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豊かな言語生活を営む生徒の育成 : 「建設的に批判する力」の育成を通して

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Academic year: 2021

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全文

(1)

判する力」の育成を通して

著者

林 涼子

雑誌名

鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要

22

ページ

155-164

別言語のタイトル

Study of the constructive critical ability in

Japanese for enrichment of students’ language

life

(2)

林 涼子:豊かな言語生活を営む生徒の育成

Ⅰ はじめに

言葉は,すべての思考及び情緒の基盤となるも のである。人は,思考した結果を言葉に表すだけ でなく,言葉を用いて思考する。また,感受性や 判断力も言葉を媒体にして育つものである。 国語科の授業では,学習者に思考や情緒の基盤 となる言葉を確実に身に付けさせ,それを適切 に,また,情緒豊かに使えるようにすることが大 切である。 一方,現代の小中学校では,「きもい」「うざ い」のように相手を傷つける言葉の多用や「び みょう」「ふつう」のように単語による会話のや り取りなどが多くの生徒に見られるようになり, 問題視されるようになって久しい。携帯電話等の 普及は,それに更に拍車をかけ,絵文字や記号に よる会話のやり取りが頻繁に行われているという 実態が見られる。それにともない,自分の思いを 相手に伝えるために言葉を駆使して表現したり, 相手の思いを汲み取ろうと表現をじっくり吟味 し,味わおうとしたりする態度が育ちにくくなっ ている。そのため,コミュニケーション能力の低 下や人間関係形成能力の低下も国語力に関する問 題点の一つであるとされている。 このような現状から,国語科の授業を通して, 言葉を適切に,豊かに使う力を身に付けさせるこ とによって,豊かな情緒を育み,よりよい人間関 係を築いていくことができる生徒を育てたいと考 え,本研究主題並びに副主題を設定し,研究に取 り組むことにした。

Ⅱ 研究仮説

Ⅲ 研究主題,副主題について

1 研究主題について (1) 「豊かな言語生活」とは 「豊かな言語生活」を以下のように捉えた。 なお,このような言語生活を営む生徒の姿を以 下のように捉えた。 <①に対応する生徒の姿>

豊かな言語生活を営む生徒の育成

「建設的に批判する力」の育成を通して~

涼 子

〔鹿児島大学教育学部附属中学校〕

Study of the constructive critical ability in Japanese for enrichment of students’ language life

HAYASHI Ryoko  

キーワード:建設的に批判する力、分析、比較、創造、話合い

Bulletin of the Educational Research and Development, Faculty of Education, Kagoshima University

2012, Vol.22, 155-164

論 文

自他の表現を建設的に批判する力を高める ことによって,相手や場に応じて適切に表現 する力を高め,豊かな言語生活を営む生徒を 育成することができる。 ① 多様にあふれる情報や情報の伝達手段に対応し ながら,伝えたいことを適切に伝える力を発揮し ている言語生活のこと。 ② 言葉に込められた「思い」を想像したり,理解 したりしながら受容的に受け止め,建設的に批判 し合いながら高め合う言語生活のこと。 ○ 状況や場に応じた言葉の使い方ができる。 ○ 相手や目的に応じた言葉の使い方ができる。 ○ 伝達手段に応じた言葉の使い方ができる。 ○ 双方向の伝え合いができる。

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<②に対応する生徒の姿> (2) 豊かな言語生活を営む生徒を育てるために 本研究では,豊かな言語生活を営む生徒を育て るために「建設的に批判する力」に焦点を当てる ことにした。 自他の表現をより適切に,より豊かにするため には,それらの表現を客観的に評価し,改善して いくことが大切である。評価し改善するために は,現状を正確に理解するとともに,そこからよ りよいものを創造していかなければならない。 そのためには,まず,自他の表現を的確に批判 する力を高める必要があると考える。 このようなことから,「建設的に批判する力」 を高めることを通して,豊かな言語生活を営む生 徒の育成に努めたいと考える。 2 副主題について (1) 「建設的に批判する力」とは 日常生活の中で多用な情報を容易に受信したり 発信したりできる現代では,その情報を常に正し いもの,十分なものとして受けとめがちである。 また,様々な情報機器の普及により,用件だけを 端的に述べたり記号や絵を使って象徴的に表現し たりすることが当たり前になりつつある。そのた め,私たち日本人が古来から大事にしてきた,相 手を思いやり,尊重する気持ちや,相手の思いを 察する力,相手に思いを伝えるために言葉を選び, 駆使しようとする態度などが失われつつある。 そこで,相手の気持ちを思いやって言葉を使お うとする態度や,自分の思いや考えを語句や表現 技法等を駆使して伝えようとする態度の育成が重 要な課題となっている。この課題に対応するため には,自他の言語生活を豊かにしようとする視点 から,より的確な表現,より豊かな表現を追究し 続ける力を高める必要がある。 ここでは,このような力を「建設的に批判する 力」と捉えることにした。 (2) 建設的に批判する力を高めるために 私たちは,批判をするときには,一般的に,相 手の欠点や弱点を探しがちである。また,批判し 合ううちに感情論になりがちであることからも分 かるように,批判する際には主観的に物事を捉え てしまいがちである。 しかし,情報を適切に受信したり発信したり, 言葉に込められた自他の思いまでを表現したり理 解したりするためには,自他の表現を客観的に捉 え,確かな観点をもって分析し,よりよい方向を 探る必要がある。 そのために,ここでは,「比較する」という言 語活動を重視することにした。複数のものを比較 するということは,ある観点をもってそれぞれの 表現を分析することであり,分析した結果を相対 的に捉えるということである。従って,自他の表 現をより客観的に,また,焦点を絞って捉えるこ とができるものと考える。

