品詞分類の歴史と原理 : 第4章の1 : 「一つの試案」のための理論上のわく組み-前
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(2) 品詞分類の歴史と原理 (第 4章 の 1). 第 4章. 一つの 試案. 第 2章 で は品詞分類 の方法 を歴 史的に概観 し,第 3章 で は20世 紀 の諸学. 4。. 者 によ る分類 原理を考察 した。 これ らの諸章を読み返す時 , `there are as. many classificatiOns as grammarians'(Hattori,1967, p。 564)と い う言 葉 が想起 され るので あ るが ,筆 者な りにま とめてみ ると次 のよ うな特徴 があ るよ うに思わ れ る。 (1)用. い られて い る基 準が多種多様 であ り ,ど の 基準 によ るか の選 択 は一見 恣. 意 的 で あ る。 しか し,論 者 の立 つ 基盤 ,言 語観 などとの 関連を併 せ て 考 え る とそれな りの理 由が あ るよ うに思 われ る。 た とえば ,哲 学者 た ちの分類 で は論理学 的基準 が最重要視 されてい る し,構 造主 義を志 向す る文 法 家 の 分類が意味的基準を重視 す ることは考 え られず ,各 個別言語 の完全 な記述 を求 めて形態論 的な い し統語論的基準 に よ って い るのに対 し, uniVersal. grammarあ. るい は. general grammarを 志 向す る学者 の 分類 において. は意味的基準が重視 されて い る。 佗)論 者 の 自国語 あ るいは研究対象 とす る言語 の 特性 に影 響 され るところが 多 い. 。. 侶)20世 紀 において は統語論的基準が優位を 占めて い る。 3で 挙 げなか った 学 者 の例 と して , ウルマ ン (Stephen Ullmann),. Schlauch),. シュ ラウチ (A/1argaret. トル ンカ (Bohumil Trnka)の 所説を 弓1用 して お く。. (cf.. 4。 1。 1。 ). 語類 あ るいは品詞 も適 当な位 置づ けをす るのが難 しい。 ¨0そ れゆえ. ,. 語類を語彙範疇 と して扱 うほ うが論理 的 と思 え るか もしれな い。 しか し 語類を統語論 の 内部 に位 置 づ け ることに 味方す る論拠が二 つ あ る。す な わ ち ,品 詞 と文 の部分 との 間 に 密接な関係 が存在す ること (名 詞―主 語 及び 目的語 , 動詞一述語 ,形 容 詞一修飾語な ど), および , 屈折 や 語 順 のよ うな統語論 的基 準 によ って 語類 は区別 され るとい う事実 であ る。. (Ullmann,1972,pp.34f。. ). 基 本的 に は ,単 語 (屈 折語 も非屈折語 も)の 品詞分類 は ,時 には単語.
(3) 杉 浦 茂 夫. 185. の 形式 も併 せ て 考慮 され るにせ よ ,文 中で の単語 の用 い方 によ って 決 ま る。 (Schlauch,1967,p.118) あ る言語 の単語を意味側面 によ って 品詞 に分類 しよ うとい う試 み は. ,. 普遍 的 に適用す ることはで きな い。 そのよ うな試 み は諸言語間の真 の相 違点を顕示 す るので はな く隠 して しま うか らで あ る。我我 の採 った 構造 主義的接近法 によれば ,単 語 の分類 はあ る言語 の 中 に実際に見 い出され る基 本的 な形 態論的対立 関係 に単語 が加 わ って い るか ど うか によ って 決 め られねばな らな い し,そ の言語 の個 々の単語が加入す る対 立 関係 の 東 が単語 の類を構成 す るとい うことにな る。 (Trnka,1970,p.1) これ らの 多種多様 な品詞論を 検討 してみ るとき ,こ れ らの なかで全 く荒唐無 稽 な もの はなか ったので はないか と筆者 に は思 われ る。 Aと い う立場か らな されたaと い う品詞分類を ,Bと い う全 く違 った立 場か ら批判す ることは容 易 で あ ろ う。 しか し,根 底 に あ る言語観 を無視 して品詞分類だ けを独 立 させ. ,. a,b,c,… とい う分類法 の優劣を比較 す ることは ,議 論 の歯車がかみ合 わず混 乱を生 じるだ け の結果 に終 るで あろ う。意味的基準 によ って 分類 された名詞 と ,統 語論的 あ るいは形 態論 的基準 によ って 分類 された 名詞 とが ,大 部分 が 重 な って い ることは ,経 験上 の事実 と して認 めて よいで あろ う。 したが って それぞれの分類法 の根底をなす言語観及び研究態度を探 り,そ れ らとの 関連 を 問題 にす るのでな ければ ,み の りあ る議論を期待 す ることはで きな いよ う に 思われ る。 太 田朗. (1974,p.6)の 言葉を借 りるな らば ,「 単 な る分類 ,記 述 とい っ. て も ,そ こに なん らか の一般 的原則 ,(作 業 )仮 説 の如 き ものが なければな らない。 なん らの偏見 な しに ,全 然 白紙 の状態 で ,言 語事実を あ るがままに 記述す るな どとい う こ とは , 不可能 な ことで あ る。 」 比 愉 的な言 い方 をす る と ,し っか りと した基礎抗を 打 ち込んで は じめてその上 に立 派 な建造物 が構 築 され るの と全 く同様 に ,品 詞分類を構築す るために は基礎 杭 を打 ち込 まな ければな らな いので あ る。 ところが基礎 杭 を打 ち込 む場所 によ って建造物 が 変 って くるの と同様 に ,品 詞分類 も杭を打 ち込む場所 によ ってその形を 変 え. ,.
