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水平的地域統合の経済開発
一MERCOSURの 成果 と限界一
効果
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0 は じめに 90年代以降再活性化 したラテンアメリカにおける地域経済統合は,各 国経済 が直面 していた二つの構造的変化への対応 としての復J面をもっていた。ひとつ は,世 界経済 におけるグローバ リゼーシ ョンの進展であ り,い まひとつは各国 における旧来の国家主導の開発戦略か ら市場志向開発戦略への転換である。こ のことをふ まえれば,地 域経済統合 を単 に世界的な自由化 という最善政策の選 択 に困難がある場合の次善の政策 として評価するだけでは不十分であると考え られる。つ ま リラテ ンアメリカでの経済統合は世界規模での自由化 を先取 りす る もの と見 るべ きではない。それ以外 により重要な側面 として以下の 3点 があ る。第一 に,資 本移動の 自由化が先行 して進む非対称 (不均等)な グローバ リ ゼーシ ョン過程 において,資 本移動 を統合加盟国に有利 に歪める可能性,第 二 に,域 外国に対する交渉力の強化 をもたらす可能性,第 三に時間非整合性の克 服や シグナ リングを通 じて経済政策転換の信頼性 を高める (新自由主義的政策 への転換の不可逆性の担保)と い う効果 をもつ可能性である。地域経済統合は 単 なる通商政策ではな く,グ ローバ リゼーシ ョン下での統合参加国の経済空間 としての資本(経済活動)獲得 ・集積構築上の競争力 を高めるための戦略的政策 としての意味 をもつ ものであるといえようと *本 稿は平成13年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究 (C)(2)課 題番号11630008 「地域経済統合の開発戦略 としての可能性の研究一市場 と政府の関係の新 しい枠組みとし て」の研究成果の一部である。 1)拙稿 「世界経済の構造変化の もとでの地域経済統合―ラテンアメリカのケースから一」 F彦根論叢』320号,1999年 8月 。160 千 本木修一教授追悼号 (第332号) しかしながら,以 上のような地域経済統合の可能性は実証的には確認するこ とが困難である。また現実のラテンアメリカ地域における経済統合参加国のパ フォーマンスも,必 ず しも安定 しているとはいえない。そこで本稿では,地 域 における経済統合の重要な事例であるMERCOSUR(南 米南部共同市場)に つ いて,そ の成果 と限界を検証することから,経 済統合の可能性について接近 し ていきたい。MERCOSURを とりあげるのは次の理由による。まずその経済的 規模│そ して性格面では途上国間の統合であることによる。さらに99年のブラ ジルのレアル切 り下げにともなう混乱や01年のアルゼンチンにおける債務・通 貨危機に見 られるように,統 合過程 と経済の不安定性 との関係 を考察すること ができる事例であることにもよる。 以下ではまずMERCOSURの 地域経済統合 としての性格を検討することから 考察をはじめる。そ して次のそのパフォーマンスを検討 し,問 題点を明らかに していきたい。 I MERCOSURの 地域経済統合 としての性格 ①比較優位構造による類型化 地域経済統合の性格を考察する上では,統 合参加国間における比較優位構造 の類似性が一つの指標 となりうる。ここでいう比較優位構造 とは,伝 統的比較 優位貿易理論における一国の各部門間の相対価格関係のことで,そ れは各国ご とに,技 術水準 (比較生産費説),要 素賦存比率 (ヘクシヤー=オ リーン理論) という比較優位源泉 となる条件の差異に応 じて形成される。 地域経済統合の利益は,伝 統的には域内貿易 自由化によつて生ずる利益 (貿 易創出効果)と 貿易条件差別化効果 (貿易転換効果)に よる損失によつて考察 される。それは統合参加国間にどのような貿易が形成されるかによつて異なる。 比較優位形成要因の類似性は,そ の貿易パターンを左右するものである。 2)ラ テ ンアメ リカ地域 におけるGDPに 占めるシェアで,ま た貿易 に占めるシェアにおいて。
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水平的地域統合の経済開発効果 1 6 1 ②垂直型統合 まず類似性が小 さい場合を考えよう。技術水準の差が大 きい,あ るいは要素 賦存パ ターンの差が大 きい諸国の間での統合である。先進国と途上国間の統合 と言い換えてもよいであろう。これを垂直型統合 とよぶ。f般 に,垂 直型統合 の場合,参 加国間で比較優位部門と比較劣位部門はより明確にあらわれると考 えられる。統合前の貿易障壁水準が阻止的な水準にあったとすれば,貿 易創出 効果は大 きい。ただ,統 合以前に貿易が存在 している場合は,通 常の貿易創出 効果の考察では除外 されている価格低下のもたらす波及効果 (技術選択への影 響など)を 考慮に入れなければ,関 税収入の喪失によって統合の利益は削減さ れる。 他 方 , 貿 易転換効 果 につ いては, よ り貿易転換 が生 じる可能性 が大 きい と考 3 ) えられる。域外の比較優位構造の異 なる諸国に対 し,域 内国にのみ有利 な競争 条件 を与 えることになるか らである。 したがって,阻 止的貿易障壁が存在する 場合の統合でなければ,統 合の利益 は大 きくはない と考 えられる。 また,阻 止 的貿易障壁が統合前 に存在 している場合は,貿 易 自由化 による国内産業構造調 整 コス ト (生産要素の産業間移動 にともなう負担)が より大 きい と予測 される ため,政 治的な反対 も大 きい と考 えられる。 これ らの点か ら,こ の型の経済統 合 は通常容易ではない と考 えられて きた ものである。 ただ し,グ ローバ リゼーシ ョン下 においては,垂 直的統合によって形成 され る貿易関係の変化 を考察 しておかな くてはいけない。垂直的統合による貿易は, 比較優位構造の差異 を反映 した比較優位貿易理論 にそった貿易,す なわち垂直 貿易あるいは産業間貿易 となる。ただ し,通 信 ・輸送手段の発達 などにより, 企業 による生産の国際的編成が可能 となった現代経済 においては,比 較優位構 造 はよ り細分化 された産業分類,あ るいは部門内生産工程の間で考える必要が ある。 したが って古い概念では産業内分業あるいは水平貿易 とされていたもの であって も,よ り細分化 された産業分類間 ・生産工程か ら見れば “産業間"貿 3)伝統的な経済統合論においては,加 盟国経済問の 「補完性」が高い,つ まり比較優位パ ターンが異なる場合,域外国からの輸入が域内国からの輸入に転換する可能性が大きいと している。(Viner,」.,“Tんθ Cttsけοtt υ句づοtt rssttθ,"1950。)162 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 易 と同 じ比較優位 にそつた貿易 としての性格 をもつ ものがあるのである。