1 はじめに 落雷による労働災害は年間に1~3件と災害発生件数 としては少なく,発生件数がない年もある.しかしなが ら,落雷は死亡に至る可能性が高く,また夏季にとどま らず日本海側では冬季に多く発生するなど通年で発生し ており,建設業やゴルフ場のように屋外での作業がある 業種にとっては落雷による災害の発生するリスクが伴っ ている. ここでは,雷雲の発生するメカニズムや現象の基本,落 雷による災害の状況,雷を検知する手法及び落雷による 災害を防止するための基本的な事項について紹介する. 2 雷雲の基本現象と日本の雷状況 1)雷雲の発生 雷雲内では,上層部から下層部にかけて電荷分布がプ ラス,マイナス,プラスと3層構造となることが知られ ている1). 雷雲内での電荷の蓄積のメカニズムについては, Takahashi2)のあられと氷晶との衝突による電荷分離が ある(図13)参照).実験の結果,①周囲温度が-10℃よ り高温のときには,あられは常に正に氷晶(氷の結晶) は負に帯電する,②周囲温度が-10℃以下で雲水量が多 いときには,あられは常に正に氷晶は負に帯電する,③ 周囲温度が-10℃以下で雲水量が灰色の領域では,あら れは負に氷晶は正に帯電する,④周囲温度が-10℃以下 で雲水量が少ない領域では,あられは正に氷晶は負に帯 電する,となっている. 図1の結果を,次の二つの主要な仮定の基に数値雲モ デルに適用すると図23)の結果が得られている. ① 電荷分離過程は冬季の雷で支配的,夏季では主要 な役割を果たす. ② 放電場に近接して有効となる電荷の分離と蓄積の 過程は,それらが無い場合に計算される基本的な 電気特性を変化させない. -10℃層より高温の領域ではあられは正に氷晶は負 に帯電し,負帯電の氷晶は上昇気流によって上方へ運ば れる.-10℃層より低温の領域ではあられは負に氷晶は 正に帯電し,正帯電の氷晶は軽いために上方に運ばれ, 負帯電のあられは,-10℃層附近で下から上昇してくる 負帯電の氷晶と合流する.その結果電荷の3極構造が形 成される.これらのことから,雷の発生や盛衰の傾向を 把握するためには,-10℃となっている大気層での降水 粒子の多少に着目することが重要と考えられている. 図1 着氷実験によるあられ電荷の符号と大きさ.白丸:正, 黒丸:負,氷晶1個衝突当たりの電荷量をpCで示す.X は無帯電. 正電荷 負電荷 図2 雷雲内の電荷の3極構造
落雷による労働災害と防止対策
冨 田 一
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1 落雷による労働災害は発生件数こそ少ないものの,死亡に至る可能性が高い.本稿では,労働災害としては あまり分析がなされていない雷による労働災害について,平成3~29年までの27年間における14件の雷による 死亡災害を発生した月,時間帯,業種,規模などに分類して分析した結果を報告する.また雷雲の発生する基本 的な機構,雷放電の雷撃電流などの特性,雷の検知技術,雷の予測技術,雷による災害を防止するための基本的 な手法について紹介する. キーワード:雷,落雷,雷放電,労働災害,落雷対策原稿受付 2020年5月28日(Received date: May 28, 2020) 原稿受理 2020年7月10日(Accepted date: July 10, 2020)
J-STAGE Advance published date: August 12, 2020 *1労働安全衛生総合研究所研究推進・国際センター 連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6 労働安全衛生総合研究所研究・推進センター 冨田 一 E-mail: [email protected] doi: 10.2486/josh.JOSH-2020-0008-GI 技術解説
