C25 既存鉄骨建築の溶接品質と非破壊検査 〇吹田啓一郎・佐藤有希・長田暢浩 1.はじめに 建築物の地震被害に関する予測や防災対策を 考えるために,実在する建物の耐震性能を精度よ く予測することが求められる.鉄骨建物では兵庫 県南部地震の被害とその後の研究から,溶接接合 の設計・施工の違いにより,早期に破断して耐震 性が損なわれることがあり,その要因として施工 技量や品質管理体制が重要であることが分かっ てきた.設計規範や構造形式,工法などの条件だ けから建物が現実に保有する耐震性能を予測す ることは難しく,特に施工品質に関わる性能の実 態を知るには実建物を対象に調査を重ねてデー タを蓄積する以外に方法はない. 本研究は,既存鉄骨造建物の溶接による柱梁接 合部を対象に,各種検査で溶接欠陥の有無と欠陥 の種類や発生位置の特徴を調査した.また,実大 鉄骨骨組の実験で,試験体柱梁接合部に人工的な 欠陥を設け,欠陥が接合部の力学性能や破壊過程 におよぼす影響を調べる,また有限要素解析によ って応力,歪の分布への影響を求めて欠陥の存在 と破壊要因との関係を調べた. 2.既存鉄骨溶接部の非破壊検査とマクロ試験 現在の鉄骨建物の主流である冷間成型角形鋼 管柱とH形鋼梁を通しダイアフラム形式で溶接 接合した構造形式において,溶接部に実際に生じ うる欠陥の種類,位置,数量を調べると共に,欠 陥を見いだす検査技術の精度を確認する目的で 実建物の溶接部検査を行った.この構造形式が普 及する初期の1980 年頃に建設された鉄骨造建物 の溶接柱梁接合部(図1)3カ所を対象に,10 個 の完全溶け込み溶接部の超音波探傷検査(UT 検 査)を行い,その後,溶接部を切断して 20 断面 33 本の溶接線のマクロ試験を行った. 溶接詳細は溶接部の開先やスカラップの加工 機器,裏当て金やエンドタブの使用などの点で現 在の製作方法と異なり,また多くの溶接線に現在 の基準によれば不合格となる欠陥が存在した. UT 検査で検出された欠陥は 62 箇所.その内マク ロ試験では 33 箇所に欠陥が見られた.スラグ巻 込み,融合不良,割れ,溶け込み不良,ブローホ ールなどの欠陥の種類別に,初層,中層,表層, ダイアフラム側,フランジ開先側に分けた発生位 置の分布を調べた.またマクロ試験で明らかな欠 陥をUT 検査で検出できた割合は全体で 76%であ り,欠陥種類と位置の分類毎に検出率を調べて検 出精度がいかに異なるかを明らかにした. 3.実大鉄骨造骨組の載荷実験 1スパン×2スパンの平面で3層の実大鉄骨 骨組を建設し,これに水平力を繰返し載荷した. 柱梁溶接部の一部に,梁フランジと通しダイアフ ラムの完全溶け込み溶接の食違い,梁フランジ溶 接ルート部の未溶着人工欠陥を設け,欠陥のない 溶接部との破壊挙動の違いを調べた.地震時に想 定される最大の層間変形角に相当する 1/50 では 溶接止端部の亀裂の進展に違いが見られたが,破 断などの重大な損傷は生じなかった.1/20 の層間 変形角で食違いの大きな接合部の梁フランジが 破断したが,架構全体の水平耐力や履歴挙動に不 安定な影響を及ぼすことはなかった. 4.欠陥のある梁端溶接部の歪挙動 実大骨組の梁端溶接部に設けた欠陥が溶接部 周辺の局所的な応力,歪の分布と大きさに及ぼす 影響を有限要素解析で調べた.欠陥の存在によっ て一部に応力や歪の集中が発生するが,実大実験 に観察された亀裂の発生位置と比較すると,必ず しも欠陥により応力,歪が集中した位置で生じた と見られる亀裂は少ない.溶接始終端部の溶込み 不足などの溶接技量による影響を受けやすい位 置での亀裂発生の方が多く観察された. 図1 調査対象柱梁接合部 H-350×175×7×11 梁継手 500 250 250 PL-12 PL-12 290 □-250×250×9 b a
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