産業 内垂直分業 な どともよばれている。 この ように細分化 された産業分類 における垂直型統合の本U益は,貿 易創出効 果,す なわち単 なる貿易 自由化の利益 に留 まらない。一般に比較優位の貿易理 論 による貿易 自由化の利益 は静態的なもの,一 回限 りの生産性上昇である。 し か し東 アジアにおける比較優位の動態的展 開過程 に見 られるように,比 較優位 構造 の変動 による途上国の経済発展 の可能性 とい う動態的効果 を貿易 自由化 は もつか もしれない。 この点 を考察 した多数財貿易モデルによれば,途 上国の経済的改善 を左右す るひ とつの重要な要因は技術移転の速度である告貿易 自由化 はそれを早める効 果をもちうる。なぜなら,細 分化 された産業間 ・工程間分業を容易にすること で,移 転が可能な産業・工程 における技術移転を促進するからである。また, 経済統合は,移 転を妨げる効果をもつ先進国側の保護主義を抑制する働 きもも てD 。 この動態的効果 を国際投資 とい う側面か ら見れば,途 上国側 にとつての統合 は国際投資誘発効果 をもつ。統合が途上国内生産活動の先進国市場へのアクセ ス を確保す ることで,先 進国の生産資源 =資 本 と途上国生産資源 =労 働の結び つ く機会 を拡大す るか らである。 以上か ら,垂 直型統合 は,従 来の貿易創 出・転換効果 によつて考 えた場合 は その推進 は容易ではない ものの,比 較優位 の移動 とい う技術移転 による動態的 効果の獲得 を促進す る もの といえる。ただ,そ こでの動態的効果 は,あ くまで も先進国側か らの技術移転 に源泉 を持 ち,そ の意味で途上国側 はその効果 を創 出はで きない。
③水平的統合
水平的統合とは,統 合参加国間において相対的に比較優位構造の類似性が高
4)Dornbusch,R.,S.Fischer,and P.A.Samuelson,‖ Comparative Advantage,Trade and Payments in a Ricardian Wiodel with a Continuum Goods‖ ,A物 れcαz βcοttο竹み'C
風 ぱ ト ー ー ー ー ー ー ー 水平的地域統合の経済開発効果 163 い場合 をい う。 この ようなケースにおいては,相 対価格差が小 さく,統 合前の 貿易障壁が低 くとも貿易阻止的効果 をもつ傾 向が大 きいので,統 合 による貿易 創 出の可能性 は高い。貿易可能性が より徹底的に開発 されるのであると 他方,貿 易転換効果の もたらす損失 については,大 きくな りに くい もの と考 えられる。第一 に,比 較優位構造の差異が大 きい域外 国 との間では,貿 易転換 自体が発生する可能性が小 さい。比較優位構造が類似する域内国 と異 なる域外 国 との間では競争力 に大 きな差があ り,通 商条件の格差 を超越すると考 えられ るか らである。第二 に比較優位構造が類似する域外国 との間で発生する貿易転 換 による損失 は,相 対価格差が小 さいために大 きな効率悪化 とはならない。 したが って,水 平的経済統合では,貿 易創出 とい うプラスの面が より大 きな 力 をもつ ことになる。 また,貿 易 自由化 による産業構造調整 コス トも相対的に 小 さい と考 えられるので,統 合 に対する政治的反発 も少 ない と予想 される。一 般 に,こ のケースの経済統合が より容易であるとされるのは,そ のような理由 による。 水平的統合 については,比 較優位型の貿易理論 による検討だけでは十分では ない。比較優位構造が類似 している経済間での貿易発生は比較優位以外の原理 によって も説明 されるか らである。消費の多様性,規 模の経済 (経験の経済), 独 占的競争 ・独 占などによるものがある。 これ らの理論 は,ヨ ーロッパ諸国間 における貿易拡大の ような,旧 来の意味での水平貿易,産 業内分業 を伝統的に は説明 して きた ものである。 そ こでの貿易の利益 は,基 本的には消費可能性の拡大 (消費の多様化)と 規 模 の経済 による生産効率上昇である。この利益 は,単 なる市場競争 による競争 力劣位者の排 除によって達成 されるものではな く,分 業の開始後動態的に創出 される性格の ものである。特 に後者は,貿 易開始前 には各国間で生産 コス ト格 差が存在 していなかった として も,分 業 を開始 し生産量 を拡大することで生産 効率の改善 を達成することがで きるとい う動態的利益である。この ような動態 5)註 3と は逆に,加 盟国経済問の 「競合性」が強い,つ まり比較優位パターンが類似 して いる場合,域 内の自由化による貿易創出が発生 しやすいとされている。(Viner,ibid.)
164 千 本木惨一教授追悼号 (第332号) 的効果 をもた らす分業 は,そ の理論がい うように偶発的な要因によつて開始 さ れ累積 的にその過程 を進行 させてい くものであるが,貿 易の自由化 はその前提 条件であると貿易が大 きく制限 されている国の間では,分 業開始時の コス ト差 が小 さい時点で貿易障壁 によつて貿易が阻止 され,そ のような過程が進行 しが たいか らである。 直接投資の側面では,こ の統合 による市場規模の拡大 と域外 との通商条件の 格差が,市 場確保型直接投資 を誘発す る可能性 を有する。 以上 の ように,水 平的統合 は,(必 ず しも大 きくはない)比 較優位型統合利 益 をよ り徹底的に追求するものであると同時に,規 模の経済 による動態的利益 を追求する前提条件 となるものである。 ④MERCOSURの 型 MERCOSUR原 加盟国 4カ 国の一人当 りGDP水 準 には差がない とはいえない。 一人当 りGNP(95年 ドル価値評価)に おいて,最 も高いアルゼ ンチ ンと低い パ ラグアイとの間の差は90年時点で3.5倍,99年 時点で5倍弱ある (World Bank, ″bγtt Dθυθり 物θ句け筋ガあcaけο俗 2001.)。ブラジル,ア ルゼ ンチ ンとウルグア イ,パ ラグアイ との間の国土,経 済規模 の格差 は無視す ることがむずか しい (ブラジル とパ ラグアイのGDP規 模 は90倍以上)。またブラジル とアルゼ ンチ ン 間の差 も小 さ くはない (GDP規 模 は約 3:1)。 しか し,先 進諸国 とのこれ ら諸国 との間の差 に比べれば差異は小 さく,相 対 的に類似性が高い途上国間の統合 として位置付 けることがで きるだろう。 また 6)い うまで もな く,こ の ようなケースにおいて国際水平分業が生 じるのは,国 際収支均衡 条件 のためである。それ を考慮外 におけば,生 産拠点 を一国に集中 したほうが より規模の 経済 (集積 の利益)が たか まる。ただ し,要 素市場 な ど財以外 の市場統合が不完全であれ ば,集 積 の不利益,た とえば生産集積地 における賃金上昇がお こ り,結 果 として国際収支 均衡条件 とは別 に,生 産拠点の分散立地, したが つて国際水平分業の要因 とな りうる。た とえば,EUに おいては,労 働 の移動 の 自由が保障 されていて も,歴 史的文化的な労働市 場 の分断が残 っている。 さらに,統 合加速以前 に主要各国 に既 に一定の産業集積が存在 し た とい う歴史的前提条件が,集 秘 よ りも分散立地の持続 をもた らしているとい う側面があ る。ただ,今 日の統合加速 によつて (通貨統合 は国際収支均衡条件 も取 り去 る),EU内 に おいて も産業立地の再編成が進行 している。
