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コンバージェンス会計と監査 : 在外子会社の会計処理統一を巡る課題

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Academic year: 2021

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(1)コンバージェンス 会計と監査   − 在外子会社の会計処理統一を巡る課題 − 経営戦略研究科教授(会計専門職専攻) 吉. 川 郁 夫. 在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い  2009年(平成21年)3月期決算から、企業会計基準委員会実務対応報告第18号「連結財務 諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」が適用され、連結財務諸表 作成の基礎となる在外子会社の財務諸表は国際財務報告基準(IFRS = International Financial Reporting Standards)1 ま た は 米 国 会 計 基 準(USGAAP = Generally Accepted Accounting Principles in the United States)に準拠して作成するとともに、のれんの償却など指定された 6項目2 については連結のために我が国会計基準へ修正することが求められている。本稿は、 我が国会計基準のコンバージェンスが進む中、今回の当面の取り扱いに関して生ずる会計と 監査の実務上の課題を概説するものである。  . 在外子会社の会計処理統一に関するこれまでの経緯  1994年に行われた連結財務諸表制度見直しにより、親会社と子会社の会計処理は「できる だけ統一しなければならない」から「原則として統一しなければならない」と改められた。 連結財務諸表は、子会社等を含む企業集団を一つの会社のように考え、その財政状態や経営 成績に関する情報を提供するものである。したがって、企業集団を構成する親会社と子会社 は、同一の性質の取引について同一の会計処理を採用しなければならないのは当然である。  しかし、諸外国と我が国の会計基準が相当程度異なっていた当時、日本の親会社が採用す る会計処理を在外子会社に求めることは実務上困難であり、また、我が国で認められない在 外子会社の会計処理を親会社が採用することは不可能であった。このため、日本公認会計士 協会は、監査委員会報告第56号(1997年12月)3 を公表し、「その子会社の所在地国の会計基 準において認められている会計処理が企業集団として統一しようとする会計処理と異なると きは、当面、親会社と子会社との間で統一する必要はない」とする監査上の取扱いを定めた。 爾来、我が国の連結財務諸表では、在外子会社について親会社と異なる会計処理の採用が認 められてきた。 1 . 旧称の「国際会計基準」と呼ばれることも多い。後述のとおり、2009年6月の企業会計審. 2 . のれんのほか、退職給付会計における数理計算上の差異、研究開発費、投資不動産の時価. 議会中間報告も国際会計基準としている。国際会計基準の略称はIAS。 評価、会計方針の変更に伴う遡及修正、少数株主損益に関する会計処理がある。 3 . 企業会計基準委員会実務対応報告第18号を受けて2006年に改正され、監査・保証実務委員 会報告第56号となっている。. 6.

(2) 当面の取扱いへの対応  実務対応報告第18号は、連結財務諸表作成の基礎となる在外子会社の財務諸表について IFRSまたはUSGAAPへの準拠を求めている。しかし、米国に所在する子会社は原則として USGAAPで財務諸表が作成されるため、この取扱いによって特段状況が変わるわけではない。 他方、米国以外に所在する子会社は、これまで所在国の会計基準(現地基準)に準拠した財 務諸表を作成してきた。したがって、以下、米国以外の国に所在する子会社がIFRSを適用す る場合に生ずる課題について検討する4。  実務対応報告第18号への対応策としては、次のような方法が考えられる。  1.在外子会社が作成する財務諸表をIFRSに準拠したものに変更する。または、  2.在外子会社が作成する財務諸表は従来どおりとし、IFRSに準拠するために必要な修正 を日本で行う。さらに、  3.このいずれの方法を採用した場合であっても、日本基準への修正6項目については日 本で追加修正を行う5。  このような対応に関わる課題を要約すると図1のようになる。. 図1. IFRSへの修正. IFRS 基準 財務諸表 (海外子会社). 現地国基準 財務諸表 (海外子会社). 1.現地で財務諸表をIFRS基準へ変更 ・現地の法制上認められるか ・連結パッケージでのみ修正するか ・現地監査人の監査意見が得られるか. 日本基準への 6項目の修正 日本の連結用 財務諸表 (海外子会社). 3.日本の連結作業で6項目を修正 ・どのように修正項目を把握するか ・修正内容の正確性をどのように確かめるか. 2.日本で現地基準の財務諸表をIFRS基準に修正 ・どのように修正項目を把握するか. 4 . 米国以外の国に所在する子会社が米国会計基準を採用することは通常考えられない。. 5 . 米国会計基準に準拠した米国子会社についても、この修正は必要である。. 7.