Ⅳ 研究の視点

本研究では,「建設的な力を高める」という視 点から以下の点に重点をおいて授業を創造し,仮 説の検証を行うことにする。

Ⅴ 研究の実際

ここからは,本年度5月に3年生で行った授業 を基に,研究の実際について述べることにする。 本授業の単元名,教材等は以下の通りである。 ○ 自分の「思い」を適切に伝えることができる。 ○ 相手の「思い」を汲み取ることができる。 ○ 自他の「思い」を生かしながら建設的な話合い をすることができる。 (1) 教材の開発 (2) 「比較」を生かした学習活動の工夫 (3) 建設的な話合いを促す学習活動の工夫 【単元名】 比較して読もう 【教材】 ・「冥王星が『準惑星』になったわけ」(三省堂) ・「冥王星『降格』」(朝日新聞 2006年8月25日) ・「地球は君を忘れない」 (朝日新聞 2006年8月26日)

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林 涼子:豊かな言語生活を営む生徒の育成 1 単元設定の理由 現代では情報伝達手段が多様化し,誰でも,い つでも,様々な情報を入手できるようになった。 特に,インターネット等を活用した情報の収集や 伝達は,迅速かつ容易にできるため,多くの人に 利用されている。一方,新しい情報や多様な情報 を次々に入手できる分,情報の真偽や公平さにつ いて考えたり,ある情報について時間をかけて そ し ゃ く 咀嚼し,自分なりの意見や考えをもとうとしたり する態度が育ちにくくなってきている。また,イ ンターネット等では,情報の発信者が漠然として いる場合が多く,誰が,何のためにその情報を発 信したのかを認識しづらい。そのため,「相手」 の目的や意図を無視した独りよがりな解釈も起こ りかねないという現状がある。 このような状況は中学生も例外ではなく,多く の生徒が,自分が入手した情報が正しいと思い込 み, う の 鵜呑みにしてしまう傾向にある。また,一つ の情報で満足してしまい,他の捉え方はできない か調べたり,発信した人の目的や意図を理解した 上で情報を取り入れようとしたりする姿勢に欠け る傾向にある。さらに,図書の本や新聞等,活字 による情報より,テレビ等の映像や音声による情 報や,インターネット等による簡略化された情報 を受け入れやすいという傾向も見られる。 そこで,「新聞記事と新聞記事の比較」や「説 明文と新聞記事の比較」を通して,同じ情報でも 相手や目的や意図に応じて取り上げる事柄や書き 方が異なることに気付かせ,自分の目的や必要に 応じて情報を収集・選択しようとする態度を育成 するとともに,その情報の真偽等について判断し たり自分なりの意見をもったりしながら読む能力 を高めさせたいと考えて本単元を設定した。 また,建設的に批判する力を高めるためには, 「比較する」という言語活動は大変有効である。 ただし,漠然と比較しても得るものは少ない。そ こで,教師は,何のために,何を,どのように比 較させるのかを明確にした上で授業を創造する必 要がある。そうすることによって生徒は,必然的 に文章を分析しながら読み,共通点や相違点を見 出していくことができるのである。 このように,共通点や相違点を見出し,その理 由を探り,どちらがより適切かなどを判断する過 程で,生徒はそれぞれの文章を建設的に批判する ことになる。 2 教材の開発 (1) 教材となる文章の見出し ここで使用した教科書教材「冥王星が『準惑 星』になったわけ」(渡辺潤一著 三省堂)は, 2006年夏,プラハで行われた国際天文学連合(I AU)で決議された「冥王星は,惑星と別に新し く設けられた『矮惑星』というジャンルに入る」 という決定を受けて,その理由や天文学の発展か ら見た意義について,天文学の歴史をひもときな がら説明した文章である。 本教材は,人間が太古の昔から眺め,憧れてき た星々について,飽くなき探求心をもって解明し てきた多くの天文学者の研究の軌跡を追ったもの であり,天文学に興味・感心のない者にとっても 魅力的な題材と言えるものである。 しかし,専門用語や人名,星の名前等が多く, 語句の意味を理解するのに一苦労する文章でもあ る。また,発展の歴史が年代ごとに書かれている ため,その情報量の多さが難解な文章という印象 を与えてしまっている。 さらに,教科書で「比較」を目的に提示された 他の文章は,それぞれの文章の違いを大ざっぱに 捉えることはできるが,分析しながら読むための 「観点」を見出しにくいものである。 そこで,建設的に批判する力を高めるためによ り適した教材として,資料1・2の文章を用いる ことにした。これらは,同じ新聞社の記事である が,一方は一面の記事,一方は社説であることか ら,同じ話題を取り上げているにも関わらず,論 調が明らかに異なっている。つまり,資料1は, ニュースとして事実のみをより迅速に的確に伝え るために書かれたものであり,簡潔で正確である ことが重視されている。資料2は,社説として, 新聞社なりの考えや意見を織り交ぜた文章であ り,書き手の主観が働いていることが明確に分か る語句や表現(「気の毒」「しのびない」「ジレン マから」「私たちのふるさとである太陽系」等) が多用されている。

