価格の計画化について
近
藤
飛
雪 問題の所在
本稿の目的は,より望ましい市場機構の創出のために価格を計画化すること の可能性について,若干の序論的分析を試みることであるが,考察に先立ち以 下の議論の前提となる市場機構をめぐる諸問題の歴史的経緯について簡単に述 べておくことが適当であろう。 Ada皿Smithは,生産手段の私的・分散的所有に基づく社会的分業の各分 肢および消費者が需給を均等させる価格の成立を媒介として相互に結びつけら れることによって,各人の私的利己心の最大限追求が最も効率よく社会的利益 の増進をもたらすところに,市場機構の存在意義を見いだした。即ち,各生産 者たちは利潤を増加させるためにより良い商品をより廉価に生産し,また新製 品の開発・技術の改良を不断に競わなければならないが,そのことが結局は需 要と供給の自動的調整,資源の効率的配分,生産の消費者による誘導を果た’ し,社会的分業の深化と拡充をもたらすだろうと考えたのである。 このような彼の洞察の正当性は,一面ではその後の現実の資本主義の世界的 発展によって如実に証明されたと言えるが,他面彼自身が全く予期しえなかっ た多くの否定的現象をも帰結したのである。その主なものとして, 1.市場機構の発展は同時に古い経済秩序を解体し,大量の‘自由な’労働 者を発生させ,資本家と労働者あるいは先進国と従属国との間に,物心両面に !) 「自分自身の生活状態をよりょくしょうとする各個人の自然的努力は,自由と公安 とによってそれに精だすことがゆるされるばあいには,きわめて強力な原理なのであ って,これさえあれば,なんの援助もなしに社会を富と繁栄とに導くことができる… ・・」Smith〔1〕,(三)pp.229−30.価格の計画化について 263 わたる利害対立を生みだした。 (富の不平等分配,新たな貧困化,南北問題な ど) 2,価格の自動調整機能が必ずしも安定的なものでないことが明らかとなつ の た。 (不均衡の累積と恐慌の問題) 3. 自由な諸資本の競争の結果,独占あるいは寡占が登場し,従来の‘原子 的’な競争が大きく制限され,価格のパラメータ的機能に重大な変化が生じ き た。 (独占価格,‘賃金の下方硬直性’,X非効率,独占と一般均衡,生産によ る消費の支配の問題など) 4.資本主i義的企業の利己心に基づく巨大な生産力の制御が自然破壊,資源 の枯澗,「公害」問題等の深刻な外部不経済をもたらすようになった。 5.利潤の対象とならない‘公共財’や社会資本は不足する反面,利潤の対 象となりうるものならどのようなものでも生産されるようになった。 (経済の 軍事化,非生産的部門の増大など) 6。資本主義的企業は必らずしも完全雇用を成立させるような投資活動を行 なわないことが明らかとなった。 (不況および失業問題) などの諸現象を挙げることができよう。 これらの数多くの否定的現象は,生産力の巨大な発展と経済力の少数者への 集中=独占の登場という新らたな資本主義の歴史的発展に際して,もはや従来 の市場機構が有効に機能しえなくなったことの端的な表われと見ることができ よう。Smith流に言えば,社会的分業の著しい発展は,もはや私的利己心の最 大限追求と社会的利益の増進とが決定的に矛盾する段階にまで到達したのであ る。 こうした‘市場機構の危機’に対し異なる二つの立場から,様々な模索が行 なわれている。 生産手段の私的所有原則に立つ資本主義諸国では,政府による市場機構への 2)置塩⊂2〕第3章。 3)独占資本主義下の資源配分を論じたものとしてT. Negishi〔3〕, H. Nikaido〔4〕 がある,
264 部分的介入を認め,公共投資,公的部門の拡大,あるいは所得再分配政策,反 独占政策,福祉政策などによって市場機構のもたらした弊害を補正しようと努 力している。しかしながら独占体と政治権力とのゆ着,巨額の財政赤字と国民 の租税負担の増大,スタグフレーション等の新しい問題も惹起している。 他方,生産手段の社会主義的所有原則に立つ社会主義諸国においても市場機 構は排斥されるどころかむしろ社会主義的分業体系を拡大・深化してゆくため の の重要な一手段として利用され,市場と計画の結合が模索されている。例えば ハンガリーやチェコでは三種の価格体系(固定価格60∼70%,制限価格10∼20 %,自由価格10∼20%)の下に市場機構が存在しているし,ユーゴスラビアや ポーランドでは社会主義的企業が価格・賃金・投資に関してかなり自主的な決 定権をもち,利潤動機による生産が行なわれている。またソ連邦においても 1965年以降は利潤刺激などを積極的に導入して,企業の効率性・自主性を拡大 の する方向で各種の経済改革が行なわれている。しかしながら経済機構の改革が 必ずしも行政的・政治的機構の改革につながらず,両者の間に深刻な対立・摩 擦を生みだしているようである。 このように見てくれば,今や体制の如何にかかわらず,生産力の新しい段 階・生産の社会化の新しい段階に対応した有効な市場機構の創出がまさに世界 的な規模で模索されていると言うことができよう。 我々はこうした問題に少しでも具体的に接近してゆくために,ある種の仮想 的な経済を想定し,その経済における市場と計画の結合の可能性について検討 を加えようと思う。より具体的には,全面的に計画化された社会主義経済に市 、場機構を導入し,各経済主体の私的利益の追求と社会的利益(目標)の追求と が矛盾なく実現してゆくように価格を計画化することの理論的可能性を探求す の ることである。 4) どのような条件の下で,社会主義経済において市場機構が存在しうるのかという問 題については宮鍋〔5〕をみよ。 5)社会主義諸国におけ’る市場機構,価格,計画化の実際については,〔6〕,〔7), (8〕,〔9〕,〔!0〕,〔11〕をみよ。 6) このような試みはすでにTaylor〔12〕, Lange〔13〕において,また最近では森嶋