(4) 186. 品詞分類の歴史と原理. (第. 4章 の 1). る こ とにな る。 それで は ,品 詞分類 のための 杭を打 ち込 む 場所 と して選択 し う る立 場 にはどの よ うな ものがあ るだろ うか。本論 で は次 の二 組 の選 択を考 えてみた い。 (1)普 遍主 義を採 るか否か。 (2)言 語記述 の出発点を 文 に求 め るか ,単 語 に求 め るか。. 各組 において いずれを選択す べ きか ,に つ いて は以下 で考察す ることにな る が ,そ れぞれ の 組 の どち らの立 場 に も言 い分 はあ って どち らかが決定的 に正 しい とは断定で きな い こ とが予想 され る。 したが って ,い ずれを採 るか は. ,. その こ とによ って (本 論 で は「 品詞分類」 につ いて)ど れだ け の ことが 説 明 で きるか によ るほか はな く,最 終的 に はあ る程 度恣意的な選択 とな らざ るを えないで あろ う。 その検 討 に入 る前 に ,今 ま でのま とめ も兼 ねて ,諸 学者が言及 して い る諸 基準 の 併用・ 優先 とい う問題 につ いて考察 し,筆 者 と して の解 決を得 て お き た い。. 4。. 1.分 類基準 の併 用・ 優 先 について. 4.1.1 諸 学者 の所説 Crystal(1966)に よれば ,「 言語分析 の レベル とい う 概念を 利用 し」. ,. どの レベル に属す る]基 準 で も理論的 には 潜在 的に関係が あ る (potentially. relevant)と 考 え ると ,次 の 5種 の 基準を 設定す ることが で きるとい う。 (pp。. 41 ff.). (1)音. 韻論 的基準. (2)形. 態論的基準. G)辞 彙論的 (lexiCal)基 準 に)意 味論的 ,概 念 的基準 (9統 語論的基準 この うち ,(1)(2)14)(5)は. 1。. 5で 挙 げたデ ィニ ー ンの定義 と同 じ内容を もつ と考. え られ るが ,旧 )に つ いて は ,「 配合性」 (collocability)の 類以 あ るいは 同.
(5) 杉. 7計. i茂. 187. 夫. 一 性 とい う観点 か ら類を定義す る もので ,こ の分野 での研究 はまだ進ん で い ない ので今 の と ころは利用す ることがで きな い と して い る。 ロー ビ ンズが ,形 態論的基準 よ り統語論 的基準を優先 させ た ことにつ いて は ,そ の理 由 も含 めて ,3.5.2で す でに触 れた と こ ろで あ る。 ク リス タ ル は. ,. 英語 とい う特定言語 の 語類分 けを考察す るに際 し,上 の 5基 準 の 内部 にそれ ぞれ さ らに い くつ か の基準があ ると して ,そ の基準 の間 の ラ ンクづ けを行 っ て い る。 た とえば ,形 容詞を設定す るため の基準 と して (1)決. ,. 定詞 と名詞 の間 に起 こ りうるか (attributive). (2)be動 詞 の直後 に起 こ りうるか. (prediCat市 e). の いず れが重要 で あ るか。 また 名詞を設定す るため の基 準 と して. ,. (1)数 ・ 格 の 屈折をす ること (2)文. の主語 とな りう ること. 13)冠. 詞 の直後 に続 き うる こ と. (4)派. 生語尾 によ って 特徴 づ け られ ること. の うち ,い ずれが最 も 重要 であ るか。 ク リス タル の考 え る 解 決策 は 統計的 (statistical)で あ る。 すなわ ち ,そ の基準 によ って 設定 され る語類 に属す る単語 の数が多 ければ多 いほ どそ の基 準 は一般性を もつ ことにな る。 その結 果 ,形 容詞 の場合 は(1)の 基準のほ うが ラ ン クが上 で あ り ,名 詞 の場合 は9)が 第 一 位 で ,(1)は かな り高位 ,14}は かな り低位 の ラ ンクを 占め ることにな ると して い る。以 上 の所論 は興味深 い もので あ るが ,ク リス タル 自身 も認 め るよ うに ,い くつ の基準を適用す るか ,ど れだ けの下位分類を認 め るかな どの 間 題 は残 されたままで あ り ,恣 意的であ るとのそ しりは免 れな いで あろ う。 ヴ ァ ン 0ウ ィ ック. (E.B.Van Wyk,1966)は ,バ. ンツー諸語 の一つで あ. る北 ソ ト語 (Northern Sotho)の 品詞分類を 考察す るに 際 し,次 のよ うな 方法を採 って い る。 まず ,「 分類 に際 して どのよ うな原理 や基準 が用 い られ るべ きで あ るか」 とい う間を発 し,そ れに対す る答 え と して ,形 態論 的 0統 語論 的・ 意味的・ 音韻論 的 の 4基 準を それぞれの下位基準 とと もに設定 して 考察を進 めて い る。 北 ソ ト語 に 関 して これ らの基準を 排他 的か つ 網羅 的 に.
