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復興コレクティブハウジングからみる超高齢社会の共同居住への課題と可能性

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Academic year: 2021

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(1)

著者

北原 裕也

雑誌名

KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies

review

28

ページ

43-48

発行年

2021-03-31

(2)

復興コレクティブハウジングからみる

超高齢社会の共同居住への課題と可能性

北原 裕也

 【要旨】 本研究は、単身者の増加等の社会背景において、共同居住が個人の社会関係を豊かにするために有効で あると考え、共同居住の1 種であるコレクティブハウジングの暮らし方から共同居住の住運営手法及び居 住者評価などを踏まえ継続的住運営の課題と可能性に関して探ることを目的としている。入居開始から20 年以上が経過した公営コレクティブハウジング4 事例を対象とした分析を行なった。その結果、居住者同 士の共同活動を通して住居形態の持続的な可能性が見えてきた。今後の将来的展開を考慮するためには、 入退去時の住宅サイクルを整理すること、長期的居住を希望する入居者による組織づくりや多世代混住型 の居住者特性を持つ必要である。また、定期的な専門家を派遣し、住居前及び住居後の住運営活動に関す るアドバイス等を享受させることが必要である。 キーワード:コレクティブハウジング、公営住宅、共同住宅、高齢者居住、単身世帯、共同空間

1. はじめに

1.1

研究背景

単身者世帯は増加の一途を辿っており、年齢層は若年層から高齢者層と幅広いものであ り、その結果として家族の多様化、近隣関係の希薄化といった変化に影響を及ぼしており、 従来家族及び血縁者が担ってきた役割・機能を様々な場面において非血縁者が充足される と考えられる傾向がある。一方で住居を拠点とした周辺環境において安全かつ安心できる 住環境形成及びコミュニティ形成が重要である。 現在、日本は、超少子高齢社会の渦中であり、多様化する生き方として晩婚、未婚といっ た選択肢を生み出している社会環境に対して警鐘を常に鳴らすべきである。現代社会にお ける血縁関係等のコミュニティの復活は期待できない。個人化、家族形態の変化などの社会 背景において、個人の社会性を豊かにすること、ひとり親世帯や子育て世帯に対する相互扶 助の関係性を構築する上で、コレクティブハウジング(以下、CH と略称)という住まい方 は今後住宅選択において重要な役割を担うと考えられる。  関西学院大学大学院総合政策研究科博士課程前期課程([email protected]

(3)

1.2

研究目的

本研究は、単身者の増加等の社会背景において、共同居住が個人の社会関係を豊かに するために有効であると考え、共同居住の1 種である CH の暮らし方から共同住宅の住 運営手法及び居住者評価などを踏まえ共同住宅の継続的住運営の課題と可能性に関し て探るものである。これまでCH に関する研究は、入居数年間の調査にとどまっており、 居住者の入れ替わりがある中での、持続的な住運営に関する要因に関しては調査がほと んど行われていない。1990 年代後半から 2000 年初期にかけて継続的に検証が行われた ことから、複数の研究が行われている。しかし、高経年する2010 年以降の調査は僅かで あり、調査の継続が必要であり本研究の高経年を観察することは有意さを持っている。 さらに、共同居住の居住形態が都心部、特に若年層に対して広がりを見せているが、居 住期間は短く安定した社会関係を形成するためには中・長期的居住が関係構築において 成立条件であると考えられる。 本研究では、CH における共用空間の利用実態を把握し、持続的な住運営が成立する ための要因を考察し、高齢者に適した共同居住の運営手段を検討することを目的とする。 継続的な共同居住が成立し、居住者の入れ替わりや年齢を重ねた体力面の変化等を考慮 することから、高齢者を対象とした高経年のCH の事例に着目する。