価格の計画化について 265 それは別の角度から見れば,生産力の新しい発展によってひきおこされた私 的利益と社会的利益との乖離を,‘神の見えざる手’によってではなく,人間の 意識的な計画と制御によって再び一致させようとする試みの一つと言うことが できるかもしれない。 x 皿 諸仮定および諸限定 我々が対象とする経済は次のようなものである。 〈生産技術に関するもの> 7) (A.1)生産物はすべて市場で取引され,その総数をn;1,2,……,feを再生 産可能な生産財,k+1,k+2,……,nを消i費財とする。またn+1,n+2,……,m を本源的生産要素とし,生産に投入される生産要素の総数をM(=ん十m−n) とする。 (A.2)生産物と生産要素は各部門につき唯一つの生産関数: XFF‘(Xil,Xi2,…,Xife, Xin+且,…,Xim) (i=1,2,…,n) によって結びつけられ,この関係は当該計画期間中不変とする。また再生産可 能な生産財の生産には上限があり, suPXi=Xi (i=1,2,……,k) の とする。 9) (A.3) 1.各生産関数はR撃の適当な部分集合で定義され,この定義域 〔14〕,飯尾〔15〕等において論じられているが,我々の分析はそれらに比してより 競争的で自由な社会主義経済を対象としている。 7)各企業者は前期の生産財市場で購入した再生産可能な生産財を期首において一定量 保有しているが,生産計画の変更によって生じた保有生産財の過不足分は生産財市場 において取引されるものとする。 8)再生産可能な生産財は期首において一定量存在しているが,そのことは各生産関数 が上に有界となることを意味しない。というのは再生産可能な生産財自身が生産物と して生産され,再投入されうるからである。従ってこの仮定は各生産関数を上に有界 とするために必要なものであるが,生産には常に一定の時間を必要とするから経済的 にも有意であると考えられる。 9)のちにみるように,これらの生産関数の定義域はR準の凸部分集合である。
の全体ですべての変数について2回までの偏導関数が連続。
9臼Qe
4. 5 ju’iO)=O (i=1,2,・ oXi >O (i=1,2, ∂Xf/ o oXif・ 対称行列F&x: oFkx藁
(M×M) (oXioXi,’)く・(・一・・2,…謝一・・2・…・k・n+・・…・m)函
(oXioXi ,)一・ .....j n) 一・Cn;」=1, 2, ・一, k, n十1, 一・, m) 6 、£1(oXioXik)……菰(急) 、蔓、、(oXiOXin+i)……義(、瓢、) 誌(oXiOXim)……、£。(錆) 、x、、(oX,oXi ,)、x銭.、(認)…、£、。(畿) 、x裂.1(oXiOXik)…、£。(畿) 、x裂.1( aXi∂xゴ”+1)…、£加(、昊課1)、x乳.1磯。)…武磯)
の首座小行列式の符号は定義域の全体で平帯形式,すなわち交互に負・正と なる。σ=1,2,…,n) (A.4)各生産要素は次の制約をもつ。 再生産可能な生産財は, 0≦ΣXが十4ゴ≦Xノ≦Xj(ブ=1,2,…,々) ’ i−1 ただし∂ノは再生産可能な生産財ブに対する当該期間の総投資需要,X,は既に 述べた生産上限である。 本源的生産要素は, あ 0≦ΣXゴ,≦X‘(1 ・n十1,…,吻 卜1 ただしXlは計画当局によって指定される財1の当該期間における使用限度で ある。 (A.5)無償処分の仮定。 注意:(A.3)は各生産関数が一意に最大化されるための十分条件に関する ものであるが,このことはμが微分可能な狭凹関数であること,すなわち任意のX’,X”∈R畢,O〈t〈1に対し .FV’ (tX’ + (1 一 t) X”) >tFi (X’) + (1 一 t) Fi (X”) の成立を意味している。 価格の計画化について 267 (i == 1, 2, … , n) 〈消費選択に関するもの〉 (B)社:会の各成員は消費財の水準に対してのみ確定的な選好を示し,効用指 標としての非負の実数値を連続的に指定する。さらにこうした諸個人の効用関 数を基礎に何らかの方法(例えば耐忍人間の討論,政府による宣伝・教育など) 10) によって統合された次のような性質をもつ社会的消費効用関数が存在する。 L σ(Xk。1, Xk.2,…,Xn)は,取一鳶の適当な部分集合で定義され,定義域の 全体にわたりすべての変数について2回までの偏導関数:が連続。 2. 3e 4. 5. 注意 測可能であるといったことを主張するというよりはむしろ, 自由があり,各個人に合理的に消費を決定しようとする傾向のあることの理論 的反映の一形式であるという点に存する。 ひ(0)=O 詮〉・(i−k÷・細…・・) 、気巽)〈・(・一k+1・・+2・…・n) 対称行列Uxzの首座小行列式の符号は定義域全体で負値形式。 社会的消費効用関数の経済的な意義は,それが現実に存在するとか,計 社会に消費選択の <経済のルールに関するもの> 11)(C.!)すべての生産手段は社会主義的に所有され,各生産部門の生産技術 10)社会的消費効用関数を仮定せずに,「消費者は消費財の構成比率のみを計画におけ る与件として指定する」という想定に変更しても以下の議論の大筋は変わらない。有 木〔11〕第3章をみよ。 !1)社会主義的所有(社会的所有)は必ずしもソ連型の国家的所有を意味するものでは なく,幾つかの多様な形態を許容しうるものである。この点は西村〔16〕,〔17〕をみ よ。
