アニメーションキャラクターにおける外見と音声の矛盾の影響
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(2) Vol.2012-HCI-146 No.13 2012/1/20. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. ・好きなジャンルは,どれも分け隔てなく好きですが,強いていうならば,SFが好 きです. ・よければ,あなたのお勧めの本を教えていただけませんか?」 自己紹介が終了した後,最初と同じように 40 秒間,頷きと瞬きの動作を行った. 上記のキャラクタと音声様式の 2×2 の組み合わせにより,4 つの条件を設定した.. 図 1. 単調キャラクタ. 条件 1:単調キャラクタ 条件 2:単調キャラクタ 条件 3:精巧キャラクタ 条件 4:精巧キャラクタ. 図 2.精巧キャラクタ. 2.2 使用したキャラクタ. 実験では AH-Software 社の CrazyTalkPro により,色の塗りが単調で人に近くない顔 の構造を持つキャラクタと,色の塗りが複雑で人に近い顔の構造を持つキャラクタを 用意した.これらを図 1,図 2 に示す. また CrazyTalkPro の機能を用いて,瞬き,頷き,発話の動作を各キャラクタに行わ せた.これらを avi ファイルに変換し,WindowsMediaPlayer で再生した.. - - - -. ロボット音声 人音声 ロボット音声 人音声. 2.5 実験手続きおよび測定内容. キャラクタ×音声の 2×2 被験者間計画とし,測定内容は小型ヒューマノイドロボッ トによる矛盾的情報提示に関する既存研究[1]を参考とした質問紙を用いた.図 3 に実 験室の概要を示す. 実験中のロボットに対する被験者の行動を観察するために,ビデオカメラでの行動 記録を行った.ビデオカメラは被験者から見える位置に設置した. 実験手順は,以下の通りである. 被験者は一人ずつ実験室へ入室後イスに座り,机の上に置いた PC ディスプレイに 表示されているキャラクタと対面した.このとき,各被験者には 4 つの条件の内 1 つ をランダムに割り当てた. 実験者は,実験内容について「目の前のキャラクタが自己紹介を行う」ということ だけを口頭で説明し,部屋を退室し,実験室の外でキャラクタの自己紹介が終了する まで待機し,自己紹介が終了してから 20 秒後に再度入室した. 実験終了後.被験者はキャラクタが自己紹介した内容について,表 1 に示す 7 段階 20 形容詞対からなる印象評価の質問紙,表 2 に示す自己紹介内容を想起する課題の質 問紙の順に回答した.内容を想起する課題は,キャラクタが話していた内容について 順を追って回答していくものとした.被験者は,記憶している範囲で回答し,覚えて いない場合は空欄のままで提出した. 印象評価の形容詞対は,等身大人型ロボットの印象評価に関する既存研究[2]を参考 とした.ポジティブな形容詞とネガティブな形容詞の配置に偏りがないよう,ランダ ムに項目対を入れ替えた.質問紙の回答における時間制限はなく,全ての質問項目に 回答するまでを実験構成とした.. 2.3 音声. 各キャラクタに導入する音声は CrazyTalkPro に付属の音声合成ソフトを用いて作成 した.抑揚がなく活舌の悪い,所謂ロボットっぽい音声と,抑揚があり活舌のよい, 人が発話した音声の二つを用意した. 2.4 キャラクタの動作設定. キャラクタは被験者に対して,頷き,瞬き,発話の 3 つの動作を行う.なお各キャ ラクタの動作,発話内容は同一のものである. 発話内容は,最初の 20 秒間は発話せずに,頷きと瞬きだけの動作を行う.これは 実験セッションにおいて誘導者が実験室を退室し,被験者とキャラクタのみの状況を 設定するための時間を確保するためである.20 秒後キャラクタが自己紹介を行う. 以下にキャラクタが実際に発話した自己紹介の内容を示す. ・こんにちは,はじめまして私の名前は『~』と申します. ・私はスポーツが大好きで,中学,高校生のときからサッカー部に入っていました. ・ポジションはフォワードでした. ・今でも休日にはサッカーを友人と一緒にやります. ・少し前にサッカー日本女子代表が優勝した際には私も凄く興奮しました. ・サッカー以外にも読書が好きで,月に3冊は本を読みます.. 2. ⓒ 2012 Information Processing Society of Japan.
