 1 月には、「三宮駅周辺地域帰宅困難者対策協議会」が設立されるなど、対 策の推進体制が整いつつあります。 今後、基本指針をもとに、具体的な検討を進め、三宮駅周辺地域の対策計画を作成した 上で、事業者の協力も得ながら対策を推進していく必要があります。さらに、実効性のあ るものにしていくためには、事業者、協議会等の自律的行動マニュアルの策定や訓練実施 につなげていくことが望まれます。 その際、発生直後から数時間の利用者の保護、数時間から半日程度の一時待避、半日か ら 1 日、2 日に及ぶ一時滞在といった区別を明確に区別するとともに、一斉帰宅の抑制は 地区の混乱を防ぐだけでなく、企業等の業務継続、事業の早期立ち上げの観点からもメリ ットとなることを事業者に啓発していくことが重要です。 また、東日本大震災では、駅、ホテル、商業施設等、それぞれの判断で、困っている人

(16)

の支援のために一時滞在、携帯電話の充電等さまざまな対応にあたったものの、各事業者 にとっては他の事業者の対応状況がわからない状況でした。行政は、行政としての情報提 供を的確に行えるようにしていくとともに、事業者間の連携と情報共有が円滑にできるよ うに支援していく必要があります。 さらに、必要に応じてこれらの対策を市内の他の人口集中地区にも適用して、一時滞在 施設の拡充を図るとともに、帰宅困難者対策の備蓄について、民間施設における備蓄の強 化を図る上での行政からの支援制度についても検討する必要があります。 (4)避難所運営 ①災害時の地域の支援拠点としてのあり方の検討 東日本大震災では、地区の集会所や個人宅など避難所に指定されていない場所が避難所 になった例が多く見られ、ライフラインの途絶した場所にも避難所が開設されたことから、 救援物資の供給等の支援が十分に行われなかったとされています。 また、都市部を含む大規模広域災害を想定すると、都市部では避難所スペースが大きく 不足する事態が考えられます。例えば高層マンションの多い地域では、仮に建物や家財な どには全く被害がなくても、エレベーターの停止、断水といった副次的な原因により、自 宅での通常の生活が困難となり、避難所に多くの人が殺到することも想定されます。 大規模災害に備える上では、避難所施設を可能な限り多く確保していくよう努めるとと もに、小学校等の統廃合にあたっては、児童のためだけでなく地域の拠り所として在り続 けた施設であることも考慮し、例えば高齢者が多くなっている場合に災害時に避難する代 替の場所が近くにあるのか等の地域の状況も検討、配慮する必要があります。 さらに、避難所を、避難生活を送る場としてだけでなく、在宅避難者を含めて物資や情 報の提供などにおいて適切に支援する拠点としてとらえ、避難生活の短縮、避難者数の抑 制に努める必要があります。学校は児童・生徒の避難誘導にあたる必要がありますが、学 校と地域との連携、日頃からの関係づくりも重要です。 避難所における備蓄のあり方についても工夫が必要となります。必要性と多目的性の観 点からは、例えば、リヤカー(物資運搬、要配慮者の避難支援)、ブルーシート(多用途)、 発電機、投光機などを検討していくことが望まれます。ユニバーサルトイレの備蓄充実に 努めることのほか、耐用年数に応じた定期的なチェックの確実な実施も求められます。燃 料の多様性の観点から、かまどベンチやエコストーブなど各地で見られる取り組みを参考 に、多様な手法を導入していくことも有効です。また、こうした物資、設備は、訓練での 使用、イベントで楽しみながら活用する工夫などにより、実際に見ておくこと、体験して おくことが重要です。 なお、避難所スペース確保に関連する問題として、遺体安置所について、多数の死者が 発生した東日本大震災でも大きな課題となりました。大規模災害を想定した目的に応じた スペース確保のあり方について検討しておく必要があります。 ②避難所の多角的な捉え方 鳥取県江府町と東灘区魚崎町では、戦争中の学童疎開を縁に交流が続けられ、平成 12 年 には災 害 時 に お け る 相 互 応 援 協 定 が 締 結 さ れ て い ま す 。大 規 模 広 域 災 害 を 考 え る と 、こ う し た 日 頃 の 地 域 間 交 流 、都 市 と 農 村 と の 相 互 交 流 が 非 常 に 役 立 つ 可 能 性 が あ り ま す 。 地 域 と 企 業 等 と の 日 頃 の 交 流 も 重 要 で す 。 今後の検討の方向として、①在宅避難、②身近な一時避難場所、③避難生活を送る避難

