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時間・周波数特性が異なる残響下での発話音声が明瞭度に与える影響

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Academic year: 2021

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(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MUS-121 No.10 2018/11/21. 時間・周波数特性が異なる残響下での発話音声が明瞭度に与える影響 神林 千尋†. 程島 奈緒‡. †‡東海大学情報通信学部 〒108-8619 東京都港区高輪 2-3-23 E-mail: †8bjnm008@mail.u-tokai.ac.jp, ‡hodoshima@tokai-u.jp あらまし 人は周囲の雑音や残響環境に応じて無意識的に発話を変化させることがある。具体的に雑音下の発話 音声は静音下の発話音声よりも音声明瞭度が高くなることが分かっており、この現象を Lombard 効果という。そし て残響下の発話においてもこの効果が同様に得られ、残響下の発話は静音下の発話と比較し音声明瞭度が高くなる ことが分かっている。本研究はこの残響下での発話特性を応用し、時間・周波数特性の異なる残響下での発話が明 瞭度に与える影響を調査した。静音下(Q), 残響下[R:インパルス応答の D 値が 48%、RS: D 値が 52%、RA: D 値が 22%、 残響時間は全て 2.2 s]の合計 4 条件で 4 名の話者が発話した音声を 16 名の若齢者に、残響下で聴取させる実 験を行った。その結果 R・RA 条件の方が Q 条件よりもモーラ正解率が高くなった。この結果から、残響時間が先 行研究より短く、公共空間(駅や空港)の環境に近い残響下においても音声明瞭度の高い発話が生成されることが確 認された。そして D 値が低い環境での発話は話者への直接音のフィードバックが、D 値の高い環境での発話よりも 少ないと考えられるため、話者が明瞭な発話をしようとすることが予測される。今後は明瞭度の高くなった音声の 特徴を調べるために発話レベルやフォルマント周波数、母音対子音のインテンシティ比などの音響分析を行いたい。 キーワード 残響, Lombard 効果, 周波数特性, 音声明瞭度. Improving intelligibility of speech spoken under reverberant environment conditions: Effect of time and frequency characteristics of reverberation on speech intelligibility Chihiro KAMBAYASHI† and Nao HODOSHIMA‡ †‡Faculty of Information and Telecommunication Engineering, Tokai University 2-3-23 Takanawa, Minato-ku, Tokyo, 108-8619 Japan E-mail: †8bjnm008@mail.u-tokai.ac.jp, ‡hodoshima@tokai-u.jp Abstract Humans instinctively adapt their speech to overcome their surrounding noisy or reverberant environment. Previous studies reported speech spoken in noise environments was more intelligible than speech spoken in a quiet environment. This phenomenon, which is commonly referred to as the Lombard effect, has been confirmed in speech spoken in reverberant environments. Previous studies reported that speech spoken in reverberant environments is more intelligible than speech spoken in a quiet environment. This study investigated whether speech spoken in reverberant environments with different time and frequency characteristics were intelligible compared with speech spoken in a quiet environment. Four speakers recorded speech in a quite environment (Q) and in reverberant environments [Deutlichkeit is 48 % for R, 52% for RS and 22% for RA respectively. The reverberation times of these impulse responses are 2.2 s.]