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7: , 2007 Changes in Separation Distances of Scapular Region Muscles before and after Shoulder Joint Flexion and Abduction Yuji HOTTA, RPT 1),

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(1)

肩関節屈曲、外転時の肩甲帯周囲筋群の起始・

停止間距離の変化について

堀田 祐司

1)

中村 真樹

1)

前田 将樹

1)

大桐 将

1)

山田 忠尚

2)

福島 秀晃

3)

三浦雄一郎

3)

Changes in Separation Distances of Scapular Region Muscles before and after

Shoulder Joint Flexion and Abduction

Yuji HOTTA, RPT

1)

, Masaki NAKAMURA, RPT

1)

, Masaki MAEDA, RPT

1)

, Masaru OGIRI, RPT

1)

,

Tadahisa YAMADA, MD

2)

, Hideaki FUKUSHIMA, RPT,

3)

Yuichiro MIURA, RPT

3)

Abstract

For mobility training of the shoulder joint in cases presenting restricted movement, it is important to understand the pattern of movement and the angles of all the joints forming the shoulder complex, including changes in the sternoclavicular, acromioclavicular, scapulohumeral, and scapulothoracic joints. In this research, differences in the starting and finishing distance of muscles surrounding the shoulder girdle during shoulder joint flexion and abduction were surveyed using a skeletal model. X-ray images were obtained at intervals of 30° between 0° and 180° during shoulder joint flexion and abduction of the right upper arms of seven healthy male subjects. At each angle, the shoulder blade rotation angle, the degree of slant of the collar bone, and the location of the scapular spine medial extremity were measured. These results were recreated on a skeletal model, and the distances between the muscles surrounding the shoulder joint (trapezius muscle superior fiber, mid fiber and inferior fiber, levator scapulae, serratus anterior upper fiber, serratus anterior lower fiber, and rhomboid minor and major muscles) before and after the joint flexion and abduction were measured. The characteristics of two-dimensional analysis of flexion (bone index coordinates movement analysis) comprise the separation of the scapular spine medial extremity from the spine and the movement in a caudal direction. The characteristics of two-dimensional analysis of abduction comprise approach of the scapular spine medial extremity to the spine and movement in a caudal direction. The trapezius muscle superior fiber located on the inner side of the shoulder blade, levator scapulae, trapezius muscle inferior fiber, and rhomboid minor and major muscles exhibited a complex pattern of extension and contraction corresponding to changes in the angle, unlike in flexion. We consider that, in a clinical situation, during shoulder joint movement range training, the muscle group on the medial edge of the scapula can easily become a limiting factor in joint movement range control. Moreover, in subduction, where the muscle group cannot automatically respond to changes in the angle by extension and contraction, treatment is needed on the assumption that it is a ROM control factor.

Key words: shoulder joint flexion and abduction, range of motion, starting and finishing distance differences of muscles surrounding the shoulder girdle

J. Kansai Phys. Ther. 7: 105–115, 2007

1) 山田整形外科病院 リハビリテーション科 2) 山田整形外科病院

3) 第一岡本病院 リハビリテーション科

受付日 平成19年9月19日 受理日 平成19年11月3日

Department of Rehabilitation, Yamada Orthopedic Surgery Hospital Yamada Orthopedic Surgery Hospital

Department of Rehabilitation, First Okamoto Hospital

関西理学療法学会 平成 19 年度研究助成論文

(2)

