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ケースビネット法を利用したシミュレーションによるHIV感染者のカミングアウト(感染事実の表明)に関する研究

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Academic year: 2021

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平成9年10月15日 第44巻 日本公衛誌 第10号 749

ケースビネット法を利用したシミュレーションによる

HIV感染者のカミングアウト(感染事実の表明)に関する研究

荒川

長巳

目的 HIV感染は確実に拡大しているが,性活動性の高い大学生はこれに対しての危機感が希薄である。 これは,AIDSあるいはHIV感染が身近なものでなく自分のこととして認知できないためと思われる。 一方,AIDS患者・HIV感染者は社会からの差別・偏見を恐れてカミングアウトできない状況であり, そのため感染の危険を感じてもHIV抗体検査を受診する人が少なく捕捉率は上昇しない状態である。 従来AIDS・HIV感染に対する差別・偏見対策は,まず差別・偏見をなくして,カミングアウトでき る状況をつくるという発想で行われてきたが,実際にカミングアウトする人は極少数である。現実に カミングアウトできる状況かどうかの検証は,カミングアウトの危険性が高すぎて困難である。そこ で本研究は,ケースビネットを利用してシミュレーションすることでカミングアウトヘの影響を検討 しようとするものである。 方法 血液製剤による感染と性行為による感染(男性のケースと女性のケース)のそれぞれに対して感染経 路別にカミングアウトした場合としない場合のケースビネットを作成し,それぞれの場合の感染者のイ メージと彼らの置かれるであろう状況や調査対象者の感染者への態度等を質問紙を用いて調査した。対 象は,大学生1,128人(男子学生487人,女子学生641人)であった。 成績 感染経路に関係なく,カミングアウトした場合の方が,感染者に対する好意的なイメージは強化さ れ,また,拒否的なイメージは弱くなった。しかし,感染者の置かれるであろう状況や調査対象者の 感染者への態度等は,カミングアウトによる影響をほとんど受けなかった。感染経路別の比較では, 血液製剤による感染の場合の方が,性行為による感染の場合より感染に対して責任がなくより同情さ れるという結果であったが,その他の項目については概ね差異はなかった。女子学生の方が男子学生 に比較して感染者に好意的に回答する傾向が認められた。 結論 今回の調査から,大学生はカミングアウトした感染者に対してイメージが肯定的になるであろうこ と,しかしイメージが好転しても感染者の状況や学生の態度などは変化しないと考えていることがわ かった。実効性のある差別・偏見対策が望まれる調査結果であった。

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