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(1)

mustの研究

著者

三ツ石 直人

著者別名

MITSUISHI Naoto

雑誌名

東洋大学大学院紀要

56

ページ

203-217

発行年

2020-03

URL

http://doi.org/10.34428/00011698

(2)

1.はじめに

Mustは、根源的用法では「……しなければならない」、陳述緩和的用法では「……するに ちがいない」と訳され、どちらの用法でも話し手の強い気持ちを表すことは明白で、 idiomaticな表現やコロケーションや語法はない。そのため、mustの訳例を覚えるだけで、 さほど深く考えずに学習を終えてしまう者もいる。たしかに一見すれば複雑さはないかもし れないが、mustの用法を注視すると疑問に思うことが数多く出てくる。たとえば、mustは have toと交換可能とされるが、全くの同義と言えるのか。Mustの過去形がhad toというの も疑わしい。Mustはあくまでmustでありhave toでないことは明らかである。また、have toの陳述緩和的用法が認められるが、その場合、否定⽂ではどのような意味なのか。Must の時制や相の問題もある。Mustは根源的用法では未来を表すことができるけれども、陳述 緩和的用法では未来を表せないとされるが、果たして本当なのか。同じmustを使用してい て、用法によって未来を表せるか否かが変わるのは腑に落ちない。「明日は雨が降るにちが いない」という日本語に何も違和感がないように、It must rain tomorrow.も容認されるよ うに思われる。Mustの直後に進行形が続くと、必然的に陳述緩和的用法になるとされるが、 「……していないといけない」と言いたいときはどうすればよいのか。このようにmustに関 する疑問を挙げれば切りがない。本研究では紙面の許す限り、mustに関するどんな些細な 疑問でも解決していく。

2.Mustの意味

Mustの語源はOE期のmōsteまで遡れる。これは現代英語におけるmayを意味するmōtの 過去形である。そこから、なぜ「必要」の意味に転じたかは定かでないが、OED2によれば、

‘it may have arisen from the use in negative contexts’ とある。May notは「……すること を許さない、してはならない」で、must notの「禁止」の意味と重複する。しかし、小野 (1969:74) にあるように、‘negative contexts’ という限定された条件から説明されており、

mustの研究

文学研究科英文学専攻博士後期課程満期退学

(3)

素直に納得し難いものがある。寺澤 (2016:123) はmustの原義を ‘have room to’ (……する 余地がある、余裕がある) とし、ここから「許可」と「必要」の意味に派生されたと述べて いる。すなわち、mōtは「……する余地があるならば、してもよい」のようにmayの意味に なり、それをmōsteにすることで仮定法過去になり、「……する余裕があるのにしていない。 余裕があるならば、やるべきだ、やらないとならない」のようにmustの意味になったと考 えられる。したがって、mustは仮定法のニュアンスを含む「必要」の意味がその核となる 部分に含まれているのである。

(1)I felt I must write to him. (BNC) (彼に手紙を書かなければと思った)

(1)は自らに感じる必要性を表し、書くことを自らに義務付けている。ここから話し手の意 図を表す。(2)と(3)のI must sayは、どうしても言わざるを得ない、言っておかなけれ ばいけないという話し手の必要性を表しており、主節を強調する役割を担う。Commaで区 切られることが多く、可動性があり、副詞的な役割を果たす。また、(4)のI must admitも 同様に、主節を強調する。

(2)I must say, I’m very impressed by your gift. (BNC) (まったく、あなたの贈り物にはすごく感動よ)

(3)This, I must say, gave me great pleasure. (BNC) (これが、本当に、すごく楽しかったんだ)

(4)I must admit, I prefer the first opinion. (BNC) (本当のことを言うと、最初の意見の方が好きだな)

(5)は、主語こそ一人称ではあるものの、必要性を感じて義務付けたのは話し手ではなく 聞き手であり、話し手はその義務に対する理由を尋ねている。苛立ちや不満を露わにした表 現である。

