イ ン ドシナ諸国の経済 改革10年
I は じaめここ 80年代 半 ば以降,ベ トナ ム,ラ オス,カ ンボジアの イン ドシナ 3カ 国は,旧 西側 先 進援 助 国 ・国際機 関 の支援 の も と,経 済 開発運営 方式 を社 会 主義 的 な計 画経 済政策体 系か ら資本主義 的 な市場経済政策体 系 に シフ トさせ て きた。 国内 の財 ・要素価格 の 自由化 を含 む各種規制 の撤 廃 ・緩和,財 政金融機構 お よび国 営 企業 の合 理化 ,国 内民間企業 の育 成 な どの経 済改革実施 と共 に,対 外経 済関 係 につ いて も積極 的 に貿易 自由化や 外 国民 間投 資導 入 を推 進 して きた。 その成 果 はマ クロ経 済面 を中心 に徐 々 に あ らわれ て きてい る とい うこ とが で きる。 国際地域社会へ の参画 とい う点で も,1995年 にはベ トナムが,97年 にはラオ スが ミャンマー とともに ASEAN(東 南 ア ジア諸 国連合)に 正 式加盟 を果 た す な ど,60年 代後半のベ トナム戦争激化の時代か らみれば,文 字通 り時代 を画 す出来事が東南ア ジア社会 に起 きているとい うことがで きる。依然 として国内 政治が安定 しないカンボジア も,予 測で きる将来においてベ トナムや ラオスを 追 って ASEANに 加盟 しAFTA(ASEAN自 由貿易地域)へ の参加 を呆 たす であろ う。 しか し, この ような東南アジアにおける国際関係の劇的な変化への 対応は,経 済開発の観点か らは,イ ン ドシナ 3カ 国は もとよ り彼 らを取 り巻 く ASEAN加 盟諸国側 において も必ず しも十分 とはいいきれない。 本稿 では,イ ン ドシナ 3カ 国の過去10年に及ぶ経済改革努力について評価 し つつ,経 済開発戦略の一環 としての ASEAN加 盟 の意義 な らびに主要関係 国 の役割や今後の課題 について検討す る。 さらに,わ が国を含む先進援助国や国 際援助機関に よる国際経済協力の基本的 な役害1につ いて考察す る。 健 本 堂陣
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彦根論叢 第 310号 H 経 済 改革の成果 1 . 経 済移行 の タイ ミング 第 1 表 は 3 カ 国の7 0 年代 未 頃か ら9 0 年代初 め の経 済改革 の主要 な政策措 置の 推移 を整理 した ものであ る。 同表 に よれば,カ ンボ ジアに派兵 中のベ トナ ムが 1 ) 第 3次 5カ 年 計画 (81-85)に お いて 「新 経 済政 策」 を実施 したの を皮切 りに, イ ン ドシナ 3カ 国は80年代 後半以降,歩 調 を合 わせ るかの よ うに国内経済改革 を積極 呆敢 に進め てい った こ とが わか る。 カ ンボ ジアの場合,打 ち続 く内戦 に よ り外 国投 資導入政策 では他 の 2カ 国 よ りも大 き く出遅 れてはいた ものの,ベ トナ ムの影響 下 にあ ったヘ ンサ ム リン政権 は,ベ トナムが経済 自由化路線 の継 続 を確 認 した85年頃 に経済 自由化 を開始 した。 その後,本 格 的 には91年のパ リ 和平協 定 以 降,国 際社会 の支援 と注 目の下 で政 治経済の復果 と建 設の過程 に大 き く踏 み 出 したの であ る。 また,ラ オスにお いて も,農 業集 団化 の失敗 と国営 企業経営 の行 き詰 ま りに よ り,ベ トナ ム と同時期 の70年代 末 には経済 自由化, わけ て も民間企業育成 の必要性 が強 く認識 され,85年 の一部 国営企業 の合理化 お よび再 編成実施 を経 て,ベ トナ ムが共産党大会 で 「ドイモイ」 を宣 言 した同 じ年 に ラオス版 ドイモ イす なわ ち新 経済機構 の建 設が実施 され るこ とになった。 2.マ クロ経 済の動 向 イ ン ドシナ 3カ 国の経 済改革過程 では,国 営企業 の独 立採算制 の導入や 民間 企業育成 に関連 して積極 的 な価格 自由化や規制緩和措 置が とられ たほか,財 政 金 融機構 の見直 しに よって,中 央政府赤字 の縮小や通貨価値 の安 定 が図 られ た。 80年代 前半 以降他 の発展途上 国 で も実施 されて きた こ うした需要抑制 型の構 造 調整政 策 は,マ クロ経済 に関す るか ぎ り, 3カ 国の 自律 的 な経済成長軌道確保 の ため にあ る程 度 の貢献 を した とみ るこ とが で きる。 第 2表 は, 3カ 国の主要 な経済指標 に関 して, 自 由化 措 置が本格化 した90年 1 ) ベ トナムの経済改革措置の推移 については, 岩 見元子 「ベ トナム経済入門」 日本評論社 1 9 9 6 年に簡潔に まとめ られている。イン ドシナ諸国の経済改革1 0 年 1 2 1 第 1 表 : イ ン ドシナ 3 カ 国 に お け る主 な経 済 移 行 措 置 ベ トナム ラオ ス カ ンボ ジア 1978 ● ベ トナム軍カンボジア侵攻 1979 ● 新経済政策決定 ● ヘ ン ・サム リン政権成立 1981 ● 第 3次 5カ 年計画 →新経済政策の実施 ①農業合作社 の ノルマ 5年 間 据置 ②農産物買 い上 げ価格 の平均 5倍 引 き上げ ③農業合作社 におけ る生産物 請負制度導入 ④ 国営企業への経営自主建付与 ⑤賃金制度改定 (出来高払い, ボーナス制度など) 1985 0「 南北統-10年 の総括」 0-部 国営企業 の 自主運営権 ●第 3次 5カ 年計画 ①配給制度廃止 の 付与 → 税制構築 と経済 自由化実施 ②企業の価格付 自由化 ① 民間企業設立認可 ③財政金融の健全化措置 ② 内外価格の 自由化 1986 ● 第 6回 共産党大会 ● 第 4回 革命 自民党大会 → ドイモイ政策決定 → 「新経済 メカニ ズム」政策 1987 ● ドイモイ政策の本格的実施 実 施決定 ● 海外 カンボジア人に よる送 ① 国営企業の独立採算制移行 ① 国営企業の 自主運営化 金 正式認可 ② 国営企業上納金制か ら税金 ②民間企業導入促進 徴収へ ③ 外国貿易 を含む価格 自由化 ③国営企業の経営 自主権付与 ④ 為替 レー トの一本化 1988 ● 集 団農場廃止,土 地 の長期 ⑤対国営企業補助金廃止 リー ス と販売認可 ⑥ 財政金融制度改革 ●商業銀行創設 ● 外国投資法公布 ●市営金融機関の設立認可 → 1994年改定 ●外国為替管理法公布 ●外国投資法公布 1989 ● 外 国投資法改定→ベ トナム ● 刑法御j定 ● 外 国投資法公布,土 地所有 私企業 と外 国企業 に よる合 ●所有権法等経済関連法の整備 権 の認可,土 地税の緩和 弁事業認可 ● 世 界銀行 ,IMFに よる構 造 0国 営企業の民営化促進 調整 ● 為替 レー トの一本化 1990 ● 外国投資法改正 ● パ リ和平会議 と和平合意 1991 ● 第 7回 共産党大会 ● 商業銀行 設立 (中銀 の機 能 → ドイモイの継続強化確認 ● 憲法制定 分 離) 1992 ● 個 人立候補 を認め た国会議 ● uNTAC(国 連暫定行政機構) 員選挙の実施 に よる本格的支援活動開始 ●憲法制定 ● 中央銀行法公布 ●外国投資法改正 (輸出加工区,BOT方 式の導入) 1993 ● 新土地法,農 地使用税法 出所 :岩 見元子他 国際経済学会移行経済分科会 「アジアにおけ る移行経済圏― 市場経済導入 の苦悩― 」仙世 界経営協議会,1991年 5月 ,Theerapong lntarachai,最″%カゲ牲 Sysル物 物 筋夕ああ 筋グ%α Co物%初 容,Institute Of Developing Econonlies,May 1994, 世界銀行 提供 資料等に よ り筆者作成
122 彦 根論叢 第 310号 と直近 のデー タを各 国毎 に比較 した ものであ る。 とりあえず, 自立的 な経済開 発 の ため の重要 な条件 としての国 内政 治 の安 定化 を図 らねば な らなか った カン ボ ジア を除 くと,ベ トナ ム とラオスのマ クロ経済動 向はおおむね良好 に推移 し て きた こ とが わか る。 ラオスでは,1989年 か ら世 界銀行 (以下 では世銀 と略称 す る)や IMF(国 際通 貨 基金 )の 構 造 調整 プ ロ グ ラム を通 じて の支 援 に よ り 対外 経 済政 策 を含 め た改革 プ ロ グラム を迅 速 に実施 して い った。 国際金 融機 関 の支援 を95年の対米 国交 回復 まで待 たねば な らなか ったベ トナ ムの場合,改 革 実施過程 で発 生 す る資金 需要 を基本 的 には国 内貯 蓄 の動 員 と投 資貯 蓄機構 を厳 格 に管理 す る手法 に よって賄 うこ とが で きた こ とは特筆 に値 しよ う。 実際,第 2表 に掲げた指標の うち,ベ トナムお よびラオスの90年代 にはいっ てか らの実質 GDP成 長率 は周辺の ASEAN諸 国に匹敵す る水準であ り,一 人 当た りGDPの 成長率 も加速化 の傾 向 さえ示 してい る。 また,ラ オスの場合 は 世銀 ・IMFそ して UNDP(国 連 開発計画)の 技術協 力 を受 けつつ も,こ れ ら 2カ 国 とも,財 政収支赤字 と経常収支赤字 を管理可能な水準に抑制 しつつ消費 者物イ面上昇率 を急速に収束 させ得 たことも注 目に値す る。国民所得の生産面で も,ベ トナム とラオスの構造変化 は明 らかで,農 業部 門の比重低下 と工業部門 お よびサー ビス部 門の拡大 を観察す ることがで きる。工業部 門については外国 民間投資に よって生産が拡大 している製造業部 門のほか建設関連資材の生産が 活発化 してい る。サー ビス部門の比重拡大はよ り緩やかだが,音卜P弓内ではホテ ルや レス トラン,商 業 ・流通業 など民間企業活動 も積極的に展開されてお り, これ らは経済 自由化措置が早い時″点で奏効 した分野であるとい うことがで きる。 一方,カ ンボジアのマ クロ経済の動向は他の 2カ 国 と比べ ると不安定な傾向 が続いてお り権か な観察 は難 しい。GDP成 長率 は UNTAC(国 連暫定行政機 構)が カンボジアに派遣 されていた92・93年は一人当た りGDP成 長率 と共に 2)世 界銀行 の分 類 で,イ ン ドシナ 3カ 国が属す る 「低所得 国」 グループの中で,94年 時フ点 において財政収支 お よび経常収支 の両方の赤字幅 を対 GNP比 で10%以 下 に抑制 してい る 国は少 ない。特 に,ア フ リカ諸国では経常収支赤字幅が平均 で も15∼20%に 及ぶ (WOrld Bank,レレわガグD夕υ●サθク物夕%サ貴のθガヱ996,Table 2&14に よる)。
イン ドシナ諸国の経済改革1 0 年 1 2 3 第 2表 :主 要 な マ ク ロ経 済 指 標 の 推 移 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 ●ベ トナム 総 人 口( 千人) 一人当たりGDP成 長率(%) 実質 GDP成 長率 (%) 産業構造 (対GDP比 %) 農林水産業 工業 サー ビス業 消費者物価上昇率 (%) 財政収支 (対GDP比 %) 経常収支 (対GDP比 %) 0 ラ オス 総 人 口( 千人) 一人当たりGDP成 長率(%) 実質 GDP成 長率 (%) 産業構造 (対GDP比 %) 農林水産業 工業 サー ビス業 消費者物価上昇率 (%) 財政収支 (対GDP比 %) 経常収支 (対GDP比 %) ● カンボジア 総 人 口( 千人) 一人当たりGDP成 長率(%) 実質 GDP成 長率 (%) 産業構造 (対GDP比 %) 農林水産業 工業 サー ビス業 消費者物価上昇率 (%) 財政収支 (対GDP比 °/。) 