はじめに リハビリテーションを対象とした患者において、関節 可動域制限(以下、ROM制限)が問題となる場合が多々あ る。よって日々の臨床においてROM制限に対する評価、 治療がいかに重要であるかは言うまでもない。 ROM制限を来たす要因には大きく分けて①器質性、② 機能性によるものがある1)。臨床上、後者の機能的変化 による軟部組織へのアプローチが治療対象となることが 多い。Trudel2)によると、1か月以内の不動で起こるROM 制限の責任病巣は骨格筋であり、その後は、関節構成体 になると述べており、骨格筋がROM制限に対して多大な 影響を与えている。ROM制限が長期にわたると近隣関節 にも悪影響を及ぼし、二次的、三次的な障害を招く危険 性がある。また、リハビリテーションにおける診療報酬 改定により日数制限が設けられた現在、ROM制限因子を 具体的に解明していき、可及的速やかに治療に臨んでい く必要がある。 特に肩関節は肩甲骨、鎖骨、上腕骨がそれぞれ関節を 形成し、複合された運動によって高い自由度がある。そ して運動方向や角度変化によりそれぞれの関節に求めら れる機能も巧妙多彩であるため、肩関節を形成する一つ の関節だけでもROM制限を来たせば、肩関節としての機 能障害を招き、上肢のADL低下が引き起こされていく。 よって肩関節のROM制限を改善させていくには肩関節を 形成する胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節、肩甲胸郭 関節の各関節、肩関節の運動方向、角度などの様々な条 件を勘案しながらそれらに対応した骨格筋の変化を理解 し、ROM制限因子を特定していかなければいけない。 我々は健常者の肩関節屈曲、外転運動を角度ごとにX 線撮影をおこない、鎖骨、肩甲骨の骨指標座標移動分析 をおこなっている3)。これは上肢挙上に伴う肩甲骨の上 方回旋を量的に評価するのみでなく、肩甲骨の上方回旋 がどのように構築されていくのかという質的な評価をお こなっていくことを目的としている。Ludewigら4)は上肢 挙上の角度によって肩甲骨の回旋軸が常に変化すること により肩甲帯周囲筋機能の役割も実質的に変化すると し、肩甲骨の異常な運動性と肩甲帯周囲筋の異常な活動 性が肩の病変に関連性があるとしている。したがって、 我々、理学療法士は健常者の上肢挙上における鎖骨、肩 甲骨の運動性を理解するとともに、それらの運動に関わ る肩甲帯周囲筋群の特性も理解する必要がある。高濱5) は、遺体を用いて、肩関節周囲筋の伸張性について述べ ているが、肩関節屈曲・外転に伴う肩甲骨、鎖骨の位置 が充分に再現されていないので、本来の屈曲、外転運動 とは異なっている。それに加えて、肩関節可動域の変化 に伴って、筋の長さがどのように変化するのかを述べた 研究はない。そこで本研究目的は、我々がおこなってき た健常者における肩関節屈曲、外転運動時の鎖骨、肩甲 骨の運動性の結果3)を骨格模型で再現し、肩関節の運動 方向および角度変化と肩甲帯周囲筋群の起始・停止間距 離の変化との関係性を明確にしていくことである。 方 法 1.X線撮影 対象は、整形外科学的・神経学的に問題のない健常男 性7名の右上肢とし、全例において肩関節の可動域制限を 認めなかった。被験者の平均年齢、平均身長、平均体重 は、それぞれ31.2±6.2歳、177.4±7.7 cm、72.7±12.5 kg であった。なお、被験者には本研究の趣旨を説明し、同 意を得た。またX線撮影を行うために、関西理学療法学会 倫理委員会での承認を得て、今回の研究をおこなった。 具体的方法は安静立位で、肩関節屈曲および外転運動 を0°から180°まで30°ごとにX線撮影をおこなった。 X線撮影を始める前に、足部の位置は肩幅と同程度にな るように、また、位置を変えないよう指示した。屈曲お よび外転運動において肩甲帯挙上、体幹側屈などの代償 が生じないことを確認した。X線の入射位置を、安静立 位時の右側肩甲帯に合わせ、鎖骨全長、肩甲骨上角、下 角が写真に収まるように、撮影をおこなった。なお屈曲 運動は、全測定可動域を肩関節内外旋中間位とした。外 転運動では、下垂位を肩関節内外旋中間位とし外転30° から外旋位として測定した。角度の設定は理学療法士が ゴニオメーターを用いて測定した。 2.二次元での分析方法(骨指標座標移動分析) 各被験者のX線写真において、胸鎖関節を軸とした座 標面を作成し、肩関節屈曲と外転におけるそれぞれの肩 甲棘内側端の移動方向・量を測定した。移動方向は、 X、Y方向に分解して評価した。座標Xは水平線と一致 し、棘突起に近づく方向をプラスとし、棘突起から離れ る方向をマイナスとした。また、座標Yは、垂直線と一 致し頭側をプラスとし、尾側をマイナスとした。移動量 は、下垂位の状態から肩甲棘内側端がどれだけ移動した かを表した。角度ごとに肩甲棘内側端の移動方向・量を 測定した。また、X線写真から、肩甲骨上方回旋角度(肩 甲棘内側端下端から肩峰下端を結んだ線と肩峰最下端を 通る水平線とのなす角度)、鎖骨傾斜角度(胸鎖関節と肩 鎖関節を結んだ線と胸鎖関節を通る水平線とのなす角度) を測定した。それぞれの測定結果について、同じ角度で の屈曲・外転の比較をおこない、統計学的には対応のあ るt検定を用いて処理をおこなった。 3.骨格模型での再現 骨格模型を用いて肩関節屈曲および外転運動を忠実に

(3)