(6) 」 88. 品詞分類の歴史と原理 (第 4章 の 1). (eXClusively and exhaustively)に 適用す ると ,前 三 者 の 基準 はあま りに も多 くの類を生 じて現実 の 役 に立 たず ,ま た非常 に広 範囲な類 の重複を生 じ ることにな って その結果生 じる分類 は全 く役 に立 た ず ,音 韻論的基準 ははる かに少 い類 しか生 じな い し重複 も生 じないが ,総 合的 (comprehensive)な 目的にかな うよ うな分類 に は至 らな い とい う (p.247)。 そ こで ,ヴ ァ ン 0ウ ィ ックは ,有 効 な分類方法 と して次 の よ うな諸基準 の併用 0優 先 とい う原則 を考 え るのであ る (p.251)。 (a)形 態論的基準 と 統語論 的基準 が. ,意 味的基準 よ り 優先 し. (take preced―. ence over)な ければな らない。 (J形 態論的基準 と統語論的基準 とは重要 度 の上 で等 しい ラ ン クを もつ 。 {C)統 語 論的特徴 と. 同時 に生 じる (coinCide with)形 態論的 特徴 は, その他. の 支配的な分類原理 の 中 に相 関物 を持 たな い特徴 よ り優先 しなければな ら な い。 は)意 味的基準 と音 韻 的基準 とは補助的 (subsidiary)で あ って ,形 態論 と統 語論 の根拠 に基 づ いて 語類が確立 された 後 で の み適用 され る。 {e)し. か し,形 態論 的基準が十分 でない まま上述 の諸原則 を基 礎 と して分類を. す る ことが認 め られ る場合 に は ,意 味的基準 が要求 され ることもあ りうる。 以上 の 5原 則 に従 って 具体 的な手順 (prOcedure)が 5つ 示 された 後 に彼 が達 した北 ソ ト語 の 品詞分 けは 次 のよ うであ る. (pp。. 254 ff.)。 各 品詞 には ,本. 質的特徴 (essential features)と して 形態論 的・ 統語論的特徴が 示 され. ,. 付加 的特徴 (additional features)と して意味的・ 音韻論的特徴が示 され. ,. その 後 に実例 が挙 げ られ て い る。 ここで は ,後 で示 す試案 との 関連 もあ るの で ,意 味的特徴 だ けを付記 して お く。 (1)名. 詞 「 事物」 を指示 す る (denote bbjects'). 唸)代 名詞. 物 に対す る場面指示 的言及を含 む (contain deictic reference to. things) 13)動. 詞 「 過程」を指示する (denote`processes'). (4)間. 投詞的l旨 示詞 (interjective demonstratives).
(7) 杉 浦 茂 描 写 的 , 場 i互 iオ 旨示 的 , オ 旨示 的. 夫. 189. (appellative,deictic and demonstra¨. tive) 1励. 副詞 「 過程」 の「 様態」 を指示 す る (denote`manner'of`processes'). (6)不 変化小辞 (7)表. 関係を指示 す る (denote relations). (particles). 意音 (ideOphones). 性質 ,過 程 ,状 態 な ど の音的描 出 (音 象徴 ). (phOniC representation (sound symbolism) of qualities, pro― cessese states,etc.) (8)間 投 詞. 描 写 的 (appellative). 彼 は以 上 の 8品 詞 を 多 様 な基 準 に よ って グ ル ー プに 分 け て い るが ,そ の 際用 い られ て い る基 準 もま た 恣 意 的 で あ る と言 わ ざ るを えな い。 以 上 ヴ ァ ン・ ウ ィ ックの 北 ソ ト語 に つ いて の 品詞 論 を 紹 介 した が ,「 基 準 の 優 先」 を 考 慮 し ,日 本 語 や英 語 と系 統 も構 造 も異 な る言 語 に つ いて 設 定 され た 品詞 が 案 外 日本 人 に も理 解 可 能 な範 囲 内 に あ り ,特 に意 味特 徴 の 多 くは 日本 語 や 英 語 に そ の ま ま 適 用 で き る もの で あ るよ うに 思 わ れ るの は 驚 くべ き こ とで あ る。 Fリ. ング ワ誌』 の語類特集号 に はその他 の言語 につ いて の語 類分 けが紹介 さ. れて い る。 日本 語を扱 った ダ ニ エル ズの 論文 につ いて は 2.3。 2で すで に紹介 した ので ,上 の ク リス タル とバ ン・ ウ ィ ックの もの と共 に省 くことに して. ,. それ以外 の論文 で どの よ うな基準 が 用 い られて い るかを 一 覧 表 に してみよ う。 ただ , これ らの 諸論文 の 中 に は 基準 に つ いて 述 べ て いない もの も あ り ,述 べ て いて も明示 的で の な い ものあ る。 そのよ うな場合 に は ,筆 者 の判 断によ った が ,そ の判 断 の根拠 とな った ペ ー ジを示 す ことに した。各論文 の 用語 は統一 されて い るわ けで はないので ,一 覧 表 で は統 一 した。 た とえば. ,. `inflection'`paradigmatic'な どはす べ て ,`mOrphological'と して あ る。優 先順位が つ け られて い る 場合 に は ,(. )内. に 数字を 入れ て示 す ことに し?. 同 じラ ン クで併用 されて い る時 に は列挙す るに とどめ る。. 1)こ の順位 は,「 二 つ以上 の基準 が食 い違 った結果 を生 じた場合 ,ど の基準 の結果を 優先 させ るか」 とい う意 味 の場 合 と,「 基準 を適用す る時 ,ど の順番 で行 うか」 と い う意 味 の場合 とが あ る。.
