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全米学力調査におけるTechnology and Engineering Literacyに関する研究

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全米学力調査における

Technology and Engineering Literacy

に関する研究

Technology and Engineering Literacy in the National

Assessment of Educational Progress

伴 修平* 谷田 親彦**

Shuhei BAN Chikahiko YATA

本研究では,全米学力調査(NAEP)における技術教育に関する調査分野の問題設計理論を明らかにす

るとともに,調査問題を日本の中学生に実施して技術に関する能力の実態の示唆を得ることを目的とし た。技術教育に関する調査分野であるTechnology and Engineering Literacy では,Assessment Area に含まれるSubarea において,4,8,12 年生が習得すべき知識や能力を示す Assessment Target を定

め,領域を横断する汎用的な考え方である Practice や,状況である Context を該当させて調査問題を

作成していると考えられた。問題のひとつを和訳し,日本の中学2 年生 2096 名を対象に調査を実施し

た結果,日本の中学生は「問題」の把握と「解決策」の検討に高い能力を示したが,問題解決の「結果」 の解釈やその位置付けを理解・表現する能力に課題があると考えられた。

キーワード:全米学力調査(NAEP),Technology and Engineering Literacy,日米比較調査

1.はじめに

児童生徒の学力の実態を明らかにする方法のひとつ である学力調査は,21 世紀において根拠に基づく教育 課程改革を先導する役割を担っている 1)。その中でも 国際学力調査は,主として自国の教育政策に関する情 報収集を目的として実施され,国内調査では知りえな い学力の実態を把握することができる2) 苅谷・清水は,学力調査が重要であることを認めた 上で,安易な目標や内容の学力調査が実施されようと していることに懸念を抱いている 3)。同様に田中は, 各種の学力調査が行われる中で,「どのような理論的 背景に基づいて作成されているのか」や「何をどのよ うに測ろうとしているのか」などといった内在的な分 析の必要性を指摘している 4)。これらのことから,問 題設計理論や目的・内容の明確な学力調査により,日 本の児童生徒の学力の実態について示唆を得ることが 重要であると考えられる。 日 本 が 参 加 し て い る 主 要 な 国 際 学 力 調 査 に は Programme for International Student Assessment (PISA)や,Trends in International Mathematics and Science Study (TIMSS)などがある。このうち PISA で は,義務教育段階に習得した知識や技能が,実生活の 様々な場面で直面する課題に対して活用される程度を 測定することを目的として,読解力,数学的リテラ シー,科学的リテラシーを主な調査内容としている。 TIMSS は,初等中等教育段階における児童生徒の算 数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によっ て測定・分析する調査であり,国際教育到達度評価学 会が実施している。これらの国際学力調査は,調査目 的や問題設計理論などの詳細が示されているが,技術 教育に直接的に関係する国際学力調査ではない。 日本の義務教育段階で技術教育が行われる中学校技 術・家庭科技術分野に関する学力調査には,国立教育 政策研究所が教育課程の評価・改善を目指して実施し ている「学習指導要領実施状況調査」や「特定の課題 に関する調査」などがある 5)6)。これらの学力調査は, 中学校学習指導要領に準拠した問題が作成されており, 主として日本の教育課程で学習した生徒を対象にした 調査であるといえる。一方で,技術教育に関する国際 学 力 調 査 は , 田 中 に よ る 「 国 民 教 育 で の テ ク ノ ロ ジー・リテラシーの学力到達度アセスメントに関する (2019 年 4 月 22 日受付,2020 年 2 月 4 日受理) * 同志社香里中学校・高等学校 (正会員 B) ** 広島大学 (正会員 A) † 2018 年 8 月本学会第 61 回全国大会(信州)にて発表

(2)

国際比較研究」により試みられている。この研究報告 書には,「技術的教養」を測定するための問題と,日

本の中学生に対する調査結果が示されている7)

その一方,アメリカで実施されている全米学力調査 National Assessment of Educational Progress (以下, NAEP)では,技術教育に関する調査分野として, Technology and Engineering Literacy (以下,TEL)が

