コンバージェンス会計と監査 : 在外子会社の会計処理統一を巡る課題
4
0
0
全文
(2) 当面の取扱いへの対応 実務対応報告第18号は、連結財務諸表作成の基礎となる在外子会社の財務諸表について IFRSまたはUSGAAPへの準拠を求めている。しかし、米国に所在する子会社は原則として USGAAPで財務諸表が作成されるため、この取扱いによって特段状況が変わるわけではない。 他方、米国以外に所在する子会社は、これまで所在国の会計基準(現地基準)に準拠した財 務諸表を作成してきた。したがって、以下、米国以外の国に所在する子会社がIFRSを適用す る場合に生ずる課題について検討する4。 実務対応報告第18号への対応策としては、次のような方法が考えられる。 1.在外子会社が作成する財務諸表をIFRSに準拠したものに変更する。または、 2.在外子会社が作成する財務諸表は従来どおりとし、IFRSに準拠するために必要な修正 を日本で行う。さらに、 3.このいずれの方法を採用した場合であっても、日本基準への修正6項目については日 本で追加修正を行う5。 このような対応に関わる課題を要約すると図1のようになる。. 図1. IFRSへの修正. IFRS 基準 財務諸表 (海外子会社). 現地国基準 財務諸表 (海外子会社). 1.現地で財務諸表をIFRS基準へ変更 ・現地の法制上認められるか ・連結パッケージでのみ修正するか ・現地監査人の監査意見が得られるか. 日本基準への 6項目の修正 日本の連結用 財務諸表 (海外子会社). 3.日本の連結作業で6項目を修正 ・どのように修正項目を把握するか ・修正内容の正確性をどのように確かめるか. 2.日本で現地基準の財務諸表をIFRS基準に修正 ・どのように修正項目を把握するか. 4 . 米国以外の国に所在する子会社が米国会計基準を採用することは通常考えられない。. 5 . 米国会計基準に準拠した米国子会社についても、この修正は必要である。. 7.
(3) 現地で財務諸表をIFRSへ変更することの課題 表1は、主要国において、非上場会社の個別財務諸表にIFRSの採用が認められるかどうか を要約したものである。 出典:ttp://www.iasplus.com/country/useias.htm. 表1. 非上場企業の個別財務諸表のIFRS準拠 不可. 現地基準が IFRSとほぼ同等. 可. ドイツ、フランス、ベルギー、スイス、 イギリス、オラン スペイン、ポーランド、ルーマニア、 ダ、イタリア、ルク チェコ、ポルトガル、スウェーデン センブルグ 台湾、韓国、インドネシア、タイ、マ レーシア、インド、ベトナム. 中国、香港、シンガポール、 オーストラリア、フィリピ ン、ニュージーランド. カナダ、メキシコ、アルゼンチン、ブ ラジル 南アフリカ. 表1が示すように、上場会社の連結財務諸表にIFRSの採用を義務付けているEU諸国でも、 相当数の国が非上場会社の個別財務諸表にIFRSの採用を認める状況には至っていない。この ような地域に所在する子会社が財務諸表をIFRSで作成するためにはどうすればよいのか。現 地基準の財務諸表とは別に、連結のためにIFRS準拠の財務諸表(あるいは、連結パッケー ジ)を作成するとすれば、追加の作成コストと監査コストの問題が生ずる。また、現地監査 人がそれに監査意見を表明してくれるかという問題もある。 . 日本で現地基準の財務諸表をIFRSに修正することの課題 この方法を採用した場合、在外子会社の財務諸表をIFRSに準拠させるために修正すべき事 項を、日本の親会社がどのようにして把握するのか。世界各国の会計基準とIFRSの相違が細 部にわたって日本で把握されているわけではない。したがって、現地の経理担当者や監査人 に相違点の調査を要請しなければならず、また、差異が把握され重要な差異について修正す べき金額が現地子会社から報告されたとしても、親会社監査人は当該金額の正確性について 心証を得るため現地監査人に協力を求めることが必要になる。さらに、新たな相違点が発生 していないかフォローアップするために、毎決算期において同様の作業が必要である。 . 日本基準への修正6項目に関する課題 日本基準への修正が求められている6項目について、現地でどのような会計処理が採用さ れているか調査する必要がある。現地でIFRSに準拠した財務諸表が作成されたとしても、例 えば、IFRSでは退職給付債務にかかる数理計算上の差異について、所謂、回廊(コリドー). 8.
