視覚障害児童生徒の歩行指導におけ る教員の連携
-
歩行訓練士 と歩行訓練補助員の連携一
Teacher cooperation about orientation and mobility training
for students who are visually impaired
芝 田 裕
-
*
出 井 博 之**
正 井 隆 晶***
山 田 秀 代****
SHIBATA Hirokazu IDEI Hiroyuki
MASAI Takaaki
YAM ADA Hideyo
中 野 純 子***** 千 葉 康 彦****** 桝 岡 良 啓******* 井 上 芳 子*******
NAKAN0 Junko
CHIBA Yasuhiko
M ASUOKA Yoshihiro
INOUE Yoshiko
わが国へ体系化 さ れた視覚障害児 ・ 者の歩行訓練 (歩行指導) がアメ リ カから導入 さ れたのは1965年 (昭和40) であ る が、 視覚障害教育におけ る歩行指導におい ては諸問題が山積 し てい る。 中で も 最重要課題は歩行訓練士 (歩行指導の専門 教員) によ っ て歩行指導が行 な われる必要があ る と い う こ と であ る。 本研究では、 よ り 多 く の児童生徒のニ ーズに応え、 その歩行能力向上のためこ れま で試みら れるこ と のなか っ た非専門教員が歩行指導の一部 を担い、 歩行訓練士 と 連携す る と い う 理念 を基軸 と し てい る。 そ の理念 を顕在化 さ せ る ために、 平成23年度か ら平成25年度にわた っ て上記の連携のあ り 方 を検討 し、 そ れに基づいて 6 校の視覚特別支援学校 (盲学校等 を含む) によ っ て実践的研究が実施 さ れ、 あり 方が錬成 さ れた。 こ こ では視覚特別支援学校におけ る歩行指導において、 歩行訓練士と 歩行訓練補助員 (特別な研修 を修了 し た教 員) の連携について歩行訓練補助員養成に関す る必要な研修の内容 と方法、 実際の連携の進め方 を含む総合的 なあり 方 を 実践例 を含めて明 ら かにす る。 なお、 歩行訓練補助員が担当す るのは、 ①基礎的能力 の指導 (基礎的能力獲得への働 き かけ等) 、 ②手引 き によ る歩行の指導、 ③補助具 を使用 し ない歩行の指導 (屋内歩行) 、 ④ フ アミ リ アリ ゼー シ ヨ ンの実施 であり 、 白杖によ る歩行指導は担当 し ない。 ま た、 歩行訓練補助員養成研修会は、 ①研修会 1 : 歩行訓練の基本事項、 ② 研修会 2 : 歩行訓練の実際、 ③研修会 3 : 障害に関す る基礎知識の 3 部構成であ る。 キーワ ー ド : 歩行指導、 視覚障害児童生徒、 教員連携、 特別支援教育
Key words : orientation and mobility training, students who are visually impaired, teacher cooperation, special needs education
序
1 . 問題の所在と 研究内容 わが国へ体系化 さ れた視覚障害児 ・ 者の歩行訓練 (歩 行指導) がアメ リ カから導入さ れたのは1965年 (昭和40) で あ るが、 日本 には な じ みに く く 、 適 さ ない と こ ろ のあ る ア メ リ カ式 の歩行訓練内容 ・ 方法は、 その後、 徐 々に 日本に適応 し た日本式の歩行訓練が形成 さ れて現在に至 っ てい る (芝田、 2010a) 。 し かし、 視覚障害教育におけ る 歩行指導においては、 芝田 (2012b、 2013a、 他) が指摘 し てい るよ う に諸問題が山積 し てい る。 中で も 最重要課 題は、 視覚特別支援学校 (盲学校等 を含む) において徹 底が不十分である 「歩行訓練士 (歩行指導の専門教員) によ る歩行指導の実施」 であ る。 現在、 一部の視覚障害教育関係者や多 く の特別支援教 育関係者 には理解が十分浸透 し てい る と は言いがたいが、 歩行指導 (特に、 白杖によ る歩行) は歩行訓練士によ っ て実施 さ れる こ と が大前提 であ る。 そ れに も かかわら ず、 視覚特別支援学校では、 ①歩行訓練士が配置 さ れてい な い、 ま た、 ②配置 さ れてい て も 1 ~ 2 名程度 と 少数で あ る と い う 理由か ら歩行指導の非専門教員 が必要に迫 ら れ て歩行 を教え てい る例がま だま だ少 な く ない。 そ れは、 歩行訓練の指導者で あ る歩行訓練士養成が開始 さ れた19 70年 から40余年 が経過 し てい る に も かかわら ず、 現在わ ずか32校の視覚特別支援学校に78名の歩行訓練士 しか在 籍 し てお ら ず、 長 く こ の数字に増加 と い う 現象が見出 さ れていない と い う 現状から見 て取 る こ と がで き る (芝田、2013a) 。
こ の状況は、 歩行指導 を実施す る にあ た っ て最重要で あ る①視覚障害児 ・ 者の歩行の安全性の確保、 そ し て、 ②視覚障害児 ・ 者の 「適切な歩行の能力 を習得 し て一人 で歩 き たい」 と い う ニ ーズ実現 な どの理由 か ら 早急 な改 善が不可欠であ る。 ただ、 こ れは非専門教員は歩行指導 に関わ っ ては な ら ない と 言 う 意味 では ない わけ で、 こ の 点 が誤 っ て認識 さ れる場合 があ る。 そ れどこ ろ か、 内容 に よ っ ては、 非専門教員 が積極的 に歩行指導 に関わる こ と が有意味で、 歩行訓練士 と 非専門教員 と の連携 ・ 協働 * 兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻障害科学 コ ース * * 北海道札幌盲学校 * * * 奈良県立盲学校 * * * * 岐阜県立岐阜盲学校 * * * * * 大阪市立視覚特別支援学校 * * * * * * 宮城県立視覚支援学校 * * * * * * * 兵庫県立視覚特別支援学校 平成25年11月 1 日受理芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 は、 歩行指導 におい て非常に重要で推進 さ れる こ と が必 要であ る。 本研究では、 よ り 多 く の児童生徒のニ ーズに応え、 そ の歩行能力向上のためこ れま で試 み ら れる こ と のな か っ た非専門教員が歩行指導の一部 を担い、 歩行訓練士 と 連 携す る と い う 理念 を基軸 と し てい る。 その理念 を顕在化 さ せ る ために、 平成23年度か ら平成25年度 にわた っ て上 記の連携のあ り 方 を検討 し 、 そ れに基づ い て 6 校の視覚 特別支援学校によ っ て実践的研究 (科学研究費補助金に よ る、 詳細は付記参照) が実施 さ れ、 その後、 あ り 方が 錬成 さ れた。 こ こ では、 その成果 を ま と め、 視覚特別支 援学校におけ る歩行指導におい て、 歩行訓練士 と歩行訓 練補助員 (特別な研修を修了 し た教員) の連携につい て 歩行訓練補助員養成に関す る必要な研修の内容 と 方法、 実際の連携の進め方 を含 む総合的 な あ り 方 を実践例 を含 め て明 ら かにす る。 2 . 歩行訓練補助員と 指導領域 1 ) 歩行訓練 と 歩行訓練士一養成と 課題一 歩行訓練 (歩行指導) は、 歩行の条件の最上位であ る 安全性の確保の観点から歩行訓練士 と受講者であ る視覚 障害児 ・ 者の 1対 1 、 つま り 、 集団ではな く マ ン ・ ツ ー ・ マ ンで、 視覚障害児 ・ 者のニ ーズに基づい て実施 さ れる。 歩行訓練士 と は、 アイ マ ス ク によ る演習 (教官 と 学生が マ ン ・ ツ ー ・ マ ンで指導) を主体 と し 、 他の さ ま ざま な 関連知識の学習 と 実習 によ っ て修了 し た専門職で、 現在 の養成機関は以下の 2 か所で あ る (芝田、 2012b) 。 ①厚生労働省委託事業である視覚障害生活訓練等指導 者養成課程 (社会福祉法人日本ラ イ ト ハウス養成部で実 施) ②国立障害者 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン セ ン タ ー学院 その他、 上記① と 同内容で実施 さ れる教育関係者 リ ハ ビリ テ ー シ ョ ン研修会 (文部科学省後援) 、 及び海外の 適切 な養成機関の修了 者 も歩行訓練士 であ る。 