実施されている8)。日本ではNAEP で実施されている TEL について十分な分析が行われていないため,問題 設計理論などに対する分析を行うことは技術教育に関 する学力調査を検討するための資料になると考えられ る。これらのことから,TEL の内在的な分析を行うと ともに,問題を活用した調査を実施することで,日本 の技術教育の特徴や生徒の学習状況を把握・検討でき るのではないかと考えられる。 本研究では,NAEP における TEL の問題設計理論を 分析するとともに,その問題設計理論に沿って開発さ れた問題を用いて日本の中学生を対象に調査を行い, アメリカの調査結果と比較することを通して,日本の 中学生のTEL の実態について探索することを目的とす る。

2.NAEP における TEL の問題設計理論

2.1 全米学力調査 NAEP の概要 NAEP は,アメリカの児童生徒の様々な分野におけ る知識や能力等を評価する代表的かつ最大規模の学力 調 査 で あ る 。 教 育 統 計 局 National Center for Education Statistics (NCES)によって管理されるプロ

ジェクトであり,1969 年の開始以来継続的に実施され

ている。NCES は,調査の方針,評価の枠組みやテス

トの仕様作成をThe National Assessment Governing Board (NAGB)に依頼する 9)。また,NAGB の方針に

従ったテスト開発や採点,集計分析は Educational

Testing Service (ETS)に委託されている10)

アメリカの教育は地方分権制であり,日本の学習指 導要領のように国が定めた教育課程が存在しない。そ のため,いずれの州においても学力を把握できる調査 実施方法や問題設計理論が想定されている 11)。また, NAEP は各学校のすべての児童生徒を対象に調査を実 施しておらず,NCES によって選択・抽出された児童 生徒が調査を受けるシステムを採択している。

調査結果は,The Nation's Report Card として報告 され,児童生徒の学力実態に関するデータとして教師 や研究者等に利用されている 12)。また,児童生徒の学 力に関連する要因を分析・検討するために,児童生徒, 教師,校長を対象に質問紙調査を行っている。質問紙 調査の内容には,人種,親の学歴や学校の特性などが 含まれている。 NAEP には大きく分けて 2 種類の調査がある。ひと つ は , 基 礎 学 力 を 定 点 観 測 的 に 調 査 す る 動 向 調 査 (Long-term trend NAEP)である。もうひとつは,時代

の求める学力に柔軟に対応する主調査(Main NAEP)で ある。動向調査は,9 歳,13 歳,17 歳を対象として 4 年ごとに行われ,現在の児童生徒の数学と読解力の結 果について,1970 年代の児童生徒の結果と比較するこ とを可能にしている。主調査は,全米の 4 年生,8 年 生,12 年生を対象として,数学と読解力は 2 年ごとに, 科学と作文力は 4 年ごとに実施される。その他の科目 は,芸術,市民,経済,地理,TEL,歴史で 4 年ごと に調査が実施される。主調査と動向調査の双方に含ま れる科目は,それぞれの調査目的に沿って,異なる問 題などを用いて測定される13) 2.2 TEL の概要 TEL は,21 世紀の社会や生活の中で技術の重要性が 高まっていることを受けて,2014 年度から NAEP の 主調査として新たに設定された 14)。調査はコンピュー タベースで行われ,児童生徒は現実的なシナリオに基 づくインタラクティブな問題に対する解答が求められ る。 調査問題に関する枠組みや仕様の開発は,NAGB が International Society for Technology in Education (ISTE),International Technology and Engineering Educators Association (ITEEA)等の外部団体と協力し

て行っている。例えばITEEAに関しては,問題作成に

当 た っ て 技 術 教 育 の 目 標 ・ 内 容 の 基 準 を 示 し た Standards for Technological Literacy を資料として提 供するとともに,関係者が問題作成委員として加わっ ている。

NAGB は,児童生徒の TEL を評価するためには, Technology,Engineering,Technology and Engineer ing Literacy の用語が何を意味するのかを明確にしな ければならないことを受けて,表 1 のように用語の定 義を行っている。 2.3 TEL の問題設計理論 TELの問題作成に関わる 3 つの要素は,Assessment Area,Practice,Context として挙げられ,その関係 が図1 のように示されている14)

(3)