(8) 品詞分類 の歴史と原理 (第 4章 の 1). 19θ. 執 筆 者. 1対. 象 言 語. Navaho. H.Hoijer. 基 準. 1. ページ. syntactic. pp.6ff.. morphological. pp.8ff.. (1)mOrphological. pp.89f.. (2)SyntaCtiC FoWo House― holder. Ancient. Po Kratochvil. L4odern. phonerr1lc. Standard. morphological. Chinese. syntactic. 主 と して rrlorphological. p.90 pp.116ff.. Greek p p p. 135 136ff。. 148. (特 に下 の二 つ を 重視 ). P.Ho Matthews. Latin. 変形 文法的立場 を採 る syntactic lexical. morphological. Yokuts. So Newman Fo Ro Palrner. Bilin. pp.183f.. (2)syntaCtiC. p.192,p.194. morphosyntactic (2)syntaCtiC. 以上 の. Fリ. Yurok. p.161 pp.161ff.. (1)mOrphological. (1)mOrphological. R.H.Robins. pp.159ff。. p.201 p。. 209. p.206. morphological. 214. syntactic. 215. ング ワ誌』 (語 類特集号 )所 収 の ものに加 えて ,Householder(ed.. 1972)に 収 め られた論文 の うち , 語類分 けへ の 言及 の見 い 出され る ものに つ いて 同 じよ うな一 覧表を続 けてみよ う。. ::. :│. ::. Sundanese. syntactic. Vietnamese. syntactic. Ponapean. (1)morphological. 290. (2)syntaCtiC. 290. 242. pp.277ff。. │::::::. │. 2基 準が重視 されて い ることが 判 る. 一 見 して ,Syntactic,morphologicalの が (cf。. p。. 4の ま とめ(3)項 ),こ. れは. 3。. 3. で 引用 したサ ピアの「 統語形式 の 限.
(9) 杉 浦 茂. 191. 夫. 界 の外 にある品詞 は ,鬼 火 のよ うに人を迷 わす もの (a Wil1 0'the wisp)に す ぎな い」 とい う言葉 によ って 象徴 され る態度 の 表れ と観 ることがで きる。. 4。. 1.2 本論 での優 先順位 諸基準 の併用 な い し優先 とい う こ とは ,そ の理 由を明示 しない限 り,研 究者 の直観 によ って あ らか じめ彼 の頭 の 中 に出来 上 って い る語類分 けを 正 当化す るために後か ら考 え出 した方法 にす ぎな い とい う印象を与 え る もので あ る。 他 方 ,一 つ の基準 だ けで 押 し通 す こ とは しば しば困難 で あ り ,ま た必ず しも満 足 な結果を もた らす とは限 らな い ことは ,フ リーズの分類 (cf。. 3.4。. 1)が 例証. して い る。 この点 で ,方 法論上 のデ ィレンマ にぶ つ か る こ とにな るが ,本 論 で は ,基 準 に優先 順位を つ けて併 用す るための理 由づ けを言語観 との 関連 によ って 明示 す ることによ って ,こ のデ ィ レンマを あ る程度解 決 した いと考 え る。. Chafe(1970)は 「 言語 は意味を音声 へ 変 え る 方法 で あ る」 とい う命題 か ら出発 して ,概 略 ,意 味構造 一→ 表 層構造 一→ 音形構 造 一→ 音声構造 とい う 「 方 向性」を特徴 とす る 言 語観 を 主 張 して い る 「 方 向性」を主張す る理 由 とな ったのは (1)量. (pp。 55 ff.)。. チ ェイ フが. ,. と複雑性 の面 だ けか ら見 て も ,言 語 の 意味的側面 と音声 的側面 との間 に. 「 表現 と内容 はあ は明 白な不均衡が存在 して お り ,イ エル ムス レウの言 った らゆ る点で 同格 ,等 価値 だ」 とい う言葉 や ,い わゆ る「 双方 向的 (bidirec― tional)」 な言語観 は間違 って い るよ うに思 われ る こ と (p.57) (2)同. 音異義語 の方 向性 ,す なわ ち言語 に は無数 の 同音異 義 の例が あ るのに対. し,同 義 は存 在 しな い こと (pp.57f.) (3適 格性 の方 向性 ,す なわ ち文 の適 格性 の は意味構造 の 中 においてで あ ること. (Well― (p。. fOrmedness)が 決定 され る. 59). な どで あ る。 さ らに変形理論Ъ 言語観 との 比較対照 にお いて. 2)こ. ,. の場 合「拡大標準 理 論」を指 して い るもの と考 え られ る。チ エイ フは これを統語 論 中心主義 (SyntaCtiCism)と 呼 び ,彼 の主張す る意 味論 中心 主義 (SemantiCism) と対比 させて い る。.
