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<論説>「革新」首長・90年代「非自民」首長と地方議会--イデオロギー観の違いがもたらすもの

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Academic year: 2021

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(1)「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. 「革 新 」 首 長 ・90年 代. 「 非 自民 」 首 長 と. 地 方議 会 イ デ オ ロ ギ ー 観 の 違 い が も た ら す も の*. 辻. 陽. は じめ に 第1章. 分 析 枠組 み. 1.従. 属変数. 2.独. 立変数. (1)「 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 (2)官 僚 出身 知 事 と政 治 家 出身 知 事 3.事. 例選 択. 4.仮. 説. 第2章. 分析. L概. 観. 2.各. 県 政 の模 様. (D長. 野 県 政(「 革 新 」・官 僚 出 身,第1期4年). (2)畑 県 政(「 革 新 」・政 治 家 出 身,全5期20年) (3)浅 野 県 政(90年. 代 「非 自民 」・官 僚 出 身,第1期. (4)北. 代 「非 自民 」・政 治 家 出身,第1期4年). 3.仮. 川 県 政(90年. ・第2期). 説の検証. お わ りに. は じめ に. かつ て 日本 に お け る地 方 政 治 研 究 の数 は寡 少 だ っ た。 特 に,ル ー テ ィ ン と して の政 治 過 程 に注 目 した分 析 が 少 なか っ た こ と を筆 者 は指 摘 し,都 道 *本 稿 は,日 本 公 共 政 策 学 会2007年 度 研 究 大 会 に お い て報 告 した 原 稿 を 加 筆 ・修 正 した もの で あ る。 コ メ ン トを 下 さ った 曽 我 謙 悟 先 生 に 感 謝 申 し上 げ る。 一63一.

(2) 近畿 大学法学. 第55巻第3号. 府 県 レベ ル に お け る地 方 議 会 に焦 点 を 当 て て幾 つ か の 分 析 を行 って き たω。 そ の 中 で,知 事 一 議 会 関係 につ い て,知 事 及 び議 会 が 有 す る制 度 上 の 権 限(「 制 度 的 権 力 」)と 知 事 の議 会 に お け る党 派 的 支 持 調 達 状 況(知 事 与 党 率 の 高 低=「 党 派 的 権 力 」)に 着 目 し,こ れ ら二 つ の 「権 力」 関 係 が,従 属 変 数 で あ る知 事 提 出議 案 の議 決 結 果 や 内 容 に影 響 を 及 ぼ して い るか 否 か を分 析 した。 そ の結 果,た. しか に制 度 上 の 権 限 関 係 か ら見 る と議 会 は 知 事. に対 して守 勢 に立 た され て い る もの の,そ れ 以 上 に,知 事 の 議 会 にお け る 党 派 的 支 持 の調 達 状 況 が,知 事 提 出議 案 の 成 否 に影 響 を 及 ぼ して い る こ と を明 らか に した。 す な わ ち,た とえ 制 度 的 な 権 限 が 強 くて も,議 会 に お い て 知 事 に対 す る反 対 派(野 党)の 勢 力 が 強 けれ ば,知 事 の 政 策 ア ジ ェ ンダ の 実 行 が 阻 止 され る傾 向 に あ る こ とを,確 認 した の で あ る。 しか しな が ら,こ の と き行 った 分 析 は,地 理 的 に も時 期 的 に も限 定 され た 「ス ナ ップ シ ョ ッ ト」 的 な もの で あ った(2)。筆 者 と して も,こ の とき の 分 析 だ けで 日本 にお け る知 事 一 議 会 関 係 が 明 らか に で き た とは考 え て い な い 。 そ こで,対 象 自治 体 及 び 時 期 を1947年 以 降2003年 ま で の47都 道 府 県 に 広 げ(沖 縄 県 は1972年 以 降),基. 本 的 に は 同様 の 分 析 を,よ. り精 緻 化 して. 行 お う と して い る と こ ろで あ る。. (1)拙. 稿 「日本 の 地 方 制 度 にお け る首 長 と議 会 との 関 係 につ い て の一 考 察 」(『法. 学 論 叢 』 第151巻 第6号,第152巻. 第2号,2002年)や. 同 「 地 方 議 会 の党 派 構. 成 ・党 派 連 合 」(『近 畿 大 学 法 学 』 第54巻 第2号,2006年),同 民 」(同 第54巻 第3号,2006年)を. 「地 方 議 会 と住. 参 照 の こ と。 な お,最 近 に な って よ う や く地. 方 議 会 に 注 目 した 研 究 が増 加 して き て い る。 例 と して,曽 我 謙 悟 ・待 鳥 聡 史 「革 新 自治 体 の 終 焉 と政 策 変 化 」(『年 報 行 政 研 究 』 第36号,2001年)や. 同 「無 党 派. 知 事 下 の地 方政 府 に お け る政 策 選 択 」(『年 報 政 治 学 』2005年 度 版 第2巻,2006 年),砂 原 庸 介 「 地 方 政 府 の政 策 選 択 」(『年 報 行 政 研 究 』第41号,2006年)な. ど. が そ の例 で あ る。 (2)当. 時 行 った 分 析 の 対 象 自治 体 及 び時 期 は,1971年. か ら1999年 まで の 大 阪 府 及. び1995年 か ら1999年 ま で の 滋 賀 県 ・京 都 府 ・兵 庫 県 ・奈 良 県 ・和 歌 山県 で あ っ た。 一64一.

(3) 「革 新 」 首 長 ・90年 代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. さて 本 稿 で は,こ の 研 究 成 果 の 一 部 を 公 表 す る こ と とす る。 す な わ ち, 1970年 代 を 中心 に 見 られ た 「革 新 」 自治 体 と1990年 代 の 「非 自民 」 知 事(3> とを 比 較 し,両 者 の 対 議 会 関 係 に 違 い は あ るの か,す な わ ち知 事 提 出 議 案 の 議 決 状 況 に違 い が 見 られ るの か,見. られ た な らば どの よ うな違 い だ った. の か を 明 らか に した い。 筆 者 が 考 え る と こ ろ で は,「 革 新 」 知 事 と 「非 自民 」 知 事 とで は決 定 的 に 異 な る と ころ が あ る。 そ れ は,政 治 観. 言 い換 え れ ば イ デ オ ロギ ー観 の. 違 い で あ る。 「革 新 」 知 事 は,社 会(民 主)主 義 的 イ デ オ ロ ギ ー に 強 い共 感 も し くは一 定 程度 の理 解 を示 して お り,特 に 「保 守 」 が 多数 を 占 め る議 会 とは対 立 す る考 え を持 って い た で あ ろ う。 しか し,90年 代 以 降 に見 られ た 「非 自民 」 知 事 は,(管 見 の 限 りで は あ る が)少 な く と も 「革 新 」 的 イ デ オ ロ ギ ー を持 つ とは表 明 して い な い。 場 合 に よ っ て は,か つ て 自民 党 に 所 属 して い た知 事 も存 在 す る。 つ ま り,た とえ 議 会 に 占 め る知 事 与 党 率 が 低 くて も,90年 代 「非 自民 」 知 事 の場 合 に は,「 保 守 」 系 議 会(も. し くは. 「保 守 」・「革 新 」 の 枠 で は 捉 え られ な い 議 会ω)と の 親 和 性 を持 って い るの で は な い だ ろ うか 。 とす る な ら ば,70年 代 頃 を 中心 に見 られ た 「革 新 」 知 事 よ りは,90年 代 以 降 に見 られ た 「非 自民 」 知 事 の と きの 方 が,知 事 一 議 会 関 係 は 円滑 だ っ たの で はな いか,と 考 え られ るの で あ る。 以 下 で は,こ の 問 い につ いて,主. に叙 述 的 手 法 を 用 い な が ら実 証 す る こ と と した い。. (3)一 般 に 言 わ れ る と こ ろの 「無 党 派 」 知 事 や 「改 革 派 」 知 事 が こ れ に含 ま れ る が,い ず れ も定 義 が 曖 昧 で あ り,操 作 化 も難 しい た め,こ. こで は 「 非 自民 」 知. 事 に 分 析 対 象 を 絞 った。 定 義 に つ い て は,後 に譲 る。 (4)1996年. に 成 立 した 民 主 党 の 系 列 に属 す る会 派 や 当該 府 県 に しか 存在 しな い 会. 派 は,一 概 に 「保 守」 と も 「革新 」 と も捉 え られ な い。 一65一.