12)および消費選択に関する情報は計画当局にとって既知である。 (C,2)各部門のすべての企業は単一の企業合同に組織され,各企業合同は 利潤原則に基づいて,生産量:,(労働を含む)生産要素の購入量(又は販売量), 計画当局との調整によって決められた長期計画にもとつく投資量,技術選択, 13) 14) および企業の設立・廃止に関する決定を行なう。投資を除く利潤はすべて計画 ユの 当局の定めた方法で貢献に応じて各家計に還元される。 ラ (C.3)労働以外のすべての本源的生産要素の要素費用は政府の収入とな る。計画当局は価格(「賃金」を含む)の決定および改訂,労働を含むすべて の本源的生産要素の当該期間の使用限度の決定,標準労働時間の決定,企業投 資の調整と,各情報の公表を行なう。 (C.4)各家計は計画当局によって定められた一定の労働量を提供し,計画 当局の定めた一定の要素費用(「賃金」)と利潤からの配当を所得として受けと る。各家計はこの所得制約の下に効用原則に基づいて消費決定を行なうが,生 産財の購入は禁じられている。尚,貯蓄については明示的に扱わない。 注意:経済のルールに関するこうした諸仮定が現実性をもつためには,高度な 技術水準とともに,政治・行政機構の民主化,国民の正しい権利意識の育成と いった,社会の他の領域における改革・発展を不可欠の前提としなければなら 12) この仮定は理論的に均衡価格の決定を論じるためには必要であるが,適当な調整過 程の存在を仮定でぎるならば省くことができる。すなわち企業者および家計はある公 定価格の下に計画生産量および計画消費量を決め,これを計画当局に報告する。当局 は需給不一致なる財の価格のみを改訂し再び価格を公表する……。このような情報の ループが敏速に繰り返されるようなシステムが存在するならば,計画当局は生産関 数や効用関数の特定の形状について既知である必要はない。Lange〔13〕part one 3 をみよ。 ’ 13)部門間にわたる企業の吸収・合併は禁じられる。 14)減価償却,研究開発費等は捨象する。 15) 一例としてリーベルマンの等級表がある。リーベルマン〔18〕。 16)我々のモデルでは,労働が管理労働・複雑労働・単純労働等々というように多種類 存在することを許している。 17) いうまでもなく社会主義下の「賃金」は私的労働の対価ではなく,社会的労働の対 価としての「賃金」であるべきである。
価格の計画化について 269 ない。 注意:流通機構(商業,運輸,倉庫等)および公共部門・金融部門の存在は明 示的に考慮しない。 皿 準 ゴ=1 とする。Ωは(ベクFル値)関数F の定義域で,R㌍の凸部分集合であ る。明らかに0∈Ω,.F(0)=0∈Tで あるからTは空でない。 次に任意のX’,X”∈Tに対し, X’ =F(Z’),X”=F(Z”),Z’,Z”∈Ωとすz, ユ う ることができる。Ωは凸であるから
任意の0≦≦1に対し
彦Z’十(1一のZ”∈Ω が成立し,関数Fの連続性により 備 本節では,以後の展開にとって準備となる事柄に関し定理の形で考察を加え ておく。 当該期間における生産可能集合Tを次の様に定義する。 T={(x,,x2,…,x”)1xゴ=Fi(Xi且,…,Xt,n)(i=1,2,…,n);o≦Xi≦Xi へ れ (ガ=1,2,…,ゐ);0≦ΣXが占め≦Xゴ(ブ=1,2,…,k);0≦ΣXil≦Xt ゴ=1 i−1 (1= n十1,…,m)} このときTに関し次の定理が成立する。 定理1:生産可能集合Tは空でなく,凸かつコンパクトで,ユークリッド空 間の正象限にふくまれる。 (証明)Zi=(Xi 1,Xi2,…,Xile, Xin+1,…Xim),Z=(Zl,Z2,…,Zn)さらにX冨 (X,,X2,…,Xn),F(Z)=(Fi(Zl),F2(Z2),…,Fn(Zn))とおき, れ が Ω={ZIO≦ΣX〃十dゴ≦Xゴ(」=1,2,…,k);0≦ΣXil≦Xl(1・=n+1,…,m)} i−1 X1 1 ︳一一・ 1聾 ll 瓦畏…一一一kFαz+(1→)『) 「 一 一 ■ 一 X’1 :/
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藺 o − o 冒 一 一 嘲 一 藺 一 一 一 冒 1 X、=Fz(Z、) 18)逆は真でない。 Zz 第1図 X2・F(tZ’+(1一彦)Z”)∈T(皿1) 。、. が成立。すなわちF(tZ’+(1一のZ”) は生産可能であることに留意しよ う。 (第1図,第2図参照) さて,関数Fの各成分関数:Fi (i= Z, X2 1,2,…,n)は仮定(A.3)より(狭) 乱数であるから任意の0≦t≦1に対 し P’(tZ’十(1一のZ”)≧t」酢(ZD 十(1−t)P’(Z;f)(i=1,2,…,n) Z2 が成立する。従って関数Fについて 第2図(Xiに上限がある場合)
も任意の0≦≦1に対し