(10) 」92. 品詞分類 の歴史 と原理 (第 4章 の 1). (1)統. 語論 中心主 義 の 図式 は美 的観点か らみて不恰好で あ り ,し か もその不恰. 好 さが 言語 の性格 につ いての本質 的な何かを反 映 して い るとは考 え られな い (pp。 65f.) 9)意 味中心 モデ ル に基 いて 言語使用を説 明す るほ うが容 易であ る (p.66) 旧)意 味 中心 モデ ル のほ うが ,言 語 の実際 の 働 きに通 じて い る人 々の推測 によ り合致 して お り ,動 物間 の コ ミュニ ケ ー シ ョン との 関連 づ け も容易で あ る こ と (p.66) に)統 語論 中心主 義 において 中心 的な役割を 演 じて い る深層 構造 な る もの は. ,. その性質が は っき り して いない こと (pp.67f.) (5)意 味 中心 の立場を採 ることによ っての み. ,簡 単 にそ して 自然 に説明 され る. 特殊 的 (specific)事 実が言語 に は多 く存在す ること (pp.68f。. ). な どの諸点を 指摘 して い る。 「 方 向性」 に 関 して は ,こ れを否定す る意 見 も多 く,ま た「 Chafeの この 意見 はそ うな りそ うだ とい う程 度 で ,決 定 的議論 に欠 けて い る1と い う批判 もあ る。. Leech(1969,p。 31)は ,「 いかな る方 向上 の 依存性 も レベ ル間 に想定 さ れて はいない。 しか しなが ら本書 の議論 とい う限定 された 目的のために は , 意味 レベル に対 して「 生成 的な」 役割を採用 し,意 味指定 (specificatiOn) を ,分 析 の形式 的 レベ ル に対 す るイ ンプ ッ トとみなす ほ うが容 易であろ う」 と述 べ て い る。本稿 で も,「 方 向性」 その ものの妥 当性 に 関す る議 論 に これ 以 上深 入 りす ることは避 けて ,方 法論上 の容 易 さと ,あ る程 度直観 に も合致 す る もので あ るとい う 考慮 によ って ,チ ェイ フの言語観 に 拠 ることに した い。 この こ とか ら,本 稿 で は ,意 味基準を もつ と も優先 し,こ の基 準 につ い て も っぱ ら探究す ることにな るが ,こ の態度 は普遍主義 に立 脚す ることか ら 必然的 に生 じる意味基準 の重視 と も合致す ることなな る。 た とえば ,安 井稔「新 しい聞 き手 の文 法(1)」 ff。. ). 太 田朗 (1974,p.54). (cf.4。. 2。. 3). (『 英語教育』 1974年 10月 号 ,pp.44.
(11) 杉 浦 茂 夫. 普遍性 につ いて. 4.2。 4。 2。. 1. 普遍性 の肯定論 と否定論. 単語 をその種 々な 特性 によ って語 類一― 特 に 名詞 と動詞一一 に分類す るこ とがで きるとい う ことが ,言 語普遍性 の一 つ で あ ることは ,広 く認 め られ て い ると言 って よいで あ ろ う。 その 一例 として ,Robins(1952,p。 291)に 引 5). 用 された メイ エ の主 張を 引用 しよ う。. 名詞 および動詞 とい う範疇 は既 知 のす べ ての言語 の文法 に共通 (commOn) で あ り ,ど の よ うな文法 構造 に とって も必要 な最小 限度 の ものを 構成 して い る。 少 くとも名詞 と動 詞が 普遍 的語類 だ とす る 主 張 は ,筆 者 の知 り得 た限 りで は ,次 の書物 の 中 に見 い 出され る。. Chomsky(1965,p。 28). Fromkin and Rodman(1974,p.226) Greenberg (1963,p。 74). Hockett(1963,p.4及 びp.23) 」akObSOn (1963,p。 265). McNeill(1971,p。 534) この うち ,マ ックニール の所説 につ いて は ,大 田朗 (1974,p。 32)に も紹介 されて い るよ うに ,言 語普遍性 に強い もの と弱 い もの とを区別 しよ うとい う 点 が 目新 しい (p.534)。 彼 によれば ,[弱 い言語普遍性 とは「 普遍 的な認知 能 力 の言語 におけ る反 映 で あ り,普 遍 的認知特性 は ,弱 い言語普遍性 の原 因 と して必要か つ 十分 な も の と な り]キ 強 い言語普遍性 とは「 言語 に特有 な能. 5)ロ. ー ビンズの同論文 の中には,3.3で 既 に引用 したサ ピアの文章 も見 い出され る。 その他に,イ エルムスレウ,ブ レナルが賛成論 として ,オ ー グデ ン 0リ チャー ド ウォーフが反対論 として挙げられている。ウォーフが もっぱ ら literal translation ,. のみに依存 して世界観 の相違を結論 したのは誤 りだとい う反論が, BrOwn(1958, pp.231ff。. 6)マ. )に ある。. ックニール (1972,p.124)か ら,用 語を変更 して引用。.