(4) 近畿大学法学. 第1章. 第55巻第3号. 分析枠組み. 本 稿 の 問 い と は,「 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 とで は,対 議 会 関 係 に違 い が 見 られ るの か,そ れ と も見 られ な い の か。 見 られ た とす れ ば どの よ うな 違 い か,で あ る。 「革 新 」 知 事 も90年 代 「非 自民 」 知 事 も,い ず れ も時 代 の 寵 児 と して 颯 爽 と現 れ 新 風 を 吹 き込 ん だ。 多 くの場 合,自 民 党 の推 薦 を得 た現 職 も し く は 現 職 後 継 候 補 に挑 み,多 数 の 有 権 者 の 支 持 を 得 て 当 選 して き た の で あ る。 しか しな が ら,(都 市 部 を 中 心 と した)一 部 の 自治 体 を 除 い て,議 会 の 過 半 数 は 自民 党 な どの知 事 野 党 が握 って い た。 す な わ ち,た と え有 権 者 の 支持 は 得 て い た と して も,新 知 事 は議 会 に お い て は 四面 楚 歌 と い う状 況 に 立 た され て い た の で あ る。 実 際 に 筆者 は,大 阪府 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 の分 析 結 果 に よ って, 知 事 与 党率 が 低 か った知 事 が な か な か 自 らの望 む政 策 ア ジ ェ ンダ を遂 行 で き な か った こ とを 明 らか に して い る。 革 新 系 の黒 田了 一 府 政 に お いて は, 自民 党 が議 会 過 半 数 を 占 め て い な か っ た もの の,知 事 与 党 率 が5割 を 大 き く下 回 る状 況 で あ った た め,黒 田知 事 は た び た び知 事 提 出議 案 を 否 決 され る な ど,実 際 に府 政 執 行 が 困難 な状 況 に追 い込 まれ て い た し⑤,ま た,無 党 派 の横 山 ノ ッ ク府 政 に お い て も同様 に知 事 与 党 率 が 非 常 に低 か った た あ, 知 事 提 出議 案 の 否決 や修 正 可 決 が 確 認 され て い る(6)。 こ の よ う に,「 革 新 」 知 事 も90年 代 「非 自民 」 知 事 も,い ず れ も知 事 与 党 率 が低 い議 会 を相 手 に 回 さ な けれ ば な らな か った と い う点 で 共 通 して い (5)前 掲 拙 稿 「日本 の地 方 制 度 に お け る首 長 と議 会 と の 関 係 に つ い て の 一考 察 」 (二 ・完),『 法 学 論 叢 』 第152巻 第2号,112∼119頁 (6)同 上,121∼124頁. 。. 。 知 事 の 応 援 団 的 立 場 を 自称 した 会 派 「改革 お お さ か 」 を. 与 党 と して算 入 して も,議 会 に 占め る知 事 与 党 率 は5%に 一66一. も満 た な か った。.

(5) 「革新 」首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. る。 筆 者 が 行 った か つ て の 研 究結 果 か ら敷 術 す る と,お そ ら く結 論 は,い ず れ の 知 事 に と って も,政 策 ア ジ ェ ンダ の執 行 を議 会 の知 事 野 党 勢 力 に妨 げ られ る,と い う こ と にな るだ ろ う。 しか しな が ら,先 に述 べ た よ う に, 「革 新」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 とで は,大 き く性 質 が異 な る。 つ ま り,そ れ ぞ れ が拠 って立 つ イ デ オ ロギ ー観 あ る い は政 治 的 立 場 に大 きな 違 い が あ るの で あ る。 筆 者 は,こ の違 い に よ って知 事 提 出議 案 の 議 決 状 況 に お い て も大 きな違 い が生 ま れ る と予 測 す る。 こ の点 につ いて,以 下 で 詳 細 な検 討 を行 い た い。. 1.従. 属変数. 知 事 は,地 方 自治 体 に お け る行 政 の 長 で あ る と同 時 に,選 挙 に よ って 選 ば れ る政 治 家 で も あ る。 「再 選 」・「昇 進 」・「政 策 」 追 求 が政 治 家 の 目的 で あ る とす る な らば,知 事 もや は り 「再 選 」 も し くは 「政 策 」 を 追 求 す る と 考 え る こ とが で き る で あ ろ う(7)。さ ら に言 う と,知 事 は,国 会 議 員 とは異 な り,「 政 策 」 の立 案 ・実 行 を 執 政 部 側 に 求 め る とい う よ りは,自. らが率. 先 して行 うこ とが で き る立 場 に あ る。 議 会 に議 案 を 提 出 す る こ と もで き る し,行 政 府 の 長 と して 政 策 を 執 行 す る役 目 も負 う。 言 い換 え れ ば,知 事 は, 次 回知 事 選 挙 に お け る 「再 選 」 を 目指 して,「 政 策 」 を 立 案 し実 施 で き る 立 場 に あ る ので あ る。 それ ゆえ,知 事 に と って は,選 挙 の 時 に 有 権者 に約 束 した 「公約 」 を, 速 や か に議 会 の 同意 を 得 て 執 行 す る こ とが,そ の 目的 に適 う こ とに な る。 もち ろん,「 公 約」 以 外 に も,自 らが実 行 した い 「政 策 」 もあ る だ ろ う。 い ず れ にせ よ,知 事 に と って,こ れ ら 自 らが掲 げ た政 策 ア ジ ェ ンダ を予 定 し (7)知 事 は 地 方 自治 体 に お け る行 政 の長 で あ る た め,当 該 自治 体 に お い て そ れ以 上 の 「昇 進 」 は求 め る こ とが で き な い。 た だ,衆 議 院 議 員 も し くは参 議 院 議 員 に 転 じ る とい う 「昇 進 」例 は 過 去 に 幾 度 も見 られ る(逆 もま た存 在 す る)。 この 点 を どの よ う に考 え るか は,今 後 の検 討 課 題 と した い。 一67一.

(6) 近畿大学法学. 第55巻第3号. た時 間 通 りに実 行 に こ ぎ着 け る こ とが,「再 選 」を 望 む政 治 家 と して の手 段 とな り,か つ 「政 策 」 を 望 む 政 治 家 か つ 行 政 の長 と して の 目的 と もな る の で あ る。 そ こで,知 事 の 目的 達 成 度 を 調 べ るた め に,本 稿 で は知 事 提 出議 案 の議 決 状 況 を 用 い る。 議 会 は 条 例 案 を 提 出 して議 決 す る こ とが で き る もの の, 予 算 案 を 提 出 す る こ とが で き な い。 地 方 自治 法 上,予 算 案 の提 出 は首 長 の 専 権 事 項 とな って い るた め で あ る。 ま た,知 事 は条 例 案 を は じめ様 々 な議 案 を 提 出 す る こ とが で き る し,実 際 に,議 会 に提 出 さ れ た議 案 の うち圧 倒 的 多 数 は 知 事 提 出 議 案 で あ る。 そ れ ゆ え,知 事 提 出議 案 が速 や か に可 決 さ れ た か,そ れ と も否 決 され た か を見 る こ とは,知 事 の ア ジ ェ ンダ が ど の程 度 実 行 に 移 され た か を 測 る 尺度 と して,適 当 で あ る と筆 者 は考 え る。 た だ,言. うま で もな く,こ の手 法 に は,知 事 提 出議 案 に ま で至 らなか っ. た 議 案 を 扱 え な い とい う問 題 点 が あ る⑧。 しか しな が ら,も. し,知 事 提 出. 議 案 が 否 決 され た り議 会 に よ る修 正 が な さ れ た り,あ る い は次 回議 会 開 会 時 ま で の継 続 審査 と され た な らば,水 面 下 で議 案 提 出 の断 念 を余 儀 な くさ れ た場 合 に 比 べ て も,知 事 の遂 行 した い政 策 ア ジ ェ ンダ の実 行 が 阻 止 され た こ とを 強 く意 味 す る こ と とな る。 と 同時 に,有 権 者 に対 して 「政 策 を 実 行 で き な い知 事 」 の イ メ ー ジを抱 かせ,当 該 知 事 が 次 の 選 挙 で 「再 選 」 で き る か に も影 響 を及 ぼす か も しれ な い。 こ の よ う に考 え る と,表 に現 れ た もの と して の知 事 提 出議 案 の議 決 状 況 を見 る だ けで も,知 事 が ア ジ ェ ン ダ を実 行 で き た程 度(す. (8)こ. な わ ち 「政 策 」 の達 成 度)を 窺 い知 る こ とが で き る. の点 は,増 山幹 高 の い う 「 観 察 主 義 の 陥 穽」 に通 ず る部 分 で もあ る。 す な. わ ち,筆 者 が採 る分 析 手 法 は,観 察 可能 な 限 られ た事 象 の み に 着 目 し,政 治 化 され な か った事 例 を分 析 の視 野 に入 れ て い な い の で あ る(増 山 幹 高 『議 会 制 度 と 日本 政 治 』(木 鐸 社,2003年)を. 参 照)。 た と え ば,議 会 の 同意 を得 られ る 見. 通 しが 立 た な い た め に,副 知 事 選 任 議 案 が い つ ま で経 って も議 会 に提 出 され な い(知 事 提 出議 案 と な らな い)と い う もの が 考 え られ る。 一68一.

(7) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. し,知 事 の 「再 選 」 目的達 成 の可 否 に大 き な影 響 を 及 ぼ す と筆 者 は考 え た いo も っ と も,知 事 野 党 が 多 数 派 を 占 め る議 会 で あ って も,知 事 が 政 策 ア ジ ェ ンダ で掲 げ た もの と 同 じよ うな 「政 策 」 の 実 現 を 望 ん で い るな らば, 知 事 提 出議 案 の 否 決 や 議 会 に よ る修 正 と い った 事 態 は 見 ら れ な い で あ ろ う。 こ の場 合,議 会 に よ る可 決 を 経 て 粛 々 と 自 らの政 策 ア ジ ェ ンダ を実 行 に移 す こ とが,知 事 に と って は 都 合 の よ い こ とに な る。 逆 に,議 会 の多 数 派 を 知 事 野 党 が 占め,ま た 議 会 多数 派 が実 現 を望 む 「政 策 」 と知 事 が執 行 した い 「政 策 」 とが違 え ば,知 事 提 出議 案 の否 決 や修 正 が生 じる こ とに な る。 言 い換 え る と,否 決 され た り修 正 され た知 事 提 出議 案 を見 れ ば,知 事 と議 会 との 間 で,ど の よ うな 「政 策 」 的 方 向性 の 違 いが あ ったか を 確 認 す る こ とが で き るの で あ る。 そ こで,知 事 提 出議 案 に修 正 や 否 決 が あ った 場 合,そ. の議 案 が どん な政 策 課 題 に関 す る もの で あ った か,そ. して どの よ う. な点 で対 立 して い た のか を記 述 す る こ と と した い 。 そ れ に よ って,「 革 新 」 知 事 及 び90年 代 「非 自民 」 知 事 の それ ぞ れ が,議 会 の 意 向 に反 して で も実 行 した い と考 え て い た 「政 策 」 ア ジ ェ ンダを 明 らか に で き る と考 え るか ら で あ る。. 2.独. 立変数. (1)「 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 本 稿 の 目的 は,「 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 に つ い て,知 事 一 議 会 関 係 を 比 較 す る こ とに あ る。 い ず れ の知 事 も,自 民 党 の公 認 も し くは 推 薦 を 受 け て い な い とい う点 で共 通 点 を持 つ もの の,そ の拠 って立 つ イ デ オ ロギ ー 観 は,両 者 に お い て相 当違 うよ うに思 わ れ る。 以 下 で,そ の 内容 を 簡 単 に述 べ た い。 社 会 党推 薦 の知 事 は戦 後 ま もな くの時 期 に も幾 つ か の県 で登 場 して い た 一69一.

