ドイツ近世的権力と土地貴族
著者
山崎 彰
号
223
発行年
2005
磁
山
越
崎
膨
学 位 の 種 類
学 位 記 番 号
学 位 授 与 年 月 日学位 授 与 の要件
博 士(文 学) 文 第223号 平 成18年1月12日 学 位 規 則 第4条 第2項 該 当学 位 論 文 題 目
ドイ ツ近 世 的権 力 と土 地 貴 族論 文 審 査 委 員
彦
二
善
研
野
小
原
授
授
教
教
則
勝
藤
佐
創
授
住
教
論 文 内 容 の 要 旨
序 章 課 題 の 設 定 本 書 は 、 ブ ラ ン デ ン ブ ル ク の 近 世 的 権 力 と農 村 社 会 に お い て 、 土 地 貴 族Landadelが 占 め た 独 自 の 位 置 を 検 討 し よ う とす る も の で あ る が 、 『旧 体 制 と大 革 命 』 第2部 第1章 で ア レ ク シ ス ・ド ・ト ク ヴ ィ ル が 提 示 し た 独 仏 貴 族 の 比 較 分 析 は 、 重 大 な 視 点 を わ れ わ れ に 与 え て くれ る 。 彼 は 、 国 家 中 央 へ の 権 力 集 中 が 進 ん だ フ ラ ン ス で は 、 貴 族 は 地 域 行 政 へ の 責 任 を 放 棄 し、 国 家 と住 民 間 の 調 整 的 役 割 を 担 う こ と を 中 止 し 、 こ う し て1つ の 寄 生 的 存 在 に 堕 した 。 こ の た め わ ず か な 負 担 で あ っ て も 、 農 民 に は 耐 え が た く受 け と ら れ た が 、 こ れ に 対 して ドイ ッ に お い て は ま さ に これ と は 逆 の 関 係 が 存 在 し 、 貴 族 は 地 域 行 政 へ の 参 画 に よ り、 そ の 重 圧 に もか か わ ら ず 農 民 に よ り受 け 入 れ られ 続 け た 。 トク ヴ ィ ル の 以 上 の 議 論 は 、 土 地 貴 族 の 地 域 支 配 に お け る独 自 な役 割 を強 調 す る こ と に よ っ て 、 「旧 体 制 」下 の ブ ラ ン デ ン ブ ル ク 農 村 社 会 研 究 に 重 大 な 示 唆 を 与 え て くれ る も の で あ り、 日本 の 東 エ ル ベ 史 研 究 者 が 十 分 意 識 し て こ な か っ た 視 点 を 持 つ た め 、 い っ そ う貴 重 な も の で あ る 。 序 章 で は 、 研 究 史 を た ど り な が ら問 題 を 整 理 し、 トク ヴ ィ ル 的 観 点 を い か す た め に は 、 具 体 的 に ど の よ う な 課 題 設 定 を 行 うの が よ い の か 、 考 察 を 進 め て い る 。 研 究 史 の 検 討 で は 、 「第 二 帝 政 期 の 社 会 政 策 学 者 や 歴 史 家 」、 「ナ チ ス 体 制 と対 決 した 歴 史 家 」 「近 年 の 農 村 社 会 史 研 究 者 」「近 年 の 貴 族 史 研 究 者 」を 扱 い 、以 下 の よ う な 課 題 を 導 き 出 す こ とが で き た 。 即 ち 、本 書 の 課 題 は 、 近 世 ブ ラ ン デ ン ブ ル ク社 会 を 長 期 的 な 循 環langfristigeKonjunkturに 即 して 段 階 区 分 し、 各 段 階 で の 農 村 社 会 と権 力 関 係 ・構 造 に お い て 土 地 貴 族 が 占 め た 位 置 と役 割 を 検 討 す る こ と に あ る 。 エ ル ベ 河 東 岸 地 域 の 近 世 社 会 は 、 農 場 領 主 制 と い う固 有 の領 主 制 を 持 ち 、 農 民 の 領 主 に 対 す る 隷 属 度 が 際 立 っ て 強 い 社 会 で あ る こ とが 強 調 さ れ る あ ま り、 この 間 、 社 会 が ダ イ ナ ミ ッ ク に 変 動 し た 点 は 軽 視 さ れ が ち で あ っ た 。 こ の 社 会 変 動=長 期 的 循 環 に は 、 土 地 貴 族 の 秩 序 形成 力 が影 響 を与 え て い る ので は ないか との仮 定 の下 に、課 題 を一 層 具 体 化 す るた め に、 次 の よ うな分 析 視 角 を設 定 した 。 本 書 が 循 環 に着 目 した の は、 近 世 社 会 で は経 済 過程 の み な らず 、 社 会 総 体 も好不 況 の波 動 を繰 り返 し 経 験:した と考 え るか らで あ り、 ま た循 環 の 変 動 が社 会 関係 再 生 産 の枠 組 み の 変化 、 即 ち秩 序 変 質 の 外 的 表 現 で あ る とみ るか らで あ る。 われ われ は こ こで 循環 過 程 を3つ の局 面 、 即 ち、好 況局 面(安 定 した秩 序 の 中で 社 会 関係 が順 調 に再 生 産 され る)、後 退 局 面(秩 序 が 崩 れ て ゆ き、社 会 的諸 関係 の再 生 産 に重 大 な支 障 が 生 じ る)、回復 局 面(根 本 的再 編 が行 われ 、再 生産 の た め の新 た な秩 序形 成 が 開始 さ れ る)に 分 類 す るが 、 ひ とつ の波 動 を経 る毎 に、 ブ ラ ンデ ン ブル ク社 会 は構 造 的 な変 容 を遂 げ て い くと仮 定 した。 具 体 的 に ブ ラ ンデ ンブ ル ク史 に即 して 各 局 面 を示 す な らば、 次 の とお りで あ る。第1局 面:15世 紀 初 頭 の ホ ーエ ン ツ ォ レル ン朝 成 立 か ら始 ま り15世 紀 末 まで の 回復 局 面 。 中世 後 期 か ら近 世 へ の移 行 過 程 とす る こ とが で き る。 第2局 面:15世 紀 末 か ら始 ま り16世紀 末 まで 続 く好 況 局 面 。近 世 ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 の 最初 の発 展 ・安 定 期 で あ る。 第3局 面:16世 紀 ・17世紀 交 か ら始 ま り三 十年 戦 争 で真 に深 刻 化 す る 後 退 局 面 。 第4局 面:三 十 年 戦 争 終 了 よ り1720年 代 頃 まで続 く回復 局 面 。 絶 対 主義 国家 の形 成 期 とす る こ とが で き る。 第5局 面:そ れ 以 降 七 年戦 争 で の 中 断 な ど もは さ み1806年 の イ エ ナ ・ア ウ エ ル シ ュ タ ッ ト敗 戦 まで続 く好 況 局 面 。 絶 対 主 義 国 家 の 時代 で あ る。本 書 第1部 で は この うち 中 間 の3っ の段 階 に各 1章 を当 て 、第1の 段 階 は第1章 で 付 随 的 に論 じ、第5の 段 階 は終 章 に お いて 、歴 史 的展 望 と して検 討 す る。 次 に、秩 序 形 成 と循 環 創 出の 主 体 と して 、 土 地 貴族 を位 置 づ け る こ とに した い 。 