(12) 」94. 力 の反 映 で あ り ,認 知能力 の反 映 で はない。普 遍的認知能力 は仮 りに普遍的 言語能力 に何 らか の 関連を もつ とすれば ,強 い言語普遍性 の原 因 と して は. ,. 必要 で はあ るが 十分な もので はな い。認知能 力 とは別 に言語能 力が必要 で あ 6). ることは否 定 しがた いか らであ る」 と説明 され る。 そ して ,「 動詞 は弱 い言 語普遍性 ,名 詞 は強い言語 普遍性 で あ る」 (p.535)と 結論 して いる。 以上 のよ うに少 くと も名詞 と動詞 の区別 は普 遍的であ るとす る主 張 に対 して は ,反 論 も多 い。 た とえば , マル テ ィネ編 (1971,pp.54f.)は 次 のよ うに言 う。 最近 の言語学研究 の 進歩 によ る大 結果 の一 つ は ,い わゆ る品詞 と して名詞. ,. 動詞 ,形 容詞 な どに分 け る分類 は ,あ らゆ る言 語 に適 用す べ き記述 に必須 の手段 と して少 しも役に立 たな い ことを 明 らか に した。 マ ダ カ スカル語 で は ,少 な くと も一 系 の辞項 で はその全 部 にわた って ,動 詞一 名詞 の対立 が な く,こ の言語 の ′υ″力ηαは場合 によ って ≪ 会合≫ と して ,あ るいは ≪会 合 が あ る≫ と して訳 出す る必要 が あ る。 したが って ,こ のよ うな名詞・ 動 詞 な どとい うカテ ゴ リーを統辞法 的記述 の基礎 とす ることは ,常 に必 ず し も意味が あ るとはいえない。せ いぜ い同 じ言表 中 の他 の要素 との組 み合 わ せ か ら見 て 確率 的に ,こ の要素 はよ り名詞的 で あ り,あ るいはむ しろ動 詞 的だ と して単純 に制約を加 えて理解す るよすが とな るだ けであ る。 だか ら こ うい う伝統 的な分類 に は ,諸 言語を通 じて の普 遍的な妥 当性 のな い所以 が よ くわか る と思 う。 一 般 に ,名 詞 も動 詞 もな い 言 語 を想 像 す る こ と は容 易 で あ って も ,関 係 機 能 的 記 号素 の な い 言 語 の 存 在 はまず 考 え られ な い。 (下線 杉浦 ) キ ャ ロル. (1972b,pp。 47 ff.)に 弓1用 され た ウ ォ ー フの 所 説 も同趣 旨 の もの. で あ り ,さ らに 筆 者 の 知 りえた 限 りで は ,次 の 書物 の 中 に見 い 出 され る。. Bloomfield(1935,pe 20) Firth (1957,pp。 190f。. ). Nida(1964,p。 95) Sapir and Swadesh (1964,pp。. 101f.). ,.
(13) 杉 浦 茂 夫. 195. Robins(1952)は ,「 普 遍文法 に おける 名詞 と動詞」 とい う 表題 か らも察 せ られ るよ うに ,本 節 の 内容 と深 い 関係が あ る。 この論文が普 遍性 の 肯定論 のよ う か否定論か につ いて は問題 が あ る。 Dixon(1965,p。 95の 脚注 )は 次 に述 べ て い る。 ロー ビンズ は ,文 法 上 の普遍性 は (最 小 自由形 式 と しての)「 単語」 ,. 屈折」 な どを含 むが ,「 名 「 接尾辞」,「 接頭辞」,「 連 接」,「 膠 着」,「 詞」 と「 動詞」 は含 まな い と ,言 って い る。 296 た しか に ,Robins(1952,pp.295f.)に はそのよ うな 記述 が あ るが , p。 えて いな 以下 を注意深 く読む と ,デ ィク ソ ンの言葉 は ロー ビ ンズの真 意を伝 つ におけ いよ うに筆者 に は思 え る。言語行 為 はす べ て ,時 間 とい う一 の 次元 っ る出来事か ら成 り立 って い るのだか ら,発 話 の流 れを時間 とい う次元 によ て多かれ少 なかれ独立 した有意味 な単位 へ と分節す る ことがで き ,そ の結果. つのは 得 られ る「 単語」,「 接尾辞」,「 接頭辞」 な どの単位が普 遍性を 持 に 当然だ とい って よいで あろ う。 しか し,こ れ らの純粋 に分節 的な単位以外 は普 遍的な範疇 が考 え られな い と ロー ビンズ は明言 して い るので はな い。 む しろ ,3。. 5。. 2で 既 に引用 した よ うな理 由によ って ,「 名詞」 と「 動詞」 を上. の もの とは異 な る種類 の普 遍性 と して認 め る可能性 が あ ることを示唆 して い るよ うに思われ る。 この ことは ,pe 297の 次 の言葉 か らも明 らか で あろ う。. 上. 4。. 名詞 と動詞 とい う用語 が ,す べ ての言語 に適用可能 で あ り ,単 な る名前以 の ものを共 有 して い る ことが判明す るとい う こ とは十分 あ りう る ことだ 。. 2.2 本論 で は肯 定論 に拠 る こと. い 本論 で は ,肯 定・ 否定の両論 の妥 当性 につ いて深 入 りす る ことは避 けた と思 う。 これ らは ,ど ち らもあ る程度 の真理 を含 んで いて ,ど ち らか が決定 的 に正 しい と結論 づ け る ことは筆者 に は困難 で あ るよ うに思われ る。本論. で. は ,名 詞 と動詞を 中心 とす る語類分 け は普遍性を持 って い るとい う立場 を採 るが ,こ のやや 恣意的 とも思 われ る選択 の理 由 は次 のよ うな ものにな ろ う。 {1)上. に挙 げ た諸論文 の 主張 か ら判 断す る限 りで は ,名 詞 や動詞 の設定基準 を.