(17)

所、④二次避難・広域避難の4つの観点で仮の生活を支える場としての避難所を考えてい く必要があります。 ③配慮が必要な人への対応 東日本大震災では、避難所運営等の災害現場での意思決定に女性がほとんど参画してい なかったため、女性用の物資が不足したり、物干し場、更衣室や授乳室の設置といった面 で、男女のニーズを踏まえた対策が不十分であり、避難生活において女性が困難を抱える 例が多くあったとされています。 また、障がい者、高齢者、外国人、妊産婦等の災害時要配慮者については、情報提供、 避難、避難生活等について、対応が不十分な場面があったとされています。 こうした方々が、避難生活において不必要に多くの困難を受けることのないよう、避難 所運営のあり方を、地域であらかじめ検討し、避難所ごとのマニュアルを整備・維持でき るよう、避難所運営マニュアル作成指針のようなものを作成し、地域での取り組みを支援 していく必要があります。 取り組みにあたっては、配慮が必要とされる当事者の参画を得ることが重要です。災害 発生時の避難所運営においてだけでなく、災害への備えを計画する段階においても、当事 者の参画は不可欠です。 また、避難行動も含めて、福祉施設・事業者・介護関係者の連携による支援体制の確立 を進める必要があります。 ④避難生活から住宅再建まで全体を見通した施策の検討 避難所における生活を余儀なくされた人の生活環境を少しでも改善されることは重要で すが、本来、避難生活は長く続くべきものではなく、可能な限り早期に住宅が確保され、 生活が再建されることが望ましいことは言うまでもありません。 生活再建には、住宅の確保が最優先の課題となります。阪神・淡路大震災では避難所か ら応急仮設住宅、そして公営住宅など賃貸住宅あるいは公的支援を受けながらの自力再建、 という流れで住宅復興、生活再建が進みました。東日本大震災では、民間賃貸住宅を仮設 住宅として活用する「みなし仮設住宅」がクローズアップされました。 来るべき大規模災害に備えるためには、こうした仮の生活の場としての住宅の変遷を踏 まえ、効果と課題を検証し、早期自立を前提として、より良い居住空間の提供をトータル で考えるとともに、住宅、健康、雇用、近隣の見守り・助け合いなど総合的な暮らしを維 持する観点から生活再建を進める全国的な枠組みの検討・議論が必要です。 また、災害発生後に遅滞なく罹災証明を発行し、給付や減免など様々な被災者支援施策 に必要となる煩雑な行政手続きをワンストップで一元的に取り扱えるようにするなど、ス ムーズな生活再建につなげるための初動対応についても、他都市の災害事例において実用、 研究が進んでいる被災者再建支援システムなどについて早期に確立し、活用できるように していく必要があります。 さらに、スムーズな生活再建には、復興需要の高まりが地域経済に効果をもたらし早期 の雇用確保につながるという観点も重要です。 (5)物資の調達・供給 ①市民備蓄の推進 東日本大震災では、避難所、避難者の状況把握がうまくいかなかったため、災害対応の

(18)