し たが っ て、 その他で 「歩行指導」 と い う 名のも と に実施 さ れる 研修会や講習会では、 期間が短す ぎる、 内容が不十分、 教官の技量が不十分 な どの理由か ら そ れら を修了 し て も 、 教員 が歩行に関す る適切な指導技術の習得は困難と 言わ ざ る を得 な い。 加え て、 独習 では さ ら に困 難で あ るのは 言う ま で も ない。 視覚障害教育では、 前述のよ う に歩行訓練士 ではない 教員によ る歩行指導が実施 さ れてい る視覚特別支援学校 があ るが、 こ れは、 中途視覚障害者、 及 び視覚特別支援 学校卒業者が対象 で あ る視覚障害 リ ハ ビリ テ ー シ ョ ン施 設 ・ 機関では、 上記の適切 な 2 機関修了者である歩行訓 練士 が中心 と な っ て歩行訓練が実施 さ れてい る こ と と 好 対照 を な し てい る。 その結果、 教育系 か ら す れば残念 な こ と ではあ るが、 総体的 に みて、 視覚障害 リ ハ ビリ テ ー シ ョ ン領域の方が、 視覚障害教育領域よ り 質の高い歩行 訓練が提供で き てい る。 こ の課題解決には、 文部科学省 をは じ め、 教育委員会、 視覚特別支援学校、 視覚障害教 育関連学会 ・ 研究会、 視覚障害当事者団体、 そ し て関連 教員 養成系大学が協力 し て当 た ら なけ ればな ら ない だ ろ う (芝田、 2013a) 。 2 ) 歩行訓練補助員 と 歩行訓練士の連携 視覚特別支援学校の歩行指導に関す る非専門教員で、 歩行訓練士 によ る養成研修会修了の教員 を歩行訓練補助 員 と称 し、 歩行訓練士 と と も に歩行指導の一部を担当す るこ と で連携 し て指導に当 たる。 3 ) 歩行訓練補助員が担当 す る 4 領域 歩行訓練補助員が担当するのは、 以下の 4 領域である。 なお、 白杖 によ る歩行指導は担当 し ない。 ①基礎的能力の指導 (基礎的能力獲得への働きかけ等) ②手引 き によ る歩行の指導 ③補助具 を使用 し ない歩行の指導 (屋内歩行) ④ フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施 4 ) 基礎的能力の指導のあ り 方 基礎的能力 に つい ては、 「指導」 と な っ てはい るが、 いわゆる 「指導」 ではな く 、 実際には日 々の視覚障害児 への 「働き かけ」 、 「対応」 、 「周囲の配慮」 等 を主題 と す る場合 も あ る ため、 主に就学前の段階では 「勉強 ・ 学習」 的ではない面があ る (芝田、 2010a) 。 主眼は、 既知 と な る対象の増加、 及び知的好奇心の高揚であ る。
1 . 歩行訓練補助員養成研修会のあ り 方
歩行指導 を連携 し て進める前提 と し て、 歩行訓練補助 員 を養成す る ための研 修会が必要で あ る。 1 ) 研修会の構成 歩行訓練補助員 養成研修会は、 次の 3 部構成にな っ て い る o ①研修会 1 : 歩行訓練の基本事項 ②研修会 2 : 歩行訓練の実際 ③研修会 3 : 障害に関す る基礎知識 2 ) 指導 テ キ ス ト 研 修会 におけ る メ イ ン テキ ス ト は以下で あ る。 その他 の テキ ス ト は適宜、 検討 ・ 作成す る。 ① 「視覚障害児 ・ 者の歩行指導一特別支援教育から リ ハ ビリ テ ー シ ョ ンま で 」 (芝田裕一著、 北大路書房) ( テキス ト Y と す る、 芝田、 2010a) ② 「視覚障害児 ・ 者の理解と 支援」 (芝田裕一著、 北 大路書房) ( テキス ト z とする、 芝田、 2007) 3 ) 研修会受講者 (歩行訓練補助員) の選定 研修会実施に先立 つてまず、 研修会受講者、 つま り 歩 行訓練補助員 と な る教員 の選定が大切 で あ るが、 そ れに は次の 2 つの留意点があ る。 ①研修会受講者 を希望制にす るか指名制にす るかを検 討す る。 指名制の場合は、 歩行指導に関す る技量や意欲等 を見極めてお く 必要があ る。 ②歩行訓練補助員は、 視覚特別支援学校への異動後 3 年以上が望ま しい。 4 ) 研修時間の確保 と 時間数の検討 日常の校務中 と い う 限 ら れた時間内で養成研修会 を実 施 し なけ ればな ら ない ため、 適切 に研修時間 を確保す る こ と 、 さ ら にその時間数 を検討 す る こ と が必要 と な る。 以下はその留 意事項で あ る。 ①校内 での年間研修計画の中に組み入 れて十分 な研修 時間を設定す る。 ②以下のよ う な例が考え ら れる。 1 ) 夏季休業中に集中 し て時間 を取 る。 たと えば、 3 日間 を研修日 と し、 集中的に研修会を行 う のも よい。 2 ) 視覚特別支援学校に赴任 し て 3 年目ま で に一通り の研修 を受け ら れるよ う な 3 年間程度の計画で実施する。 3 ) 年間12回 ( 1 か月に 1 回) 実施でき ると研修と し ては充実で き るが、 最低10回程度は必要であ ろ う 。 ま た、 研修 と研修の間に歩行訓練補助員同士 で復習がで き る と よ い o 4 ) 研修会は 1 、 2 学期 に実施す る と い う 計画が望ま しい。 3 学期は課業期間そのも のが短い上に種々の校務 や会議 に放課後の時間が取 ら れるため時間の確保は難 し い o 5 ) 歩行訓練補助員の対象者 を 1 人から 2 人 と 少人数 と し、 年度当 初、 あ るいは前年度 に定めておけ ば授業等 の空き時間 を合わせて研修が実施 し やすい。 教務が時間 割 を組むと き に管理職か ら そのよ う に指示があ る と よ い。
11. 歩行訓練補助員養成研修会の進め方
1 . 研修会 1 : 歩行訓練の基本事項 歩行訓練補助員養成の研修会 1 は、 歩行訓練に関す る 基本事項であ る。 1 ) 内容 テ キス ト Y を使用す る。 各項目末尾の ( ) 内は テ キス ト Y に掲載 さ れてい る章 を示す。 (1 )基礎 ①歩行指導の基本的概念 (第 1 章) 、 ②歩行の指導者 と その心得 (第 2 章) 、 ③歩行の指導法 (第 4 章) 、 ④指 導の理念と 考え方 (第 5 章) 、 ⑤ヵ リ キユラ ムと実施の 留意事項 (第 6 章) 、 ⑥白杖 (第 8 章) 、 ⑦視覚障害児に 対する歩行指導に関する留意点 (第20章) (2)応用 ⑧白杖操作技術 と指導 (第 9 章) 、 ⑨道路におけ る歩 行技術 (第10、 11章) 、 ⑩交通機関の利用 (第12章) 、 ⑪ つまずきの指導と 援助依頼 (第13、 14章) 2 ) 方法 ・ 留意点 ① テキス ト を用いた講義形式 と し、 一定の範囲で説明 や補足 を行う 。 ②その学校の状況に応 じ て内容等は検討す る こ と が大 切であ る。 た と え ば、 i 必要に応 じ て内容 を詳細に解説 し な く て も よい、 ii その学校の特性に応 じ て概略で よい、 f l 一部割愛 し てよい、 iv(2)応用 (⑧ ~ ⑪) は必要に応 じ ての実施で よい、 等 で あ る。 ③質問は随時受付け、 不十分 な理解 と な ら ないよ う 留 意す る。 ④講義での対象は、 自校の児童生徒 だけ に限定せず、 一般的な視覚障害児童生徒を想定す る。 ⑤一般的に、 特別支援教育の教員 や保護者な どには 「白杖 を持 てば歩け る」 と いう 安易 な考えが多 く みら れ る ため、 こ の点 に留 意 し なが ら 、 視覚特別支援学校 にお け る歩行指導の総合的な考え方が理解でき るよ う にする。 2 . 研修会 2 : ①歩行訓練の実際一総合的な留意点 歩行訓練補助員養成の研修会 2 は、 歩行訓練の実際で あ る。 既述 し たよ う に、 歩行訓練補助員 が担当す る内容 は、 ①基礎的能力 の指導 (基礎的能力獲得への働き かけ 等) 、 ②手引 き によ る歩行の指導、 ③補助具 を使用 し な い歩行の指導、 ④ フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施の 4 領 域で あ る。 まずこ こ で総合的 な留 意点 を論 じ、 その後、 上記の 4 つの領域につい て、 内容、 方法 ・ 留 意点 を順次述べ てい く 。 ① テキ ス ト を用 い た講義形式 が主で あ るが、 必要に応 じ て アイ マ ス ク によ る疑似障害体験 によ る演習 (実技) 形式と し、 一定の範囲で説明や補足 を行う (芝田、 2007、 2012a) 。 演習はペ アで行 う と よい。 ②講義 ・ 演習の後、 歩行訓練補助員が体験 をす る実習 形式で行う 。 ③歩行訓練士 が、 どのよ う な方法 で、 ま た、 どのよ う な点 に留 意 し て指導 し てい る か を理解す る と 共に、 「手 引 き によ る歩行」 や 「補助具 を使用 し ない歩行」 等につ い ては、 歩行訓練補助員 が歩行の条件 (芝田、 2010a) に基づい て指導 で き る こ と を日 標にす る。 ④必要に応 じ て、 用語等 を講師 と受講者間で検討 し 、 統一 し てお く と よ い。 ⑤視覚優位の指導の不適切 さ を体験から気づけ るよ う にす る。 ⑥質問は随時受付け、 不十分 な理解 と な ら ないよ う す る o ⑦夏季休業中等 に フ ォロ ーア ッ プ的 な研修 を歩行訓練 士が実施す る と よ い。 3 . 研修会 2 : ②歩行訓練の実際 一基礎的能力の指導 テキス ト Y (第17章、 第18章) を使用する。 1 ) 内容 ①知識 1 : 左右と方角、 知識 2 : 環境、 知識 3 : 言葉 ・ 用語、 ②感覚 ・ 知覚 1 : 聴覚、 感覚 ・ 知覚 2 : その他、 ③運動、 ④社会性、 ⑤心理的課題、 ⑥指導の背景 と な る芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 概念 と その習得課程、 ⑦指導におけ る基本的考え方、 ⑧ 知識に関す るつまず き、 ⑨知識、 感覚 ・ 知覚、 運動、 社 会性、 心理的課題の指導、 ⑩総合的留意事項 2 ) 方法 ・ 留意点 ① テ キ ス ト を用 い て実例 を付加 し な が ら 、 どのよ う な 場面 で どのよ う な能力 が必要か を具体的 に解説 し、 必要 によ っ て質疑応答 を行 う 。 ②前述のよ う に、 基礎的能力 の指導 と し て 「指導」 と し てい るが、 い わ ゆる 「指導」 では ない点 を確実 に教授 す る。 ③基礎的能力は最重要項目であ るため講義には時間 を かけ る。 ④基礎的能力 の概念は、 視覚障害児 だけ に と どま ら ず、 他の障害児、 さ ら に健常児 に と っ て も必要な も ので あ り 、 適用で き る。 ⑤年齢 (段階) 別の指導方法は以下を参考と す る。 3 ) 年齢 (段階) 別の指導方法 テ キス ト Y 第18章には、 基礎的能力 の指導方法 と し て次の6項目が示 さ れてい る。 ①状況の提示 と 必要に応 じ た機能の説明 一 語り かけ こ の内 容 には段階 に よ っ て、 語 り かけ に よ っ て も の に は名前がつい てい る こ と も知 ら せ、 気づ かせ る。 ②機能性 を主体 と す る指導 ③具体的な対象 と の連合 ④主体的な行動 ⑤視覚的イ メ ー ジが介在す る対象の指導 ⑥家族等周囲の用語の使用 家族間の会話 こ こ ではそれら を年齢 (段階) 別に分類 し て示す。 (1)段階 1 一受障時 (障害 を負 っ た時期) から、 ①、 ⑤、 ⑥の 3 項目 を開始す る。 (2)段階 2 ーハイ ハイ がで き る時か ら 開始 し 、 段階 1 の 3 項目に④ を付加す る (計①、 ④、 ⑤、 ⑥) 。 (3)段階3
-
コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ンが と れる時か ら 開始 し、 段階 2 の 4 項日に②を付加する (計①、 ②、 ④、 ⑤、 ⑥)。 (4)段階 4 一就学後から 開始 し、 段階 3 の 5 項目に③ を 付加す る (計①、 ②、 ③、 ④、 ⑤、 ⑥) 。 4 . 研修会 2 : ③歩行訓練の実際一手引 き によ る歩行の 指導 テ キ ス ト z を 使用 す る。 な お 、 手引 き に よ る 歩 行 に は、 歩行訓練 (歩行指導) と し ての視覚障害児 ・ 者の手 引 き技術向上のための方法 (A の方法) と介助 と し ての 手引きの方法 (B の方法) がある (芝田、 2007) 。 1 ) 内容 ①手引 き の理念、 ②歩行訓練 と し ての手引 き の技術 A の方法 一、 ③手引 き によ る歩行の指導の留意点 一A の 方法 一 、 ④B の方法の留 意点 お よ び A の方法 と の相違 占 2 ) 方法 ・ 留意点 ①演習は、 廊下、 体育館、 校庭等 を使用 し て基本の形 態 を実施後、 校外へ出て学校周辺の住宅街、 準繁華街等 で実際に必要 と 思われる場所や状況 を想定 し て行 う 。 ②手引 き によ る歩行の意義 ・ 重要性と安全性の確保等、 手引 き の条件の大切 さ を解説す る。 ③歩行指導と し ての手引き技術向上の方法 (A の方法) と介助 と し ての手引 きの方法 (B の方法) の意義、 相違 点が確実 に理解で き るよ う にす る。 つま り 、 児童生徒向 け の指導 (A の方法) と 、 教職員 ・ 保護者向け の指導 (B の方法) の相違で あ る。 ④受講者自身の知識 ・ 理解 を確かな も のにす る ために 校内の基本ルー ト を使 っ て受講者が説明 (指導) しやす い用語 を工夫す る。 ま た、 別のルー ト を設定 し て指導す る方法 を考案 し、 その内容やポイ ン ト につい て歩行訓練 士 と 共に検討する。 5 . 研修会 2 : ④歩行訓練の実際 一補助具を使用 し ない 歩行の指導 テキス ト Y (第 7 章) を使用す る。 なお、 補助具を使 用 し ない歩行は一般的 には屋内歩行であ る ため、 校内、 教室内 におけ る歩行 を意味す る。 1 ) 内容 ①補助具 を使用 し ない歩行技術 一-
1 ) 手によ る伝い 歩き、 2 ) 手によ る防御 1 : 上部防御、 3 ) 手によ る防 御 2 : 下部防御、 4 ) 防御の応用 : 落し物の拾い方、 5 ) 方向の取り 方 1 : 直角の方向の取り 方、 6 ) 方向の取り 方 2 : 平行の方向の取り方 ②指導の留意点 ③補助具 を使用 し ない歩行の成り 立ち 2 ) 方法 ・ 留意点 ①廊下や教室等 を使用 し、 実際に必要 と 思われる場所 や状況を想定 し て行う 。 ②手によ る伝い歩き、 手によ る防御、 方向の取 り 方の 基本の形態 をペ アで交互に指導 し合い、 理解 を深め る。 ③ フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの研 修前に実施す る。 6 . 研修会 2 : ⑤歩行訓練の実際一 フ アミ リ ア リ ゼー シ ョ ンの実施 テキス ト Y (第16章) 、 及びテキス ト z (第 7 章) を 使用す る。 1 ) 内容 ① フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの体系 、 ②歩行指導 におけ る位置づけ、 ③室内 フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ン、 ④廊下 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン、 ⑤ ル ー ト フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン、 ⑥地域 フ アミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン、 ⑦自動車 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン 2 ) 方法 ・ 留意点 ①廊下、 教室等 を使用 し、 実際に必要 と 思われる場所 や状況を想定 し て行う 。 ②長時間歩き慣れて覚え る と いう 事ではな く 、 歩行の条件に基づ き、 安全性の確保、 能率性の検討 な ど確実に 歩け る理論 と技術 を講義や演習で し っ かり 理解 し、 実施 で き るよ う にす る。 ③指導者役と児童生徒役に分かれての演習を実施する。 その際、 指導者役の説明があい ま い にな っ た り 、 そのた めに指導者役 と 児童生徒役 と の コ ン タ ク ト がう ま く 取 れ ない場合が想定 さ れる ため、 適宜補足 を加え たり 、 一旦 演習 を中断す る こ と も 必要で あ る。 