再現するために、肩関節0°位でのX線写真での鎖骨の長 さ(鎖骨内側端中央と鎖骨外側端中央を結ぶ線)を測定し た。7名の鎖骨長の平均(175±6.8 mm)を基準に骨格模型 の鎖骨長(130 mm)との比率を算出し、X線写真と骨格模 型のスケールを統一した。骨格模型で肩甲棘内側端の位 置を再現するために先に求めた肩甲棘内側端の位置をこ の比率に置き換えた。 骨格模型は「フィル」理学療法用骨格モデル、吊り下げ 型スタンド仕様(ヒューマンボディー社)、全長155 cm、 幅45 cm、奥行き30 cmを使用し、2)で求めた骨格模型で の肩甲棘内側端の位置と、肩甲骨上方回旋角度、鎖骨傾 斜角度を肩関節屈曲・外転30°ごとに再現しながら、各 角 度 で 以 下 の 測 定 筋 の 起 始 ・ 停 止 間 距 離 の 長 さ を メ ジャーにて測定した。 測定筋は、①僧帽筋上部線維、②僧帽筋中部線維、③ 僧帽筋下部線維、④肩甲挙筋、⑤前鋸筋上部線維、⑥前 鋸筋下部線維、⑦大菱形筋、⑧小菱形筋とし、各筋の起 始・停止位置に関しては表1に示す。 4.分析方法 下垂位での各測定筋の起始・停止間距離を基準値0と し、運動方向および角度ごとに起始・停止間距離を求め た。各角度において測定筋の起始・停止間距離が基準値 よりも長くなる場合はプラス、短くなる場合はマイナス として表した。 結 果 1.鎖骨傾斜角度(図1) 下垂位における鎖骨の傾斜角度は4°であった。屈曲 と外転角度60°で鎖骨傾斜が5°以上増加する被検者数 は肩関節屈曲で0名であるのに対し、肩関節外転では7名 中6名であった。肩関節屈曲角度60°までは傾斜角度の 変化は少ないが、屈曲90°から鎖骨傾斜角度の増加を認 めた。しかし、肩関節外転では120°までに27.7±10.5° 傾斜角度が増加し、120°以上では傾斜角度の増加を認 めなかった。肩関節屈曲と外転では60°、90°、120° において肩関節外転が屈曲と比較して鎖骨傾斜角度が有 意に大きかった(p<0.05)。 2.肩甲骨上方回旋角度(図2) 下垂位における肩甲骨上方回旋角度は−0.3±4.0°で あった。肩関節屈曲と外転運動では角度の増加にした がって肩甲骨上方回旋角度が増加した。最終的な上方回 旋角度は58.1±4.3°であった。肩関節屈曲と外転での比 較では有意差を認めなかった。 3.肩甲棘内側端(図3、4) 肩関節屈曲における肩甲棘内側端の移動方向は座標X で120°までマイナス方向に増加し、移動量は−15.85± 10.4 mmであった。120°以降ではプラス方向に転じ、 180°での移動量は1±8.6 mmとなり、元の位置に戻る傾 向であった。 肩関節外転における肩甲棘内側端の移動方向は座標X で90°まで徐々にプラス方向に増加し、移動量は28.3± 図 1 肩関節屈曲および外転時の鎖骨傾斜角度の比較 肩関節屈曲では、60°以降角度の増加が認められ、肩関節外転 においては、早期から角度の増加が認められたが、120°以降は 認められなかった。*:p<0.05 表 1 各測定筋群の起始・停止 筋名 起始 停止 僧帽筋上部 後頭骨(外後頭隆起、上項線内側3分の1) 鎖骨外側2分の1 僧帽筋中部 Th3棘突起 肩甲棘(肩甲棘内側端外側6 cm) 僧帽筋下部 Th12棘突起 肩甲棘下縁(肩峰内側6 cm) 肩甲挙筋 C2横突起 肩甲骨上角 前鋸筋上部 第1肋骨側面(第1胸肋関節外側4.5 cm) 肩甲骨上角 前鋸筋下部 第8肋骨側面 肩甲骨下角 大菱形筋 Th4棘突起 肩甲棘内側端下方3 cm 小菱形筋 Th1棘突起 肩甲棘内側端上方1 cm

(4)

8.0 mmであった。90°以降では徐々に減少し、180度で の移動量は1.7±7.6 mmとなり、元の位置に戻る傾向で あった。外転60°から150°の範囲での移動方向は全例 プラスの値を示したのに対し、屈曲では全例マイナス値 を示し、肩関節屈曲と外転において座標Xの移動量に関 し有意差を認めた(p<0.01)。肩甲棘内側端の座標Yの移 動方向は屈曲、外転ともに漸増的にマイナス方向に増加 した。挙上角度30°では屈曲が、挙上角度150°では外 転の移動量がそれぞれ有意に大きかった。(p<0.05)。 4.測定筋の起始・停止間距離(図5∼12、表2、3) 1)僧帽筋上部線維 肩関節屈曲・外転とも挙上角度の増加とともに起始・ 停止間距離は漸減するが、挙上角度90°以降は、急激に 漸減し、180°にて屈曲・外転とも−57 mmと短縮位に なった。 2)僧帽筋中部線維 肩関節屈曲30°で+21 mm、外転30°で+4 mmと初期 挙上角度においては両運動方向とも起始・停止間距離 は、下垂位を基準としてプラスの値を示した。その後、 挙上角度の増加とともに起始・停止間距離は漸減してい くが屈曲では150°において起始・停止間距離は、下垂 位を基準としてマイナスに転じ、外転では60°よりマイ ナスの値を示した。180°では屈曲・外転とも−28 mmと 短縮位になった。 3)僧帽筋下部線維 肩関節屈曲においては90°まで漸増し、+14 mmで あった。屈曲90°以降、起始・停止間距離は若干減じる ものの、屈曲180°においても+14 mmと屈曲90°での起 始・停止間距離と変化を認めなかった。肩関節外転にお いては、60°まで漸増し+11 mmとなる。外転60°以 降、漸減していき外転120°では+1 mmとなるも外転 150°で再び漸増し、外転180°では屈曲と同様+14 mm と伸長位になった。 4)肩甲挙筋 肩関節屈曲においては、挙上角度の増加とともに漸増 していき屈曲180°において+20 mmと伸長位を示した。 肩関節外転においては、外転30°より起始・停止間距離 はマイナスの値を示し、挙上角度の増加とともに漸減 し、外転60°では−10 mmと短縮位を示した。外転60° 以降は漸増し、外転150°において起始・停止間距離は プラスの値を示し外転180°において、屈曲と同様+20 mmの伸長位となった。 図 2 肩関節屈曲および外転時の肩甲骨上方回旋角度の比較 肩関節屈曲外転ともに、角度の増加に伴って、肩甲骨上方回旋 角度も増加した。 図 3 肩関節屈曲・外転角度増加に対する肩甲棘内側端 X 軸の骨指標座標面移動分析結果 外転 60°から 150°の範囲では全例プラスの値を示し屈曲では 全例マイナス値を示し、肩関節屈曲と外転において X 軸移動量 に有意差を認めた(p<0.01)。*:p<0.01。 図 4 肩関節屈曲・外転角度増加に対する肩甲棘内側端 Y 軸の骨指標座標面移動分析結果 肩甲棘内側端の Y 軸は屈曲、外転ともに漸増的にマイナス方向 に増加した。挙上角度30°では屈曲が、挙上角度150°では外転 がそれぞれ有意に増加した(p<0.05)。*:p<0.05。