(5)Why must I be patient? (BNC)

(どうして私が我慢しなきゃいけないのよ)

(6)は、コーランの規律としての必要性を表すが、mustは法助動詞であり、話し手の気持 ちを表すため、コーランの規律に則って話し手自身が必要性を感じているのである。

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(6) According to the Koran, women and girls must always cover their arms and legs.  (BNC) (コーランに従って、大人も⼦どもも女性はいつも腕と脚を覆わなくてはならない) (7)のmustは、話し手が聞き手に対して感じる必要性を表している。

(7)You must accept that. (BNC)

(君はそのことを受け入れないといけない) Mustの中心義から、他には選択肢がないという意味が与えられ、かなり強い必要性を表す。 この強さ故に聞き手への命令を表すこともある。たとえば(7)は、次のように ‘You must’ を削除して、命令⽂に書き換えても同義になる。 (7́)Accept that. 義務を与える側は、しばしば聞き手よりも身分が高いことがあるので、mustを使った⽂は 非常に高圧的と捉えられる可能性がある。次の(8a)は(8b)の受動態であるが、受動態 にすることで命令の対象が隠れる。そうすることで、高圧的になることを防いでいる。 (8a)It must be remembered that these are liable to change at any time. (BNC)

(これらはどんな時でも変わりやすいことを覚えておかなければならない) (8b)You must remember that these are liable to change at any time.

(9)は命令の語用論的用法で勧誘を意味する。Mustを使用しているので、話し手の強い気 持ちが現れている。この時、高圧的に聞こえないようにmustに強勢は置かれない(Declerck (1991:382))。

(9)You must come to tea again. (BNC) (是非ともまたお茶をしに来て下さい)

このように、二人称主語の場合には話し手に権威があって聞き手に義務を負わせるため、命 令の意味を含む。しかし次の(10)のように、if節内でmustが使用されると、話し手に権威 があるわけでなく、主語にあたるyou自身が感じる必要性を表す。

(5)

(10)If you must oppose the death penalty, do so only in your office. (COCA) (どうしてもその死刑に反対したければ、自分の事務所の中だけにしなさい)

[If S must V]という副詞節に対する主節には、よく命令⽂が使用され、「どうしてもした いならば、……しなさい」のように、不本意の承認を表す。(11)はidiomaticな表現である。 Needsはmustを強調する副詞で、幾分古い表現である。副詞のneedsはHe must needs come.のようにも使われる。

(11)If needs must, I shall die in their stead. (COCA) (どうしてもと言うならば、彼らの代わりに私が死ぬ)

If節の中だけでなく、主節にmustが使用されても、主語にあたる人物が感じる必要性を表す ことができる。(12)では、ルイが自分自身のやり方を持っていることに必要性や義務感を 感じている。

(12)Lewie must have his own way. (COHA)

(ルイはいつも自分の思い通りでなければ気が済まない)

(13)は話し手が感じる必要性でも、主語が感じる必要性でもなく、生まれながらに人が持 っている必要性を表す。

(13)All men must die. (BNC)

(すべての者は必ず死ぬ運命にある)

(13)は、人は生まれながらにして死ななければならない、死ぬことが必然である、という 意味で、避けられない運命を表している。(14)のmustも必然を表す。避けようと思っても、 どうしても避けられなかったことを表している。

(14)I was just going to bed, and then he must ring me up. (ジーニアス(2001)) (私がちょうど床に就こうとしていると、あいにく彼が電話をしてきた)

ここまで述べた通り、mustの表す必要性は、話し手の感じる必要性であることもあれば、 主語にあたる人物が感じる必要性であることもある。さらに、必要性の出所が話し手でも主 語でもないmustもある。よって、根源的用法のmustの意味を考えるときに注意すべきこと

(6)