更用頻度の高い教室 (室内 フ アミ リ アリ ゼー シ ヨ ン) 、 玄関から各教室の往復 (ルー ト フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ン) な ど、 実際の状況 を想定 し て行 う 。 ⑤校内の部屋、 廊下、 階段、 出入り 口 な どの環境に固 有の名称 (北階段、 第 1 廊下な ど) をつけ、 児童、 生徒、 教職員で共有する。 ⑥ 4 月に新入生に対 し てす ぐ必要と な るので、 春休み 中の新転任者研修の中に教室内等のフ アミ リ アリ ゼー シ ヨ ンの実施方法 を入 れてお く と よい。 7 . 研修会 3 : 障害に関連す る基礎知識 歩行訓練補助員 養成の研修会 3 は、 視覚障害のみな ら ず障害全般に関連す る基礎知識で、 総合 し て特別支援教 育、 さ ら に特別支援学校等教員 におい てはま だま だ十分 浸透 し てい な い と 言 われる分野で あ る。 1 ) 内容 代表的 な も の と し て、 ①障害理解 (芝田、 2010b、 2011、 2013b ; 他) 、 ②ICF、 ③ ノ ーマ ラ イ ゼー シ ヨ ン、 ④QOL、 ⑤障害受容 (芝田、 2007 ; 他) 、 ⑥自己決定、 ⑦キ ャ リ ア教育、 ⑧特別支援教育の現状 と 課題、 ⑨保護 者対応 な どがあ る。 2 ) 方法 ・ 留意点 ① テ キ ス ト Y、 z か ら 必要箇所の選別、 他の図書か ら の引用 な どによ っ て研修資料 と す る。 ②専門用語は必要に応 じ た解説と す る。 ③質疑応答の時間 を大切に し て障害に関す る基礎知識 の理解 を深 め る。
m . 歩行訓練士 と 歩行訓練補助員と の連携
先述の 4 領域の歩行指導におい て歩行訓練士 と歩行訓 練補助員 と で連携 し て進める。 1 . 4 領域に関す る連携のあ り 方 ① フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンに つい ては、 そ の方法 を言 語化 し たマ ニ ュ アルを つ く っ てお き 、 児童生徒への指導 で活用す る と と も に教職員 と 共有す る。 ま た、 ルー ト フ ア ミ リ ア リ ゼー シ ヨ ン用 に校内の歩行方法 (歩行能力 の地 図的操作におけ る行動計画、 芝田、 2010a) を定めてお き、 児童生徒 ・ 教職員 で共有す る。 ②歩行訓練補助員が 4 領域に関す る歩行指導 を担当す る際、 ま ず歩行訓練士 に よ る ス ー パ ー バイ ズ を受け る。 ③児童生徒の指導記録 (進度表) を作成 し、 何が どこ ま で指導 で き てい るのか歩行訓練士 と 歩行訓練補助員 で 共有 し てその後の指導に活用す る。 そのため定期的 な情 報交換会 を実施す る。 ④ 4 領域につい て実施 し た内容 を教職員間の共通理解 と す る。 こ れは重複障害学級 におい て も同様で あ る。 ⑤十分 な指導体制が取 れる よ う に管理職 をは じ め、 教 職員全体の理解が必要で あ る。 ⑥適宜、 歩行訓練士、 歩行訓練補助員、 他の教員 の 3 者で の連携 も 必要で あ る。 2 . 他の連携 ①歩行訓練補助員 が新転入職員研修の際、 講師 と し て 手引 き に よ る歩行 と フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンに関す る研 修 を実施す る の も よ い。 ②校内研修会、 教育実習 ・ 介護等体験実習 (学生) へ の指導、 各種研修会 ・ 講習会は歩行訓練補助員 が中心 と な っ て実施す るのも よ い。 その際、 歩行訓練士は適宜ス ー パ ー バイ ズ を行い、 必要に応 じ て事後の検討 を共同 で行 う と よ い。 その他 には以下があ る。 ①全教職員 (事務職員 を含む) 対象の基礎的能力の指 導、 及び介助 と し ての手引 き によ る歩行 (B の方法) に 関す る研修会 を実施す る と よい。 ②補助具 を使用 し ない歩行の指導や フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンは知識 と し て全教職員 が理解 し てお く のが望 ま し い。 そのための研 修会の実施が必要で あ る。 ③研修会 1 (歩行訓練の基本事項) の受講者の中から 歩行訓練補助員 を選抜 し、 その後、 研修会 2 、 研修会 3 を実施す る方法 も考え ら れる。IV. 実践事例 1 : 北海道札幌盲学校
1 . 研究 1 年次 (平成23年度) 報告 1 ) 研修会の概要 研究 1 年次は、 本校教職員 を対象に平成23年11月~ 平 成24年 3 月に全12回を実施 し た (表 4-
1 ) 。 研修項日 は、 ①基礎的能力の指導、 ②手引 き によ る歩行の指導 ③補助具 を使用 し ない歩行の指導、 ④ フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンの実施 と し、 時間は 1 回 を60分 (基礎的能力 の指 導は40分) と し た。 2 名の歩行訓練士が担当 し、 テキス ト Y を用いた。 2 ) 研究 1 年次の成果 と 課題 (1)研修内容 ・ 方法 基礎的能力 の指導は幼稚部から中学部ま での教職員 を 対象 と し、 日常的に重要な事項 を中心に説明 し たが、 や はり 基礎的能力 は歩行指導の根幹である ため、 各学部及 び寄宿舎指導員等 を対象にそ れぞれに必要な研修内容が 望ま れる。 基礎的能力 の指導以外の研修は、 演習の前後 に テ キ ス ト Y を使用 し た説明 を取 り 入 れた こ と で、 演 習が理論に基づ い た も の と し て体験的 に習得 さ れ効果的芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 表 4
-
1 1 年次の研修会の概要 基 礎 的 能 力 2 基 礎 的 能 力 の 指 導 2 0 会 議 室 説 明 屋 内歩 行 2 手 に よ る 伝 い 歩 き 手 に よ る 防 御 (上 部 ・ 下部 ) 手 に よ る 防 御 の 応用 4 会 議 室 ・ 廊 下 説 明 → 演 習 (単 独) → 補 足 直 角 と 平 行 の 取 り 方 廊 下 説 明 → 演 習 (単 独) → 補 足 t arn 4 各 Famの 実 施 方 法 4 会 議 室 説 明 室 内 t arn と そ の 実 施 会 議 室 ・ 各 教 室 説 明 → 演 習 (ペ ア ) → 補 足 廊 下 Fam と そ の 実 施 会 議 室 ・ 各 教 室 説 明 → 演 習 (ペ ア ) → 補 足 ル ー ト t arn と そ の 実 施 会 議 室 ・ 廊 下 ・ 教 室 説 明 → 演 習 (ペ ア ) → 補 足 手 引 き 4 手 引 き の 指 導 と そ の 実 施 4 会 議 室 説 明 基 本 姿 勢 の 指 導 に つ い て 会議室 ・ 廊下 ・ 体育館 説 明 → 演 習 (ペ ア ) → 補 足 狭 所 ・ 溝 ま た ぎ ・ 段 差 階 段 ・ 持 ち か え ・ 転 換 戸 の 通 過 ・ 白 杖 携 行 等 会議室 ・ 廊下 ・ 体育館 説 明 → 演習 (ペ ア ) → 補 足 復 習 と ま と め 会議室 ・ 廊下 ・ 体育館 説 明 → 演 習 (ペ ア ) → 補 足 注) フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンは Fam と 表示 表 4-