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水平的地域統合の経済開発効果 165 少 な くともブラジル とアルゼ ンチ ンの間の格差 は,NAtt「Aに おける米墨間の 格差 (99年においてGDP規 模 でメキシコはアメ リカの約19分の 1,一 人当 り GNPで 約 9分 の 1)に 比べ小 さい。 第 1図 は,MERCOSUR合 意前の1988年時点 における両国の比較優位構造 を, 産業別 の比較優位指数 (輸入が ない とき1,輸 出がない とき-1となる。その範 囲で数値が大 きいほど比較優位産業 を,小 さいほど比較劣位産業 を示す と想定) を比較 した ものである。SITCOか ら4の 非製造業 においては,ほ ぼ相似 した比 較優位 の型が示 されていることがみて とれる。 5か ら8の 製造業 において も, 同様 の傾向が示 されている。ただ製造業 においては,ブ ラジルが より比較優位 を持つ ことが明確 にあ らわれている。 よ り細分類 を特 に示 した67鉄鋼,78自 動 車 (rOad vehicles)においては大 きな差が見 られることにも注意 しなければ 第 1図 1988年 アルゼ ンチ ン ・ブラジル比較優位指数 産業分類( S I T C 改訂第2 版) 比較優位指数 :(Xi一Ml)/(Xi+Mi) X i : 第I 産業の輸出額、Mi:第1産業の輸入額 資料 : 国際連合貿易統計年鑑、1 9 9 1 年版 ゝ ふ r r ヽ ▼ へ 余 、 r E E 探 廻 認 翌 G w ∞ 韓 ︱ ︱ ・= 繍 皿 無 揮 翠 眠 剛 ト ト 韓 翠 刈 編 ・ 揮 翠 ト 騒 芯 心 縦 鵡 8 哨 球 鯛 酷 翌 轍 0 唱 服 卿 題 ・朴 ギ ゆ 摂 翠 S 翠 掃 寸 栞 寒 S 損 一 禁 睡 S 翠 ・尽 韻 側 ロ タ ヽ ふ ・本 社 載 r S 掃 ・S 祖 orr
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― アルセ'レチン ー 岸 フ・ラン・サレ166 千 本木修一教授追悼号 (第332号) な らない。 M E R C O S U R で は,こ の ような 2国 間の製造業 にお ける競争力 の差 の調整 を 試 み てい る。企 業 ご とに貿易 にお け る収 支均 衡 義務 を課す 「自動 車協 定 ( a u t O pact)」がその例である。域内貿易 自由化は,い ずれか一方 (相対的立地優位 をもつ国)に 産業集積を偏 らせてしまう可能性がある。市場規模拡大によって 市場近接型の生産立地の優位性が高まり,直 接投資を誘発する効果を経済統合 が もつ としても,そ の利益はいずれか一方の国に集中してしまうことが予想さ れる。「自動車協定」は, 2国 間における自由貿易 (関税の免除)を 活用でき る条件を限定することによって,自 動車産業の独占的競争的産業構造を利用 し, 両国に直接投資を配分 し,分 散立地を達成 しようとするものである。その結果 成立する産業内水平分業において,規 模の経済がもたらす動態的利益によって の 両国 自動車産業の共存 と効率改善 を両立 させ ようとす る試みに他 な らない。 こ の ような協定 は,統 合 による市場規模拡大が誘発する直接投資 と産業立地 を配 分す る一種 の加盟国間カルテルである。 この点か らも理念的には水平的統合が め ざされていると考 えられる。 以上か らMERCOSURの 性格 を,次 の 2点 にまとめることがで きるのではな いか。第一に,統 合 による市場規模拡大 と市場アクセス条件の差別化 によって, 海外か らの市場確保型 (直接)投 資誘発 の可能性 を探 る ものである。 この″点は アメ リカ市場 を域内市場 とするNAIttAに おいて も同様である。 しか しNAIttA の場合 は,経 済格差が大 きいために,市 場の調整機能が必然的に,ア メリカに とってはメキシコの低賃金利用,メ キシコにとって先進国市場への輸出志向 と 7)自動車協定が,各 企業の生産立地 ・分業戦略にどのような影響を及ぼしているかについ ては,日 中祐二 「生産方式の発展の取引関係の変化一ブラジル自動車産業における競争優 位の権立過程 と多国籍企業」小池陽一・堀坂浩太郎編 『ラテンアメリカ新生産システム論』 アジア経済研究所,1999年を参照。 もちろん,こ のような試みが成功するためには,企 業にとって市場近接立地という形での 両国市場へのアクセス確保,ま た2国間の自由貿易利用が有利であることが必要である。 その点では,MERCOSURの 対外共通関税は,80年代 までの各国の関税に比べれば大幅に 低下 しているが依然低 くはなく,自 動車のような産業では市場内立地が選択 される可能性 はある。 しか し,そ の可能性は,後 述する為替 レー ト変動の問題はお くとしても,両 国市 場へのアクセス確保の魅力が低下すれば失われるものである。
水平的地域統合の経済開発効果 1 6 7 い う形 に垂直的に統合過程が進行す る。それに対 し, M E R C O S U R の 場合 は, ブラジル とアルゼ ンチ ン間における格差が相対的に小 さいことと, 両 国の政策 意図 とによって, 少 な くともアルゼ ンチ ン, ブ ラジルの 2 国 間においては, 産 業内水平分業の形成 を通 じて, 製 造業の共存 と発展 を両立 させ る方向が志向 さ 8 ) れている。これが第二の特徴である。 以下では,そ のようなMERCOSUR型 の統合の試みが,ど のような成果 と限 界を有 しているのか,検 討 してい く。 エ ア ルゼンチン,ブ ラジルのメヾフォーマンス 経済統合 は全体 的な市場指 向型政策への転換の一貫 として進められてお り, その ことが,経 済統合の成果 を独立 してみいだす ことを困難 させている。そこ で まず,全 体 としての両国の経済パ フォーマ ンスを検討する事か ら接近 してい きたい。 アルゼ ンチ ン,ブ ラジルにとって1990年代 は,政 府主導型経済か ら市場指向 型経済への転換が開始 され,大 きな経済の構造転換が試み られた時期である。 第 1表 に見 られる とお り,そ の転換 によって90年代 においてはおおむね経済状 態の改善が見 られる。特 にアルゼ ンチ ンににおいは大幅な改善が見 られるが, 第 1表 GDP成 長率 8)わ が国におけるラテ ンアメリカ経済お よびその地域経済統合研究の第一人者であつた西 向嘉 昭氏 は,ラ テ ンアメ リカにおける地域統合 の域 内分業原理 について,商 品グループ (消費財 ,資 本財産業 な ど)ご とに域内分業が形成 されるような合意の成立が統合 の持続 的発展 のため に必要である との指摘 を行 ってお られる (西向嘉昭 『ラテ ンアメ リカ経済統 合論』有斐 閣,1981年 ,172ページ)。商品グループごとに分業 (商品グループ内分業)の 成立 は,水 平的分業の成立 と言い換 えて よいであろう。 またMERCOSUR「 自動車協定」 は,そ の ような合意の一種 とす ることがで きるであろう。 % 1989 1990 ア ル ゼ ンチ ン ー7 . 5 2 . 4 ブ ラ ジ ル 3.3 -4.3 1991 1992 1993 1994 12.7 11.9 5.9 5.8 1.3 -0.5 4.9 5.9 1996 1997 1998 1999 5.5 8。1 3.9 -3.2 2.8 3.2 -0。1 0.8 9 9 5 ﹁ 2 . 8 4 . 2
