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偏波干渉合成開口レーダのディジタル地形図生成におけるピクセルごとの散乱機構重み付けベクトル最適化:その基本アイデアと意義

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全文

(1)

招待論文

偏波干渉合成開口レーダのディジタル地形図生成におけるピクセル

ごとの散乱機構重み付けベクトル最適化:その基本アイデアと意義

廣瀬

a)

島田

智大

b)

夏秋

c)

Pixel-by-Pixel Scattering Mechanism Vector Optimization in High Resolution

PolInSAR: Its Basic Ideas and Significance

Akira HIROSE

†a)

, Tomohiro SHIMADA

†b)

, and Ryo NATSUAKI

†c)

あらまし 本招待論文は,偏波干渉合成開口レーダにおいてピクセルごとに散乱機構ベクトルを最適化するこ とで位相特異点の問題を解決し,高精度の地形図の作成を実現する手法を説明する.本手法は他の手法と比較し てより高い SN 比を示す地図を生成する.本来,散乱点ごとに散乱係数(位相変化,偏波変化)は異なるはずで ある.それらからの散乱波情報をいかに組み合わせて真の距離及び偏波情報を得るか.それは今後,衛星・航空 機搭載合成開口レーダの解像度がますます向上するにつれ,一層重要な問題になる.それはまた,イメージング だけでなく広く通信・計測における電波伝搬物理と信号処理の課題でもある.

キーワード SAR interferometry, polarimetric interferometry, sigular point (SP), digital elevation model (DEM)

1.

ま え が き

干 渉 合 成 開 口 レ ー ダ

(interferometric synthetic

aperture radar: InSAR)

は,同一地点を

2

箇所か

ら観測し,得られた複素振幅データに対して位相差を

とることで干渉位相画像を取得する

[1]

.得られた干渉

位相画像の各ピクセルには位相差が格納されており,

これは

(

−π, π]

の範囲に折りたたまれた位相である.

この位相差をアンラッピングするとディジタル地形図

(digital elevation model: DEM)

が作成できる.ここ

でアンラッピングとは,隣接するピクセル間の位相差

を線積分することである.地形は保存場であるからア

ンラッピングは高度を得るはずである.

しかし,

InSAR

によって取得される干渉位相画像

には位相特異点

(singular point: SP)

と呼ばれる回転

成分が多数存在し,アンラップ処理において大きな障

東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻,東京都

Department of Electrical Engineering and Information Sys-tems, Garduate School of Engineering, The University of Tokyo, Tokyo, 113–8656 Japan

a) E-mail: [email protected] b) E-mail: t ¯[email protected] c) E-mail: [email protected]

害を引き起こす

[2], [3]

.位相特異点が存在すると,積

分経路によって一意に標高値を決定することができず,

作成される

DEM

の信頼性が低下してしまう.そこで,

この問題を解決するために多くのアンラッピング手法

が提案されてきた.例えば,基本アルゴリズムであ

るいわゆるブランチカット法で,その組合せ最適化計

算コストを削減しながら行うミニマムコスト・ネット

ワークフロー法とその改良手法

[4]

[7]

やフーリエ領

域で最小

2

乗法を適用する手法

[8], [9]

,干渉基線の異

なるたくさんの干渉縞群から最適アンラップ解を得る

手法

[10]

[13]

,位相特異点を拡散して特異点問題を

解決しアンラップする手法

[14], [15]

などがある.また

フィルタリング手法も多数提案されており,実空間で

のフィルタリング手法

[16], [17]

やそこに適応的手法を

取り入れたもの

[18]

[22]

,周波数領域でフィルタリン

グするもの

[23], [24]

,また周波数領域で複素ニューラ

ルネットワークを用いるもの

[25], [26]

などがある.更

に偏波情報を盛り込んだ多偏波干渉型合成開口レーダ

(Polarimetric interferometric SAR: PolInSAR)

によ

る手法

[27]

[29]

も提案され,研究されてきた.

