Reproductive ecology of the congeneric dioecious trees, Rhus javanica and R. trichocarpa

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(1)Title. Author(s). Citation. Issue Date. URL. Reproductive ecology of the congeneric dioecious trees, Rhus javanica and R. trichocarpa( Abstract_要旨 ). Matsuyama, Shuhei. 京都大学. 2009-09-24. http://hdl.handle.net/2433/126546. Right. Type. Textversion. Thesis or Dissertation. none. Kyoto University.

(2) 氏. 名. 松. 山. 周. 平. (論文内容の要旨) 樹木における繁殖への投資量と頻度がどのように決まっているかは、樹木の生活史に おいて未解決の問題である。繁殖への投資量は、生涯の繁殖成功度が最大となるように 決定されていると考えられているが、この理論が樹木において成り立つのかどうかはよ くわかっていない。とりわけ、この理論では、当年の繁殖投資量は成長量や翌年の繁殖 投資量との間のトレードオフ関係を前提としているにもかかわらず、自然条件下におけ るトレードオフが決定されるメカニズムは未解明である。 雌雄異株性樹木は、雄株と雌株に分かれており、普通、繁殖投資量は雄よりも雌で大 きい。そのため、成長量や翌年の繁殖投資量の雌雄差は、自然条件下におけるトレード オフを反映していると見ることができる。つまり、雌雄差の現出するメカニズムは、自 然下でのトレードオフ決定機構を反映すると考えられる。そこで本論文では、同所的に 分布する同属の雌雄異株性樹木であるヌルデとヤマウルシを用いて、当年の繁殖投資量 と成長量及び翌年の繁殖投資量との間の雌雄差を調べ、種間及び種内で雌雄差の現出パ ターンを比較することから、雌雄差が現出するメカニズムを解明することを試みた。特 に、本論文では、植物の資源投資量のみならず、雌雄差の現出パターンと送粉昆虫との 関係についても検討した。本論文は、以下に示す6つの章より構成されている。 第1章では、植物の繁殖生態学において、当年の繁殖投資量と成長量や翌年の繁殖投 資量との間のトレードオフ関係を同属の雌雄異株性樹木について種間比較することの 意義を説明した。更に、トレードオフに関する種間の違いを解釈するにあたり、資源投 資量のみならず、送粉者群集の違いを考慮することの重要性を説明した。 第2章では、調査地の概況と調査種の特徴を概説した。ヌルデとヤマウルシは雌雄異 株性の落葉広葉樹であり、ともに撹乱を受けた明るい環境に生育するといった共通点を 示すのに対して、ヤマウルシはヌルデに比べてやや暗い環境にも生育すること、また、 繁殖成熟木の樹高はヌルデでは5~10数mに及ぶが、ヤマウルシでは2~6mと樹高のレン ジは狭い、といった種間の違いについても説明した。 第3章では、林道端に生育するヌルデとヤマウルシにおいて、当年の繁殖投資量、成 長量及び翌年の繁殖投資量の雌雄差が認められるか否かを調べ、その傾向を種間で比較 した。ヌルデでは当年の繁殖投資量と成長量や翌年の繁殖投資量との間に雌雄差は確認 されなかった。これは雌の葉生産量が雄より多く、雌は大きな繁殖投資量を葉生産の増 加により補償しているためであると推測された。ヤマウルシでは当年と翌年の繁殖投資 量の間に雌雄差が認められた。種間における雌雄差の現出パターンの違いは、開葉と開 花のフェノロジーの違いから説明できるとする新しい仮説を示した。.

(3) 第4章では、当年の繁殖投資量、成長量及び翌年の繁殖投資量の雌雄差を、ヌルデ では異なる樹高サイズクラス間で、ヤマウルシでは異なる光条件間で比較した。当年 の繁殖投資量の雌雄差は、ヌルデでは樹高サイズの大きなクラスで、ヤマウルシでは 明るい光条件下で大きくなっていた。樹高サイズ及び光条件に関わらず、成長量にお ける雌雄差は認められなかった。これらの結果は、2種の雌が、資源条件によらず雄 と同等の成長量を維持するメカニズムを備えていることを示唆した。とりわけ、ヤマ ウルシでは、雌の翌年の繁殖投資量は雄よりも小さいことから、雌は豊作年の繁殖投 資量は大きいものの、一年間ではなく数年間単位で繁殖投資量を抑制することで、成 長量を維持していることを示唆した。 第5章では、ヌルデとヤマウルシにおける訪花昆虫群集と結果率を調べた。ヌルデ では、ニホンミツバチによる訪花が卓越していたのに対し、ヤマウルシでは、ニホン ミツバチやコマルハナバチといった社会性昆虫の訪花はみられたものの、これらが占 める割合は小さく、大部分は社会性を持たないハナバチ類、アブ・ハエ類及び甲虫類 であった。結果率はヤマウルシよりもヌルデでわずかに高いことから、結果率の違い は、主要な訪花昆虫の送粉効率の違いを反映している可能性を示した。さらに、ヤマ ウルシで見られた訪花昆虫は、送粉効率は低いものの、開花量が少ない年でも偶発的 に訪れると推測されることから、最低限の結果率を補償する重要な役割を果たしてい る可能性を示した。 第6章では、第3章から第5章までの結果を総括し、ヌルデとヤマウルシにおける 当年の繁殖投資量と成長量及び翌年の繁殖投資量の雌雄差に違いが現出するメカニズ ムを、開葉・開花フェノロジー、生育環境と樹高サイズ及び訪花昆虫の観点から議論 した。 以上のように、本論文は、ヌルデとヤマウルシにおける当年の繁殖投資量と成長量 及び翌年の繁殖投資量の雌雄差を種間と種内で比較することから、雌雄差の現出パタ ーンに違いが生ずるメカニズムを検討した。その結果、開葉・開花フェノロジー、訪 花昆虫における種間の違い、樹高サイズや生育場所の光条件における種内の違いが、 各投資量における雌雄差の大きさや現出パターンに影響することを示した。特に、フ ェノロジーの違いは植物の資源投資量と訪花昆虫の違いの両者に影響する可能性があ り、資源投資量のトレードオフにおいて重要であることを明らかにした。.