こ こで見 通 しを述 べ るな らぼ 、好 況 局 面 は、 彼 らが 自 ら創 出 した秩 序 よ り順 調 に利 益 を獲 得 し うる段 階 で あ り、 後 退 局 面 に お い て は、 秩 序 維 持 能 力 を失 うの み な らず 、 自 らそ れ を破 壊 し、 利 益 の縮 減 や喪 失 に追 い込 まれ た段 階 で あ り、最 後 に 回復 局 面 は、 新 た な秩 序形 成 に向 け、土 地 貴 族 も含 め、 権 力 エ リー トの再 編 が行 われ る 段 階 と規 定 す る こ とが で き るの で はな い か 。 な お循 環 過 程 に お いて は、 秩序 は単 に解 体 と再 生 を繰 り返 す の で は な く、 一 定 の方 向性 を も って 不可 逆 的 に変 質 して い く。 秩 序 形 成 とい う観 点 か ら見 るな らば、 大局 的 に は 、裁 判 権 を分 散 的 家 産 的 に保 有 した諸 身分 が それ に よ って 秩 序 維 持 す る段 階 よ り、 行 政 国家 (絶対主 義 国家)が 軍 事 力 を集 中化 す る と ともに 、官 僚 機 構 を もって 計 画 的 に社 会 介 入 す る段 階 へ と移 行 す る。土 地 貴 族 に よる秩 序 形 成 力 も、 この 変化 と無 関係 で あ りえ るはず は なか っ た 。 続 い て、 本 書 で は 「秩 序 」 につ い て 次 の よ うな 内容 を想 定 して い る。 秩序 は先 ず 第1に 、 そ の理 想 的 状 態 に お い て さ え、 紛 争 や 抵 抗 を排 除 した もの を い うの で は な い。 む しろ それ らを包 含 しつつ 、 そ の社 会特 有 の様 式 に お い て処 理 し、 これ に よ って社 会 的体 制 が安 定 的 に保 たれ た 状 態 を 指 す。 具体 的 に は農 場 領 主制 的社 会 を捉 え る場 合 、 その 権威 的 支配 を 強調 す るあ ま り、 農 民 を徹 底 的 に従 属 化 され た存 在 で あ り、 限 りな く隷 属 化 す る傾 向 を持 っ と考 え るの で は な く、 む しろ所領 内の 紛 争 や抵 抗 に対 して 安 定 し た ル ー ル に よって 対 処 され 、 これ に よ って所 領 の 支配 体 制 が保 たれ 、 しか も それ が 東 エ ル ベ特 有 な様 式 で実 現 して い る と考 えて い る。 また 第2に 、秩 序 は単 一 の主 体 に よ って 形成 され た り、 単 一 の質 か ら成 るの で もな く、 む しろ複 数 の 異 質 な小秩 序 が成 層 を な しな が ら全 体 的秩 序 を形成 す る と見 る。 従 っ て、 所 領 に お い て 土 地 貴 族 が作 り出 した秩 序 は、 農 村 住 民 の 自律 的 秩 序 形 成 を完 全 に排 除 す る もの で は な く、む しろ それ に依 存 す る場 合 さ え あ り うる。 また 、軍 隊 の規 律 と領 内 の 身 分 的服 属 関係 が相 互 浸 透 し、 権 威 的体 制 が強 固 に な っ た とみ る通 説 的解 釈 に対 して も本 書 は懐 疑 的 で あ り、行 政 機 構 や 軍 隊 内 の秩 序 と農 村 社 会 の それ は あ くまで 異 質 で 、 少 な く とも本 書 が 扱 う段 階で は、 容 易 には混 じ り合 わ なか っ た と 考 え て い る。 む しろ土 地 貴 族 の 存 在 意 義 は、 国 家 と地 域 社 会 とい う異 質 な秩 序 の媒 介 、 あ るい は調 整 機 能 に あ っ た の で は な い だ ろ うか 。 本 書 で 解 明 しな け れ ば な らな い の は こ の よ うな複 雑 な支 配 機 能 で あ り、 そ れ は た だ搾 取 し、 隷 属 化 させ 、規 律 づ け る とい っ た性 格 の もの で はな い。
最 後 に、 この社 会 的調 整 機 能 の 中 で行 政 国家 と地 域 社 会 間 の それ に つ い て は、 第2部 で 財 政 的観 点 か ら検 討 す る こ とに した い。 こ こで は、土 地 貴 族 を含 め ブ ラ ンデ ン ブル クの主 要 な領 地 支 配 形 式 で あ る農 場領 主制 を と りあ げ、 それ が 果 た して い た社 会 的 調 整 機 能 を解 明 す る。第2部 に お いて は、4番 目の循 環 局 面 、 即 ち三 十 年 戦 争 終 戦 か ら18世 紀 初 頭 の段 階 に対 象 を限 定 す るが 、 この段 階 は農 場 領 主 制 の確 立 期 で あ り、 かつ 絶 対 主 義 国 家 の 軍 隊 ・行 財 政 の創 出期 で あ る とされ て い る。 従 っ て、 領 主 と絶 対 主義 君 主 権 に よ る共 同搾 取 体 制 の創 出 と して、 この過 程 が 描 き出 され が ち で あ るが、 しか しこの段 階 は、第1 部 第2、3章 で も論 ず る よ う に、 多 くの都 市 、 農 村 とも に三 十 年戦 争 で壊 滅 的被 害 を受 け、 その再 建 も 容 易 で な か っ た時 期 で あ り、 この よ うな惨 禍 を念 頭 に置 い た 場合 、 そ の よ うな解 釈 が成 り立 つ か疑 問 が 持 たれ な けれ ば な らない 。 当該 期 が 回復 局 面 に あた って い た こ とを 重視 し、 む しろ軍 隊 や 行 財 政機 構 の 創 出 とい う課 題 と、 農 村社 会 の再 建 とい うい ま ひ とっ の 課題 、 この簡 単 に は両 立 し難 い2つ を調整 す る と ころ に農 場領 主 制 の 重要 な存 在 意 義 が あ った の で はな い か 、 そ れ を主 に財 政 史 的 観 点 か ら考 察 す る こ とが こ こで の課 題 とな る。 これ にっ い て検 討 す る こ とに よ り、絶 対主 義 国家 形 成 期 に、 行政 国 家 と地 域 社 会 間で 土 地 貴 族 が 実 現 して い た調 整 機 能 を、 制 度論 的 に説 明 す る こ とが 可 能 とな るで あ ろ う。 第1部 近 世 ブ ラ ンデ ンブル ク の長 期 的 循 環 過 程 第1章16世 紀 にお け る城 主=官 職 貴 族 と農場 領 主制 の形 成 第1部 で は、 近 世 の5っ の循 環 局 面 の うち、 中 間 の3っ の段 階 に集 中 して 検 討 を行 っ た。 中世 後 期 の 混 乱 よ り脱 却 し、16世 紀 に秩序 を取 り戻 し、 好 況 局 面 を現 出 させ た こ とに は、 領 邦 君 主 権 の主 導 性 に よ る ばか りで は な く、 む しろ城 主=官 職 貴 族 の役 割 が 実 質 的 意 味 を持 って い た こ とを、 第1 章 で は論 じた 。 