PolInSAR

は,干渉画像が偏波状態に強く依存する

ことから

Cloude

Papathanassiou

によって最初に

(2)

提案された

[27]

.この手法は森林の特徴量の抽出

[30]

[32]

やそれを含むさまざまな統計情報の抽出

[33], [34]

地表分類

[35], [36]

などにおいて大きな有用性を示し

た.しかし

DEM

の生成という点においては,実際の

崖などに対応しない偽情報としての

SP

がかなり残留

し信頼性の低い

DEM

が生成されてしまっていた.こ

のように

DEM

の生成という点でも

PolInSAR

の研

究は進められてきたが

[28], [29]

,この

SP

発生という

問題の本質は解決されていない.

著者らは最近の論文

[37]

で,

PolInSAR

に出て来る

散乱機構重み付けベクトル

w

の最適化をピクセルご

との相違に着目して二段階に分けることで干渉位相画

像全体としての位相の連続性を実現する手法を提案し

た.実験の結果,提案手法は従来手法に比べて

SP

少ない干渉画像を生成し,他の手法と比較して真の高

度との誤差が少なく,高い

SN

比を示す

DEM

を取得

することが示された

[37]

本論文ではその内容の一部を紹介して基本的なアイデ

アを記すとともに,その意義を述べる.なお,本実験で

用いるデータは国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

(Japan Aerospace eXploration Agency: JAXA)

だいち

2

(Advanced Land Observing Satellite-2:

ALOS-2)

が取得したデータを用いている.

2.

偏波干渉合成開口レーダによる高度地

図作成の従来法

1

は典型的な

PolInSAR

観測の様子を示す模式

図である.数百

km

上空の人工衛星から電波を地表に

向けて照射し,その後方散乱の位相と振幅を観測する.

図 1 人工衛星から地表を PolInSAR 観測する様子を示 す模式図

合成開口によって高解像度を得る.通常,人工衛星の

真下ではなく少し脇を見る,いわゆるサイドルッキン

グの観測を行う.送信には地面に対して水平偏波と鉛

直偏波の電波を交互に用い,観測では両偏波成分を受

信する.

上記の衛星

ALOS-2

L

バンド(

1.2GHz

帯),軌

道高度

628km

の合成開口レーダである.これをフル

ポラリメトリモードで使用する場合,地上分解能は

使用周波数帯域幅

42MHz

6m

×3m

,地上観測幅は

40km

である.

図中,マスターの位置から観測したときの人工衛星

‐観測点間の距離

R

m

と,数百メートルずれたスレー

ブの位置からのそれ

R

s

を算出し,干渉の基線長

B

CT

その仰角

γ

CT

,電波の入射角

θ

などのパラメータを利

用することにより標高

H

を求めることができる.た

だし,ここで前述の位相特異点の問題が生じる.

PolInSAR

での

DEM

作成の従来手法の一つに

Tao

らによる手法がある

[29]

.本論文ではこの手法を

Tao

と呼ぶことにする.一般的な単偏波観測による

InSAR

のコヒーレンス

γ

は以下のように算出される.

γ

ij

=

|S

ijm

S

ijs

|



S

ijm

S

ij∗m

S

ijs

S

ij∗s



(1)

ここで,

(

·)

は複素共役,

· · · 

は平均値,

S

ijm

S

ijs

i, j = H

または

V

)はそれぞれ各偏波(

H

:水平偏

波,

V

:鉛直偏波)におけるマスターとスレーブ(

2

測点からの計測の

1

回目と

2

回目)の散乱係数である.

このコヒーレンスは,着目する偏波成分同士の位相

差の空間的なばらつきが少ないと,大きな値になる.

解像度が高い合成開口観測では,地形がおおむね連続

的に緩やかに変化していると考えてよい.そのため,

コヒーレンスが高いデータは擾乱に打ち勝って地表形

状をよく捉えているということができる.実際に,一

般にコヒーレンスを向上させると

SN

比の高い

DEM

が得られる.

Tao

法では,まずコヒーレンスを以下の

ように偏波を選択しながら算出する.