. Sixteen native speakers of Japanese participated in listening test in reverberant environments. The results showed that R and RA conditions were more intelligible than Q condition, especially under reverberant environments where reverberation times were close to those in public spaces (The previous studies used longer reverberation times.). The results also suggest that the reverberant environments with lower Deutlichkeit has less feedback of direct sound to the speakers than the reverberant environments with higher Deutlichkeit, so the speakers may attempt to speak more intelligible. Future study will carry out acoustic analysis (e.g., speech level, formant frequencies and consonant-vowel intensity ratio) of speech in order to examine which acoustic characteristics correlate with higher mora correct rate. Keywords Reverberation, Lombard effect, Frequency characteristic and Speech intelligibility. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MUS-121 No.10 2018/11/21. 表 1. 発話 条件. 使用したインパルス応答. 発話条件. D 値 [%]. Q (静 音 下 ) R (残 響 下 ). 48. RS (残 響 下 ). R の 1k Hz~2k Hz の 帯 域 の 振 幅 を 1.5 倍 に し た も の. 52. RA (残 響 下 ). R の 直 接 音 か ら 50 ms 以 内 を カ ッ ト し た も の. 22. 下 で の 発 話 と 比 較 し 有 意 に 正 答 率 が 高 く な り 、約 10% 正解率が向上し た。そして残響下での発話の聴取は静 音 下 で の 発 話 と 比 較 し 有 意 に 高 く な り 、 約 10%正 解 率 が 向 上 し た 。 そ こ で 先 行 研 究 [6]で は 残 響 時 間 3.6 s で 残 響 の フ ィ ー ド バ ッ ク 量 が 異 な る 2 種 類 の 残 響 下 (R1: 残 響 の フ ィ ー ド バ ッ ク 量 が -22dB, R2: -10dB)の 発 話 を 使用して聴取実験と音響分析を行った。その結果、 R1・ R2 の 残 響 下 の 発 話 音 声 の 方 が 静 音 下 の 発 話 音 声 よ り 有 意 に 正 答 率 が 高 く な り 、 そ れ ぞ れ 6%と 10%正 答率が向上した。音 響分析の結果、聴取実験で他の話 者よりも明瞭度が向上した話者の音声は、静音下の音 図 1 録 音 環 境 [3]. 声よりも時間長と基本周波数が上昇する傾向が確認さ れ た [6]。. 1. は じめ に 現在、室内公共空間では様々な音声案内が存在する。 そして緊急時にはこ の音声案内が重要な存在になり、. し か し 先 行 研 究 [2, 6]で 残 響 環 境 の 録 音 時 に 使 用 さ れたインパルス応答の周波数特性 や残響時間は、公共 空 間 (駅 や 空 港 )の 環 境 と は 異 な る も の で あ る 。 先 行 研. 情報を正確に伝えるための手段となっている 。しかし. 究 [7, 8]で は 公 共 空 間 に お け る 音 環 境 の 実 態 を 把 握 す. 混雑時の放送は室 内公共空間の残響によって、情報の. るために、首都圏の鉄道駅や空港ロビーなどの音環境. 伝達がうまくいかないことがあり、 その原因として残. の実測調査を行った。 その結果、先行研究で得られた. 