Assessment Area は,21 世紀の市民にとって不可欠

な要素であるTEL の主要な評価分野として設定され,

Technology と Engineering に関わる性質やプロセス, 使用法を対象とし,Technology and Society,Design and Systems , Information and Communication Technology に分類される。

Technology and Society は,技術が社会や自然界に 及ぼす影響,そしてその影響から生じる倫理的な問題 を扱う分野である。また,3 つの Assessment Area に

は,下位分野として児童生徒が評価されるSubarea が

表 2 にように示されている。Technology and Society に は Subarea が 4 つ あ り , A. Interaction of Technology and Humans,B. Effects of Technology on the Natural World,C. Effects of Technology on the World of Information and Knowledge , D. Ethics, Equity, and Responsibility が含まれる。

Design and Systems は,技術の性質,技術が開発さ れるエンジニアリングデザインプロセス,及び保守と トラブルシューティングを含む日常生活の技術を扱う た め の 基 本 原 則 を 含 む 分 野 で あ る 。Design and Systems における Subarea は 4 つあり,A. Nature of Technology , B. Engineering Design , C. Systems Thinking,D. Maintenance and Troubleshooting が含 まれる。

Information and Communication Technology は,

コンピュータやソフトウェアなどの機器,ネットワー クシステムやプロトコル,携帯情報端末など,情報へ のアクセス,作成,通信,及び創造的表現の促進のた めに技術を扱う分野である。ICT の Subarea は 5 つあ り,A. Construction and Exchange of Ideas and Solu tions,B. Information Research,C. Investigation of Problems,D. Acknowledgment of Ideas and Informa tion,E. Selection and Use of Digital Tools が含まれ る。

ま た , そ れ ぞ れ の Subarea に は , Assessment Target として 4 年生,8 年生,12 年生の段階で習得し ていることが期待される知識と能力が示される。例え ば ,Technology and Society の A. Interaction of Technology and Humans で は , 表 3 の よ う な Assessment Target が考えられている。表の上部では, 4 年生,8 年生,12 年生ごとの Subarea が定義されて いる。また,表の下部には,児童生徒が「知っている 表1 TEL によって定義された用語 Technology 人間のニーズや欲望を満たす,自然界や設計された世界の改変。 Engineering 人 間 の ニ ー ズ や 欲 望 を 満 た す よ う な , オ ブ ジェクト,プロセス,システムを設計するた めの体系的・反復的なアプローチ。 Technology and Engineering Literacy 解決策を展開し目標を達成するために,必要 な技術の原理と方略を理解し,技術を使用, 理解,評価する能力。

Technology and Engineering Literacy Framework for the 2014 National Assessment of Educational Progress14)の1-4 より

表2 Assessment Area と含まれる Subarea

Technology and Society Design and Systems Information and Communication Technology

A. Interaction of Technology and Humans B. Effects of Technology on the Natural World

C. Effects of Technology on the World of Information and Knowledge

D. Ethics, Equity, and Responsibility

A. Nature of Technology B. Engineering Design C. Systems Thinking D. Maintenance and Troubleshooting

A. Construction and Exchange of Ideas and Solutions

B. Information Research C. Investigation of Problems D. Acknowledgment of Ideas and Information

E. Selection and Use of Digital Tools

Technology and Engineering Literacy Framework for the 2014 National Assessment of Educational Progress14)の2-2 より Technology and Engineering Literacy Framework for the 2014 National Assessment of Educational Progress14)の3-1 より

図1 TEL の 3 つの要素と関係

ASSESSMENT AREAS

・Technology and Society ・Design and Systems ・Information and Communications Technology (ICT) CONTEXTS ・Societal Issues ・Design Goals ・School and Community Problems PRACTICES ・Understanding Technological Principles ・Developing Solutions and Achieving Goals ・Communicating and Collaborating

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こ と 」 と 「 で き る こ と 」 が 学 年 を 水 準 と し て Assessment Target の具体的な例が示されている。

Practice は,3 つの Assessment Area を横断する学 際的実践の適用や,推論や行動における汎用性に富む 考え方を示しており,Understanding Technological Principles , Developing Solutions and Achieving Goals,Communicating and Collaborating に分類さ れる。