F(tZ,十(1一のZ”)≧tF(Z’)十(1一彦)F(Z”)=tX’十(1−t)X” が成立する。これよりtX’+(1一のX”はすべての成分がF(tZt+(1−t)Z”)の 成分を超えることはないから,関係(皿.1)と無償処分の仮定(A.5)より tX’十(1一のX”∈T が成立。ゆえにTは凸である。 Tは明らかにπ次元空間の中で有界かつ閉じているからコンパクトであり, 仮定(A.3)よりユークリッド空間の正象限に含まれる。 (証明済) 生産可能集合Tのすべての要素Xに対し,最初のk個の生産財ベクトルを除 いたn−k次元ベクトル(Xk。1,Xk。2,…,Xn)のつくる凸部分集合をTcと書 き,消費財に関する生産可能集合と呼ぶ。このとき次の定理が成立する。 ラ 定理2:消費財に関する生産可能集合Tcの任意の要素Xに対し, び(x*)≧σ(x) を満たすベクトルX*∈R孕一房がT、のフロンティア上に一意に存在する。 (証明)定理1によりTはコンパクト,また社会的消費効用関数σは仮定に より連続であるから,XがTcのすべてにわたって動くとき, 19)本節のこれ以降の議論ではXは常にn−fe次元ベクトルとする。 Xl郭FL(Zl) F(tZ『+(1−t)Z「‘) 鱒◎ @噺馬 亀 叉1 一 需 囎 一 卿 l ll l 戟E 撃奄 , 層 一 一 @ 1 一 騨 一 一 冒 @ X1 :一噛騨一←句一T
・15 : 旨 X”P l I 轟 ■ き ■ 1 lZ・ 3 3 1 1磯=
一 騨 囎 騨 秩@ 騨 一 一 一 一 一 ;1 :: Z’「 1 Ω’ r 雪 一 一 一 r一 暉 昌 一 ■ 一 一 :● X2需F2(Zり価格の計画化について 271 σ(x*)≧び(x) なるX*が存在する。 次に関数びは狭義単調増加な狭凹関数であるから,このようなX*はTcの フロンティア上に唯一つ存在する。もし 二つあると仮定しそれらをX’,X”とす れば,任意のO〈t<1なる孟に対し, σ(tX’十(1−t)X”)>tU(X’) 十(1 一 t) U(x,t)=σ(X’)=σ(X”) となってσ(X’),σ(X”)の最適性に反 す。 (第3図参照) (証明済) の 最後に主としてArrowの議論に拠り ながら次の定理を示す。 定理3:U(X*)≧ひ(X)(X∈Tc)を満 第3図 たすX*より少くとも同じ程度以上に選好される点の集合S: 8={XlU(X)≧U(X*), X∈R2−k} を定義する。このときT、とSとを分離する超平面 H={XIΣ glSX,=C*,q*>0, X∈R?一k} ∫一ん+1 が存在する。 (証明)集合Sは点X*をTcと共有しているから,このままでは分離回 れ 理を適用できない。そこで新しく集合S’: S’={Xjσ(X)〉σ(xce),X∈R準一in} を考える。集合S’に属する任意の二つの要素X’,X”に対して一般性を失う ことなく び(X*)〈ひ(X’)≦U(X”) と仮定する。仮定(B)よりσは(狭)凹関数であるから,任意の0≦≦1に 対し 20) Arrow〔19〕. 21)分離定理については二階堂〔20〕§29をみよ。
U(tZ十(1−t)X*)を考えれば, t>EOなる限 り, σ(tZ十(1一のX*)〉σ(X*) であるから,tZ+(1−t)X*∈S’である。そ こでt→0とすればX*に収束する点列{X”} ∈S’が存在し,これらの点列に分離定理を適 用すれば,この点列の各要素XVを通る分離 カ あ 超平面Σ qZXi=Σ 盛X㌦が存在し,関係 f=海原1 ゴ軍二十1 れ れ Σ9宅x量〉Σq覧x秀(Xv∈s’) i−fe十1 iPt le十1 を満たしながら, あ れ limΣ 9見XZ =Σ 9労X学 ・C* v→QQi−k十1 ∫嗣ん十1 となるq*≧0が存在する。 らしめると極限において, U(tX’十(1−t)X”)}il:tU(Xt)十(1−t)U(X”)}1:U(X’)>U(X*) が成立する。従ってtX’+(1−t)X”∈S’,すなわち集合S’は凸である。
定理1よりTは凸であるからTeもまた凸である。またS’の定義より
σ(X)〉ひ(X*)ならばX∈T、であるから,T、とS’とは互いに素である。従 って分離定理により,S’とTとを分離する超平面が存在し,X∈S’ならばΣqiXi≧C
戸々+1X∈TcならばΣ9iXi≦C
’軍制+1 をみたすq≧0が存在する。 次に,σ(Z)〉σ(X*)なるZ∈S’に対し, s’Tc
x. 第4図 Z qンX=α q零X=C奪 (皿.2) (第4図参照)そこで(皿.2)においてン→。。な れ 22)ΣglXノ=C”とおく。 i−k十1 23) lim gv==q*とおく。 P→co価格の計画化について 273 Σ 9秀X誉≧C* ゴ冨ん+1 が成立する。他方X*∈Tcであるから ΣqずX誉≦C* ゴ冨ん十1 が成立し,結局 Σ 9秀X秀=・C* i−k十1 となる。すなわちX*はHの上にある。 次に示さなければならないことはq*>0なることである。よく知られてい るように支持超平面の係数q*は,集合5が点X*で偏微分可能ならば点X* における偏微係数に一致する。それゆえ ∂U(X*) (i=ん÷1,k十2,…,n) qT : ∂Xi ∂ひ が成立する。仮定(B)より >0であるから, ∂Xi q曽>0 (i=fe十1,k+2,…,n) を得る。(証明済) カ が
注意:X∈8ならぽΣ9誉X労≦Σ9秀.Xi
i=le+1 i−k+1 が がX∈TcならばΣgfXf≧Σ9学X,