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(2) 見出した文章の教材化 この二つの文章も見慣れない語句が多く,この ままでは,教科書教材ほどではないにしても,読 むことに抵抗を感じる生徒が多く見られるものと 予想される。また,比較させるには,文章の長さ が著しく異なり,情報量に差が見られる。さら に,どことどこを比較すればよいのかが一見した だけでは捉えにくい。そこで,教材として用いる ために次のような手立てを行うことにした。 【教材化のために】 ① 文章をできるだけ同じ長さにするために,内容 の理解に支障のない範囲で資料2の後半部分を省 略する。 ② 比較しやすくするために,資料1・2で書かれ てあることができるだけ同じ内容になるように段 落分けをする。(ただし,文章そのものはそのま まなので,すべて同じようにはならない。) ③ 文章を上下に並べ,視覚的に比較しやすくする。 【資 料 1 】 冥王 星「 降 格 」 総会 に 提 示 さ れた 四 つ の 決 議 案 の 採決 の 結 果 、 冥 王 星 は 、 惑 星 と 別に 新し く 設 け ら れ た 「 矮 惑 星 」 と い わい う ジ ャ ン ルに 入る こ と に な っ た 。冥 王星を 含 む 海 王 星 以 遠 の 天 体を 総 称 して 「 プ ル ー トニ アン ( 冥 王星族 ) 」 、 。 天 体 と呼 ぶ決議 案は 否決さ れ た 太 陽系の 惑星の 定義 は 「太 陽 の 、 周り を 回 り 、 十分重い ため 球 状 で 、 軌 道 近く に 他 の 天 体 ( 衛星を 除 く ) がな い 天 体 」 と さ れ た 。 これ は 、 近くに あ っ た 天 体 の ほ と んど を 吸 収 し て 、 軌 道 上で 圧 倒 的 に 大きな 重 さ を 占 め るよ う に なった 天 体を 意味 し 、 定 義 の脚 注で 「水 金 、 地火木 土 天 海 」 の 8 個 の み と 明 記 さ れた 。 矮惑 星は 「 太 陽 の 周 り を 回 り 、 十 分重 いため 球 状 だ が 、 軌道 近くに 他 の天 体 が 残 っ て い る 、 衛 星 で な い 天 体」 と 定 義 さ れ 、 近く に 同 程度 の 小 天体 が 多 数 見 つ か っ て い る 冥王星 は、そ の代表 と位置づ け られ た。 矮惑 星に は 冥 王 星 の ほ か 、 米観測 グルー プ が 昨 夏 「 第 惑星」 と 発 表 10 した 「2003 U B 3 1 3 、火 星 」 と木星 の 間に あ る 小惑 星 で 最大の 「 セ レ ス (ケレ ス 」などが含 ま れ ) る。 当 初 案で は 、 惑星 を 「 自 己 の 重 力 で球 形 を 保 ち 、 恒 星の 周 り を 回 る 恒 星で も 衛星でもない 天 体」など と 定 義し 、専 門 家 の 間 で 「 本当 に惑 星 と いえる の か 」 と 議 論 の あっ た冥 王星 だけ で な く 、 冥 王 星の衛 星 と され て いたカ ロ ン 、 第 惑星 、 セレ ス も含 10 めて 個に 増 や す と し た 。し かし 、 12 反対 意 見 が 続 出 、修 正 案が つ く ら れ てい た。 (朝 日 新 聞 二00 六 年八月二 十五 日より ) 【資 料2】 地球 は君 を忘 れな い 太 陽 系に 惑星は 九 つ。一番 遠 い 惑星 は 冥 王星ー。そ ん な 常 識が、約 年ぶ80 りに 変 わ る 。 国際 天 文 学 連 合 ( IA U ) が あ い ま い だ った 惑 星 の 定 義 を 整 理 し 、 冥 王 星 がそれに あて はまら な くなっ た ためだ。 IA U 総 会が開か れ た プ ラ ハ に は 、 日 本 人も 含 め て世界の メデ ィア が詰め かけ 「 惑 星降格」 な ど の 大 見出 しで報 じ ら れ た 。まる で スキ ャン ダルの 責 、 任でも 取 ら さ れ た かの よう で、 冥 王 星 に は ち ょ っ と気の 毒 なこと に なった 。 一天 体 の 「 処 遇 」 が な ぜ こ れ ほ ど 関 心 を 呼 ぶ の か 。 首 をか し げ た 人 が 多 か った かも し れ な い。 だ が 、 天文 学 に と って 、 私 た ち の ふ る さ と で あ る太 陽 系 の成 り 立ち は 最大 の テ ー マ の 一 つ な の だ 。 、 、 193 0 年に 発見され た 冥 王星は あまりに 遠 く てよ くわ か ら なか っ た が この 年ほ どで観測が 進 み 、 変 わ り 者 ぶ り が明 ら か になって き た 。 30 月より 小 さ いし 、 軌 道 も ほかの惑 星 に 比 べ て ぐ ん と 傾 いて いる。 地球の よ うな 岩石 で で き た 惑 星 や 、 木 星 の よ うな ガ ス の 惑 星 と も 違 い 、 氷 で でき て い る。 こ れ で本 当 に 惑 星 と い え る の か 、 そ ん な 疑問 が出 さ れて い た。 、 。 冥王 星 の 周 辺 に は 似たよう な 氷 の天体 が 数多 く あ ることも わか ってき た 年、 冥 王 星よ り大き い 天体が確 認 さ れ、ついに 放 っ て おけ なくなっ た 。 冥 05 王星が 惑 星 な ら 、 こ ち ら も 惑星と せ ざ る を 得 なくなる か ら だ。 今回の 総 会では 、 そ れ ら も ひっくる めて惑星と す る案も 出さ れ た。だが 、 これ だと 惑 星は将来、 何十に も 増 え て し ま う 可 能 性がある 。かとい っ て 、慣 れ 親 し ん でき た 冥 王 星 を は ず す の は し の びな い 。 天 文 学 者 も や はり 人 の 子で ある 。そ ん な ジ レ ンマか ら 論 議 は 沸 騰 し た。 惑星の で き方に関する 最近 の 学 説か らすれ ば 、 冥 王星はどう に も 異 質だ。 結 局 、こ の 意 見 が 大勢 を 占 め 、 太 陽 系 の惑星は 八つと す る ことで 決 着した。 冥王 星 な どは 「 ド ワ ー フ 惑 星 」 と い う 別 名 称 で 呼 ば れ る こ と に な っ た 。 正 式な 日本語 名 は こ れか ら だ 。 若 干の 意訳 は 恐 れ ず 「豆 惑 星 」 と呼 ぶ のは ど 、 うか。 新 し い 発 見があれ ば、認 識 を 改 める のは当然 の こ とだ。宇宙観 も 変 わっ て いく。 科 学は こう して進 ん で き た 。 とはいえ、 し ば ら く は 混乱もあ る だ ろ う 。 地 球の き ょ うだいとしての冥 王 星は 、 私た ち の文化 に 深 く 根 を 下ろ してい る か ら だ。 教科 書 を始め 、数 多 く の 書 物が書 き 直し を 迫 られる 。 子 供 に聞か れ て 困 る 親も多い だ ろ う。 宇宙ものの ア ニメ作品はどうすれ ば いい のか。占 星 術 の世 界も 大 騒 ぎ だ 。 米 国 の宇 宙 探 査 機 「ニ ューホラ イ ズ ン ズ 」 が 、冥 王 星 を め ざ し て 飛 んで い る。9年がか りの 旅で 年 に 到着 する 予 定 だ 。 新名 称で呼ば れ る 星の探査は 15 初めての ことだから、未知 との出 会 い が いっそう 楽しみになった。 (朝 日新 聞 二0 0 六 年 八 月 二 十 六 日 よ り )