響 に よ る overlap-masking や self-masking が 挙 げ ら れ て. い く つ か の デ ー タ で は 駅 の 残 響 の 周 波 数 特 性 は 、 250. い る 。そ し て 先 行 研 究 [1]か ら 残 響 下 で の 情 報 伝 達 に 影. Hz~2k Hz の 周 波 数 帯 域 の う ち 1k Hz~2k Hz の 残 響 時 間. 響を与えているのは残響によって後続の音声区間をマ. が 他 の 帯 域 よ り も 長 く [7]、空 港 は 500Hz~1kHz の 残 響. ス ク す る overlap-masking と 考 え ら れ て い る 。 こ の. 時 間 が 他 の 帯 域 よ り も 長 く な っ た [8]。し か し こ の よ う. overlap-masking に よ る 音 声 明 瞭 度 の 低 下 を 軽 減 さ せ る. な環境下での発話がどのように明瞭度に影響を及ぼす. 方 法 の ひ と つ と し て 、Lombard 効 果 を 応 用 し た 研 究 [2]. かは明らかになっていない。. が 行 わ れ て い る 。 Lombard 効 果 と い う の は 人 の 発 話 が. 本研究ではこのような公共空間で明瞭な音声案内. 雑 音 下 と 静 音 下 で 音 響 的 特 徴 が 異 な る 現 象 で あ る [3]。. を作成するために、 駅や空港に近い時間と周波数特性. 具体的には発話レベルや基本周波数などの上昇が確認. の残響下での発話がどのように音声明 瞭度に影響する. さ れ て い る [3]。ま た こ の 雑 音 下 で の 発 話 は 静 音 下 で の. かを調査すべきと考えた。 具体的には静音下と周波数. 発話と比較し、音声明瞭度が高くなることが分かって. 帯域ごとに D 値と残響時間が異なるインパルス応答を. い る [4]。. 3 種類使用した残響下の合計 4 条件で録音を行い、録. さ ら に 先 行 研 究 [5]で は 残 響 時 間 の 異 な る 2 種 類 の 残. 音した発話音声を刺激として聴取実験を行った。 また. 響 下 (残 響 時 間 R1: 3.5 s、 R2: 12.3 s)で の 発 話 を 使 用 し. 本研究の最終目標は駅や空港などの雑音残響下で人々. て 音 響 的 特 徴 を 調 査 し た 結 果 、 Lombard 効 果 の 特 徴 で. に明瞭な音声案内を提供することである。. ある基本周波数と発話レベル、第一フォルマウント、 インテンシティの増加 が残響下での発話にも確認され た 。 そ し て 先 行 研 究 [2]で は 、 静 音 下 と 雑 音 下 (白 色 雑 音 )、 残 響 下 (残 響 時 間 : 3.6 s)の 3 条 件 の 発 話 を 使 用 し 聴取実験を行った。 その結果、雑音下での発話は静音. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 2. 聴 取実 験 2.1. 原音声 原 音 声 は 先 行 研 究 [6]か ら 、「 ま も な く 3 番 線 に 新 宿 行 き の (タ ー ゲ ッ ト 語 ) が 参 り ま す 」 と い う キ ャ リ ア. 2.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MUS-121 No.10 2018/11/21. 文に 4 モーラのターゲット語を挿入したものを使用し. 性 6 名 , 女 性 10 名 , 年 齢 21～ 23 歳 )で あ っ た 。実 験 は. た 。 親 密 度 は 2.5~4.0[9]の も の と し 、 使 用 し た 単 語 数. 防音室で行った。実験参加者には防音室内に設置され. は 48 個 で あ る 。. ているパソコン上のインターフェイスを操作させ、オ. 2.2. 録音. ー デ ィ オ イ ン タ ー フ ェ ー ス (TASCAM US-144MK2) を. 発 話 者 は 日 本 語 母 語 話 者 4 名 (男 性 2 名 、 女 性 2 名 、. 通 じ て ヘ ッ ド フ ォ ン (SENNHEISER HAD 200)か ら 刺. 年 齢 22～ 24 歳 )と し た 。録 音 条 件 は 表 1 の 4 条 件 で あ. 激を提示した。なおパソコン上のインターフェイスは. る 。 RS、 RA は 実 際 の 公 共 空 間 に 近 い 環 境 (駅 や 空 港 ). 音 声 分 析 ソ フ ト Praat で 作 成 し た 。 ま た 参 加 者 に 提 示. の 発 話 を 録 音 す る た め に 使 用 し た 。発 話 条 件 Q は 静 音. す る 話 者 は 、各 実 験 参 加 者 に つ き 2 名 し 、計 52 刺 激 提. 下 、 そ の 他 の 3 条 件 (R、 RS、 RA)は 残 響 下 で 録 音 を 行. 示 し た 。そ の 際 、提 示 す る 話 者 な ら び に 使 用 す る 単 語 、. った。. 