• 検索結果がありません。

職業教育訓練機関TAFEにおける学びと英語教育:日本の英語教育との接続の観点から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "職業教育訓練機関TAFEにおける学びと英語教育:日本の英語教育との接続の観点から"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

名古屋短期大学研究紀要 第56号 2018 1.はじめに  急速なグローバル化に伴って、英語を学び習得するということを目標とするのではなく、社会 においては英語を使って活躍できる即戦力となる人材が求められている。日本では、英語による コミュニケーション能力の育成に力は入れているものの、英語をコミュニケーションの道具とし て使える人材が十分に育っているとは言い難い。2015年6月の文部科学省における「生徒の英 語力向上推進プラン」では、児童・生徒の確実な英語力向上を目指し、小・中・高校を通した改 革の取り組みとして、英語の4技能(「読む」「聞く」「話す」「書く」)を重視した授業を実践し たり、それらの力を正確に測るために入試改革にも取り組み、英語力の底上げをしている。実際 に、社会で必要とされている英語力とはどの程度のものなのであろうか。また、海外の人々と肩 を並べて働くための世界で通用する英語のレベルとはどのようなレベルを指すのであろうか。筆 者らは2017年8月25日∼9月7日の期間において、オーストラリアの TAFE Queensland を実際 に訪問し、英語教育と留学生のサポートに携わるスタッフとのミーティングにおいてインタ ビューによる情報収集を行った。本稿では、海外で活躍するための英語力という観点から、職業 教育訓練機関での学びにおいて求められる英語力、またそこで実践されている英語教育を中心に 取り上げ、検討していくことにする。まず、オーストラリアにおける教育制度を概観し、中等教 育以降の教育課程に焦点を当て、TAFE の役割について述べる。次に、TAFE における英語教育 の実際について、TAFE Queensland で開講されている英語コースを中心にまとめ、最後に、日本 での英語教育との接続の観点から、TAFE Queensland における英語コースの授業内容と日本にお ける英語運用能力の実際を検討していくこととする。 2.オーストラリアにおける教育制度 2.1. オーストラリアの学校教育制度  オーストラリア連邦(Commonwealth of Australia)は南半球に位置する国で、連邦制を採用し ている。面積は日本の約20倍である769万2,024km2で、人口は2016年の豪州統計局の調査によ ると約2,413万人とされている。首都はキャンベラで、主な使用言語は英語、また、国内にはア ングロサクソン系等の欧州系民族が中心に住んでおり、その他、中東系、アジア系、先住民等が 生活を営む多文化国家である(1)  オーストラリアは連邦制を採用していることから、学校教育制度等に関する事項は基本的に各

職業教育訓練機関 TAFE における学びと英語教育

──日本の英語教育との接続の観点から──

内田政一 加藤あや美

(2)