(8) 近畿大学法学. 第55巻第3号. が,「 革 新 」 知 事 と して 知 られ 一 躍 脚 光 を 浴 び た の が,1967年4月. の統一. 地 方 選 挙 で勝 利 した美 濃 部 亮 吉 で あ る。 社 会 党 と共 産 党 は,生 活環 境 の 改 善 や物 価 の安 定,中 小 零 細 企 業 の 保 護 な どを政 策協 定 と して結 ん で美 濃 部 を支 持 し,美 濃 部 自身 も社 会 保 障 の 充 実 を 訴 え て 選 挙 に 出 馬 し,自 民 党 と 民 社 党 が 推 薦 した 候 補 や 公 明 党 の推 薦 した候 補 を 破 って 当選 した(9)。 本稿 で は,こ の美 濃 部 知 事 の登 場 以 降,社 会 党 か 共 産 党 か少 な くと も どち らか 一 方 の支 持 や推 薦 を得 ,自 民 党 の 支 持 や 推 薦 を 得 ず に 当 選 した知 事 の こ と を,「 革 新 」 知 事 と呼 ぶ。 一 般 に ,「 革 新 」 自治 体 の 登 場 に よ り,工 業 開 発 優 先 か ら環 境 ・福 祉 優 先 へ と 自治 体 の 政 策 原 理 が 転 換 さ れ た,と. され る⑩。 す な わ ち,そ れ ま で. 「保 守 」 系 首 長 と 「保 守 」 系 議 会 とが 一・ 体 とな って 推 し進 め て きた 産 業 開 発 優 先 の 政 策 に ス ト ップが か け られ,環 境 保 全,福 祉 の確 立,「 自治 」 の 確 立 が 革 新 自治 体 に よ りな さ れ た の で あ るaD。そ れ ゆ え,「 革 新 」 知 事 と 「保 守 」 系 議 会 とは,お 互 い に 目指 す 「政 策 」 の方 向 性 が大 き く異 な る と 考 え られ る。 他 方,1990年. 代 以 降 に相 次 いで 登 場 した 「非 自民 」 知 事 は,自 民 党 の推. 薦 を受 け て い な い と は いえ,そ れ まで の 「革 新 」 系知 事 とは性 格 を異 に し て い た。 まず,少 な くと も 自身 を 「革新 」 とは述 べ な か った。 一 期 目の選 挙 で社 会 党 の 推 薦 を受 け て 当 選 した 橋 本 大 二 郎 で す ら,「私 の 政 治 姿 勢 に つ いて で ご ざ い ます が,私. は,一 貫 して保 守 系 で あ る との立 場 を 明確 に し. て お ります 。」 と述 べ て い る ほ どで あ る⑫。 よ って,た とえ対 峙す る相 手 が (9)美 濃 部 達 吉 知 事 初 当選 につ いて は,神 谷 紀 一 郎 「「首 都 決 戦 」 の系 譜 」(村 松 岐 夫 編 『東 京 の 政 治 』,1995年)な ⑩. どが詳 しい。. 佐 藤 俊 一 『戦 後 日本 の地 域政 治 』(敬 文 堂,1997年),187頁. aD宮 本 憲 一 『日本 の 地 方 自治 ∼159頁 。 ⑫1991年12月. 。. そ の 歴 史 と未 来』(自 治 体 研 究 社,2005年),157. の 高 知 県 議 会 定 例 会 で の 発 言(『 第218回 高 知 県 議 会 定 例 会 会 議. 録 』,23頁)。 一70一.

(9) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. 「保 守 」 系 議 会 で あ った と して も,知 事 と議 会 と の 間 に は さ ほ ど大 き な 政 策 的対 立 は存 在 しな い の で は な いか,と 考 え られ る。 も っと も,こ れ ら新 た に 出て き た 「無 党 派 」 な い し 「非 自民」 知 事 は, 自民 党 推 薦 知 事 候 補 を破 って 知 事 職 に就 いた 者 で あ り,な にが しか の政 策 対 立 は あ っ た と思 わ れ る。 この 点 につ い て,曽 我 謙 悟 ・待 鳥聡 史 は,1990 年 代 の 地 方 政 治 にお いて 長 期 不 況 下 で 財政 状 況 が悪 化 す る一 方,1980年. 代. 末 に地 方 債 起 債 要 件 の 緩 和 が 為 され た結 果,地 方 政 府 に,歳 出規 模 の拡 大 か 長 期 的 な 財 政 の 健 全性 か を選 択 す る余 地 が生 ま れ た とい う。 そ れ ゆ え, 彼 らの 注 目す る と こ ろの 「無 党 派 知 事 」 が,政 府 規 模 の縮 小 を公 約 と して 掲 げ て 登 場 す る こ と も可 能 にな った,と 彼 らは述 べ る⑬。 とす るな らばや は り,1990年 代 に見 られ る 「無 党 派 知 事 」 と議 会(自 民 党)と の 対 立 は, 「革 新 」知 事 時代 に あ った よ うな,公 共 工 事 と産 業 開 発 か,そ れ と も環 境 ・ 福 祉 政 策 か,と い った二 項 対 立 で は な いの で はな いか,と 考 え る こ とが で き よ う。 そ こ で本 稿 で は,議 会 過 半 数 も し くは第 一 党 を 占め る 自民 党 の 支 持 を 得 ず に,む. しろ 自民 党 推 薦 候 補 を 打 ち破 って 当 選 した 知 事 を90年 代 「非 自. 民 」 知 事 と定 義 し,こ れ を 本 稿 が 分 析 対 象 とす る も う一 つ の 知事 の タ イ プ と した い。 筆 者 が 考 え る と こ ろで は,彼. ら 「非 自民」 知 事 は,1980年. 代以 降によ く. 見 られ る よ う にな った い わ ゆ る 「保 革 相 乗 り」 知 事(推 薦 政 党 に 自民 党 や 中 道 政 党,場 合 に よ って は 社 会 党 ま で を含 ん だ知 事)に 対 す る ア ンチ テ ー ゼ と して登 場 した もの の,そ れ は,「 革 新 」 知 事 が 登 場 した背 景 と は状 況 を 異 に して い る。 す な わ ち,「保 革 相 乗 り」の一 般 化 や1993年 以 降 の政 界 再 編 に よ って,「 保 守 」 と 「革 新 」 と の境 界 が 曖 昧 とな り,い わ ゆ るイ デ オ ⑬. 曽我 ・待 鳥前 掲 論 文(2001年),同 近 刊)。 一71一. 『日本 の地 方 政 治 』(名 古 屋 大 学 出版 会,.

(10) 近 畿大 学法 学. 第55巻第3号. ロギ ー 観 の特 定 が難 し くな った1990年 代 に お い て は,議 会 に お い て もや は り保 革 の 区 分 が 難 し くな るω。 そ の よ う な状 況 に お い て,「 非 自民 」 知 事 は,「 保 守 」 と 「革 新 」 とは 異 な る軸 を 持 ち込 み,そ れ を 実 践 に 移 そ う と した。 そ の 新 しい 対 立 軸 とは,曽 我 ・待 鳥 が 論 じた よ う に,「 非 自民 」 知 事 が言 い 出 した長 期 的財 政 安 定 の維 持 か,そ れ と も歳 出規 模 の拡 大(あ い は少 な く と も現 状 維 持)か. る. で あ った のか も しれ な い。 地 方 議 員 は,個 々. 人 と して は,福 祉 政 策 も し くは開 発 政 策 の推 進 な ど,歳 出規 模 の 拡 大 を 目 指 す け れ ど も,財 政 悪 化 が もた らす マ イ ナ ス面,究 極 的 に は財 政 再 建 団 体 へ の転 落 に よ る歳 出 の 制 限 を恐 れ て,「 非 自民」 知 事 の い う 「長 期 的 財 政 の安 定 」 に必 ず し も逆 ら う こ とは で きな い だ ろ う。 とす る と,「 非 自民 」 知 事 と議 会 との 間 で は それ ほ ど 「政 策 」 面 に対 して 意 見 の 齪 齢 は見 られ な か った の で はな いか,と 予 測 で き るの で あ る。 そ こで,本 稿 で は,こ の よ うな 「革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 を 比 較 す る こ とで,こ. こ に述 べ た よ うな 予 測 が 成 り立 つ の か 否 か を 確 認 す る. こ と と した い。 (2)官 僚 出 身 知 事 と政 治 家 出 身 知 事 本 稿 で は,上 記 の 比 較 分 析 に付 け加 え て,知 事 の 過 去 の 経 歴 に も注 目 し て,知 事 一 議 会 関 係 を 分 析 す る こ と とす る。 つ ま り,知 事 が,政 治 家 出 身 か 官 僚 出 身 か に よ って,知 事一 議 会 関 係 に違 い が 見 られ るか 否 か を確 認 し た い。 な ぜ な らば,た. とえ ば,同. じ く 「革 新」 知事 で あ って も,実 務 経 験. を 持 つ 中央 官 僚 出 身 の 知事 で あ れ ば,ま. して や,自 民 党政 権 を相 手 に 仕事. を 行 って き た 官 僚 出身 の知 事 で あ れ ば,「政 策 」ア ジ ェ ンダ の速 や か な遂 行 の た め に は,「保 守 」的 な 議会 に 対 して あ る程 度 の妥 協 が必 要 だ との考 え を 持 つ で あ ろ う。 す な わ ち,行 政 の長 と して政 策 を よ どみ な く実 行 す る こ と を最 優 先 に す る と考 え られ る。 そ れ に対 して,政 治 家 出身 の 「革 新 」 知 事 a4脚. 注(4)を 参 照 。 一72一.