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林 涼子:豊かな言語生活を営む生徒の育成 また,生徒の読解に対する抵抗を少なくするた めに,読みにくい漢字,日常生活であまり目にし ない漢字にふりがなを打った。さらに,話題に対 する抵抗を少なくするために,単元の導入時に惑 星の名前や地球との位置関係,それぞれの惑星の 特徴などについて確認した。その際,太陽系や惑 星の軌道を記した写真,冥王星についてのDVD なども活用し,生徒に理解させた。 ①~③を踏まえて作成したワークシートが,資 料3である。生徒には,意図的に新聞社の名前等 を伏せる必要があったため,ワークシートには, 引用元は記入していない。その代わり,授業の最 後で,新聞社名,発刊された年月日,それぞれ一 面の記事と社説の一部であることを知らせた。 【資 料3 】 年 組 番 ( ) 【二 つ の文章 を比 較 し ながら 読 もう】

。 。 1 総会に 提 示 さ れ た 四 つ の 決 議 案 の採 決 の 結 果 、 1 太陽系 に 惑 星 は九つ 一番 遠い惑 星 は冥 王 星 ー さい け つ 冥王星 は 惑星 と別 に新 し く 設 け ら れ た 矮惑 星 そん な 常 識が 、約 年ぶ り に 変わ る 。 国 際 天文 学 、 「 」 めいお う わく せ い わい 80 という ジャ ン ル に 入 る こ と に な っ た 。 冥 王 星 を 連合 (IAU)があ い ま い だった惑 星 の定義 を整 含む 海 王 星以 遠の天 体 を 総 称 し て 「 プ ル ー ト ニア 理し 、冥王星 がそ れ にあ て はま らなくな っ た ため かいお う せ い ン ( 冥王星族 )天体 」 と 呼 ぶ 決 議 案 は、 否決 され だ。 めい お う せい ぞく た。 2 太陽系 の 惑 星 の定 義 は 「太 陽 の 周 り を回 り 、 2 IA U 総 会 が 開か れ た プ ラ ハに は 、 日 本 も 含 め 、 十 分重いた め 球 状 で 、 軌 道 近く に 他 の 天 体(衛 星 て世 界 の メ デ ィ ア が 詰 め か け 「惑 星 降 格」 な ど 、 き ど う わく せ い こ う か く を除く)が な い天 体」 と さ れ た 。これ は 、近くに の大見出しで 報じ られ た 。 まる で ス キャンダルの あっ た 天 体 の ほと ん ど を 吸 収 し て 、 軌 道 上で 圧 倒 責任 で も 取らさ れ た か のよう で 、 冥 王星にはち ょ 的に 大 き な 重 さを占 め るよ うに な っ た 天 体 を 意味 っ と 気の毒 な こ と にな った 。一 天体の 「 処遇 」が しよ ぐ う し、定義 の 脚 注で 「水 金 地 火 木 土 天 海 」 の 8 なぜ こ れ ほ ど 関 心 を 呼 ぶ の か。 首を か し げた 人 が 、 きや く ち ゆ う 個のみ と 明記 された。 多か っ た か も し れ な い 。 だ が 、 天文学 に とっ て 、 私 た ち のふる さとで あ る太 陽系の 成 り 立 ちは 最 大 のテー マ の一 つ な のだ 。 3 矮 惑 星 は 「 太 陽 の周りを 回り 、 十分重いた め 球 3 193 0 年に 発見 され た冥 王星 は、 あ ま りに遠 状だ が 、 軌 道 近 く に 他 の天 体 が 残 って い る、衛 星 くて よ く わ か ら な か っ た が 、 こ の 年ほ ど で 観測 30 でな い 天 体 と定 義 さ れ 近くに同程度の小 天 体 が進 み 、 変わり 者 ぶり が 明 ら か に な って きた。 月 」 、 しよ う て ん た い が多 数 見 つかって い る 冥 王 星 は 、 そ の 代 表 と 位置 より 小 さ いし 、軌道 も ほか の 惑 星 に 比 べ て ぐ ん と づけら れ た 。 矮惑 星には 冥 王 星 のほ か、 米観 測 グ 傾い て い る 。 地球 のよう な 岩 石 でで きた惑 星 や 、 べい ルー プ が 昨 夏「 第 惑星 」 と 発表 し た 「 2 0 03 木星 の よ うなガ ス の惑 星 と も違い、氷 で で き てい さ つ か 10 UB 3 1 3 、火星 と 木星 の間にあ る小 惑 星 で最 る。こ れ で 本 当に惑 星 と い えるの か 、 そ ん な 疑問 」 大の 「セ レス(ケ レス 」な ど が 含まれる。 が出 さ れ て いた。冥 王 星の周 辺 には 、似た よ うな ) 。 、 氷 の 天 体が 数多くあ る こ ともわか っ て き た 年05 冥王星 よ り大き い 天体が 確 認 さ れ、つ い に 放 っ て おけ なく なった。冥 王 星が惑 星なら 、こち ら も惑 星 と せざるを得なくなるか ら だ。 4 当初案 で は 惑星 を 自己 の重力 で 球 形 を 保ち 4 今回の総 会では 、 それら も ひっ くるめ て 惑 星 と 、 「 、 とう し よ あ ん 恒星 の 周 り を 回 る 恒星 で も 衛星 で も な い 天体」な する案も 出さ れた。だ が、こ れ だと 惑 星 は 将 来、 こう せ い 。 、 どと 定義 し、専門 家 の 間 で 「 本 当に惑 星 と い える 何十にも増え て し まう可能性がある かと い っ て のか 」 と 議論のあ った冥王 星 だ け で なく、 冥 王星 慣れ 親 し んで き た 冥 王 星をは ず す の は し の び な であ る 。 そ ん な ジ の衛星 と され て い たカ ロ ン 、第 惑星 、 セ レ ス も い。天 文 学者も や は り 人の 子 10 レンマか ら 論 議 は 沸 騰 し た (略 ) 含め て 個に 増 や す と し た 。し か し 、 反 対 意 見 が 。 ふつ とう 12 くら れ て い た 。 続出、修正案がつ