フェーズに応じて変化する被災者のニーズの変化を十分に把握して適切なタイミングで物 資を供給するということがうまく行われませんでした。 大規模災害時には、物流が滞って流通備蓄が来ないことや、生産活動の停滞も重なって 不足が長期化することも想定しなければなりません。 備蓄について、阪神・淡路大震災の経験から、市民への呼びかけとして、これまで 3 日 分の備蓄と言われるのが一般的でしたが、内閣府の検討会報告書でも、大規模広域災害を 想定すると 7 日分と言われるようになってきています。 神戸市でも、市民備蓄について、レトルト食品などを食べ回しながら備蓄するローリン グストック法など無理のない取り組みの工夫・知恵も含めて啓発を進め、自助・共助の強 化に努める必要があります。市としての備蓄の考え方を明確に発信し、備蓄の場所、品目、 数量といった内容を明示した上で、家庭や地域、事業所等における備蓄を推進しなければ なりません。 なお、防災意識の高まりに応え民間マンションでも備蓄など防災機能を備えた施設整備 が多く見られるようになってきていますが、こうした取り組みを支援し推進する方策につ いては様々な角度から検討・工夫が必要です。 ②物資調達の見直し検討 東日本大震災において、物資の集積拠点では、荷捌きや在庫管理のノウハウを持たない 行政職員が対応したため物資が停滞し、行政からの支援物資に加えて、民間からの大量の 義援物資であふれかえりました。また、移送手段の手間取りも重なって、配送が滞りまし た。 物資調達をより確実・円滑に進めるためには、物資調達のアウトソーシング、オペレー ションに民間物流業者等のノウハウを活用することも検討が必要です。このように外部の 人的資源・物的資源を可能な限り活用することは、限られた行政のマンパワーを有効に活 用することにもつながります。 食糧をはじめとして基本的で多くの量が必要な物資の調達・供給は行政が担い、多様で きめ細かいもののニーズについては NPO・ボランティア等も含めて民間の力をできる限り 活用し、役割分担していく発想も重要です。 また、ニーズが出てきている物資が届かず、既に充足している物資が大量に届き続け、 不要な物であふれ返る、という東日本大震災で起きた事態を防ぐためにも、可能な限り早 期にプル型(要求応答型)に移行できるための体制を整えていく必要があります。 さらに、神戸市の場合、150 万人超の人口を擁し、その市域は広大であるため、短時間 で意思決定し迅速に判断・行動していくためのより良い体制のあり方、例えば区役所単位 での権限と対応力を強化するなどといったことについても検討していく必要があります。

(19)

参考資料1 神戸市防災会議 南海トラフ地震・津波対策専門部会 委員名簿 部会長 林はやし 春男は る お 京都大学 防災研究所 巨大災害研究センタ-教授 磯辺い そ べ 康子や す こ 株式会社 神戸新聞社編集局社会部デスク編集委員 神崎 かんざき 潔子き よ こ 市政アドバイザー 鍬 くわ 田た 泰子や す こ 神戸大学大学院 工学研究科准教授 小池こ い け 裕ゆたか 社会福祉法人 神戸市社会福祉協議会広報交流部長 近藤 こんどう 惠めぐみ 市政アドバイザー 坂本 さかもと 津留代つ る よ 井吹東ふれあいのまちづくり協議会 防災防犯部会委員長 立木た つ き 茂雄し げ お 同志社大学 社会学部教授 田村た む ら 圭子け い こ 新潟大学 危機管理室教授 野崎の ざ き 隆 一りゅういち 特定非営利活動法人 神戸まちづくり研究所理事(事務局長) 本 庄 ほんじょう 昭あきら 社団法人 神戸市医師会長 山本 やまもと 孝子た か こ 婦人防災安全委員 計12名 (敬称略)

(20)