2)雷放電(落雷と雲放電) 雲放電は,雷雲中にある正あるいは負の電荷によって 空気の絶縁破壊が発生する現象である.落雷(対地放電) は,雷雲中の電荷が地表の反対符号の電荷を誘導して, 雲と大地間で発生する放電で,1回以上の雷撃(落雷に おける1回の放電)を含む. 落雷は4つに分類され,まずリーダ(最初に空気を絶 縁破壊して進展する放電)が地表に向かって下降するか 地表から雲に向かって上昇するかによって二つに分類さ れ,また,リーダの帯電極性によって正負の二つに分類 されることから,合わせて4つになる. これらの中で負帯電リーダ下降型は雷雲の負帯電領域 から地表に向かってリーダが地表に達すると,リターン ストローク(放電路をリーダと反対方向に進展する放電) が発生し,雷雲の電荷が地表の誘導電荷によって中和さ れる.このタイプの落雷は夏季の落雷の9割以上を占め ている. 正帯電リーダ下降型は雷雲の正帯電領域から地表に放 電路が形成されるものであり,負帯電リーダ上昇型は雷 雲の正電荷領域に向かって地表から正帯電リーダが進展 し,リーダが負帯電領域に達するとリターンストローク に類似の放電によって帯電電荷が中和される現象であ る.これら二つのタイプが冬季落雷での発生率が高い. 放電路の長さは2~20 kmと広範囲であり,代表的な 長さは約5 kmである.雷撃による雷撃電流は短時間でピ ークに達した後に減衰する波形となっている.雷撃が開 始してからピーク値に達する時間が波頭長,雷撃が開始 してからピーク値の半分になるまでの時間が波尾長と呼 ばれる.第一雷撃の波頭長は4 µs程度であり,雷撃電流 の中央値(50%に対応する値)は第一雷撃については35 kAとなっている(表14)). 表1 雷放電の主要特性 項目 最低 代表 最高 主雷撃 伝搬速度(m/s) 2.0×107 9.0×107 2.4×108 波頭長(第1雷撃) (µs) 1.5 3.8 10 波高値(kA) 1以下 35 200 波尾長(µs) 10 40 250 放電電荷(第1雷撃) (C) 3 5 20 放電路の長さ(km) 2 5 20 3)日本における雷雨活動 夏季の雷は熱雷(夏季に強い日射で地表面が熱せられ, 大気が不安定になって生じる上昇気流が原因で発生する 雷雨),界雷(低気圧に伴う寒冷前線や梅雨前線付近など で発生する雷雨),地形性雷(水平気流が山や丘の斜面に そって上昇気流となる雷雨)およびこれらの複合が多く, 関東地方北西部,長野県,岐阜県,九州南部などの山岳 地域で地形性雷が35日を超える雷日数となり,5~9月に 多く発生し,8月の発生率が高い.晩秋から冬季には日 本海沿岸で雷がしばしば発生するが,冷たいシベリア気 団がそれより暖かい日本海上を移流することが主な原因 であり,二次的な要因としては前線通過や低気圧の発生 がある5). 対地放電と雲放電の割合については,冬は1:1程度で あるのに対し,夏は1:5と雲放電の割合が大きい6). 時刻ごとの雷検知数をみると,夏は午後から夕方に明 瞭なピークを持つ一方,冬は昼夜を問わず雷が発生する. 夏は強い日射によって暖められた地表付近の空気が上昇 して積乱雲となり,雷が発生する6). 3 人体への落雷を模擬する実験 人体への落雷の研究グループ(大橋正次郎,藤城保男, 石川友衛,鶴見策郎,首藤克彦,永井洋治,高木勝正) による人体への落雷を模擬する実験の結果,次の知見が 得られている7). ・ 人体の皮膚抵抗は10~100 kΩ/cm2であるが,皮膚を 除く頭から両足までの抵抗は約300 Ωである.波高 値1,300 kVの衝撃電圧に対して,模擬人体は着用し ていたビニールのレインコート,ゴム長靴や模擬人 体の皮膚の抵抗の効果は無くなり300 Ωの抵抗とし て作用する. ・ 頭,胸,腹の部分に身につけた金属片の有無による 効果を調べたが,放電電極と模擬人体との距離が4 m では放電に対する特段の影響はなかった. ・ 頭部から20 cm以上上方に突き出た棒状物体(木製 の絶縁物を含む)があると放電を誘引する効果があ る. ・ 人体表面での沿面放電の電界強度は約250 kV/mであ る.雷撃電流は,電流値が低く全電流が体内を流れ る第一ステージから,電流が増加すると部分沿面放 電が発生する第二ステージに移行して終わることが 多く,死亡する可能性が高い.