1.3

既往研究と本研究の位置付け

CH を対象とした研究は、1990 年代から活発的に研究が行われている。特に、阪神・淡路 大震災を契機として供給が行われたひょうご復興コレクティブハウジング(以下、復興CH と略称)以降様々な研究が行われている。 1998 年に上野ら1は、復興事業として復興CH の実態と課題および LSA の活動実態を明 らかにし、制度面での改善やLSA の育成に関しての提案をしている。大江ら2は、共用室の 空間としての利用実態をまとめ、協同活動におけるLSA 等を含めたサポートに左右される としている。また、佐々木、上野ら3は、入居後4 年の共同活動及び共用室の空間利用実態 の経年変化を追っており、共同室の利用状況も一定であり、居住者同士のコミュニティ形成 が継続的に行われていることを示した。 上述したように、日本におけるCH 研究は、CH の住運営活動はコミュニティ形成、近隣 関係との良好な関係を形成する上で一定の重要な役割を果たしているとしている。その上 で、運営管理とそれに関する居住者参加の意義に着目しているが、居住者入れ替えに生じる 1 上野勝代, 水野弘之, 牧里毎治, 中塚則男, 相良二朗, 奥山佳世:震災復興型高齢者住宅におけるグ ループリビングのシステム化に関する研究, 住宅総合研究財団研究年報, No. 25, 1998 2 大江七恵, 佐々木伸子, 上野勝代:ひょうご災害復興型コレクティブ住宅における入居初期段階の状況 −入居者の住まい方と空間評価について−, 日本都市計画学会学術論文集, 1999 3 佐々木伸子, 上野勝代:高齢者向け公営コレクティブ住宅における住まい方の経年変化に関する研究− ひょうご復興コレクティブハウジング入居後4 年半の継続調査−, 都市住宅学, No. 43, 54-59, 2003

(4)

問題点についてはあまり議論されていないと言える。 本研究では、過去の居住実態を示す資料を分析し、高齢者の長期間の居住実態を明らかに することを試みる。これは加齢による身体機能の低下が見られる高齢者の居住のあり方を 検討する上で重要な視点であり、本研究では、国内で高経年の事例を対象としており、この 点において有用性がある。 その中で、本研究では震災復興25 年を迎え、日本の公営住宅において高齢者を対象に取 り組まれた復興CH を事例にしながら、高齢者居住の可能性に関して考察ならびに今後の協 働居住に対する可能性を検討する。

1.4

調査概要

兵庫県営の復興コレクティブハウジングから岩屋北町ふれあい住宅、HAT 神戸・脇の浜ふ れあい住宅、尼崎金楽寺ふれあい住宅及び宝塚福井ふれあい住宅の計4 事例を選出し、居室 及びコモンスペースの利用実態調査、入居者の居住者評価やコミュニティ形成に関するヒ アリング調査、アンケート調査を行う。高齢者等が求める現在の住環境に対するコモンスペ ースの提案及び運営に関する課題と可能性について考察を行う。 表 1 震災復興コレクティブハウジング一覧

2. 復興 CH の現状分析

(1)居住者特性 県営CH における居住者は 2019 年 12 月時点、65 歳以上が 218 人(82.8%)、20−64 歳が 36 人(13.6%)、20 歳未満が 9 人(3.4%)の割合になっている。SH として供給している要因もある が、公営住宅における高齢化が顕著に見られる。入居世帯構成を見ると、単身世帯は171 世 帯(81%)、複数世帯は 40 世帯(18.9%)の割合となっている。単身世帯が 8 割以上を占めてお り、高齢者の孤立化、引きこもり等の社会的問題に対しても問題意識を持つ必要があると考 住宅名 供給主体 所在地 戸数 入居開始年 居住者特性(入居当時) 主な共用空間 県営 片山住宅 兵庫県 神戸市長田区 6 1997 全て高齢者向住宅 台所付居間、和室、バルコニー 県営 南本町住宅 兵庫県 神戸市中央区 27 1998 全て高齢者向住宅 台所付居間食事室、和室、洗濯コーナー、日溜りコー ナー(各階) 県営 岩屋北町住宅 兵庫県 神戸市灘区 22 1998 全て高齢者向住宅 台所付居間食事室、和室、洗濯コーナー付談話コー ナー(各階) 県営 大倉山住宅 兵庫県 神戸市中央区 32 1998 全て高齢者向住宅 各階共用室(居間、食事室、台所、和室) 県営 福井住宅 兵庫県 兵庫県宝塚市 30 1998 一部一般世帯向住宅 1階:生活相談室(LSA室)、台所付居間食事室、和室 各階:洗濯コーナー、談話コーナー 市営 真野住宅 神戸市 神戸市長田区 29 1998 一部一般世帯向住宅 共用室(談話室、食堂、台所)、多目的室、出会いコー ナー、路地空間 市営 久二塚西住宅 神戸市 神戸市長田区 58 1998 従前居住者用住宅 共用室(談話室、食堂、台所、和室)、広場 県営 脇の浜住宅 兵庫県 神戸市中央区 44 1999 全て高齢者向住宅 奇数階:台所付居間食事室 偶数階:談話コーナー、各階:洗濯コーナー 県営 金楽寺住宅 兵庫県 兵庫県尼崎市 71 1999 一部一般世帯向住宅 1階:コミュニティプラザ、生活相談室 各階:台所付居間食堂室、バルコニー付和室、洗濯 コーナー、談話コーナー 市営 久々知住宅 尼崎市 兵庫県尼崎市 22 1999 従前居住者用住宅 共用室、協同風呂、談話室

