企業担保制度とその法的構造 : 新財団抵当制度の
立法的課題に関する検討 (東洋大学法学部創設50周
年記念号 第50巻第1・2合併号)
著者名(日)
小林 秀年
雑誌名
東洋法学
巻
50
号
1・2
ページ
1-24
発行年
2007-03-10
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000605/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja企業担保制度とその法的構造
新財団抵当制度の立法的課題に関する検討
イ・林
秀
年
一 一一 三 四 はじめに 資本主義の発達と財団抵当制度 財団抵当制度から企業担保法へ ﹁報告書﹂の検討 はじめに 産業経済の発達には、各種企業の維持そして発展が企図されなければならないのである。 の血液ともいうべき資金の獲得についてあらゆる法的工夫がなされる必要性があることは、 ろ・つ。 東 洋 法 学 そのためには、企業 多言を要しないであ企業担保制度とその法的構造 二 わが国では、﹁借入れ﹂がこの資金の調達において重要な役割を果たしており、伝統的に金融機関は不動産を担 保とする融資を中心として与信を行ってきたことから、バブル崩壊後は、不動産担保にウェイトを置いた融資は 頭打ちの状況になり、企業は担保に提供できる資産不足に伴い資金調達が困難になるという問題が顕在化してい ︵−︶ ると指摘されるに至っている。このような状況の下、企業による新たな資金調達手法の発展に資する担保制度の ︵2︶ 見直しに関する報告書︵案︶︵以下、﹁報告書﹂という︶が、平成一四︵二〇〇二︶年に公表されるに及んでいる。 わが国の担保制度は、債権の担保としての物権法の視点からすると、担保の客体においては物権確定主義が固 執されることから、常に変動する集合物担保は否定されている。しかしながら近代経済取引の発展は、必然的に 信用の拡大を伴い一物一権主義を崩壊させたばかりでなく、有体財産中心の集合物すなわち確定的集合物︵例え ば、財団担保︶から、有体無体の財産権ばかりでなく事実関係をも包含し目的物が絶えず変動する集合体すなわ ︵3︶ ち企業それ自体の担保化にまで到達するに至っているのである。 そこで、本稿においては企業担保制度の沿革とその法的構造を概観して、﹁報告書﹂を検討することにする。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ 西田章﹁企業法制研究会︵担保制度研究会︶報告書の概要1﹁不動産担保﹂から﹁事業の収益性﹂に着目した資 金調達へー﹂金融法務事情一六六六号一三頁。 経済産業省経済産業政策局長の私的研究会である企業法制研究会︵担保制度研究会︶からの報告書︵拝G一\\墾巧名ド ヨ8ぬoむ\お8辞\妻霞件88R\一昌α霞昏巨︶、新しい担保法の動き別冊NBL八六号一八五頁以下。 水島廣雄﹁イギリス浮動担保の素描︵企業担保の理論︶﹂中央大学七〇周年記念論文集四六頁︵昭和三〇年︶、同・
増補特殊担保法要義︵企業担保法制理論︶八二頁︵平成三年︶所収、 和四三年︶。 我妻栄・新訂澹保物権法︵民法講義皿︶七頁︵昭 二 資本主義の発達と財団抵当制度 各国における企業担保制度の形成そして発展は、近代資本主義経済の発達との相関関係を見ることができる。 しかし、そこには各国において法律上の固有の間題があり、その克服あるいは調和という難題が伴ったのである。 ︵4︶ 例えば、ヨーロッパ大陸諸国において企業の担保化を実現することは、理論上まさに至難の業であったのである。 それでは、わが国はどのような事情から企業の担保化が法的に承認されてきたのであろうか。以下に、概観す ることとする。 ︵1︶ 財団抵当法制定前の抵当制度の概要 民法施行前で抵当制度を規律した主なものとしては、明治六年布告一八号地所質入書入規則がある。この規則 は地租改正実施の必要上すなわち質入書入の法則を明らかにすることにより地券の付与に寄与することを立法理 ︵5︶ ︵6︶ 由として、非占有担保形態︵抵当︶を﹁書入﹂として認め、これに物権的効力を付与したのである。 明治三〇年代になると生産資金調達のための抵当利用に着目し始めるが、抵当制度をそのように形成すること ︵7︶ については明治民法の制定ではあまり見られない。例えば民法起草者の一人である梅謙次郎は、﹁抵当権ハ不動産
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企業担保制度とその法的構造 四 ノ担保中最モ頻繁且重要ナルモノニシテ其制宜シキヲ得レハ為メニ信用ノ発達ヲ助ケ其制宜シキヲ得サレハ為メ ︵8︶ 二信用ノ奎塞ヲ来スカ如ク経済上二大関係ヲ有スルモノナリ﹂と言うも、抵当制度の欠陥すなわち工場施設等の 生産手段を効果的に担保化しえないことから、民法典制定の七年後に財団抵当法の制定を必要ならしめたのであ ︵9︶ る。 なお、抵当権のあり方について民法典制定後の立法あるいは判例は、抵当権の目的物の範囲の拡大、抵当権の ︵−o︶ 流通性確保、根抵当の承認を中心とする附従性緩和の方向、という点で発展してきたのである。 ﹁抵当権の目的物の範囲の拡大﹂を換言すれば、動産質権の設定者が公示方法として目的物の占有を移転する ことを不便として占有に代わる公示方法として考案された第二の制度である、企業施設を構成する動産の登記ま たは登録である。