168 千 本木修一教授追悼号 (第332号) ただ80年代 の落ち込みがあまりにも大 きいので,依 然安定的な経済発展軌道 に は到達 していない。両国において,95年 にメキシコ金融危機の影響,90年 代末 にGDP成 長率 の低下が見 られる。90年代末の経済の悪化 はよ り深刻で,98年 末のブラジル通貨不安か ら99年初頭の レアル切 り下げ (変動制移行),さ らに は01年におけるアルゼ ンチ ンの債務 ・通貨不安か らの経済混乱 につながってい る。 この間における両国産業構造の変化 を見 たのが第 2表 である。両国において 工業,そ の うち製造業の付加価値比率が低下 していることがみて とれよう。90 年代半ばには低下の傾 向は緩やかになっているが,回 復への兆 しを見せ るには いたっていない。90年代初めに,市 場志向戦略による対外開放政策によって, 非効率 な国内製造業 を洵汰する過程が進行 したことを示 している。 第 2図 (a)(b)に よって,両 国の比較優位指数の変化 をみて も,両 国の 競争力悪化が進行 していることがわかる。88年に比べ,98年 においてはすべて の産業 において指数の低下が見 られる。両国において比較優位であった65繊維 産業が比較劣位化 しているのをは じめ,製 造業 における比較優位の侵食は大 き 第 2図 (a)ア ルゼ ンチ ン比較優位指数の推移 産業分類( S I T C 改訂第2 版) 資料 : 国際連合貿易統計年鑑、1 9 9 1 , 1 9 9 5 , 1 9 9 8 年版 E E 黙 判 認 製 G や ∞ 韓 ︱ ︱ ・= 捕 弧 震 窯 翠 眠 煙 ト ト 韓 選 捜 緑 t窯 韓 ト 悪 慈 卜 0 韓 韻 ゆ 0 口 置 報 鯛 甜 選 鞘 c 口 畳 概 製 題 ・朴 導 ゆ 漂 翌 ぶ 翠 爾 章 票 装 蕊 韻 Φ 要 睡 ぶ 理 ・尽 韻 N 阿 K 革 ︼窯 基 ︼ 蕊 S t蕊 翌 o
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水平的地域統合の経済開発効果 169 第 2図 (b)ブ ラジル比較優位指 数の推移 B母 橿 瑠 題 朴 蛸 ゆ 産業分類( S I T C 改訂第2 版) 資料 ; 第2 図( a ) に同じ 第 2 表 産 業別付加価値/ G D P 比 製造業は工業に含まれる。 資料 :第 1表 に同じ。 い。 ブ ラジル において は78自動車産業 も劣位化 してい る。か ろ う じて優位 産業 に と どまって い るの は6 7 鉄鋼 の み で あ る。 ただ 7 機 械 ・輸 送機器 にお ける劣位 化 は, ア ルゼ ンチ ンにおいて相対 的 にブ ラジル よ りも緩 やかであ る。 また, 製 口 曇 鍬 判 認 翠 G や ∞ 揮 ︱ ︱ ・= 爾 田 震 祭 懇 転 観 ト ト 韓 翠 騒 慈 卜 Φ 翠 韓 ゆ 0 8 巨 探 判 悪 選 軸 c 察 翌 尽 翠 翻 寸 菜 装 ぶ 穏 0 葉 蟹 S 翠 ,S 韻 N 同 く 革 ‘棄 轟 ャ ぶ 爺 ・ぶ 軽 Φ 組 揮 籍 翠 ト % 1992 1993 1996 1998 1999 アルゼ ンチ ン 農 業 6.72 5。99 5.49 6.∞ 5。60 5.71 工 業 42.35 36.02 32.72 30。68 29.23 28.64 28.00 29.15 28.69 28.24 製造業 26.79 24.3C 18.36 18.74 19.55 サービスその他 48.04 55.85 60.56 63.33 65。28 65.92 65.58 65.25 65。60 輸 出 に 占 め る 製 造 業 品 シ ェ ア 35,08 29.08 28.18 32.86 ブ ラジル 農 業 8.52 7,7C 7.72 7.56 8.32 7.87 8.42 8.57 工 業 38,70 40.00 36。67 30.59 製造業 29.53 25。34 23.58 22.73 22.88 23.08 サー ビスその他 53.21 53.58 50.83 54.32 62.31 62.42 62.8C 60.84 輸 出 に 占 め る 製 二告業 品 シ ェ ア 54.86 56.97 58.86 55.06 53.53 53.76 53.66 54.67 54.07170 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 造業おける指数は,ブ ラジルにおいて傾向的悪化 しているのに対 し,ア ルゼ ン チ ンにおいては,95年 ,98年 には回復 の方向に向かっている。 以上 の ように,GDP成 長率の回復傾向の もとで,両 国のいわば “反工業化" が進行 していることがわかる。ただそれにもかかわ らず,第 2表では,両 国に おいて輸出に占める製造業品のシェアは回復傾向を見せている。アルゼ ンチ ン の場合,92年 までの落ち込みのあ と,93年 か ら回復 をは じめ,90年 代末には再 び停滞傾向にはいっている。ブラジルの場合,90年 に落ち込み,91年 か ら93年 にかけて伸 びた後,漸 減 したまま90年代末 を迎 えている。このことは,輸 出が 両国における (特にアルゼ ンチ ンの)製 造業衰退の低下の歯止め となった可能 性 を示す。 そ こで第 3表 によって両国の輸出の動向を見 る。アルゼ ンチ ンにおいては, 全世界 の輸 出に占め るシェアにおいて も,対 GDP比 において も,92年 を底 と して回復 (前者 については増加)を 示 しているとそれに対 し,ブ ラジルにおい ては,92,93年をピークとして以後低下す る とい う傾 向 を示 している。域内輸 第 3表 対 世界 ・域 内輸 出の動 向 % 1992 1995 1996 1998 アルゼ ンチ ン 世界の輸出に占めるシェア 0.37% 0.35% 0。33% 0。36% 0.38% 0,42% 0。46% 0。49% 0.500/o 0。43% 対世界輸 出GDP比 8.74% 6.31% 5.35% 5.540/O 6.08% 8.12% 8.74% 8.99% 8.86% 8.24% 対世界輸 出増加率 29.13 2.17 20.77 32.35 13.58 -3.59 11.75 域 内 輸 出 増 加 率 28.30 7.88 17.68 58.33 30,38 16.91 19.82 域 内 輸 出 比 率 28。1 32.3 36.2 35.9 ブ ラジル 世界の輸出に占めるシェア 0.940/0 0,920/0 0。97% 1.060/0 1.050/00.940/0 0,92% 0.99% 0.97% 0。88% 対世界輸 出GDP比 6.760/0 7.76% 9.160/0 8.81% 7.970/0 6.60% 6,16% 6.59% 6.60% 6。390/0 対世界輸 出増加率 13.75 7.58 12.10 7.26 2.67 10.97 -3.52 域 内 輸 出 増 加 率 59.00 77.53 31.60 18.73 23.80 -1.84 域 内 輸 出 比 率 資料 :第 1表 に同 じ