は、誰が必要性を感じていて、それを誰に向けているのかを考えることである。 Mustの陳述緩和的用法は、他の法助動詞と比べると推測の意味合いが強い。Mayと対比 すると、mayは許可を表し、許可を与えられた者は、するもしないも当人の自由で、絶対に するとは言い切れないため、確信度の低い可能性を表す(三ツ石(2018:292))。一方でmust の中心的な意味は「必要」で、その圧力からある動作をせざるを得なくなる。そのため、必 然的にその確信度は高くなる。

(15) My father often talks in his sleep and sometimes he speaks fluently in a foreign language. We used to think it must be Polish because two other patients in adjacent beds were Poles. (BNC)

(うちの父はよく寝言を言うのですが、時々流暢に外国語で話すのです。私たちは昔、 それがポーランド語にちがいないと思いました。なぜなら、隣のベッドにいた他の2人 の患者さんがポーランド人だったからです)

(15)のように、becauseなどで理由を表すことで、その確信度はさらに高まる。また、次 のようにsurelyとの相性も良い。

(16)He must surely see her. (BNC) (彼はきっと彼女に会うにちがいないよ)

3.mustとhave to

3.1 have toの意味

両者の意味を比べる前に、have toの意味を考える。Have toは法助動詞と違い、進行形や 完了形にできるので、haveという動詞とto不定詞から成る表現と言える。この表現において、 haveは所有を表し、to不定詞は未来を表すので、「これから……するという状況を持ってい る」となる。転じて「……する状況があるのだからしなければならない」となる。陳述緩和 的用法も同様、haveとto不定詞の意味が働いて「……する状況があるのだからするにちがい ない」となり、外的要因による必要性を表す。一方、mustは法助動詞で、話し手の気持ち を表すため、内的要因による必要性を表す。よって、have toとmustを比べると、必要性の 出所が異なるのである。なお、have toの類義表現としてhave got toがあるが、両者の違い に関して安藤 (1992:151)は、イギリス英語ではhave toは習慣的必要性に使い、have got to は一度限りの強制に使用する傾向にあるが、アメリカ英語の影響により、意味による区別な く使われると言及している。同様に他の研究者も両者の区別を明確にしていないため、本稿 でも区別はしないことにする。

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3.2 肯定文

3.2.1 根源的用法における違い

根源的用法における両者の違いは、内因的必要性と外因的必要性である。 (17a)You must be back by 10 o’clock. (Leech (2011:78) )

(17b)You have to be back by 10 o’clock. (Leech (2011:80) ) (10時までに戻らなければならない)

(17a, b)を挙げたLeech (2011)は、(17a)の話し手は聞き手に権力を行使しており、(17b) は話し手の権威や影響が関与しない、周囲の状況による必要性としている。(17a)は話し手 が必要と感じ、聞き手に10時までに戻ることを義務付けており、(17b)は門限など話し手 とは別のところから生じる義務を表す。Perkins (1983:60)では、have toを使うと、ある程 度の丁寧さや堅さがあり、mustを使うと押しつけがましく、直接的過ぎると思われる可能 性があると述べている。つまり、mustには話し手の権威が感じられて、高圧的に聞こえる が、反対に外因的必要性を表すhave toは、話し手の権威が介在されないため、mustのよう な圧力を感じないのだと考えられる。以上のことから、mustは話し手の権威が介在する内 因的必要性なので、話し手の主観的な必要性を表し、have toはそのような権威がない外因 的必要性なので客観的必要性を表すと言える。よって、両者の根源的用法の違いは主観性と 客観性である。 3.2.2 陳述緩和的用法における違い Mustとhave toの根源的用法の違いが主観性と客観性ならば、陳述緩和的用法でも同じこ とが言える。主観性が強いmustは話し手の気持ちが介在するため、have toに比べて確信の 度合いが低く (柏野 (2002:131))、確かな根拠がない場合でも使える。反対にhave toは客観 的なので、明確な根拠がないと使えない。よって、陳述緩和的用法における両者の違いは確 信度の高さである。Leech (2011:79)は、mustの陳述緩和的用法は ‘logical necessity’ であ るが、‘reasonable assumption’ にまで弱まる可能性があるとし、(18a)を(18b)に書き換 えている。