(4) 氏. 名. 松. 山. 周. 平. (論文審査の結果の要旨) 樹 木 生 態 学 に お い て 、樹 木 に お け る 年 ご と の 種 子 生 産 量 や 種 子 生 産 の 頻 度 を 決 定 す る メ カ ニ ズ ム は 、個 体 の 当年の繁殖投資量の成長量や翌年の繁殖投資量 との間のトレードオフか ら 解 明 さ れ つ つ あ る が 、自 然 条 件 下 に お け る ト レ ー ド オ フ の 決 定 機 構 に つ い て は 未 解 明 の 部 分 が 多 い 。ま た 、繁 殖 投 資 量 と 成 長 量 や 翌 年 の 繁 殖 投 資 量 と の 間 の ト レ ー ド オ フ は 、種 間・種 内 で 異 な る 関 係 性 を 示すことが知られているが、違いを生じるメカニズムはよくわかっていな い 。自 然 条 件 下 に 生 育 す る 雌 雄 異 株 性 樹 木 に お け る 、繁 殖 投 資 量 と 成 長 量 及 び 翌 年 の 繁 殖 投 資 量 の 雌 雄 差 は 、自 然 条 件 下 で の 各 投 資 間 の ト レ ー ド オ フ と 判 断 す る こ と が 可 能 で あ る 。本 論 文 は 、同 所 的 に 生 育 す る ヌ ル デ と ヤ マ ウ ル シ を 材 料 と し 、当 年 の 繁 殖 投 資 量 と 成 長 量 及 び 翌 年 の 繁 殖 投 資 量 の 雌 雄 差 を 種 間・種 内 比 較 す る こ と か ら 、自 然 条 件 下 に お け る ト レ ー ド オ フ に 違 い が 生 ず る メ カ ニ ズ ム を 樹 木 種 に お い て 検 討 し た 数 少 な い 研 究 で あ る と い え る 。本 論文について特筆すべき点は以下の4点である。 1) ヌ ル デ と ヤ マ ウ ル シ に お い て 、 当 年 の 繁 殖 投 資 量 、 成 長 量 及 び 翌 年 の 繁 殖 投 資 量 の 雌 雄 差 を 調 べ 、雌 雄 差 の 現 出 様 式 が 種 間 で 異 な る こ と を 示 し 、種 間の違いを2種の開葉・開花のフェノロジーの違いから説明した。これは、 資源投資間のトレードオフの種間差を説明する新しい仮説である。 2) ヌ ル デ と ヤ マ ウ ル シ に つ い て 、 当 年 の 繁 殖 投 資 量 、 成 長 量 及 び 翌 年 の 繁 殖 投 資 量 の 雌 雄 差 を 、そ れ ぞ れ 異 な る 樹 高 サ イ ズ と 生 育 場 所 の 光 条 件 で 比 較 し 、当 年 の 繁 殖 投 資 量 の 雌 雄 差 は 資 源 条 件 に 伴 っ て 大 き く な る の に 対 し 、成 長 量 の 雌 雄 差 は 維 持 さ れ る こ と を 示 し た 。こ れ は 、樹 木 で は 成 長 量 を 維 持 す るために繁殖投資量を抑制することを示した数少ない研究例である。 3) ヌ ル デ と ヤ マ ウ ル シ に つ い て 訪 花 昆 虫 群 集 と 結 果 率 を 調 べ 、 2 種 で は 優 占 す る 訪 花 昆 虫 が 異 な っ て お り 、結 果 率 も わ ず か に 異 な る こ と を 示 し た 。樹 木 の 資 源 投 資 戦 略 で は 、訪 花 昆 虫 の 違 い は こ れ ま で ほ と ん ど 考 慮 さ れ る こ と が な か っ た が 、本 論 文 は 訪 花 昆 虫 の 違 い が ト レ ー ド オ フ の 違 い に 影 響 す る 可 能性を示した。 4) ヤ マ ウ ル シ の 訪 花 昆 虫 群 集 で は 、 社 会 性 ハ ナ バ チ に 比 べ て 送 粉 能 力 が 劣 る と 見 ら れ る 単 独 性 ハ ナ バ チ 類 や ア ブ・ハ エ 類 、甲 虫 類 と い っ た 訪 花 昆 虫 が 多 数 を 占 め て い た 。本 論 文 で は 、少 な く と も こ れ ら の 一 部 に は 受 粉 能 力 が あ る こ と を 実 験 に よ り 確 か め て お り 、こ れ ま で 注 目 さ れ な か っ た 昆 虫 群 が 樹 木 の送粉に重要な役割を果たしている可能性を示した。 以上のように、本論文は、同属の雌雄異株性樹木であるヌルデとヤマウルシを用い て、繁殖投資量と成長量及び翌年の繁殖投資量の雌雄差に関する種間の違いと、利用 する送粉昆虫の違いとの関係について新しい仮説を示したものであり、樹木生態学、 繁殖生態学、進化生態学、および昆虫生態学に寄与するところが大きい。 よって、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、平成21年7月16日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結 果、博士(農学)の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。.

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