そ こで は、 城 塞 とい うアル カ イ ッ クの実 力が 、 彼 らの秩 序 形成 の 前提 とな っ て い たが 、 他 方 で彼 ら は、 官職 貴 族 へ と転 化 しっ つ あ る過 渡 的存 在 で あ っ た。 彼 らが 創 り出 した秩 序 の 内容 をみ る な らば、一 方 で は、農 民 の 生活 態 度 に農 村 社 会 荒廃 の 一 因 を見 出 し、 そ れ を 「文 明 化 」 「規 律 化 」 す る方 向で 秩序 再 建 を 目指 そ う とす る動 きが 、 は っ き り打 ち 出 され て いた が 、 村 落共 同体 の伝 統 的慣 行 を秩 序 の基 礎 に据 えて い た こ と も否 定 で きず 、 さ ら に農 民達 の反 抗 的意 志 が 秩序 形 成 に寄 与 した局 面 さえ見 ら れ た 。 この こ とは、特 に農 場 領 主 制形 成 の 面 に見 出 す こ とが で き る。 農場 領 主 制 は、 な るほ ど城 主=官 職 貴族 主 導 に よ る秩 序 形 成 の 中か ら誕生 した。 しか し、 当該 段 階 の 農場 領 主 制 は、 安 定 的農 場 保 有 権 と 経 営 能 力 を持 つ農 民 を存 立 の 前 提 と して お り、 そ の際 に、 農 民 の反 抗 的 意 志 は、 農 民 の安 定 的 経 営 を損 なわ ない範 囲 に賦 役 を抑 制 す る役 割 を果 た して い た ので あ る。 他 方 、領 邦 政 治 の部 面 で も、 城 主=官 職 貴 族 は秩 序形 成 を主 導 した 。 ご く一握 りの城 主=官 職 貴 族 は、 地域 の 実 力者 で あ りか っ 君 主 の 代 理 人 と して 地域 社 会 の紛 争 を お さ め、 さ ら に身分 団体 と宮 廷 の意 思 調 整 を行 う こ とで、 領 邦 全 体 の秩 序形 成 を 実 現 した の で あ るが、 この過 程 で彼 らは 、御 領 地 官 な どの 利 権 官職 を確 保 しっ っ 、 農 場 領 主 制 に寄 与 す る政 策誘 導 も忘 れ る こ とは なか った 。 第2章 「17世紀 危 機 」 と三 十 年戦 争 第2章 で は17世 紀 前 半 の後 退局 面 を扱 っ たが 、 この段 階 、 特 に三 十年 戦 争 期 に お け る秩 序 破壊 には 、 城 主=官 職 貴 族 に よる秩 序 形成 能 力 の衰 退 が大 き く与 って い た 。新 た な権 力 的対 立 が 生 じ、 これ を調 整 す る能 力 を彼 らが 持 て なか っ た こ と、 こ こに ブ ラ ンデ ン ブル ク にお け る 「17世紀 危 機 」 の 内 在 的原 因が あ る。 対 立 の第1は 、 一 大 国 家 誕 生 に利 害 を追 い求 め る内 外 の 改 革派 、 即 ち カル ヴ ァ ン派 貴族 が宮 廷 に 結 集 し、 身分 団体 を 中心 に集 まっ た大 多 数 のル ター 派 ブ ラ ンデ ン ブル ク貴 族 との 聞 に軋礫 が 生 じた こ と
で あ る。 この こ とは、城 主=官 職 貴 族 に よ って 宮 廷 、 身分 団体 双 方 の 利 害 ・意 思調 整 が 行 われ て い た16 世紀 的権 力 構 造 の 終 焉 を意 味 し、 この よ うな権 力 的分 裂 状 況 が 、 三 十 年 戦 争 に用 意 もな い ま ま ブ ラ ンデ ンブ ル ク国 家 が巻 き込 まれ、 被 害 を拡 大 した 原 因 とな っ た。 第2の 対 抗 関係 は、16世 紀 の農 村 社 会 と権 力構 造 を築 き上 げ た とこ ろの城 主=官 職 貴 族 層 が 、 そ の形 態 転 換 の 中か ら傭 兵 軍 将 校 とい う一 種 の 鬼 子 を生 み 出 し、後 者 が城 主 層 に代 わ って ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 に お け る軍 事 力 の体 現 者 とな り、 しか もそ の母 胎 とな った貴 族 達 と対 立 を繰 り広 げ、 ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 に対 して破 壊 の主 導 者 と して 臨 ん だ こ とで あ る。 城主=官 職 貴 族 の城 塞 に基 づ く秩序 維 持 能 力 は その 無 力 さ を さ ら け出 し、 騎 士 身 分(土 地 貴 族)と 傭 兵 軍将 校 の利 害 対 立 を貴族 自身 の 手 に よっ て調 整 す る こ ともか な わ な か っ た。 も はや 、 第 三者 た る軍 政 組 織 の整 備 が避 けて 通 れ ぬ課 題 とな っ て 浮 上 して きた の で あ る。 さて 三 十 年 戦 争 の 帰 結 と し て、 農 村社 会 に お い て は、 各 ク ライ ス の農 民農 場 数 は戦 前 比50∼10%程 度 まで に減 少 し、 生 き残 った農 民 農 場 にお い て も、 生 産 能 力 に著 しい低 下 の あ っ た こ とが 明 らか とな った。 城 塞 に よ る秩 序 維 持 能 力 を 失 った この 時、 土 地 貴 族 に は、16世 紀 の城 主 隔官 職 貴 族 とは異 な った領 主 と しての 役 割 が 求 め られ る こ とに なっ て い た。 第3章 三 十 年 戦 争 後 の 宮廷 ・軍政 組織 確 立 と農 村 社 会 の 再建 第3章 が扱 っ た17世 紀 後 半 か ら18世 紀 初 頭 の時 期 は、 長 期 的循 環 で は 回復 局 面 に あた る。 この 時代 、 ブ ラ ンデ ンブ ル ク=プ ロイ セ ン国家 は帝 国 内 の一 大 国 家 とな った こ とに よっ て、 新領 邦 や ドイ ッ各 地 か ら帝 国貴 族 も含 む多 くの 人材 を ベ ル リ ン宮 廷 に集 め、 自然 、 ブ ラ ンデ ンブ ル クの 旧貴族 は そ こに お い て 力 を 失 う結 果 とな った 。 しか し18世 紀 に は い り、 国 家 の権 力 的統 合 の 中心 が 宮 廷 か ら軍 隊 に移 動 した こ とは 、 も と も と宮 廷 よ りも軍 隊 に お い て権 力 に関 わ る方 途 を求 め る傾 向 を持 った 旧 貴族 に とっ て は、 国 家 との一 体 性 を回 復 す る契機 とな っ た。 しか し16世 紀 の城 主=官 職 貴 族 とは違 い 、 三 十 年戦 争 後 の 旧貴 族 は 、権 力 の頂 点 に あ って 権 力 関 係 を調整 す る よ うな立 場 に は な く、現 場 将 校 と して地 域 行 政 官 と して 、 国家 行 政 組 織 の 計 画化 され た活 動 を一 方 で 支 え る と とも に、他 方 で は権 力 的 必 要 性 が地 域 社 会 の再 生 産 を破 壊 しな い よ う配慮 し、双 方 の課 題 の調 整 を はか る とこ ろに、 秩 序 形 成 上 の 役 割 が あ っ た。 