発も始まり、2013年度からはオーストラリア全土で実施に移されている(2)  オーストラリアは、ニューサウスウェールズ(NSW)州、クイーンズランド(QLD)州、南 オーストラリア(SA)州、タスマニア(TAS)州、ヴィクトリア(VIC)州、西オーストラリア (WA)州の6つの州と、オーストラリア首都特別地域(ATC)、ノーザンテリトリー(NT)の2 つのテリトリーに分かれている。そのため、上述の通りそれぞれの州等において学校教育制度に 多少の違いがある。以下は、オーストラリアにおける学校教育の概要についてまとめたものであ る(表1)。 表1 オーストラリアにおける学校教育制度(3) ATC NSW TAS VIC 初等教育 Prep(5歳)、Year 1(6歳)∼Year 6(11歳) 中等教育(前期) Year 7(12歳)∼Year 10(15歳) 中等教育(後期) Year 11(16歳)∼Year 12(17歳) NT 初等教育 Prep(5歳)、Year 1(6歳)∼Year 6(11歳) 中等教育(前期) Year 7(12歳)∼Year 9(14歳) 中等教育(後期) Year 10(15歳)∼Year 12(17歳) QLD SA WA 初等教育 Prep(5歳)、Year 1(6歳)∼Year 7(12歳) 中等教育(前期) Year 8(13歳)∼Year 10(15歳) 中等教育(後期) Year 11(16歳)∼Year 12(17歳) ※ prep は準備学級(Kindergarten 等5歳児)の1年間を指す  就学年齢基準日は、NSW 州では7月31日時点で満6歳になる者、ATC の場合は4月30日時点 で満6歳になる者は同年の1学期開始日に入学するといったように就学年齢についても州によっ て異なるという特徴を持つ。また、オーストラリアにおける義務教育期間は、Year 1(6歳) ∼Year 10(15歳)もしくは17歳になった時点までとされ、中等教育終了後に大学進学を希望す る場合は、中等教育後期の期間中に日本の大学における一般教養課程に相当する科目を履修し、 統一資格試験を受けるというシステムをとっている(4)  オーストラリアの学校教育におけるカリキュラムの特徴は、 教科にあたる各学習領域(discipline-based learning areas)の教授・学習と、汎用的能力(general capabilities)の育成、および領域横断 的な優先事項(cross-curriculum priorities)の扱いとが同程度に重視されていることであると言わ れている(5)。ここで言う「汎用的能力」とは、各学習領域をまたがって必要とされる知識、スキ ル、行動および態度を示したものであり、具体的には、リテラシー、ニューメラシー、ICT 技能、 批判的・創造的思考力、倫理的行動、異文化理解、個人的・社会的能力の7つの能力が含まれ、 「領域横断的な優先事項」とは、オーストラリアのすべての子どもが学習すべき現代的課題とし て、アボリジナルおよびトレス海峡島嶼民の歴史と文化、アジアとのかかわり、接続可能性の3 つが含まれているとされる(6)

(3)

職業教育訓練機関 TAFE における学びと英語教育

2.2. 中等教育以降における教育課程

 オーストラリアの学校教育制度には、前節で述べた学校教育と職業教育訓練(Vocational Education and Training: VET)、高等教育の3セクターがある(7)。すでに述べた通り、高等教育セク

ターに位置付けられる大学に進学を希望する場合は、中等教育後期の期間中に、日本の大学で言 う一般教養科目に相当する専門分野の基礎を学習し、統一資格試験を受験することにより志望大 学を決定していく(8)。中等教育を修了した後の進路として VET セクターという選択があることが

オーストラリアにおける中等教育以降の教育課程の大きな特徴と言える。VET は登録訓練機関 (Registered Training Organization: RTO)で提供されており、その登録訓練機関(RTO)には、州立 の TAFE、私立機関、大学、後期中等学校、成人地域社会教育施設(Adult Community Education: ACE)があるとされている(9)。これらの機関で提供される学位や資格に関しては、学位・就業資

格を統合した全国的な職業能力評価の枠組みである AQF(Australian Qualifications Framework)が 導入されており、職業の採用基準となっている。以下は、オーストラリアにおける資格枠組みを まとめたものである(表2)。

表2 Australian Qualifications Framework によるレベルと資格(10)

Level Summary Qualification Type

Level 1 Graduates at this level will have knowledge and skills for initial work, community involvement and/or further learning Certificate I

Level 2 Graduates at this level will have knowledge and skills for work in a

defined context and/or further learning Certificate II Level 3 Graduates at this level will have theoretical and practical knowledge and skills for work and/or further learning Certificate III

Level 4 Graduates at this level will have theoretical and practical knowledge and skills for specialised and/or skilled work and/or further learning Certificate IV

Level 5 Graduates at this level will have specialised knowledge and skills for skilled/paraprofessional work and/or further learning Diploma

Level 6 Graduates at this level will have broad knowledge and skills for paraprofessional/highly skilled work and/or further learning Advanced Diploma Associate Degree

Level 7 Graduates at this level will have broad and coherent knowledge and

skills for professional work and/or further learning Bachelor Degree

Level 8 Graduates at this level will have advanced knowledge and skills for professional highly skilled work and/or further learning