経常収支 (対GDP比 %) 61,750 63,263 64,774 66,233 67,774 69,405 71,026 72,509 73,959 1 . 4 4 . 0 3 。1 2 . 8 3 , 7 6 。2 5 . 8 6 . 7 7 . 5 3 . 6 6 . 0 4 . 7 5 。1 6 . 0 8 . 6 8 . 1 8 . 8 9 . 5 42.1 41.2 42,1 40.7 39。2 38.6 37。1 35.4 33.9 24.9 24.7 22.9 22.5 23.1 24.2 25.4 26.6 27.7 33.1 34.0 35.0 36。9 37.7 37.1 37.5 38.0 38.5 301.0 310。9 95.8 67.5 67。4 17.6 5。3 14.4 12.7 - - 8 , 3 - 7 . 1 - 8 . 0 - 3 . 7 - 3 . 7 - 6 。2 - 2 . 4 - 5 . 5 - - 1 6 . 9 - 9 . 8 - 4 . 2 - 1 . 9 - 0 , 1 - 6 . 7 - 6 . 2 - 8 . 9 3 , 8 3 0 3 , 9 4 0 4 , 0 5 0 4 , 1 4 0 4 , 2 5 0 4 , 3 6 0 4 , 4 7 0 4 , 5 9 0 4 , 7 1 0 - - 1 0 。7 3 . 8 0 . 5 3 . 8 2 . 6 5 . 0 4 . 6 - - 1 3 . 5 7 . 1 3 . 6 7 . 0 5 。9 8 . 1 7 . 0 - 一- 59.6 60.7 57.3 58,1 56.3 56。4 54.6 - - 1 3 . 2 1 4 . 4 1 6 . 6 1 6 . 7 1 7 . 4 1 5 。9 1 6 . 0 - ― ―- 2 5 . 8 2 4 . 1 2 4 . 6 2 3 . 9 2 4 . 3 2 5 。2 2 6 . 6 - - 5 9 . 5 3 5 。 6 1 3 . 4 9 . 9 6 。3 6 , 8 1 9 . 4 - 一 - 1 2 . 6 - 1 0 . 7 - 6 . 8 - 6 , 7 - 4 . 4 - 5 。2 - 4 . 2 - ― 一 - 9 . 6 - 6 . 9 - 4 . 3 - 3 . 5 - 3 . 1 - 6 . 3 - 6 . 9 7,920 8,150 8,380 8,610 8,830 9,300 9,650 9,870 10,200 2 . 9 2 . 8 2 . 7 2 . 6 5 . 3 3 . 8 2 . 3 -- 9 . 8 3 . 5 1 . 2 7 . 6 7 . 0 3 . 9 5 。2 一 ― 5 2 . 3 5 2 . 3 5 1 . 8 4 9 . 4 4 6 . 5 4 4 . 9 一 1 5 。 4 1 4 . 9 1 5 . 1 1 6 . 3 1 8 , 0 1 9 . 6 一 一 3 2 . 3 3 2 . 8 3 3 . 1 3 4 . 4 3 5 , 4 3 5 . 6 ― 1 9 . 0 1 4 5 . 6 1 0 7 . 4 7 5 . 5 1 1 2 . 7 3 . 7 一 ―一 2 . 7 4 . 5 3 . 4 3 . 6 5 . 7 5 . 8 一 ―一 7 . 2 3 . 4 1 . 3 2 . 2 1 . 8 7 . 5 -と :GDP(国 内総生産)は1990年固定価格 系列 出所 :世 界銀行 お よびア ジア開発銀行提供 資料 に よ り筆者作成
124 彦 根論叢 第 310号 比 較 的 高 い水 準 を記録 した もの の,94年 の一 人 当 た りGDP成 長率 は近 年 で最 低 を記 録 した。 95。 96年 に 表 面 化 した新 政 権 内 の政 治 的 不 協 和 音 が 経 済 政 策 の 3 ) 立案や実施に対 して小 さ くない悪影響 を及ぼ しているもの と考 えられ る。財政 収支お よび経常収支の赤字幅は援助流入効果 もあって現時点では低 い水準 とい うこ とはで きるが,物 価上昇率 は依然 として大 きな変動 を示 してお り,財 政金 融機構 の構築 を通 じての経済改革は実はまだこれか らとい うことがで きる。 カ ンボジアにおいて も生産面で工業部 門やサー ビス部門の拡大が観察で きるが, 先進国あ るいは周辺国か らの技術導入に よって生産性 の向上 に努めなければな らないタイプの産業振果 に とっては政府の投資環境整備が一層推進 されなけれ ばならない。 3.対 外経済動向 94年現在 で も一人当た り所得がお よそ US S 200(ベ トナム),US S 320(ラ つ オ ス),US S 270(カ ンボ ジア)で あ るイ ン ドシナ諸 国 の場合,そ の 「経 済移 行 」 とは,社 会 主義 的 な計画経 済体 御1の中で行 われて きた放漫 な財政金融政策 運営 の見 直 しだけ では な く,た とえば農業部 門におけ る生産性 向上や運輸通信 基盤 の整備 な ど生産 基盤 その ものの建 設 を 「移行 前」 と比べ てで きるだけ早 く D 進 め なけれ ば な らない こ とを意 味 して い た とみ て まちが いであ ろ う。 とい うの も, イ ン ドシナ 3 カ 国の経 済移行過程 を推進 した外 的要素 は大 き くは 2 つ あっ て,ひ とつ は80年代 後半 におけ る旧 ソ連 の イン ドシナ 3カ 国へ の援助 の急速 な 縮小 に よって引 き起 こされ た開発 資金 と技術 の不 足, い まひ とつ は8 5 年のプ ラ ザ合 意以降 の通貨調整 が 日本,NIEsに よ る東 南 ア ジア諸 国へ の直接 投 資の ラ 3)カ ンボジアの新政権成立後の混乱については,拙 著 「カンボジア経済 :復興か ら成長へ の課題」 『彦根論叢』第305号 (平成 9年 1月 )所 収 を 参照 されたい。 4)ベ トナム とラオスは一 人当た りGNP(国 民総生産),カ ンボジアは一人当た りGDP(国 内総生産)で ある。 5)ラ オスや カンボジアの経済移行過程 は,旧 東側諸国のそれ らよ りも一層,経 済開発に重 点が置かれ るべ き点 につ いて議論 した文献 として,拙 著 「ラオス :経 済開発の現状 と国際 協 力の方向」 『彦根論叢』第297号 (平成 7年 10月)所 収 を 参照 されたい。