これ に対 して、 財 政 資 金 の 調達 ・分 配 とい っ た国 家 運 営 の 中核 的課 題 は、 軍 政 組 織 、 即 ち官僚 制 行 政 機 構 が 管 轄 す る時代 を迎 えた 。 また 土地 貴 族 と して は、 三 十 年戦 争 に よ る社 会 荒 廃 か らの 回復 の た め、 社 会 的再 生 産 創 出 に対 し自 ら責任 を担 う こ とに な った 。17世 紀後 半 以後 の土 地 貴 族 達 が 、 軍 事 的保 護 機 能 を失 っ た に もかか わ らず 領 主 で あ り続 け る こ とが で きた の は、16世 紀 の貴 族 とは異 な った 次 の よ うな機 能 を果 た した こ とに よ る とこ ろが大 きい とい え るだ ろ う。 第1に 、荒 廃 した農 民 農 場 再 建 に 対 す る投 資 的 ・経 済 的役 割 を挙 げ るべ きで あ ろ う。16世 紀 農 場 領 主 制 で は、農 民 所 有 の生 産 手 段 が 領 主 経 営 を支 え て い た が、 三 十 年 戦 争 後 は、 これ とは逆 に領 主所 有 の 生産 手段 に よっ て農 民 経 営 が再 建 され て い っ た。 しか し 彼 らの領 主 と して の 活 動 は、 この よ うな経 済 的再 建 に と ど ま る もので は な く、 武 力 的能 力 を失 っ た とは い え秩 序 形 成 に対 して も関心 を失 うこ とは なか った 。即 ち第2に 、 戦 渦 の 中 をか ろ う じて生 き残 った 村 落 共 同体 の 秩序 維 持 に も彼 らは気 を配 り、 農 村 内 の紛 争 や 対 立 に対 して 武 力 的解 決能 力 を持 た な い分 、 よ り客 観 的公 正 な 裁判 制 度 を提 供 しよ う と した 。 第3に 、 村 落 共 同体 自身 の伝 統 的 な秩 序 維 持 能 力 の 酒 養 に も配 慮 して い る。 そ の場 合 彼 らは、16世 紀 の城 主=官 職 貴 族 の よ うに村 民 の道 徳 的刷 新 に熱 心 で な か っ た ばか りか 、 む しろ敬 度 主 義 者 に よ る農 村 民衆 の道 徳 的改 造 の 試 み に対 して は、 村 落 秩 序 を混 乱 さ せ る もの と して 敵 対 的 で す らあ った 。権 力 的行 政 機 構 に お いて 合 理 化 が進 行 す る一 方 、 農 村 社 会 で は伝 統 的 社 会 秩序 の再 建 に精 一 杯 で あ り、 この2っ の 異 な っ た社 会 原 理 の狭 間 に あ っ て、 そ の社 会 的 調整 を 行 う とこ ろ に、 三十 年 戦 争 後 の土 地 貴族 達 の社 会 的存 在 意 義 を見 出 す こ とが で きる。
第2部 ブ ラ ンデ ンブ ル ク=プ ロイ セ ン国 家 と農 場 領 主 制 第4章 御 領 地 財 政 と農 場領 主 制 続 く第2部 で は、17世 紀後 半 か ら18世 紀 初 頭 に対 象 を限 定 し、絶 対 主 義 国 家 形 成 につ れ て 飛躍 的 に需 要 の 高 まっ た財 政 資 金 調達 の 問題 に焦 点 を定 め、 土 地 貴 族 の基 本 的領 地 支 配 形 態 で あ る農 場領 主制 が 、 以上 述 べ た と ころ の社 会 的調 整 に お い て、 どの よ うな 役 割 を実 現 して い た のか につ いて 、 検 討 した。 第4章 で は、 財 政 制度 の面 で も農 村 社 会 の 再 建 の 面 で も、 改 革 と秩 序 再 建 を先 導 した御 領 地 を採 りあ げ た 。御 領 地 財 政 に関 して は、アム ツハ ウ プ トマ ン(多 くが16世 紀 の城 主=官 職 貴族)に よ って 家産 的 ・ 分 散 的 に運 営 され た段 階 か ら、 フィ ナ ン シエ 的 会 計 官 が権 限 を集 中 した段 階 を経 て 、統 合 的金 庫 運 営 と 計 画 的 ・合 理 的会 計制 度 が整 え られ る段 階 へ と至 っ た 。 また御 領 地 管 区 の経 営 で も アム ツハ ウ プ トマ ン は排 除 され て い った が 、 そ れ に代 わ って 経 営 を任 され た の は市 民 出身 の総 小 作 人 で あ った 。彼 らに は、 農 民 農場 維 持 へ の配 慮 と と もに、 動 産 的 生 産 手 段 の適 切 な管 理 とそれ へ の積 極 的 投 資 を 求 め られ て い た。 御 領 地 に お け る農 場 領 主 制 は、 一 方 で 御領 地 財政(宮 廷)に 対 して計 画 的 に財 政 収入 を供 給 し、 他 方 で 領 地 経 済 の再 生産 確 立 の た め に脆 弱 な農 民 経 営 へ の 投 資 も行 い、 こ う して 二 重 の社 会 的役 割 を 自 ら に集 中 し調 整 して い た 。 第5章 農 村 税制 と農 場 領 主 制 第5章 で は、軍 事財 政 の基 幹 税 制 で あ る コ ン トリ ブツ ィ オ ン を採 りあ げ、 それ の合 理 化 過 程 が 、 農 村 社 会 の再 建 とい か に並行 して 進 め られ 、 農 場領 主 制 が そ れ を どの よ うに仲 介 して い た か を検 討 した。17 世 紀 末 ・18世紀初 頭 の クー ル マル ク にお け る コ ン トリ ブツ ィオ ン改 革 は、 斉 一 的制 度 を求 め る絶 対 主 義 国 家 の志 向 に添 っ て 、納 税 義務 者 の租 税 負 担 能 力 の基 準 を フー フ ェ数(共 同 体 内 で の 世帯 維 持 能 力指 標) よ り農産 物 生産 量(普 遍 的生 産 能 力 指 標)に 変更 し、 これ に よっ て共 同体 の 枠 を越 えて ク ライ ス全 体 に お いて 課 税 の公 正 さを達 成 し よ う と した 。 しか し、農 民 の租 税 負 担 能 力 の不 安 定性 ゆ え に 、課 税 標 準 の 改 革:だけで は十 分 とはい えず 、 それ を補 完 して い た の が ク ライ ス(騎 士 身 分)財 政 にお け る租 税 免 除 制 度 と共 に、領 主 の賦 役 ・貢 租 免 除 と租 税代 納 で あ っ た。 ブ ラ ン デ ン ブル クの 村落 共 同体 は、 そ の裁 判 機 能 に よ って 地域 内 の紛 争 処 理 に重大 な 役 割 を 担 っ た が、 しか し財 政 は脆 弱 で 、 西部 ドイ ッ の村 落 で 行 わ れ て いた租 税 連 帯 責 任 制 を発 達 させ る こ とが で きず 、 この た め それ を領 主 が代 替 して い た ので あ る。 終 章18世 紀後 半 へ の展 望 終 章 で は、 以 上 の検 討 の結 果 を ま とめた 上 で 、 第5循 環 局 面 に あた る18世 紀後 半 に、 「農 村 社 会 」 「ブ ラ ン デ ン ブル ク=プ ロイ セ ン国 家 」 「土地 貴族 」 の各 領 域 に お いて どの よ うな社 会 変 動 が 生 じた か を展 望 した 。 