属 ︱ ︱ ト ー ー ー ー ー ー ー ー 水平的地域統合の経済開発効果 171 出のシェアについては,両 国 ともに93年に上方へのシフ トがみ られ,そ の後漸 増 している。 しか し域内輸出成長率は98年にマイナス となっている。アルゼ ン チ ン・ブラジル間貿易 については,99年 には大幅なマイナスなっている。 この ように,両 国の輸出パ フォーマ ンスは対世界貿易 については,90年 代 は じめお よび末 においてはほぼ同様 の傾向を示 しているが,90年 代 中盤 において は対照的な動向を示 している。域内貿易 に関 しては,90年 代 中盤のブラジルの 輸 出成長率 に低迷が見 られるが,ほ ぼ全般的に域内輸出比率の拡大が見 られる 点で共通 している。98年時点の域内輸出比率 は,ア ルゼ ンチ ンで98年の2.5倍, ブラジルでは 4倍 に達 している。 この点 に経済統合の効果が見 られる。 “ 反工業化 “の進行 に もかかわ らず,両 国のGDPが おおむね順調 に回復 し ている背後 には,イ ンフレーシ ョンの抑制 と海外か らの資金流入がある。第 4 表の ように,ネ ッ トのポー トフォリオ投資 と直接投資 は,両 国における経済安 定化政策の成功 と市場指向型戦略への転換 を契機 として拡大 している。アルゼ ンチ ンにおいては,90年 のコンバテ ィビリテイ・プランによるインフレ低下 を 受 けて海外 か らの資金流入が拡大傾向に転 じている。ブラジルにおいては,94 年 の レアル ・プランを契機 として直接投資が増加 している。 これは全世界への 第 4表 対 内資本投資 の推移 Smil 1989 1990 1992 1993 アルゼ ンチン純 ポ ー トフ ォ リオ 投 沓( 株式 十億 権 ) ‐884.2 -843.6 836.0 9886.8 5921.4 3916.1 11972.29041.3 9087.1 8403.C 純 ポ ー トフ ォ リオ 滑 沓GDPレ 1.15% 0.60% 0.44% 0,79% 4.18% 2.300/01.52% 4.39% 3.080/03.04% 2.970/c 純直接投資 1028 1836 4384 2763 3490 6522 6670 2392C 純直接投資世界シェア 0.530/00。92% 1.57% 2.620/01.28% 1.45% 1.66% 1,78% 1.92% 1.010/02.710/0 純直接投資GDP比 1.34% 1.30% 1.29% 0.88% 1.020/01.59% ユ.96% 1.88% 1.52% 8.00% ブラジル ポ ー トフ ォ リオ 沓( 族☆ + 信 権 ヽ -384.2 1990 4657 10880 6889.l 7047.2 5056.1 2520.6 純 ポ ー トフ ォ リオ 投 資G D P 比 -0.090/00,03% 0.49% 1.197 2.48% 1.26% 1.000/01.29% 0.630/00.33% 0.620/0 純 直接 投 資 1103 206] 1292 19650 32659 純直接投資世界シェア0.66% 0.49% 0.71% 1.23% 0.60% 1.28% 1.527 3.05% 4.32% 4.847 3.69% 純直接投資GDP比 0.14% 0.07% 0.02% 0.49% 0.180/00.37% 0.49% 1.51% 2.32% 4.12% 資料 :第 1表 に同 じ。
172 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 直接投資 に占め るシェアの拡大 とい う形 において も確認す ることがで きる。ポー トフ ォリオ投資 について は,債 務 問題 についての合意 を受 けて93年か ら拡大 に 転 じてい る。 ただ90年代 前 半 につ い て も,緩 やか な増加傾 向 にはあ る。 も し, 経済統合が安定化政策お よび市場志向戦略への転換 の不可逆性 を示す とい うア ナウシス効果 をもつ とすれば,こ の ような資金の動向に対 し影響 を及ぼ した と 考 えることがで きるだろうと アルゼ ンチ ンの場合,統 合交渉の開始 とアス ンシ オ ン条約締結 (91年)と 政策転換 (市場志向型への転換その ものは89年である) がほぼ同時である。ブラジルの場合 もコロル政権 による対外開放政策,民 営化 の開始 (90年)と 軌 をひとつに している。また関税 同盟発足の95年以降に直接 投資の拡大傾向が強 まっていることも,経 済統合が何 らかの投資誘発効果をもっ た可能性が示 されている。 ただ,ア ルゼ ンチ ンにおいては関税 同盟発足以降の時期 において,対 GDP 比で,ポ ー トフォリオ投資がほぼ一貫 して直接投資をうわまわ り,90年 代後半 には 3%に 達 し,新 たな債務依存問題 を引 き起 こす要因とな り始めている。そ れに対 しブラジルでは,96年 以降直接投資が急激 に拡大 し,世 界有数の投資受 入国 となるにいたつていると この″点か らは,経 済統合が直接投資 を誘発する効 果がある として も,よ り経済規模の大 きいブラジルに偏 る傾向があることを示 唆す る ものであろう。 以上 の ように “反工業化ルの もとでのGDPの 回復 とい う,90年 代 のアルゼ ンチ ン,ブ ラジルの状況 に関 して,製 造業表退の歯止め として,ま た投資誘発 効果 をもつ もの として経済統合が影響 を及ぼ した可能性が考 えることがで きる。 9 ) 地 域経済統合 の非伝統 的利益 に関 しては, F e m n a n d e z , R a q u e l a n d 」o n a t h a n P o r t e s , “
Return to Regionalism:An Analysis of Nontraditional Gains froHI Regional Trade Agreements',効 θ″bttα Bα物ん『cο%o,物あc ttθυづθ切,Vol.12,No.2,May 1998,pp.197-220.