その法的構造としては、従物理論の進展、集合物理論の進展、動産の不動産化という三つの方 向を指摘することができる。 従物理論の進展とは、企業施設の基礎となっている個々の不動産を基盤として、それに付属する動産を一体と してその不動産の運命に従わしめる方向であり、例としては工場抵当が該当する。集合物理論の進展とは、特定 の企業施設を構成する多くの不動産と動産をコ個の不動産﹂ないしコ個の物﹂とみなして、抵当権の客体と する方向であり、例としては各種財団抵当が該当する。動産の不動産化とは、個々の動産について登記または登 録の制度を設けて、抵当権の設定を可能とする方向であり、例としては農業用動産の抵当権が該当する。
︵2︶ 各種財団抵当法の制定 財団抵当制度の制定には、二つの原因が存した。その一つは、民法典施行後、日清そして日露の戦争を通じて、 わが国の経済はにわかに発展し、特に綿糸紡績を中心とした企業は著しくその規模の拡大を試み、銀行信用は激 増した結果、抵当対象は土地から工場に移ったのであった。しかし、これに対処すべき抵当制度が工場施設の有 効な担保化に対して無力な状態であったことから、経済界は抵当権の目的物に関する民法典および登記法の不備 について補充改善することを望んだのであった。 その二は、日清戦争後、産業は勃興したが同時に金融資本に欠乏していたのである。そこで資金を求める企業 者たちは、豊富で金利の安い外資に着目したのであるが、外資導入に関する外国人の土地所有権および抵当権の ︵11︶ 享有能力の間題と、社債に担保を附しえないことの間題がクローズアップされたのであった。 すなわち、日清そして日露の戦争を通じて日本経済はにわかに発展したことにより、鉄道や紡績業を中心に経 済界は、低金利で豊富な外国資本の導入の必要に迫られる一方、綿紡工業の実業家たちは﹁抵当の機械にも相当 の価格を附し評価されること﹂を始めとして抵当制度に関して行った建議要望は多くあり、工業分野における生 ︵12︶ 産信用への要望は十分に高まっていた。また、民法が制定された明治三一年頃から旺盛となってきた鉄道建設の 資金需要と外資導入の促進間題とが関連して、鉄道抵当に関する法案の起草が促進され、あわせて、担保附社債 に関する信託制度の移入も関連したのであった。しかし、これらの要望に応えるためには次の点において間題が 存在したのである。
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企業担保制度とその法的構造 六 わが国の民法は大陸法系の流れをくんでいることから、独立する物の集合体の上には一個の独立した所有権は ︵13︶ 成立しない︵一物一権主義︶という原則が存在している。そして、従物理論から、工場に属する土地または建物 に抵当権を設定した場合に工場に属する土地または建物に備え付けられた機械・器具等の動産に抵当権の効力が ︵14︶ 及ぶかという間題がある。さらに、工場に属する土地または建物に備え付けられた機械・器具等の動産に質権を 設定した場合には、企業の生産手段を奪うことから、企業にとっては動産質権は利用できない担保制度となるの である。そこで、工場の設備を担保化する方法としては、工場に属する土地または建物については抵当権を設定 し、機械・器具等の動産には譲渡担保権を設定する方法がとられることになった。しかしながら、このような担 保方法は、その設定に多くの費用を要するのみならず、個々に担保権が実行された場合に、企業が崩壊されるお それが生ずるのであった。また、企業を構成する物的設備は相互に有機的に結合されて一体をなしていることか ら、これを単一体︵財団︶として担保の目的とすることが望まれたのである。 これらの要望に伴う新しい担保制度は、経済的担保価値の点からは個々の物に担保を設定するより遙かに優れ ており、法律技術の点からは動産の担保について引渡しという不便を免れるという長所を持つことになる。すな わち、財団抵当は、企業金融における優れた担保形態であるといえるのである。しかしながら、財団の観念は、 一物一権主義に反するのみならず、財団という単一な物を公示するには特殊な方法が必要であることから、これ ︵15︶ を認めるためには特別な法律によらなければならないことになったのである。 また、外債の担保としてドイツ法系の財団抵当制度を導入すべきか、あるいはイギリス法系の浮動担保制度を
採用すべきかが論争されたのである。その結果、立法策として、ドイッ・プロイセンの鉄道抵当法︵のΦ器旨菩R 9Φ切魯器一嘗簿窪一。 。3︶等を参考に、工場抵当法を始めとする三財団抵当法︵鉄道・工場・鉱業︶そして担保附 社債信託法が、明治三八年に制定・施行されたのである。 プロイセンの鉄道抵当法における財団抵当の原理は、以下のようになっている。鉄道︵田ω窪富ぎ目8旨魯ヨ窪︶ または軽便鉄道︵逐Φ旨9ぎ琶8ヨ魯目窪︶企業は認可を得て財団を設定することができ、財団の組成要素は鉄道 総線路︵国魯ロ5葛R︶・鉄道用地︵9§房葺良Φ︶・工作物︵ω碧浮評舞窪︶・地上権︵卑げ富霞①o辟︶、経営管理 上の必要資金・経常的な現金・経営上の債権補助金請求権、鉄道企業者の可動有体物︵なお、この動産は譲渡後 も鉄道用地上にある限り財団構成分子とみなされる︶であり、財団組成物の処分は経営能力に影響のないことが 証明されないかぎり効力を生じないとし、抵当権の登録は鉄道抵当原簿に行い、強制執行・強制競売・強制管理 ︵16︶ については特殊な場合を除いては原則として一般法が準用されているのである。 