大学生の進路選択に対する自己効力感がストレス過程に及ぼす影響についての中日比較研究
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(2) コーピングについて,r情報・計画」,r放棄・逃. 的に日本人には自己批判的,自己卑下的,また自. げ」,「回避的思考・肯定的解釈」において,中国. 己向上を目指すという心理的特性や自己改善傾. 大学生は日本より積極的に活用している。この結. 向があることによると考えられる。また,日本で. 果は,中国大学生は中学校から親元から離れ,宿. は,職業的(進路)発達に関わる諸能力を育成して. 舎生活をするため,自分のことは自分で対処せざ. いるが,中国では,職業選択に対する個人の能力. るを得ない現状と関連していると考えられる。. や興味と職業の関連づけを促すような心理的な. ストレス反応について,各下位尺度において中. 指導や介入の支援もほとんど行われてないこと. 国は日本より高かった。これらの結果は,両国の. によると考えられる。. キャリア教育の実施状況,儒教文化の背景,雇用. 第二は,中国ではCDMSEとストレス反応に正の. 制度の違い,家族の状況などが要因と考えられる。. 関連を示した。中国大学生は自己認知が誇大な傾. 研究3は進路に関するストレス構造につい. 向があり,過度の自信が実際の能力とかけ離れ,. ての中日比較を行った。共分散構造分析の多母. ストレス反応が高くなってしまうと考えられる。. 集団同時分析の結果(Figure1,Figure2),全. 第三は,中国では日本と比べ,ストレス反応に. 体から見ると,中日両国ともに,CDMSEは進路不. 及ぼすコーピングの影響が弱い。また,コーピン. 決断を抑制し,ストレス反応を軽減する間接的関. グの下位尺度の「放棄・逃げ」がコーピングと正. 連が認められた。この結果は自己効力感が顕在的. の関連があることが認められた。中国大学生はス. な行動の形成や変容を規定するという先行研究. トレスに対面した時,積極的な自己調節や,社会. の見解と合致するものであった。. 的支援をあまり求めず,ストレス対処として,放 棄・逃げを多用する傾向があると考えられる。. CDMSE 皿.20. .1匠. 中国大学生は日本大学生より,CDMSEが高いに. .31. 進路不決断. ストレス反応. .03. 【総合考察】. もかかわらず,ストレス反応が高かった。また中. 国では,CDMSEとストレス反応に正の関連が認め 一.1H. コーピング. られた。したがって,中国大学生は適切な自己認. 知を身につける必要がある。次に,中国大学生は. Figure1キャリアに関するストレス過程(中国). 日本大学生より,コーピングが高いにもかかわら. CDMSE. ず,進路不決断が深刻であった。またコーピング と進路不決断との関連が,中日ともに認められな. 一.局3. かった。したがって,コーピングは一時的なスト. 、41. 進路不決断. .20. ストレス反応. レス改善ツールであり,進路不決断という長期的 な問題にとって,軽減効果が乏しいと思われる。. 一、4n. 最後に,本研究では,統計的な手法により,CDMSE. コーピング. とキャリアにおけるストレス過程との関連を探. Figure2キャリアに関するストレス過程(日本). り,一つのモデルを提案したが,今後CDMSEのス. 中目両国における差異は,次の三点に集約され. トレス反応への直接的な効果をさらに検討する. た。第一は,日本では中国と比べ,進路不決断に. 必要があると考える。. 及ぼすCDMSEの影響が強く,ストレス反応に及ぼ. 主任指導教員 藤原 忠雄. す進路不決断の影響が弱かった。この結果は・一一般. 指導教員 藤原 忠雄.
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