博士論文審査結果の要旨
学位申請者
木 戸 脇 智 志
主論文 1 編
Longitudinal change in white matter in preterm infants without magnetic resonance imaging
abnormalities: Assessment of serial diffusion tensor imaging and their relationship to neurodevelopment
outcomes.
Brain & Development 39;40-47, 2017
審 査 結 果 の 要 旨
早産児の生存率は近年の周産期医療の進歩に伴い飛躍的に向上してきている.しかし,生存して
も依然として精神運動発達遅滞や,認知機能障害,学習障害などのリスクは高い.そのため予後改
善には早期診断,早期療育介入が求められる.満期産相当時に頭部 MRI で異常所見を認める場合,
後の精神発達障害と関連することについてはこれまで報告されている.しかし,頭部 MRI で異常所
見のない早産児の神経発達予後については明らかではなく報告も少ない.
申請者は,満期産相当時と修正 1 歳時の頭部 MRI で異常所見のない早産児を対象とし,Diffusion
Tensor Imaging(以下 DTI)に基づいた Tractography を用いて,白質の微小構造変化を評価できる
Fractional Anisotropy(以下 FA)を算出し,満期産相当時から修正 1 歳時までの FA 値の経時的変化
を在胎週数別に比較検討した.また FA 値と修正 3 歳時の精神発達スコアとの間に相関関係がある
かどうかを調べた.対象としたのは 2004 年 4 月から 2012 年 12 月に当院 NICU で出生した在胎 30
週未満の早産児で,満期産相当時と修正 1 歳時に頭部 MRI を施行し,頭部 MRI で異常所見を認め
ず,先天性疾患のない症例で,修正 3 歳時に新版 K 式発達検査(以下 KSPD)を施行した 13 例で
ある.この 13 例を在胎 26 週未満(以下 GA<26W)7 例と在胎 26 週以上(以下 GA≧26W)6 例の
2 群に分け,満期産相当時と修正 1 歳時の白質路(運動路,感覚路,上小脳脚,中小脳脚,脳梁)
の平均 FA 値を求めた.結果,満期産相当時において,脳梁膨大部で GA<26W 群のほうが GA≧26W
群より有意に FA 値が低かったが,修正 1 歳時にはその有意差は認められなかった.また 1 週間あ
たりの FA 増加量は脳梁膨大部で GA<26W 群のほうが GA≧26W 群より有意に高値であった.これ
らのことは,在胎週数の早い児は満期産相当時に成熟が遅れていても,その後は活発に成熟し,修
正 1 歳時には在胎週数の遅い児に追いつくということを示していると考えられた.次に満期産相当
時での脳梁膨大部の FA 値と修正 3 歳時の KSPD による DQ 値の関係性を調べた.結果,有意な相
関関係はなく,頭部 MRI で異常所見のない早産児は満期産相当時での FA 値が低くても,その後の
発達に影響しない可能性が示唆された.
以上が本論文の要旨であるが,頭部画像異常のない早産児の発達予後についての報告は少なく,
MRI 付加ツールを用いて検討し,その一部を解明した点において,医学上価値のある研究と認める.
平成 29 年 1 月 19 日
審査委員 教授
伊 東 恭 子
○印
審査委員 教授
橋 本 直 哉
○印
審査委員 教授
水 野 敏 樹
○印