Understanding Technological Principles では,児童 生徒の技術に対する知識や理解と,その知識を使って 考 え , 思 考 す る 能 力 に 焦 点 を 当 て て い る 。 こ の Practice は,簡単な事実や概念,原理等の知識から, それらの相互関係に関する高いレベルの推論まで及ぶ。

Developing Solutions and Achieving Goals では,現 実的な状況における社会的な問題や技術的な問題を解 決するため,技術的な知識や機器を使用する能力の体 系的な応用を示している。この Practice は,手順と計 画の両方の能力が含まれる。手順や工程に配慮し,技 術的な機器を使用して,現実的な課題に対処する方法 や計画,問題解決の方略を適用する方法などを扱う。

Communicating and Collaborating では,現代の技 術を使って様々な目的や方法でコミュニケーションを 図 る 児 童 生 徒 の 能 力 に 重 点 を 置 い て い る 。 こ の

Practice は,Assessment Area における重要で横断的 な性質を有している。

Context は,Assessment Target に示された知識や 能力が実践される状況を示している。児童生徒は,技 術について知るだけではなく,周囲の技術を認識し, 技術と社会への影響との複雑な関係を理解し,問題に 対する解決策を導き,目標を達成することが目指され る。Context は,児童生徒が技術を理解・活用する状 況として,調査問題に依存して自由に設定される。主 な Context の 例 と し て , Societal Issues , Design Goals,School and Community Problems 等が示され ている。主に Technology and Society の Assessment Area に関係する Societal Issues では,生活や社会で使 用される技術の利点と欠点について考える状況などが 想 定 さ れ て い る 。 主 に Design and Systems の Assessment Area に関係する Design Goals では農業と バイオテクノロジー,建築技術,エネルギーと電力技 術,情報通信技術,材料と製造,医療技術及び輸送技 術 に 関 す る 状 況 な ど が 想 定 さ れ て い る 。 主 に Information and Communication Technology の Assessment Area に関係する School and Community Problemsでは,様々な分野の問題解決に対してICTを 活用・実践する状況などが想定されている。

3 Assessment Target の例

Interaction of Technology and Humans

【4年生】製品や道具,機械が地域社会にどのような影響を与え,人間と協働することを可能にするかを認識するべきである。 【8年生】社会がどのように技術の変化を推進しているか,そして新技術や改良された技術が社会経済や政治,文化にどのように影響 するかを理解する必要がある。 【12 年生】文化的な感受性を高め,技術と文化の相互作用について,世界的な見方を得るべきである。 4年生 8年生 12 年生 知っていること Target.4.1:人々のニーズと要望が,新し い道具や製品,機械の開発や実用化を決 定する。 知っていること Target.8.1:社会経済的,政治的,社会 的,文化的側面は技術製品やプロセス, システムの改善を促進する。 知っていること Target.12.1:新技術開発の決定は,社会の 意見と要求に影響される。これらの原動力 は文化によって異なる。 Target.4.2:新しい道具や製品,機械の導 入は,利点とコストをもたらし,人々の 生活や働き方を変える可能性がある。 Target.8.2:技術は社会と相互作用し,時 に社会経済や政治,文化に変化をもたら す。そして,度々新しいニーズと欲求の 創造につながる。 Target.12.2:新技術の導入と使用による変 化は,段階的または急速的な可能性,曖昧 または明白な可能性,時間と共に変化する 可能性がある。これらの変化は,社会経済 や政治,文化によって異なる。 できること Target.4.3:地域社会に新技術を導入する ことによるプラスやマイナスの影響の可 能性を特定する。 できること Target.8.3:予期する効果と予期しない効 果について,新技術や改良された技術の 導入による社会へのプラスやマイナスの 影響を分析し,記述する。 できること Target.12.3:特定の社会問題を解決するた めの適切な技術を選択し,基準と制約,利 用可能な資源,トレード・オフ,環境や文 化の問題の分析に基づいて,選択を正当化 する。 Target.4.4:2 つの異なる技術が人々の生 活に与える影響について,それらの技術 なしの人々の生活を想像し,比較する。 Target.8.4:ある社会では技術を適切かつ 持続可能にすることに留意しているが, ある社会では留意していないことを踏ま えて,特定の技術が異なる社会に及ぼす 影響を比較する。 Target.12.4:ある社会から別の社会へ特定 の技術を移転することによって引き起こさ れる文化的,社会的,経済的,政治的変化 について,予期する効果と予期しない効果 の両方を含めて分析する。

