Title
Erectile Dysfunction in Patients with Chronic Viral Liver Disease
: Its Relevance to Protein Malnutrition( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
戸田, 勝久
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第626号
Issue Date
2005-07-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14500
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 戸 田 勝 久(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 626 号 平成17 年 7 月 20 日 学位規則第4条第1項該当
Erectile Dysfunctionin Patients with Chronic ViralLiver Disease: lts Relevance to Protein Malnutrition
(主査)教授 森 脇 久 隆
(副査)教授 出 口 隆 教授 安 達 洋 祐
論文内容の要旨
近年,慢性肝疾患におけるQOL(qualityoflife)評価の報告が散見されるようになり,慢性活動性肝炎にお けるQOLの低下や,肝硬変における病態の進行や合併する栄養状態の悪化によるQOLの低下が明らかになって
きた。一方,勃起障害(erectile dysfunction:ED)は1993年米国NIH(NationalInstitute of Health)によ
りその疾患概念が定義され,さらにRosenらによりその診断方法が確立され,現在ではEDの頻度,それに影響 を及ぼす疾患,QOLとの関連についての研究報告がなされている。慢性肝疾患では,栄養障害や合併症による ADLの低下ならびに性ホルモン異常からEDの合併が考えられるが,アルコール性肝疾患がEDに影響を及ぼす との報告はみられるものの本邦に多いウイルス性慢性肝疾患とEDとの関連についての報告は少ない。今回我々 は日本人のウイルス性慢性肝疾患におけるEDの頻度ならびにそれに影響を及ぼす因子について検討した。 対象と方法 研究は当科関連施設の4つの病院で治療をうけている肝疾患患者148人を対象に行った。EDに影響を及ぼす合 併症や既往症,薬剤の投与歴のある患者は除外した。この結果,30歳から79歳までの117人が対象となり,その
内訳は慢性肝炎64人,肝硬変53人(modified Child-Pugh分類grade A(軽症)30例,grade B(中等症)17 例,grade C(重症)6例)であった。成因はB型肝炎ウイルスが21例,C型肝炎ウイルスが94例,nOn B non
Cが2例であった。さらにコントロールとして23歳から69歳の健常者94名を対象とした。
EDの診断,重症度の判定にはIIEF-5(InternationalIndex of Erectile Function-5items version)を用
いた。IIEF-5によりno ED(22-25点),mild(17-21点),mild to moderate(12-16点),mOderate(8-11点),
severe(1-7点)と5段階評価した。対象者に対して同時にSF-36(MedicalOutcomes Study Short Form36)
を用いてQOLの評価を行った。血液生化学検査は,総ビリルビン,アルブミン,AST,ALT,総コレステロー ル,プロトロンビン時間,アンモニア,クレアチニン,血小板を測定した。さらに,15人の慢性肝炎,23人の肝 硬変患者,計38人で総テストステロン,フリーテストステロン,エストラジオールを測定した。低アルブミン血 症に対してBCAA顆粒を投与した症例(症例1)とEDに対してシルデナフィルを投与した症例(症例2)に対し,IIEF-5およびSF-36を用いて6ヶ月以上の経過観察を行った。 成績 (1)慢性肝疾患群ではコントロール群と比較してEDの頻度は高く,特に50-59歳では有意に高値であった。(2) 慢性肝疾患全体ではEDの頻度は85%であり,肝硬変群では慢性肝炎群と比較して有意に高値であった。EDスコ アの平均値は50-59歳,60歳以上で肝硬変群は慢性肝炎群より有意に低値であった。また,加齢に伴い,EDの頻 度は慢性肝炎群で有意に増加し,EDスコアの平均値は慢性肝炎群,肝硬変群とも有意に低下した。(3)重度の EDの頻度は慢性肝炎から肝硬変の重症度が増すにつれ,有意に増加した。(4)慢性肝疾患の成因別ではC型肝炎
ー1-ウイルス陽性群はB型肝炎ウイルス陽性群と比較してEDの頻度は有意に高値であった。(5)EDに関与する因子 として単回帰分析では年齢とSF-36のphysicalfunction,rOle physical,SOCialfunctionおよび血清アルブミン 値が有意な因子であった。さらに多重回帰分析では年齢(r=0.683,p<0.001)と血清アルブミン値(r=0.498,p< 0・001)のみが有意な因子となった。(6)症例1.では,BCAA顆粒投与後,アルブミン値が2.8g/dlから3.5g/dlへ と上昇し,ⅠIEF-5とSF-36スコアの著明な上昇を認めた。症例2.ではシルデナフィルの投与によりⅠIEF-5は12点 から23点へと改善を認めたが,SF-36スコアには変化を認めなかった。 考察 慢性肝疾患とEDの関係についてはこれまでアルコール性肝疾患における報告が多く,ウイルス性肝疾患では 明らかになっていない。今回の検討により,ウイルス性慢性肝疾患患者では慢性肝炎時よりEDが高い頻度で合 併することが明らかになった。また,肝病態の悪化とともに中等度∼重度のEDが増えることが示され,.ウイル ス性慢性肝疾患はEDに影響を及ぼすことが示唆された。慢性肝疾患がEDに影響を及ぼす原因としてはタンパク 低栄養状態が挙げられる。低アルブミン血症は浮腫や腹水,胸水を引き起こし,身体機能に影響を及ぼし,ED の原因になる可能性が示唆される。実際の症例においてもBCAAによりタンパク低栄養状態が改善するとQOL の身体機能やEDが同時に改善した。 結語 ウイルス性慢性肝疾患患者は高頻度にEDを合併している。その原因としてタンパク低栄養状態が関連してい ることが示唆された。 論文審査の結果の要旨 申請者戸田勝久は,日本人のウイルス性慢性肝疾患患者におけるEDの合併頻度を明らかにした。さらにその 原因としてタンパク低栄養状態が関係することを示した。これらの知見は,今後,ウイルス性慢性肝疾患患者に 対する治療の評価を確立していく上で極めて有用であり,肝臓病学,臨床栄養学の進歩に大きく寄与するものと 認める。 [主論文公表誌]
Erectile Dysfunctionin Patients with Chronic ViralLiver Disease:Its Relevance to Protein Malnutrition
Journalof Gastroenterology40,894-900(2005).