また直接投資の誘発効果 に関 しては, P u g a , D i e g o a n d A n t h o n y 」. V e n a b l e s , " T r a d i n g Arrangements and lndustrial Development,' Tん θ NGγια βa物んβcοttο7カσ ttθυづθ切,Vol. 2.No.21.May 1998.を 参照。 i
10)今 日の アルゼ ンチ ンの債務 ・通貨危機 に対 し,98年 末か ら99年初頭 におけるブラジル通
貨危機 の影響 が相対 的 に軽微 であ つたひ とつの要因は,ポー トフォリオ投資への依存度が
水平的地域統合の経済開発効果 173 田 域 内貿易 の動 向 以上の分析 は,先 に特徴付 けた水平的統合 としての性格 には接近で きていな い。そ こでその点 を検討するために,両 国間の貿易構造 をより詳細 に見てみよ う。
第5表 (a)(b)(c)は
,ア ルゼンチン側から,両 国間の産業別 ∞□RCOSLIR
共通分類であるSistema Armonizado分
類による)貿 易を見たものである。各
第 5表 (a)93年 アルゼ ンチン産業別貿易 対世界輸 出 における産 業別 シェア 対 ブラジル 輸 出 におけ る産封朝Jシェ ア 産業 別対 ブ ラ ジル輸 出 の シ ェア 対世界貿易 における産 業 内貿易指 数 対 ブラジル 貿易 におけ る産業内貿 易指数 工農産物 (植物) 20.590/0 31.31% 32.63% rV食 品 17.09% 1.93% 2.420/0 I動物 ・動物製品 9.71% 3.700/0 8.18% V鉱 産物 9.590/0 17.94% 40。13% III動植物性油脂 8.22% 2.05% 5。35% XVI電 気 ・機械 5。75% 7.79% 29.04% VIII皮革 ・毛皮 5.63% 3.40% 12.980/0 XVII輸 送機器 5。48% 17,80% 69.65% XV金 属 5,36% 2.63% 10。550/0 化学製品 4.82% 4.63% 20.63% XI繊 維製品 2.57% 2.88% 24.05% 0.67 VIIプ ラスチ ック・ゴム 1.43% 2.42% 36.31% 0。33 X木 材 1.14% 0。47% 8.88% X I I 帽子 ・か さなど 0.71% 0,030/0 0.810/O 0.72 XIII石材 ・セメン ト 0.60% 0.40% 14,37% XIV真 珠 0。400/O 0.01% 0。33% XⅧ 光学機器 ・写真機 0。36% 0。27% 16.15% 0。47 X X そ の他 0。27% 0。200/O 15.52% 0,23 IX鉱 石 ・石炭 な ど 0.25% 0.12% 10。40% 0。21 XIX武 器 0.03% 0.01% 4.45%資料 i CEPAL,M針 ∽sttγ r st物9psづs 」 sけattsけぢca,Volumen 2,1995 産業 内貿易指数 = 1 - ( X l ― M i ) / ( X i t t M i )
174 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 第 5表 (b)98年 アルゼ ンチ ン産業別貿易 対世界輸 出 における産 業房Uシェア 対 ブラジル 輸 出におけ る産誤朝Jシェ ア 産 業 別対 ブ ラジル輸 出 の シ ェア 対世界貿易 における産 業内貿易指 数 対 ブラジル 貿易 におけ る産業内貿 易指数 工農産物(植物) 20,17% 21.19% 31.590/o IV食品 13.06% 3.57% 8.22% 0。32 0。79 X WIl輸送機器 11.73% 32.74% 83.89% 0.72 V鉱 産物 10.50% 8.71% 24.95% 皿ヤ由】旨 10.34% 2.40% 6.98% I動 物 ・動物製品 7.190/0 5.19% 21.70% 0.52 VI化学製品 5.670/o 5,32% 28.19% 0.53 0.72 XV金 属 4.67% 1.94% 12.510/0 0.76 X VI電気 ・機械 4.20% 6.74% 48.310/O 0。20 WIll皮革 ・毛皮 3.380/0 1.000/0 8.93% XI繊 維製品 2.49% 4.120/0 49.630/0 0.74 Ⅶプラスチ ック・ゴム 2.05% 3.36% 49.330/0 X木 材 1.54% 1,960/0 38.23% 0。49 XXそ の他 0.550/o 0。380/0 20.73% 0.40 X回 石材 ・セメ ン ト 0.43% 0。310/O 22.010/0 IX鉱石 ・石炭 な ど 0。41% 0。37% 27.09% 0.69 X Mll光学機器 ・写真機 0。28% 0。220/0 23.27% X工 巾冒子 ・か さな ど 0.26% 0。460/O 52.18% 0。65 X IV真珠 0,110/o 0,00% 0.74% X IX武器 0.020/O 0,01% 10.00%
資料 :CEPAL,M針 ∽sttγ f sぢ物Ops体 ゴsけαttsけぢca,Volumen 3 y 4,1999.