(11) 「革 新」 首 長 ・90年 代 「 非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. で あ れ ば,そ の 拠 って 立 つ イ デ オ ロギ ー観 に 従 って そ れ ま で 政 治 活 動 を 行 って きた と想 像 で き るた め,そ. う簡 単 に は 自身 の 立 場 を 変 え る ま い㈲。. そ れ ゆ え,官 僚 出身 の 「革 新 」 知 事 に比 べ て,政 治 家 出身 の 「革 新 」 知 事 の 方 が,「 保 守 」 な 議 会 と は対 立 しや す い の で は な い か,と 考 え られ る の で あ る。 同様 に,90年 代 「非 自民 」 知事 に つ い て も,官 僚 出身 の 「非 自民」 知 事 の方 が,政 治 家 出身 の 「非 自民 」 知 事 に比 べ て,野 党 が 多数 を 占 め る 議 会 に対 して妥 協 しやす く,政 策 決 定 の 円滑 化 を図 って い る ので は な い だ ろ うか。 そ こ で以 下 で は,官 僚 出身 の知 事 と政 治 家 出身 の 知 事 を比 べ る こ と に よ っ て,議 会 と の関 係 に お いて 違 いが 存 在 す るか 否 か を確 認 す る こ と とす る。 こ の よ う に本 稿 で は,官 僚 出身 の 「革 新 」 知 事,政 治 家 出身 の 「革 新 」 知 事,官 僚 出身 の90年 代 「非 自民 」 知 事,政 治 家 出 身 の90年 代 「非 自民 」 知 事 それ ぞ れ につ いて,知 事 一 議 会 関 係 を 分 析 し,こ れ ら四 者 の 知 事 一 議 会 関 係 に差 が 見 られ るの か,見. られ た とす れ ば どの よ うな 差 で あ るか を 明. らか にす る こ と と した い 。. 3.事. 例選択. 上 記 の 目的 を 達 す るた め,本 稿 で は,次 の 四 つ の 県政 を 比較 す る。 官 僚 出 身 の 「革 新 」 知 事 と して 岡 山県 の 長 野 士 郎 県 政(第 一 期 の みG6)),政治 家 出 身 の 「革 新 」 知 事 と して 埼 玉 県 の 畑 和 県政(全. 五 期),官. 僚 出身 の 「非. 自民 」 知事 と して 宮城 県 の 浅野 史郎 県政(第 一 期 ・第 二 期 ⑰),政 治 家 出身 ⑮. 学 者 出 身 の 知 事 も,政 治 家 出 身 の 知 事 同 様,イ デ オ ロギ ー観 等 々 に お いて 自 身 の立 場 に 固 執 し,議 会 に 対 して 容 易 に妥 協 しな い と考 え られ るが,本 稿 で は 直 接 の検 討 対 象 と しな い。 脚 注 勧 も参照 の こ と。. ㈲. 第 一 期 の み と した の は,第 二 期 か らは 長 野 士 郎 が 自民 党 の 推 薦 も受 けて 「革 新 」 知 事 で な くな った た め で あ る。. ⑰. 第 三 期 を外 した の は,筆 者 が2003年 ま で を 分 析 の 対 象 と して お り,第 三 期 す べ て に お け る知 事 一 議 会 関 係 につ い ての 資 料 を集 めて い な い ため で あ る。. 一73一.

(12) 近畿大学法学. 第55巻第3号. の 「非 自民 」 知 事 と して 三 重 県 の 北 川 正 恭 県 政 の 第 一 期⑱ を取 り上 げ る こ と と した いQ これ らの 知 事 は い ず れ も,知 事 野 党 が過 半 数 を 占 め た議 会 と向 き合 わ な けれ ば な らな か った 点 で 共 通 点 を 持 つ ⑲。 す な わ ち長 野 や 畑 と い っ た 「革 新 」 知 事 は,議 会 の 圧 倒 的 多数 を 占 め る 自民 党 と対 決 を しな け れ ば な らな か っ た。 他 方,「 非 自民 」 知 事 に つ い て は,三 重 県 で は 自民 党 が過 半 数 を 占め な か った もの の 対 立候 補 を支 援 した 自民 党 と社 会 党 系 会 派 で過 半 数 を 占め て い た し,宮 城 県 で は浅 野 当選 直 後 の時 点 で は対 立 候 補 を支 援 した 自 民 党 が過 半 数 を 占 め,や は り対 立 候 補 を応 援 した社 会 党 や民 社 党 系 会 派 を 加 え る と九 割 を超 え て い た⑫ ① 。 この よ うに,こ. こで選 択 した4事 例 は,本 稿 が 比 較 検 討 した い 「革 新 」. 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事,あ. る い は官 僚 出身 知 事 と政 治 家 出身 知 事,. そ れ ぞ れ の タ イ プ を代 表 す る事 例 で あ る と考 え られ る。 よ って,こ れ ら知 ⑱. 第 一 期 の み と した の は,第 二 期 選 挙 に お い て北 川正 恭 が 自民 党 の推 薦 も受 け た た めで あ る。. qg)1期. 目4年 の 長 野 県 政 に お け る 平 均 知 事 与 党 率 は33.6%,5期20年. に お け る平 均 知 事 与 党 率 は27.7%,浅 で11.6%,第2期. は0,1期. の畑県 政. 野 県 政 に お け る平 均 知 事 与 党 率 は第1期. 目4年 の北 川 県 政 に お け る平 均 知 事 与 党 率 は29。9%. と いず れ も5割 を切 って い た。 な お,知 事 与 党 率 の算 出 に は,曽 我 ・待 鳥 デ ー タ を一 部 修 正(北 川 県 政 第 一 期 に お け る会 派 「 県 政 会 」 を知 事 与 党 と して カ ウ ン ト)し て利 用 した。 デ ー タ の利 用 を快 諾 さ れ た 曽我 謙 悟 先 生,待. 鳥聡 史 先 生. に感 謝 した い。 ⑳. も っ と も,三 重 県 以 外 の県 で は,知 事 選 挙 と県 議 会 議 員 選 挙 の 時期 がず れ て いた と い う違 い が あ る。 選 挙 の タ イ ミ ング は,対 議 会 関 係 を考 え る際 に重 要 な ポ イ ン トで あ る が,北 川 正 恭 以 外 で は,政 治 家 出身 の 「 非 自民 」 知 事 は,青 島 幸 男 や 横 山 ノ ック,そ. して木 村 守 男 以 外 に見 当 た らな い。 青 島幸 男 と横 山 ノ ッ. ク は,い ず れ も都 議 会 議 員 選 挙 あ る い は府 議 会 議 員 選 挙 と 同 じタ イ ミ ング で 選 挙 され て い る こ と と,い ず れ も イ デ オ ロ ギ ー観 が 判 定 しに くい こ と か ら,分 析 の 対 象 と は しな か った 。 木 村 守 男 に つ い て は,「地 方 分 権 研 究 会 」に属 して い な いた め,一 般 に い う と こ ろの 「改 革 派 知 事 」 と して は捉 え られ て お らず,浅 野 史 郎 と比 較 す る に は釣 り合 いが とれ な い よ う に思 われ る の で,分 析 の対 象 か ら 外 した 。 一74一.

(13) 「革 新」 首長 ・90年 代 「非 自民」 首 長 と地 方 議 会. 事 の 県 政 にお け る知 事 提 出 議 案 の 議 決 結 果 や,否 決 ・修正 議 案 の詳 細 を叙 述 し,比 較 す る こ と と した い。 表1分. 析対 象とする県政. 「革 新」 知 事. 政 治家出身. 畑和(全5期). 官僚 出身. 長野士郎(第1期). 90年 代 「非 自民 」 知事. 北川正 恭(第1期) 浅野 史 郎(第1期. 4.仮. 説. で は,本. 稿 の 仮 説 を 整 理 し て お こ う。. 仮 説1「. ・第2期). 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 を 比 べ る と,「 革 新 」 知 事. 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 の方 が,90年 に お け る そ れ に 比 べ て,対. 代 「非 自民 」 知 事 県 政. 立 が 激 しい。. 同 じよ う に議 会 に 占め る知 事 与 党 率 が 低 くて も,「 革 新 」 知 事 の場 合, 「保 守 」 系 議 員 が 多 数 を 占 め る議 会 と は,実 施 しよ う とす る 「政 策」 に お い て大 き な違 い が あ る た め,両 者 に強 い対 立 が 生 じる こ とが 予 想 され る。 そ れ に対 して,90年 代 「非 自民 」 知 事 の 時 代 にお いて は,保 革 の 区 別 は 曖 昧化 して い る。 議 会 に は,自 民 党 な ど 「保 守 」 系議 員 や,「 保 守 」 か 「革 新 」 か わか らな い民 主 党 な ど新 党 所 属 議 員 な どが 存 在 す る一 方,知 事 の イ デ オ ロギ ー は,「 保 守 」 に近 い か少 な くと も 中立 で あ る。 そ れ ゆ え,知 事 と議 会 との 間 で,実 施 しよ う とす る 「政 策」 に 大 きな 方 向 の違 い は 見 出 し に くい。 ま して や,地 方 財 政 の 悪 化 とい う条 件 の下 で は,選 択 し う る 「政 策 」 幅 が 狭 ま る 中,議 員 に と って も歳 出 削 減 を 目指 す90年 代 「非 自民 」 知 事 の 方 針 に反 対 す る こ と は難 しい た め,知 事 一 議 会 間 の対 立 は小 さい もの と考 え られ る。 一75一.