γ

Tao

= max(

γ

HH

, γ

HV

, γ

VV

)

(2)

θ ={θ

ij

ij

=

|S

ijm

S

ijs

|



S

ijm

S

ij∗m

S

ijs

S

ij∗s



;

i, j =H, V}

(3)

すなわち

Tao

法は,このコヒーレンスを最大とするよ

うに各地点において

S

HH

S

HV

S

VV

のいずれかを

(3)

選び総合的な干渉画像を作製する.

Tao

法 の 元 と なって い る 手 法 に

Cloude

Pap-athanassiou

が提案した手法

[27]

がある.本論文で

はこれを

Cloude

法と呼ぶことにする.

Cloude

法は

Tao

法に比べて

DEM

を生成した際には低い性能を示

す傾向があるものの,複素データの線形結合によって

任意の偏波状態を選択するという点でより柔軟な手法

であるといえる.以下に

Cloude

法の処理手順を示す.

モノスタティックなレーダでは

S

HV

=

S

VH

とする

ことができることからパウリの散乱ベクトルは次のよ

うになる.

k =

1

2

S

HH

+

S

VV

S

HH

− S

VV

2

S

HV

(4)

k

m

k

s

それぞれがマスターとスレーブにおけるパウ

リの散乱ベクトルを示すとき,以下のような

6

× 6

半正定なエルミート行列を定義することができる.

[

T

6

] =

k

m

k

s

k

∗T m

k

s∗T



=

[

T

mm

]

ms

]

ms

]

∗T

[

T

ss

]

(5)

ここで

(

·)

T

は転置行列を表し,

[

T

mm

]

[

T

ss

]

ms

]

は以下のように求められる

3

× 3

の複素行列である.

[

T

mm

] =

k

m

k

∗Tm



(6)

[

T

ss

] =

k

s

k

∗Ts



(7)

ms

] =

k

m

k

∗Ts



(8)

3

× 1

の任意の複素単位ベクトル

w

でパウリの散乱ベ

クトル

k

で重み付けすることで新しい複素データを得

ることができる.

μ

m

=

w

∗Tm

k

m

, μ

s

=

w

s∗T

k

s

(9)

この新しい複素データによって得られる干渉画像の位

相は以下のように求められる.

θ = arg{μ

m

μ

s

} = arg{w

∗Tm

ms

]

w

s

}

(10)

ここで,コヒーレンスとして次を得る.

γ

Cloude

=

|μ

m

μ

s

|



m

μ

m

μ

s

μ

s



=

|w

m

ms

]

w

s

|



w

m

[

T

mm

]

w

m

w

s

[

T

ss

]

w

s



(11)

一次結合の結果得られる散乱係数

(9)

が高いコヒーレ

ンスを示すように,すなわち

γ

Cloude

が最大となるよ

うに,

w

m

w

s

を最適化する.コヒーレンスを最大

化することは,マスター及びスレーブの位相差を局所

窓の中でより均一にすることを意味する.それは基本

的に地形が連続的に変化することと等価である.それ

は,急しゅんな崖がある場合には必ずしも現実と対応

しない可能性もある.しかし

SAR

は近年ますます高

解像度化しており,ピクセル間連続性は一層増してい

る.このため,コヒーレンスを増大することが実際の

地形に忠実な

DEM

を生成することにつながる.

ここで上記の最大化は,

3

× 3

行列の複素固有値問

題を解くことと等しい.

[

T

ss

]

−1

ms

]

∗T

[

T

mm

]

−1

ms

]

w

s

=

νw

s

(12)

[

T

mm

]

−1

ms

] [

T

ss

]

−1

ms

]

∗T

w

m

=

νw

m

(13)

これは複素ラグラジアンを最大化することで得られ

る.このようにして,各ピクセルにおける高いコヒー

レンスを示す偏波状態の組合せを選択していくのが

Cloude

法である.

また,

Tabb

らによって

[

T

mm

]

≈ [T

ss

]

と近似する手

[38]

も提案されている.そこでは次のように考える.

w ≡ w

m

=

w

s

(14)

このとき,コヒーレンスは簡単になる.