財団抵当とは、企業を構成する土地・建物、機械・器具等の物的施設はもちろん、権利をも含めてこれらを有 機的単一体として把握し、企業独自の担保価値を各業種の財団抵当法により、財団目録を作成し財団登記簿に記 ︵17︶ 載して抵当にする制度である。この制度は、経済的担保価値の点からみて、個々の動産および不動産の上に担保 を設定するよりも遙かに優れており、法律技術上からも動産の担保についていちいち引渡しをするという不便も ない長所を持っている。 企業の構成物件は企業の種類によって異なっているが、一般的には不動産たる土地・建物、機械・器具・什器・
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企業担保制度とその法的構造 八 商品その他の動産、賃借権、地上権、工業所有権および債権等の財産権、そして雇傭関係等の法律関係ならびに 金融上の信用、技術、暖簾︵グッドウィル︶等の事実上の利益を含んでいる。しかし、財団抵当法における財団 は、右にみた企業財産の全てを以って構成せられるものではないのである。各種財団の組成物件の範囲をどのよ うに定めるかは、財団抵当法において重要な間題なのである。そこには、企業を一体として担保化してその単一 性を維持しようとする要請と、大陸法系に属するわが国従来の法律制度を前提とする限りにおいて担保制度とし て担保の客体につき権利の確定を第一義とすることへの要求において、如何にして調和を図るかということであ ︵18︶ る。結局、わが国現行法制の下では、右の要請はある程度抑制を受けざるを得ないのであって、財団をめぐる法 律関係、とりわけ財団抵当に関する財団の明確化と取引の安全ないし第三者の権利保護とを考慮して、財団の組 ︵19︶ 成物件は法定せざるを得ないのであった。このことは、財団の持つ担保価値の客観性を導き出すために重要なこ ︵20︶ となのである。 ︵3︶ 財団抵当制度の概要 財団抵当制度には、工場財団・鉱業財団・漁業財団・港湾運送事業財団・観光施設財団・鉄道財団・軌道財団・ 運河財団そして道路交通事業財団の九種類があり、﹁不動産財団﹂、﹁物財団﹂そして﹁中間財団﹂の三つに類別す ︵21︶ ることができる。 ﹁不動産財団﹂とは、工場財団を主とする一群で、工場抵当法中工場財団の規定を準用するものであり、工場
財団・鉱業財団・漁業財団・港湾運送事業財団・観光施設財団が含まれる。財団の組成については、組成物︵目 的物︶を任意に選択することができることから任意選択主義あるいは個別主義といわれる。単体としての性格は 弱き財団︵軟性財団︶であり、対抗要件は登記であり、その監督官庁は司法官庁系統で、公示は法務局に備える 各種財団登記簿への登記によっている。そして、その保存登記をもって財団は成立する。この種の財団は事業の 性格から公共性が弱いので強制執行の自由性が認められている。また、一般にこの種の財団は、コ箇ノ不動産ト ︵22︶ 看倣ス﹂ことから、民法・民事執行法等の不動産に関する規定が適用されている。そして、財団抵当の公示方法 ︵手続き︶としては、不動産登記法が適用されている。 ﹁物財団﹂とは鉄道財団を主とする一群で、鉄道抵当法の規定を適用あるいは準用するものであり、鉄道財団・ 軌道財団・運河財団が含まれる。財団の組成については、この種の財団は事業の性格から公共性が強いために、 前述の不動産財団における任意選択主義ではなく、当然所属主義あるいは全部所属主義といわれるように、当該 企業の構成物件が当然に所属して財団の組成物件となり企業の分解阻止が図られている。単体の性格としては、 強き財団︵硬性財団︶であり、対抗要件は登録であり、その監督官庁は行政官庁系統で、公示は監督官庁に備え る各種抵当原簿への登録により、保存登録はなく財団は抵当権設定の認可を以って成立する。一般にこの種の財 ︵23︶ 団はコ箇ノ物ト見倣ス﹂ことから、不動産あるいは動産と見倣されているわけではないので、必要な実体法と 手続法は鉄道抵当法・軌道ノ抵当二関スル法律・運河法に規定されている。 ﹁中間財団﹂とは、道路交通事業財団が該当し、この財団は道路交通事業財団登記簿においてその所有権保存
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企業担保制度とその法的構造 一〇 ︵24︶ 登記をすることにより設定される。また、この財団はコ箇ノ不動産﹂と見倣されており、工場抵当法中工場財 団に関する規定が準用される。つまり、道路交通事業という公共性から種々の特質を備えており、不動産財団と 物財団の中間的性質を有している。 わが国の財団抵当制度は、その多様性において世界にも例をみない発展を遂げてきており、とくに工場抵当法 ︵25︶ はその適用範囲の広範さにおいてわが国独自の制度とされている。 ︵4︶
パパパパパパハパパ