(18a)You must be Mr. Jones.(Leech (2011:79))

(18b)I assume / take it that you are Mr. Jones.(Leech (2011:79)) (ジョーンズさんですよね)

(8)

も、(18a)のmustはmayと置き換えてもさほど意味の差がないとしている。これが正しけ れば、mustは最も確信度が高いところから最も確信度が低いところまで表すことになるが、 これには納得し難い。たしかに根拠がなければ、真実味が薄れることはあるかもしれないが、 意味の振れ幅が大き過ぎる。Mustが本来の確信度からmayの表す確信度までを表すとした ら、聞き手は(18a)のような⽂をどのように解釈したらよいかわからなくなる。Mustはあ くまで ‘logical necessity’ で、確信度が高いことは認めなくてはならない。ただし、have to との比較では客観性のあるhave toの方が、確信度が高いことは確かである。

3.3 否定文

3.3.1 根源的用法における違い

Must notは禁止を表し、not have toは不要を表す。この違いを生むのは否定の作用域で ある。たとえば、You must not go there.とYou don’t have to go there.を比べると、前者の notはgo thereを否定し、「そこへ行かないことが必要である」となり、行かないことへの必 要性を表すので、「行ってはいけない」となる。一方、後者のnotはhave to go thereを否定 し、「今後そこへ行くという状況は持っていない」という字句通りの意味から、「行くという 状況がないならば、行く必要がない」となる。語用論的に、don’tに強勢を置くことで禁止 を表すこともある (柏野 (2002:179))が、発話の仕方の問題で、not have toは不要を表すと 考えて問題ない。

3.3.2 陳述緩和的用法における違い

陳述緩和的用法のmustの否定は、よくcannotであるとされるが、must notも陳述緩和的 用法で使われ、「……でないにちがいない」となることがある。Quirk et al. (1985:225)では、 これまで否定される傾向にあったが、特にアメリカ英語で容認されるようになってきている としている。また、Swan (2005:337)では、He cannot be home yet.とShe must not be home.を挙げ、前者は、家にいることは論理的にあり得ないとし、後者は論理的にあり得な いわけではないが、いないことは確かであると述べ、両者には差があることを認めている。 よって、must notは陳述緩和的用法で使われるが、アメリカ英語寄りの表現で、論理性のな い、主観的な推定を表す。

一方、not have toの陳述緩和的用法を解説したものはあまりないが、ジーニアス (2001) では、「必ずしも……ない」という訳例を提示しており、また、Leech(2011:94)も(19a) を(19b)に書き換え、ジーニアス(2001)の訳例と同様の意味を提示している。

(19a)It doesn’t always have to be my fault. (Leech (2011:94))

(9)

(必ずしも、いつも私のせいとは限らない) (20)“A dog’s been killing our chickens.”

“It doesn’t have to be a dog. ― it could be a wolf.” (ジーニアス(2001)) (「犬がうちの鶏を殺している」 「必ずしも犬とは限らない―もしかしたら狼かもしれない」) Have toは根拠のある確信を表すので、それを否定した場合、「……するような根拠がないた め、不確かである」となる。(19a) は、「いつも私の過ちであるという根拠はない」で、根 拠がなければ過ちだとは言い切れない、と述べている。(20)は「犬だという根拠はない」 で、根拠がなければ犬とは言い切れない。犬の可能性もあるが、もしかしたら狼かもしれな い、と述べている。このようにnot have toの陳述緩和的用法は不確かさを表すのである。

3.4 mustとhave toの共起

Mustとhave toが共起する例を検討する。

(21)You must have to call up or check online or something. (COCA)