γ

Tabb

=

|w

ms

]

w|

|w

[

T ] w|

(15)

ここで,

[

T ] = ([T

mm

] + [

T

ss

])

/2

(16)

である.この近似による手法は

Cloude

法に比べて

SP

の少ない干渉画像を生成し高精度な

DEM

を生成する

傾向がある.

3.

提案の基本的な考え方とその意義

著者らはこれら

Cloude

法及び

Tabb

法が扱う状況

の物理的な意味を考察した

[37]

.空間的な統計量とし

てのコヒーレンスの計算には,有限の大きさの窓が必

要になる.しかし,散乱機構自身は散乱体ごとに決ま

るはずである.地表観測の際,散乱はいたるところで

生じているが,観測されるのはそれらのうち散乱波振

幅の大きい数波(十波程度以内)の重ね合わせである.

これがピクセル値になる.

このような数波程度の散乱波の扱いは,レーリー分

布やライス‐仲上分布などの単純な統計では扱うこと

(4)

ができないが,ガンマ分布,ワイブル分布,

K

分布,

対数正規分布等によってある程度,統計的扱いが可能

である.しかし状況に応じてこれらから分布を選ぶ必

要があり,またそれぞれは状況依存のパラメータを有

している.一方,近年の衛星

SAR

,航空機

SAR

はま

すます高解像度化しており,いわゆる持続性高輝度散

(persistent scatterer)

観測の場合に限らず,ピクセ

ル当りの有意な散乱体の数は減少する傾向にある.そ

う考えると,

1

ピクセルの位相値もこれを適切に扱え

ば,統計的な面を強調しなくとも,意味のあるものに

なる可能性がある.すなわち,散乱機構をピクセルご

とに指定することによっても,連続的な位相推定が可

能であり,したがって高度が決定できるはずである.

従来の

Cloude

法や

Tabb

法を実施してみると,隣

接ピクセルでの位相の連続性を実現せず,したがって

SP

の数はあまり減少しないという結果になる.これ

w

m

w

s

w

が実際にはピクセルごとに異なる

値をとっているのに,

(10)

(14)

では窓の範囲の中

で等しいものとして計算してしまってることに由来す

る.これら処理は従来の統計性に仮定をおき,散乱機

構も有限の大きさの窓の中で一定であるとしているた

めである.

なお,このような統計的扱いに起因する問題は

PolIn-SAR

観測に限ったことではなく,広く干渉を伴う通信

や計測に共通の問題である.例えば

SAR

における

2

次元的な

SP

の生成は,通信における

1

次元のフェー

ジングと全く同一の課題である

[39]

.上記の考え方は,

今後の電波通信にも広く適用可能である.

4.

提案する

2

手法

Cloude

法と

Tabb

法の問題点は,従来の統計的考

え方にしたがい,

(10)

(14)

w

m

w

s

w

が計

算の窓の範囲内において等しい値として算出している

ことにある.むしろ実際にはピクセルごとに異なるも

のであると考えるべきである.われわれは,この考え

方で問題を解決する.具体的には,

w

の最適化をピク

セルごとの相違に着目して二段階に分けることでこれ

を解決する手法を二つ提案する.その詳細や,最適化

の結果算出される変数の物理的な意味については,文

[37]

を参照いただきたい.

4. 1

PPO (Pixel-by-Pixel Optimization)

一つ目の手法である.本手法の処理は以下である.

1

) まず複素単位ベクトル

w

x,y

Tabb

法によ

り対象とするエリア全体で算出し,初期値とする.

2

) 次に全体を順次掃引するかたちで,下記のよ

うなコヒーレンスを示す式

γ

PPO

を最大化するように

3

× 3

の窓の中心のピクセルの複素単位ベクトル

w

X,Y

のみを更新していく.