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3 「比較」を生かした学習活動の工夫 (1) 単元の目標,評価規準,指導計画 【単元の目標】 ( ) 複数の文章を積極的に比較し,それぞれの文章の語句の用い方や書き方の工夫を捉えることによって,1 文章の要点や筆者の主張,目的や意図に応じた書き方等について理解しようとすることができる。 , , , ( ) 複数の文章を2 文脈の中における語句の効果的な使い方など 表現上の工夫について比較しながら読み 目的や意図に応じた表現の仕方について理解を深めることができる。 ( ) 文章を読んで自然の摂理やそれを解明しようとする人間の努力のすばらしさに触れ,人としての生き方3 に対する考えを深めることができる。 【評価規準】 学習指導要領との関連 評価の観点 評 価 規 準 国 語 へ の 関 ① 二つの新聞記事の比較や新聞記事と説明文の比較を通して,それぞれ 心 ・ 意 欲 ・ の特徴や書かれた目的や意図を進んで捉えようとしている。 態度 ② 筆者の表現の工夫に注意しながら説明文を進んで読み,要点や筆者の 主張,文章の展開や構成の工夫を捉えようとしている。 読む能力 ③ 二つの新聞記事を比較し,それぞれ目的や意図に応じて用いる語句や ア 語 句 の 効 果 表現の仕方が工夫されていることを理解している。 的な使い方, ④ 説明文において,伝えたいことを分かりやすく表現するために,構成 表現の工夫 や展開,表現の仕方等が工夫されていることを理解している。 ウ 文 章 の 構 成 ⑤ 説明文に書かれた内容を理解し,自然の摂理やそれを解明しようとす や 展 開 , 表 る人間の努力のすばらしさに触れ,人としての生き方について考えを深 現の仕方等 めている。 エ 自 分 の 意 見 ⑥ 新聞記事と説明文を比較しながら読み,目的や意図に応じて表現の仕 をもつこと 方が異なることを理解し,自分の表現に生かそうとしている。 単元の指導計画(全8時間 】 【 ) 主な学習活動 指導に当たっての手立て 評 価 過程 時間 1 単元を概観し,複数の文章を比 ・ 話題や用いられている固有名詞等に対 評価規準① 導 較しながら読み深めていく学習で する抵抗を少なくするために,教科書教 (観察) あることを確認する。 1 材「冥王星が『準惑星』になったわけ」 入 2 説明文や写真等を基に,太陽系 をCDで聞かせたり,写真等を用いて惑 の惑星について知る。 星について理解させたりする。 3 二つの新聞記事を比較し,その 2 ・ 同じ新聞社の一面の記事と社説を比較 評 価 規 準 ① ② 記事が書かれた目的や意図を探る。 させることによって,同じ話題でも,目 ③ ( 発 表 ・ 観 的や意図に応じて取り上げる事柄や書き 察 ・ ワ ー ク シ 本時 方が異なることを理解させる。 ート) 2/2 4 「冥王星が『準惑星』になった ・ 天文学の歴史をより確かに理解させる 評 価 規 準 ② ④ 展 わけ」を読み,惑星についての研 ために年表を作らせ,誰がどのような技 ⑤ ( 発 表 ・ 観 究の歴史や,文章の構成や展開, 術の基に何を発見したのかを分かりやす 察・ノート) 語句や写真の用い方等について捉 くまとめさせる。 える。 ・ 「 複 雑な 問 題 「 恐 れ てい た事 態」 な」 ( ) 文脈に沿って大まかな年表を1 どの語句に着目しながら,冥王星が準惑 作り,天文学の歴史についてま 星になった理由をまとめさせる。 とめる。 3 ・ 最後の段落の意味を考えさせ,筆者が ( ) 冥王星が準惑星になった理由2 読者に伝えたいことを捉えさせる。 についてまとめる。 ・ 文章の展開の仕方等に着目させ,筆者 ( ) 筆者の主張や表現の工夫やそ3 の表現の工夫を捉えさせる。 れらに対する自分の考えをまと ・ 天体に関わる研究に多くの人と時間が 開 める。 費やされていることに着目させ,人とし ての生き方のすばらしさに気付かせる。 5 二つの新聞記事と説明文を比較 ・ 三つの文章を比較させることによっ て , 評 価 規 準 ① ⑥ し,それぞれの文章の果たす役割 1 読み手や書く目的や意図が異なるために ( 発 表 ・ 観 察 について話し合う。 内容や表現の仕方が異なることに気付か ・ ワ ー ク シ ー せる。 ト) 終 6 学習を振り返り,目的や相手に ・ 比較して分かったことをまとめること 応じた文章の書き方についてまと 1 によって,情報を収集・選択する際に注 末 める。 意すべきことを理解させる。