13 12 11 10 9 8 7 6 5 ) ) ) ) ) ) ) ) ) 会におけるカイナート︵内Φ一轟跨︶の提案に対する論議の紛糾、一九二七年第三回ドイツ法曹大会における集合動産 一九二一年バンベルグにおける動産抵当と登録質に関するメルヒオール︵匡Φ一〇霞自︶の提案、一九二六年帝国議 の譲渡担保に対するエルトマン︵男鋤巳○Φ辞ヨ鋤巨︶の理論構成の失敗等は、この理論の困難さを物語っている。 福島正夫﹁日本における不動産登記の歴史﹂法律時報第二四巻第三号八頁。 福島正夫・清水誠﹁日本資本主義と抵当制度の発展﹂法律時報第二八巻第一一号四頁。 清水誠﹁財団抵当法﹂講座 日本近代法発達史4 一〇〇頁以下︵昭和三三年︶。 梅謙次郎・訂正増補 民法要義 巻之二物権編︵復刻版 明治四四年版︶四九八頁︵昭和五九年︶。 詳しい研究としては、清水誠﹁明治三八年の財団抵当法について﹂私法第一七号七八頁以下参照。 我妻栄編著・判例コンメンタール皿担保物権法二〇九頁以下︵昭和四三年︶。 清水・前掲注︵7︶一〇九頁。 水島・増補特殊担保法要義八八頁、福島・清水・前掲注︵6︶六頁。 我妻・新訂澹保物権法二五九頁、於保不二雄﹁附加物及び従物と抵当権﹂民商法雑誌二九巻五号一頁以下、林良平 ﹁抵当権の及ぶ範囲−従物﹂民法判例百選1︵第三版と八二頁以下︵平成元年︶、斎藤和夫﹁抵当権の及ぶ範囲− 従物﹂民法判例百選1︵第五版︶一八O頁以下︵平成一三年︶、湯浅道男﹁抵当権の効力の及ぶ範囲﹂星野英一編民︵14︶ パ ハ 1615 ︵17︶ ︵18︶ ︵19︶ 法講座3 四七頁以下︵昭和五九年︶等。 この間題に関する最近の研究としては、秦光昭﹁工場抵当法三条目録・狭義の工場抵当﹂金融担保法講座H巻根抵 当権・特殊抵当一七九頁以下、︵一九八六年︶雨宮眞也﹁工場抵当法三条目録と第三者対抗要件﹂NBL第四九九号 八頁以下、半田正夫﹁工場抵当法三条目録の提出有無と対抗力﹂私法判例リマークス一九九三年︵上︶四頁以下、副 田隆重﹁工場抵当法のいわゆる三条目録の効力﹂判例タイムズ第七八六号五一頁以下、亀田廣美﹁解説﹂判例タイ ムズ第八二一号三八頁以下、小林明彦﹁工場抵当法三条一項の目録の対抗要件としての効力﹂ジュリスト増刊担保 法の判例− 二五四頁以下、湯浅道男﹁工場抵当法三条所定の目録と対抗力﹂金法第二⋮二一号三六頁以下、鈴木 正和﹁工場抵当法三条目録を対抗要件としない判例と担保実務への影響﹂金法第二二一七号八頁以下、関武志﹁工 場抵当法三条一項の目録と抵当権の対抗﹂ジュリスト第一〇二二号一六九頁以下、吉田光碩﹁工場抵当法三条目録 の効力﹂判タ第八〇九号四三頁以下、滝沢幸代﹁最判平六・七・一四﹂判例評釈四三七号二一四頁以下、拙稿﹁工場 抵当法三条目録の効力について﹂遠藤浩先生傘寿記念・現代民法学の理論と課題二九三頁以下︵平成一四年︶等があ る。 水島・増補特殊担保法要義九〇頁。 水島・増補特殊担保法要義五頁、○Φω①9菩R9Φ閃魯器ぎ冨評ΦPぎB一〇卜轟拐け一。 。808Φ蔚菩①吋&Φ団魯苧 Φ営箒律Φpぎ筥謡。冒蒙碧這8︵い菩①良︶参照。 財団抵当に関する詳細な研究としては、水島・増補特殊担保法要義、清水﹁財団抵当法﹂以外では島津一雄・工 場抵当・財団抵当の実務︵昭和四六年︶、江口最・財団抵当法の研究︵昭和一〇年︶、栗栖越夫・信託法・財団抵当法 の研究︵栗栖遇夫法律著作選集第四巻︶︵昭和四三年︶など参照。 島津・前掲注︵17︶一四五頁。企業者側からは、企業に属する一切の財産的価値のあるものを組成物件とするこ とが望まれるであろうし、また、その債権者側からも、抵当権の保護を図り得る限りにおいて企業の単一性を維持し つつ、その担保価値を高めるもの一切を財団に包摂させるべきことが強調されるであろう。 水島・増補特殊担保法要義二二〇頁、島津・前掲注︵17︶一四五頁。 東洋 法 学 一一
︵20︶ ︵21︶ ハ パ パ パ 25 24 23 22 ) ) ) ) 秦光昭﹁財団抵当と企業担保﹂金融法務事情七〇〇号四三頁。行政解釈により、﹁工場﹂の概念を、たとえば牛乳 道路交通事業抵当法八条。 鉄道抵当法二条三項。 工場抵当法一四条一項。 思われる。 いか。そこで、﹁不動産財団﹂﹁物財団﹂という名称よりも﹁非交通財団﹂﹁交通財団﹂という言い方が妥当であると ﹁物﹂は﹁不動産﹂と﹁動産﹂から構成されているのであるから、概念から言えば妥当な名称とはいえないのではな 財団をコ箇の不動産﹂あるいはコ箇の物﹂と見倣すことから、﹁不動産財団﹂﹁物財団﹂というのであろうが、 値の客観性を導き出すために重要なことである。 拙稿﹁企業担保制度の客体﹂東洋法学二七巻二号︵昭和五九年︶五〇頁以下参照。なお、これは財団の持つ担保価 企業担保制度とその法的構造 一二 処理施設・給食施設・石油会社の油槽所・鶏舎に備付の機械器具・液化石油ガス基地等にまで拡張して、利用可能企 業を拡大している。工場抵当法一条参照。 三 財団抵当制度から企業担保法へ しかしながら、企業を担保目的物とする唯一 び近代的経営形態の企業の担保制度としては、 の制度とされていた財団抵当制度も、企業担保としての本質およ ︵26︶ 幾多の欠陥を提起するに及んだのである。 ︵1︶ 財団抵当制度の問題点 その一は、財団抵当制度においては担保の客体たる企業の全体を把握するについて不十分な点である。これは、