イン ドシナ諸国の経済改革10年 125 ッ シ ュ を 引 き起 こ し, こ れ ら を吸 収 した A S E A N 諸 国, 特 に タ イや マ レー シ ア が イ ン ドシナ 3 カ 国 の 注 目の 中 で飛 躍 的 な工 業 製 品輸 出 に よって リー ドされ た経済成長 を遂げた とい う事実 である。国内経済改革そ して開発基盤の建設推 進 を外国資本技術 との協力 を通 じて行 わざるを得 ない, したが って,貿 易 ・投 資 。公的援助のチャンネル を旧東側か ら旧西側へ急速にシフ トさせ なければな らなか ったイン ドシナ 3カ 国の場合,今 後 を展望す るためには貿易相手や投資 国の構成変化 について も確認 してお く必要がある。 0 経 済改革 の本格 化 以 降, 3 カ 国経 済 の総合 貿易依 存度 は急速 に上 昇 して い る。 O E C F ( 海 外 経 済協 力基金 ) のの資料 に基づ いて算 出 してみ る と, 1 9 9 0 年 と9 4 年 の単年度比較 で,42.6%→ 52.2%(ベ トナ ム) , 3 1 . 9 % → 5 8 % ( ラ オス) , 2 5 . 6 % → 4 7 . 6 % ( カ ンボ ジア) と な って い る。 この よ うに 3 カ 国の貿易 面 での開放 度 が急速 に高 まって きた こ とを念頭 にお いて第 3 表 の相 手 国別 貿易構 成 を検 討 してみ よ う。総合 貿易依 存度 の観察期 間 とはやや 食 い違 うが, 9 0 年 代 に入 って か ら 3 カ 国の いずれ にお いて も,輸 出 と輸 入の別 を問わず,基 本 的 には韓 国 ・ 台湾 ・香港 ・シ ンガ ポー ル の N I E s と A S E A N 諸 国 との 貿易 が大 きな比 重 を 占め て い るこ とが 明 らか で あ る。 これ らの点か らイ ン ドシナ 3 カ 国の対外 貿易 関係 は N I E s そ して A S E A N を 相 手 と して急 速 に 開放 され て きた と考 え る こ とが で きる。 また, 外 国民 間投 資 の受 入れ状 況 を見 て も, ベ トナ ムでは N I E s , ラオ スでは隣 国 タイ, カ ンボ ジア ではマ レー シア とシンガポールの進 出振 りが 著 し く, 国 ご とに差 異 はあ る ものの貿易面 と同様 に, N I E s と A S E A N の 比重 が イン ドシナ 3 カ 国にお いて急速 に高 まってい るこ とが明 らか であ る。 4 . 今 後 の開発課題 貿易 と投 資 のパ ー トナー としての A S E A N 諸 国の比 重 が 増 大 す る なか で, 3 カ 国の 中期 開発計画 ない し開発指針 は,従 来 よ リー 層野心的な経済成長率実 現 を 目指 してい る。ベ トナ ムは2 0 0 0 年まで年率 9 - 1 0 % , ラ オスは同 じ く年率 6)[総 合貿易依存度]=([輸 出額 十輸入額]■[GDP])(%) 7)海 外経済協力基金編 「海外経済協 力便覧1996」に よる。
陣 ト ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 1 2 6 彦 根論叢 第 3 1 0 号 第 3 表 : 相 手 国 ・地 域 別 貿 易構 成 ( 百 万 ドル)
出所 :ハミトツナムは, General Statistica1 0ffice,S虎冴な″びαブン物α/bθο々ヱ99σ,Statistical Pub― lishing House,1997 ラオス とカンボジアは,世 界銀行提供資料 によ り作成 ベ トナム 1990 1995 ラオ ス 1 9 9 2 1 9 9 6 カ ンボ ジア 1 9 8 5 1 9 9 3 A . 輸 出 韓 国 台湾 シ ンガ ポー ル 香港 タ イ マ レー シア フ ィ リピン イ ン ドネ シア ベ トナ ム ラ オ ス カ ンボ ジア 中 国 日本 ロ シア トイツ フ フンス ア メ リカ その他 合 計 輸 入 韓 国 台湾 シ ンガ ポー ル 香港 タ イ マ レー シア フ ィ リピン イ ン ドネ シア ベ トナ ム ラオ ス カ ン ボ ジア 中国 日本 ロ シア トイ ツ フ フ ンス ア メ リカ その他 合 計 B. 2 6 . 7 2 3 5 . 3 2 8 . 7 4 3 9 , 4 1 9 4 . 5 6 8 9 . 8 2 4 3 . 2 2 5 6 . 7 5 2 . 3 1 0 1 . 3 5 , 0 1 1 0 。5 5 7 . 0 4 1 . 5 1 4 . 6 5 3 . 8 1 6 . 0 2 0 . 6 9 . 1 9 4 . 6 7 . 8 3 6 1 . 9 3 4 0 . 3 1 4 6 1 . 0 9 1 9 . 7 8 0 . 8 4 1 . 4 2 1 8 , 0 1 1 5 . 7 1 6 9 , 1 0 . 0 1 6 9 . 7 3 3 2 . 0 9 4 4 . 9 2 4 0 4 . 0 5 4 4 8 . 9 5 3 . 1 1 2 5 3 . 5 4 1 . 0 9 0 1 . 3 4 9 7 . 0 1 4 2 5 , 2 1 9 6 . 9 4 1 8 . 9 1 7 . 0 4 3 9 . 7 0 . 8 1 9 0 。5 3 . 6 2 4 . 7 9 . 8 1 9 0 , 0 3 . 9 8 4 . 0 7 . 7 2 3 . 5 4 , 6 3 2 9 . 7 1 6 9 . 0 9 1 5 . 7 1 2 1 0 。6 1 4 4 . 8 2 0 。7 1 7 5 . 5 1 2 3 . 0 2 7 6 . 6 0 , 6 1 3 0 . 