「農 村社 会 」 18世 紀 中 葉 以 降 の農 村 社 会 に特徴 的 な現 象 として、 農 民 経 営 の成 長 を農 村 下 層 民 の膨 張 と とも に挙 げ る こ とで は、大 方 の論 者 の問 で 意 見 の 一致 を み て い る。 か つ て は この よ うな現 象 を、 農 民 経 済 の 繁 栄 と 農 民 層 分解 の所 産 で あ っ て、 増 大 す る下 層 民 を領 主 経 営 が 労 働 力 と して統 合 す る こ とで 、 ユ ンカ ー経 営 に転 化 しえた とわ が 国 で解 釈 され て きた が 、 しか し論 証 面 に お いて 十 分 で あ っ た とは い えず 、 む しろ18 世 紀 に は これ とは 対 極 的 現 象 と して 、 コセ ー テ農 民 も含 め た 農 民 層 の 中 で は、 農 場 規 模 の 「均 等 化 」 Egalisierungが 村 落 単 位 で しば しば実 行 され た 。 「均等 化 」 は、18世 紀 の農 民 経 済 の 発展 が 、農 民 の 私 的 利 害 と競 争 を介 して 階層 分 解 に通 じ る もの で は必 ず し もな く、 む しろ村 落共 同体 の結 束 強 化 と両 立 しう
る こ と を 示 唆 し て い る が 、 「均 等 化 」 が 行 わ れ た 村 落 、行 わ れ な か っ た 村 落 に か か わ りな く、所 領 支 配 か らの 農 民 の 自立 化 も個 人 的 営 為 と し て の み 実 現 した の で は な く、 共 同 体 的 な事 業 と し て も行 わ れ た 。 ハ ル デ ン ベ ル ク改 革 後 に 行 わ れ た 「調 整 」 や 「償 却 」 に よ る領 主 制 廃 棄 が 、 村 落 を 単 位 に実 現 し て い る と こ ろ か ら も、 そ れ は 明 らか で あ っ た 。 「ブ ラ ン デ ン ブ ル ク=プ ロ イ セ ン 国 家 」 次 に 、 農 村 社 会 へ の 影 響 如 何 と い う観 点 か ら、18世 紀 後 半 の 国 家 の 政 策 を 論 じ た 。18世 期 の 経 済 発 展 に つ れ て 利 害 対 立 す る こ との 多 くな っ た 領 主 と農 民 の 関 係 を 、 な ん とか つ な ぎ 止 め よ う と、 国 家 は 政 策 的 に介 入 した が 、 全 体 と して は 、 領 主 一 農 民 関 係 の 形 骸 化 を 一 層 推 し進 め る役 割 を 果 た して い る。 この 点 を 理 解 す る た め に は 、18世 紀 中 葉 に お け る財 政 政 策 の 転 換 の 内 容 を み る必 要 が あ る 。 即 ち 七 年 戦 争 以 降 の 財 政 政 策 に お い て は 、 経 済 発 展 を 税 収 増 に っ な げ 、 こ れ を さ ら な る 経 済 発 展 に帰 結 させ る と い う、 従 来 に は み ら れ な か っ た 政 策 的 観 点 が 打 ち 出 さ れ て い た 。 こ れ ら の 経 済 政 策 の 影 響 と し て 重 大 な の は 、 そ れ が 単 純 に 経 済 発 展 の 刺 激 に な っ た と い うだ け で な く、 伝 統 的 農 村 社 会 と農 場 領 主 制 の 変 質 ・解 体 に 向 け て 作 用 し て い っ た とい う こ と で あ る。 特 に 金 融 機 関 の 政 策 的 創 出 が 重 要 で あ る。 例 え ば 財 政 か ら資 金 提 供 を 受 け て 設 立 さ れ た ラ ン トシ ャ フ ト信 用 制 度 は 、 土 地 貴 族 の 領 地 か らの 分 離 を 促 進 し 、 農 場 領 主 制 下 の 領 主 の 存 在 意 義 を揺 る が す 結 果 と な っ た 。 こ の こ とは 、 項 を 改 め て 論 ず る こ と に し よ う。 「土 地 貴 族 」 こ の よ う な 貴 族 と領 地 の 分 離 傾 向 は 、18世 紀 後 半 に ブ ラ ン デ ン ブ ル ク で 生 じ た 最 も 重 大 な 社 会 変 化 で あ る と い え る。 こ の 分 離 傾 向 は 単 一 の 要 因 か ら 生 じ た も の で は な く、 様 々 な 側 面 を 有 し て い た 。 第1 は 、領 地 を 持 た な い 新 権 力 エ リー トの 形 成 で あ る。 彼 らが 、貴 族 と い う身 分 よ り も 官 僚 と し て の 地 位 に 、 権 力 エ リ ー ト と して の 属 性 を 見 る よ う に な っ て い っ た こ とは 、 近 世 的 貴 族 身 分 が 解 体 過 程 に あ っ た こ と を 意 味 し て い る と い え る。 ま た 彼 ら は 必 ず し も 領 地 購 入 に こ だ わ ら な か っ た た め 、 こ の 結 果 、 権 力 エ リ ー トで あ る と い う こ と と領 主 で あ る と い う こ と は 、 不 可 分 の 関 係 で あ る の を 止 め て し ま っ た 。 第2 に 、 領 地 か ら の 分 離 は 新 貴 族 に 限 ら れ た 現 象 で は な く、 旧 貴 族 の 中 に も そ れ は 顕 著 とな っ て い っ た 。 こ れ に は 相 続 慣 行 が 、 所 領 分 割 に よ る方 法 よ り抵 当 債 券 配 分 に よ る そ れ へ と変 化 し て い っ た こ とが 大 き く 影 響 し た 。 特 に 国 家 に よ っ て 後 押 し され て 誕 生 した ラ ン トシ ャ フ ト信 用 制 度 は 、 貴 族 と領 地 の 紐 帯 を 断 ち 切 る上 で 重 大 な役 割 を18世 紀 末 か ら19世 紀 前 半 に か け て 演 じ た 。 即 ち そ れ は 、 債 権 者 に 解 約 告 知 権 を 認 め て お らず 、 そ の 代 わ り と して 市 場 性 を 有 し た 無 記 名 式 債 券 を 採 用 し、 これ を も っ て 記 名 式 抵 当 債 券 を 置 き 換 え て や っ た が 、 そ の 結 果 、 債 権 の 流 動 性 が 格 段 に 増 し た こ とで 、 領 地 取 得 に 与 らず 、 債 券 だ け を 受 け 取 っ た 相 続 人 と領 地 の 関 係 は 、 簡 単 に 断 絶 さ れ る こ とに も な りえ た の で あ る 。 第3に 、 所 領 を 引 き継 い だ 者 で さ え も領 地 と の 結 び つ き を 弱 め て い っ た 。 こ う し た 現 象 は 宮 廷 に 出 仕 し た 官 職 貴 族 や 、 あ る い は 当 主 と な っ た 後 も将 校 職 に と ど ま り続 け 、 領 地 に常 時 居 住 で き な い 者 に 顕 著 で あ っ た が 、 しか し そ う で な い 場 合 で あ っ て も、 全 体 と し て ベ ル リ ン な ど都 市 に 居 を 構 え る 貴 族 が 目 立 つ よ う に な っ て い た 。 し か し そ れ で あ っ て も 、 ブ ラ ン デ ン ブ ル ク 土 地 貴 族 の 中 に こ の よ う な 状 況 を深 く 自覚 し、 領 主 と し て の 伝 統 に 忠 実 で あ りつ つ 、 前 方 に 向 か っ て 問 題 を解 決 し よ う と し た 者 が あ っ た こ と の 意 味 も軽 ん じ る こ と は で き な い 。 最 後 に こ の よ う な 土 地 貴 族 の 例 を 挙 げ て お い た 。