(5)

以上の Assessment Area,Practice,Context の定

義と関係性を検討・解釈すると,TEL の問題設計理論

は 図 2 の よ う に 整 理 す る こ と が で き る 。 ま ず , Assessment Area に含まれる Subarea において,4 年

生,8 年生,12 年生を水準とした習得すべき知識や能

力を示す Assessment Target が定められる。次に, Assessment Target に対して,汎用性のある推論や行

動のための考え方である Practice を組み合わせること

で , 評 価 す る 能 力 を 一 層 明 確 に す る 。 そ し て , Assessment Target や Practice が生起する状況として

の Context を当てはめることによって,児童生徒が状

況に応じて解決策を考え意思決定することができる調 査問題が作成されていると考えられる。

3.TEL の実施方法と調査問題例

TEL の出題形式には Scenario-based assessment set が用いられている。児童生徒はシナリオベースの問題 を通して,現実的な状況を反映した豊かで複雑な状況 で問題解決を行い,その過程での様々な情報を使用し た意思決定に基づいて解答を行う14)。また,

Scenario-based assessment set には,Long Scenario と Short

Scenario の 2 種類がある。これらは,複雑さ,評価項 目の数,児童生徒が応答するように求められる項目等 が異なっている。 TEL の調査は 2014 年の 1 月から 3 月にかけて実施 され,8 年生に関しては,全米の約 840 校 21,500 人を 対象に実施された。2019 年現在,公開されている 2014 年の問題は,表 4 に示される Short Scenario の 2 問と,Long Scenario の 2 問である15) Long Scenario のひとつである「1800 年代のシカゴ の水質汚染問題に関するオンライン展示会を開発する」 の問題構成を表5 に示す16)。この問題は6 問から構成 されており,30 分の解答時間内で Web を用いて進展 するシナリオを閲覧し,その途中で問いかけられる質 問に解答するようになっている。各問題は,「1800 年 代のシカゴの水質汚染問題に関するオンライン展示会 を開発する」のテーマに対し,Context の例として示 されている技術と人間社会の相互作用,環境や経済に 技術が与える影響,技術の利点と欠点などを考える状 況 を生起させ ることで構 成されてい る 14)。 また , Assessment Target を踏まえて設定された評価規準で ある Skills Measured が示されている。さらに,問題 1 は「問題」,問題 2,3,4 は「解決策」,問題 5,6 は「結果」のセクションに分類されている。各問題の 概要を以下に示す。 図2 TEL の問題設計理論のイメージ Practice Context 4 8 12 4 8 12 4 8 12 Societal Issues ✖ DesignGoals School and Community Problems Assessment Area Understanding Technological Principles Developing Solutions and Achieving Goals Communicating and Collaborating Assessment Target

Sub-area Sub-area Sub-area

Technology

and Society Design andSystems

Information and Communication Technology (ICT)4 TEL の公表されている問題 種類 内容 Short Scenario 安全な自転車専用レーンを設計する。 Web サイトのコンテンツを作成し,10 代のレクリ エーションセンターを宣伝する。 Long Scenario 1800 年代のシカゴの水質汚染問題に関するオンライ ン展示会を開発する。 教室のイグアナの飼育環境を修正する方法を評価し て説明する。 表5 「1800 年代のシカゴの水質汚染問題に関するオンライン展示会を開発する」の問題構成 セクション 問題

番号 Assessment Area Practice Skills Measured

問題 1 Technology and Society Developing Solutions and Achieving Goals 社会と技術の問題を理解する上で重要な因果関

係を推論する。

解決策

2 Technology and Society Communicating and Collaborating 社会と技術の決定に関わるステークホルダーの関心と優先事項を評価する。 3 Design and Systems Developing Solutions and Achieving Goals システムを設計またはトラブルシューティングするための最初の段階として分析する。Technology and Society Understanding Technological Principles 社会的な力が新技術の開発を推進し,どのよう