4 3 9 3 , 1 1 2 3 1 . 4 2 7 5 2 . 4 8 1 5 5 。4 1 . 5 1 1 9 0 0 . 0 7 0 . 0 2 . 0 1 . 3 0 , 8 9 6 . 7 2 3 . 3 1 5 7 . 6 1 3 . 2 0 . 8 7 . 1 1 . 7 6 . 0 0 。5 3 . 7 4 . 8 7 . 7 8 . 2 6 . 1 2 . 7 1 3 . 1 4 3 . 6 1 6 2 . 7 3 2 0 . 7 1 . 2 2 . 5 3 . 6 5 . 3 4 2 . 6 1 6 . 9 2 . 4 8 . 1 6 9 . 2 3 1 0 . 0 1 1 . 0 2 5 . 8 0 . 0 3 . 0 7 . 2 2 3 . 2 4 1 . 5 5 2 . 5 0 . 9 3 . 0 3 . 2 6 . 7 2 . 8 1 . 6 7 9 . 5 2 3 1 , 0 2 6 5 , 1 6 8 9 . 6 一- 1 0 。1 - - 1 0 9 . 6 - - 8 . 5 - - 1 1 . 7 - - 6 5 . 8 - - 4 4 . 2 十- 1 1 . 3 十- 1 0 , 1 7 4 . 1 1 5 . 4 - - 9 . 2 9 . 7 3 8 . 8 8 3 . 8 3 3 4 . 7 一 ・ 3 ・ 3 一 7 . 1 7 . 7 1 6 . 4 1 . 9 2 4 . 8 1 . 9 1 . 9 0 。9 1 . 4 0 。5 0 。3 4 0 , 0 3 7 . 6
イン ドシナ諸国の経済改革1 0 年 1 2 7 8 % , カ ンボ ジアは2004年まで年率 7-8%の 実 質 G D P 成 長率 の実 現 を 目指 して い る。 これ らの 目標値 は, す でに述べ た よ うな経 済改革 が本格化 した期 間 に達 成 され た成長率 よ りもか な り高 く,イ ンフ レー シ ョン抑制,財 政収支や経 常収 支 面 に現 れ る貯 蓄 投 資 ギ ャ ップ に関 して, 高 度 な経 済運営能 力が求 め られ て い る。 なか んづ く, 少 な くとも2 0 0 0 年までの国 内投 資は, 各 国 ともインフラ ス トラ クチ ャー を中心 とす る公共投 資が半分 以上 を占め る もの と予想 され るが, その公共投 資 の さ らに 6 割 か ら 7 割 は公 的援 助 に よって賄 われ るこ とが計画 さ れている。 こ うした条件 の下 では,条 件の建設過程 におけ る経常費用負担 (土 地の提供,そ の他消耗品的性格の強い資機材の調達)や 完成後の維持管理費用 負担 を賄 うためのいわゆ るロー カル負担分の準備は,外 国援助に依存 しなが ら インフラ建設 を行 お うとす るイン ドシナ 3カ 国の場合,特 に財政基盤の強化 な くしては覚束ない。第 5表 に よれば,ベ トナムや ラオスにおいては,ASEAN 諸国 (タイ,イ ン ドネシア,フ ィ リピン)と 比べ ると政府 による資本支 出規模 に対 して経常支 出規模が相対的小 さいことが明 らかで,特 にラオスでは,経 常 費用負担能力の小 さいこ とが援助吸収能力の限界 として国際機関か ら厳 しく指 摘 されてい る所 であ り,当 面 5年 間の公共投資規模 を引 き上げ ようとす るか ぎ り,財 政運営の一層の健全化すなわち徴税基盤の拡大が並行的に行われないな らば,こ の一点か らだけで も目標成長率の実現は危 うい と言わなければならな い。 この ような意味で も,今 イン ドシナ 3カ 国が 目指 している経済開発計画の 骨格 を構成 してい るのは,従 来の改革措置の単純 な延長線上 にある政策措置だ けでは実現は困難 といわざるを得 ない問題 を内包 した 日標 なのである。 概 して, これ までの構造改革努力は国際金融機関あるいは 日本 を含む主要先 進援助 国の経済協力によって進め られた構造調整 であった とい うこ とがで きる 8 ) ベ トナ ム につ い て は, C o m m u n i s t P a r t y o f V i e t n a m , O r i e n t a t i o n a n d T a s k s o f t h e 1996-2000 Five Year Plan for Socio― Econorllic Development.ラ オ スにつ Vヽて は, State
Planning Conlrnittee, 1996-2000 Socio― Econonlic Development Plans.カ ンボ ジアにつ Vヽて は, The Royal Government of Cambodia,Implementing the National Prograrnlne
128 彦 根論叢 第 310号 第 4 表 : 投 資 国 ・地 域 別 外 国投 資 受 入 動 向 (許可 ベ ー ス) 出所 :日本貿易振興会 「世界 と日本の海外直接投資 1997ジェ トロ白書 投 資編」1997年 第 5 表 : 中 央 政 府 の 経 常 支 出 にみ る援 助 吸 収 能 力 ( % ) ベ トナム ラ オス カ ンボジア インドネシア フ ィリピン LDC平 均 (9195平均)(9095平 均)(9195平 均) 1994 1994 1994 1995 (対 GDP比 ) 経 常 支 出 12.6 11.3 7.6 11.1 10,7 17.0 19.6 資本 支 出 13.6 10。 3 2.6 5.5 7.9 3.5 4.2 合計 ・政府支 出 26.2 21.6 10.2 16.6 18.6 20.5 23.8 出所 :世界銀行提供資料及びアジア開発銀行データベース検索システムにより筆者作成 が,そ の過程 にお いて新 たに明 らか に なったインフラス トラ クチ ャーの不足, あ らゆ る分 野 での人材育成,政 府部 門におけ る行政能力 の強化,等 々,早 急 に 解 決 ない し緩 和 をみ なければ な らない問題 が 山積 してい る。