Bachelor Honours Degree Graduate Certificate

Graduate Diploma Level 9 Graduates at this level will have specialised knowledge and skills for research, and/or professional practice and/or further learning Masters Degree

Level 10

Graduates at this level will have systematic and critical understanding of a complex field of learning and specialised research skills for the advancement of learning and/or for professional practice

Doctoral Degree

 オーストラリアにおける VET セクターの役割は、児美川(2010)によると、中等教育を修了 した後に大学に進学するという選択をするのではなく、登録訓練機関(RTO)にて、より高度な 職業教育訓練を受けるという選択をすることにより、就業後に良い影響をもたらし、「学校から 仕事への移行」という側面において社会的な意義を持つとされている。さらに、VET では2009

(4)

表3 TAFE で取得できる証明書および資格(14) 証明書・資格 就業期間 概要 Certificate 1 4∼6ヶ月 必要な管理指導のもとで、ある業種の規定された業務内容を理解し、実行でき る能力をつける Certificate 2 6∼8ヶ月 限られた管理指導のもとで、より複雑な業務内容を理解、実行できる能力をつ ける Certificate 3 6ヶ月以上 技術面での専門性、他者を管理できる能力、高いレベルの自己管理能力、技術 面での適応力をつける Certificate 4 12∼18ヶ月 ある技能の全般的な資格、専門技術を含み、他者の業務に対する責任、経営管 理のプロセスについての責任が一定のレベルに達する Diploma 18∼24ヶ月 履歴書に「資格」として記載が出来るレベルであり、各分野における基本とな る知識・技能を全て身につけている Advanced Diploma 24∼36ヶ月 複数の職種に渡る能力・適性、高いレベルでの専門技術、管理者としての責任が求められる Bachelor 36∼48ヶ月 大学を卒業したことと同様の資格として認められる 2.3. TAFE の役割  上記のように、VET は学位の提供等を行っていることからも、オーストラリアにおいて教育 分野のセクターと同等の社会的地位を築いていると言えるが、その VET を提供する登録訓練機関 (RTO)の中でも中心的であるのは、州立の TAFE である。TAFE(Technical and Further Education)

が設立されたのは、「学卒者や有識者への職業教育・訓練や個人の自己実現に向けての成人教育 を提供する一組織」としてであったとされる(11)。中村(2016)では、オーストラリアには大学 40校(公立37校、私立校3)に対して、州立の TAFE は60校あると述べられている。このこと からも、TAFE がオーストラリアの教育においていかに大きな役割を担っているかが窺える。 TAFE は、各地に多くのキャンパスが存在するが、全国的な統一基準が設定されているため、産 業界の要請に即応した VET を受けることができるという点が大きな魅力であるとされてい る(12)。また、州内のいくつかのエリアごとに複数のキャンパスを持っており、留学生を対象と したコースも開講されているが、学生の90%は現地のオーストラリア人である。さらに、TAFE で開講されているコースは多岐に渡っており、ビジネス、ホスピタリティ、ツーリズム、アート &デザイン、レジャー、福祉、航空、情報技術、自動車、看護、海洋、通訳・翻訳、農業、動 物、工学、映像、園芸、建築、保健・医療、教育、美容、環境、法律などである。さらに、オー ストラリアならではの分野としては、マリン・ツーリズム、ワインメーキング、馬産業(競馬調 教・馬場経営)、アボリジニ学がある(13)  TAFE のカリキュラムの特徴は、特定の分野におけるスキルの習得に焦点を当てた実践的なも のとなっている部分である。また、産業界と連携していることによる実際の職業現場における研 修や実習を取り入れているコースが豊富にあるというところも特徴の一つと言えるだろう。児美 川(2010)では、AQF に照らし合わせ TAFE で取得できる証明書と資格を以下の表3のように

(5)