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林 涼子:豊かな言語生活を営む生徒の育成 (2) 「比較する」活動の設定 本単元では,「比較する」活動を二箇所設け た。一つめは,「主な学習活動3」の「二つの新 聞記事を比較し,その記事が書かれた目的や意図 を探る」活動である。二つめは,「主な学習活動 5」の「二つの新聞記事と説明文を比較し,それ ぞれの文章の果たす役割について話し合う」活動 である。(P160【単元の指導計画】参照) 「二つの新聞記事の比較」では,同じ情報でも 相手や目的や意図に応じて取り上げる事柄や書き 方が異なることに気付かせ,自分の目的や必要に 応じて情報を収集・選択しようとする態度を育成 するとともに,その情報の真偽等について判断し たり自分なりの意見をもったりしながら読む能力 を高めることをねらいとしている。 「二つの新聞記事と説明文の比較」では,中学 生を対象として書かれた説明文と不特定多数の人 を対象として書かれた新聞記事という,相手や目 的だけでなく,情報量や書き方まで大きく異なる 三つの文章を比較させる。そうすることによっ て,読み手や目的や意図が異なると取り上げる事 柄や書き方が異なることを実感させることをねら いとしている。 このように,いくつかの情報を比較することを 通して,生徒は,自分の目的や必要に応じた情報 の収集や選択が大切であることを体感するものと 考える。 また,観点を明確にして比較させることによっ て,それぞれのよさを捉え,取り上げられた事柄 や表現の仕方の適否,正誤,美醜等について,自 ら思考し,判断することができるようになるもの と考える。 (3) 比較のさせ方 資料3にある二つの文章を読むためには,「共 通点や相違点を探しながら読み比べる。」という アプローチの仕方が一般的である。しかし,ここ では,「もし,自分が新聞記者だったらどちらの 文章を書きたいか。」という問いを投げかけた。 漠然と共通点と相違点を探すよりも,「自分だっ たらどちらの文章を書くか。」「それはなぜか。」 という問いに答えるために文章を読む方が,切実 に語句や表現に着目すると考えてのことである。 また,二つの文 章 を 分 析 す る 際 に,書き手として の立場に立たせる ことによって,生 徒は,「なぜ,こ の題材が取り上げ られたのか。」「な ぜ,この語句や表現が用いられたのか。」等につ いて考察することになり,書き手の目的や意図に 深く迫ることができるからである。 実際に,本授業を実践した結果,生徒は,書き 手の立場,読み手の立場の両方から文章を分析し ていた。また,授業の終末における感想を発表す る際にも,「文章を書く際には読み手や目的を考 えて表現の工夫をしたい。」「文章を読む際には, 書き手の目的や意図を考えながら読みたい。」と いう両方の立場からの感想を述べていた。 4 建設的な話合いを促す学習活動の工夫 (1) 同じ立場の者同士による話合い 生徒に話合いに積極的に参加させるためには, 自分の意見をしっかりもたせるとともに,その意 見に対するある程度の自信をもたせる必要があ る。また,大人数で話し合うよりも少人数で話し 合うときの方が,活発な話合いになりやすい。 そこで,二つの文章を比較し,「自分だったら どちらの文章を書きたいか。」という視点から分 析させた後,同じ文章を選んだ者同士で4人~5 人のグループによる話合いを行わせた。生徒は, この話合いを通してその文章を選んだ理由が友達 と同じであることが分かり,自信をもったり,他 の理由に気付いたりすることができた。 (2) 話し合った結果の表出 グループで話合 いをした後,それ をどう発表させる かによって,話合 いの成果が大きく 異なると言っても 過言ではない。そ こで,グループで の話合いを最大限に生かす工夫が必要である。 【写真1 二つの文章の分析】 【写真2 グループでの話合い】

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そのためには,グループでの話合いで分かった ことを,全体で共有する場が必要になる。そのた めに,写真2や写真3にあるような小黒板を用 い,「その文章を選んだ理由としてより説得力の あるもの」を書かせることにした。 小黒板を利用す るよさは,各グル ープで話し合った 内容を一斉に見, 比較することがで きるという点にあ る。また,黒板に 張り出せば,必要 に応じていつでも見ることができるというよさも ある。本授業では,それぞれの小黒板に書かれた 内容を比較させ,自分たちとの共通点と相違点を 捉えさせた。 (3) 全員による練り上げ 本授業で