参考資料2 神戸市防災会議 南海トラフ地震・津波対策専門部会 開催経過 会議 日時/場所 議事 第1回 平成 25 年 6 月 4 日(火) 13:30~16:30 神戸市役所 4 号館(危機管理 センター) 1F 本部員会議室 (1) 神戸市地域防災計画の変遷と取り巻く情勢 (2) 東日本大震災の教訓を踏まえた南海トラフによる 地震・津波対策の考え方について (3) 東日本大震災を踏まえた国の取り組み (4) 神戸市における防災対策の検討課題テーマに ついて 第2回 平成 25 年 8 月 7 日(水) 13:30~16:30 デザイン・クリエイティブセンタ ー神戸(KIITO) 301 号室 (1) 第 1 回 南海トラフ地震・津波対策専門部会の議 事概要について (2) シナリオ作成について (3) 検討テーマ1 広域連携について (4) 検討テーマ2 避難所運営について (5) 検討テーマ3 物資の調達・供給について 第3回 平成 25 年 10 月 28 日(月) 13:30~16:30 神戸市役所 4 号館(危機管理 センター) 1F 本部員会議室 (1) 第2回 南海トラフ地震・津波対策専門部会の議 事概要について (2) 検討テーマ4 避難システムについて (3) 検討テーマ5 都心部の津波避難・帰宅困難者 対策 第4回 平成 25 年 12 月 9 日(月) 13:30~16:30 神戸市役所 4 号館(危機管理 センター) 1F 本部員会議室 (1) 第3回 南海トラフ地震・津波対策専門部会の議 事概要について (2) 地域ごとの防災対策に資する災害想定シナリオ の作成について (3) 検討テーマ1+3 広域連携、物資の調達・供給 (支援物資) (4) 検討テーマ2+3 避難所運営、物資の調達・供 給(備蓄) 第5回 平成 26 年 2 月 26 日(水) 13:30~16:30 神戸市役所 4 号館(危機管理 センター) 1F 本部員会議室 (1) 第4回 南海トラフ地震・津波対策専門部会の議 事概要について (2) 検討テーマ4 【津波避難システム】について (3) 検討テーマ5 【都心部の津波避難・帰宅困難者 対策】について (4) 神戸市防災会議南海トラフ地震・津波対策専門 部会報告書(案)について

(21)

参考資料3 東日本大震災の経験・教訓 「平成 24 年版防災白書」(内閣府)より、検討テーマに関連する項目を中心に抜粋。 (災害の想定) (災害の想定) (災害の想定) (災害の想定) これまで地震・津波の想定は、当該地域で過去数百年間に経験してきた地震・津波を再現することを基本とし てきたが、今回の東日本大震災を想定することができなかったことから、従前の想定手法を見直す必要があ る。 また、東日本大震災では、地震・津波に合わせて原子力災害が同時に発生し災害対応をより困難なものにし た。今後、地域の特性を踏まえ、起こりうる複合災害を想定した対策について検討する必要がある。 (災害対策の基本的考え方) (災害対策の基本的考え方) (災害対策の基本的考え方) (災害対策の基本的考え方) 防波堤や防潮堤等の構造物だけでは、自然災害を防ぎきることができないことが明らかになった。さらに、被 害が大きかった現象にのみ着目した対策を取りがちだった。 各種の災害対策は災害想定に基づき実施されてきたところである。しかし、そのことが災害を防ぐことができ るとの過信につながり、一部地域においては被害を拡大させた可能性がある。例えば、今回の津波は、従前の 災害想定に基づくハザードマップに描かれた区域より広い区域まで到達している箇所がある。 このような状況を踏まえると、施設整備等のハード対策に加え、都市計画や土地利用とも組み合わせた対策 が今まで以上に必要である。人命が失われないことを最重視し、ハード・ソフトの様々な対策を組み合わせて、 今後は、災害時の被害を最小化する「減災」の考え方を浸透させていかなければならない。 (被災地方公共団体の課題等) (被災地方公共団体の課題等) (被災地方公共団体の課題等) (被災地方公共団体の課題等) 被災した市町村においては、災害応急対策、被災者支援等の業務が増大し、対応能力の限界を超えたり、 職員や庁舎が被災し、行政機能が著しく低下する例も多かった。加えて、通信の途絶等のため、被害の把握や 被害状況の報告・発信等が行えない状況が多く発生した。このため、国や県においては、発災当初、被災市町 村の実情を全く把握できなかったこともあった。 一方、被災した地方公共団体の多くは、災害時に他の地方公共団体等から応援を受ける計画を持っていな かったため、応援の受け入れが円滑に進まなかった。 (ライフライン・物流) (ライフライン・物流) (ライフライン・物流) (ライフライン・物流) 一方、発電所やライフラインの主要設備が津波や地震動により被災し、復旧まで長期間を要する事例があっ た。また、製油所、油槽所及びサービスステーションが多数被災するとともに、被災地外からの物流網が途絶し たことから、被災地への燃料の供給が停滞した。 また、国民の不安心理が増大する中で、商品の需給バランスや市中在庫量等を把握できなかったため、全 国的に生活必需品が一時的に入手困難となった。 (避難所の設置・運営) (避難所の設置・運営) (避難所の設置・運営) (避難所の設置・運営) 地区の集会所や個人の住宅等、避難所として指定されていない場所が避難所となった例が多いこと、ライフ ラインの途絶した場所にも避難所が設けられたことから、これらの場所への救援物資の供給等の支援が十分 に行われなかった。 避難所になるべき施設に、避難所に必要な設備や、食料、水、燃料等の備蓄があらかじめ十分に備わってい なかった。 また、被災者が一時的に身の危険を回避した避難場所に長く滞在したこと、自宅や自宅に近い避難所での生 活を望んでいる場合も少なくなかったこと、行政側が被災者のニーズの変化へ十分に対応できなかったこと、 避難所での栄養管理や健康管理を十分にできなかったこと等から、避難生活の改善が遅れた。 日頃から行政と地域住民が一体となって訓練を実施していた避難所では、円滑な避難所運営が行われた一 方、一部の避難所では、適切な運営が行われなかった。