z=k十1 i”k十1 が成立する。 N 展 開 (皿.3) (皿.4) (皿.5) 我々の問題は次のように述べることができる。まず計画当局は,①自然環境 をら との調和を考慮して当該期間の本源的生産要素(労働を含む)の使用限度,② 国民によって承認された長期計画に基づき各企業合同が決定した投資需要,③ 24)二階堂〔20〕§29. 25) 自然村との調和を考慮して資源の使用限度をどのように計画化すべきかの問題は別 の機会に残される。 26)投資をどのように計画化すべきかの問題は別の機会に残される。一つの試みとして は有木〔11〕第5章,拙稿〔21〕などを参照。標準労働時間,の設定および公表を行なう。次にこうした諸条件を考慮して計 27) 画当局は消費者の効用を最大化するように当期の計画生産量と計画価格を算定 する。当局は計画価格のみを固定しこれを公表する。各企業合同および各家計 は公表された計画価格に基づいて私的利益の最大限追求を行なう。その結果, 計画当局があらかじめ考えていた計画生産量と各企業合同の実際の生産量およ び各家計の実際の消費量とが丁度一致するように,価格を設定することができ るかという問額である。さらに,このような計画が没主体的な‘大衆への迎 合’ではなく,政府自身の課題達成とも矛盾しないように設定することができ るかという問題である。 従って,この経済では次の様な四つの基本的課題が設定されていると言うこ とができる。 1. 自然との調和 2.家計の私的利益追求の自由との調和 3.企業の私的利益追求の自由との調和 4.政府目標(消費財の国民総生産額最大化)の達成。 以下ではこうした‘四つの基本的課題’を念頭におきながら,各経済主体の行 動を条件つき最大化問題として定式化し,その条件を求めるという形で議論を 展開し,価格計画化の可能性を追求してゆくことにしよう。 [1] 政府・計画当局による計画生産量の決定を考える。 政府・計画当局は,自然との調和,各企業合同の投資計画等の考慮の下に, 当期利用可能な本源的生産要素(労働を含む)の量を決定する。次に計画当局 はこうした資源制約および当該期間における生産財部門の上限を考慮して,社 会的消費効用関数を最大化するように計画生産量を決定するものとする。従っ て, 【問題1】 Maximize : U(Xk+i,Xk+2,…,X.) 27) 本源的生産要素の価格を含む。
価格の計画化について 275 Subject to: 0≦ΣX〃十dゴ≦Xゴ (ブ=1,2,…,k) i−1 れ 0≦ΣXil≦Xl(1=n+1,…,切 ゴ51 0≦Xノ≦Xゴ (」=1,2,…,k) と書ける。ここでM+断固のラグランジュ未定乗数μ,αを導入すれぽ【問題 1】は, ぬ Maxilnize:σ(Xk。1,…,Xn)+Σμノ[Xゴーd」一ΣX言月 ノー・1 i−1 ん +Σ μz[Xl一ΣX,,1+Σαブ[XゴーXj] 1−n十1 ガ薫1 ゴ=1 と変換される。最大化のための必要条件は, 【条件1】 ・・(・・一・畿一・σ一・・2・…,姻・2・…・畑・・…吻 2・ ン・癒一μh =・(i=:fe+・,…・n・」一1・2・…・k・・n+・・…・m) 3. αゴ[XゴーXノコ=0 (ブ=1,2,…,ん) 4.μゴ[Xゴ 一 dj一ΣX記=0(戸1,2,…,k) i−1 が μ置[XrΣX,z]=O (1=n十1,…, m) i−1 となるQ 【条件1】 のM(n+1)+fe個の連立方程式が同数の未知数Xガ,μ,αを決 定するのに十分であり,こうして求められた計画生産量X*=(X営,…,X委)の うちの消費財生産量(x蒼、,聯+,,…,Xむが社会的消費効用関数を一意に最大 化することは,定理2によって保証されている。実際,最大化のための十分条 件は,【条件1】を満たすX‘ゴ,μ,αに対し次のM(n+1)×M(n+1)行列 Φ:
¢== o ユ ガ
ΦΦ⋮⋮Φ
tpi tp2 ”’”””¢n SNIM7 一 ¢1! o ¢22 o\M
㌔風ノ
(rv.1)トM!×一hN.Mノ
ただし㌶∵㌔∴副一一
聴器阿嘉.副一一
く翻::警:認ll黛ll鵠ll鷲
(i=1, 2, …, k)磯繋鑑鍵ll∫ll両三
ij=fe十1, k十2, …, n) の2M+1次以降の首座小行列式が, Mが偶数ならば交互に負・正,奇数なら ば正・負となることである。ここでpt i−a,>O (i=1,2,一・,k) (iv.2)
ptj>O (」’=1, 2, ・一, k, n十1, 一・, m) (IV. 3) au oXi >0)に注意し,仮定(A.3)を考慮すれば,この条件(... >o, oXi ∂X」ノ は常に満たされていることがわかる。 【条件1】 の4と(IV.3)より,計画生産量X*の下では,価格の計画化について 277 あ X雪 ・・dゴ十ΣX秀∫(ノ=1,2,…,k) (IV.4) 卜1 へ ゆ Xt=ΣX㌘」(1=n十1,…,m) (IV.5) ゴーユ すなわち,生産された生産財は補填需要と投資需要に完全に利用され,すべて の本源的生産要素(労働を含む)が当期生産に完全に利用されていることがわ かる。 以上の事実を次の定理に要約しよう。 定理4:政府・計画当局は,社会的消費効用を最大化する,達成可能な計画 生産量X*を定めることができる。 E2コ 政府自身の課題達成と定理4の計画生産量x*との関係を考える。 政府・計画当局自身の目標は,資源制約および生産の上限を考慮して,ある 価格水準9の下に消費財の国民総:生産額を最:大化することとする。すると政府 の行動は, 【問題2】 Maximize:Σ 9iXi i…k+1 Subject to:0≦ΣXが十4ゴ≦Xノ(ブ=1,2,…,k) z・=1 れ 0≦ΣXit≦Xl(1=n十1,…,m) 卜1 0≦Xゴ≦Xゴ (ノ=1,2,…,ん) と書ける。【問題1]と同様にM+k個のラグランジュ未定乗数λ,βを導 入すれば, 〃 ん % Maximize:Σ qiXi十Σλゴ[XノーdゴーΣXガ] 1一・fe+1 ノー1 t−1 視 冗 党 +Σ λ1[X一ΣXi彦]+Σβゴ[XゴーX月 1・一n+1 卜1 ブ;1 となる。最大化のための必要条件は, 【条件2】 L(…一t3i)畿+・(・一・・2・……ノー・,・・…・・・…+・・・・…m)
2.