(14) 品詞分類 の歴史と原理 (第 4章 の 1). 19σ. どの段 階 に 置 くか によ って結論 が変 って くるよ うに思 われ ること。 た とえ ば ,否 定論 と して挙 げたBloomfield(1935,p。 30)に は. ,. あ る種の 特徴 , た とえば 動 詞状 ≪ verb‐ like≫ の 単語 と 名詞状 ≪ nOun― like≫ の単語が別個 の 品詞 と して区別 され るとい った 特徴 は , 多 くの 言. 語 に共通 す る もので はあ るが ,こ れを 欠 いて い る言語 もあ る とい う言葉が あ る。 この 言葉 の「 動詞状 」「 名詞状」 とい う用語が意味す る もの は何 で あろ うか。「 品詞」,た とえば 「 名 詞」,「 動 詞」 とどの よ うに違 うので あ ろ うか。 これ らがすべ て 同 一 基準 によ って 設定 された もの とすれば , ブル ーム フ ィール ドの 言葉 は 自家撞着を 生 じることにな る。 「 名詞状」,「 動 詞状」 は意味的基準 によ る 用語 と して 用 い られて い るよ うに筆者 は理 解 して い るが ,そ うす ると「 意味的基 準 によ る名詞 と動 詞 は どの言語 に も存在 す る」 とい う前提 で ブル ーム フ ィール ドが上 の言葉を述 べ て い るよ うに も解釈 され ることにな る。 また ,前 節 の マル テ ィネか らの 引用文 にあ った マ ダガ ス カル 語 の ′υθ万― α″α場合 も homOnymと して処理 され る可 能性が あ り ,否 定論 の論拠 とは な りえな い こ と も考 え られ る。 普 遍性 の 否定論 の 中 には ,こ の よ うに ,設 定基準を深 い意味 の レベ ル に 置 くこ とによ って 解 消 して しま うもの が あ り ,「 意味を もつ 各 事項 (se_. mantic particulars)か ら抽象度を高 めれば高 め るほ ど ,言 語 は相似 て い るよ うに思 われて くる」 (Hymes,1964,p。 117)と い う こ とにな る。 υ)現 在 ま でにな された言語 の記述 に は ,ほ とん ど例外 な く,語 類分 けが用 い られて お り , その 大部分 に は 「 名詞」,「 動詞」,「 形 容詞」 な どの伝統 的 な用語が 用 い られて い る (cf.1.2.)。 また現代 において , 全 く思 いが けな い構造 を持 った 言語が新 しく発見 され る可 能性 も極 めて 少 い と予想 さ 7)こ. れ る。「 言 語学 は経験 科学 であ る」. とを 認 め るな らば ,上 の諸事実 は. 7)こ の命題は多様な解釈を許す ものであるが,こ こでは,Van Wyk(1966,p。. ,. 234). にク 1う 。 経験科学 としての言語学は,言 語慣用の諸事実に由来 しない先験的な理論を容認 す ることはできない。.
(15) 杉. 浦. 茂. 197. 夫. 普 遍性肯定論 に 味方す るよ うに思 われ る。 旧)近 年盛 ん にな って きた心理学 的な言語研究 の成果 は ,言 語習得 の生得的能 力 に 関す る問題 と相 侯 って ,普 遍性を肯定す る方 向に向 って い るよ うに思 われ る. (cf。. 4.2。. 1。. の マ ックニ ールの所説 )。. (4)Magnusson(1954,p。. 5)に よれば ,英 語 とフィ ンラ ン ド語 との間に は. ,. 品詞 の著 しい類似が見 い 出 され るとい う。英語 と 日本語 の間 で も,少 くと も主要 な品詞 に 関 して類似が見 い 出され ることは多 くの人 々が経験 して い るところで あ る。 9)の 理 由で 述 べ た「 語類分 け」が 存在す ることに 加 え て ,分 類 された各 品詞 に 関 して ,系 統 も構造 も異 な る言語間 に類似が見 い 出され るとい う経験 的事実 は ,い っそ う強力な肯定論支持 の論 拠 とな るで あろ う。. 4.2。. 3. 意味的基準 の重 視. 普 遍主 義 に 立脚 す ることか ら 当然派 生 して くるの は ,「 意味的基準 の重 視」 とい う問題 で あ ろ う。 た とえば ,Greenberg(1963,p.74)は 次 のよ う 1こ. 言 う。 「 名詞」 につ いての 言語 横 断的. (crOsS― linguistic)定. 義 の 妥 当性 は ,ど. ん な場合 にで も ,そ の定義が解 明 しょうと も くろんで い る意味現象 とい う 観点 か ら,そ の 結果 に対す る関係 によ って テ ス トされ ることにな ろ う。 た とえば ,も し「 名詞」 の形式 的定義が ,あ る言語 で「 少年」「 鼻」「 家」 の よ うな語彙を含 む類を ,他 の言語 で「 食 べ る」「 飲 む」「 与 え る」 とい った 項 目を含 む類 と等 しい とす るよ うな結果 を生 じると した ら,そ のよ う な 定義 は 直 ちに , しか も意味的な 根拠 によ って ,拒 否 され ることにな ろ う。 ま た Robins(1952,p.293)の 全体 と して形式 的な観点 か らな された分類や範疇 は必然的に各言語 に個有 の もので あ り ,他 の言語 の 形式範疇 との近似性 (kinship)を い のは 当然 で あ る. 主. 張で きな.