労働 人 口規模 が東 タ イ (百万 ドル) ベ トナム 1993 1994 1995 ラオ ス 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 カンボジア 1994/8-95/12 韓 国 台湾 シ ンガ ポー ル 香港 タ イ マ レー シア 中国 日本 ロ シア トイ ツ フ ランス ア メ リカ その他 合 計 265.2 565.3 365.4 1,148.9 597.7 488.1 546.8 103.6 128.3 93.7 332.5 1,129.9 3 7 1 . 1 4 0 3 . 6 2 4 9 . 6 4 0 2 . 1 3 4 7 , 3 7 6 . 2 1 6 7 . 8 1 0 9 . 9 1 2 3 . 9 0 . 2 2 1 9 . 9 5 3 1 . 3 5 9 7 . 5 1 , 1 5 6 . 0 2 , 3 3 9 . 5 2 , 6 1 5 . 4 3 , 7 2 1 . 7 6 , 5 2 4 . 2 1 . 1 2 . 8 2 7 7 . 4 5 . 8 8 . 2 6 . 7 7 . 3 0 . 5 0 . 2 7 . 1 1 . 5 0 . 0 5 8 . 6 2 , 0 1 3 . 0 3 5 。2 5 . 0 3 . 4 5 。1 1 2 . 6 8 . 9 8 . 1 0 。2 1 . 0 5 。2 0 . 2 2 . 4 0 , 0 0 。1 1 . 5 0 . 0 2 . 0 3 . 0 1 . 6 5 . 6 4 . 9 0 。1 1 7 , 2 1 3 . 2 2 6 , 8 1 2 2 . 8 2 , 0 6 4 . 3 3 6 6 . 3 1 . 7 4 2 . 8 1 2 4 . 9 1 4 5 9 , 7 7 2 . 9 0 . 9 2 9 . 7 2 7 6 . 3 2 0 0 8 . 9
インドシナ諸国の経済改革10年 129 南 ア ジアの 中で も相 対 的 に大 きいベ トナ ムの国営 企業合 理化 問題,政 治 問題化 しつつ あ るラオスの都 市農 村 間の所得格 差拡 大 問題 ,カ ンボ ジアの開発行 政能 力 強化 等,イ ン ドシナ 3カ 国間 では従 来 よ リー 層着実 な経済開発基盤の構築が 望 まれ て い る。 IH AFTA参 加の意義 と問題点 1.AFTA参 加 の意義 経済改革措置が引 き続 き実施 されている中で,イ ン ドシナ 3カ 国が ASEAN 加盟後 1年 で AFTA(ASEAN自 由貿易地域)に 参加す るこ との利益 は,中 長 期 的 か つ 動 態 的 に み る と,こ れ ら 3カ 国 に とって の み な らず,周 辺 の ASEAN既 加盟 国に とって も非常 に大 きい と期待 されてい る。製造業部 門だ けでな く農業部 門において もこれ までの経済発展過程 で生産性の向上 と国際競 争力の強化 を実現 して きてい るタイや マ レー シアそ してイン ドネ シアな どの 国々に とって,新 たに合計人 口85百万人に及ぶ イン ドシナ 3カ 国が輸 出先 とし て加 え られ るこ とは,い うまで もな くASEAN経 済の将来 を一層明 る く照 ら す もの と受け止め られ ることは当然であろ う。 また, 3カ 国側 に とれば,こ れ までの経済改革 をさらに一歩進め,「経済移 行」戦略の一環 として国内民間企業 を育成 してい くために AFTA参 加 を推進 す る とい う考 え方が あ る。AFTAの 枠組 にお いては,参 加 国は2003年までに 自国の輸入関税率 を原員J的に 0-5%の 範囲にお さめ るとい う大幅 な貿易 自由 化が義務づ け られてい る。95年に加盟 したベ トナムの場合 は, 1年 間の準備期 間 を経て品 目別貿易 自由化のスケジュール を確定 した うえで2006年までに原則 自由化の義務 を課せ られている。 同様 にラオスは2008年が期 限 となっている。 ただ し,農 産品や一部の工業製品に関 しては免除ない し猶予規定が設け られて お り, ここで述べ た期 限 までに AFTA参 加 国の輸入関税率 が例外 な く0-5 %に お さまるとい うわけではない。貿易 自由化 を目指す枠組のなかで注 目を集 め たのが,96年 に開始 された AICO(ASEAN Industrial Cooperation)で あ る。 これは現地資本比率30%以 上,域 内調達比率40%以 上の企業 を対象に,完
■ 印 r i r i l ﹂ ︱ ︱ ︱ ト ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 130 彦 根論叢 第 310号 成品,部 品,原 材料 の域 内貿易 に 5%以 下の特恵関税 を適用 し2003年までの貿 易 自由化 をさらに促進 しようとす るものである。 イン ドシナ 3カ 国に とっては, 自国の製造業部 門の発展 を外 国企業 との協 力 で推 し進 め よ うとす る際 に, ASEAN10と い う大市場のなかで外国企業 との合弁事業 を通 じて 自国企業が育 成 され うるとい う″点で期待がかか る仕組である。 2.基 本的な問題″点 イン ドシナ 3カ 国が AFTA参 力口による自由貿易の利益 を現実の もの とす る ためには,上 で述べ た潜在的利益 に もかかわ らず,多 くの課題 を解決 しなけれ ば な らない。第 1に ,ASEAN諸 国が着々 と経済開発基盤 を建 設 していた時 期 に,全 く異なる歴史 を歩んだイン ドシナ 3カ 国に とって,現 在,焦 眉の急は 制度 。組織 そ して人材の ASEAN化 であ る。 このギャ ップは過去10年の経済 移行努力に もかかわ らず依然 として大 きいため,貿 易の自由化のスケジュール を与 えられた 3カ 国は多大 な調整 コス トの負担 を強いられ るか もしれない。 