004
・・悪心・・一・似+・・……瓦島…・勧+・・…・吻 βノ[XゴーX,コ==O (ブ=1,2,。・・,k) れ λゴ[XゴーdゴーΣXiゴ]=0 (ブ=1,2,…,k) i−1 れ Rl[X,…一ΣXil]=0 (1=n+1,…,m) 戸1 である。また十分条件は上のM(n+1)+le個の連立方程式からもとまるX〃, λ,βに対し次のM(n+1)×M(n+1)行列Φ’:擶∴ll謝
ただし似,Φ傷z(i=1,2,…,n)は(IV.1)の行列Φにおいてμr偽= ・承(i一一 1, 2, …,k)・器一・・(鴨島…・・)・置き換えたもの が, (IV.1)の行列Φと同様の条件を満たせばよい。 ところで,【条件1】と【条件2】を比較すると,もし 三一・・(・・+・・…・の が成り立てば,両者は全く同一一一一のM(n+1)+k個の未知数を決定する連立方 程式系となることがわかる。それゆえ消費財価格9を適当に選べば定理4の計 画生産量×*と【問題2】の解とが一致する可能性がある。ところで定理3に より計画生産量X*(∈R旱一㌃)に対しある正のn−k次元ベクトルq*が存在 し,任意のX∈Tcに対して が あΣ9委X≦Σq秀X穿
i−k十1 ガ冨二十1 ラ が成立することが示された。ここでq*を消費財価格とみなせば,上の不等式 は,価格がq*のときにX*の生産を行なえば,消費財の国民総生産額が最大 化されることを示している。換言すればX*はq =g*なる時の【問題2】の 28) (皿.5)をみよ。価格の計画化について 279 解であるということである。 以上の事実を次の定理に要約しておこう。 定理5:社会的消費効用を最大化する生産可能な計画生産量X*と消費財の 国民総生産額を最大化する生産可能な生産量とが一致するための必要・十分条 件は, q,=qtr〈 =一aLUSSeli12一(xX.*) ) (i=k+i,・・一,n) が成立することである。 [3] 次に政府目標の達成と各企業(合同)の私的利益追求の自由との関連 を考える。 各企業は,再生産可能な生産要素(生産財)および消費財の価格Pi(i=1,2, 一,n),本源的生産要素の価格別ノσ=η+1,…,m)が与えられれぽ,各生産財 への投資需要を所与(計画当局との調整によって決定する)とし,生産量の上 限を考慮しつつ利潤原則に基づいて,生産量および各生産要素の購入量(又は の 販売量)を決定する。従って, 【問題3】 Ma・・m・・e…Xi一 mfa フnΣPゴ(x〃+d,」)+Σ ”ゴxガフー1 ゴーn+1]鳳a切 Subject to:0≦;Xi≦;Xi (i=1,2,…,k) と書ける。ここで砺は第∫部門(=企業合同)の第ブ生産財に対する投資需 要である。生産財部門には仮定(A.2)より制約がつくから酬固のラグランジ ュ未定乗数γを導入すると,最犬化のための必要条件は, 【条件3】 ∂Xi 1.i=1,2,…,kに対して (lbi一γi) 一Pゴ=0 (ブ=1,2,…,k) ∂Xガ あ畿一・一・(ブー・+・・…・勿 γii=X‘一X,]=0 29)脚注7)をみよ。
2・i−k+・・…・・に対して・十一勿一・(ブー・・2・・…) ρ騰一塑’一・(ノ=n+1ヂ・・,m) となる。 ここで【条件含】と【条件3】を比較しよう。【条件2】に消費財価格9を 与えれば,【問題2】の解Xが,λ,βがもとまるが,今もとめた2とqを 【条件2】の1∼3のMn+le個の連立方程式に代入してやれば, 【条件2】 の4の成立とは無関係にXガ,βが求まる。もちろんこのXii,βは【問題2】 の解である。 次に【条件3】にρ,wを与えれば【問題3】の解X∫ノ,γが求まる。 それゆえもし,【条件2】からもとまるλに対し, メ㌃=λ‘ (i=1,2,… ,k) (IV.6) 1!)ゴ = 9ノ (1’ 一m fe十1) ”.) n) (IV.7) η=λ∫(1=n+1,…,m) (IV.8)
が成り立てば,【条件2】の1∼3と【条件3】はMn+k個の未知数を決定
する同一の連立方程式系となり,両者の解は一致する。 以上の事実を次の定理に要約しよう。 定理6:各企業が利潤原則に基づいて決定する生産量と消費財の国民総生産 額を最大化する生産可能な生産量が一致するための必要・十分条件は∫次の関 係が成立することである。 カ5=λi (i=1,2,…,k) ρゴニ9ゴ (ゴ=々+1,…,n) Wt=λ1(1ニn十1,…,m) ただし9は【問題2】における消費財価格でありλi(i=1,2,…,k,n+1,…,m) は【条件2】より定まる正の定数である。 oXi 30)9>()・∂Xij>0よりλ」>O(i=1・ 2,…・n;ゴ;1・2・…k, n+1,…・m)である。価格の計画化について 281 [4] 定理4の計画生産量X*と家計の私的利益追求の自由との関係を考え る。 各家計は,与えられた消費財価格ブと所得制約の下に消費効用の最大化を達 成するよう消費財の購入量を決定する。各家計の行動は,巨視的・社会的にみ れば次のように定式化することができる。 【問題4】 Maximize:U(Xk+1,Xk+2,…,Xn) れ へ Subject to:Σ ηX≦五 げ宰ん十玉 ここに,プは与えられた正の消費財価格,五は家計の総可処分所得であるが, 仮(C.4)により総所得に等しい。制約条件に対応して1個のラグランジュ未 定乗数ξを導入すれば が Maximize:び(X)一ξ[L一Σ riXiJ 卜々+1 となる。最大化のための必要条件は, 【条件4】
・・、累1β・一、鶏、/・…一……器序(一ξ)