財団組成の要素について選択主義を採用する工場財団の一群も当然所属主義を採用する鉄道財団の一群もとも ︵27︶ に、財団抵当制度が企業の全体を担保の客体として把握する理想とは隔たりがあるのである。財団抵当制度は企 業を担保する制度であることから、担保の客体は可能な限り企業の実体を把握できるように組成できるものでな ければならないのである。 その二は、財団の組成については、業種的に制約されていることである。この業種による制約は、複雑多岐に わたる産業機構を前提とする限り九種類の財団抵当制度の範疇に入ることのない幾多の企業は新たな財団抵当法 が制定されない限りその途がないのである。すなわち、広く企業の全部が利用することができる企業の担保制度 ︵28︶ とは言い難いのである。仮に新しい財団抵当を創設することができたとしても、やはり業種的な制約を受けざる をえないことは、この制度の性格からくるものであって避けられないところである。 その三は、財団の組成や管理のために煩項な手続きと高額な費用が必要なことである。財団抵当制度は、厳格 な大陸法的制約のもとに創設され発達した制度であることから、担保の対象が企業にあるとしても帰するところ は、企業を構成する個々の物を担保の客体とするのであるから、とくに企業規模の大きな近代的大企業において ︵29︶ は、実際間題として煩に耐えないものがある。 このような事情から経済界からは、財団抵当制度の根本的あるいは簡便にして合理的な新しい企業担保制度が 強く要望されたのであった。とくに昭和二四年一〇月経済団体連合会から、経済界の正式の意見として﹃財団組 成手続の簡素化に関する要望意見﹄が提出されたのであった。
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二二企業担保制度とその法的構造 一四 ︵2︶ 企業担保法の概要 外国においては、企業の担保価値の拡大と手続きの簡素化を図る企業担保制度として、イギリスのコ8賦轟 o冨おoやアメリカの国碧ぎ什日○旨題鴨が既に一般的に採用されていた。わが国においては、財団抵当制度の欠 陥に鑑みてか東洋拓殖株式会社法︵明治四一年制定︶により当該会社が発行する社債について、いわゆるゼネラ ル・モーゲージの制度が用いられていた。この制度は、政策的な見地から特別な法律によるもので特別の会社に ︵30︶ 関してのみ認められたもので、約定により設定せられる担保制度ではなかった。 経済界では、﹃財団組成手続の簡素化に関する要望意見﹄を提出するとともに、財団抵当制度の欠陥を是正す べき担保制度として、主としてイギリスの田8に轟o冨茜oを中心に検討を進め、通商産業省︵現・経済産業省︶ ︵31︶ ︵32︶ ではコ般担保法案要綱﹂を作成し、法務省では現行財団抵当制度の利用上の便宜を図るとともに、民事局参事 ︵33︶ 官室試案として﹁企業担保法案﹂を発表したが、実現をみるに至らなかった。 産業界では昭和二五年八月に日本製鉄株式会社法が廃止されたのに伴い、その第二会社として発足した八幡製 鉄株式会社・富士製鉄株式会社については時限的に両者の発行する社債ならびに日本開発銀行の借入金に対して ゼネラル・モーゲージの効力が認められたのであった。この時限立法の失効後の間題と関連して経済界から新た な担保制度の要望とが相侯って、法務省はイギリスの浮動担保やフランスの営業質等の外国における担保制度の ︵34︶ 研究調査を行い、イギリスの浮動担保を範にした企業担保法を昭和三三年︵法律一〇六号︶制定させたのである。 なお、この昭和二〇年代後半から三〇年代初期にかけての物権法における重心的課題は﹁財団抵当から浮動担保
︵35︶ へ﹂ということができよう。 企業担保の出発点は、以下の点である。抵当権の本質は交換価値にあると説かれており、その前提には物権確 定主義がある。しかし、この物権の確定性は、信用付与の面から考察すると、絶対的に必要なこととはいえない のではなかろうか。経済人は、通常の営業過程においては放出財産の価値以上の対価を取得するのであり、その 新しい対価は当然担保の対象となるべきなのである。そこで与信者︵債権者︶は、企業が順調であるかぎり、﹁物 の特定﹂否﹁価値の特定﹂をも必要としないであろう。この場合に必要なことは、﹃つねに一定量の価値が優先的 ︵36︶ に把握できることの保証ないしは裏付けの存することであろう﹄。 ︵37︶ この企業担保法の立案に際しては、二つの目的があった。すなわち、近代的大企業にして信用度の高い企業に 対し現行の財団抵当制度に伴う手続き煩雑の弊を省き、そしてそれに代わるべき簡素な担保制度を創設して社会 的にその合理化を図ることであった。そして、担保の客体の範囲を拡大して企業を構成する物的財産・賃借権・ 特許権等の工業所有権のような諸々の権利を含めた企業の総財産を、通常の営業状態において浮動する姿でこれ を担保の目的とすることによって与信力を強めることであった。 そこで企業担保権の客体は、株式会社の総財産であり︵企業担保法一条一項︶、企業の運営過程においてその 内容は、変動する状態における総財産である︵企業担保法二条一項︶。このことは、企業を生きたままの状態に おいて担保化するうえで必要なことであり、この担保制度の特異性を示すものである。 ︵38︶ 企業担保権は物権とする︵企業担保法一条二項︶ことから、民法と比較した企業担保法の特質を指摘すると、