(3) Vol.2012-HCI-146 No.13 2012/1/20. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 被験者 表 1.印象評価形容詞対 20 項目 ポジティブ ネガティブ Q1. やわらかい. かたい. Q2. やさしい. こわい. Q3. 感じのよい. 感じの悪い. Q4. 親しみやすい. 親しみにくい. Q5. 活発な. 不活発な. Q6. 気持ちのよい. 気持ちのわるい. Q7. 安定した. 不安定した. Q8. まじめな. ふまじめな. Q9. 責任感のある. 無責任な. Q10. 近づきやすい. 近づきにくい. Q11. 明るい. 暗い. Q12. 意欲的な. 無気力な. Q13. うちとけた. わかりにくい. Q14. 派手な. 地味な. Q15. 強気な. 弱気な. Q16. 陽気な. 陰気な. Q17. 賢い. 愚かな. Q18. 好きな. 嫌いな. Q19. 速い. 遅い. Q20. 暖かい. 冷たい. Q1 Q2 Q3 Q4 Q5. 50cm. PC 机. 机. ビデオカメラ 図 3.実験室概要. 3. 実験結果 各条件の被験者数は単調キャラクタ - ロボット音声が 8 人,条件 2 が 7 人,条 件3が 7 人,条件 4 が 7 人であった. 印象評価質問紙の各形容詞対において-3~3 の 7 段階尺度で印象評価得点として数 値化した.得点は,ポジティブな方ほど高く,ネガティブな方ほど低くなるようにコ ーディングを行った.更に,各形容詞対項目得点に対して,キャラクタの外見×音声 での二要因分散分析を行った.主効果および交互作用において有意性,有意傾向が認 められた得点の分析結果および平均値および標準偏差を図 4 に示す.また表3に分散 分析の結果を示す. 「活発な-不活発な」,「まじめな-ふまじめな」,「明るい-暗い」,「意欲的な-無 気力な」,「派手な-地味な」,「強気な-弱気な」の形容詞対項目では,外見の主効果に おいて有意性もしくは有意傾向が認められ,外見が明るさや活発さ,派手さを感じさ せ,親近感や興味を持たせることが示唆された. 「やわらかい-かたい」,「まじめな-ふまじめな」,「明るい-暗い」,「意欲的な- 無気力な」,「うちとけた-わかりにくい」,「賢い-愚かな」の形容詞対項目では,音声 の主効果において有意性もしくは有意傾向が認められ,音声によって,賢さやまじめ さを感じさせ好印象を与えることが示唆された. また,「活発な-不活発な」,「意欲的な-無気力な」,「うちとけた-わかりにくい」, 「派手な-地味な」,「陽気な-陰気な」,「好きな-嫌いな」,「速い-遅い」の形容詞対. 表 2.記憶想起課題 彼の名前はなんですか 彼の好きな本のジャンルはなんですか. 彼は休日に何をしますか. 彼は月に何冊,本を読みますか. 彼のサッカーのポジションはどこでしたか.. 3. ⓒ 2012 Information Processing Society of Japan.
(4) Vol.2012-HCI-146 No.13 2012/1/20. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 項目では,交互作用において有意性もしくは有意傾向が認められ,外見と音声の食い 違いによってポジティブな印象を残すことができず,活発さや触れ合いやすさなどと いった印象を下げることが示唆された. なお,記憶想起課題においては,主効果と交互作用共に有意性は認められなかった.. 「やわらかい-かたい」. 「活発な-不活発な」. 4. 6 4 2 0 -2 -4 -6. 2 0 -2. 表 3.印象評価項目得点に対する分散分析の結果 F値 形容詞対 やわらかい-かたい 活発な-不活発な. 外見. 音声. .828 3.517. 3.235 †. †. .187. -4 -6. 交互作用 1.559. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 人音声. 単調キャラクタ. ロボット音声. 人音声. 精巧キャラクタ. ロボット音声. 単調キャラクタ. 3.517†. まじめな-ふまじめな. 8.601**. 4.761*. .093. 明るい-暗い. 11.016**. 4.128†. 1.409. 意欲的な-無気力な. 10.037**. 3.441†. 3.32†. .929. 4.435*. 4.741*. 派手な-地味な. 3.194†. .511. 6.26*. 強気な-弱気な. 8.412**. .037. .037. うちとけた-わかりにくい. 人音声. 陽気な-陰気な. 2.568. 2.568. 3.587†. 賢い-愚かな. .476. 6.805*. .476. 好きな-嫌いな. .038. .26. 3.111†. 速い-遅い. .655. 2.798. 6.99*. 「まじめな-ふまじめな」. 「明るい-暗い」 8. 8. 6. 6. 4. 4. 2. 2. 0. 0. -2. -2. -4. -4. -6. -6 人音声. ロボット音声. 人音声. ロボット音声. -8 人音声. 精巧キャラクタ. ロボット音声. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ 精巧キャラクタ. 「意欲的な-無気力な」. 単調キャラクタ. 「うちとけた-わかりにくい」. †. ( p<.1,*p<.05,**p<.01). 6. 8 6 4 2. 4 2 0. 0 -2 -4 -6 -8. -2 -4 -6 -8 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 図 4:統計的有意性が認められた項目得点の平均値と標準偏差. 4. ⓒ 2012 Information Processing Society of Japan.