Aの文章を選んだ生徒は,5名,

B の文章を選んだ生徒は,34名であった。 そこ で,全体による話合いを始める際に,「5人で他 のグループの人たちの考えを変えて仲間を増やそ う。」という呼びかけと「相手は5人しかいない から,その人たちも自分たちの仲間として巻き込 もう。」という呼びかけを行った。相手を納得さ せ,自分たちの意見に賛同させるためには,説得 力のある根拠を発表しなければならないからであ る。 このような働きかけを行ったことによって,他 者の意見をしっかり聞き,自分の考えと比較しな がら話合いに臨む生徒の姿が見られた。 また,相手を説得するためには,相手の意見に 反論したり,その意見を更に発展させた意見を述 べたりしなければならない。そのため,生徒たち の話合いは,必然的に「○○君はこう言ったけれ ど,それは○○ではないか。」とか「○○さんの 意見は確かに正しいと思うが,○○という考え方 もできるのではないか。」などどいった,互いの 考えを認めつつも,更によりよい考えに高め合う 話合いになっていった。また,話合いの中で多様 な視点からの意見が出され,話合いに広がりや深 まりが見られた。 このように,相手の意見を基に更に自分の考え を広げ,深めていく話合いがなされていたことか ら,建設的に批判する力の高まりを見てとること ができたように思う。 以下に,全体での話合いの一部を記す。

Ⅵ 考察並びに研究の成果と課題

(1) 考察 次ページのグラフ1・2や「主な理由」から分 かるように,

Bの方が生徒にとって,身近で親 しみやすい文章であることが分かる。また,「お もしろく読めた」と答えた生徒は,

Aより

Bの 方がはるかに多い。しかし,別の質問では,

A の文章だけ読むと難解と感じるが,

Bの文章と 比較することによって,読みやすくなったと答え た生徒も多く見られた。 【写真3 グループ相互の比較】 S1:新聞とか読んで思うんだけど,難しくて辞書 を引かないと分からない言葉が多いと読む気に ならないので,専門用語などをあまり使ってい ない萱の方がいいと思います。 S2:僕も新聞はたくさんの人が読むので,内容が 伝わらないといけないから,専門用語などが少 なくて分かりやすい萱の方がいいと思います。 S3:私は茅を選んだんですけど,茅は確かに専門 用語など難しいと感じる言葉が多いですが,矮 惑星に冥王星がなったという話題なのに,萱に は矮惑星という言葉は一回も出てこないので説 明が不十分だと思います。茅に書いてあること は主に固有名詞なので,難しいというよりは具 体的に書いてあるだけだと思います。萱は,固 有名詞が他の言葉に置き換えられていて分かり やすいと言えば分かりやすいんですが,萱にも 「処遇」とか「スキャンダル」など難しい言葉 は使われているので,難しさから言うと変わら ないと思います。 S4:新聞とは人に多くの知識を与えるものです。 分かりにくい言葉を使っているとS1君が言い ましたが,プルートニアンなどの専門用語はニ ュース番組などで話題になったときに知らない とまったくついていけません。だから,まず茅 を読んで,ある程度知識を蓄えることが大事で あり,その意味で,萱は新聞記事としては適し ていないと思います。 S5:S4君に対する反論なんですけど,2003UB 313とかプルートニアンなどの言葉が分からな いとニュース番組などが分からないとあったん ですけど,ニュース番組などは,みんなに内容 が分かるように伝えるものなので,2003UB31 3などのようにあまり日常で使わない言葉は最 初に説明があると思うので話題についていけな いということはないと思います。天文学を詳し く知りたい人にとっては専門用語は必要だけど 普通の人が読んだときに,この記事は冥王星の ことを言っていると思うので,他の星の名前が 出てきても分からないので,冥王星のことを伝 えるんだったら,萱の文章でもいいと思います。 (S1~S5は生徒を指す。)

(10)

林 涼子:豊かな言語生活を営む生徒の育成 また,グラフ3・4と「主な理由」を見ると, 「とてもおもしろかった」「学びやすかった」と 答えた生徒は半数を超え,逆に「おもしろくな かった」と答えた生徒は1名,「学びにくかっ た」と答えた生徒は0名である。ここで,注意し たいのは,「読むのに抵抗を感じた」と答えた生 徒も,二つの文章を比較するのは「とてもおもし ろかった」「まあまあおもしろかった」「学びやす かった」「まあまあ学びやすかった」と答えてい る点である。さらに,「比較するよさ」について 聞いたところ,多くの生徒が,「共通点や相違 点,それぞれの特徴やよさを捉えやすい。」「表現 の工夫が分かりやすい。」と答えており,一つの 文章を読むよりも,複数の文章を比較しながら読 む方が,それぞれの特徴やよさが際立ち,書かれ てある内容はもちろんのこと,表現の工夫までも 捉えることができるということを実感している。 【資料4 授業後の調査結果】 問1