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えられる。 入退去の傾向に関しては、過去6 年間において大きな変動はなく、一定の居住者が入居し ている。公営住宅としての供給であり、各月で実施される新規入居者の応募倍率は、基本的 に定員数を超えることが多くコレクティブハウジングの理解度が低い入居も多く見られて いる。また、SH としての供給であることから住宅としての設備面が県営住宅の中でも整備 されていることから現在でも人気の高い住宅として認識されており、入居者数も安定して いると考えられる。 (2)入居動機 − 事例:宝塚福井住宅 − 混住型のCH として、世代に偏りはあるものの今後の集住における世帯構成の縮図として 捉えることも可能である。震災復興期における恒久住宅への移行の際に入居し始めた人が 多数を占めており、当時は事前交流会、説明会を数回にわたって実施されたことから20 年 以上の居住年数の入居者はコレクティブ住宅に対する理解度が高い人が多い。県営SH であ ることから「高齢者対応住宅」「家賃」を重視する入居者が多く見られるのも特徴的である。 その中で僅かであるが、居住年数の浅い入居者に「コレクティブ住宅」を重視する傾向が見 られている。 表 2 居住年数別に見る入居動機 (3)共用空間の利用実態 − 事例:宝塚福井住宅 − 協同居住空間は、ふれあい空間(共用室)を基本としている。正面玄関口を通ると 1 階の ふれあい空間(共用室)が位置している。ふれあい空間は、リビング、ダイニング、キッチ ン、和室、縁側の構成となっている。 共用部分は、1 階から洗濯コーナー、便所、洗面所、共用玄関(上下足履き替え)、倉庫、 相談室、LSA 室、EV を配している。2−3 階には、洗濯コーナー/談話スペースを配してい る。階段室は全て外階段であり、居住者の上下階の移動は全てEV で行われている。

(6)

図 1 共同空間利用実態(宝塚福井住宅) (4)共同居住に対する評価 − 事例:宝塚福井住宅 − 毎週参加者20 名程度の住運営活動を実施している住宅事例であり、日常的な「立ち話」「挨 拶」はほとんどの居住者が行っている。その一方で、「お裾分け」「お土産交換」の割合は全体 的に低く、住運営活動による日常的に顔を合わせることで、プライベートは完全に分離させ ているように推測される。その要因としては、宝塚福井住宅のルールの1 つである、他の居 住者の専用住戸への立ち入り禁止というルールを作っており、そういった要素が影響して いると考えられる。 表 3 居住年数別に見る近隣関係 合計 25 (100.0) 2 (8.0) 18 (72.0) 24 (96.0) 7 (28.0) 6 (24.0) 3 (12.0) 0 (0.0) 〜 5年 7 (100.0) 1 (14.2) 3 (42.8) 7 (100.0) 1 (14.2) 1 (14.2) 1 (14.2) − ( − ) 5 〜 10年 5 (100.0) 1 (20.0) 4 (80.0) 5 (100.0) 2 (40.0) 2 (40.0) − ( − ) − ( − ) 11 〜 15年 2 (100.0) − ( − ) 1 (50.0) 1 (50.0) − ( − ) − ( − ) − ( − ) − ( − ) 16 〜 20年 2 (100.0) − ( − ) 2 (100.0) 1 (50.0) 1 (50.0) − ( − ) 1 (50.0) − ( − ) 20年 〜 9 (100.0) − ( − ) 8 (88.8) 9 (100.0) 3 (33.3) 3 (33.3) 1 (11.1) − ( − ) 全 体 注:複数回答、( )内は%. 一 緒 に 外 出 会 え ば 立 ち 話 日 常 挨 拶 隣 近 所 へ の 食 事 の お 裾 分 け お 土 産 の 交 換 や お 裾 分 け お 互 い の 部 屋 の 行 き 来 ほ と ん ど な い