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企業担保制度とその法的構造 一六 ①企業担保は約定によって設定されるが︵企業担保法一条・三条︶、民法の一般の先取特権は法定となっている︵民 法三〇三条︶。②企業担保は集合物担保であるが︵企業担保法一条一項︶、民法は一物一権主義により個別担保で あり、原則として集合物観念を認めてはいない。③企業担保権の客体には浮動性があるが︵企業担保法二条一項︶、 民法は物権確定主義であることから担保の客体にはこの浮動性はない。④企業担保権の設定は公正証書︵要式行 為︶によるが︵企業担保法三条︶、民法の物権変動は意思表示︵意思主義︶のみで効力を生ずる︵民法一七六条︶。 ⑤被担保債権は、、企業担保では株式会社の社債に限っているが︵企業担保法一条一項︶、民法は債権の種類を間 わない。⑥企業担保には信託の法理が適用される結果︵担保附社債信託法二条・四条一項︶、民法と異なり次の現 象が生ずる。すなわち、民法では債権者が必ず担保権者であるが、企業担保については債権者に非ざる者が担保 権者となり、債権者は担保権者ではないのである。⑦優先順位については、対抗要件を具備している民法上の担 保権は設定時期の如何を間わず企業担保権に優先する︵企業担保法六条・七条︶。⑧公示方法については、企業担 保権は企業を担保の目的とすることから人的編成主義により、本店所在地の株式会社登記簿に登記をするが︵企 業担保法六条︶、民法は個別的な担保制度であることから物的編成主義により、所在地の不動産登記簿に登記する。 ⑨登記については、民法は一般に登記を以って不動産物権変動の対抗要件としているが︵民法一七七条︶、企業 担保権の登記は効力発生要件となっている︵企業担保法四条一項︶。 ︵26︶ 水島廣雄﹁企業担保法について﹂綜合法学第一巻二号八一頁以下。
ハ パ パ
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) ) ) ︵30︶ パ ハ3231
) ) ︵33︶ ︵3 4︶ 川出千速﹁企業担保法制定の動向とその間題点﹂商事法務研究四〇号一二頁。 小林英雄・企業担保法︵特別法コンメンタール︶︵昭和四七年︶三頁。 山口貞一氏発言﹁第二八回国会・参議院法務委員会会議録﹂第二二号︵昭和三三年︶七頁以下。﹁八幡製鉄株式会 社の場合、財団を組成するとしたら組成にかかる延べ人員は約五万人、期間は約一年半くらい必要である。費用面で は、総合計は三億二千万から三千万円くらいかかるのである。﹂ 水島廣雄コ般抵当﹂民事法学辞典︵上︶︵昭和四九年︶五一頁以下、柚木馨・高木多喜男﹁担保物権法[新版]﹂ 法律学全集19︵昭和四八年︶一七五頁以下。このゼネラル・モーゲージは、ヨーロッパの一般抵当︵O撃R巴冨8些魯︶ に類似する制度である。一般抵当とは、債務者の現在および将来の総財産から優先弁済を受ける抵当権で、ローマ法 以来、特殊な債権について認められた制度である。この制度は他の債権者を害する虞れがあるために、ドイツ民法や スイス民法はこれを廃して抵当権は現存する特定の財産についてのみ設定できることとしたのである︵これが抵当 権特定の原則である︶。フランス民法は、第二次世界大戦まで一般︵包括︶抵当︵ξ8浮9器鵬9曾巴①︶である法 定抵当権︵ξ8跨9器一謝巴Φ︶を認めていたが、一九五五年の﹁不動産の公示に関するデクレ︵UひR卑身土彗≦R お一讐賦鋤﹃2亘§鼠︷08猷お︶﹂で改められて、現在では公示ならびに特定の原則が採られている。 種々の困難な間題を含んでいたことから、それ以上の具体化をみなかった。 昭和二七年工場抵当法および鉱業抵当法を改正して、抵当権の存しない財団の存続期間の延長および財団の分割 合併の制度を創設した。 この﹁企業担保法案﹂の内容について、産業界は賛成したのであるが、金融界が反対したことにより実現しなか ったのである。詳細は、﹁企業担保制度制定によせる各界意見﹂金融法務事情二七号七頁以下参照。 企業担保法の母法であるイギリス固8試薦o訂おΦに関する代表的なイギリスの著著としては、男㊥始>一匡国夘 Ooヨ冨昌U9斗ホ㎝−︵器且ΦFO琴ωO頃竃肩↓=○閃男且跨寓閑︾網四&囚●霞○丙ω国一〇お︶旧い○ω.○○薫国戸 ↓箒冥ぎo琶Φω○︷竃oα①ヨOo日℃ω昌匿名ミ甲︵酵﹃Φ9おお︶旧卑甲娼国2ZHZO↓0700旨冨身霊名零。 。−︵昏跨 ΦPおおご妻。旨OO¢O餌OOヨ冨昌O訂茜Φω①一−︵一鶏o 。︶などがあり、最近の著書としては、い8一︾○ざ↓冨 東 洋 法 学 一七︵35︶ パ パ パ