A・

Bの文章はおもしろく読めたか。 【グラフ1 「

A」について】 【主な理由】 【グラフ2 「

B」について】 【主な理由】 問2 二つの文章を比較するのはおもしろかったか。 【グラフ3】 【主な理由】 問3 二つの文章を比較するのは学びやすかったか。 【グラフ4】 調 査 日:平成24年5月28日(月) 調査学級・人数:附属中学校3年4組・39名 調査方法:質問紙法 おもしろく 読めた (12名) ・定義などが詳細に書かれてある。 ・詳しく書かれ,新しいことをたくさ ん知ることができた。 だいたい読 めた (18名) ・難しい語句が多く,読みにくかった。 ・難しい言葉は多いが,意味は理解で きた。 ・短い文で多くの情報を受け取ること ができた。 読むのに抵 抗を感じた (9名) ・難しい言葉ばかりでおもしろくなか った。 ・専門用語が多く,読みにくかった。 おもしろく 読めた (31名) ・表現の工夫がおもしろく分かりやす かった。 ・筆者の考えも書かれていて自分の考 えをもちやすかった。 だいたい読 めた (8名) ・易しい言葉で書いてあり分かりやす かった。 ・身近に感じられた。 読むのに抵 抗を感じた (0名) なし とてもおも しろかった (28名) ・違いや表現の工夫をたくさん見付け ることができた。 ・違いが多く,読めば読むほど考えが 深まった。 まああまお もしろかっ た(10名) ・それぞれいいところがあっていろい ろな考えをもつことができた。 ・二つの文章の違いがよく分かった。 おもしろく なかった (1名) ・文章の量が多かった。 31% 46% 23% おもしろく読めた だいたい読めた 読むのに抵抗を 感じた 79% 21% 0% おもしろく読めた だいたい読めた 読むのに抵抗を 感じた 72% 26% 2% とてもおもしろか った まあまあおもしろ かった おもしろくなかっ た 69% 31% 0% 学びやすかった まあまあ学びや すかった 学びにくかった

(11)

【主な理由】 これらの調査結果や生徒の授業後の感想(資料 5参照),授業中の様子等から,建設的に批判す る力を高めるために,今回用いた手立ては,豊か な言語生活を営む生徒を育てる上で有効であった と考える。 以下は自由記述で書かせた生徒の感想である。 【資料5 授業後の生徒の感想】 (2) 成果と課題 今回,「比較」を重視した授業を創造して,生 徒が学習に積極的に取り組む姿や,意見を構築し ながら,互いに広げたり深めたりしていく姿を見 ることができた。近年,教師の話を聞くだけとい う受け身的な授業態度の生徒が増えつつあること や討議・討論を苦手とする生徒が増えつつあるこ とからも,本実践のような授業を積極的に行う必 要があることを実感した。 また,よりよいものを目指して建設的に批判す る活動を繰り返すことによって,生徒に自ら修正 したり創造したりする力がつき,生徒の言語生活 が豊かになるものと考える。 今回は,3年生で行った「読むこと」における 授業での実証であった。建設的に批判する力は, 一度の授業で身に付くものではない。他の領域, 他の学年でも意識して授業を創造していく必要が ある。今後,学年の発達段階を踏まえ,系統的, 発展的に「建設的に批判する力」を高めることが できるよう年間指導計画を工夫していきたい。

Ⅵ 終わりに

「言葉が心を育て,人を育てる」とよく言われ る。人の生き方そのものに触れ,自分の生き方を 顧み,よりよい生き方を模索するきっかけを与え られるのが国語科の授業のおもしろいところであ る。本研究は,生徒が言葉を的確に使うだけでは なく,豊かに使いこなせるようになることが,生 き方をも豊かにするという考えに立って行ったも のである。 今後更に研究実践を積み重ね,生徒が豊かな言 語生活を営むためにはどのような力が必要なの か,そのために,どのような教材,どのような言 語活動が適切なのか,また,どのような学習活動 を行わせればよいのかを見極めていきたい。 【参考文献】 ・井上一郎著(2001):語彙力の発達とその育成 明治図書 ・市川伸一著(2004):学ぶ意欲とスキルを育てる 小学館 ・中学校学習指導要領解説国語偏(2008)文部科学省 学びやす かった (27名) ・相違点を見付けやすかった。 ・二つの文章の違いから特徴をつかみ やすかった。 ・それぞれ特徴があり,見付けるのが 楽しかった。 まあまあ学 びやすかっ た(12名) ・おもしろいが難しかった。 ・比較することで違いが分かった。 ・比較しやすかった。 学びにくか った(0名) なし ○ 今回の授業はとてもおもしろかった。AとBの 二つに分かれ,それぞれの意見を主張し合うとこ ろに楽しさを感じた。このようにして楽しみなが ら授業をつくっていくことで,自分の国語力は上 がっているのだと思うと,とてもすごいと感じ た。まだまだこの力を高めていけると思うので, これからの話合い一つ一つを大事にしていきた い。(男子) ○ 今回の授業では,まず,ワークシートをしっか りと分析することができた。ペンで分かりやすく 印をつけたり,分かったことを書き込んだりする ことによって,自分の考えを整理することができ るということが分かった。また,グループ活動で は,友達と意見を共有し合うことによって,意見 がしっかりと固まったり自分の中になかったおも しろい意見を生み出すことができたりしたので本 当によかったと思う。あまり発表はできなかった が,他の人が討論しているのを聞いて,自分と同 じ意見だったときや違う考えがあったときなど, 自分でしっかり考えることができた。(女子) ○ 初めは二つの文章の違いをあまり探せませんで したが,グループでの話合いで,自分がぜんぜん 考えていなかったことに気付くことができまし た。また,その後の意見交換で,自分の意見に反 論がでたときに,その反論を考えるのが楽しかっ たです。相手から意見がかえってこなくなったと きはとてもうれしかったです。最後に二つの文章 は同じ新聞の記事ということを知らされたときは 驚きました。同じ新聞でも書かれているところが 違うだけでこんなに文章は変わるということを初 めて知りました。今回,二つの文章の比較の方法 を学習したので家でもやってみたいです。(女子)

参照

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