にして技術が社会に影響を与えるかを知る。

結果

Technology and Society Developing Solutions and Achieving Goals 社会的,環境的,技術的要因の因果関係を推論

する。

(6)

問題1 は,1800 年代後半のシカゴで起きた水質汚染 問題の原因を理解するために,過去の日記や手紙を調 べ , 因 果 関 係 の 概 念 図 を 完 成 さ せ る 問 題 で あ る 。 Assessment Area は Technology and Society , Practice は Developing Solutions and Achieving Goals である。Skills Measured は「社会や技術の問題を理 解する上で重要な因果関係を推論する。」である。評 価は 3 段階で行われており,評価基準はそれぞれ, Complete - 全 て 正 解 , Partial - 1 つ 正 解 , Unsatisfactory-正解なしである。 問題 2 は,シカゴの水質汚染問題解決に向けて考え られた「4 つの異なる視点の説明文」と「各ステーク ホ ル ダ ー の 意 見 」 を 一 致 さ せ る 問 題 で あ る 。 Assessment Area は Technology and Society であり, Practice は Communicating and Collaborating である。 Skills Measured は「社会と技術の決定に関わるス テークホルダーの関心と優先事項を評価する。」であ る。評価は 4 段階で行われており,評価基準はそれぞ れ,Complete-3 つ以上正解,Essential-2 つ正解, Partial-1 つ正解,Unsatisfactory-正解なしである。 問題 3 は,シカゴが行った水質汚染問題への解決策 を示したアニメーションに対して適切なナレーション を 選 択 し て , ビ デ オ を 完 成 さ せ る 問 題 で あ る 。 Assessment Area は Design and Systems であり, Practice は Developing Solutions and Achieving Goals である。Skills Measured は「システムを設計または トラブルシューティングするための最初の段階として 分析する。」である。評価は 5 段階で行われており, 評 価 基 準 は そ れ ぞ れ ,Complete - 全 て 正 解 , Satisfactory-3つ正解,Essential-2つ正解,Partial -1 つ正解,Unsatisfactory-正解なしである。 問題 4 は,シカゴが水質汚染問題を解決するために 川を逆流させる解決策を選んだ理由を解釈し,4 人の 専門家の意見を評価し,理由となるものを選択する問 題である。Assessment Area は Technology and Society であり,Practice は Understanding Technolo gical Principles である。Skills Measured は「社会的 な力が新技術の開発を推進することと技術が社会にど のような影響を与えるかを知る。」である。評価は 3 段階で行われており,評価基準はそれぞれ,Complete -全て正解,Partial-3 つ正解,Unsatisfactory-2 つ 以下正解である。 問題 5 は,シカゴの水質汚染問題の解決策が現在の ミシガン湖の外来魚の問題にどのような影響を与えた か を 説 明 す る 問 題 で あ る 。Assessment Area は

Technology and Society で あ り , Practice は Developing Solutions and Achieving Goals である。 Skills Measured は「社会的,環境的,技術的要因の 因果関係を推論する。」である。評価は 2 段階で行わ れており,評価基準はそれぞれ,Complete-根拠に裏 付けられた明確な説明,Unsatisfactory-根拠のない あいまいな説明である。 問題 6 は,シカゴの水質汚染問題を通して,技術と 社会の関係についての示したまとめの意見を選択する 問 題 で あ る 。Assessment Area は Technology and Society で あ り , Practice は Understanding Technological Principles である。Skills Measured は 「社会的な力が技術開発を推進することと,技術が社 会にどのような影響を与えるかを知る。」である。評 価は 2 段階で行われており,評価基準はそれぞれ, Correct-正解,Incorrect-不正解である。