(14) 近畿大学法学. 第55巻第3号. 仮 説2政. 治 家 出身 知 事 県 政 にお け る知 事 一 議 会 関 係 の 方 が,官 僚 出身. 知 事 県 政 に お け るそ れ に比 べ て,対 立 が 激 しい 。. 政 治 家 出 身 の 知 事 は,自 た め,政 治 家 と して,自. らの 政 治 的 信 念 に 基 づ く政 治 活 動 を 行 って き た. らの 拠 って 立 つ 信 念 に 基 づ い た政 策 の実 施 に こだ. わ る もの と考 え られ る。 そ れ に 対 して,官 僚 出身 の知 事 は,イ デ オ ロギ ー 的 に も中 立 に 手 堅 く行 政 実務 を 行 った 経験 を持 つ た め,野 党 が 多数 を 占 め る議 会 勢 力 と妥 協 して で も,速 や か な 行政 の実 施 を 重要 視 す る で あ ろ う。 そ れ ゆ え,政 治 家 出 身 の 知事 の方 が,官 僚 出身 の知 事 に比 べ て,議 会 とよ り対 立 しや す い だ ろ う。. 第2章. 1.概. 分. 析. 観. こ こで は ま ず,四 つ の県 政 に お け る知 事 提 出議 案 の否 決 及 び修 正 議 案 数 を概 観 して お く⑳。 ま ず,「 革 新 」 県 政 に つ い て み て み よ う。 官 僚 出身 知 事 で あ る長 野 県 政 の下 で は,1期. 目4年 間 の知 事 提 出議 案 は修 正 議 案 が1件. る。 他 方,政 治 家 出身 で あ る畑 和 県 政 の下 で は5期20年. あ った の み で あ. の間 に2件 の 否 決. 議 案 と10件 の修 正 議 案 が見 られ た。 90年 代 「非 自民 」 知 事 に 目を転 ず る と,厚 生 官 僚 か ら転 出 した 浅 野 史 郎 知 事 の最 初 の2期8年 た一 方,元. の県 政 で は1件 の 否 決 と3件 の 修 正 可 決 が 確 認 され. 自民 党 所 属 代 議 士 で も あ った 北 川 正 恭 県 政(1期. 目4年)に. お. いて は知 事 提 出議 案 の 否 決 や 修 正 可 決 は見 られ な か った 。 ⑳. な お,決 算 認 定 議 案 につ い て は,カ ウ ン トか ら外 した。 知 事 就 任 前 の 会 計 年 度 につ い て の 決 算 認 定 議 案 も含 まれ るた め で あ る。 一76一.

(15) 「革 新 」 首 長 。90年 代 「非 自民 」 首 長 と地方 議会. こ の よ う に見 て み る と,数 の 上 か らは,「 革 新 」 県 政 全 般 の方 が 「非 自 民 」 県 政 全 般 よ り も,知 事 一 議 会 関 係 が 対 立 的 だ った とは い い に くい。 た だ,少. な く と も,「 革 新 」 県 政 に つ いて,官 僚 出 身 知 事 県 政 に お け る知 事. 一 議 会 関 係 の 方 が ,政 治 家 出 身 知 事 県 政 に お け る そ れ よ り も,円 滑 で あ っ た と は思 わ れ る。 とは い え,知 事 提 出 議 案 の 否 決 ・修正 件 数 だ け で す べ て を判 断 す る の は 早 計 な の で,こ の 後 も う少 し詳 し く各 県政 で の事 例 を検 討 す る こ とで,上 記 の 仮 説 の 妥 当 性 を 判 断 した い。. 2。 各 県 政 の 模 様 (1)長 野 県政(「 革 新 」・官 僚 出身,第1期4年) 1972年10月 の 岡 山県 知事 選 で,前. 自治 省事 務 次 官 で,社 会 ・公 明 。民 社. 三 党 が推 薦 し,共 産 党 の支 持 を得 た長 野 士 郎 が,自 民 党 公 認 の現 職 候 補 を 破 って初 当選 した。 長 野 知 事 就 任 後 初 とな る 岡 山県 議 会 定 例 会 で は,対 立 現 職 候 補 を推 した 自民 党 県 議 が,知 事 自身 が 保 守 系 とみ え る こ と,そ して知 事 が 「革 新 知事 」 の 呼称 を 自 ら避 け て い る こ と を指 摘 した⑳。 それ に対 して知 事 は,「保 守 と か革 新 とか い うよ うな政 治 的立 場 を 中心 と した,そ の いず れ に も と らわ れ ず,党 派 を超 越 しイ デ オ ロ ギ ー を抜 き に して,何. よ り もまず 地 方 自治 そ の. もの を考 え た い。」㈱ と答 え て い る。 この よ うに,就 任 当初 か ら 「革 新 」 と はみ え な い とす ら言 わ れ た 長 野 県 政 に お い て,知 事 提 出議 案 の否 決 は見 られ な か った 。 修 正 可 決 され た議 案 は,昭 和48年 度 の期 末 手 当 の割 合 等 の 特 例 に関 す る条 例 案 で あ って,議 員 に 関 して期 末 手 当 の一 部 の繰 り上 げ支 給 を や め る と い う修 正 を 課 した もの ⑳. 『岡 山 県 議 会 史 』 第9編,825頁. ㈱. 同,826頁. 。. 。 一77一.

(16) 近畿大学法学. 第55巻第3号. で あ った。 つ ま り,こ れ は議 会 側 が 自主 的 に期 末 手 当 を返 上 した もの で あ り,知 事 と議 会 の 対 立 の結 果 修正 され た とい う もの で は な か った。 知 事 の 政 策 意 図 を 阻止 す る もの で は な か った とい え よ う。 も っ と も,昭 和50年6月. 定 例 会 で は,一 般 会 計 補 正 予 算 の う ち 中国 訪 問. の 「海 外 青 年 の船 」 事 業 費 を,「 議 会 の 空 気 が悪 い た め 」 と い う理 由 か ら 理 事 者 側 で 削 除 訂 正 して い るが ゆ,基 本 的 に は,自 民 党 は長 野 知 事 の 提 出 した議 案 に対 して反 対 す る姿 勢 を見 せ なか っ た。 そ の結 果,1976年. の再 出. 馬 に 際 して 自民 党 は,長 野 知 事 を他 の革 新 ・中道 諸 政 党 と と も に推 薦 した の で あ る。 こ の よ うに,長 野 県 政 第 一 期 の知 事 一 議 会 関 係 は,非 常 に穏 和 な もの で あ った と い うこ と が で き よ う。 (2)畑 県 政(「 革 新 」・政 治 家 出身,全5期20年) 元 社 会 党 県 議 で もあ り,当 時 社 会 党 所 属 衆 議 院 議 員 で あ った 畑 和 が埼 玉 県 知 事 選 挙 に 当選 した の は,1972年7月. の こ とだ った。 自民 党 が候 補 者 擁. 立 で混 乱 ・分 裂 して い るの を 尻 目 に,畑 は 社 会 党,民 社 党,共 産 党 の推 薦 を得 て 知 事 選 に立 候 補 し,自 民 党 が 擁 立 した 候補 を10万 票近 い 大差 で破 っ たの で あ る。 しか しな が ら,埼 玉 県 議 会 に 占め る 自民 党 の議 席 率 は圧 倒 的 だ った。 県 議 会 議 員74人 の う ち53人 が 自民 党 系 会派 に所 属 して い た の で あ る。 た しか に,選 挙 戦 で の 混 乱 を め ぐって 自民 党 が2つ の会 派 に分 裂 した こ とが知 事 に有 利 に働 いた こ と もあ る。 た とえ ば,昭 和48年6月 条 例 の 一 部 を 改 正 す る条 例(県 機 構 改革 案)が,一. 定 例 会 で は,県 設 置 方 の 自民 党 会 派 が反 対. した もの の も う一 方 の 自民 党会 派 が賛 成 した た め,可 決 成 立 して い る。 けれ ど も,昭 和48年2月. 定 例 会 で は,畑 知 事 が選 挙 時 に公 約 した知 事 の. ブ レー ン機 構(社 会経 済調 査 会)設 置 に か か る予 算 を一 般 予 算 案 に計 上 し ⑳. 『岡 山 県 議 会 史 』 第10編,104頁. 。 一78一.