ただし,第一ステー ジに続いて,頭部から地表まで連続する沿面放電で ある第三ステージに移行することがあり,このとき は全電流に対して体内を流れる電流の割合が低下し て死亡を免れることが多い. ・ 衝撃電圧によって動物に印加されたエネエルギー(電 流と電圧との時間積分)をみると,死亡エネエルギ ーレベル(生存と死亡の割合がそれぞれ50 %となる レベル)は体重に比例し,(62.58±11.93) J/kgであ った. 以上のように,雷撃に対しては皮膚,絶縁性の衣服は 効果が無く,頭部などに金属を身につけていることの効 果もない.一方,傘や杖などが頭部から20 cm以上上方 にあると放電を誘引することになり危険なことが指摘さ れている. 4 落雷事故の調査結果8) 人体への落雷の研究グループによる1965年7月~1998 年10月までの33年間の調査結果を表2に示す. 死亡者数は直撃雷では38回に対し28人と落雷の回数
に対する死亡率は約74%,側撃雷では死亡率は90%とな っていた.死因は呼吸停止,心停止と診断されている. なお側撃落雷は,樹木,テントのポールなどに落雷が起 きたときに,その近傍にいる人体への二次放電をいう. 多点落雷は落雷が複数の落雷点を生じ,多数の死亡者, 負傷者を出すものをいう.また重傷は意識喪失15分以上 で数週間の入院加療を要したもの,中等傷者は意識障害 がなく入院1週間ほどで回復したもの,軽傷者は入院1~ 2日で回復したもの,外来治療で治癒したもの,あるい は医療を要しなかったものをいう. 表2 落雷事故の分類と被害者数 落雷数 死亡者数 重傷者数 中等傷者数 軽傷者数 被害者合計 直撃落雷 38 28 10 3 45 86 側撃落雷 20 18 11 6 53 88 多点落雷 9 9 6 8 54 77 屋内障害 3 0 0 0 3 3 合計 70 55 27 17 155 254 5 落雷に伴う労働災害 職場のあんぜんサイトに掲載された落雷による労働災 害には次の事例9)がある. 河川護岸工事において,川岸斜面にコンクリート基礎 部を構築するため生コンを入れたホッパーでコンクリー ト打設中に,ホッパーを操作していた3人,バイブレー ター操作者1人,コンクリート表面仕上げ作業者1人の 計5人が落雷が原因となった電撃症による熱傷等により 負傷している. 平成3~29年までの間で,厚生労働省職場のあんぜん サイトの死亡災害データベース10)にあげられた落雷によ る死亡災害は14件で年間では0~3件の災害が発生して いる(図3).以下,災害を分析した結果を述べる. 図4には月別の死亡者数を示す.6,7,8月がそれぞれ 4人,3人,4人と夏季に災害の多いことが分かる.これ は,雷の発生件数が夏場に多いことが一因と考えられる. 時間帯での災害発生件数は図5 に示すように,13~16 時に2~3人となっている.これらの時間帯での災害では 12月に発生した1件を除いては6~8月に発生しており, 夏季の落雷の検知数は午後から夕方に明瞭なピークを持 つことが一因と考えられる. 業種別の災害発生件数を図6に示す.いずれも屋外で の作業中であり,建設業,接客娯楽業が多く,接客娯楽 業ではゴルフ場で芝刈り,散水の作業中やキャディーが 被災している. 事業場の規模(常時使用する労働者数)別の災害発生 件数を図7に示す.労働者数が1~9人,100~299人,10 ~29人の規模の事業場でそれぞれの6人,4人,3人が死 亡している. 図3 年別の落雷による死亡者数 図6 業種別の落雷による死亡者数 図5 落雷による発生時間帯別死亡者数 図4 月別の落雷による感電死亡者数 図7 事業場の規模でみた落雷による死亡者数 Vol. 13, No. 2, pp. 181 186, (2020)
6 雷の検出 落雷が発生すると,1Hz未満から1GHzに渡る広帯域 の電磁波が発生することとなる.また雷雲の電荷による 静電界の変化も生ずる. 雷雲の発生による電界は電界強度計で測定し,雷放電 の測定としてVHF(VHF帯)アンテナでは雷の位置を 求め,LF(LF帯)アンテナでは対地放電の位置,特性, 電流値を求めている. 以下日本で雷検知に用いられている装置,システムの 概要を紹介する. 1)雷検知器 簡易な雷放電の検出には,放電に伴う電磁波をアンテ ナで受信する方法がある. 