年 とも,対 世界輸出におけるシェア上位か ら並べている。 これによれば,XⅦ 輸送機器が大 きく順位 を上げていることともに,XV金 属,XⅥ 電気 ・機械 も 上昇 している。第 2図 において比較優位産業 にとどまっているSITC67鉄鋼 と 同種産業 を含むXV金 属以外 は,比 較劣位産業 とみなせ るものであるにもかか わ らず,輸 出が拡大 しているのである。 この X VI電気 ・機械 ,X WIl輸送機器両産業 における特徴 は,対 ブラジル貿易 における産業内貿易指数が対世界貿易 におけるそれ よりも高いこと,そ してそ
嵐 ド ト ー ー ー ー ー ー 水平的地域統合の経済開発効果 175 第 5 表 ( c ) 9 9 年 アルゼ ンチ ン産業別域 内貿易 対世界輸 出 における産 業房Uシェア 対 ブラジル 輸 出におけ る闘 Uシェ ア 産 業 別対 ブ ラジル輸 出 の シ ェア 対世界貿易 における産 業内貿易指 数 対 ブラジル 貿易 におけ る産業内貿 易指数 Ⅱ農産物(植物) 16.70% 21.45% 31.33% IV食品 14。33% 3.27% 5.560/0 V鉱 産物 14.28% 13.52% 23.09% 0.42 回ヤ由月旨 9,99% 1.610/0 3,92% I動 物 ・動物製品 8.29% 6.75% 19.84% XⅦ 輸送機器 7.51% 21.700/0 70。49% 0,98 VI化学製品 6.45% 7.76% 29,32% XV金 属 4.61% 2.26% 11.940/0 XⅥ 電気 ・機械 4.51% 8.46% 45.74% Ⅷ皮革 ・毛皮 3.58% 1.51% 10,28% 0。22 XI繊 維製品 2.43% 4.63% 46.50% 0。92 VIlプラステ ック・ゴム 2.22% 3.84% 42.11% X木 材 1.47% 1.94% 32.14% 0。47 0.53 XXそ の他 0.71% 0.19% 6.61% XⅣ 真珠 0.48% 0.01% 0.65% X田 石材 ・セメ ン ト 0。41% 0。22% 13.18% 0。23 IX鉱石 ・石炭 な ど 0。39% 0。35% 21.92% 0.68 0.52 X VIll光学機器 ・写真機 0,31% 0。39% 30.64% XⅡ 帽子 ,かさな ど 0.16% 0。15% 22.90% X IX武器 0.02% 0.00% 4.67% 資 料 : I N D E C , ∽ 物 θ竹 づο 駒 姥 克ογム轡 θ物けれ ο, ゴ9 9 2 れが98年において,い っそ う上昇 していることである。また対 ブラジル向け輸 出の全世界への輸出に占めるシェアも相対的に高 く,上 昇 している。特 にX VIl 輸送機器では,98年 の対 ブラジル輸 出のシェア83。9%,産 業内貿易指数0.88と い う高 さである。対世界貿易 における産業内指数 も同 じく高 くなっているが, ブラジル向けのシェアの高 さを考 えれば,ほ ぼブラジル向け輸出の動向を反映 した もの とみなせ よう。 XⅥ 電気 ・機械 においては,93年 か ら98年にかけて対 世界輸 現!Fおける産業内貿易指数の上昇はな く,ブ ラジル向けにおいては上昇 している 。
176 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 以上のような動向は, ア ルゼンチンの製造業品輸出において, 対 ブラジルと の域内貿易が重要な役割を果たしていることを示 している。またそこでは水平 的統合の特徴である産業内貿易の展開が見 られることがわかる。 第 6 表 ( a ) ( b ) は , ブ ラジル倶J からのものである。ここではすでに9 3 年 第 6表 (a)93年 ブラジル産業別貿易 対世界輸 出 に占める産 業房Uシェア 文寸アルゼ ン チ ン輸出に 占める産業 別 シエア 産業 別対 ア ル ゼ ンチ ン 輸 出 の シ ェ ア 対 アルゼ ン チ ン産業内 貿易指数 対世界貿易 の産業内貿 易指数 XV金 属 16.38% 10.25% 5.920/0 0.28 IV食品 15,04% 3.55% 2.23% XⅥ 電気 ・機械 12.000/0 20。16% 15,88% 0。42 0。82 XⅦ 輸送機器 8.87% 24.88% 26.52% 0.69 V鉱 産物 8.40% 5.090/o 5。73% 工農産物(植物) 6.31% 1.96% 2.94% 0.85 XⅡ 帽子 ・か さな ど 5.050/0 0.30% 0.56% Ⅵ化学製品 4.850/o 8.85% 17.250/o 0.55 X木 材 4.12% 5.57% 12.77% 0。47 XI繊 維製品 3.570/0 4,30% 11.39% I動 物 ・動物製品 3.29% 3.04% 8.720/0 0。99 0.54 WIlプラスチ ック・ゴム 3.20% 7.040/O 20。78% 区鉱 石 ・石 炭 な ど 2.17% 0.84% 3.66% X田 石材 ・セメ ン ト 1.42% 1.67% 11.10% 0.35 0.53 llll皮草 ・毛皮 1.19% 0.06% 0。44% 0,04 回ヤ由月旨 1.08% 0.12% 1.02% XXそ の他 0。96% 1,21% 11.89% 0.52 XⅧ 光学機器 ・写真機 0.64% 0。67% 9.88% X IV真珠 0。44% 0.03% 0.72% 0。15 資料 :第 5表 (a)に 同 じ 1 1 ) X V E l 輸送機器 の大部分 を占める 自動車産業 は, X Ⅵ 電気・機械,XV金 属 に比べ水平的 な産業内分業が展 開 しやすい傾 向にある, つ ま り最終消費財 として独 占的競争的市場構造 が形成 されやすい産業であること注意 しなければな らない。 X Ⅵ 電気・機械 において も, アルゼ ンチ ン ・ブラジル間の産業内貿易指数の上昇 には 自動車産業の貢献が小 さ くない。 9 9 年におけるアルゼ ンチ ンの X W I 電気 ・機械 の対 ブラジル輸 出額 : 4 8 1 , 3 9 4 千ドルの うち 1 2 2 , 5 3 4 千ドルがデ イーゼル とその他 の 自動車エ ンジ ンである。エ ンジ ンの輸出額 に占/
水平的地域統合の経済開発効果 第 6表 (b)98年 ブラジル産業別貿易 対世界輸 出 に占める産 業房U シェア 対 アルゼ ン チ ン輸 出 に 占め る産 業 別 シェ ア 産業別対 ア ルゼ ンチ ン 輸 出の シェ ア 対 アルゼ ン チ ン産業内 貿易指数 Ⅳ食品 15。33% 2.62% 2.35% 0,79 XⅦ 輸送機器 12.63% 28.95% 31.63% XⅥ 電気 ・機械 11.84% 18.00% 20。99% 0.59 XV金 属 11.18% 8.79% 10.86% 工農産物(植物) 9.89% 1.70% 2.37% 0.13 V鉱 産物 7.85% 2.56% 4.50% 0.41 Ⅵ化学製品 5,740/0 10。57% 25。400/0 0,72 X木 材 3.940/0 4.23% 14.83% Ⅶプラスチ ック・ゴム 2,90% 5。94% 28,32% 0.78 I動 物 ・動物製品 2.85% 2.08% 10.07% X工 帽子 ・か さなど 2.72% 1.07% 5。45% 0。65 Ⅸ鉱石 ・石炭 な ど 2.21% 0.79% 4,94% XI繊 維製品 2.18% 4.95% 31.37% 0,97 田ヤ由】旨 1.89% 0。13% 0.93% ull皮革 ・毛皮 1,44% 0.07% 0.71% 0。12 X田 石材 ・セメ ン ト 1.38% 1.320/0 13.19% X IV真珠 1.04% 0,07% 0。93% XXそ の他 0。96% 1,02% 14.66% 0.59 X Wll光学機器・写真機 0.71% 0.68% 13.27% 0,53 X IX武器 0.110/0 0.04% 5,46% 資料 :第 5表 (b)に 同 じ \める対 ブラジル輸出のシェアは92%で ある (輸入では41%)。 輸出入双方からエンジンを のぞいたX VIの産業内貿易指数は0.50に低下する。XV金 属には,鉄 鋼が66%,ア ル ミニ ウム製品が17%を 占める。ここでアルゼンチンの対世界の産業内貿易指数が高いのは,技 術力の差によって中間財 としての用途別に分業が形成 される傾向にあるからである。国連 ヲ ペ 提 軌 鮭 コ 線 旨:景 猛格骨盤 (特殊薄板鋼板)に 輸 出 と異 なる特徴が見 られる。 この産業 においては, 2国 間ではブラ ジルの比較優位が明確 であ り,産 業内貿易は成立 しがたい。アルゼ ンチ ンの主要輸出品で ある鋼管です らブラジルは輸出先 としてあ らわれていない。 その他 に両国間貿易 における産業内貿易指数が高 くなっているのはXI繊 維製品である。 ここで も,相 対 的には輸出規模 は小 さいが,対 世界輸出におけるシェアが高 まることな く 対 ブラジル向け輸出におけるシェアが拡大 し,産 業内貿易指数が上昇 している。