(5) Vol.2012-HCI-146 No.13 2012/1/20. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 「派手な-地味な」. 4. まとめと考察. 「強気な-弱気な」. 6. 本研究では,ロボットの姿勢と発話における丁寧さ・フランクさの組み合わせの矛盾 が人のロボットに対する印象やロボットの発話内容の記憶に影響を与えるという既存 研究に基づき,心理実験を行った.具体的には,外見と音声の精巧製に関する不整合 があるように設定し,被験者に対して想起課題および印象評価質問紙を課した.結果 として想起課題において有意性は認められなかったが,印象評価では 20 項目中 12 に おいて有意性もしくは有意傾向が認められた. 印象評価質問紙の結果から,外見と音声の不整合によって相手にポジティブな印象 を残すことができず,活発さや触れ合いやすさなどといった要因を下げる原因になっ ていると示唆され,外見と音声の不整合によって得られる感情がネガティブなもので あるという仮説の妥当性が見られた.この理由として現在ではテレビアニメなどのメ ディアが発展しているが,今回の実験のように,密室内でアニメーションと一対一の 関係になることは日常的にはあまりなく,このことから,人に近くない外見を持つキ ャラクタと対峙した際に,被験者が精神的に不安になることが考えられる.またテレ ビアニメに慣れ親しんだ人は単調なキャラクタと音声の不整合には耐性をもっている と考えることができ,単調キャラクタよりも精巧キャラクタと音声の不整合のほうが よりネガティブな感情を得ると考えられる. 記憶想起課題においては,有意性が認められなかったことにより,外見と音声の不 整合によって記憶想起に影響を及ぼすという仮説は妥当性が認められなかった. また,外見の主効果において有意性や有意傾向が認められた印象評価項目の結果よ り,単調キャラクタよりも精巧キャラクタのほうが興味・関心が強く,何らかの期待 を持っていることが示唆された.特に,「明るい-暗い」,「意欲的な-無気力な」,「陽 気な-陰気な」の形容詞対項目においては,キャラクタの外見の違いで印象が大きく分 かれており,精巧キャラクタのほうが単調キャラクタよりもポジティブな印象を与え られる傾向が認められた. また,音声の主効果において有意性や有意傾向が認められた印象評価項目の結果よ り,ロボット音声よりも人音声のほうが興味・関心が強く,何らかの期待を持ってい ることが示唆された.特に「明るい-暗い」,「意欲的な-無気力な」の形容詞対項目に おいては,キャラクタの音声の違いで印象が大きく分かれており,人音声のほうがロ ボット音声よりもアニメーションキャラクタに対してポジティブな印象を持っている 傾向が認められた.これはロボット音声に対する耐性がないことと,ロボット音声の 威圧的な声によってネガティブな印象をもつためだと考えられる. 今後の課題として,高齢者と若者でアニメーションキャラクタに対する印象がどう のように変化するのかという点について分析していく予定である.また,今回の実験 においてキャラクタの自己紹介文が 1 分弱といった短いものであったため,自己紹介. 8 6 4 2. 4 2 0. 0 -2 -4 -6 -8. -2 -4 -6 -8 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 人音声. 単調キャラクタ. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 「陽気な-陰気な」. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 「賢い-愚かな」 8. 8 6 4 2. 6 4 2. 0 -2 -4 -6 -8. 0 -2 -4 -6 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 人音声. 単調キャラクタ. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 「好きな-嫌いな」. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 「速い-遅い」. 6. 6. 4. 4. 2. 2. 0. 0. -2. -2. -4. -4. -6. -6. -8. -8 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 精巧キャラクタ. 人音声. ロボット音声. 単調キャラクタ. 図 5:統計的有意性が認められた項目得点の平均値と標準偏差(続き). 5. ⓒ 2012 Information Processing Society of Japan.
(6) Vol.2012-HCI-146 No.13 2012/1/20. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 分の時間が多くなった場合に関しても同様のことが言えるのかどうかについて実験を 進める必要がある.さらに,実験におけるサンプル数が少なく,被験者の大半が理系 学生のため,ロボットやアニメーションに対する耐性が高かったと考えられる.これ らのことから,理系学生だけでなく文系学生も被験者とする必要があると考えられる.. 参考文献 1) 2). 野村竜也, 中村歌織: ロボットの発話様式と姿勢の矛盾が人の記憶想起および 印象に与える影響, 認知科学, Vol.8, No.3, pp.462-469, 2011 神田崇行,石黒浩,石田亨:人間-ロボット間相互作用に関わる心理学的評価, 日本ロボット学会誌 vol.19, No.3, pp.362-371, 2001. 6. ⓒ 2012 Information Processing Society of Japan.
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