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) ) ) 勾Φ8村ヨ9d嘗8困凝傷。日○。日冨葛霊妻G 企業担保制度とその法的構造 一八 。。 。。−︵N。8︶旧ω箋ピ>属ωOZU。閃即国ZO国きαO・一●勾網>! Ooヨもき矯いm零o 。亀−︵80命NOO㎝Φ輿NOO“ご︾出8区ω鋤昌αω出。○○ρO器Φきα冒讐R一巴ωoづOOヨO曽昌蜜一曽霜 ︵㎝島8,89︶などがある。 水島廣雄﹁各国における企業担保制度の概観﹂法律時報第二六巻一〇号四三頁。我妻栄博士は、名著・近代法に おける債権の優越的地位︵昭和二八年︶一八○頁以下で﹁財団担保から企業担保へ﹂と熱心に説かれ、それを受けて 水島廣雄博士が﹁財団担保から浮動担保へ﹂・﹁浮動担保から企業担保へ﹂と考究されたのである。 水島・前掲注︵3︶四六頁以下、同・増補特殊担保法要義八二頁以下所収。 香川保一﹁企業担保法について1制定の経緯と逐条解釈1﹂法曹時報一〇巻六号︵昭和三三年︶四四頁以下。 水島・増補特殊担保法要義二〇三頁以下。 四 ﹁報告書﹂の検討 ︵39︶、︵40︶ ﹁報告書﹂は、不動産担保から事業収益重視への転換の必要性を説いている。 すなわち、わが国の企業における資金調達の現状は、従来の金融機関は不動産を担保とする融資を中心に与信 を行ってきたが、バブル崩壊後は、不動産価格の下落が継続する中で不動産担保に依存した融資は頭打ちの状況 であり、低リスクから高リスクまでのすべてをカバーする資金供給がなされておらず、企業も担保資産の不足に ︵4 1︶ より資金調達が困難という間題が顕在化している。 これに対して、アメリカでは多様な資金調達手法により、企業はその選択肢が与えられていることから、わが 国でもアメリカと同様に多様な資金調達手法が、バランスよく発達することが強く望まれるとしている。そのためのコンセプトとしては、①不動産以外の保有資産を有効活用すること、②事業または資産の収益性に着目する こと、③資金提供者による経営状況の監視である。これにより新たな資金調達手段を考えると、①在庫担保・債 権担保ローン、②流動化・証券化、③プロジェクト・ファイナンスの三類型が考えられる。そこで、①の普及を 図るためには中古市場の整備、担保審査や処分能力の向上・商慣習上の意識改革ならびに動産・債権の担保制度 の整備、②を促進するためには対抗要件の整備の検討、③の普及を図るためにはプロジェクト会社の資産を包括 的に担保化する制度の整備、を進める必要があると指摘している。そして、次の提言をしている。①では公示制 度の創設と執行保全の確実を増すための制度整備、②では債務者が特定されない場合の将来債権譲渡の検討およ ︵42︶ び譲渡禁止特約に関する慣行の見直し、流動性預金への担保設定の検討である。 ③のプロジェクト・ファイナンスについては、わが国では法律上の定義は確立していないが、その特徴はプロ ジェクトを企画したスポンサー会社は事業会社として新規に設立した子会社の借入れに対して保証をしないまた は限定的にリスクを負担するのであって、貸出人としては借入人である事業子会社が生み出すキャッシュフロー ︵43︶ ︵事業収益︶からの回収に依拠するという点にあるとする。そして、この制度は、事業の収益性に重点を置いた融 資手法であり、借入人からは徹底的に担保を徴求するのである。その理由としては、事業の継続に必要なあらゆ る構成要素に関する差押え等による第三者からの権利行使の排除、そして債務不履行に陥った場合でも借入人を 倒産させて、その清算価値としての財産から弁済を受けるためではなく、ゴーイング・コンサーン︵存続会社︶ として事業収益を引き続き確保して、その収入から返済を受けようとすることである。イギリスでは、国8江畠
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企業担保制度とその法的構造 二〇 魯胃鴨がプロジェクト関連資産を全体として担保にとるという目的を達することができ、プロジェクト・ファイ ︵44︶ ナンスの構成の重要なポイントであると指摘する。 これは、固o蝕躍o冨お①が結晶︵o曼ω鈷田鐙賦8︶した場合には、収益管理人︵国Φ8貯R程α匡壁認段︶が 任命され、その職務としては社債権者に対して会社が負っている債務を弁済するために会社の全部または一部の 営業を継続そして更正︵お−oお目冒魯目︶させて、その収益から債務を弁済することもできるのであることか ︵45︶ ら、そのような指摘がなされたのであろうと思われる。 そして﹁報告書﹂は、﹁包括的な資産の担保化に関連する法制度について﹂において、包括的な資産の担保化に ついては、プロジェクト・ファイナンスを行う際には事業資産を一つのまとまりとして、担保権を設定すること が望ましいことから、﹁財団抵当制度の見直し﹂︵﹁事業設備抵当︵仮称︶﹂制度の創設と﹁事業設備財団︵仮称︶﹂ の創設︶と、コ定の設定者が保有する全資産が担保対象となる制度﹂︵新しい包括的担保制度の創設︶について 提案をしている。その一方で、包括的な担保制度としての現行の財団抵当制度と企業担保制度については、とも ︵46︶ に実務上の不便が指摘されるとしている。 すなわち、財団抵当制度は、①一定の事業者にしか利用できない制度設計であることから、商業・サービス業 等に属する企業はこの制度を利用することができない、②財団の組成物件が法定されていることから、工場財団 抵当でも工業所有権以外の知的財産権︵著作権等︶を財団に組み入れることができない、③財団組成に際しは核 となる不動産等が必要であるが、核となる不動産等が存在しない場合︵通信ケーブル設備等︶は同制度を利用す