3 カ国側 の当面の課題 としては,① 政府部 門の人材育成 と組織改革,② 適切なマ クロ経済運営,な どをあげ ることがで きる。早期に準備 しなければならないの は, まず,ASEANお よび AFTAに おけ る政策対話に関 して国内で も迅速に 議論 を調整 で きるだけの制度的バ ックア ップ体制の構築 である。240以上 もの 部会 を持つ ASEANに おけ る協議 に即応で きるだけの人材確保 。経常費用負 担のための体制造 りはすでに着手 されているとはいえ,ラ オスや将来のカンボ ジアについては加盟の直後は政府内では少なか らぬ混乱の生 じることが予想 さ れ る。 さらに,AFTAを 発火点 とす る域 内貿易 の 自由イしが さらなるス ピー ドで進 むな らば,そ の こ とが新加盟 国の国家体制 その ものの ASEAN化 さえ迫 る可 9 ) 当 初 の 目的に もかかわ らず, A I C O は 必ず しも有効 に機能 していない。部品産業の集積 度がす でに互 いに異 な る A S E A N 諸 国間 で, す でにあ る程 度の発展 をみている国 とこれ か ら外 国企業導入に よ り産業振興 を図 ろ うとす る国 との間で利害が衝突 しAICOに 関 る 特 恵関税適用承認作業が進んでいないためである ( 日本経済新聞1997年4月 7日 朝刊)。
イン ドシナ諸国の経済改革1 0 年 1 3 1 能″性が あ る。 カ ン ボ ジア とラオ ス は,ASEANに お いて はベ トナ ム と同様 に, 既力口盟 国 と比較 して工業化 や 国 内市場 の深化 の程 度か ら観 て明 らか に後発 国で あ るため,域 内国同士 の産業調整 問題 が大 きな議論 を巻 き起 こす可能性 が あ る。 そ して, ま さにその過程 にお いて,イ ン ドシナ各 国はす でに顕在化 してい る国 内問題 との調整 をどのようにはか ってい くのか とい う課題に直面す ることにな る。経済改革の中での国営企業合理化 に伴 う雇用確保 の問題や者田市農村間の所 得格差 問題 であ る。敷延 すれば,イ ン ドシナ 3カ 国の ASEAN化 の速度如何 が東南アジア全体 の安定如何 に直結す るか もしれない。既加盟国 と新加盟国 と の調整 を,あ るいは新規加盟国に対す る支援 を推進 してい くための明確 なビジ ョン とイエシアティブが求め られている。 第 2に ,こ の10年で,ASEAN域 内は経済的分極化 を遂 げた よ うに見 え る。 先行組の タイ,マ レー シア,や や遅れ をとったフィ リピン,イ ン ドネシア,そ して新 たに参入す るイン ドシナ 3カ 国 とミャンマーがいわば二層構造 を呈 して いる。NIEsと 比較す るとイン ドネ シアの ように人 口規模 が相 当に大 きい国 も あるうえ,現 状 では既に国内市場深化の程度 も互いに異なる。 したがって,互 いの競争が激 しくなれば,勝 って も負けて も,産 業構造調整 あるいは外国企業 を巻 き込んだ産業再配置に手間 どることは 目にみえている。結論的には, うえ で述べ た AICOの 本格化 に伴 う周辺の ASEAN諸 国 との産業調整 コス トをど の ように分か ち合 えるのかについての見通 しは立 ってお らず,ま た,そ れ を克 服 してい くための計画 も人材 も決定的に不 足 してい るこ とが,AFTA参 加 の 利益最大化 を考 えるうえで重要 な問題 となっている。 I V 国 際経済協 力の課題 1 . 長 期 的方 向性 A F T A 参 加 の利益 をイ ン ドシナ 3 カ 国 だけ で な く他 の加 盟 国 に も最 大 限波 及 させ るため に は, 各 国の積極 的 な産業調整努 力 と, そ の結果 として生 じる域 内分 業 関係 の在 り方 をめ ぐる A S E A N 内 外 での政 策 対 話 が 重要 とな る。 わが 国 として も A S E A N 域 内分 業 の在 り方, そ して この地域 との共生 の在 り方 に
132 彦 根論議 第 310号 関す る明確 な展望 を示 し,拡 大 した ASEANと の経 済的 な位 置 関係 を明 らか にす るこ とが今 強 く求め られて い る といえ よ う。 プ ラザ合 意 を契機 とす るア ジ ア経 済の激動 10年 を経 た今, こ の″点に関す る議論 を煮詰め るこ とは比較 的容易 な段 階 に至 って い るの では ないか。 また,新 規 加 盟 国 の 「ASEAN化 」 に つ いて も同様,地 域経 済展望 を示 す こ とも極 め て重要 であ る。移行過程 自体 を促 進 す るため の支援や低 開発経済 としての イン ドシナ諸 国お よび ミャンマー に対 す る草 の 根 レベ ル で の 援 助 は今 後 も必 要 で あ る こ とは論 を待 た な い が, ASEAN現 力口盟 国 をわ が 国 経 済 協 力 の パ ー トナ ー と して み た場 合 に は, ASEANの 発 展全体 の 中に イ ン ドシナや ミャ ンマー の経 済 開発 の方 向 を位 置 づ け た うえで連携 してい くこ とが必要 であって,既 存 の国際的支援 は,ASEAN 域 内の分 業 関係 の在 り方 を考 慮 していない とい う″点で い まだ十分 ではない。 こ の点 に関す る展望 を も開 くこ とに よって,た とえば,地 域 的 な広 が りを持つ い くつ か の援助構 想 も一 層活 きて くる もの と思 われ る。 経 済 危機 を迎 え るなか で70年代 以 降 の 経 済 発 展 の総 括 を強 い られ て い る ASEAN諸 国 (特に タ イ,マ レー シア,イ ン ドネ シア)の 国 内事 情,そ して それ らが AFTAの 流 れ に どの よ うな影響 を与 え るのか に関す る議論 は と りあ えず置 くとして も,イ ン ドシナ 3カ 国の正 念場 は,や は り,基 本 的 には全 ての 輸 入 品に関す る関税率 が 0-5%に お さめ られ る2006-8年 であ る としなけれ ば な らない。 