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
本 論 文 の課 題 は、 近 世 ブ ラ ンデ ンブ ル クの 土 地 貴族 が プ ロイ セ ン国家 形 成 期 にお い て選 帝 侯(王)権 を頂 点 とす る社 会 的権 力 状況 の なか で 、 また彼 らの成 立 基 盤 で あ る農 場領 主 制 を柱 とす る農 村 社 会 の な かで 果 た した歴 史 的役 割 を解 明 す る こ とに置 か れ て い る。 この課 題 を果 た す た め に、論 者 は30年 戦 争(1618∼48年)の 前 ・後 の時 期 にあ た る16世 紀 か ら18世 紀 まで の長 期 にわ た る時代 を、 以 下 の4段 階 に区分 し これ に焦 点 を 当て て 考 察 を加 え て い る。 1.16世 紀 の秩 序 の安 定 を背 景 と した ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 の最 初 の発 展 ・安 定 期(第1章)。 2.30年 戦 争(1618∼48年)で 深 刻 化 す る秩序 の喪 失 と危 機 の時 期(第2章)。 3.30年 戦 争後 、18世 紀20年 代 まで の 秩序 回復 の 時期(第3章 、 第4章) 4.18世 紀30年 代 か らナ ポ レオ ン戦 争 まで の典 型 的絶 対 主 義 国 家 の時 代(第5章)。 序 論 は、研 究 史整 理 と本 論 文 の視 角 、課 題 の提 示 、 さ らに終 章 は、 本 書 の 総括 に あ て られ て い る。 第 1章 か ら第3章 まで の第1部 は、30年 戦 争 前 ・後 を は さ む農 村 社 会 の構 造 変 化 、 す な わ ち農 場 領 主 制 の 成 立 とその構 造 変化 を基 礎 に しつ っ 、 ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 の権 力 状 況 の 推転 を解 明 して い る。 第2部 で は、 プ ロテ ス タ ン トの ブ ラン デ ン ブル ク=プ ロ イ セ ン 国家 、 その御 料地 制 度 の近 代 的 な編 成 替 え と直 接 国 税 で あ る農 村 税 制 コン トリブ ツ ィオ ンの展 開 が、 ブ ラ ン デ ン ブル クの 土 地貴 族 に いか な る役 割 を に なわ せ る こ とにな っ たか を論 じて い る。 以 下各 章 毎 に、 そ の論 証 を要 約 しっ っ本 論 文 の独 創 的 な点 また研 究 史 に対 す る貢 献 内容 を明 か に して ゆ くこ と とした い 。 序 論 課 題 の設 定 こ こで は まず 、 従 来 の ドイ ッ史 、 な か ん ず くプ ロ イセ ン=ド イ ツ史 を特 徴 づ けて 来 た ブ ラ ンデ ン ブル クの 土地 貴 族 が に な っ た農 場 領 主 制 の歴 史 的性 格 に対 す る経 済 史研 究 、並 び に法 制 史 研 究 にお け るマ イ ナ ス ・イ メ ー ジ を 払拭 す るた め に、特 に1990年 代 以 降 の 東 西 両 ドイ ツの農 村 社 会 史 研 究 並 び に近世 貴 族 史研 究 の蓄 積 を対 置 す る。 19世 紀 の クナ ッ プに代 表 され る古典 的 な経 済 史 研 究 は、 エ ル ベ 川 以 東 の農 場 領 主 制(グ ー ッヘ ル シ ャ フ ト)に エ ル ベ川 以西 の グル ン トヘ ル シ ャフ トを対 置 し、 前者 をナ ポ レオ ン戦 後 の シ ュ タイ ン ・ハ ル デ ンベ ル ク改 革 の結 果 生 まれ た ユ ンカ ー経 営 に直 接 結 びつ くもの とみ な して きた こ と。 また ヒ ン ツ ェ に代 表 され る国制 史 研 究 は、 選 帝 侯(王)権 と身分 団 体 との 対 抗 を考察 の 焦 点 に お き、 土 地 貴族 は後 者 の伝 統 的 利害 の担 い手 と して 啓 蒙 専制 君 主 に対 置 され るだ けで あっ た 。 これ に対 して 著 者 は、15世 紀 か ら18 世紀 に至 るそ れ ぞ れ の時 代 にお い て 、 ブ ラン デ ン ブル ク の土 地 貴族 が い か な る歴 史 的 役 割 を にな った か につ い て は、 そ もそ も十 分 に論 じ られ て こなか っ た とす る。 そ の 上 で 、1990年 代 以 降 の ドイ ッの農 村 社 会 史 研 究 並 び に近 世 貴族 史研 究 の研 究 蓄 積 を これ らの先 行 研 究 史 に対 置 して い る。 まず 農 村社 会 史 研 究 と して は、 エ ンダ ー ス が分 析 した ブ ラ ンデ ン ブル ク土地 貴 族 が農 村 社 会 秩 序 形 成 に果 た した画 期 的 な役 割 に関 す る膨大 な研 究 蓄 積 に注 目す る。 近 世貴 族 史研 究 の 新 しい研 究 蓄積 と して は、 ハ ー ンの 方法 に注 目す る。 ハ ー ン は、選 帝 侯(王)権 と身 分 団体 の 二極 的 な 対抗 関係 そ の もので は な く、 土地 貴 族 自体 が 選 帝 侯(王)権 を頂 点 とす る近 世 権 力 の展 開 に対 して、 そ して最 終 的 に は ブ ラ ンデ ン ブル ク=プ ロ イ セ ン国 家 の な か で い か な る役 割 を具 体 的 に果 た して い た のか を問題 に して い る。 この エ ンダ ー ス とハ ー ンの研 究 視 角 を結 びっ けっ っ 、 論者 は さ らに次 の よ うな独 創 的 な視 座 と課 題 の設 定 を試 み る・土 地 貴 族 を推 進 力 とす る ブ ラ ンデ ンブ ル ク社 会 の秩 序 形 成 とそ の展 開 の基 礎 に農 場 領 主 制 を媒 介 に した農 村 社 会 の 支 配構 造 をす え、 さ らに選 帝 侯(王)権 と対抗 し得 る暴 力 的秩 序 維持 機 能 を 果 た しつ つ 、 宮廷 官 職 に浸 透 して ゆ く16世紀 の土 地 貴 族 の 歴 史 的役 割 は 、 そ の後30年 戦 争 を は さん で18 世 紀 前 半 期 まで の間 に どの よ うな 内容 を もっ て歴 史 的 に展 開 して い った の か、 と。 