ることができない、④大規模な企業施設における財団組成と管理が煩項であり、高額な費用が必要であること、 という問題点がある。企業担保法では、被担保債権が社債等に限定されていること、および担保権の優先権も低 いのでプロジェクト・ファイナンスにおける利用には適していない。そこで、﹁事業設備抵当︵仮称︶﹂制度の創 設により、﹁事業設備抵当﹂とは、ある事業の用に供する一体的な設備を﹁事業設備﹂として、﹁事業設備﹂に属 する土地に設定された抵当権の効力を附加一体物のほか、﹁事業設備目録﹂に記載された動産にも及ぼす制度で、 この目録には事業設備に属し、これに備え付けられる動産を記載するとしている。 この法的構造は、工場抵当法二条以下で規定される﹁第三条による工場抵当﹂といわれる工場抵当権と類似し ︵47︶ てることから、この延長線上の制度といえよう。工場抵当法は、第二条から第七条において工場抵当、第八条以 ︵48︶ 下で工場財団について規定しており、財団を組成しえない工場抵当と工場財団とは法的に差異があるのである。 つまり、この事業設備財団︵仮称︶制度は﹃従物理論の進展﹄であり、財団の法的構造からすると現行財団抵当 制度が﹃集合物論の進展﹄という位置づけであることから、この種の財団抵当を認めることにより、一口に財団 抵当制度と言った場合に、その法的構造が異なる財団抵当が同一制度内に存在するという現象が生ずる点に問題 はないのであろうか。 ﹁事業設備財団︵仮称との創設により、﹁事業設備財団﹂とは、単一または複数の事業設備の構成要素︵含む 著作権︶をもって組成することができるものであり、この財団はコ個の不動産﹂と見倣されて抵当権の目的と なる。財産目録への記載方法として、新たに概括的な記載や電子的手法の活用により、目録の作成・変更手続き
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二一企業担保制度とその法的構造 二二 の簡素化を図るべきであるとしている。そして、事業設備抵当権の実行方法として、強制手続きのほかに事業財 団そのものを管理して、事業財団の収益から抵当債務の弁済をなすことを可能とするのが相当であるとする。事 業設備の概念で既存の財団抵当制度に該当しない企業をすべて網羅することができるならば、﹁事業設備財団﹂ の意義は大いにあるであろう。しかし、そうでないならば、従来の財団抵当制度の業種的制約の問題点は依然解 消されないこととなる。財団組成の構成要素に著作権を含むことは、担保価値を高めることができることから肯 ︵49︶ 定することができる。財団目録の簡素化は、その方法で実現可能であれば肯定することができる。企業の強制管 理について、兼子一博士は、企業の強制管理という観念は普通の強制執行にはなく鉄道財団のような特別のもの のみにあるのであって、一般的に企業の強制管理が可能であるという方針で行えるものかどうか疑間であるとす ︵50︶ る。近江教授はプロジェクト・ファイナンスにおいては、強制管理が最も重要な要素になるであろうとして、そ ︵51︶ の導入を評価しているが、公共性の弱い不動産財団に強制管理は如何がなものであろうか。因みにイギリスの ︵52V 国8江畠o訂お①はわが国の会社更生法と破産の中間的なものといわれている強制管理であるが、わが国の企業 担保法では強制管理は認められずに一括競売か任意売却の方法によっていることから、この点についても検討す る必要があろう。 この﹁報告書﹂は、近江教授が指摘するように﹃プロジェクト・ファイナンスの実行力を担保するための手法 ︵53︶ としての担保制度の改革提言﹄であり、従来の民法上の﹁担保﹂概念とは異なる担保制度であるといえよう。新 財団抵当制度の﹁事業設備財団︵仮称︶﹂の法的構造は、現行の財団抵当制度が﹁集合物理論の進展﹂により認め
られた企業の担保制度であるのとは異なり、﹁従物理論の進展﹂により認められた工場抵当権の延長線上にある 制度であるといえよう。そして、プロジェクト・ファイナンスにおける担保の範囲を包括的な担保とする方法は、 企業担保法あるいはイギリス法の固8鼠轟畠巽鷺の制度を活用しようとするものである。すなわち、この制度 の法的構造は、木に竹を接ぐ制度であるという感があることも否めないであろう。しかし、プロジェクト・ファ イナンスを念頭に置いた新担保制度を考究する場合には、企業担保法あるいはイギリス法の固8江躍9巽鵯の 制度を活用することが必要であると思われる。このことは、時代の流れが現行財団抵当制度とは別の新制度を待 ち望んでいることを物語っているともいえるのではなかろうか。 ハ パ パ ハ パ 43 42 41 40 39 ) ) ) ) ) ︵44︶ ハ 45 ) ︵46︶ 前掲注︵2︶参照。 西田・前掲注︵1︶二二頁以下。 西田・前掲注︵1︶二二頁。 西田・前掲注︵1︶一四頁ないし一八頁。 江口直明・豊原信治・塚谷昭子﹁日本におけるプロジェクト・ファイナンスの法律的側面︵上︶﹂金融法務事情一 五六五号三六頁以下。 江口直明・豊原信治・塚谷昭子﹁日本におけるプロジェクト・ファイナンスの法律的側面︵下︶﹂金融法務事情一 五六七号七五頁。 一ψ勾閃.勺︾い竃国戸Ooヨ冨昌冨零おρ認。︵器&①α。○冨ω○山竃H↓↓頃○菊悶&島琴因︾嘱鋤&国匙○沁ω南 一雪①γ︾コ↓○∪国︾竃四昌α中勾hく︾竃ざOo日も餌p望U四ゑωNo 。−︵一㎝跨Φρ一〇謹︶● 西田・前掲注︵1︶一九頁。
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︵47︶ ハ 48 ︵49︶ ︵50︶ パ パ