γ

PPO

(

X, Y ) =







Y +



q2 y=Y −q2 X+



p2 x=X−p2



w

(

x, y) [Ω

ms

(

x, y)] w (x, y)















Y +



q2 y=Y −q2 X+



p2 x=X−p2



w

(

x, y) [T (x, y)] w (x, y)









(17)

ただし,

X

及び

Y

は着目する更新されるべきピク

セルの座標,

p

及び

q

は窓の横と縦のサイズ(ピクセ

ル数)からそれぞれ

1

を引いた数,

x

及び

y

は窓内

を掃引するときの座標である.これにより隣接ピクセ

ル間での位相の連続性が実現され,干渉画像全体とし

てのコヒーレンスが増大することを期待する.本論文

ではこの手法を

PPO (Pixel-by-Pixel Optimization)

と呼ぶ.

なお,ピクセルごとに

w

を更新することは,白色雑

音などのピクセルごとに異なる雑音に対する耐性を脆

弱にするものではない.なぜならば,ピクセル値の適

切さの評価は周辺ピクセルを含む窓で行っており,こ

の点においては従来法から変更はないためである.

4. 2

PPO-BD (Pixel-by-Pixel

Optimiza-tion considering Baseline Difference)

また,われわれは

(13)

の近似は従来法で結果的に

生じる位相の非連続性の問題によって出て来る非相関

を打ち消す作用ももつためにより精度の高い

DEM

生成している,と考えた.この非連続の問題が解決さ

れた本手法においては,マスターとスレーブからの入

射波の入射角の相異は考慮すべきであると考え(図

1

も参照),以下のような処理による手法も提案する.

1

) まずマスターとスレーブにおける複素単位ベ

クトル

w

mx,y

w

sx,y

の両方を

Tabb

法により対象

とするエリア全体において算出し,これを初期値とす

る.

(ここで,

w

mx,y

=

w

sx,y

=

w

x,y

2

) 次に全体を順次掃引するかたちで,

(18)

のよ

うなコヒーレンス

γ

PPO-BD

を最大化するように

3

× 3

の窓の中心のピクセルの複素単位ベクトル

w

mX,Y

w

sX,Y

のみを更新していく.

本論文ではこの手法を

PPO-BD (Pixel-by-Pixel

Op-timization considering Baseline Difference)

と呼ぶ.

(5)

γ

PPO-BD

(

X, Y ) =







Y +q/2



y=Y −q/2 X+p/2



x=X−p/2



w

m

(

x, y) [Ω

ms

(

x, y)] w

s

(

x, y)











Y +q/2



y=Y −q/2 X+p/2



x=X−p/2



w

m

(

x, y) [T

mm

(

x, y)] w

m

(

x, y)



w

s

(

x, y) [T

ss

(

x, y)] w

s

(

x, y)



(18)

5.

実験と結果例

本章では,

PPO

PPO-BD

の性能を調べるため,

HH-HH

HV-HV

VV-VV

のそれぞれの単偏波処理

の場合と,

Tao

法,

Cloude

法,

Tabb

法の三つの従来

法と比較する.表

1

は,本実験で使用した

ALOS-2

図 2 (a)単偏波 HH-HH の干渉画像,(b) 単偏波 HV-HV の干渉画像,(c) 単偏波 VV-VV の干渉画像,(d) Tao 法による干 渉画像,(e) Cloude 法による干渉画像,(f) Tabb 法による干渉画像,(g) 提案した PPO による干渉画像,(h) 提案した PPO-BDによる干渉画像,また (i) 国土地理院のデータより作成した DEM をラップした参照干渉画像(正解と考える)[37]

表 1 使用した干渉ペアのデータの諸元 [37] Observation date Oct. 12, 2014 Oct. 12, 2014

Oct. 26, 2014 Aug. 28, 2016

Bandwidth 42MHz 42MHz

Perpendicular Baseline 159m 150m Height ambiguity 288m 310m Incidence angle 31 deg. 31 deg.

(6)

得の愛鷹山の山頂付近のデータの諸元を示す.画像サ

イズは

400

×400

ピクセルである.また,コヒーレン

スを計算する際の窓はいずれの手法においても

3

× 3

ピクセルの窓を用いた.