(電話をかけるか、オンラインか何かで調べるかしなければならないだろう) (22)Leonard must have had to leave early yesterday. (COCA)

(レオナルドは昨日、早々に出発しなければならなかったにちがいない)

[must have to]は法助動詞と準助動詞の組み合わせで、[may be able to]が「……できる かもしれない」となるように、法助動詞を陳述緩和的用法とし、準助動詞を根源的用法とす る。たとえば(21)は、mustが陳述緩和的用法で、have toが根源的用法で、「……しなけ ればならないにちがいない」となる。(22)も(21)と同じだが、have toが完了形であるこ とから、過去の義務を現在の視点から推測して「……しなければならなかったにちがいない」 となる。

4.mustに関する時制と相

4.1 mustと時制 4.1.1 mustと未来 Swan (2005:362)によれば、(23)のように、根源的用法のmustは未来について言及でき る。しかし、Close (1992:103)は、根源的用法のmustが未来を表せることを容認している ものの、(24a) は現在のことを述べていると捉えられてしまうため、未来であることをより 明確にするには、(24b) のように、will have toを使うと述べている。

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(23)You can borrow my car, but you must bring it back before ten. (Swan (2005:362)) (僕の車を借りてもいいけれど、必ず10時前には返してね)

(24a)I must be very frank with you.  (Close (1992:103) ) (君にはかなり率直に言わないとね)

(24b)I’ll have to be very frank with you.  (Close (1992:103) )

たしかに曖昧さを回避するために will have toを使うことがあるのかもしれないが、mustだ けで未来を表せる以上、未来を表すmustとwill have toが全くの同義だとは考えにくい。 Mustは現在形で、現在の必要性を表す。一方、will have toはwillがあるので、未来におけ る必要性を表す。よって、両者は時における必要性の所在が異なる。(23)は義務付けてい るのが発話時点で、bring it back を行うのが未来である。もしこのmustをwill have toに置 き換えると、義務付けられるのが未来となるため、この⽂脈では不自然である。だが、 mustとwill have toの置き換えには注意が必要である。Mustとwill have toの意味は異なる が、直接的な命令を緩和させるため、mustの代わりにwill have toを使うことがある (Swan (2005:362))。

 一方、陳述緩和的用法は未来表現との共起は稀である。(25)は陳述緩和的用法でなく、 根源的用法と思われる可能性がある。

(25)John must go to London tomorrow. (安藤 (2002:289))

陳述緩和的用法のmustが未来を表す⽂中で使われにくいのは、その意味の強さに起因する。 未来という不確定要素の多い時間領域で、非常に確信度が高いmustは避けられる傾向にあ るのだと考えられる。しかし(26)のように、未来のことでもほぼ確定的と思われる場合、 mustの使用が認められる。

(26)It is raining and it must rain until the dawn. (安藤 (2002:289)) (今現在雨が降っているのだから、夜明けまで降るはずだ)

4.1.2 mustと過去

2節で述べた通りmustの語源が過去形であるため、現代英語のmustにおいても過去形がな い。過去の義務を表すには、He had to give up rugby after suffering numerous injuries.の ように、have toを過去形にしてhad toにする。だが、吉川 (1949:375)は、(27),(28)を 挙げてmustが過去の⽂脈で使われることを認めている。

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(27)My mouth was so dry, I must wet it with sea-water before I was able to shout. (吉川 (1949:375) ) (口がとても乾いていたので、海水で濡らさなければ叫ぶことができなかった)