また, 日本 を含 む援助 国お よび国際援助機 関 に よって これ まで推 進 され て きた援助 にお いては,イ ンフ ラス トラ クチ ャー整備 と農林業 の開発 そ して医療保健 な どの社会部 門に大 きな重点が置かれてお り,構 造調整 融資 な ど 経 済運 営 に関 す る援 助 は これ らを建 設 ・維 持 管理 す るこ とを長期 的 に facili‐ tateし て い く政 府 の機 能 を強化 す るため ため の もの で あ る とみ るこ とが で き る。特 に ラオスに対 す る近年 の運輸通信 インフ ラ整備支援 は, ラ オス を文字通 り"land‐bridge"とす るこ とに よ り,東 南 ア ジア大 陸全体 が発 展 す る中で イ ン ドシナ 3カ 国の開発水 準 を引 き上 げ よ うとす る もの であ るこ とは間違 いないで
あろう。これらの″
点か ら, 3カ 国の開発戦略そして国際協力のあるべ き基本的
な方向や性格は,今 やイン ドシナ半島をめ ぐって生まれている国際経済環境の
イン ドシナ諸国の経済改革1 0 年 133 変化 に対す る積極 的 「即 応性」 に求 め られ るべ きであ り,か つ,そ の こ とと各 国 固有 の伝統や 習慣 との あいだで生 じ得 る経済的摩擦 を軽減 す るこ とにあ る と 思 われ る。 2.連 携 型援助 の意義 国際経 済環境 の変化 に対応す る方 向での イン ドシナ 3カ 国に対す る援助 に関 しては,特 に農 村 開発や社会 開発 の面 では,こ れ ら 3カ 国の 自然条件や文化条 件 を考 慮す る と日本 を含 む先進援助 国は周辺 の タイや マ レー シアな どの国々お
よび NIEsと 連携す るこ とに よ りいわゆ る 「三角支援 (tri_lateral aid)」を進
め て い くこ とが望 ま しい。 イン ドシナ 3カ 国 を含 め た東南 ア ジア諸 国の産業構 造 が互 いに補完 的 であ り,か つ, 自然条件や文化 条件 等が著 し く異 な る 日本 だ けでは効果的な援助が実施 で きないためである。 このような連携型援助の基本 構想はすでに93年 1月 の宮沢元総理大 臣のバ ンコク演説で内外に表明されてい る。ただ し,た とえば,タ イの援助実施能力強化 を支援す る場合,タ イの各機 関は 自らが主導権 を握 るべ く日本側 に働 きかけ るのが現状 であ り,わ が国 とし て援助の効率化 の観″点か らタイ側の複数の窓 口を絞 り込むのは非常に難 しい。 この ような状況の下 で,イ ン ドシナ 3カ 国側の援助吸収能力が今後 も極めて施 弱であることを考慮す ると, 日本 を含む既存の援助国お よび国際機関の単独案 件 と連携援助条件が受入れ国のなけな しの人材や経常費用負担能力すなわち援 助吸収能力 を喰いあ う結果 を招 く可能性 もまた大 きい。わが国がタイ,マ レー シアそ して シンガポールの ような一部 の ASEAN諸 国 と連携 してイン ドシナ 諸国 を支援 してい くこ とは,中 長期的観″点つ ま り連携国 自身の援助実施能力 を 高めてい くとい う立場 (このこと自体我が国の民間企業の 「援助離れ」 を加速 す る要素 で もあ る)か らは,日 本 国 内におけ る十分 な政策調整 は もとよ り ASEAN諸 国の事情 をも考慮 した うえでの イン ドシナ諸国 との綿密 な政策対 話 と強いイエ シアティブを要す るとい うことができる。
134 彦 根論叢 第 310号
AL Decade of EconoIIlic ReforRl and the Next
Challenge of lndochina Countries
Ketti Domoto
Allnost ten years has passed since lndochina countries,namely Viet‐
卑am, Laos and Cambodia embarked the transition from centrally planned economy to rnarket oriented one,Besides Cambodia of political conflict,VietnaHl and Laos seeln to have allnost reached to a sustain‐ able path of econonlic development under the cooperation of interna‐ tional community.Laos at last joined ASEAN in 1997,and Vietnam, whichjoined ASEAN in 1995,will be a member of APEC as wellin 1998. Cambodia will be able to join ASEAN after political stabilization in the nearest future.Ho、vever there still remain some tasks for thena to maxl‐ rllize the possible benefit of participating in the free trade system of Southeast Asia,and to nlinilnize the undesirable econornic impact of the liberalization process,This paper attempts to clarify the tasks for lndochina countries as well as the desirable direction of international