条件が重複しないようカウンターバランスを作成した。. R のインパルス応答 はコンサートホールで録音した. 実験参加者には最初に練習として 4 刺激提示し、そ. も の を 使 用 し た 。 そ し て RS の イ ン パ ル ス 応 答 は R を. の 後 本 番 と し て 計 48 刺 激 (発 話 条 件 4 条 件 ×6 刺 激 ×2. 中 心 周 波 数 125 Hz、 250 Hz、 500 Hz、 1k Hz、 2k Hz、. 話 者 )を ラ ン ダ ム な 順 番 で 提 示 し た 。実 験 参 加 者 に は 聞. 4k Hz の オ ク タ ー ブ バ ン ド に Matlab で ピ ー キ ン グ フ ィ. こえたターゲット語を、回答用紙に平仮名 4 文字で記. ル タ を 施 し 、 R の 1k Hz~2k Hz の 帯 域 の 振 幅 を 1.5 倍. 入させた。. に し た RA で 使 用 し た 。 イ ン パ ル ス 応 答 は 、 R の イ ン パ ル ス 応 答 の 直 接 音 か ら 50 ms 以 内 を カ ッ ト し た も の. 3. 結 果・ 考察. で あ る 。残 響 下 3 条 件 の 残 響 時 間 の 平 均 は 約 2.2 s で あ. 図 2 は発話条件ごとの 話者別モーラ正解率の平均で. り 、こ れ ら の イ ン パ ル ス 応 答 は 500 Hz~1k Hz の 残 響 時. あ る 。FM は 女 性 話 者 を 、M は 男 性 話 者 を 表 し て い る 。. 間 が 他 の 帯 域 よ り も 長 く な っ た が 、 RS だ け 250 Hz の. 統 計 解 析 ソ フ ト SPSS を 使 用 し 、 発 話 条 件 間 で 対 応 の. 帯域も残響時間が長くなった 。そしてそれぞれのイン. な い 因 子 (発 話 者 )と 対 応 の あ る 因 子 (発 話 条 件 )の 2 元. パ ル ス 応 答 の D 値 は R が 48%、RS が 52%、 RA が 22%. 配置分散分析を行った 。結果、発話条件による主効果. で あ る 。こ の 残 響 時 間 と 周 波 数 特 性 は 、先 行 研 究 [7, 8]. が 確 認 さ れ た (p<0.05)。そ の 後 、発 話 条 件 ご と で Sidak. の駅と空港の音響特性のデータを参考にして決定した。. に よ る 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、条 件 R は 条 件 Q と 比. 録音は防音室で行った。そして残響下の録音の際、. 較 し モ ー ラ 正 解 率 が 有 意 に 高 く な っ た (p=0.012)。 さ. 残 響 音 の 付 加 は Adobe Audition を 使 用 し 、 マ イ ク. ら に 条 件 RA は 条 件 Q と 比 較 し 、モ ー ラ 正 解 率 が 有 意. (SHURE KSM141)か ら 入 力 さ れ た 音 声 に 録 音 に 使 用 し. に 高 く な る と い う 結 果 に な っ た (p=0.007)。. たインパルス応答を実時間で畳み込んだものをヘッド. そして話者ごとで分散分析を行ったところ、. フ ォ ン (SENNHEISER HAD 200)を 介 し て 発 話 者 に 提. FM2(p=0.010)と M2(p=0.014)の 発 話 条 件 に よ る 主 効 果. 示 し た (図 1)。 発 話 者 に は 実 験 者 が 提 示 し た 文 章 の タ. が 得 ら れ た 。 そ の 後 、 発 話 条 件 ご と で Sidak に よ る 多. ー ゲ ッ ト 語 の 部 分 を 0 型 ア ク セ ン ト で 発 話 さ せ た 。録. 重 比 較 を 行 っ た 結 果 、FM2 の 条 件 RA は 条 件 Q と 比 較. 音 の 順 番 は 発 話 条 件 Q を 最 初 に 行 い そ の 後 、発 話 条 件. し モ ー ラ 正 解 率 が 有 意 に 高 く な っ た (p=0.015)。そ し て. R、 RS、 RA の 順 で 行 っ た 。. M2 の 条 件 R は 条 件 Q と 比 較 し 、 モ ー ラ 正 解 率 が 有 意. 2.3. 刺激. に 高 く な っ た (p=0.022)。. 刺激の作成手順として最初に、 録音した原音声の キ. 実験結果で話者の正解率を平均化したとき、条件 R. ャ リ ア 文 の 前 半 (タ ー ゲ ッ ト 語 に 先 行 す る 部 分 )か ら タ. が条件 Q と比較してモーラ正解率が有意に向上したこ. ー ゲ ッ ト 語 へ の overlap-masking の 量 を 一 定 に す る た. と か ら 、先 行 研 究 [2, 6]よ り 短 い 残 響 時 間 の 残 響 下 に お. め 、 録 音 し た 音 声 を 音 声 解 析 ソ フ ト Praat で キ ャ リ ア. いても明瞭度の高い発話が生成されることが示唆 され. 