(28) So the anxious, heart-stricken Adam must of necessity wait and try to rest till morning―nay, till eleven o’clock, when the coach started. (吉川 (1949:375) ) (そうして、不安で悲しみに沈んだアダムは、朝まで――いや、乗合馬車が出発する11 時まで、どうしても足を止めて待っていなければならなかった) (27)ではwasが過去を表し、(28)ではstartedが過去を表している。よって、同じ⽂中の mustだけが現在を表しているとは考えにくく、過去を表していると考えるより他ない。⽂ 法規則に従えば、had toとなるが、must自体が元々過去形だったので、過去の⽂脈で使用 されても問題はないのだと思われる。なお、Wood (1964:188) は、このようなmustの用法は、 嫌悪感や苛立ちを抱いた際に使われるとあるが、上記の例に関しては、そのような意味があ るようには感じられない。 Mustが過去形として使われる例は他にもある。それは、2節で挙げた(1)のような時制 の一致である。主節の動詞はfeltで、それに続く節はfeltの目的語に当たる。主節の動詞が過 去形ならば、目的語となっている名詞節内の動詞も過去形でなくてはならない。この規則に 従えば、mustの形は変わっていないが、過去形と考えざるを得ない。もちろん、mustを必 ず使用しなければならないわけではなく、had toやwould have toを使用することもある。 (29a)I felt I must do something. (COHA)

(29b)I felt I had to do something.

(29c)I felt I would have to do something.

(29a-c) の意味の違いを小西 (1985:988)は、had toを使うと、do somethingの時期が定ま っているか、発話から短時間のうちに動作が行われることが含意され、would have toを使 うと、その動作が行われる時期が不確定であると述べている。なお、(29a)に関しては特に 記述はない。この違いに関して私見を述べると、(29a)は、義務感を抱いたのはfeltと同じ 時で、その動作がいつ行われるかは定かではない。(29b)は「これから何かをするという 状況を持っているから、やらなければならない」ので、状況が整っていることが前提となっ ている。そのため、小西(1985)の見解と同じである。(29c)は時制を現在に戻すと、will have toで、義務の所在が未来にあることを意味し、「何かをしなくてはならなくなるだろう」 となる。そのため、小西(1985)で言われているように動作が行われる時期が不確定という のもあるが、義務付けられる時期も不確定であると考えられる。

(12)

4.2 mustと相 4.2.1 mustと進行相

[must be –ing] は「……しているにちがいない」となる。Mustは陳述緩和的用法であり、 根源的用法で読むことはあり得ない。これは根源的用法では読めないのでなく、その用法が 進行形と結び付かないという法助動詞の規則が原因である。

(30)I thought I must be doing something wrong. (COCA) (私は、何か間違ったことをしているにちがいないと思った) しかし、[must be –ing] のmustの根源的用法を容認する例がある。 (31)Now I must be leaving. Good night. (BNC)

(もう行かなきゃ。おやすみなさい)

(32a)*You must be singing. (澤田 (2006:480) )

(32b)You must be singing when my mother arrives. (澤田 (2006:480) ) (母が到着する時、歌っていなさいね)

(33) As the Nike T-shirt’s slogan implies, even when we're not at work, we must be doing work. (COCA) (ナイキのTシャツのスローガンが暗に示すように、実際に働いていない時でも活動し ていなければならない) (31)のbe leavingは進行の意味でなく、近接未来である。(32b)は、未来の一時点におけ る動作の進行を表す。(33)は不断の動作を義務付けている。(32a)のmustを根源的用法で は見れず、他がそのように見ることができるのは、時の表現の有無に左右されるのではない だろうか。定かな根拠はないが、mustの持つ強い圧力によって動作の進行を義務付けてい るのだから、進行していないとならない時を具体的に述べる必要があるように思われる。つ まり、いつやっていないとならないのかを明確に示す必要があるのである。 なお、[must be –ing]が動作の進行を義務付けることは稀にあるが、法助動詞を進行形 にすることができないため、義務の進行は表せない。義務の進行を表すには(34)から(36) のように、[be having to]とする。

(34) French newspapers are having to respond to the growing demand for advertising space by adding extra pages. (綿貫 et al. (2000:446))

(13)

くてはならなくなってきている)