(17) 「 革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. た こ とに,自 民 党 系2会 派 が反 発 して 削 除 を要 求 し,総 務 委 員 会 で,こ の 助 成 費 を 削 り都市 対 策 費 に 回 す と した 附帯 決 議 が 賛 成 多 数 で可 決 され て い る。 附帯 決 議 は本 会議 で も可 決 さ れ,少 な くと も6月 定 例 会 まで は社 会 経 済 調 査 会 に 助 成 金 を 出 せ な くな り,最 終 的 に昭 和49年1月. に県 議 会 企 画 財. 政 総 務 委 員 会 が この 予算 を認 め る ま で,県 費 補 助 が 出せ な くな っ たの で あ る㈱。 同様 に,1975年4月. の議 会 改 選 後 も自民 党 の優 位 が 動 か なか った 昭 和50. 年9月 定 例 会 で は,補 正 予 算 案 の うち,先 行 取 得 農 地 買 い戻 し資 金 利 子 補 給 及 び労 働 者 特 別 対 策 資 金 利 子 補 助 損 失 補 償 案 が 自民 党 の反 対 で 削 除 さ れ,補 正 予 算 案 が 修 正 可 決 さ れ て い る。 「県 執 行 部 が 「目玉 政 策」 と して 打 ち 出 した二 施 策,す. な わ ち農 地 買 い戻 し資 金 利 子 補 助 と労 働 者 特 別 対 策. 資金 利 子 補 助 損 失 補 償 が原 案 削除 に な っ た こ と は,事 実 上[知 事 提 出 議 案 が]否 決 さ れ た もの で あ」 っ た⑳。 この ほ か,畑 県 政 第 一・ 期 に お いて は,県 水 道 用 水 料 金 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 す る条 例 案,荒 川 左 岸 流 域 下 水 道 の 維 持 管 理 に要 す る経 費 の 関 係 八 市 の 負担 額 につ い て の一 部 変 更 案(下 水 道 負 担 金 引 き 上 げ案),県 税 条 例 の 一 部 を改 正 す る条 例,法 人 等 の県 民 税 の 特 例 に関 す る条 例 な どが 継 続 審 査 も し くは修 正 の憂 き 目 に あ って い る。 いず れ にせ よ,こ の時 期 の畑 知 事 と埼 玉 県 議 会 との 関 係 は,必 ず し も安 定 的 な もの と は い え なか っ たで あ ろ う。 特 に,労 働 者 特 別 対 策 資 金 利 子 補 助 損 失 補 償 案 が カ ッ トされ た例 は,知 事 の 「革 新 」 的 施 策 が 「保 守 」 が 多 数 を 占 め る議 会 に よ っ て阻 止 され た こ とを 象 徴 して い る よ う に思 わ れ る。 と こ ろ が,1976年. の畑 知 事 再 選 以 降 は,や や 知 事 一 議 会 関 係 が 安 定 して. き た よ うで あ る。1976年 及 び1980年 選 挙 で 自 民 党 が 候 補 者 を 擁 立 で き な ㈱. 『埼 玉 県 議 会 史 』 第13巻 本 文 編,236頁. 。. ㈱. 『埼 玉 県 議 会 史 』 第14巻 本 文 編,223頁. 。. 一79一.

(18) 近畿大学法学. 第55巻第3号. か った こ と が響 い て い る のか も しれ な い。 畑 県 政 第2期 及 び第3期(1976 年 か ら84年)に. お い て 否 決 も し くは 修 正 され た知 事 提 出 議 案 は 存 在 しな. い。 せ いぜ い知 事 提 出議 案 の 継 続 審 査 に と ど ま った 程 度 で あ る。 けれ ど も,議 案 審 議 の 状 況 を 見 て み る と,こ と はそ う単 純 で は な い よ う で あ る。 た とえ ば昭 和53年6月. 定 例 会 で は,教 職 員 の 主 任 手 当 の 支 給 に 関. す る条 例(学 校 職 員 の 給 与 に関 す る条 例 の 一 部 を 改 正 す る条 例)案 が,知 事 与 党 の 社 会 党,公 明 党,共 産 党 は反 対 した もの の,自 民 党,自 由 ク ラ ブ, 民 社 党 が 賛 成 して可 決 成 立 して い る。 つ ま り,自 民 党 な ど保 守 系 各 政 党 が,畑 知 事 に 「保 守 」 的 な 政 策 を知 事 提 出議 案 と して提 示 させ,そ れ を 可 決 して い るの で あ る。 ま た,昭 和58年9月. 定 例 会 に お い て も,畑 知 事 は,県 職 員 に対 す る調 整. 手 当 引 き 上 げ案 の 撤 回 を 余 儀 な くさ れ て い る。 そ の 経 緯 は 次 の 通 りで あ る。 議 会 開 会前,知 事 が 県人 事 委 員 会 の勧 告 を受 け て作 成 した県 職 員 に対 す る調 整 手 当 引 き上 げ案 に つ い て は,自 治 省 が難 色 を示 し,県 が指 導 に応 じな い場 合 は 「財 政 上 の制 裁 に よ る厳 正 な対 処 も辞 さ な い」 と表 明 して い た。 こ れ に対 して畑 知 事 は,「県 は 国 の下 部 機 関 で は な い し,地 方 の こ と は 地 方 に任 せ て ほ しい」 と反 発 し,当 初 の方 針 通 り,今 会 に調 整 手 当 引 き上 げ案 と補 正 予 算 案 を,埼 玉 県 議 会 定 例 会 に提 出 した。 それ に対 して,自 民 党 本 部 か ら 「調 整 手 当 引 き上 げ問 題 に慎 重 に対 処 す る よ う」 求 めた 文 書 が 自民 党 県 連 幹 事 長 に文 書 で 送 られ,自 治 相 も提 案 見 送 りを求 め る発 言 を し た た め,議 会 過 半 数 を 占 め る 自民 党 会 派 内 で は当 該 議 案 に対 して 「否 決 や む な し」 の態 度 で 固 ま っ た。 この よ うな 情 勢 か ら,畑 知 事 は,調 整 手 当 関 係 議 案 関係 議 案13件 の 撤 回 を 議 会 に 申 し入 れ,承 認 され た の で あ る⑳。 こ の よ う に,自 治 省 の 介 入 と い う予 期 せ ぬ事 態 が あ った とは い え,議 会 過半 ⑳. 以 上 の 経 緯 に つ い て,『埼 玉 県 議 会 史 』第16巻 本 文編188∼191頁 頁。 一80一. 及 び420∼421.

(19) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. 数 を 占 め る 自民 党会 派 の態 度 が,知 事 の求 め る政 策 の実 行 を阻 止 した こ と を考 え る と,や は り 「革 新 」 的知 事 と 「保 守 」 的 議 会,そ れ も 「保 守 」 的 中 央 政 府 の 意 向 を 強 く受 け た 議 会 との 関 係 は 円滑 で は な か った と い え よ う。 さて,自 民 党 が対 立 候 補 を擁 立 した1984年,1988年 た畑 県 政 第4期. ・第5期. な わ ち,昭 和62年2月. の 知 事 選 に も勝 利 し. に お い て も,特 筆 す べ き現 象 が 起 こ って い る。 す. 定 例 会 で は,知 事与 党 で あ り国政 野 党 で あ る社 会 党,. 公 明党,共 産 党 が反 対 した売 上 譲 与 税 を,畑 知 事 は新 年 度 予 算 案 に計 上 し て い る㈱。 平 成 元 年2月 定 例 会 で は,同. じ く知 事 与 党 で あ り国政 野 党 で あ. る社 会 党 な ど各 党 が大 反 対 した消 費 税 分 を新 年 度 予 算 案 に計 上 し,消 費 税 転 嫁 を定 め た関 係 条 例 な ど と と もに 自民 党 の 賛 成 多 数 に よ り可 決 させ た の で あ る。 これ らの事 例 も,「 革 新」 で あ る はず の知 事 が 「保 守 」 に飲 み 込 ま れ た様 子 を典 型 的 に現 した もの と いえ よ う。 ま た こ の時 期 に は,工 事 請 負 契 約 締 結 の 件1件 が 否 決 され,副 知 事 選 任 案 が 不 同意 と され て い る。 その 他,補 正 予 算 案 や 県 部 設 置 条 例 一 部 改 正 案 (機 構 改 革 案),県 有 施 設 の手 数 料 改 定 案 な どが 修 正 可 決 され た。 この よ う に,畑 県 政 末 期 に は,知 事 の 提 案 した 原 案 が す ん な り と可 決 され ず,知 事 と議 会 とが 対 立 した様 子 が あ らわ にな って い るの で あ る。 結 局 の と こ ろ,畑 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 は,大 い に対 立 的 で あ っ た と いえ る だ ろ う。 た とえ 「革 新 」 知 事 で あ って も,場 合 に よ って は イ デ オ ロ ギ ー的 な こ だわ りを 捨 て 去 り 「保 守」 的 政 策 を 提 案 す る こ とで よ うや く,議 事 を 円滑 に進 め る こ とが で きた の で あ る。 (3)浅 野 県 政(90年 ㈱. 代 「非 自民 」・官 僚 出身,第1期. ・第2期). 結 局,自 民 党 の 要 請 に よ り,議 長 が 「売 上 譲 与 税 関連 部 分 の執 行 を凍 結 す る こ とを 知 事 が 本 会 議 で 説 明,予 算 成 立 を期 す 」 と の斡 旋 案 を提 示 し,各 派 の 折 衝 の 結 果,「 売 上 譲 与 税 等 」 とす る こ と で合 意 を見 た(『 埼 玉 県 議 会 史』 第16巻 本 文 編,192∼193頁,1795∼1796頁)。 一81一.