(3) 現地で財務諸表をIFRSへ変更することの課題  表1は、主要国において、非上場会社の個別財務諸表にIFRSの採用が認められるかどうか を要約したものである。 出典:ttp://www.iasplus.com/country/useias.htm. 表1. 非上場企業の個別財務諸表のIFRS準拠 不可. 現地基準が IFRSとほぼ同等. 可. ドイツ、フランス、ベルギー、スイス、 イギリス、オラン スペイン、ポーランド、ルーマニア、 ダ、イタリア、ルク チェコ、ポルトガル、スウェーデン センブルグ 台湾、韓国、インドネシア、タイ、マ レーシア、インド、ベトナム. 中国、香港、シンガポール、 オーストラリア、フィリピ ン、ニュージーランド. カナダ、メキシコ、アルゼンチン、ブ ラジル 南アフリカ.  表1が示すように、上場会社の連結財務諸表にIFRSの採用を義務付けているEU諸国でも、 相当数の国が非上場会社の個別財務諸表にIFRSの採用を認める状況には至っていない。この ような地域に所在する子会社が財務諸表をIFRSで作成するためにはどうすればよいのか。現 地基準の財務諸表とは別に、連結のためにIFRS準拠の財務諸表(あるいは、連結パッケー ジ)を作成するとすれば、追加の作成コストと監査コストの問題が生ずる。また、現地監査 人がそれに監査意見を表明してくれるかという問題もある。  . 日本で現地基準の財務諸表をIFRSに修正することの課題  この方法を採用した場合、在外子会社の財務諸表をIFRSに準拠させるために修正すべき事 項を、日本の親会社がどのようにして把握するのか。世界各国の会計基準とIFRSの相違が細 部にわたって日本で把握されているわけではない。したがって、現地の経理担当者や監査人 に相違点の調査を要請しなければならず、また、差異が把握され重要な差異について修正す べき金額が現地子会社から報告されたとしても、親会社監査人は当該金額の正確性について 心証を得るため現地監査人に協力を求めることが必要になる。さらに、新たな相違点が発生 していないかフォローアップするために、毎決算期において同様の作業が必要である。  . 日本基準への修正6項目に関する課題  日本基準への修正が求められている6項目について、現地でどのような会計処理が採用さ れているか調査する必要がある。現地でIFRSに準拠した財務諸表が作成されたとしても、例 えば、IFRSでは退職給付債務にかかる数理計算上の差異について、所謂、回廊(コリドー). 8.

(4) 方式を採用するかどうかの選択が可能であり、それが採用されているか否かによって日本で の修正内容は異なる。したがって、現地で採用された会計処理の調査は欠かせない。調査の 結果、相違内容が把握されれば、現地基準の財務諸表を日本でIFRSに修正する場合と同様に、 修正すべき金額の報告を現地子会社に求め、また、親会社監査人は当該要修正額の正確性に ついて現地監査人に協力を求めることが必要である。  . コンバージェンスからアドプションへ  2009年6月、企業会計審議会は「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報 告)」を公表、連結財務諸表に関してコンバージェンスからアドプションに舵をきり、一定の 条件を満たす会社に2010年3月決算期からIFRSの任意適用を認め、さらに、2015年又は2016 年からのIFRS強制適用の可否を2012年に判断するとした。  我が国でも連結財務諸表にIFRSが採用されれば、在外子会社の会計処理統一問題が解決す るかのような期待を人々に抱かせる。しかし、EU諸国に所在する子会社であっても、前述の ように現地法の関係から所在国の会計基準が適用され、すべての子会社の財務諸表がIFRSに 準拠して作成されるわけではない。  さらに、この中間報告は連結財務諸表のみにIFRSへの移行を認め、個別財務諸表について IFRSの適用を認めない。したがって、連結財務諸表をIFRSで作成することを義務付けられる 上場会社などの国内子会社は、国内基準に準拠した個別財務諸表を作成するとともに、親会 社が作成する連結財務諸表のため、IFRSとの相違について毎期報告しなければならず、その 差異について監査人の監査を受けなれければならない。. 新たな課題  2006年に改正された監査・保証実務委員会報告第56号は、親会社と子会社の会計処理の統 一について、必ずしも統一を必要としない会計処理として、①棚卸資産や有価証券の評価方 法、②固定資産の減価償却の方法をあげている。しかし、IFRSは、「連結財務諸表は、同様の 状況における類似する取引及びその他の事象に関し、統一の会計方針を用いて作成しなけれ 6 とし、例えば、棚卸資産の評価について「同一の種類の棚卸資産は、同じ評価 ばならない」. 方法を採用しなければならない」7 としている。もちろん、重要性の適用はあるものの、IFRS は連結財務諸表における会計処理の統一に関して、より厳格な姿勢を示していると理解され る。会計処理統一の問題は、それほど簡単に解決しそうにない。. 6 . IAS(International Accounting Standards) 第27号 28項。IFRSには前身のIASも含まれている。. 7 . IAS第2号 25項。. 9.

(5)

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