ことばに現れる日本文化の志向性
著者
三宅 和子
著者別名
Miyake Kazuko
雑誌名
日本文学文化
号
2
ページ
8-14
発行年
2002-06
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00012210/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaここでは「 文化」をきわめて広義な意味で使っている。 歌 舞伎や能のような伝統文化、 室町文化・元禄文化のような時 代ごとに花開いた文 化の総称をさしているわけではなく、 敢 えて定義すれば、「その 人間集団の構成員の共通の価値観を 反映した、 物心両面に わた る活動の様式(の総称)、またそれ によ っ て創り出されたもの 」 ( 「 新明解国語辞典 」 ) に近 い 。 筆者は、 ことばは使用される社会・文化との関連を抜きに は解明 で きないという立場で現代語を研究している 。 具体的 には、 ことばの使いガに反映された社会・文化の姿を追及す るととも に、 こと ばの特徴が私たちの思考や行動にどのよう な影押をぴえているかを芳える その研究方法や視点のもち 力はおのずと、 ことばの体系のみを論しる立協(例えば従米 の文法研究の多く)や、 ある時代の語に住�点を当て語義を研 究するような立楊とは楳なる , ことばと文化の研究 (l-ところで、 日本人ほど自国を論じた也物が好きな国民は いないといわれる。 これまでにも膨大な数の「日 本文化論 」 や「日本人論」の著作や 論文が巾耳かれている。 しかしこの よ うな思索のなかには、 客観的な分析や緻密な比較の上に行 わ れてき たとはいいがたいものもあり、 これらが人口に腑炎さ れると、 とか く「日本文化特殊論」や単純な「日本文化の型」 などを生み出し安易に解釈されることが多かった。 署の研究の根底にも「日本語とは:・日本人とは…日本と は」という問いがあり、 ややもするとこの 安易な落とし穴に 足を踏み入れる危険を卒 んでいる。箪者は、「日本文化論」 などで使われるキーワード(例えば「恥の文化」「集団主義」 「タテ社会」「義理と人情」など)が重要視されるに到る分析 過程を大切にしたい と 考えている 。 そこから文化論へと短絡 的に結論を急ぐのではなく、 ことばの使われ方から垣問見え る日本人の 、 社会 ・ 文化を背娯とした志向性を探る 。 私たち の周辺の一見現代的で皮相的な現象のなかにも、 歴史のなか