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(5)小結 CH において住運営の基本は、居住者同士による共食活動であると考えられているが、そ の他にも、清掃活動、イベント事業と、各住宅によってその形態は変容することもCH の特 徴でもある。しかし、それらの活動の企画−実行のプロセスにおいて、少数での行動が高齢 者にとって負担であり、住運営活動を入居後に初めて知る居住者も少なくない中、継続的に 運営を行うための支援が必要であると考えられる。

3. 結論

本研究では、以下の3 つを持続的住運営の可能性と課題とする。 ・住運営活動における規則 ・支援者及び専門家の定期訪問事業 ・入退去時の居住者交流 まず、海外の住運営活動と本研究対象であった復興CH における住運営活動では“義務性” の有無が持続的運営に関係してくると考えられる。復興CH の 4 事例はどれも、規則が特に 定まっておらず、住運営活動の参加も個人に委ねられている部分が大きい。一部軽度な規則 として当番制が設けられており、このように一定の規則を持つ住宅に関しては少なからず 継続的な住運営活動が見られている。 次に、自主運営・自主管理が原則としてあるCH では、知識がない居住者が運営を任され る場合もありうる。現在は自治会という一種の居住者組織によって運営を担っているが負 担が大きい。対応策として、週数回LSA 職員が訪問を行うが、役割としては、安否確認な どの居住者個人に対するものである。そのため、支援組織がないために、住運営活動の意思 決定において遅れをとることになる。定期的な専門家の訪問事業を導入することで、居住者 の負担が軽減されること、活動に対しても円滑な運営を行えると考えられる。 最後に、比較的住運営活動を実施してきた担い手の高齢化に伴い、活動が実施されなくな れば、CH としての機能を失うことになる。そのため、入退去時に対して、居住者代表との コンタクトを行い事前交流することで、持続的な住運営活動へ繋がると考えられる。 【参考文献】 小谷部育子, 坂元良江, 宮前眞理子, 狩野三枝(2004)『コレクティブハウジングで暮らそう−成熟社会の ライフスタイルと住まいの選択−』丸善 兵庫県都市住宅建設課(1996)『ひょうご復興コレクティブハウジング調査研究報告書』 兵庫県都市住宅部(1997)『ひょうごコレクティブ・ハウジング研究会 報告書』 兵庫県まちづくり部(2000)『住まい復興の記録−ひょうご住宅復興 3 ヶ年計画の足跡−』 兵庫県県土整備部(2014)『過去の先導的施策等の検討調査報告書』

図 1 共同空間利用実態(宝塚福井住宅)  ( 4 )共同居住に対する評価  − 事例:宝塚福井住宅 −    毎週参加者 20 名程度の住運営活動を実施している住宅事例であり、 日常的な「立ち話」「挨 拶」はほとんどの居住者が行っている。その一方で、「お裾分け」「お土産交換」の割合は全体 的に低く、住運営活動による日常的に顔を合わせることで、プライベートは完全に分離させ ているように推測される。その要因としては、宝塚福井住宅のルールの 1 つである、他の居 住者の専用住戸への立ち入り禁止というルールを作っ

参照

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