178 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 時″点か ら,XV,XⅥ ,XⅦ 各産業 は対世界輸 出占めるシェアにおいて も上位 にある。いずれの産業 において も対 アルゼ ンチ ン輸出が対全世界輸出に占める シェアは高 くなっている。ただ,対 アルゼ ンチ ン輸出におけるシェアでは,X WIl輸送機器が上昇 しているのにたい し,XⅥ 電気 ・機械,XV金 属では低下 し ている。 また,産 業内貿易指数はアルゼ ンチ ンの もの と同 じであるが,他 の指 標 とあわせてみ る と,水 平的統合の成果が,ア ルゼ ンチ ンに比べれば明確 では ない といえよう。 IV お わりにかえて一水平的地域統合の限界 直接投資 に関す る問題 は今後 の課題 として,域 内分業の展 開に関 しての問題 点 を記 して,本 稿の結 び としたい。 MERCOSURは ,ア ルゼ ンチ ンとブラジル間で見 た場合相☆十的に水平的な経 済統合である。ただ し,よ り競争力のあるブラジル製造業が域内 自由貿易 を享 受で きる もの とはなっていない。それは 2国 間の製造業 における競争力の差 に よる影響 を緩和 ない し消失 させて,水 平的分業 を形成 しようとする 「自動車協 定」 の ような政策意図 による。 水平的経済統合の主力 たるべ き産業内貿易 は,比 較優位構造の差が大 きくな い ことを前提 としている。 したがって,域 内為替 レー ト変動 による競争力への 影響が大 きい。競争力の差が小 さ く為替 レー ト次第で競争力関係が変化するの である。 この点か ら,安 定 した域内貿易の発展のためには為替 レー ト変動 を抑 える何 らかの協力が必要 となって くる。ECに おける為替 同盟,そ の発展 とし てのEU通 貨統合 は,水 平的地域経済統合 としてのEUが 必然的に必要 とした も のであるといえる。 MERCOSURに おいては,日 下の ところその ような試みは存在 していない。 市場志向へ の転換 をすすめるにあたつてのインフレ抑制,安 定的な海外か らの 資金流入の確保 な ど,他 の政策 目的のために各国が独 自に為替 レー ト政策を展 開 しなければな らないか らである。第 3図 の ように, 2国 間の為替 レー トは両 国の経済安定化政策 を反映 して変動 している。両国間の貿易 も,そ の影響 を受
水平的地域統合の経済開発効果 179 けて大 きく変動 している (第7表 )。統合が もた らす域内輸出の拡大 とい う成 果 において,90年 のアルゼ ンチ ンのコンバティビリテイ・プランが導入 された90 年か ら93年まではブラジルの輸出が より拡大 した。 レアル・プランの導入後の94 年か ら97年まで,ア ルゼ ンチ ンが好調 なパ フォーマ ンスを維持で きたのは,対 世界 におけるペ ソの過大評価化 にもかかわ らず,ブ ラジル・レアルがその時期 よ りいっそ う過大評価 となったために他 ならない。その点でアルゼ ンチ ンのコ ンバティビリテイ・プランの継続にとって,ブ ラジルのレアル・プランとWERCOStlR の成果 としての対 ブラジル輸出の拡大は,欠 くことので きない条件 となってい た といって も過言ではない。逆 にブラジルにとっては,MERCOSURの 成果 を 刈取 る障害 となっていた ともいえる。 99年のブラジルの変動相場制への移行 によって,為 替 レー トは再びブラジル に有利 に変動 している。このことは,ブ ラジルにとって統合の成果 を獲得する 機会が きた ことを意味す るはずであった。 しか し,ブ ラジルはMERCOSURに おける潜在的競争優位 国であ り,最 大のアブソーバーである。97年にアジア通 第 3図 ア ルゼ ンチ ン ・ブラジル間の為替 レー ト変動
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COmien20 Plan Real 」ulio 1994 1 Dic 1999 / RS1 85xl USS 00 50 0 0 〇 〇 r= r O O 営 、 三 0 せ 0 三 97 98出所 :F.de la Balze,Er F物 け切γo αθι班 角σOSt/Rf θ物けγθ Ja ttθけbttca g θ↓ 妃θaι々な物ο, Asociacion de la Argetina, 2000.
D i c 9 9 E n e 9 9 D i C 9 8
180 千 本木修一教授追悼号 (第332号) 第7 表 ア ルゼンチン, ブ ラジル貿易収支 $ m i l . アルゼ ンチ ンブラジル 財貿易収支 (マイナス はアルゼ ン チ ンの赤剣 アルゼ ンチ ン財貿易収 支 ブラジル財 貿易収支 アルゼ ンチ ン◇ ブラジ ル間貿易の 成長率 403.1 5364.9 14521.5 1990 707.6 8174,8 8952.5 3699.6 8634.ユ 1992 -1721.4 -2628.8 13617.5 -754,3 -3658.5 11391.1 1994 -631.1 ヽ5742.4 8047.6 1308.1 840。9 -7231.3 21.7 1996 1287.7 -8985,7 1165,2 -4085。1 -12088.8 25。2 655。1 -5707 -9673.3 1999 -2133 -3736 -23.1 資料 :1991-98は,第 1図 に同じ, 99は第 1表 に同じ。 貨 ・経済危機 の要因のひ とつが,95年 以降の円安 にあったことを想起すれば, その通貨の低下が地域 に悪影響 をもたらす ことは明 らかなのではないか。実際, アルゼ ンチ ンは コンバ テ ィビリテイ・プランの存立条件 をうしない経済の混迷 に直面 している (もともと10年にわたって為替 レー トを固定 しつづけて きたこ とに多大 な無理があるのであるが)。 ブラジルが レアル・プラン導入後輸入抑制のために行 ったように,為 替 レー ト変動 による影響 を緩和するために,MERCOSURの 域内 自由貿易,対 外共通 関税 に反す る賦課金 を各国が課す ことも一般的 になっている。現在では4カ 国 すべでが実施 している。 MERCOSURは ,市 場志向戦略へ の転換 と経済安定化政策の継続 にとって一 走の貢献 を果た して きた。それはブラジルにおける直接投資,ア ルゼ ンチ ンに おける域内製造業品輸出において明確である。 しか し,転 換過程 にある不安定
水平的地域統合の経済開発効果 181 な諸 国 に よる水 平 的統合 であ る こ とか ら くる限界 も明 らかである。特 にグロー バル金融市場の評価が各国経済を左右するという条件のもとで,自 国経済維持 志向の政策が もたらす統合へのマイナスは大 きい。