(22)

(二次避難・広域避難) (二次避難・広域避難) (二次避難・広域避難) (二次避難・広域避難) 地方公共団体は、一時的に難を逃れる場所としての機能と、長期にわたっての居住空間を提供する場所とし ての機能を峻別して、被災者を避難させることができなかった。 市町村や県を越える避難が必要となった場合があったが、そのような避難を想定した備えが十分でなかった。 このため、他の地方公共団体による避難者の受入れや広域避難者に対する支援の実施までに時間を要した。 (応急仮設住宅) (応急仮設住宅) (応急仮設住宅) (応急仮設住宅) 応急仮設住宅の設置場所については、被災地の地形上やむを得ない面もあるが、砂利道の不便さ、室内の 寒さ、玄関や風呂のバリアフリー、部屋の広さ等を改善する必要があった。 また、民間賃貸住宅を応急仮設住宅として活用する場合にあっては、迅速に対応できるようにするため、地 方公共団体と不動産業者との間のルールをあらかじめ明確にしておく必要がある。 なお、建設された応急仮設住宅と比べて民間賃貸住宅の活用は、避難者の居住場所が分散するため、官民 の支援を行いにくい面があった。 (男女共同参画の視点) (男女共同参画の視点) (男女共同参画の視点) (男女共同参画の視点) 避難所の運営等、災害現場での意思決定に女性がほとんど参画していなかったため、女性用の物資が不足 したり、女性専用の物干し場や更衣室、授乳室が設置されない等、男女のニーズの違いを踏まえた対策が不 十分であり、女性が避難生活に困難を抱えていた。 長引く避難生活や生活不安等の影響により、女性に対する暴力の増加や男性の孤立化の懸念が生じた。 (災害時要援護者への配慮) (災害時要援護者への配慮) (災害時要援護者への配慮) (災害時要援護者への配慮) 障害者、高齢者、外国人、妊産婦等の災害時要援護者については、情報提供、避難、避難生活等について、 対応が不十分な場面があった。 災害時要援護者名簿の整備については、個人情報保護の観点から懸念を示す地方公共団体が少なからず 存在し、名簿等の有効活用ができなかった。 避難所、応急仮設住宅等がバリアフリー化されていなかった。また、災害時要援護者の中には、障害者用ト イレが必要な者や多人数での共同生活が困難であり、少人数での居室が必要な者もいたが、これらに対応で きない避難所が多かった。 (絆・コミュニティの重視) (絆・コミュニティの重視) (絆・コミュニティの重視) (絆・コミュニティの重視) 避難行動、避難所や応急仮設住宅での暮らしにおいては、被災者が孤立しないようにするため、絆・コミュニ ティが被災者の生活にとって欠かすことのできない重要なものである。また、被災した子どもを社会全体で責任 を持って守り、育てていくことが必要である。 (物資供給) (物資供給) (物資供給) (物資供給) 支援物資の供給は、これまで被災地方公共団体からの要請を待って調達するという需要追従型であったが、 被災直後、被災市町村では著しく行政機能が低下し、通信途絶に陥っていたことから、政府においては、被災 者に必要な物資に関する情報を得ることができず、「来ない情報」を待っていた。 そこで、政府では、被災地方公共団体の自助努力のみでは物資の調達が困難と判断し、国の予算の予備費 を活用した物資の調達・支援スキームを構築し、県の集積拠点に、食料、水、毛布等の緊急的に必要となる生 活支援物資を届けることとした。 しかし、避難所、避難者の状況把握に時間を要し、災害対応のフェーズに応じて変化する被災者の生活用品 へのニーズの変化を十分汲み取った供給を適切なタイミングで行うことができなかった。 一方、県の集積拠点は、荷さばき・在庫管理のノウハウを持たない行政職員が対応したため、政府からの支 援物資に加え、大量の民間からの義援物資で集積拠点はあふれかえり、物資が滞留する事態に陥り、市町村 や避難所への移送手段の手間取りとあいまって、避難所等への配送が滞った。 今回の災害対応を通じ、調達・輸送のスキームの立ち上げ時期の判断、物資調達に係る費用負担や会計処 理の明確化、発災後 3 日間、1 週間等の時間の経過とともに変化する被災者ニーズの把握とそれへの対応、 燃料不足による物資輸送の遅延への対応、政府、調達業者及び被災地方公共団体との間での物資調達・輸