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図 5 肩関節屈曲、外転時の僧帽筋上部線維の起始・停止 間距離の変化 図 6 肩関節屈曲、外転時の僧帽筋中部線維の起始・停止 間距離の変化 図 7 肩関節屈曲、外転時の僧帽筋下部線維の起始・停止 間距離の変化 図 8 肩関節屈曲、外転時の肩甲挙筋の起始・停止間距離 の変化 図 9 肩関節屈曲、外転時の前鋸筋上部線維の起始・停止 間距離の変化 図 10 肩関節屈曲、外転時の前鋸筋下部線維の起始・停止 間距離の変化 表 2 各筋の肩関節屈曲時における下垂位からの長さの変化 (単位:mm) 屈曲 30° 60° 90° 120° 150° 180° 僧帽筋上部 -8 -12 -19 -48 -55 -57 僧帽筋中部 21 18 17 4 -3 -28 僧帽筋下部 5 13 14 12 12 14 肩甲挙筋 6 7 11 13 14 20 前鋸筋上部 5 5 8 15 15 40 前鋸筋下部 -27 -37 -65 -89 -95 -103 大菱形筋 18 22 32 33 33 32 小菱形筋 21 22 29 29 26 26

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5)前鋸筋上部線維 肩関節屈曲においては、挙上角度の増加に伴い起始・ 停止間距離はプラスの値を示しつつ漸増していき屈曲 180°において+40 mmと伸長位を示した。肩関節外転に おいては、外転30°より起始・停止間距離はマイナスの 値を示し、外転60°まで漸減し−10 mmと短縮位を示し た。外転60°以降、漸増していき外転90°において起 始・停止間距離はプラスに転じ、外転180°において、 屈曲同様+40 mmと伸長位となった。 6)前鋸筋下部線維 肩関節屈曲・外転とも初期挙上角度より起始・停止間 距離はマイナスの値を示した。挙上角度の増加に伴い起 始・停止間距離は漸減し、挙上角度180°で−103 mmと 短縮位を示した。 7)大菱形筋 肩関節屈曲においては屈曲90°まで挙上角度の増加に 伴い漸増し、屈曲90°で+32 mmと伸長位となった。屈 曲90°以降は大きな変化を認めず、屈曲180°において も+32 mmの伸長位を示した。肩関節外転においては、 外転120°までは起始・停止間距離の変化は少なかった (外転90°で−3 mm)。外転120°以降は急速に起始・停止 間距離は漸増し、外転180°で+32 mmと伸長位となっ た。 8)小菱形筋 肩関節屈曲においては120°までは挙上角度の増加に伴 い起始・停止間距離は漸増していき+29 mmと伸長位を示 した。120°以降は若干の減少を認めるが180°においては +26 mmの伸長位となった。肩関節外転においては、90° まで起始・停止間距離は漸減し−9 mmと短縮位を示した。 90°以降は、挙上角度の変化とともに漸増していき、外転 180°では、屈曲同様+26 mmの短縮位となった。 考 察 1)僧帽筋上部線維(図13、14) 僧帽筋上部線維の起始・停止間距離において肩関節屈 曲、外転に関し共通した特徴が認められた。肩関節屈 曲、外転ともに挙上角度の増大に伴い、起始・停止間距 離は漸減した。特に挙上角度90°以降において起始・停 止間距離は著明に短縮した。この要因としては、僧帽筋 上部線維の停止部である鎖骨の運動性が関与していると 考える。X線を用いた骨指標座標移動分析の結果におい て、鎖骨傾斜角度(上方傾斜)は屈曲では90°より増加し はじめ180°まで漸増を認めた。屈曲での僧帽筋上部線 維の起始・停止間距離の短縮は鎖骨の上方傾斜を反映し ていると考える。一方、外転での骨指標座標移動分析の 図 11 肩関節屈曲、外転時の大菱形筋の起始・停止間距離 の変化 表 3 各筋の肩関節外転時における下垂位からの長さの変化(単位:mm) 外転 30° 60° 90° 120° 150° 180° 僧帽筋上部 0 -13 -19 -43 -48 -57 僧帽筋中部 4 -1 -16 -22 -21 -28 僧帽筋下部 4 11 6 1 4 14 肩甲挙筋 -2 -10 -8 -5 18 20 前鋸筋上部 -5 -10 0 5 15 40 前鋸筋下部 -11 -27 -40 -62 -85 -103 大菱形筋 3 4 -3 5 22 32 小菱形筋 4 -3 -9 -3 9 26 図 12 肩関節屈曲、外転時の小菱形筋の起始・停止間距離 の変化