が2.L=Σ riXi
げ一ん÷1 である。 定理4の計画生産量X*(∈一R孕一 il)が次の条件, ri=of (i=k十1,k十2,… n) 五=Σ gtlx香 ゴ宰ん+1 を満たすとき, X*は【条件4】の1を満たし,また(W.10) ム4】の解Xは,条件(IV.9), G:V.10)が成立すれば, が あ 点X*を通る超平面Σ gliX‘ニΣ i−k十1 i−k十1 ム ム ム畿碧/・翫一瓢碧/・粘一……一∂巽)/
(IV.9) (W.10) 【問題4】の解となることは容易にわかる。実際(皿.3)より より2も満たす。逆に【問額 ム 【条件4】よりXは 磁X秀の上にあり,かつ q糞を満たさなければならない。しかるに【問題4】の解の一意性と(皿:.3)の成 立により, ム X=X*(∈R旱一㌃) をうる。 以上の事実を次の定理に要約しよう。 定理7:家計が効用原則に基づいて選択する総消費量と社会的消費効用を最 大化する生産可能な計画生産量X*(Cli Rpt)が一致するための必要・十分条 件は,次の関係が成立することである。 ri=9鴛 (i=le+1,k+2,…,n) L=Σ gTX誉 ∫一海+1 ただしq*は定理3によって定まる正の定数である。 [5]以上の[1]∼[4]の考察によって得られた定理4∼7を用いて,価格 計画化の手順をまとめてみよう。 !.政府・計画当局は【問題1】を解き,資源制約・生産の上限を考慮し た,社会的消費効用を最大化する計画生産量X*を求める。 (定理4) 2. 消費財価格qを qi=qf=一〇{US[£V一(xX,’) (i=k+1,k+2,…,n) に設定する。 (定理3) 3.消費財価格9*の下では,計画生産量X*と政府目標を達成する生産量 (【問題2}の解)とは一致する。(定理5) 4.政府・計画当局は,消費財価格q*の下で【問題2】を解き,ラグラン ジュ乗数暦(ゴ=1,2,…,k, n+1,…,m)を求め,生産財価格A(i=1,2,…,fe) と本源的生産要素価格Wi(1=n+1,n+2,…,m)を, Pi=P15=AIIi (i=1,2,… ,k) wi==wf=2f (1=:n+1,n+2,…,m) に設定する。
価格の計画化について 283 5.政府・計画当局は,m個の財・サービスの価格(P*, q*, w*)と各生産 財に対する投資需要砺(i=1,2,…,n;ブニ1,2,…,k)を公表し,各企業および各 家計の私的利益の最大限追求を保証する。 6.公表された情報(P*,q*, w*,のの下では,計画生産量X*と各企業 が最大利潤を達成する生産量(【問題3】の解)la・一致する。(定理6および定 理5) 7.公表された情報(q*,w*)の下では,計画生産量X*(∈R?一k)と各家 計の最:大効用を達成する消費量(【問題4】の解)は,次の条件 家計総所得=消費財の国民総生産額 が成立すれぽ,一致する。 (定理7) 最後に定理7にあらわれた条件: が L=Σ q労x秀 ゴーん+1 の成立について吟味しよう。今,簡単のために家計から各部門へ投入された労 働量をただ一種類とし,それらをXTm(i=1,2,…,n)とすると,家計の本源的 生産要素費用にもとつく所得の総計は, すぼ
Σ嫉X観 (IV.11)
2=1 であり,また仮定(C.2)より利潤分配による所得総計は(急脚乱鋼一舗麟+ゐ)煮.、ゑ麟X細・2)
である。従って家計の総所得Lは,(rv.11),(IV.12)よりZ一(急脚漸二品急麟属)一瓢か臨
(IV,13) となる。しかるに計画下では(IV.4)が成立するから急塒急・轡・+煮陶一高急麟+属・)(r…4)
ラ が成立する。 (IV.14)を(IV.13)に代入すれぽ, 31)め=Σdij(ゴ=1,2,…, k)であることに注意。 z−1284 が ヘユ れ
L=Σ 9誉X卜Σ ΣwfXft (IV.15)
ゴ=々十1 1−n十1ゴ=1 が得られる。仮定(C,3)より労働以外の本源的生産要素@+1,n+2,…,m −1)は政府の所有であるから,(W.15)の右迎第2項は政府の収入と考える ことができる。それゆえ,政府の本源的生産要素にもとつく収入が全て消費支 出に振り向けられれば(例えば公務員の給料などとして),条件(IV.10)は完 全に満たされ,価格計画化による ‘四つの基本的課題’の達成は論理的に無矛 盾なものとなる。 こうして我々は今や一応の結論を下しうる段階に到達した。本節の議論を次 の定理に要約しよう。 定理8:仮定(A),(B),(C)の下に,四つの基本的課題を達成し,私的利 益の追求と社会的利益の増進とが一致するように価格を計画化することは可能 である。V 展望的結語
我々は限られた前提の下ではあるが, ‘市場と計画の結合’によって新しい 生産技術の段階に対応した市場機構の創出を求めて,価格計画化の可能性を探 求してきた。そこでの一応の結論は定理8に要約されている。 しかしながら前節での議論は,たんに価格の計画化を行なった場合の論理的 斉合性を検討したものにすぎず,価格の計画化が現実に可能となることを主張 するものではない。換言すれば,価格を計画化することの理論的可能性の問題 と現実的可能性の問題とは明確に区別されるべきである。ここで想起されるの はかってHayekやRobbinsが述べた批判,すなわち社会主義計画経済下の合 理的な資源配分は「論理的矛盾という意味の不可能ではない」が実際的な解を 見つけだすことはできないという主張である。