(20) 近畿大学法学. 第55巻第3号. 浅 野 知 事 の登 場 は急 だ った。 前 知 事 が 県 発 注 の公 共 工 事 に絡 む収 賄 事 件 で逮 捕 さ れ て辞 職 した結 果 行 われ た1993年11月 の 出直 し知 事 選 で,厚 生 官 僚 だ っ た浅 野 史 郎 が 前 副 知 事 の候 補 を破 って 当選 したの で あ る。 この と き の知 事 選 の構 図 は,新 生 党,日 本 新 党,新 党 さ きが け と社 会 民 主 連 合 が 浅 野 を推 薦 した の に対 して,自 民 党,社 会 党,民 社 党 が 前 副 知 事 を 支 援 して い た。 選 挙 直 前 の1993年8月. 時 点 で,自 民 党 は宮 城 県 議 会 定 数62議 席 の う ち42. 議 席 と い う圧 倒 的 多 数 を 占め て い た こ と もあ り,知 事 一 議 会 間 の 対 立 が 激 し くな る こ とが 予 想 され た が,1994年. には 自民 党 県 議11人 が 会 派 か ら離 脱. して 過 半 数 の 座 か ら滑 り落 ちた。1995年 の 県 議 会議 員 改 選 後 にお い て も, 自民 党 県 議 の み で 議 会 過 半 数 を 占め る こ とが で きず,社 会 党 県議 と合 わ せ て 過 半 数 を 獲 る とい う状 況 で あ った。 た だ,実 際 には,知 事 選 挙 時 の 与 党 。野 党 とい う対 立 枠 組 み は あ ま り機 能 しな か った よ うで あ る。 自民 党 会派 は,知 事 提 出議 案 に反 対 しな か った ど こ ろか,平 成8年2月. の第263回 定 例 会 で は,全 議 案 に対 す る賛 成 討 論 を. 行 っ た ほ どで あ る。 浅 野 県 政 第一 期 に お い て は,平 成9年2月. の 第267回. 定 例 会 で 唯一 「特 別職 の職 員 の給 与 並 び に旅 費 及 び費 用 弁 償 に 関す る条 例 を一・ 部 改正 す る条 例 」 案 が修 正 可 決 され た(一 部 特 別 職 につ い て施 行 日を 修 正 した)だ け で あ り,知 事 一 議 会 関係 は た いへ ん良 好 だ った の で あ る。 そ の後,1997年10月. の知 事 選 挙 で は,浅 野 はす べ て の政 党 推 薦 を辞 退 し. た。 自民 党 や新 進 党 は対 立 候 補 の参 議 院 議 員 を推 薦 した が,県 議 会 内第 二 会 派 の新 進 県 民 クラ ブ は,会 派 と して は所 属 議 員 の選 挙 活 動 を拘 束 しな い こ とを 申 し合 わ せ て い た し㈱,一 部 の県 議 は 公 然 と浅 野 を支 援 したOΦ 。必. ⑳. 「河 北 新 報 」,1997.8.20付. ㈹. 同,1997.11.10付. 朝 刊。. 朝 刊 。 浅 野 を 支 援 し た5県. 脱 した 。. 一82一. 議 は,新. 進 県 民 ク ラ ブ会 派 を 離.

(21) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. ず し も浅 野 に対 して対 立 的 な ス タ ンス を と って いた わ けで はな か った の で あ る。 こ の よ うに,従 来 の知 事 与 党 ・知 事 野 党 と い う枠 組 み が わ か り に く くな る な か,浅 野 県 政 第 二 期 に お いて 知 事 提 出議 案 が 修 正 され た の は,平 成10 年2月. の 第271回 定 例 会 に お け る一 般 会 計 補 正 予 算 案 と,平 成10年11月 の. 第275回 定 例 会 に お け る敬 老 祝 金 等 支 給 条 例 を 廃 止 す る条 例 案 の2案. だけ. で あ っ た。 前 者 は,国 際 ゆめ 交 流 博 覧 会 の 欠 損額 を補 填 す るた め の経 費 を 減 額 す る修 正 が 施 され た もの で あ る。 この とき,修 正 案 に賛 成 した の は, 「保 守 」 の 自民 党 と 「革 新」 の 共 産 党 な どで あ っ た。 こ の 例 は,知 事 一 議 会 間 の 対 立 が 「保 守 」 と 「革 新」 とい った枠 組 み で は捉 え られ な い こ とを 意 味 す る。 後 者 につ い て も,施 行 期 日を延 期 す る修 正 で あ って,大 き な対 立 が 知 事 と議 会 との 間 で 見 られ た とは思 わ れ な い。 とに か く,知 事 と議 会 との 間 で,多 少 の対 立 は あ った とは い え,少 な く と もイ デ オ ロ ギ ー観 の違 い に 基 づ く対立 は 見 られ な か った とい って よ い だ ろ う。 と こ ろで,浅 野 県政 の 目玉 は,な ん とい って も情 報 公 開 条 例 で あ っ た。 浅 野 知 事 は,平 成12年9月. の 第284回 定 例 会 に情 報 公 開 条 例 案 を提 出 した. が,情 報 公 開条 例 改 正 案 審 査 特 別 委 員 会 で 修 正 案 が 提 出 ・可 決 され,本 会 議 で も同修 正 案 が可 決 され た。 これ に対 して 知 事 は再 議 権 を 行 使 し,修 正 案 の否 決,原 案 の可 決 を求 め たが,修 正 案,原 案 と もに可 決 に必 要 な 賛 成 を得 られず,廃 案 に な る とい う結 果 に終 わ った の で あ る。 この情 報 公 開 条 例 案 を め ぐって は,議 会 内 にお い て,修 正 案 を 提 出 した 自民 党 系 会 派 と,原 案 に賛 成 した共 産 党 や 社 民 党 との 間 で,強. い対 立 が. あ った。 しか し,も と を た どれ ば,自 民 党 系 会 派 が 原 案 に反 対 した の も, 条 例 案 の 内容 が 不 満 の 残 る もの で あ った こ と も さ る こ とな が ら,執 行 部 内 に お いて 意 見 の 対 立 が あ る ま ま知 事 が 情 報 公 開 条 例 案 を 議 会 に 提 出 した こ と を快 く思 って いな か った た め で もあ る。 す な わ ち,自 民 党 系 会 派 は,情 一83一.

(22) 近畿大学法学. 第55巻第3号. 報 公 開 条 例 の 不 開 示 規定 に つ い て,不 開 示 を認 め な い とす る原 則 を 徹 底 し よ う とす る知 事 側 と,不 開示 とす る か否 か につ いて 実 施 機 関 の 第 一 次 判 断 権 を主 張 す る警 察 側 の 間 で意 見 の相 違 が 残 っ た ま ま,知 事 が 議 会 に議 案 を 提 出 した こ とを 問題 に した の で あ る。 た とえ ば,自 民 県 議 は次 の よ う に発 言 して い る。 「残 念 な が ら提 案 の か た ち は,内 閣 で いえ ば閣 内 不 統 一,上 場 企 業 で い え ば取 締 役 会 で の意 見 対 立 の ま ま株 主 総 会 に臨 む よ うな もの で, 地 方 自治 に お け る執 行 部 の統 一 性 の あ り方 と して い か が な もの か,そ の正 当性 に疑 念 を抱 き ます 。」 とeD。 こ の よ う な状 況 で 知 事 提 出議 案 の 情 報 公 開 条 例案 が 否 決 され た の で あ る か ら,知 事 と議 会 との 間 に対 立 はあ った とは い え,そ れ は イ デ オ ロギ ー 的 な対 立 で あ っ た と は言 い難 い。 また,情 報 公 開 条例 を定 め る こ とに つ い て は,議 会 に お いて も同 意 が 得 られ て い る。 そ して,現 に そ の次 の定 例 会, す な わ ち 同 年6月. の第285回 定 例 会 で,知 事 側 と警 察 本 部 側 が お 互 い に歩. み 寄 って 提 出 され た 情 報 公 開 条 例 案 が,原 案 可 決 され て い る の で あ る。 この よ う に見 て くる と,官 僚 出身 で90年 代 「非 自民 」 知 事 だ った浅 野 県 政 下 にお け る知 事一 議 会 関係 は,情 報 公 開条 例 案 を め ぐる や り と り以 外 は 基 本 的 に平 穏 で あ った し,対 立 が あ った と して もそ れ は政 策 内 容 や 「保 革」 イデ オ ロギ ー 的 な違 い に 基 づ く もの で は な か った,と ま とめ る こ とが で き よ う。 (4)北. 川 県政(90年. 1995年4月. 代 「非 自民 」・政 治 家 出 身,第1期4年). の 統 一 地 方 選 挙 で,元 自民 党 県 連 会 長 で あ りな が ら,そ の 後. 新 進 党 に転 身 し,新 進 党,新 党 さ き が け,公 明 党 の推 薦 を得 て 三 重 県 知 事 選 挙 に立 候 補 した前 衆 議 院議 員 北 川 正 恭 は,自 民 党,社 会 党 の 推 薦 を 受 け た前 副 知 事 だ った候 補 を破 って知 事 に初 当選 した。 同 時 に行 わ れ た 県 議 会 議 員 選 挙 で,自 民 党 は 議 会 過 半 数 を 占め られ な ⑳. 『第 二 百 八 十 四 回宮 城 県 議 会 会 議 録 』,14頁 。 一84一.