(23)

送に係る情報共有、物流事業者のノウハウ活用等が教訓として挙げられる。 (被災者支援制度の体系) (被災者支援制度の体系) (被災者支援制度の体系) (被災者支援制度の体系) また、被害認定から支援までの手続がかかり、り災証明の発行、被災者生活再建支援金、災害弔慰金及び 義援金の支給が、総じて遅かった。 住家の被害認定に当たっては、被災地方公共団体に大きな事務負担が発生したことや一部にばらつきもみ られた。 義援金については、事務を迅速に行うため、日本赤十字社の事務手続及びその事務費を場合によっては義 援金から支弁することも含めて検討が必要である。また、義援金の支給基準について検討が必要である。 さらに、義援金の募集団体においては、寄附された義援金の使途や、義援金が寄附金控除を受けられるか 等について、被災者や寄附者等へ分かりやすく説明する必要がある。 (事業継続計画) (事業継続計画) (事業継続計画) (事業継続計画) 被災した民間企業の事業停止が波及し、その産業へ広く影響が生じる例が多かった。 サプライチェーンの途絶、燃料供給の停滞等があったことから、企業の事業継続計画(BCP)の重要性が再 確認された。 (防災ボランティア活動) (防災ボランティア活動) (防災ボランティア活動) (防災ボランティア活動) 防災ボランティア活動の受援側である被災地においては、ニーズの把握・発信が容易にできない等、ボランテ ィアの受入れ体制が速やかに整えられなかった。 一方、支援側である被災地外の各ボランティア団体においては、被災地情報の不足や車両の燃料不足等も あって、その活動方針や連携体制が速やかに整えられなかった。 (津波からの避難) (津波からの避難) (津波からの避難) (津波からの避難) 津波警報の第 1 報で発表した地震の規模や津波の高さの予想を、実際の地震の規模や津波の高さが大きく 上回っていたため、被害が大きくなったとの指摘がある。また、その後、GPS 波浪計が海面の急激な上昇を観 測したことを受け、予想される津波の高さは段階的に引き上げられたが、地震による停電等により、津波警報 の続報や津波の観測情報が被災地の住民等に十分に伝わらなかったため、被害が大きくなったとの指摘があ る。 津波警報等に従って高台等へ避難して多くの者が助かった一方、地震後すぐに避難しなかったり、避難後に 再度戻ったこと等により犠牲になった者も多かった。津波避難ビルの一部においては、3〜4 階の高さまで津波 が押し寄せ、避難場所として機能しなかった。また、指定避難所に避難したものの、そこで犠牲になった者もい た。 津波からの避難方法は、徒歩によることを原則として今まで周知してきたところであるが、自動車による避難 で難を逃れた者も多くいる一方で、自動車内で被災した者も多かった。 また、過去の津波被害を受けて一旦高台へ移転したものの、海岸近くへ再移転していた住家等が、今回の津 波により被災した。 (津波防護施設等) (津波防護施設等) (津波防護施設等) (津波防護施設等) 防波堤や防潮堤、海岸防災林は、津波の陸地への到達時間を遅らせる等の効果を発揮したが、その多くが 津波により越流・破壊された。 一方、高所のない平地部にあった盛土構造の道路が、津波に対して避難場所や防潮堤として有効に機能し た。 (広域に及ぶ地震動) (広域に及ぶ地震動) (広域に及ぶ地震動) (広域に及ぶ地震動) 地震の揺れによる建物被害は、地震動の周期特性等により、地震規模を考えるとそれほど大きくなかったも のの、東北地方から関東地方にかけての広い範囲において、多数の全壊、半壊、一部破損等の被害があった。 また、地震動による送電線の切断、上下水道管渠の損壊等によって、電気・水道・ガス等のライフラインや、鉄 道等の交通施設に甚大な被害をもたらした。 さらに、震源から遠く離れた首都圏や大阪府等で長周期地震動(ゆっくりと長く揺れる地震による揺れで、高