2

は,

(a)

単偏波

HH-HH

の干渉画像,

(b)

単偏

HV-HV

の干渉画像,

(c)

単偏波

VV-VV

の干渉画

像,

(d) Tao

法による干渉画像,

(e) Cloude

法による

干渉画像,

(f) Tabb

法による干渉画像,

(g) PPO

よる干渉画像,

(h) PPO-BD

による干渉画像,そして

(i)

国土地理院のデータより作成した

DEM

をラップ

した参照干渉画像(正解)を示す.

図 4 (a)単偏波 HH-HH による DEM,(b) 偏波 HV-HV による DEM,(c) 偏波 VV-VV による DEM,(d) Tao 法による DEM,(e) Cloude 法による DEM,(f) Tabb 法による DEM,(g) PPO による DEM,(h) PPO-BD,(i) 国土地理院に よる標高データ [37].

(7)

また,これらの位相画像のコヒーレンスのヒストグ

ラムをまとめたものを図

3

に示す.このグラフにより

Cloude

法等で問題になっていた位相の非連続性によ

る全体のコヒーレンス低下の問題が提案手法では解決

されていることが分かる.

提案法の有効性を評価するために,実際に

DEM

を作成し国土地理院のデータを用いて作成した真の

DEM

と比較した.ここで,位相画像のアンラッピン

グには最小コストフロー法を用いた

[4]

.図

4

にそれ

ぞれ

(a) HH-HH

による

DEM

(b) HV-HV

による

DEM

(c) VV-VV

による

DEM

(d) Tao

法による

DEM

(e) Cloude

法による

DEM

(f) Tabb

法によ

DEM

(g) PPO

による

DEM

(h) PPO-BD

(i)

国土地理院のデータよる

DEM

を示す.

更に,これらの

DEM

を以下のような式で表される

信号の

SN

(MSNR)

とピーク信号の

SN

(PSNR)

によって評価した.

MSNR

≡ 10 log

10

SHR

MSE

(19)

PSNR

≡ 10 log

10

SHR

PSE

(20)

MSE

は平均

2

乗誤差を示し,

PSE

はピークの

2

乗誤

差,

SHR

は真の

DEM

によって得られる高さ値域の

2

乗を示し,それぞれ以下のように定義される.

MSE

1

XY

X



x=1 Y



y=1



h

t

(

x, y) − h(x, y)



(21)

PSE

≡ max

x,y



h

t

(

x, y) − h(x, y)



2

(22)

SHR



max

x,y

[

h

t

(

x, y)] − min

x,y

[

h

t

(

x, y)]



2

(23)

ここで,

h

t

(

x, y)

は位置

(

x, y)

における真の地形の高

さであり,

h(x, y)

は生成されたそれぞれの

DEM

位置

(

x, y)

における高さである.

2

にこれらの結果をまとめた.

PPO

PPO-BD

の二つの提案法は

MSNR

PSNR

どちらにおいても全

ての従来法より高い性能を示した.

PPO

PPO-BD

においては

PPO-BD

の方が少し高い性能が示された.

この実験データの地域には急しゅんな地形やなだらか

な地形が入り混じっているため本提案手法はあらゆる

地域において高い性能を示すことが期待される.なお

本手法は,熱雑音等に対しても強いものになっている.

最適化はピクセル値ごとに行うものの,その評価は空

間的に窓を取って行うためである.その強さは図

2(g)

表 2 平均 2 乗誤差 MSE,ピークエラー 2 乗誤差 PSE とそれらに対する SN 比である MSNR 及び PSNR [37]

Method # of SP MSE MSNR PSE PSNR ×102[m2] [dB] ×104[m2] [dB] HH-HH 28,111 46.0 18.8 15.1 3.67 HV-HV 28,673 46.5 18.8 15.3 3.60 VV-VV 27,633 47.6 18.1 15.5 3.53 Tao 16,829 33.9 20.2 19.6 2.52 Cloude 24,236 42.8 19.2 21.5 2.12 Tabb 17,116 30.7 20.6 12.0 4.65 PPO 46 8.2 26.3 8.2 6.30 PPO-BD 2 6.9 27.1 3.0 10.65

及び

(h)

の滑らかさに現れている.