文とターゲット語に分離した。その後、切り取ったキ. た 。し か し 、先 行 研 究 [6]で は 単 語 の 正 解 率 が 高 く な っ. ャリア文の中から各話者の発話条件ごとにキャリア文. た発話者は他の発話者と比較し、 静音下の音声よりも. を ひ と つ 選 び 、数 値 解 析 ソ フ ト Matlab を 使 用 し て 、選. 基本周波数と単語の時間長が長くなるという結果が得. ん だ キ ャ リ ア 文 の () の 部 分 に タ ー ゲ ッ ト 語 を 挿 入 し. ら れ て い る が 、 FM2 と M2 の う ち 今 回 そ の 結 果 が 得 ら. た。そしてその音声の振幅を正規化し、 この 4 種類の. れ た の は M2 の み で あ っ た 。M2 は 条 件 R の 方 が 条 件 Q. 音 声 に 対 し て RA で 使 用 し た イ ン パ ル ス 応 答 を 畳 み 込. と 比 較 し 、タ ー ゲ ッ ト 語 の 基 本 周 波 数 は 8 Hz、タ ー ゲ. ん だ 。 作 成 し た 刺 激 は 計 768 (発 話 4 条 件 ×4 話 者 ×48. ッ ト 語 の 時 間 長 は 0.04 s 上 昇 し た 。 し か し 発 話 条 件 で. 単 語 )で あ る 。. 有 意 差 が 得 ら れ た も う 1 名 の 話 者 FM2 は 、条 件 RA の. 2.4. 実験手 順. タ ー ゲ ッ ト 語 の 時 間 長 が 条 件 Q と 比 較 し 、0.067 s 長 く. 実 験 参 加 者 は 、日 本 語 を 母 語 と す る 20 代 の 16 名 (男. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. な っ た が 、 タ ー ゲ ッ ト 語 の 基 本 周 波 数 は 条 件 RA の 方. 3.

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MUS-121 No.10 2018/11/21. 図 2. 発話 条件 ごと の話者 別モ ーラ正 解率 が 14 Hz 減 少 す る と い う 結 果 に な っ た 。. が静音下の発話音声よりも明瞭度が向上したことから、. さ ら に 今 回 の 実 験 で 条 件 RA が 条 件 Q と 比 較 し 、モ. 残響下での発話において明瞭度が向上する要因のひと. ーラ正解率が向上したことから、残響下での発話にお. つ に D 値 が 影 響 す る の で は な い か と 考 え ら れ る 。D 値. いて明瞭度が向上する要因の中に、 使用したインパル. の低い残響下での発話は 、話者への直接音のフィード. ス 応 答 の D 値 が 影 響 し て い る と 考 え ら れ る 。今 回 の 実. バックが D 値の高い環境での発話よりも少ないため、. 験で使用したインパルス応答の D 値は低い順に条件. 話者が明瞭な発話をしようとすることが予測される。. RA, R, RA で あ る 。 D 値 の 低 い 残 響 下 で の 発 話 は 、 話. そ の 結 果 、残 響 下 3 条 件 の 中 で D 値 が 最 も 低 か っ た 条. 者へのフィードバックが少ないため、話者が明瞭な発. 件 RA(22%)と 次 に 値 の 低 か っ た 条 件 R(48%)で の 発 話. 話 を し よ う と す る こ と が 予 測 さ れ る 。 そ し て 条 件 RA. 音声は静音下での発話と比較しモーラ正解率が有意に. は 条 件 R の 直 接 音 か ら 50 ms 以 内 を カ ッ ト し た イ ン パ. 向上したと考えられる。 本研究では駅や空港などの公. ルス応答を使用した ため、残響下 3 条件の中で最も D. 共空間に近い環境下での発話が音声明瞭度にどのよう. 値 が 低 く な り 、そ の 結 果 条 件 Q よ り も モ ー ラ 正 解 率 が. に影響するかを調査したが、今後は このような環境で. 有意に向上したと考えられる。. 明瞭度の高くなった 発話者の音声の特徴を調査するた めに音響分析を行いたい。. 4. お わり に 本 実 験 で は Lombard 効 果 を 応 用 し た 周 波 数 特 性 の 異. 謝辞. なる残響下での発話が音声明瞭度に影響するかを聴取. 本 研 究 は JSPS 科 研 費（ 18K04666）の 助 成 を 受 け た 。. 実 験 に て 調 査 し た 。静 音 下 で 発 話 さ れ た 音 声 (Q)と 残 響. インパルス応答を提供して下った橘秀樹 先生、上野佳. 下 [R: コ ン サ ー ト ホ ー ル で 録 音 さ れ た イ ン パ ル ス 応 答 ,. 