(4) 方式を採用するかどうかの選択が可能であり、それが採用されているか否かによって日本で の修正内容は異なる。したがって、現地で採用された会計処理の調査は欠かせない。調査の 結果、相違内容が把握されれば、現地基準の財務諸表を日本でIFRSに修正する場合と同様に、 修正すべき金額の報告を現地子会社に求め、また、親会社監査人は当該要修正額の正確性に ついて現地監査人に協力を求めることが必要である。 . コンバージェンスからアドプションへ 2009年6月、企業会計審議会は「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報 告)」を公表、連結財務諸表に関してコンバージェンスからアドプションに舵をきり、一定の 条件を満たす会社に2010年3月決算期からIFRSの任意適用を認め、さらに、2015年又は2016 年からのIFRS強制適用の可否を2012年に判断するとした。 我が国でも連結財務諸表にIFRSが採用されれば、在外子会社の会計処理統一問題が解決す るかのような期待を人々に抱かせる。しかし、EU諸国に所在する子会社であっても、前述の ように現地法の関係から所在国の会計基準が適用され、すべての子会社の財務諸表がIFRSに 準拠して作成されるわけではない。 さらに、この中間報告は連結財務諸表のみにIFRSへの移行を認め、個別財務諸表について IFRSの適用を認めない。したがって、連結財務諸表をIFRSで作成することを義務付けられる 上場会社などの国内子会社は、国内基準に準拠した個別財務諸表を作成するとともに、親会 社が作成する連結財務諸表のため、IFRSとの相違について毎期報告しなければならず、その 差異について監査人の監査を受けなれければならない。. 新たな課題 2006年に改正された監査・保証実務委員会報告第56号は、親会社と子会社の会計処理の統 一について、必ずしも統一を必要としない会計処理として、①棚卸資産や有価証券の評価方 法、②固定資産の減価償却の方法をあげている。しかし、IFRSは、「連結財務諸表は、同様の 状況における類似する取引及びその他の事象に関し、統一の会計方針を用いて作成しなけれ 6 とし、例えば、棚卸資産の評価について「同一の種類の棚卸資産は、同じ評価 ばならない」. 方法を採用しなければならない」7 としている。もちろん、重要性の適用はあるものの、IFRS は連結財務諸表における会計処理の統一に関して、より厳格な姿勢を示していると理解され る。会計処理統一の問題は、それほど簡単に解決しそうにない。. 6 . IAS(International Accounting Standards) 第27号 28項。IFRSには前身のIASも含まれている。. 7 . IAS第2号 25項。. 9.
(5)
関連したドキュメント
このような状況下、当社グループ(当社及び連結子会社)は、中期経営計画 “Vision 2023”
・子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制を整備する
社会調査論 調査企画演習 調査統計演習 フィールドワーク演習 統計解析演習A~C 社会統計学Ⅰ 社会統計学Ⅱ 社会統計学Ⅲ.
当社の連結子会社である株式会社 GSユアサは、トルコ共和国にある持分法適用関連会社である Inci GS Yuasa Aku Sanayi ve Ticaret
4.「注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計処理基準に関する事項 (8)原子力発 電施設解体費の計上方法
社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課
の会計処理に関する当面の取扱い 第1四半期連結会計期間より,「連結 財務諸表作成における在外子会社の会計
の会計処理に関する当面の取扱い 第1四半期連結会計期間より,「連結 財務諸表作成における在外子会社の会計