第 一 章 はホ ー エ ン ツ ォ レル ン家 の統 治 開始 期 の ブ ラ ンデ ン ブル クの農 村 社 会 にお い て 、暴 力 を独 占 し た 土 地 貴族 が城 主 と して 、 農 村社 会秩 序 の 回復 を はか りつ つ 、選 帝侯(王)権 に対 して は、 官職 保 有 貴 族 と して これ を支 え る役 割 を にな った こ とが 明 か に され て い る。 土地 貴 族 で あ る城 主 が保 証 す る安 定 し た 秩序 の 下 で、エ ル ベ川 以東 で は隷 役 小 作制 が 一般 的 で あ っ た とす る通 説(ハ ル ニ ッシ ュ)を 批 判 して、 論 者 は永 代 借 地 権 を保 有 す る農 民農 場 を前 提 に して、 「平 和 と経 済 成 長 」の16世 紀 にお い て は、領 主 と農 民 双 方 の 対等 な闘 争 と交 渉 の 結果 、農 場 領 主 制 が 形 成 され た と主 張 す る。土 地 貴 族 は、 農 民 の 生産 手段 (家畜 、農 具 、 種 籾 等)の 保 有並 び に農 民 自身 が に な った 村 落 自治(村 落 裁 判 、 村 落 令)を 前提 に、 賦 役 労 働 を収 取 す る農 場 領 主 制 を成 立 させ た と と らえ て い る。 プ ロ テ ス タ ン ト国 家 の修 道 院所 領 没 収 に よっ て 生 まれ た大 規 模 な御 領 地 の経 営 は 、選 帝 侯 の御領 地 に対 す る抵 当 前貸 しに よ って 事 実 上 そ の運 営 権 をア ム ツハ ウ プ トマ ン(御 領 地 官)と い う官 職 を保 有 した 土地 貴族 が握 って ゆ く。 また この よ うに し て 「城 主=官 職 貴 族 」 とな った ブ ラ ンデ ンブ ル ク の土 地 貴 族 は、 一 方 で選 帝 侯 権 を支 え る権 力 エ リー ト とな るが、 同時 に新 ビー ル 税金 庫 の よ うな身 分 金 庫 を基礎 と した在 地 の 身分 団 体 と選 帝 侯権 との 間 の利 害 を調 停 す る役 割 もに な って い た と して い る。 第二 章 に お いて は、 第 一 章 で論 じ られ た16世 紀 体 制 の 崩壊 が論 じ られ て い る。17世 紀 は、 一転 して30 年戦 争 で秩 序 は失 わ れ 、農 場 領 主 制 並 び に農 民農 場 の双 方 が 深 刻 な打 撃 を受 け、農 村 社 会 が 荒廃 した 「危 機 の 時代 」 と見 な され て い る。 この秩 序 破 壊 を もた ら した もの は 、 外敵 の侵 入 とブ ラ ンデ ンデ ンブ ル ク 貴族 内部 か らの傭 兵 軍 将校 の輩 出 で あ っ た。16世 紀 に城 主=官 職 貴 族 と して土 地 貴族 が にな っ て きた秩 序 維 持 機 能 崩 壊 の 内 的 要 因 と して、 論 者 が 注 目 して い るの は 以下 の2点 で あ る。 ① 支 配 領 域 の拡 張 を望 む選 帝 侯 の宮 廷 で は、 官 職 保 有者 の 内部 に ブ ラン デ ン ブル ク領 外 出 身者 や カ ル ヴ ィ ン主 義 者 が 増 大 す る こ とで、 ル タ ー派 の ブ ラ ンデ ン ブル ク土 地 貴 族 が宮 廷 内で の権 力 を喪 失 した こ と。 ② こ う した 地 位 の後 退 は 、16世 紀 末 の経 済 不 況 とそれ に伴 う身分 団体 金 庫 の 財政 破 綻 に起 因 す る も の で あ っ た。か く して選 帝侯 と身 分 団体 間 の利 害 調整 能 力 を 土地 貴 族 が喪 失 して ゆ くこ と、これ で あ る。 そ の軍 事 的 な表 現 こ そは 、選 帝 侯 の 「領 邦 防 衛 臨 戦体 制 」構 築 の た め の財 政 負 担 問題 の紛 糾 で あ り、 選 帝 侯 と身 分 団 体 間 の 利害 調 整 不 能 の事 態 で あ った 。 ブ ラ ンデ ンブ ル ク の軍 制 は も とも と領 邦 防衛 の た め に は、 レー エ ン騎 兵 と都 市 民兵 に依 存 して いた が 、30年 戦 争 に 際 して大 き な勢 力 とな っ た傭 兵 軍 将 校 に土 地 貴 族 が 参 加 し、相 互 に衝 突 した こ とは、戦 争 の惨 禍 を決 定 的 な もの に した 。外 国(オ ー ス トリア、 デ ンマ ー ク)か らの傭 兵 軍 隊 の躁 躍(ワ レン シ ュ タイ ン に よ る ブ ラ ンデ ン ブル クの軍 事 占領)を 許 した 苦渋 の原 因 は、 何 よ りも こ う した土 地 貴 族 問 の 亀 裂 に あっ た として い る。 この よ うな社 会 的権 力 状 況 に お い て 、 当 該 期 に は農 民 農 場 並 び に 農 場領 主 農 場 の いず れ も壊 滅 的 な打 撃 を う けた こ とが 結 論 され て い る。 第 三 章 で は、①30年 戦 争 後 の宮 廷 権 力 エ リー トの構 成 が い か な る もの とな るの か、 ② ブ ラ ンデ ン ブル ク の土 地 貴族 内部 か ら生 み 出 され た傭 兵 軍 将 校 と騎 士 身分 との対 抗 関係 が どの よ うに克 服 され て い くの か、 そ して③ ブ ラ ンデ ンブ ル ク農 村 社 会 の再 建 に どの よ うな役 割 を土 地 貴族 が果 た して ゆ くのか 、 が 問 われ て い る。 以 下 の 論証 は、 従 来 の通 説 が30年 戦 争後 、土 地 貴 族 が 国 制 レベ ル で失 っ た地 位 の代 償 と し て、 公 課 免 除 の特 権 を享 受 しつ つ 、 ク ライ ス(郡)を 基 盤 に農 民 を体 僕 制 や世 襲 隷 民 制 に縛 りつ け・領 主 裁 判 権 を背 景 に賦 役 拡 大 を志 向す る農 場領 主 制 が 最終 的 に確 立 して ゆ く、 として きた こ とに対 す る鋭