現場に適用された例としては,雷撃の発生場所からの 距離の指標として0~10 km,20~40 km,40~60 km, 60 km以上の区分に応じてLEDランプ,アラーム音で知 らせる雷検知器の使用例が報告されている11). 2)電界センサ(回転集電器/フィールドミル) 雷雲に発生した電荷によって形成される雷雲と大地間 の電界を検出し,電界の大きさや変化から雷雲の発生や 接近を把握できる. 電界検出には回転集電器があり,水平に固定された扇 型の金属製の羽根とその真上には鉛直回転軸に取り付け られた前記羽根と同じ形状の金属板で構成されている. 回転する羽根が固定羽根と重ならないときには,雷雲か らの電界によって誘導電荷が発生し,誘導電圧が発生す る.羽根が重なると誘導電荷はゼロとなり,誘導電圧が 抵抗を介して漏洩することとなる.羽根の回転とともに 誘導電圧が変化して,交流電圧として測定される. 3)雷警報システム 建設現場など屋外作業を常時監視し,落雷の危険性の レベルを自動判定し,通知するシステムである12). 雷放電の検出には二つのアンテナが使用され,一つは 雷雲で発生している帯電電荷に起因する電界を検出する 雷雲センサ(スローアンテナ)である.雷雲活動が活発 になると電界強度の変動が発生し,雷雲の移動,雷雲の 帯電状況,雷放電を検出できる.ただしスローアンテナ は雲の下や雲の端から数km以内の範囲に設置される必 要があるため,雷雲検出可能範囲は,雲の大きさよりや や大きい十数km 程度までと狭い.もう一つのセンサに は,落雷(対地放電)によって発生する数kHz~数MHz の周波数成分を含む電磁波を検出する落雷センサ(ファ ストアンテナ)である.ファストアンテナは100 km 以 上離れた雷放電を捉えることができるため早期の警戒に 有効である. 雷放電が建設現場から離れているときにはファストア ンテナを,接近してきたときにはスローアンテナを重視す る.また上空の風向きと雨域及び対地放電の移動方向な どの気象情報に基づき危険度を4段階に分けて判定する. システムでは危険度レベル,スローアンテナによる電 界強度,ファストアンテナによる検出頻度,雨域風情報 マップなどが表示される.なお警報は,「近距離で高頻度 の落雷があるか,上空に電荷を含んだ雷雲があり,落雷 の危険度が通常に比較して高い」ことを意味し,落雷の 有無を予測するものではない. 現場での使用実績によると,雷の動向を事前に知るこ とができ,危険回避できたなどの意見が寄せられており, 安全性向上に貢献できていると考えられる.
4)監視システム(LIDEN:LIghtningDEtectionNetwork system)13) 気象庁が運用している雷監視システムは,雷放電によ る電磁波を受信し,その位置,発生時刻等の情報を作成 するもので,空港における地上作業の安全確保や航空機 の安全運航に利用されている.雷監視システムは雷によ る電磁波を受信する検知局(全国30ヶ所の空港に設置) と中央処理局(検知局からのデータを集めて雷の発生位 置などを決定)で構成されている.検知局では5本のVHF 用受信アンテナで受信した信号の位相差から雷の方位を 求め,LF用受信アンテナで対地放電(落雷)時に発生す るリターンストロークを検出し,雲放電と対地放電とを 識別している. 5)雷ナウキャスト14) 気象庁が運用している雷ナウキャストは,雷の激しさ や雷の可能性を1 kmの格子単位で解析し,1時間後まで の予測を行うとともに,10分毎に更新データを提供す る.解析には,「LIDEN 雷解析」,「レーダー雷解析」及 び「雷可能性の解析」の3つの手法が用いられる. LIDEN 雷解析は,10 分間における1辺の長さが1 km の格子当たりの放電の個数(以下,放電密度という.)に 基づき,3 段階(活動度2~4(後述))で雷雲の分布を解 析するものである. 雷可能性の解析では,雷による放電が検出されていな い場合にも今後対地放電を発生させる可能性のある雷雲 を,電荷蓄積と関係する-10℃高度,雨雲の強度・頂高 度,対流性の雲か否かといったレーダー3 次元データに 基づきLIDEN雷解析による活動度2と併せて,雷ナウキ ャストの解析を行う. 雷可能性の解析では,雷雲に発達する可能性のある雨 雲(以下,レーダーエコー域という.)を広くとらえるこ とで,「雷可能性あり」を活動度1 (後述)として解析す る.活動度1の捕捉率はすべての月で90%を越えている. ここで活動度1~4の分類内容は次のようになってい る. 雷雲センサ 落雷センサ 気象情報(風 向,雨域) 判 定 通知(回 転灯、 メール) 避難指 示・避難 図8 雷警報システムの構成