6.

考察:散乱点密度と観測解像度

位相と偏波は密接に関係している.直交する二つの

偏波,例えば

H–V

偏波の,相対的位相変化が偏波の

変化である.またその空間的な揺らぎの小ささを位相

の観点から見れば(位相の)コヒーレンスであり,こ

れを偏波の観点から見れば偏波度・偏光度

(degree of

polarization: DoP)

である.散乱機構ベクトルは,ピ

クセルごとの最適化を行う偏波重みづけの係数であり,

ピクセルごとに異なる.上記実験はそれを示している.

3.

に統計的性質と合わせて述べたように,本来的には

散乱点ごとに散乱係数(位相変化,偏波変化)は異な

るはずであり,衛星

SAR

や航空機

SAR

の解像度が

一層向上するにつれますます重要な論点になる.

またこれも

3.

に述べたように,

SP

は通信において

は干渉による振幅減衰と位相変動(フェージング)そ

のものである.これを広く解決する基本手法も著者ら

はこれまでに提案している

[39]

.ここで説明した

SP

解決手法は,偏波情報も含めてその精度を高めるため

にも有効である.

7.

む す び

本論文は,

PolInSAR

においてピクセルごとの相違

に着目して散乱機構ベクトル

w

を最適化することで

干渉位相画像の位相特異点を解消し高い

SN

比の高度

地図を実現する手法を説明した.本来,散乱点ごとに

散乱機構は異なり散乱係数(位相変化,偏波変化)も

異なるはずである.それらからの散乱波情報をいかに

組み合わせて真の距離及び偏波情報を得るか.それは

今後,衛星

SAR

や航空機

SAR

の解像度がますます

向上するにつれ,一層重要な問題になる.それはまた,

イメージングだけでなく広く通信・計測における電波

(8)

伝搬物理の課題でもあることも指摘した.

謝辞 本研究の一部は,日本学術振興会

JSPS

KAK-ENHI Grant Number 15H02756

18H04105

及 び

KDDI Foundation

の援助により行われた.

ALOS-2

データは

JAXA 4th ALOS Research Announcement

Principal Investigator (PI) No. 1154 (AH)

JAXA

から提供された.

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廣瀬

明 (正員:シニア会員)

1987東大・大学院工学系研究科電子工 学専攻博士課程中途退学,同年東大・先端 科学技術研究センター光デバイス分野・助 手.同・新領域創成科学研究科基盤情報学 専攻などを経て,2007 同・大学院工学系 研究科電気系工学専攻・教授.ワイヤレス エレクトロニクス,ニューラルネットワークなどの研究に従事. 工博.本会エレクトロニクスソサイエティ(エレソ)賞などを 受賞.日本神経回路学会会長 (2013–2014),アジア太平洋神経 回路学会初代会長 (2016),本会ニューロコンピューティング研 専委員長 (2009–2010),英文論文誌 (C) 編集長 (2011–2012), エレソ副会長(編集出版担当)(2013–2015) などを歴任.現在, 本会電磁界理論研専委員長 (2017–2019).IEEE フェロー.

島田 智大

2015東大・工学部電子情報工学科卒, 2017同大・院工学系電気系修了.修士(工 学).位相アンラッピング,干渉合成開口 レーダなどを含む研究に従事.

(10)

夏秋

嶺 (正員)

2014東大・大学院工学系研究科電気系 工学専攻博士課程修了.博士(工学).同 年(国研)宇宙航空研究開発機構・宇宙航 空プロジェクト研究員.2017 東大・大学院 工学系研究科電気系工学専攻・講師.電磁 波センシング・イメージングの基礎と,陸 域観測技術衛星だいち 2 号 (ALOS-2) 等の合成開口レーダの 解析や社会利用に関する研究に従事.

表 1 使用した干渉ペアのデータの諸元 [37]
図 3 各手法で得られた干渉画像のコヒーレンスのヒストグラム [37]

参照

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