(7)

結果は早期の外転角度より鎖骨は上方傾斜し120°以降 の増加を認めなかった。僧帽筋上部線維の起始・停止間 距離は外転120°以降も短縮位を呈しており、外転での 僧帽筋上部線維の起始・停止間距離の短縮は鎖骨におけ る上方傾斜以外の運動が関与していることが示唆され た。肩甲棘内側端の座標Yの骨指標移動分析の結果、外 転は屈曲と比較してマイナス方向への移動が150°にお いて有意に大きかったことから、肩関節外転運動の後半 では肩甲骨の下方への運動が大きいことが考えられる。 肩甲骨の下方への運動は鎖骨の後退を伴うと考えられ、 この鎖骨後退運動が僧帽筋上部線維の起始・停止間距離 が外転120°以降も短縮した要因であったと考えられ る。よって肩関節屈曲と外転では僧帽筋上部線維の起 始・停止間距離がともに上肢挙上に伴い漸減するが、そ の要因として鎖骨上方傾斜だけでなく鎖骨後退運動も関 与していることが示唆された。 2)僧帽筋中部線維(図13、14) 僧帽筋中部線維の起始・停止間距離において肩関節屈 曲、外転において特徴的な相違を認めた。屈曲において 僧帽筋中部線維の起始・停止間距離は初期屈曲角度より プラスの値を示すが、150°にて起始・停止間距離はマ 図 13 屈曲時の僧帽筋上部・中部・下部線維、肩甲挙筋における起始・停 止間距離の変化 黒点線、白、灰色、黒はそれぞれ肩甲挙筋、僧帽筋上部、僧帽筋中部、僧帽筋下 部、左から下垂位、屈曲 90°、最大挙上 図 14 外転時の僧帽筋上部・中部・下部線維、肩甲挙筋における起始・停 止間距離の変化 黒点線、白、灰色、黒はそれぞれ肩甲挙筋、僧帽筋上部、僧帽筋中部、僧帽筋下 部、左から下垂位、外転 90°、最大挙上