い批 判 を含 ん で い る。17世 紀 後 半 か ら18世紀 に か け て の ブ ラン デ ン ブル ク=プ ロイ セ ン国家 の社 会 的 権 力 状 況 並 び にそ れ を支 え る物 質 的 基礎 として の財 政 構 造 の分 析 、 さ らに は司 法 的秩 序 の全 体 構 造 の なか で 土 地貴 族 が農 村 社 会 の再 建 に果 た した歴 史 的役 割 が 解 明 され て い る。 その 点 で 、本 書 第 一 部 の 白眉 を な して い る。 御 料 地 財 務 庁 や 宮 廷 御 料 地 財務 府 の設 置 に よっ て、16世 紀 の土 地 貴族 の 農場 領 主 制 展 開 を保 証 して い た アム ッハ ウ プ トマ ン を通 じて の 管 区毎 の 自律 的 な経 営 は後 退 す る。 それ に代 わ っ て宮 廷 の権 力 エ リー ト層 を形 成 して ゆ くの は、 御領 地 改革 を推 進 す る カル ヴ ィ ン派 の 改 革 派貴 族 並 び に御 領 地 の総 小 作 人 と な った 市 民層 で あ っ た。 彼 らは 、御 領 地 収 入 を 中 央 金 庫 に集 中 して ゆ く。 この 過 程 で選 帝 侯 は ベ ル リ ン ・ポ ッ ダ ム に わた る一 大 「宮廷 都 市 」 建 設 に 向か うが 、 その 中核 をな した御 領 地 は もはや 伝 統 的 ブ ラ ンデ ン ブ ル ク土 地 貴 族 の手 を離 れ 、 こ う した宮 廷 エ リー ト層 の 管 理 す る とこ ろ とな っ て い っ た の で あ る。 ポ メ ル ン貴 族 や プ ロイ セ ン貴 族 は西 部 ドイ ッか らの市 民 層 と とも に宮 内職 や 参 議 とい った 宮 廷 中枢 を 占 め る。 これ に対 して ブ ラ ンデ ンブ ル クの土 地 貴 族 は、 傭 兵 軍 将校 で もな く、騎 士 身 分 で もな く、 軍 隊 勤務 を とお して 選 帝 侯 の 軍 政組 織 の形 成 に寄 与 す る存 在 とな って ゆ く。 同時 に こ う した 軍 政組 織 の整 備 は、 中央 軍 事 金庫 の確 立 を とお して軍 事 の側 面 か ら集権 税 制 の成 立 を 促 す 。 他 方 ブ ラ ンデ ン ブル クの土 地 貴 族 は、 本 来 の 自己 の直 営農 場 経 営 を媒 介 に、領 主 が 望 ん だ農 民農 場 再 建 の 手段 と して の世 襲 隷 民 制 並 び に賦 役軽 減 と結 び つ く隷 役 小 作 制 の下 に農 民 を編 入 す る形 で、30 年 戦 争 で 荒廃 した農 村社 会 の再 建 を担 うこ とに な る と論者 は 主張 して い る。 その 際 、 農場 領 主 は もはや 軍 事 力 に よ る農 村 支 配 に代 え て、 村 落 裁 判権 を尊 重 しつ つ、 これ に接 続 す る よ り広域 的 な 司 法秩 序(所 領 裁 判)の 形 成 を展 望 し うる領 主 裁 判権 の確 立 に向 か っ た。 こ う して30年 戦 争 後 の農 村社 会 は、 そ の秩 序 を回 復 した と して い る。 第 四 章 で は、選 帝 侯(王)の 収 入 源 の 柱 で あ る御 領 地 経 営 を土 地 貴 族 に委 ね て い た体 制 を改 め(第 一 節)フ ィナ ンシ ェ型 の富 裕 市 民 層 を担 い 手 とす る管 理(第 二 節)か らさ らに官 僚制 的 な行 政 組 織 に編成 され た 統 合金 庫 制 度 や年 度 会 計 制 度 へ と統合 して い く(第 三 節)過 程 が 段 階 的 に実 証 さ れ て ゆ く。 その 際 、 問題 の焦 点 を な した の は、① 御領 地 の解 体 に よっ て 自由農 民 に永 代 小 作権 を保 証 す る形 で収 入 を確 保 す るの か、 ② そ れ と も富 裕 市 民 層 へ の 一括 した御 領 地 管 区経 営 の 委 託 とい う総小 作 制 に よ って 基 本 的 に農場 領 主 制 を維 持 す るのか 、 の 選 択 で あ っ た。 ブ ラ ンデ ン ブル クで は、 資 力 あ る農 民層 が 欠 如 して い た た め に 、賦 役 収 取 権 と領 主 裁 判権 を継 承 す る形 で後 者 が 選 択 され た の で あ り、総 小 作 人 は今 や 国 王 収 入 の安 定 的 な継 続 を保 証 す るだ けで な く、脆 弱 な農 民 農 場 へ の配 慮 を も課題 として担 う存 在 へ とその性 格 を変 え た と論 者 は結 論 して い る。 第五 章 で は 、王 権 の主 導 の も とに導入 され た直 接 税 で あ る農 村 に対 す る課 税 で あ る コ ン トリブ ッ ィオ ン課税 に対 して、 御 料 地 以 外 の貴 族 所 領 に お い て依 然 と して 農 場領 主制 を維 持 して い た土 地 貴族 が 、18 世紀 前 半期 の農 村 社 会 の なか で い か な る役 割 を果 た して い くの か が 論 じ られ る。18世 紀後 半 を展 望 す る 終 章 で は、 シ ュ タ イ ン ・ハ ル デ ンベ ル ク改革 か ら三 月 革 命 につ な が る ブル ジ ョワ的 改 革 との 関連 が本 来 論 じ られ な くて は な らない が 、論 者 は そ の問 題 につ いて は禁 欲 す る。従 っ て第 五 章 は、 本書 の 事実 上 の 終 章 を な して お り、 研 究 史 の通 説 に対 して ブ ラ ン デ ン ブル クの 土地 貴 族 の歴 史 的役 割 を次 の 二 点 に 求 め て い る。① 農 場 領 主 が 農 民 に対 す る賦 役 ・貢 租 免 除 を実施 した こ と、 そ して② 農 民 が 支 払 うべ き コ ン ト リ ブツ ィオ ン課 税 を農 場領 主 が代 納 した こ と、 これ で あ る。 す な わ ち コン トリブ ツ ィオ ン課 税 は、 ク ライ スや 共 同体 相 互 間 の租 税 負 担 能 力 や フー フ ェの差 異 、 肥 沃度 の相 違 を無 視 し、 農産 物 の生 産 量 とい う単 純 な 生産 能 力基 準 に基 づ いて 課 税 す る、 い わ ぼ形 式 的平
等性 を追 求 す る もの で あ った 。 これ に対 して 、 ブ ラ ンデ ン ブル クの土 地 貴 族 は、 農 村社 会 の安 定 の た め に 自 らの領 地 収 入 に関 係 す る賦 役 や 貢 租 の免 除 を実施 した だ けで は な く、 農 民 の 実 質 的 な平 等 性 を確 保 す るた め に、 ク ライ ス 議 会 に あ っ て は コン トリブ ツ ィオ ン課税 免 除 あ るい は さ らに一 歩 進 ん で農 民 に対 す る 自然 災 害 復 旧等 の た め の補 助 金 の提 供 者 と して の 役 割 を果 た した 、 と言 うの で あ る。 以上 の よ うな論 者 の 論証 は 、社 会 的権 力 状 況 の基 礎 を なす 、等族 財 政 が担 った 歴 史 的役 割 や 間接 税(ア クッ ィーゼ)と 区 別 され る直接 税 や 御 料 地 収 入 そ して 軍 税 の 中 央 国庫 へ の統 合 過 程 にっ い て も これ を具 体 的 に 明か に して い る。30年 戦 争 を は さむ16世 紀 か ら18世 紀 まで の農 村 社 会 に おい て 、 また ブ ラ ンデ ン ブル ク ・プ ロ イセ ン国 家 の成 立 に至 る過 程 に お いて 、 土 地 貴族 が にな っ た歴 史 的 役 割 にっ い て 通説 を覆 す に十分 な考 察 を加 え、 新 た な ブ ラ ンデ ンブ ル ク土 地 貴 族 像 を描 き出 して い る。 以 上 か ら、 本 論 文 の提 出者 は博 士(文 学)の 学 位 を授 与 され るに 十分 な資 格 を有 す る もの と判 断 され る。