(35)I am now having to find alternative accommodation. (BNC) (私は今、代わりの宿泊施設を探さなくてはならないところだ) (36)She was always having to think about money. (COHA)

(彼女はいつもお金のことばかり考えていなければいけなかった)

(34)は[be having to] で義務の進行を表し、「……しなければならなくなってきている」 となる。徐々にrespondしなくてはならない状況になっていることを意味する。他にも(35) のように、「今……しなければならないところだ」と、一時的な義務を表すこともできる。[be having to] はnowとの共起はもちろん、alwaysとの共起も多く、継続的進行を表す。(36) は、彼女は考えることを常に義務付けられている。常に考えなければならない状況があるた め、彼女にはかなりの負担がかかっている。よって、[be having to] がalwaysと共起する と、たびたび良くない意味になる。

4.2.2 mustと完了相

[must have V (p.p.) ] は過去の出来事を現在の視点から推測する。この否定形は [cannot have V (p.p.) ] で、(37a) のmustを (37b) のようにcannotに置き換えると、「……はずが ない」となる。

(37a)The crew must have realised something was wrong. (BNC) (その乗務員はどこかがおかしいと気付いたにちがいない) (37b)The crew cannot have realised something was wrong.

(その乗務員はどこかがおかしいと気付いたはずがない)

しかし、(38) のように、[must not have V (p.p.) ] の形式もある。これはmustを否定して いるのでなく、完了不定詞を否定しており、「……していなかったにちがいない」となる。 (38)The editors must not have been looking very carefully at her face. (COCA)

(編集者らは、それほど注意して彼女の顔を見ていなかったにちがいない)

[must have V (p.p.) ] のmustは陳述緩和的用法であることが多いが、根源的用法のmust と完了不定詞が共起することもある。

(14)

eight years. (Declerck (1991:384))

(本大学の終身在職権が認められるには、最低でも8年間は職員でなければならない) (40) Foreign football players must have played in Belgium for at least five years before

they can get the Belgian nationality. (Declerck (1991:384) )

(外国人サッカー選手がベルギー国籍を取得する前に、最低5年間はベルギーでプレー していなければならない)

(41)Applicants must have graduated from high school. (安藤 (2005:311) ) (志願者は高等学校を卒業していないといけない) 根源的用法の [must have V(p.p.)]を使うには、何かしらの基準点が設けられていないと いけない。つまり、「何かをするには、そこまでにしておかなければならない」となるので ある。(39) は、「終身在職権が認められる」ことを将来的な基準とし、それには「最低でも 8年間は職員である」ことが義務付けられている。(40)は「ベルギー国籍を取得する」こと を将来の基準とし、そこまでに「最低5年間はベルギーでプレーする」ことが必要なのであ る。(41)は、同じ⽂の中に将来的な基準がないため不明瞭だが、「本社に応募するためには」 などの基準が設けられているものと推測できる。

5.おわりに

本稿ではmustの意味、用法について包括的に述べたいという当初の目的は達成できたが、 紙面の関係上、まだ議論の余地が残る箇所も多くある。よって、各項目を精査して細部を深 く掘り下げることを今後の課題として挙げ、本稿の結びとする。

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参考URL:

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辞書類:

『ジーニアス英和大辞典』大修館書店 (2001)。

(16)

A Study of must

MITSUISHI, Naoto

Abstract

The purpose of this paper is to clarify the meaning and usage of must by tracing the etymology of the word. It derives from mōste in the Old English period. Mōste is a past form of mōt, which means ‘be free to’ or ‘have room to’. Although mōste is a past form, it is used in the present tense, and therefore this is a subjunctive mood. That is to say, a sentence where must is used means that you have room to do something, but you have not done it yet, so it is necessary that you should do it. From this derivation, it can be concluded that must comes to express ‘necessity’ and includes a speaker’s subjectivity because of an modal auxiliary verb.

参照

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