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イナスに転じた。外転における僧帽筋中部線維の起始・ 停止間距離は30°においてプラスの値を示すが60°から マイナスに転じた。この要因としては僧帽筋中部線維の 停止部である肩甲棘の運動が関与していると考える。X 線を用いた骨指標座標移動分析の結果、肩甲棘内側端 は、屈曲120°までは、座標Xのマイナス方向(棘突起か ら離れる方向)への移動が、150°以降はプラス方向(棘 突起に接近する方向)への移動が確認された。外転での肩 甲棘内側端は、外転初期角度よりX軸のプラス方向へ移 動した。屈曲と外転では肩甲棘内側端の座標X移動が正 反対であることが確認できた。この肩甲棘内側端の座標 X移動に関する相違が肩関節屈曲で起始・停止間距離の初 期屈曲での増加、外転での起始・停止間距離の減少の要 因であると考えられる。このことから僧帽筋中部線維は 肩関節屈曲の早期に伸張性が求められ、徐々に短縮に移 行するのに対し、肩関節外転では外転早期から短縮、つ まり求心性収縮が求められると考えられる。 3)僧帽筋下部線維(図13、14) 僧帽筋下部線維の起始・停止間距離においては肩関節 屈曲、外転において特徴的な相違を認めた。肩関節屈曲 では90°以降増加せず、外転では、角度増加に伴い、増 加、減少、増加というパターンを呈した。この要因に関 しては、僧帽筋下部線維の停止部は肩甲棘下縁(肩峰内側 6 cm)としており、僧帽筋中部線維同様、肩甲棘の運動が 僧帽筋下部線維の起始・停止間距離の変化に関与してい ると考える。骨指標座標移動分析の結果より肩関節屈曲 では120°までは肩甲棘内側端は座標Xの移動に関しマイ ナスへの移動を示しており、これは起始・停止間距離の 増加に関与すると考えられる。しかし、肩甲棘の運動の 特徴として他に肩甲棘内側端の座標Yのマイナス方向へ の移動と肩甲骨の上方回旋に伴う肩甲棘の上方傾斜が生 じてくる。座標Yのマイナス方向への移動は短縮に関与 する。さらに、肩甲骨の上方回旋(肩甲棘の上方傾斜)の 運動は僧帽筋下部線維の停止部である肩甲棘下縁が脊柱 よりも外側に位置していくことから伸張因子となると考 えられる。これら肩甲棘の運動性を考慮すると、僧帽筋 下部線維の起始・停止間距離の伸張因子や短縮因子が複 雑に関与していることが、90°以降の起始・停止間距離 が増加しない要因となっていると考えられる。外転に関 しても同様に、骨指標座標移動分析では肩甲棘内側端は 座標Xではプラス方向に、座標Yではマイナス方向に移動 し、この移動のみで推察すると僧帽筋下部線維の起始・ 停止間距離は短縮位を呈すると考える。しかし、結果に おいては起始・停止間距離のパターンは、増加、減少、 増加を呈したのは、外転運動は早期からの肩甲骨上方回 旋の運動が関与していることが考えられる。このことか ら僧帽筋下部線維は肩関節屈曲、外転の早期に伸張性が 求められるが、屈曲では90°以降変化せず、外転では 60°∼120°で、一度短縮、つまり求心性収縮に移行 し、最終域では再び伸張性が求められるといった複雑な 収縮様式を呈していると考えられる。 4)肩甲挙筋(図13、14) 肩甲挙筋の起始・停止間距離においては肩関節屈曲、 外転において特徴的な相違を認めた。屈曲では肩甲挙筋 の起始・停止間距離は漸増を示すが、外転では30°、 60°までは起始・停止間距離は短縮を示し、その後漸増 するという結果が得られた。この要因としては、肩甲挙 筋の停止部である肩甲骨上角の運動が関与していると考 える。骨指標座標移動分析では肩甲骨上角を指標としな かったが、肩甲棘内側端の座標X、Yの移動分析結果から 肩甲骨上角の運動を推察することができる。屈曲におい ては、肩甲棘内側端が座標X、Yともにマイナス方向へ移 動することから肩甲骨上角も下方へ運動することにな る。その結果、肩関節屈曲では肩甲骨上角は起始部とな る第2頸椎横突起から離れることで肩甲挙筋の起始・停 止間距離は漸増したと考えられる。一方、外転における 肩甲棘内側端の骨指標座標移動分析の結果は座標Xでプ ラス方向へ、座標Yでマイナス方向へと移動する結果で あった。このことから肩甲骨上角は脊柱に接近する方向 に移動する。肩甲骨上角の脊柱への接近によって肩甲挙 筋の筋線維のベクトルは垂直線に近づくことになり、肩 関節外転30°、60°での肩甲挙筋の起始・停止間距離の 短縮に影響したと考えられる。このことから肩甲挙筋は 肩関節屈曲では角度増加に伴い伸張性が求められること になり、肩関節外転では外転角度早期において短縮した と考えられる。更に外転90°以降では反対に伸張性が求 められることが示された。 ⑤前鋸筋上部線維(図15、16) 前鋸筋上部線維の起始・停止間距離においては肩関節 屈曲、外転において特徴的な相違を示した。屈曲では前 鋸筋上部線維の起始・停止間距離は漸増を示したが、外 転では30°、60°までは起始・停止間距離は漸減し、そ の後、漸増に転じた。前鋸筋上部線維の停止部は肩甲骨 上角であり、肩甲挙筋同様、肩甲骨上角部の運動が前鋸 筋上部線維の起始・停止間距離の結果に関与すると考え る。肩関節屈曲および外転における前鋸筋上部線維の起 始・停止間距離の相違について頭部から見た図がわかり やすい。図15は屈曲時の第一肋骨と肩甲骨上角の位置関 係を頭頂部から見た図である。屈曲における骨指標座標 移動分析の結果、肩甲棘内側端が座標Xはマイナス方向 へ移動することから肩甲骨上角は頭頂部から見た図によ ると外側方向に移動することになる。更に肩甲棘内側端 の座標Yにおいてマイナス方向に移動する。これらの結