2 2 年次の研修会の概要 (各校への案内) 【 1 日目 1 月 8 日 (火) 】 8 : 3 0 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン 9 : 0 0 ~ 1 0 : 3 0 盲 学 校 の 歩 行指 導 に つ い て 等 [ 説 明 90 分 ] 1 0 : 4 0 ~ 1 2 : 1 0 補 助 具 を 使 用 し な い 歩 行 (屋 内 歩 行) の 技 術 ・ 指 導 [ 説 明 30 分 ・ 演習 60 分 ] 1 3 : 1 0 ~ 1 7 : 0 0 手 引 き に よ る 歩 行 の 技 術 ・ 指 導 (1) [ 説 明 80 分 ・ 演 習 150 分 ] 【 2 日目 1 月 9 日 (水) 】 9 : 0 0 ~ 1 2 : 0 0 手 引 き に よ る 歩 行の 技 術 ・ 指導 (2) [ 説明 60 分 ・ 演習 120 分 ] 1 3 : 0 0 ~ 1 7 : 0 0 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン [ 説 明 80 分 ・ 演 習 160 分 ] な研修 と な っ た。 ただ し、 指導法が日常的、 実際的 な指 導 につながるか どう かは受講者自身 の意識 と 意欲、 校内 での指導体制 によ る と こ ろが大 き い感があ る。 (2 )研修時間の確保 演習が伴う 研修は歩行訓練士の数や実施内容に左右 さ れるが、 一定の時間確保 が必要で あ る ため、 研 修 を担当 す る校務分掌等 と の調整によ り 、 年間 を と お し た研修計 画 を組む必要があ る。 2 . 研究 2 年次 (平成24年度) 報告 1 ) 研修会の概要 研究 2 年次は、 道内 5 校の盲学校教職員 を対象 と し て 平成25年 1 月に 2 日間実施し た (表 4 2 ) 。 研修項目 は、 ①白杖、 歩行訓練の全体的 な進め方、 歩行訓練のあ り 方、 ②基礎的能力の指導、 ③手引 き によ る歩行の指導、 ④補助具 を使用 し ない歩行の指導、 ⑤ フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンの実施と し、 時間は 2 日間で合計14時間と し た。 1 名の歩行訓練士が担当 し 、 テキス ト Y、 及びテキス ト z を用い た。 参加者は本校以外から 4 名が参加 し た。 盲 学校経験年数は、 5 年未満 2 名、 10年以上 2 名で、 所属 学部は小学部 2 名、 高等部普通科 1 名 ・ 専攻科 1 名であっ た。 2 ) 研究 2 年次の成果と 課題 (1 )地域性 を考慮 し た研修会の企画 と 各校 と の連携 北海道の地域性 を考慮 し、 道内 5 校の盲学校から参加 者 を公募 し た。 参加者の事後 ア ンケ ー ト か ら も一定の研 修効果が認め ら れ、 各自の専門性の底上げ と 同時に各校 と の連携が予想で き る よ う にな っ た。 道内盲学校全体で 歩行訓練士が 1 名であ る現状から、 各校に歩行訓練補助 員等がい るこ と によ り 、 各校の歩行指導技術の質の向上 と と も に児童生徒の歩行の安全性が向上す るこ と が期待 で き る。 (2) 研修内容のプロ グラ ム化 と実施時間 テキス ト Y、 z から研修実施上での留意点 を付加 し た 研修 プロ グラ ムの試案 を作成 し 、 こ れを も と に実施 し た。 当年度の研究の実施予定であ っ た、 歩行訓練補助員養成 の研修会 1 (歩行訓練の基本事項) 及び研修会 2 (歩行 訓練の実際) を合わせて行う 形で実施 し た。 ま た、 時間 的な関係から、 障害理解 (芝田、 2010b、 2011、 2013b ; 他) 、 ICF、 ノ ーマ ラ イ ゼ ー シ ヨ ン、 QOL 、 障害受 容 (芝田、 2007 ; 他) 等 につい ては、 研修会 1 の部分で関連 し て触れた程度で、 研修会 3 (障害に関する基礎知識) の実施 には至 ら なか っ た。 ま た、 研 修 に要す る時間は今 回の研修会の実施から最低で も 2 日半から 3 日、 時間に し て17時間から21時間は必要で あ る と 考え ら れる。
V . 実践事例 2 : 奈良県立盲学校
1 . 取 り 組みの概要 本研究の趣旨は、 歩行訓練士 と 共に、 ①基礎的能力 の 指導、 ②手引 き によ る歩行の指導、 ③補助具 を使用 し な い歩行 の指導、 ④ フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施がで き る人材 (歩行訓練補助員) の養成であ る。 本校では、 ま ず、 ②③④の内容 を指導で き る人材の育成 を念頭に養成 研修の位置づけ と方法の確立を目指 し て 3 年間の取り 組 みを行 っ た。 具体的には、 平成23年度は、 従前の研修体 制 を整理 し て見直 し、 研修の位置づけ や必要 と 思われる 研修回数や内容を検討 し、 研修計画を作成 し た。 平成24年度は、 前年度に作成 し た研修計画を も と に研 修 を実施 し、 作成 し た研修計画の妥当性 を検証す る と と も に研修 テ キ ス ト を作成 し た。 そ し て、 平成25年度は、 研修 を受け た教員 によ る指導 を実施 し、 研修内容が実際 の指導場面 に対応 で き る内容で あ っ たか と い う 視点 か ら 検討 を加え た。 2 . 取 り 組みの成果 1 ) 研修の位置づけの確立 本校では、 こ れまで も教員 を対象 と し て歩行研修が実 施 さ れて き た。 し か し、 そ れはあ く ま で も歩行訓練士 が 行 っ てい る指導内容 を知 り 、 知識 を深めるこ と を目的 と し た も のであ っ た。 そこ で、 歩行訓練補助員 の養成研修 は、 従来の歩行研修と は区別 し て歩行研修を受講 し た上 で、 なおかつ、 指導 で き る こ と を目的 と し て受講す る研 修と し て位置づけ、 歩行研修 を 2 層構造と し て整理 し た。 ま た、 受講者の受講要件 を、 ①従来の歩行研修 をすべて 受講 し た者で、 かつ②着任後、 3 年 を経過 し てい る者 と 位置づけ た。 2 ) 研修の実施 と テキ ス ト の作成 平成24年度に小学部教員 1 名、 寄イ宿舎指導員 1 名を対 象に歩行訓練士 3 名が指導に当 たる10回の研修を実施 し た。 1 回の研修時間は90分である。 研修は指導でき るこ と を目的 と し てい る ため、 指導す る具体的 な場 と し て新 入生 (児童生徒) を対象 と し て手引 き によ る歩行技術や 屋内歩行技術 (補助具を使用 し ない歩行技術) 等を教え る機会 (本校では歩行 オリ エ ンテーシ ョ ンと 呼 んでい る) を想定 し、 研修方法は、 指導教員 によ る デモ ンス ト レ ー シ ョ ンと受講教員 によ る指導実習の 2 回一組を基本 と し て行 っ た。 ま た、 研修では、 説明用語 を全員 で吟味 し、 わかり やすい用語 を統一 す る な ど用語や方法につい て検 討 し 、 基本 と な る指導 マ ニ ュ ア ル ・ 養成研 修 テキ ス ト を 作成 し た。 3 ) 受講教員によ る指導の実施平成25年 4 月17 ・ 19日 (15 : 30~ 16 : 15) に保健理療
科 1 名、 専攻科理療科 3 名の新入生、 計 4 名 を対象 と し て研 修 を修了 し た教員 が中心 と な っ て歩行 オ リ エ ン テ ー シ ョ ンの指導 を実施 し た。 ス ムーズに研修が実施で き、 養成研修が実際の指導場面 に対応で き る内容で あ っ たこ と が確認で き た。 4 ) 研修方法の確立 平成24 ・ 25年度の取り 組み後の反省 ・ 検討 を反映 させ、 11回 を基本と す る研修方法 を確立 し た (表 5 1 ) 。 な お、 11 回の研修の間には自主的 な復習の機会 も設け る こ と と し た。 3 . 取 り 組み全体のま と め 平成23年度から 2 年余り の取り 組みを と お し て、 歩行 訓練士 と 共に手引 き に よ る歩行、 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン等の領域の歩行指導に携わる歩行訓練補助員 の育成 を 行 う こ と がで き た。 研修体制 を 2 段階に設定 し、 指導マ ニ ュ ア ル ・ 講座 テ キス ト を作成 で き た こ と 、 ま た、 実際 に指導 を担当 し てい く 場面 を設定で き たこ と で、 11回の 研 修や養成の シス テ ムを確立 で き た こ と は大 き な成果で あ っ た。 今後 は、 「歩行 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン」 の実施 、 新入生 に対 す る フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施 に加 え て 通常の歩行研修の補助、 ま た、 新着任教員 や保護者に対 す る手引 き によ る歩行の指導の研修、 見極め後の見守 り 等 に活躍の場 を広げ ら れる よ う 、 共 に取 り 組 んでい き た い と考え てい る。 数年後には歩行訓練補助員が増え、 学 校全体の歩行指導に関す る取り 組みが進展す るこ と が期 待 さ れる。VI . 実践事例 3 : 岐阜県立岐阜盲学校