活動度1:雷雲に発達する可能性のある雨雲について, 積雲が発達始めの段階から雷雲に発達し衰弱するまで の間を対象 活動度2:上空の放電,近接雷雲の周辺,雷雲の立体 的特徴などから,上空に電荷が蓄積されている段階 活動度3,4:落雷が既に発生しているなどで雷災害の 発生可能性が高く,今後発生する雷による災害の可能 性が高い状況 活動度2 以上では,雷雲が発生している状況なので, 屋外では建物の中に避難するなど直ちに安全確保に努め ることが重要で,活動度と雷の状況及び想定される対応 を表3に示す. 特に,活動度2 は雷が発生していてもまだ活発に感じ ない状況など気を許しがちとなるが,この段階で対応す ることが被害軽減に重要と考えられている.これらの情 報は気象庁のホームページ16)で提供されている. 表3 活動度と雷の状況及び想定される対応 活動度 雷の状況 屋外において 想定される対 応 屋内や工場に おいて想定さ れる対応 4 激 し い雷 落雷が多数発生 屋外にいる人 は落雷の危険 が あ る た め, 建物や車の中 へ移動するな ど, 安 全 確 保 に努める. 屋内にいる人 は外出を控え る. パソコンなど 家電製品の電 源を切る.コ ンセントを抜 く. 工場の生産ラ インなどリス クが大きい場 所では,作業 の中止や自家 発電装置への 切替などの対 応を取る. 3 や や 激しい雷 落雷がある. 2 雷あり 電光が見えた り,雷鳴が聞 こえる.落雷 の可能性が高 く な っ て い る. 1 雷 可 能性あり 解析時刻では 雷は発生して いないが,落 雷の可能性が ある. 今後の雷ナウキャストや空の 状況に注意. 7 雷による災害防止 雷雲は発達,成熟,盛衰という経過を継続時間が15分 程度でたどり,発達期の後期には放電活動を開始する. 入道雲の発達を目視後数分で落雷が発生する可能性が高 いとされている.落雷の移動速度は10~40 km/hである ことから,正確な予測は困難とされ,相次ぐ落雷点の移 動距離は広範囲であり,3~6 kmが多く14 kmとなるこ ともある15). 雷による災害の防止のためには前章で紹介した雷の検 出手法を利用するとともに,災害防止のガイドOSHA NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administra-tion) Fact Sheet: Lightning Safety When Working Out-doors17)にある以下の方法の活用がある. ・ 雷は現場で最も高い物体に落ちる可能性が高い.自 身が最も高い物体になってはならない. ・ 孤立した高い木,丘,電柱,携帯電話用鉄塔,クレ ーン,大型構造物,梯子,足場,屋根の上は避ける. ・野原のような空き地を避ける.地面に伏せない. ・ 雷鳴が聞こえたら,室内に避難する.遠方での雷鳴 であっても,速やかに安全な場所に避難する.激し い雷雨は常に雷を伴う.激しい雷雨があるときには 外部に安全なところは無い. ・ 屋外で作業するときには,管理者と作業者は常に気 象状況を監視する.雷雨の発達を示す黒い雲や風速 が強まることに気をつける. ・ ビルの中に避難場所を探す.事業主と監督者は雷鳴 を聞いたり雷を見たあとにどのビルに作業者が避難 するかを把握しておき,伝達すること.NOAAは導 線や配管系統で全体が囲われた建物が良いと推奨し ている.最後の雷鳴を聞いてから少なくとも30分間 はその避難所に止まること. ・ 避難場所としての車:もし安全な建物が見つからな いときには,事業主は労働者を屋根が金属製で開閉 窓がついた車に誘導する.最後の雷鳴を聞いてから 少なくとも30分間はその車に止まること. ・ 電話の安全:雷鳴を聞いた後には,緊急事態を除い て有線電話を使用しない.携帯電話やコードレス電 話は安全に使用できる. 