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果から前鋸筋上部線維の起始・停止間距離は屈曲角度の 増加によって漸増したと考えられる。一方、図16は外転 時の第一肋骨と肩甲骨上角の位置関係を頭頂部から見た 図である。外転での骨指標座標移動分析の結果、外転早 期において肩甲棘内側端は座標Xにおいてプラス方向へ 移動することから図16-bのように肩甲骨上角は脊柱方向 に移動する。よって、屈曲とは異なり、前鋸筋上部線維 の筋線維走行は、水平面上で垂直線に近づくことで起 始・停止間距離は短縮したと考えられる。このことが外 転初期での短縮位を示した要因ではないかと考える。そ の後、外転角度の増加に伴い、肩甲棘内側端は座標X、Y ともにマイナス方向へ移動するため肩甲骨上角が図16-c のように第一肋骨から離れることで前鋸筋上部線維が伸 長されたと考えられる。このことから前鋸筋上部線維は 肩関節屈曲においては伸張性が求められるのに対して、 肩関節外転初期では短縮位が求められ、外転90°以降で は肩甲骨上角が下方、外側へ移動するために屈曲と同様 に前鋸筋上部線維の伸張性が求められたと考えられる。 6)前鋸筋下部線維(図15、16) 前鋸筋下部線維の起始・停止間距離においては肩関節 屈曲、外転に関し共通した特徴が認められた。上肢挙上 角度の増加に伴い起始・停止間距離は漸減した。前鋸筋 下部線維は肩甲骨の上方回旋作用を有している。屈曲、 外転ともに肩甲骨の上方回旋角度は挙上角度の増大に伴 い漸増していくことから両運動方向においては主動作筋 としての機能として起始・停止間距離が短縮されると考 える。このことから、前鋸筋下部線維は、肩関節屈曲、 外転において短縮、つまり求心性収縮が求められると考 えられる。屈曲および外転角度の増加に伴い前鋸筋下部 線維の起始・停止間距離が漸減するパターンは同様で あったが、屈曲のほうが外転と比較して早期から著明な 短縮を認めた。これに関しては屈曲と外転における肩甲 棘内側端のY座標が影響していると考えられる。肩甲棘 内側端のY座標は屈曲において早期から外転と比較して マイナス方向への移動が大きく、挙上角度30°では屈曲 が外転よりもマイナス方向への移動が有意に大きかっ た。この結果は屈曲のほうが外転と比較して肩甲骨の下 方への運動が大きいことを示しており、前鋸筋下部線維 の起始を第8肋骨側面、停止部を肩甲骨下角としている ことから肩甲骨下方への運動には前鋸筋下部線維が強く 関与すると考えられ、屈曲のほうが外転よりも挙上角度 早期から強い短縮傾向を示したと考えられる。 7)大菱形筋(図17、18) 大菱形筋の起始・停止間距離においては肩関節屈曲、 図 15 屈曲時の前鋸筋上部線維における起始・停止間距離の変化 骨格模型の右肩を上方より撮影、左から下垂位、屈曲 90°、最大挙上 図の左側が肩峰側、下方が体幹前面 図 16 外転時の前鋸筋上部線維における起始・停止間距離の変化 骨格模型の右肩を上方より撮影、左から下垂位、外転 90°、最大挙上 図の左側が肩峰側、下方が体幹前面

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外転において特徴的な相違を認めた。大菱形筋の起始・ 停止間距離は屈曲においては挙上角度の増大に伴い漸増 し、外転においては増加、減少、増加という複雑なパ ターンを示した。大菱形筋の停止部は、肩甲棘内側端下 方3 cmとしており、肩甲棘内側端の運動が関与している と考えられる。屈曲においては骨指標座標移動分析より 肩甲棘内側端は座標X、Yどちらの移動もマイナス方向を 示していることから、起始である第4胸椎棘突起からは 離れていく方向に移動する。よって大菱形筋の起始・停 止間距離は屈曲角度増加に伴い増加したと考えられる。 一方、外転では骨指標座標移動分析の結果から肩甲棘内 側端は、外転角度早期で座標Xにおいてプラス方向に移 動することを考えると起始・停止間距離は減少すると考 えられる。しかし、大菱形筋の停止部を肩甲棘内側端下 方3 cmとしており、肩甲棘内側端がプラス方向に移動し ても、肩甲骨上方回旋が生じることによって肩甲棘内側 端下方3 cmの位置は脊柱から離れる方向に移動すること になる。よって外転早期では大菱形筋の起始・停止間距 離が微増したと考えられる。肩甲棘内側端のY座標の移 動に関しては角度増加に伴いマイナス方向に移動する が、大菱形筋の起始・停止を考慮すると起始・停止間距 離に与える影響は一定の規則に従っていない。下垂位で は停止部である肩甲棘内側端下方3 cmの位置は起始であ る第4胸椎棘突起と比較して高い位置にある。このまま 肩甲棘内側端のY座標をマイナス方向に移動させると第4 胸椎棘突起レベルまでは起始・停止間距離は短縮傾向を 示し、第4胸椎棘突起レベルを境に肩甲棘内側端Y座標が マイナス方向に移動することで起始・停止間距離は増加 傾向を示していく。このことから外転早期における大菱 形筋の起始・停止間距離は肩甲骨上方回旋による増加と 肩甲棘内側端のY座標マイナス移動による減少とが相殺 され、微増を示し、肩甲棘内側端下方3 cmと第4胸椎棘突 起のレベルが同程度になる外転角度90°で最大短縮位と なり、それ以降は屈曲運動同様に漸増するパターンを示 したことが理解できる。肩関節外転運動での大菱形筋の 起始・停止間距離の複雑なパターンは座標X、Yがそれぞ れプラス方向、マイナス方向と異なること、また起始、 停止の関係から肩甲棘内側端のY座標マイナス移動が大 図 17 屈曲時における大小菱形筋の起始・停止間距離の変化 黒・白はそれぞれ小菱形筋、大菱形筋、左から下垂位、屈曲 90°、最大挙上 図 18 外転時における大小菱形筋の起始・停止間距離の変化 黒、白はそれぞれ小菱形筋、大菱形筋、左から下垂位、外転 90°、最大挙上