1 . 本校の歩行指導の状況 本校には、 厚生労働省委託事業であ る視覚障害生活訓 練等指導者養成課程 を修了 し た教諭 2 名 と 、 視覚障害リ ハ ビリ テ ー シ ョ ン施設であ る視覚障害者生活情報セ ン タ ー の歩行訓練士 1 名 (非常勤講師と し て週 2 時間来校) の 計 3 名体制で歩行指導を実施 し てい る。 2 . 本校にお け る歩行に関す る研修会の実施状況 1 ) 平成22年度まで 専門性向上のための研修と し て、 点字指導、 弱視教育、 早期教育、 歩行指導な どについての職員研修が年 2 回実 施 さ れていた。 平日の放課後 3 時50分から 5 時までの時 間に上記の研修が一斉に実施 さ れ、 教員は希望す る研修 に参加す る。 そ の ため、 そ の時 の興味 関心 や ニ ーズに応 じ て その都度選択 す る ため偏 り があ っ た。 2 ) 平成23年度 年度当初に歩行指導につい ての研修 を受け たい教員 を 募 つて研修 を実施 し た。 研修時間の確保が難 し く 、 夏季 休業中 を含 め以下の内容で 4 回の実施であ っ た (参加者芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 表 5
-
1 研修の回数と 内容回数
内 容
1
歩行オリエンテーションの指導内容の見学
【内容】指導教員による指導の見学
2
指導教員による歩行オリエンテーション1 日目 説明テ゛モンストレー
シヨン(1 )
【内容】 (1 )手引きの基本的な方法と留意点 (2)狭所の通過
3
受講教員による歩行オリエンテーション1 日目 説明実習(1 )
【内容】は前回と同様
4
指導教員による歩行オリエンテーション1 日目 説明テ゛モンストレー
シヨン(2)
【内容】(1 ) 手による伝い歩き(2) 手による上部防御
(3)手による下部防御(4)方向のとり方(直角の方向のとり方)
5
受講教員による歩行オリエンテーション1 日目 説明実習(2)
【内容】は前回と同様
6
指導教員による歩行オリエンテーション2 日目 説明テ゛モンストレー
シヨン
【内容】 (1 ) 階段の昇降(2) 清などをまたぐ場合(3) その他の留意事項
7
受講教員による歩行オリエンテーション2日目 説明実習
【内容】は前回と同様
8
受講教員による歩行オリエンテーション説明実習 総復習
9
指導教員によるフアミリアリ・
e
ーシヨンの指導テ゛モンストレーシヨン(1)
【内容】生徒昇降口→生徒の自教室までの往復を想定した
フアミリアリゼーシヨンの指導方法
10
受講教員によるフアミリアリ
ーe
ーシヨンの指導実習
【内容】は前回と同様
11
総復習,まとめ
は約15名) 。 ①基礎的能力 についての研修 (夏季休業中) : 1 回 ②手引 き によ る歩行についての研修 : 1 回 ③屋内歩行技術 (補助具を使用 し ない歩行技術) と屋 内 で のル ー ト フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンに つい て の研 修 : 1 回 ④室内 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンに つい ての研 修 : 1 回 基礎的能力 につい ての研修では、 白杖指導の導入時期 につい て理解 し て も ら う こ と がで き、 こ の内容での研修 は特に小学部の教員 に必要で あ る こ と を感 じ た。 3 ) 平成24年度 歩行訓練補助員 を想定 し て歩行 につい ての研修の一層 の充実 を図 っ たが、 4 月の新転任者研修の他に職員研修 と し て実施で き たのは、 以下の内容で 5 回で あ っ た。 ①屋内歩行技術に関する研修 : 1 回 (10名) ②廊 下 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施 に関す る研 修 :1 回 (12名)
③室内 フ アミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施 に関す る研 修 :1 回 (12名)
④基礎的能力についての研修 : 2 回 (38名) 残念ながら歩行訓練補助員 を希望す る教員 がいなかっ た ため研 修の参加者はその都度募 つた。 参加者は、 ほ と ん どが本校 3 年目ま での視覚障害教育に携わっ て日の浅 い教員 で あ っ た。 本校は、 近年、 年度 ご と の教員 の入 れ替わり が激 し く 、 理療科の教員 や分掌長 を任 さ れてい る 教員 を除 く と ほ と ん どの教員 が 3 年目ま で と い う 状況で あ っ た。 歩行指導に関 し ては、 歩行訓練士が担当す るの で任せておけ ばよ い と い う 意識が強 く 、 研修は必要がな い と考え る教員 もいて視覚特別支援学校の経験が長い教 員 ほ どそ う い う 傾向があ っ た。 4 ) 寄宿舎指導員 を対象と し た研修会の実施状況 勤務の関係 で放課後の研修への参加が難 し い ため、 夏 季休業中に集中 し て研修を実施 し てい る。 毎年、 2 日間 ( 7 ~ 8 時間) 、 基礎的能力の指導、 手引 き によ る歩行の 指導、 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施が主 な研 修内容 で ある。 平成24年度は以下の通り である。 ① フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの実施 : 4 時間 ②手引 き によ る歩行 と アイ マ ス ク体験の実施 : 2 時間 ③歩行指導に関す る質疑応答 : 1 時間 寄宿舎指導員は年度 ごと の異動が少 ない ため、 毎年繰 り 返 し同 じ よ う な内容で研修す る こ と にな るが、 指導員 か ら は、 「毎年、 研 修会に参加す る こ と で、 1 回では理 解で き なか っ たこ と が 2 回目 3 回目 と 回 を重 ねる こ と で 理解で き て く る。」 と い う 感想が多 い。 3 . 歩行訓練士 と 非専門の教員 (寄宿舎指導員 を含 む) と の連携 本校におけ る非専門教員 (歩行訓練補助員 ではない) と の連携 に つい て以下 に例 を挙 げ る。 ①寄イ宿舎 では、 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの研 修会で使 用 し た部屋の説明時のマ ニ ュ アルを作成 し 、 新入舎生に 対 し て指導員 がそのマ ニ ュ ア ルに乗 つ取 つて指導す る た め、 担当 によ っ て説明の仕方が違 っ て混乱 を招 く と い う こ と が減 っ て き てい る。 ②重複障害の児童生徒に対 し て手によ る伝い歩 き な ど の補助具 を使用 し ない歩行技術 を習得 させ、 1 人で移動 で き る場所 を増や し ていけ る よ う に し た。 必要に応 じ て 自立活動の時間に入 っ て、 児童生徒に指導す る と と も に 教員 に も 指導のポイ ン ト を覚え て も ら う よ う に し た。 4 . 今後の課題 歩行指導 ( 白杖操作 を伴わない指導) について非専門 の教員 も 理解 し た上で連携 し て指導 に当 た れるよ う にす るため、 年間 4 ~ 6 回の研修を年度当初に計画 し て実施 し ていけ るよ い。 し か し、 研修時間の確保が難 し く 、 十 分 な時間の確保がで き ないのが現状 であ る。 歩行訓練補 助員 の養成 につい て、 教員 の入 れ替わり が激 し く 専門性 が積 み上が っ てい き に く い現在の状況 では、 対象 に な る 教員 の選定の段階か ら 難 し さ があ る。 本校 におい ては、 2 ~ 3 年間で一通り の研修 を修了 で き る よ う な シス テ ム にす る な ど、 教員全体の視覚障害教育 に関す る知識、 理 解 を向上 さ せ る こ と が必要で あ る。 