もし我々が,前節で描いた価格 計画化の手順によって,彪大な方程式郡を実際に解き,その解を求めようとす るならば,Robbinsが正当にも批判したように,「方程式が解かれたときには 32)Lange〔13〕part oneの1をみよ。価格の計画化について 285 それらが基づいていた情報は古さびたものとなり,再び新しく計算しなおすこ とが必要となる」であろう。従って,現実に価格を計画化するためには,理論 上の問題ばかりでなく,技術上・制度上あるいは主体的なあらゆる問題を,経 験を通して徐々に解決し,理論化し,それらを積みあげてゆく長い創造的な過 程の存在を不可欠とするだろう。 例えば,まず全面的な財の価格の計扇蟹はただちには不可能であるから,主 要な基礎的な財にかんする価格の設定から始めなければならない。それらのう ちのあるものは,歴史的に与えられた(historically given)現実の市場価格が 33) 用いられるかもしれない。そしてある計画価格体系は,不十分な資源配分を生 み,財の不足や滞貨を発生させ,企業や家計の利益を損うであろう。そこでこ の不十分な計画価格から出発して経験と計画の両面から改良を加え試行錯誤を 繰りかえすことによって次第に望ましい,そしてより全面的な計画価格体系に 到達してゆくことができるであろう。この様にして達成される完全な計画価格 は次のような性質を有すると思われる。 1.安定的な価格であると同時に技術の変化に対して弾力的な価格 2.資源の稀少性を表現するとともに資源の合理的配分をもたらす価格 3.企業(合同)の価格への支配を禁止するとともに生産合理化への刺激を 与える価格 4.家計の消費生活を保護するとともに規制する価格。 最後に,価格の計画化という課題により全面的に接近してゆくために克服さ れなければならない,主として理論上の諸問題を挙示して,本稿の議論をおえ ることにしたい。 L 資源の動学的・計画的配分 2.種々の生産技術をもつ経済への議論の拡張 3.計画価格の安定性 33) ソ連邦の価格計画化にさいしては,当初ネップ期の市場価格が利用された。詳細は 丹羽〔10〕をみよ。
4.市場調整=情報システムの設計 5. 6. 7. 8. 投資の計画化と議論の長期化 流通・公共・金融部門および外国貿易の考慮 租税政策 資本主義経済における価格計画化の可能性…… 参 考 文 献 Smith, A.『諸国民の富』,大内・松川訳,岩波文庫,1959。 置塩信雄,『蓄積論』,筑摩書房,!976。 (1982. 1, 8) (1) [(2) 〔3〕 Negishi, T.,“Monopolistic Competition and General Equilibrium,”Reviezvげ Economic Studies, 28, 1961. (4) Nikaido, H., Monopolistic Competition And Effectiwe Demand, Princeton Uni− versity Press, 1975. 〔5) 宮鍋幟,「社会主義のもとでの商品・貨幣関係」,『(一橋大学)経済研究』第25巻 第2一号, 1974。 〔6〕東京大学社会科学研究所編『現代社会主義一その多元的位相』,東京大学出版会, 1977e 〔7〕宮鍋幟,「社会主義経済の諸類型」,『(一橋大学)経済研究』第29巻第3号,1978。 〔8〕 島恭彦裸参,『新マルクス経済学講座4』,有斐閣,1973。 〔9〕岩田昌征,「パラメータ型集権制の構築」.公電俊平他編『講座現代経済思潮第3巻 社会・経済システム』所収,東洋経済新報社,1978。 〔!0〕 丹羽春:喜,『ソ連計画経済の研究』,東洋経.済新報社,1966。 〔11〕有木宗一郎,『社会主義経済計画論』,日本評論社,1965。 (12) Taylor, F. M., “The Guidance of Production in a Socialist State,” American Economic Review, March, 1929. (13) Lange, O., “On the Economic Theory of Socialism,” The Review of Economic Studies, Vol. IV, 1936−37. 〔14〕森嶋通夫,『近代社会の経済理論』,創文社,1973。 〔15〕飯尾要,『市場と制御の経済理論』,日本評論社,1970。 〔16〕 西村可明,「いわゆる「個人的所有」についての一一一一一考察」,『(一橋大学)経済研究』 第29巻第4号,1978。 〔17〕 西村可明,「社会的所有と国家的所有」,『(一橋大学)経済研究』第30巻第3号, 19790 〔18〕 リーベルマン,イェー.ゲー.,「計画・利潤・報賞金」,野々村一雄編訳『ソヴェb 経済と利潤』所収,日本評論社,1966。 (lg) Arrow, K. J,, “An Extension of the Basic Theorems of Classical Welfare Eco− nomics,”in J. Neyman(ed.), Proceedingsげthe Second Berkeley Sym汐osium on Mathe7uatical Statistics and Probability, pp. 507−532, University of California Press, Berkeley, 1951. 〔20〕 二階堂副包,『現代経済学の数学的方法』,岩波書店,1960。 〔21〕近藤学,「消費ストック制約をもつ線形二部門モデルにおける最適成長=D.Pに ょる接近」,『六甲台論集』第27巻第4号1981。