(16) 品詞分類 の歴史 と原理 (第 4章 の 1). J98. とい う言葉 も , グ リー ンバ ー グの 主張 と軌を 一つ にす る もので あ る。 そ し て ,Crystal(1971,p。 71)の 論理 (logic)と い う観点か ら議論す ることがで きるの は ,根 底 にあ る意味. (underlying meanings)あ るい は意味 関係 (relationships of meaning) で あ って ,こ れ らの多様 な関係 が統語論的・ 語彙論的に表現 されて い る言 語形式 (the form Of the language)で はない とい う主張 も同一 線上 にあ るもの と思われ る。 意味的基 準 が今 まで退 け られ て きた ことに はそれな りの理 由が あ った と考 え られ るが ,本 論 で は従 来 の欠 陥 も十分考慮 した 上でな るだ け 精密な ものに 近 づ けた い と 願 うもので あ る (Cf.4。. 4。. )。. しか し,以 下 に掲 げ る ビ ァヴ ィ ッ シュ とブ ラウ ンの 所 説 は. ,. 意味的基準 によ る品詞 分類が可能 で あ るとい う見通 しを強 く支持す る もの の よ うに思 われ る。 意味表示が構成 されて い る原理 は普遍的 ,す なわ ち ,す べ ての言 語 につ い て 同一であ る ,と 仮定 されね ばな らな い。 言語 によ って 異 な る もの は ,意 味成分 の型で も,意 味成 分 の可能 な相 関関係 の型で もな くて ,辞 書 の 中 に 記載 されて い る特定概念を形成 す る 〔意味成分 の〕個有 の組 み合わせ だ け で あ る。 (BierWiSch,1970,p.179) ブ ラウ ンは ,幼 児 に とって は ,主 要 な文法上 の類 の あ る もの (彼 の場合. ,. 動詞 ,物 質 名詞 ,可 算 名詞 )は それに対応す る意味上 の 特性を持 つ こ とを示 す興 味深 い実験を紹介 した後 で 次 の よ うに言 う。 形式類 の意 味 (form― Class semantic)は. ,子 供で も成人 で も,言 語を. 学 習す る時 に は利用 して い るけれ ど も ,言 語 の 技術が なめ らか に急速 にな って い くのにつ れて ,意 識 されな くな るので あ ろ う。 …… 形式類 の 意味 は ,そ の こん 跡を神経組織 の 中 に残 して いて ,あ る方 向へ の 考 え方を容 易 に し,別 の方 向へ の 考 え方 を 制止す る。 ……形式類 の 意味 の 及 ぼす 効果 は ,言 語資料だ けで証 明す ることはで きず ,言 語外 の行動 の資料を要求す る。 (BroWn,1958,p。 253) さ らに ,ブ ラウ ンの 次 の主 張 も興味があ る。.
(17) 199. 杉 浦 茂 夫. 品詞 で さえ も ,初 め は意 味 上 の 類 で あ った か も しれ な い。 今 で は歴 史 的 な 変 化 の た め にば くぜ ん と し首尾 一 貫 性 のな い もの とな り ,形 式 類 と の 関連 に お いて は蓋 然 的 な もの にす ぎな い けれ ど も。. (ibid。 ,p。. 55). 4.2.4 翻訳上 の等価語 Bendix(1971,p。 394)は , 意味要素 の言語横 断的な 妥 当性 の 根拠 にな る の は ,諸 言語 の「 相互的翻訳可能性」 (intertranslatability)で あ るとい う。 ここで は ,こ の翻訳 とい う問題 につ いて考 えてみた い。 完全 に形式 的な観点か らな された語類区分 にお いて は ,英 語 の `noun'と 日 本 語 の「 名詞」 との 間 には何 の 関係 も共通点 もあ りえない こ とは当然 の論理 的帰結 で あろ う。 しか し,我 々が この両者 の 間 に何 らか の共通点 があ るよ う に感 じるの は , `noun'に 属す る単語 の融訳 上 の等価語 が 「 名 詞 」 に属 して い ることが 多 い とい う経験 的事実 によ ると こ ろが大 きい と思 われ る。 この 事 実 は「 恐 らく人 間 の思考 の共通性 1)に 基礎を もち ,「 意味 と意義素 との 考察 か ら帰納的に調 べ られ1)る べ き もので あろ うが ,本 論 の 以下 の 主張 (cf.4.. 6)も その線 に添 うものであ る。 以下 の論述 で は , 主 と して英語 と 日本語 と の 間 の融訳上 の等価語を例 と して用 い るが その 際 に問題 とな る次 の二 点を明 確 に して お きた い。 第 一 に ,本 論 で 問題 にす るの は単 語 の等価性 で あ って ,文 の等価性 で はな い とい う こ とで あ る。 この点 は ,次 節 第 二 に ,服 部 四郎博士 (1968,pp。. (4。 8f。. 3)で 論 じる こ とに した い。. )に 詳説 されて い るよ うに ,「 同 じ. 種類 の 事物を表わす と思われて い る単語 の 意義素 が ,言 語や方言が違 うと同 一 でない ことが ,し ば しばあ り」 ,そ れ故 に ,「 外 国語 の 同義語を用 いて 獣 訳 して も ,… …一 つ の単語 の 意義素 の記述 に は十 分 でな い」 とい う点 で ,こ の こ とは以下 の記述 において も十分留意す べ き ことと考 え られ る。 (1975年 4月. 8)三 宅鴻氏 の筆 にな るブルーム フ ィール ド『 言語』 注. (p。. 767)に よ る。. )(未 完 ). (1971年 の新装版 ,大 修館 )の 訳.
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