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菱形筋の起始・停止間距離に影響を与えることが要因で あると考えられる。 大菱形筋においては、肩関節屈曲では伸張性が求めら れ、初期外転角度では伸張位、外転90°位で短縮位を求 められるが、その後さらに伸張していくといった複雑な 筋の収縮様式が必要になることが示唆された。 8)小菱形筋(図17、18) 小菱形筋の起始・停止間距離においては肩関節屈曲、 外転において特徴的な相違を認めた。小菱形筋の起始・ 停止間距離の結果は大菱形筋と同様、屈曲においては挙 上角度の増大に伴い漸増し、外転においては増加、減 少、増加という複雑なパターンを示した。屈曲において は大菱形筋同様、骨指標座標移動分析の結果、肩甲棘内 側端の移動が座標X、Yとも同じマイナス方向であり、肩 甲骨が外下方へと移動することが結果に反映していると 考えられる。小菱形筋の起始は第1胸椎棘突起、停止は 肩甲棘内側端上方1 cmであり、起始は停止よりも高い位 置に存在している。そのため肩甲棘内側端のY座標マイ ナス移動によって起始・停止間距離は増加する。更に大 菱形筋のように停止部が肩甲棘内側端よりも大きく下方 に位置することで肩甲骨上方回旋時に生じる肩甲棘内側 端と停止部の矛盾した運動が小菱形筋の停止位置と肩甲 棘内側端が近接していることから生じない。そのため外 転による肩甲棘内側端の座標Xプラス方向への移動と同 様に小菱形筋の停止位置も座標Xプラス方向へと移動す る。これらの点が大菱形筋とは大きく異なる要素であ り、大菱形筋で相殺され微増した起始・停止間距離は小 菱形筋では相殺されることなく複雑なパターンがより一 層顕著に表される結果となった。このことから、小菱形 筋においては、肩関節屈曲では伸張性が求められ、肩関 節外転においては、伸張から一度短縮し、その後さらに 伸張していくといった複雑な筋の収縮様式が求められる と推察される。 今回、X線写真を使用した鎖骨、肩甲骨傾斜角度およ び骨指標座標移動分析の結果から骨格模型にて鎖骨、肩 甲骨の運動性に配慮して肩関節屈曲・外転運動を再現す ることにより肩甲帯周囲筋の起始・停止間距離の特性に ついて詳細に分析した。肩関節屈曲では肩甲帯周囲筋の 起始・停止間距離は、屈曲角度の増加に伴い、漸増、漸 減パターンを呈することが特徴的であった。特に肩甲骨 内側に位置する前鋸筋上部線維、肩甲挙筋、大・小菱形 筋、僧帽筋下部線維は伸張性が求められ、肩関節屈曲に おけるROM制限因子の一つとして示された。 一方、肩関節外転では肩甲帯周囲筋の起始・停止間距 離の変化は複雑なパターンを生ずるものが多く、外転角 度の変化に応じて伸長したり、短縮したりすることが明 確となった。特に肩甲骨内側に位置する前鋸筋上部線 維、肩甲挙筋、大・小菱形筋、僧帽筋下部線維は外転角 度の変化に対応して筋の起始・停止間距離が複雑に変化 するので、筋の伸張性のみでなく、求心性、遠心性収縮 といった筋の収縮様式の変化にも着目してROM制限因子 として考えていく必要性が示唆された。 おわりに 1. X線写真を用いて、肩関節屈曲・外転時の鎖骨・肩甲 骨の運動を鎖骨、肩甲骨傾斜角度および骨指標座標移 動分析の結果から骨格模型にて肩関節屈曲・外転運動 を再現した。 2. 再現された骨格模型での肩関節屈曲、外転時の肩甲帯 周囲筋群の起始・停止間距離を測定し、運動方向、角 度変化に応じた筋の長さを調査した。 3. 肩関節屈曲において肩甲帯周囲筋の起始・停止間距離 は、漸増・漸減パターンであり、漸増パターンを示し た前鋸筋上部線維、肩甲挙筋、大・小菱形筋、僧帽筋 下部線維は伸張性が低下した場合、ROM制限因子の一 つと考えられる。 4. 肩関節外転において肩甲帯周囲筋の起始・停止間距離 は、増減、漸減パターンであり、増減パターンを示し た前鋸筋上部線維、肩甲挙筋、大・小菱形筋、僧帽筋 下部線維は、外転角度に対応して伸張、短縮が求めら れることから自動運動での収縮様式の変化に対応でき ない場合、ROM制限因子となりうる。 文 献 1) 鈴木重行:関節可動域制限に対する複合的アプローチの現状 と課題 理学療法 20:597-602,2003.

2) Trudel G et al.: Contractures secondary to immobility: Is the restriction articular or muscular? An experimental longitudinal study in the rat knee. Arch Phys Med Rehabil 81: 6-13, 2000.

3) 三浦雄一郎・他:肩関節屈曲と外転における胸鎖関節を支点 とした鎖骨・肩甲骨の運動−骨指標座標面移動分析を用いた 検討− 総合リハ投稿中

4) Ludewig PM, et al.: Three-dimensional scapular orientation and muscle activity at selected positions of humeral elevation. J Orthop Sports Phys Thera 24: 57-65, 1996.

5) 高濱 照:肩の機能解剖と触診のポイント.理学療法学  30:210-213,2003.

6) 渡辺正仁・他:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のため の解剖学 第 3 版.pp205-211,廣川書店,1999.

参照

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