(24)

層ビル、石油タンク等の長大構造物が破損することがある。)による大きな揺れが観測された。 液状化による宅地や地下構造物等の被害が、震源から遠く離れた千葉県や埼玉県等において発生した。 (首都圏における帰宅困難者) (首都圏における帰宅困難者) (首都圏における帰宅困難者) (首都圏における帰宅困難者) 広範囲な地震動が生じたことから、首都圏において、鉄道の多くが運行を停止したこと等により、多くの帰宅 困難者が発生した。また、多くの人がすぐに帰宅を開始したため、駅周辺や路上等において混雑・混乱が発生 した。 ( (( (教訓の活用・伝承教訓の活用・伝承教訓の活用・伝承教訓の活用・伝承、、、、教育及び訓練)教育及び訓練)教育及び訓練)教育及び訓練) 「此処より下に家を建てるな」等と刻まれた石碑の教訓を守り高台に住んでいた住民は助かった事例や、日 頃からの防災教育に基づき中学生が小学生の避難を助け、また、中学生等の避難行動がきっかけとなって周 囲の住民も避難し、被害を最小限に抑えた事例があった。一方、過去の災害の教訓が時間の経過とともに忘 れ去られ、多くの者が犠牲になった地区もあった。住民の生命を守ることを最優先として、迅速な避難を確実に 行うためにも、防災教育・避難訓練等を組み合わせた対策を講じていくことが必要である。 また、災害対応に関係する首長を含む公務員に対しても、防災教育や訓練が重要である。 国、被災地方公共団体、その他の地方公共団体の連携等を強化するため、広域なブロックごとの訓練、国民 の防災意識高揚のため、多数の国民が参加する多角参加型訓練等の実践的訓練について、国として企画・実 施することが必要である。

参照

関連したドキュメント

長期ビジョンの策定にあたっては、民間シンクタンクなどでは、2050 年(令和 32

○防災・減災対策 784,913 千円

その後 20 年近くを経た現在、警察におきまし ては、平成 8 年に警察庁において被害者対策要綱 が、平成

東京都環境局では、平成 23 年 3 月の東日本大震災を契機とし、その後平成 24 年 4 月に出された都 の新たな被害想定を踏まえ、

防災 “災害を未然に防⽌し、災害が発⽣した場合における 被害の拡⼤を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをい う”

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

東京都北区地域防災計画においては、首都直下地震のうち北区で最大の被害が想定され

国では、これまでも原子力発電所の安全・防災についての対策を行ってきたが、東海村ウラン加