4.評価問題の実施と結果

4.1 調査の結果 日本の中学生にTEL の調査を実施するため,問題の ひとつである「1800 年代のシカゴの水質汚染問題に関 するオンライン展示会を開発する」を和訳した。また, Web により問題を閲覧し,解答を処理することのでき るアメリカと同様のシステムを構成した17) 調査は,2018 年 9 月から 11 月にかけて,6 都道府 県から14 校,第 2 学年の 2141 名(有効解答率 97.9%, 2096 名)を対象に中学校技術・家庭科技術分野におけ る 1 時間の授業内に実施した。授業の目標は,「技術 にはプラス面とマイナス面があり,技術と社会や環境 は相互に影響していることを理解することができる。」 とした。授業時間 50 分のうち 30 分を解答時間として, その他の20 分では,教師が調査問題を学習課題として 解説,説明する学習指導の時間とした。生徒は,30 分 の解答時間内においてWeb 上で展開されるシナリオに 基づいた問題に対して個別のペースで解答する。ただ し,一部の中学校では,セキュリティ上の関係で Web に接続することが不可能であったため,教師がスク リーン上に問題を提示し,生徒は配布された解答用紙 上に解答する形式を採用した。 調査後,TEL に示される評価基準に基づいて解答を 評価した。調査の結果をアメリカにおける 2014 年の データとともに整理して表6 に示す。 各問題の日本の中学生のComplete の割合は,問題 1 で48%,問題 2 で 66%,問題 3 で 51%,問題 4 で 22%,

(7)

問題 5 で 23%,問題 6 で 45%であった。また, Completeの割合の差をアメリカの結果と比較すると, 日本の中学生は,問題1 では 8 ポイント,問題 2 では 4 ポイント,問題 3 では 19 ポイント,問題 4 では 1 ポ イント高かった。一方で,問題5 では 21 ポイント,問 題6 では 17 ポイント低いことがわかった。 表 6 において Complete と評価されたものを正答率 として,各問題におけるアメリカと日本の正答率につ いて二項検定を用いて検討した 18)。その結果,問題 1 (z=7.89,p<0.01),問題 2 (z=3.37,p<0.01),問題 3 (z=19.00,p<0.01)では日本の生徒の正答率が高く有意 差が認められた。一方で,問題5 (z=19.30,p<0.01), 問題6 (z=15.66,p<0.01)では日本の生徒の正答率が低 く,有意差が認められた。問題 4 については有意な差 が認められなかった(z=1.46,n.s.)。 4.2 調査の考察 調査問題の性質であるセクションに注目すると「問 題」のセクションに含まれる問題 1 では,日本の正答 率の方が顕著に高い。また,「解決策」のセクション に含まれる問題 2,3,4 では,日本の正答率が顕著に 高い,もしくは,正答率に有意な差がない。一方で, 「結果」のセクションに含まれる問題5,6 では,アメ リカの正答率が有意に高くなっている。さらに,問題 1 と問題 5,問題 4 と問題 6 は,Assessment Area と Practice が同一であり同じ問題の枠組みである。さら に,Skills Measured も類似していると考えられる。 しかしながら,どちらの能力においても「結果」のセ クションでは,アメリカの正答率の方が顕著に高い結 果であり,有意差が認められた。 特 に ,Practice の ひ と つ で あ る Understanding Technological Principles が同一である問題 4 と問題 6 では, Skills Measured に「技術と社会に関する理解」 が示されており,類似した能力を測定する問題である と捉えることができる。アメリカの調査結果における 問題4 の Complete の正答率は 21%であり,全 6 問の 中で最も低い。また,日本の調査結果における問題 4 の Complete の正答率は 22%であり,全 6 問の中で最 も低い。さらに問題 4 は,二項検定において日米の正 答率の有意差が認められていない。つまり,問題 4 で 測定した「技術と社会に関する理解」では,アメリカ と日本は同程度の能力であり,両国共に本調査の中で 最も低い能力であることがわかる。一方で,アメリカ の調査結果における問題 6 の Complete の正答率は 63%であり,全 6 問の中で最も高い。しかし,日本の 調査結果における問題6 の Complete の正答率は 45% であり,全 6 問の中で 3 番目に低い。また,問題 4, 問題 6 では類似した能力を測定しているにも関わらず, 問題 4 では表出しなかった二項検定での有意差が問題 6 で認められた。これらの結果が相違する原因として, 問題 6 がシナリオベースの問題の特徴である「物語の 内容を踏まえたまとめの問題」であることが考えられ る。問題 6 では「技術と社会に関する理解」に加えて, 「情報相互の関係性を理解・解釈して,統合する能力」 が含まれており,その能力により日米の正答率の相違 が生じたと考えることができる。 これらのことから,「1800 年代のシカゴの水質汚染 問題に関するオンライン展示会を開発する」の問題構 成と調査結果からは,技術的な「問題」に対してその 概要を把握することや「解決策」を検討することに関 する問題については,日本の中学生の能力が上回って 表6 「1800 年代のシカゴの水質汚染問題に関するオンライン展示会を開発する」の調査結果 問題