奈子先生、横山栄先生にも感謝 いたします。. RS: R の 1k Hz~2k Hz の 帯 域 の 振 幅 を 1.5 倍 に し た も の , RA: R の 直 接 音 か ら 50 ms 以 内 を カ ッ ト し た も の , 残 響 時 間 は 全 て 2.2 s]の 合 計 4 条 件 で 発 話 さ れ た 4 名 の 話 者 の 音 声 を 、若 齢 者 に 残 響 下 (残 響 時 間 : 2.2 s)で 聴 取 させた。 聴取実験の結果、発話条件による主効果が確 認され 発 話 条 件 R・RA の 発 話 音 声 は 静 音 下 で の 発 話 音 声 よ り もモーラ正解率が有意に高くなった。ここから公共空 間 (駅 や 空 港 )に 近 く 先 行 研 究 [2, 6]よ り 短 い 残 響 時 間 の 残響下においても明瞭度の高い発話が生成されること が 確 認 さ れ た 。 そ し て 今 回 の 実 験 で 発 話 条 件 R・ RA. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 文. 献. [1] Anna K Nabelek, Tomasz R. Letowski and Frances M. Tucker, "Reverberant overlap- and self-masking in consonant identification", J. Acoust. Soc. Am., 86, 1259-1265, 1989. [2] Nao Hodoshima, Takayuki Arai and Kiyohiro Kurisu, "Intelligibility of speech spoken in noise and reverberation", Proc. International Congress on Acoustics, 2010. [3] Harlan Lane and Bernard Tranel, "The Lombard sign and the role of hearing in speech", J. Speech Hear. Res., 14, 677-709, 1971. [4] W. Van Summers, David B. Pisoni, Rovert H. Bernacki, Rovert I. Pedlow and Michael A. Stokes, "Effects of noise on speech production: Acoustic and. 4.

(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. [5]. [6]. [7]. [8]. [9]. Vol.2018-MUS-121 No.10 2018/11/21. perceptual analysis", J. Acoust. Soc. Am., 84(3), 917-928, 1988. 程 島 奈 緒 , 荒 井 隆 行 , 栗 栖 清 浩 , "雑 音 ・ 残 響 下 に お け る 発 話 の 音 響 的 特 徴 の 話 者 変 動 ", 電 子 情 報 通 信 学 会 技 術 研 究 報 告 , 109(308), 43-48, 2009. Nao Hodoshima, Takayuki Arai and Kiyohiro Kurisu, "Lombard-like effect against reverberation improves speech intelligibility in reverberation", Proc. WESPAC., 93-97, 2015. 伊 積 康 彦 , 藤 井 光 治 郎 , 岩 瀬 昭 雄 , "駅 コ ン コ ー ス の 音 環 境 に 関 す る 実 態 調 査 と 主 観 評 価 実 験 ", 日 本 建 築 学 会 環 境 系 論 文 集 , 76(660), 115-124, 2011. 横 山 栄 , 向 井 ひ か り , 橘 秀 樹 , "公 共 空 間 の 音 環 境 に 関 係 す る 実 測 調 査 例 ", 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 , 23(4), 228-231, 1999. 天 野 成 昭 , 近 藤 公 久 , 坂 本 修 一 , 鈴 木 陽 一 , "親 密 度 別 単 語 了 解 度 試 験 用 音 声 デ ー タ セ ッ ト 2003 (FW03) ", 音 声 試 験 コ ン ソ ー シ ア ム , 2006.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 5.

(6)

図

表 1 発話 条件 発 話 条 件 使 用 し た イ ン パ ル ス 応 答 D 値[%] Q ( 静 音 下) R (残 響 下 ) 48 RS (残 響 下 ) R の 1k Hz~2k Hz の 帯 域 の 振 幅 を 1.5 倍 に し た も の 52 RA (残 響 下 ) R の 直 接 音 か ら 50 ms 以 内 を カ ッ ト し た も の 22 1

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