Ⅶ. 実践事例 4 : 大阪市立視覚特別支援学校 1 . 本研究開始時の本校の 「 連携」 の状況 平成23年度に本研究 を開始す る以前から、 本校には小 学部 3 名、 中学部 1 名、 高等部 1 名の計 5 名の歩行訓練 士が在職 し てい る。 非専門の教職員 に対す る初任者研修 や、 日常の歩行指導は歩行訓練士同士の連携のも と に実 施 し てき た。 し か し、 各学部に歩行訓練士が在籍 し てい る こ と で、 非専門の教職員 の意識には 「歩行指導は全 て の過程 を歩行訓練士 に一任す る」 と いう 傾向があ る。 そ のため、 歩行訓練士のほう で も自分が担当すべき教育活 動 (自立活動) の一環と し て位置づけ、 「非専門の教職 員 と の連携 を図 る」 と い う 視点か ら の十分 な取 り 組みを 進め る ま で には至 っ てい なか っ た。 2 . 3 年間の本研究の概要 1 ) 平成23年度 歩行訓練補助員 と し て中学部教員 1 名 (本校着任 2 年 日) が対象 と なり 、 弱視生徒の単独下校指導 を歩行訓練 士 と と も に担当す る中で、 基礎的能力 の指導お よ び フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ョ ンの実 施方法 に つ い て テ キ ス ト Y を 使用 し て個人研修 を行 っ た。 2 ) 平成24年度 歩行訓練補助員 と し て中学部教員 2 名が対象であっ た (A 教員 : 着任 5 年目、 B 教員 : 着任 3 年目、 平成23年 に引 き 続き 選定) 。 研修内容は、 ま ず歩行指導の知識に 関 し て基礎研修 (座学) を 2 回実施 し た。 さ ら に、 手引 き によ る歩行の指導、 及び補助具 を使用 し ない歩行の指 導に関 し て基礎研修 (座学) を 2 回、 フ ォロ ーア ッ プ研 修 (座学およ び演習) を 2 回、 介護等体験実習生や教育 実習生への指導、 外部の研修での講師な どの機会 を活用 し て指導実習研修 2 回、 計 6 回実施 し、 その他に適宜個 人研修を実施 し た。 使用 テキス ト は平成23年度に同 じで あ る o 3 ) 平成25年度 (1 )平成25年度の歩行訓練補助員選定についての状況 前年度の研修 を経 て一定の経験 と 実践 と を重ねて き た 2 名の教員 が異動 にな り 、 継続的 な歩行訓練補助員 と し ての連携がで き な く な っ た。 ま た、 大阪市全 域にわた る 大幅な人事異動 によ っ て本校の教職員構成 も大き く 変わ り 、 今年度は新 たな歩行訓練補助員 の選定 に至 ら なか っ た。 し か し、 全校的 な研修体制 を さ ら に充実 さ せ、 次年 度 に向け て人材 を育成す る と い う 観点か ら の取 り 組みは 継続 し て実施 し てい る。 (2)平成25年度の中心的な取り 組み 学級担任や教科担任 と し て関わる各場面での指導に活 用でき るよ う な指導方法の体験研修を夏季休業中に全校 で実施す る と と も に、 学齢や個々の児童生徒の実態 に応 じ た基礎的能力の指導、 手引 き によ る歩行の指導、 補助 具 を使用 し な い歩行 の指導、 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの
芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 実施の各項目につい て学部 ごと に研修計画 を立てて実施 し てい る。 3 . 成果と今後の課題 成果と今後の課題を次に示す。 ①教職員のなかで歩行指導や基礎的能力等の重要性に つい ての認識が高ま り 、 歩行訓練士 と 連携 し て主体的 に 取 り 組も う と す る教職員 が増え た。 ②歩行訓練補助員 に対す る研修時間の確保 平成23年度 ・ 24年度には、 年間を通 し て放課後等に個 人研修 を行え ないか検討 し たが、 時間の確保が困難で長 期休業中に フ ォロ ーア ッ プを実施 し たり 、 外部支援等の 機会 を研 修に位置づけ て実施す る に と どま っ た。 ③指導方法のマ ニ ュ アル化 本研究で取 り 組 んだ経験 を基に本校の実情に応 じ た指 導 マ ニ ュ ア ル を ま と めてい き たい。 特 に、 フ ア ミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンの実施方法 につい て検討 を深 めたい。 ④継続的 な歩行訓練補助員 の育成の必要性につい ての 発信 校内組織であ る自立活動委員会 を通 し て管理職にも働 き かけ てい く 必要性があ る。 Ⅷ. 実践事例 5 : 宮城県立視覚支援学校 1 . 研修会のあ り 方 1 ) 研修会の内容 と 方法 ・ 留意点 研修会の内容 と 方法 ・ 留意点は以下で あ る。 (1)手引 き によ る歩行の方法 ・ 留意点 ①歩行訓練と し ての視覚障害者の手引 き技術向上のた めの方法 (A の方法) と 介助 と し ての手引 きの方法 (B の方法) の 2 パタ ーンを行う 。 今回の研修では15回演習 を実施 し た内、 10回 を手引き によ る歩行の内容で行 っ た。 ②A の方法 と B の方法の内容や相違点につい て時間 をかけ て し っ かり 身 に着 く よ う にす る。 (2) フ ア ミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンの方法 ・ 留 意点 ①時間 を多 く 費や し、 歩 き慣れて覚え る と い う 事 では な く 、 室内 フ アミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンや廊 下 フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン と い っ た安全 に効率 よ く 確実 に歩け る理論 と 技術 を講義や演習 で時間 をかけ なが ら し っ かり 理解 し、 実施で き るよ う にす る。 (3)補助具を使用 し ない歩行の方法 ・ 留意点 ①手によ る伝い歩 き を行う 。 2 ) 研修会の総合的留意点 次に研修会の総合的留意点 を記す。 ①研修時間の確保が難 しい ため校内での年間研修計画 の中 に組み入 れて十分 な研 修時間 を設定す る必要があ る と 思 われる。 ②研修会参加者を希望制にするか指名制にするかを検 討す る。 今回の研修では、 各学部 1 名ずつこ ち ら から指 名 し て選出 し た。 指名制の場合は歩行指導に関す る技量 や意欲等 を見極め る必要があ るが、 研修会終了後、 確実 な戦力 と し て活躍 し て も ら え る可能性があ る。 2 . 歩行訓練補助員 と の連携 歩行訓練補助員 と の連携 に関 し て以下の項日 にそ っ て 述べ る。 (1 )連携の内容と 方法 ①歩行訓練補助員が歩行指導 を行なう 授業に入り 、 指 導内容 と 方法の検討 を一緒に行い なが ら授業 を進め る。 ②歩行訓練補助員 に新転入職員研修の際、 講師 と し て 手引 き に よ る歩行 と フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ンの内容 で研 修 を実施す る。 (2)連携の事例 ①寄宿舎生徒の歩行指導 を寄宿舎指導員 と歩行訓練補 助員 と歩行訓練士の 3 名で実施 し、 メ イ ンの指導 を歩行 訓練補助員 が行 っ た。 歩行訓練士が指導方法や内容につ い て具体的 な ア ド バイ ス を行い なが ら 進めた。 ②歩行訓練士が行う 歩行指導に歩行訓練補助員 1 名が 同行 し て実際場面 を見て も ら っ た後、 歩行訓練補助員 が 同一生徒の歩行指導 を行な っ た。 ③新転入職員研修で歩行訓練補助員 が講師 を行い、 研 修内容や方法は歩行訓練士 と 相談 し ながら定めた。 3 . その他 本校の場合、 歩行指導は担任か自立活動担当教員 ( い ず れも非専門教員 ) が行 っ てお り 、 残念 なが ら白杖 によ る歩行 も実施 し てい る。 歩行訓練士は 1 名 し かいないた め、 すべての児童生徒の歩行指導は担当 で き ず、 非専門 教員 には手引 き に よ る歩行 と フ ア ミ リ ア リ ゼ ー シ ヨ ン を 中心 と し た内容 を行 っ て、 屋外での歩行に関 し ては歩行 訓練士が実施す る と いう 事が難 し い状況にある。 今後、 非専門教員 と歩行訓練補助員 と歩行訓練士 と の 3 者の連 携 も検討 し ていかな く てはな ら ない こ と が課題で あ る。