番号 国 Complete Satisfactory Essential Partial

Unsatisfactory / Incorrect (無解答)Omitted 問題 1 日本 48% 44% 7% 0.8% 米国 40% 45% 15% # 問題 2 日本 66% 18% 11% 5% 1.0% 米国 62% 21% 12% 5% # 問題 3 日本 51% 20% 11% 8% 8% 1.6% 米国 32% 28% 14% 13% 13% # 問題 4 日本 22% 33% 43% 1.9% 米国 21% 30% 48% # 問題 5 日本 23% 69% 8.4% 米国 44% 59% 0.1% 問題 6 日本 45% 51% 3.6% 米国 62% 38% # 日本(N=2096)の正答率は,米国の調査結果に倣って小数点以下を四捨五入して示す。斜線は評価基準なし,0.1 未満は#で示す。

(8)

いると考えられた。一方で,アメリカの中学生は,技 術による問題解決の「結果」の解釈やその位置付けを 理解・表現する能力が上回っていることが推察された。 中心分野として「読解力」が設定された PISA2009 の調査結果に対する文部科学省の検討において,日本 の15 歳児の「読解力」は「情報へのアクセス・取り出 し」において比較的高得点であり,「統合・解釈」や 「熟考・評価」では相対的な得点が低いことが指摘さ れている 19)。「情報へのアクセス・取り出し」は「テ キストに書かれている情報を正確に取り出すこと」と 位置付けられており 20),本調査において日本の中学生 の能力が上回っていると考えられた「技術的な「問題」 に対してその概要を把握すること」と類似性があると 考えられる。また,「統合・解釈」は「書かれた情報 がどのような意味を持つかを理解したり,推論したり すること」と位置付けられており 20),推論という観点 からはアメリカの中学生の能力が上回っていると考え られた「技術による問題解決の「結果」の解釈」に類 似していると考えられる。これらのことから,調査対 象者の「読解力」が本研究における調査結果に関係し ていると考えられる。しかしながら,PISA2009 の調 査結果による「情報へのアクセス・取り出し」「統 合・解釈」「熟考・評価」の得点差はわずかであり, いずれもアメリカより日本の得点が高く示されている ことから,「読解力」との調査結果との関連性につい ては慎重に解釈する必要があると思われる。

5.おわりに

本研究では,全米学力調査 NAEP における TEL の 問題設計理論を分析するとともに,その問題設計理論 に沿って開発された問題を用いて日米比較調査を行っ た。今後の課題として,調査結果の解釈の確実性を高 めるために,TEL の他の問題の実施やアメリカの技術 教育の教育課程について精査する必要がある。

謝辞

TEL の問題設計理論に関して,ITEEA の Senior Fellow である Johnny Moye 先生に貴重な資料の提供 と多くのご助言を賜りました。また,調査の実施にご 協力いただきました先生方に感謝の意を表します。

参考文献

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Abstract

This study aims to clarify the design theory of technology and engineering literacy, established as a survey field of technology education at the National Assessment of Educational Progress, and obtain recommendations on student ability through a survey that involved junior high school students from Japan. Technology and engineering literacy consists of three categories: the assessment area, practice and context, and assessment target that measures the knowledge and abilities students are expected to have acquired by the fourth, eighth, and twelfth grades. Survey questions were created by correlating the assessment targets with the elements of practice and context. One of the problems was translated into Japanese, and the survey was administered to 2,096 Japanese eighth graders. On comparing the results of this survey with surveys conducted in the United States, it was found that Japanese students showed skillfulness at “grasping a problem" and “examining solutions." However, they seemed to be less skillful at understanding and expressing an “interpretation of problem-solving."

Key words: National Assessment of Educational Progress, Technology, Engineering literacy, Comparative survey, Japan, United States

表 2 Assessment Area と含まれる Subarea
表 3 Assessment Target の例 Interaction of Technology and Humans

参照

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