遺伝子発現量データを利用した表現型の違いに影響を及ぼす遺伝子セットの検出方法の開発
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2013-BIO-33 No.7 2013/3/21. イクロアレイデータ(GDS3257:Cigarette Smoking effect. に関わる遺伝子だが、肺がん細胞ではその発現量が減少し. on lung adenocarcinoma)を使用する[2].この発現量デー. ていることや、細気管支肺胞がん細胞では過剰にメチル化. タは 58 のがん細胞サンプル、49 の正常細胞サンプルから. されていることが報告されている.さらに、図中の ASCL1. なり、それをそれぞれ表現型1、表現型2とする.また、. は肺の上皮細胞や神経内分泌細胞の分化に関わる遺伝子で. 解析の対象となる遺伝子は、ベンゾピレンの代謝に関わる. あり、肺がん細胞ではその発現が変化し、肺がんの種類に. 45 遺伝子とヒトの転写因子 1,558 遺伝子のうち、プローブ. よってもその発現パターンが異なることが知られている.. に対応付けられる 1,011 遺伝子である.ベンゾピレンは肺. この遺伝子は評価式 S4 でも検出されている.. がんの形成に関わるとされるタバコの煙に含まれる. 1,011 遺伝子に対応するプローブは 1,680 プローブあり、 1,409,180 プローブペアについて解析する. (同じ遺伝子の プローブペアは解析から除く.). 3. 結 果 3.1 評 価 式 S 1 ,S 2 ,S 3 ,S 4 に よ る 遺 伝 子 ペ ア の 解 析 結 果 各評価式 S1,S2,S3,S4 で検出された代表的な遺伝子ペア をそれぞれ図 3-(i)(ii)(iii)(iv)に示す.. 図 4:評価式 S3 で検出された遺伝子ペアの関係図. 4. 結 論 各評価式による解析の結果、それぞれ想定する発現パタ ーン変化を示す遺伝子ペアが検出された.S1 ではスコアが 高 い 上 位 100 の 遺 伝 子 ペ ア に 含 ま れ る 遺 伝 子 は 全 て Wilcoxon 検定で検出できる遺伝子であったが、S3,S4 では. 図 3:各評価式によって検出された遺伝子ペア. Wilcoxon 検定で検出されない遺伝子を多く検出していた. また、評価式 S4 は原理的には S1,S2,S3 のそれぞれで想定す. 図 3 より、それぞれの評価式で想定している発現パターン. る発現パターン変化を示す遺伝子ペアを検出できるが、今. を示す遺伝子ペアを検出していることがわかる.特に今回. 回解析した発現量データでは S1,S3 で得られる遺伝子ペア. 新たに定義した評価式 S3 で得られた図 3-(iii)の遺伝子ペア. をよく検出していた.さらに、各評価式について得られた. は正常細胞では相関関係がみられるが、がん細胞ではその. 遺伝子ペアの関係図から、多くの遺伝子と関わり発現パタ. 関係が失われていることがわかる.評価式 S4 で得られた図. ーンを変化させる遺伝子が分かった.それらの遺伝子は既. 4-(iv)の遺伝子ペアは正常細胞では相関関係がみられるが、. に肺がんとの関連性を示唆されているものが多かったが、. がん細胞では相関関係が弱くなっており、また、発現量の. ほとんど先行研究がなされていない遺伝子もあった.. 和が大きくなっている.. 最後に、3 遺伝子発現パターンの解析ついては、今後遺. さらに、評価式 S3 についてスコアが高い上位 100 の遺. 伝子ペアでは検出されないものの、この解析によって検出. 伝子ペアの関係図を図 4 に示す.図 4 にて濃い水色で示さ. された遺伝子があるか検討する必要がある.. れている遺伝子は単独の発現量変化についての Wilcoxon. 参考文献. 検定で検出される遺伝子であり、薄い水色で示されている. 1) M.Dettling, et al., Searching for differentially expressed gene combinations, Genome Biology, Vol.6, No.10, pp.R88 (2005) 2) M.Landi, et al., Gene Expression Signature of Cigarette Smoking and Its Role in Lung Adenocarcinoma Development and Survival, PLOS ONE, Vol.3, No.2, pp.e1651 (2008). 遺伝子は評価式 S3 によって検出された遺伝子を示す.図 4 より、HOXA1 は単独の発現量変化についての検定では検 出されないが、多くの遺伝子に関わり発現パターンを変化 させていることがわかる.この遺伝子は胎児や幼生の発生. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 2.
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