(23) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. か った もの の,社 会 党 所 属 議 員 らで結 成 した 県 民 連 合 と合 わ せ る と,知 事 野 党 議 席 率 は5割 を大 き く超 え た。 他 方,新 進 党 や 公 明 党 所 属 議 員 は 県 政 会 を結 成 し,彼 らが知 事 与 党 と して の 立 場 を 担 った 。 とは い え,知 事 と議 会 との 間 で 政 策 的 な 対 立 は な か った よ うで あ る。 平 成9年6月. の第2回 定 例 会 で 提 出 され た 人 権 が 尊 重 され る三 重 を つ くる条. 例 案 も,平 成10年1月. の 県 部 制 条 例 案 や 県 行政 機 関設 置 条例 案 も,い ず れ. も原 案 可 決 され た 。34年 ぶ りの マ イ ナ ス 予算 とな った平 成10年 度 一 般 会 計 予 算 案 も,大 きな 反 対 もな く可 決 され た の で あ る。 議 会 に よ る 目立 っ た反 対 行 動 とい え ば,会 計 決 算 の 不認 定 と,共 産 党 に よ る知 事 提 出議 案 へ の反 対 討 論 ぐらい で あ った。 この よ うに,北 川 県政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 は,ご. くご く平 穏 な もの. で あ っ た。 「政 策 」 的 対 立 は全 く と言 って い い ほ ど見 られ な か った。 む し ろ,自 民 党 が 北 川 を推 薦 した第 二 期 に な っ てか らの 方 が,知 事 提 出議 案 の 否 決事 例 や修 正 事 例 が見 られ る よ う に な っ た ぐら いな の で あ る。 この こ と は す な わ ち,過 去 の研 究 で筆 者 が 主 張 して きた,知 事 与 党 率 の 高 さ と知 事 提 出議 案 の可 決 率 の相 関 を否 定 す る もの で あ る。 いず れ にせ よ,こ の 北 川 県 政 が,知 事 与 党 あ る い は知 事 野 党 と い った 枠 組 み が 見 え な くな って きた こ と を現 す 一 事 例 で あ る こ と は,否 定 で きな い事 実 で あ ろ う。. 3.仮. 説の検証. それ で は,上 記 の 叙 述 を も と に,仮 説 の妥 当性 を検 討 して み よ う。 本 稿 が 提 示 した 仮 説 は次 の 通 りで あ った。. 仮 説1「. 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 を 比 べ る と,「 革 新 」 知 事. 県 政 にお け る知事 一 議 会 関係 の方 が,90年 代 「非 自民 」 知 事 県 政 に お け る そ れ に 比 べ て,対. 立 が激 しい。. 一85一.

(24) 近 畿大学法 学 仮説2政. 第55巻第3号 治 家 出身 知 事 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 の方 が,官 僚 出. 身 知 事 県政 に お け る そ れ に比 べ て,対 立 が 激 しい。. 90年 代 「非 自 民」 の 浅 野 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 が や や 対 立 的 で あ った こ と,「革 新」長 野 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 が 平 穏 で あ った こ と を考 え る と,仮 説1の 妥 当性 が 疑 わ れ る と こ ろで は あ る。 む しろ,(仮 説2 と関係 す る と ころ だ が)イ デオ ロギ ー 的 に政 策 に こだ わ った 場 合 に は,「革 新 」 知 事 は議 会 と対 立 しやす い とま と め る こ とが で き る。 な お この 点 は, 筆 者 が既 に検 討 を行 った大 阪 の黒 田了 一 革 新 府 政 で も確 認 され て い る こ と で あ るen。よ って,仮 説1は 修正 され,「 イ デ オ ロギ ー 的 固執 性 の強 い 「革 新 」 知 事 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 の 方 が,90年. 代 「非 自民 」 知 事 県 政. に お け る そ れ に比 べ て,対 立 が 激 しい」 と い う こ と にな ろ うか 。 他 方 仮 説2に. 目を 転 ず る と,「 革 新 」 県 政 の 比 較 に お い て は,こ の仮 説. は強 く支 持 され る。 官 僚 出身 の 長 野 「革 新 」 県 政 で は 知 事 一 議 会 間 の 対 立 が ほ とん どなか った の に対 して,政 治 家 出 身 の 「革 新 」 畑 県 政 に お い て 知 事 一 議 会 関 係 が,見 事 に保 革 対 立 の 様 相 を 呈 して い た こ とが 明 らか に な っ て い るか らで あ る。 しか し,90年 代 「非 自民 」 県 政 に つ い て は,官 僚 出 身 の浅 野 県 政 に お け る知 事 一 議 会 関 係 の 方 が,政 治 家 出 身 の 北 川 県 政 に お け る それ よ り も対 立 的 で あ る よ う に見 受 け られ る。 とは い え,こ の 仮 説 を 否 定 す る ほ どの 大 きな 差 と はな って い な い よ うに 思 わ れ る。結 局 の と ころ, 政 治 家 「革 新 」 知 事 にお け る知 事 一 議 会 関 係 に お け る対 立 の 強 さが 突 出 し て い た とす べ き か も しれ な い。 よ って,仮 説2は,「. 革 新 」 県 政 につ い て. の み 支 持 され る,と 結 論 づ け られ るで あ ろ う。 結 論 を ま とめ るな らば,政 治 家 出 身 の 「革 新 」 知 事 県政 に お け る知 事 一 働. 脚 注(5)に同 じ。 な お,黒. 田は 政 治 家 出身 で はな く,学 界 出身 で あ っ た が,東. 京 都 の 美 濃 部 亮 吉 と同 様 に,イ デ オ ロギ ー 的 な 固執 性 は 強 か った。 一86一.

(25) 「革 新 」 首 長 ・90年代 「非 自民 」 首 長 と地 方 議 会. 議 会 関 係 が,他 の3種 の知 事 一 議 会 関 係 と比 較 して,際. だ って 対 立 的 だ っ. た と い う こ と がで き よ う。 それ はす な わ ち,知 事 と議 会 との 問 で イデ オ ロ ギ ー的 な対 立 が 存 在 したか らで あ る,と い う こ とが で き る。 逆 に い う と, 2種 の90年 代 「非 自民 」 知 事 あ る い は官 僚 出 身 の 「革 新 」 知 事 と議 会 との 問 に は イ デオ ロギ ー的 対 立 が な か った か ら こそ,両 者 の 関 係 は円 滑 で あ っ た と結 論 付 け る こ とが で き るの で あ る。. 表2知. 事の種別と対議会 関係. 「革新」 知事. 90年 代 「非 自民 」 知 事. 対立 的. 非対立的. 政治 家出身 官僚 出身. 非対立的1非. 対立的. お わ り に. 2000年4月. の地 方 分 権 一 括 法 施 行 以 来,以 前 に も増 して知 事 に注 目が集. ま る よ うに な った。 変 革 期 に あ る 自治 体 に お い て,知 事 と議 会 との関 係 は ど うあ るべ き か,あ る い は議 会 そ の ものが ど うあ るべ き か もま た,少. しず. つ 議 論 に な り始 め て い る よ うに思 われ る。 本 稿 で は,そ の流 れ に樟 さ し,今 注 目を浴 び て い る い わ ゆ る 「改 革 派 」 知 事 に注 目 し,本 稿 で は90年 代 の 「非 自民 」 知 事 県 政 下 に お け る知 事 一 議 会 関係 に 焦 点 を 当 て,「 革 新 」 知 事 県 政 にお け るそ れ と比 較 した 。 す な わ ち,本 稿 で は,「 革 新 」 知 事 と90年 代 「非 自民 」 知 事 とで は,対 議 会 関 係 に違 いが 見 られ る のか,そ れ と も見 られ な いの か 。 見 られ た とす れ ば どの よ うな 違 いか,と. い う問 いを 立 て,そ れ に対 して 一 定 の 答 え を 示 した 。 す. な わ ち,「 革 新 」 知 事,そ 議 会 関 係 が,90年. れ も政 治 家 出 身 の 「革 新 」 知 事 県 政 に お け る対. 代 「非 自民 」 知 事 県 政 にお け るそ れ よ り もず っ と対 立 的 一87一.

(26) 近畿大学法学. 第55巻第3号. で あ り,そ の 対 立 を 招 来 した政 策 とは イ デ オ ロギ ー 的 な対 立 を反 映 した も の で あ った,と 論 じた。 逆 に い う と,90年 代 「非 自民 」 知 事 県 政 に お い て は,議 会 との 対 立 は 小 さ く,あ った と して もそ れ は 「保 守 」 一 「革 新 」 を め ぐる対立 で は な か った。 以 上 の こ とを,筆 者 は本 稿 で 明 らか に したつ も りで あ る。 も っ と も,本 稿 で提 示 した結 論 は,網 羅 的 研 究 の結 果 得 られ た もの で は な く,暫 定 的 な もので あ る。 と は いえ,(紙 幅 の関 係 上 本 稿 で は議 論 を 展 開 す る こ とが で き な か っ た が)筆 者 が これ ま で 資 料 調 査 して き た 結 果 か ら は,こ. こで 述 べ た 結 論 が 他 の事 例 に もほ ぼ 当 て は ま る と筆 者 は 考 え て い. る㈱。 1980年 代 の 保 革 「相 乗 り」 知 事 の 登 場 後,知. 事 は,「 保 守 」 的 政 策 も. 「革 新」 的 政 策 も取 り込 む よ うに な った 。 そ して,バ ブ ル 崩 壊 後 多 くの 自 治 体 が 財 政 状 況 の悪 化 に苦 しむ 中,首 長 に 残 され た選 択 肢 は,「 保 守 」 的 政 策 を採 るか 「革 新 」 的 政 策 を 採 るか の 二者 択一 で は な くな った よ うで あ る。 ひ ょっ とす る と,地 方 政 治 を め ぐる対立 軸 が,曽 我 謙 悟 ・待 鳥聡 史 の い う,自 治 体 財 政 規 模 の 維 持 か,長 期 的 財政 の安 定 性 か とい う軸 に変 化 し つ つ あ るの か も しれ な い。 あ るい は,そ. もそ も政 策 対 立 軸 自体 が存 在 しな. くな った の か も しれ な い。 い ず れ に せ よ,知 事 選 択 あ るい は政 策 選 択 に お け る対 立 軸 と して 「保守 」 一 「革 新 」 とい う もの が認 識 され に く くな りつ っ あ る現 在,知 事 候補 者 間 も し くは政 党 間 で,政 策 的 な差 を有 権 者 に わか りや す い か た ちで提 示 す る こ とが難 し くな って き て い る こ とは,否 定 で き な い事 実 で あ ろ う。. ㈱. この 研 究 成 果 は,い ず れ ま と ま った 形 で 公 表 す る予 定 で あ る。 一88一.

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