IX. 実践事例 6 : 兵庫県立視覚特別支援学校
1 . 実施内容 と 評価 1 ) 歩行訓練補助員養成研修会の内容 ・ 方法の確立 本校では全教職員 を対象 と し た研修会は実施 し てい な い。 そのため、 分科会形式 で行 っ てい る 「専門研修」 の-
グルー プの メ ンバ ー を歩行訓練補助員 と 仮定 し て、 次 の内容で座学 と 演習の形式 で養成研修 を実施 し た。 ①基礎的能力の指導 ②手引 き によ る歩行の指導 ③補助具を使用 し ない歩行の指導 ④ フ アミ リ ア リ ゼー シ ヨ ンの実施 (室内 ・ 廊下) ⑤白杖 によ る歩行指導の基本的 な事柄 と 進め方 こ の研修会実施に際 し ての留 意点は以下で あ る。 ① 「専門研修」 の開催が月に 1 回 1 時間程度で 8 回実 施 し たが、 出張や年休等で毎回必ず欠席者がいる状態で なかなか内容 を深 めてい く こ と が難 し か っ た。②研修内容の①につい ては、 基礎的能力 の項目 を提示 し、 日常生活の中で指導で き る場面 に気づ く こ と が大切 で あ る と し た。 ③研修内容の②③ につい ては、 演習中の移動場面 で行 い、 少ない研修時間 を有効に活用す るよ う に し た。 逆に 時間 を取 ら れる こ と も あ っ たが、 タ イ ムリ ーで あ る こ と が大切と 考え、 研修時間後や後日に時間を取り 、 受講者 が理解で き るよ う 丁寧 に指導 し た。 ④研修内容の③につい ては、 同④の指導に不可欠で あ るためその演習場面で取 り 出 し て指導 し た。 ⑤研修内容の④につい ては、 担当 し てい る児童生徒が 実際に使う 教室や廊下を使用 し、 相互に指導 し合う 演習 を行 っ た。 ポイ ン ト をお く 場所や言葉 を考え てい く こ と で、 日頃気がつかない危険性や配置のアイ デアに気づ く こ と があ り 、 意義深い も の と な っ た。 ⑥研修内容の⑤につい ては、 白杖の構成、 白杖の持 ち 方 ・ 構え方 ・ 振り 方、 直進歩行、 リ ズム歩行、 障害物回 避、 白杖 によ る伝い歩 き、 白杖の石突 き の種類 と利用 に 絞 っ て行 っ た。 本来、 歩行訓練補助員 の指導範囲外では あ るが、 知識 と し て、 ま た児 童生徒側 に立 っ た視点 が持 て るよ う に と い う 考え で実施 し た。 演習は他の領域 と 同 様 にアイ マ ス ク体験 を伴 っ て行い、 視覚優位の指導の不 適切 さ を体験か ら気づけ るよ う にす る こ と がで き た。 ⑦ グルー プ内 には全盲や弱視の教師 も お り 、 当事者自 身の体験に基づ く 意見 も活用で き、 逆に基本的 なこ と を 知 つて も ら え る機会 と も な っ た。 2 ) 歩行訓練士 と 歩行訓練補助員 と の連携のあ り 方の 確立 歩行訓練士 と 歩行訓練補助員 と の連携のあり 方に関す る留意事項を次に示す。 ①白杖歩行 を含む歩行指導のニ ーズがある児童生徒の 担任 と 日常的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を通 し て連携 を行 っ た。 改ま っ た時間 を作 る こ と が難 し く 、 廊下や食堂、 下 校時 な ど、 日常的 な指導の現場で適切 な機会 を逃 さ ない よ う にす る こ と で よ り 印象づけ ら れ、 理解 を深めて も ら う こ と がで き た。 ②注意 し たこ と は、 歩行訓練士が直接児童生徒に指導 す るのではな く 、 で き る だけ歩行訓練補助員 と し ての担 任自身 に指導 し て も ら う よ う に し たこ と であ る。 ③手引 き によ る歩行 につい ては、 単 な る移動の補助 で は無 く 、 ま た慣 れによ る諸動作の簡略化 に な ら ない よ う 、 安全最優先であ るこ と と 互いに向上 を目指す姿勢であ る こ と を繰り 返 し言葉に表 し て伝え るよ う に し た。 ④重複障害児童生徒に対す る手引 き によ る歩行は、 指 導よ り も 移動の補助にな ら ないよ う 、 安全重視で手引 き の受け方の向上 を目指 し てチ ャ レ ン ジ し てい く よ う 促 し た。 ⑤歩行訓練士が先に指導 し た対象児童生徒の単独通学 につい ては、 担任 と と も に通学の様子 を観察す る機会 を で き るだけ多 く 持 ち、 観察 ・ 注意点 を示すよ う に し た。 気 にな る こ と はま ず歩行訓練士 に相談す る こ と と し た。 ⑥様々な日常的な移動場面で担任の児童生徒に対す る 日常的 な観察力 が深ま っ た実感があ る。 2 . 今後の課題 今後の課題 につい て、 以下の項目 にそ っ て その内容 を 記す。 (1)研修時間 ・ 機会の確保 ①長期休業中の 3 日間程度を研修日 と し て設定 し、 集 中的に行う 。 ②参加対象者は全教職員 (寄宿舎指導員 を含む) と し、 担当児童生徒に関連す る職員 (担任、 自活担当者、 寄イ宿 舎指導員) を中心と する。 ③研修会後は歩行訓練補助員 と し て児童生徒への直接 指導 を担 っ て も ら う 。 ④ こ れま で通り 日常的 な場面に指導、 助言 し てい く 姿 勢 を大切に し てい く 。 (2)研修内容の検討、 指導資料の作成 ①既存の資料 と 独自作成の資料 (通学路中心) をその 都度検討、 作成 し保存 し てい く 。 (3)指導体制の確立 ①現在は歩行訓練士が歩行訓練補助員 (担任) と 個別 に対応 し てい る。 ②分掌上では自立活動 を指導す る支援部の中に位置づ け てい く こ と が妥当 と考え るが、 本校の歩行訓練士 ( 2 名) はいず れも支援部員 では無い ため、 新 たに分掌 を起 こ し て対応す る シス テ ム作 り が必要で あ る。 ③分掌が設置で き ない場合は、 何 ら かの組織 を作 っ て 対応で き る よ う にす る。 ④上記の取 り 組 みの中 に、 歩行訓練 に かか る 諸経費 (教員 の負担) の扱い につい て、 視覚障害教育 を行 う 学 校 と し てあ るべ き対応 を検討 し てい く 。 (4) 「 (仮称) 歩行指導チ ーム (OM IT)」 の立ち上げの 検討 ①歩行訓練士 を中心に各学部から歩行訓練補助員 を選 び、 5 ~ 7 名で組織す る。 ②歩行訓練補助員は、 歩行のニ ーズのあ る児童生徒に 対 し て身近な立場で継続指導に関われる教師 を選ぶ。 ③年度初めに全児童生徒に対 し て 「歩行指導に対す る ア ンケ ー ト 」 を行 い、 そ れぞ れの ニ ーズ に よ っ て指導計 画 を立 て、 必要経費 を予算立 て て指導 に臨め る よ う にす る。 ④校外におけ る白杖によ る歩行指導は歩行訓練士が行 う o ⑤主に校内で行う 基礎的能力の指導、 手引 き によ る歩 行の指導、 補助具 を使 わない歩行の指導、 フ アミ リ ア リ
芝 田 裕 一 出 井 博 之 正 井 隆 晶 山 田 秀 代 中 野 純 子 千 葉 康 彦 桝 岡 良 啓 井 上 芳 子 ゼー シ ヨ ンの実施は、 歩行訓練補助員 が歩行訓練士 と と も に、 あ るいは歩行訓練補助員 だけ で担当す る。 (5 )連携の具体性の検討 ①定期的な情報交換会を持ち、 歩行訓練補助員同士が 持 つ日頃の疑問や不安 を共有 し、 連携 を深 めてい く 。 そ れぞれの負担 を考え る と 学期 に 1 回程度が妥当かと 考え る o ②指導経過 を記録す る 「個人 カ ルテ」 (進度表) を作 成 し 、 担当 者が変 わ っ た時 に ス ムーズ に引 き 継 ぎがで き る よ う にす る。 付記 本研究は、 科学研究費補助金 (基盤研究 c 一般、 研究代表者 : 芝田裕一、 課題番号 : 23531291、 期間 : 平 成23年度~ 平成25年度) によ る 「視覚障害児童 ・ 生徒の 歩行指導におけ る教員 の連携に関す る研究」 の概要 をま と めた も ので あ る。