北川17)は次の対策を指摘している.木造の建物内部も 通常の雷に対しては安全である.ただし,外部から屋内 に引き込まれている電灯線,電話線,接地線やこれらに 接続されているテレビなどから2 m以上離れる. 日本工業規格JIS A4201:2003建築物等の雷保護19)が あり,「この規格を適用することによって,被保護建築物 等への落雷によって生じる損傷の危険を確実に減少する ことができる.」とされている.外部雷保護システムの受 雷部システムの配置は,表4の要求事項に適合しなけれ ばならないとされている. 表4の保護効率は,施設状態によって確率的に考える ことが適切であることから,保護レベルⅠ~Ⅳの4段階 を設定している.保護レベルⅠ~Ⅳの保護効率(例えば レベルIでは2.9~200kAまでの電撃電流に対応可能であ り,その範囲外である2.9kA以下及び200kA以上の雷電 流の発生確率がそれぞれ1%であることから捕捉可能な 範囲での雷電流の発生確率は98% となることを意味す る.)はそれぞれ98,95,90,80%である.例えば火災 及び爆発により工場並びにその周辺にもたらす危険のあ る製油所・給油所,花火工場では保護レベルⅠ~Ⅱが推 奨されている.また,建築中の建築物,高層建築 物(60m 超)では保護レベルⅢ~Ⅳが推奨されている. 回転球体法は2つ以上の受雷部,又は1つ以上の受雷 部と大地に接するように半径Rの球体表面の包絡面から 被保護建築物を保護範囲とする方法である. 保護角法では保護効率が考慮されたものになり,保護 する構造物が高くなるほど保護角は狭くなる.いずれの 保護レベルにおいても60 m以上の構造物に対する保護 角は制定されていないが,構造物の側面への側撃雷は, Vol. 13, No. 2, pp. 181 186, (2020)
60 m以上の建物になると避雷針で受雷できないことに 因る. メッシュ法はメッシュ状の導体で囲われた内部を保護 範囲とするもので,メッシュの幅は表4に示す値以下と するが,必ずしも網目状である必要はなく平行導体の構 成によって同等の保護効果が得られる. 表4 保護レベルに応じた受雷部の配置 保護レ ベル 回転球 体法 R(m) 保護角法h (m) Lメッ シュ法 幅(m) 20 30 45 60 60超過 α(°) α(°) α(°) α(°) α(°) Ⅰ 20 25 * * * * 5 Ⅱ 30 35 25 * * * 10 Ⅲ 45 45 35 25 * * 15 Ⅳ 60 55 45 35 25 * 20 *回転球体法及びメッシュ法だけを適用する. 備考1. R は,回転球体法の球体半径.2. hは,地表面から受雷 部の上端までの高さとする.ただし,陸屋根の部分においては, h を陸屋根から受雷部の上端までの高さとすることができる. 上記の保護システムの一つである避雷針の保護空間に 入る対策があり,保護効率の高い保護レベルⅠが望まし く高い物体のすべての部分から4 m以上離れて低い姿勢 をとる.ただし保護空間は100%安全ではないので,自 動車,バス,列車,コンクリート建築の内部など安全な 場所に避難する. なお,導体で囲まれた安全空間に入る前の応急対策と しては次があげられている. ・ 高い建物,樹木からできるだけ離れて,姿勢を低く し,雷鳴が激しいときには両手の指で耳穴を塞ぎ,雷 活動が収まるのを待つ. ・ 送配電線の上部に架空地線があり,45度以上の角度 で見上げる範囲である空間を通って避難する.念の ために送電線の鉄塔からは2 m以上離れる20). 8 まとめ 雷雲の発生メカニズム,雷放電の特徴,日本での落雷 の状況,模擬実験による人体への影響,日本での雷災害 の状況,雷検出技術,雷災害防止のための基本について 紹介した. 落雷の予測技術や対策技術が進歩しているものの,落 雷を完全に予測することはできていない.また屋外にい る人を落雷から防護する安全な技術は確立されていな い. ゴルフ場や建設現場のように屋外作業が不可避な現場 もあることから,落雷による災害防止のために今回紹介 した方法などを参考に願いたい. 文
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