職業教育訓練機関 TAFE における学びと英語教育 まとめており、さらに、AQF では中等教育修了資格や大学における学位と VET セクターにおけ る職業能力取得を示す証明書・資格とが、社会的に同等の通用力を持つということを特徴として 挙げている(表3)。 3.TAFE における英語教育  前章では、オーストラリアの学校教育制度に焦点を当てて論じてきた。特に、VET を提供す る登録訓練期機関(RTO)の中で中心的な役割を担う州立の TAFE での学びについてまとめたこ とにより、多様な学修環境が整理されているということがわかった。学生全体の90%を現地の オーストラリア人が占める TAFE であるが、留学生を対象としたコースも設置されており、様々 な国々からの留学生の受け入れを行っている。その留学生対象のコースとして代表的なものが英 語を習得するためのコースである。そこで、本章では TAFE における英語教育について述べてい くこととする。なお、筆者らは2017年8月25日∼9月7日の期間において TAFE Queensland を 訪問し、英語コースを統括する Director of English Studies と日本人留学生のサポートに携わる Regional Manager (North Asia) にインタビューを行い、留学生に対する英語教育の実際について情 報収集を行った。その際に得た情報を基に論を進めていくこととし、TAFE の中でも TAFE Queensland で開講されている英語教育に関するコースを中心に紹介していく。

 TAFE Queensland では、英語を母語としない学生を対象とし、英語力を向上させるためのコー ストとして、① General English、② IELTS Preparation、③ English for Academic Purposes (EAP) の 3つが設けられている。3つの各コースは、学習者の英語力によりすべて習熟度別にクラス編成 がなされ、到達目標としては基本的に IELTS 5.5を目安としている。この IELTS 5.5というスコア は、TAFE で提供されているすべての専門分野での学びで必要とされるレベルである。今回訪問 を し た TAFE Queensland で は、 英 語 レ ベ ル が 国 際 的 に 有 効 で あ る こ と を 示 す た め に、CEF (Common European Framework)に基づいて設定されているとしている。

3.1. General English  General English コースは、社会的な場面や職場での場面、または日常生活の活動に必要な英語 のスキルとコミュニケーションスキルを向上させることを目的としており、英語の構造や文法な どを通して、基本的な知識、リーディングスキル、ライティングスキルを学ぶコースとなってい る。なお、TAFE Queensland でのインタビューから、このコースの概要として市販のテキストに 沿って授業が進められているということがわかった。また、学習した内容の理解度を測るテスト が毎週行われ、加えて、週に1∼2時間程度の ICT 機器を使用して行われる授業も実施してい るという説明がなされた。 3.2. IELTS Preparation  このコースは、「IELTS 準備クラス」として位置付けられており、IELTS の受験を前提とし、 内容も IELTS で扱われる英語に特化して授業が進められるコースである。

(6)

リッジ大学英語検定機構やブリティッシュ・カウンシルなどにより共同運営されているが、日本 では公益財団法人日本英語検定協会との共同運営により実施されている。日本英語検定協会によ ると、IELTS における試験内容は海外留学を基本とする「アカデミック・モジュール」と学業以 外の研修を目的とする「ジェネラル・トレーニング・モジュール」に分かれており、リスニング (40分)、リーディング(60分)、ライティング(60分)、スピーキングの4技能を測る試験であ ると述べられている。スピーキングは、リスニング・リーディング・ライティングとは別に設定 され、試験官と1対1で11∼14分程度行われるとされている。

 TAFE Queensland で提供されている IELTS Preparation は、上記で述べた IELTS を受験する前に 受講するコースである。このコースを受講し、IELTS で高いレベルに達した場合は、TAFE Queensland で開講されている専門分野における学習へと進むことができるようになっている。イ ンタビュー時に受けた説明では、授業は IELTS 対策のテキストに沿って授業が行われるとし、 General English コースと同様に週2時間程度の ICT 機器を使用して行われる授業があり、毎週 IELTS 形式の模擬テストを実施しているとのことであった。また、実施した模擬テストに対して は必ず担当教員によるフィードバックが行われるとし、その繰り返しによって実際の試験におい て高いレベルを目指すことができるよう支援していると付け加えられた。

3.3. English for Academic Purposes (EAP)

 このコースは、上級レベルの英語コースとして位置付けられており、将来的に大学等の高等教 育セクターでの学びを目指す学生に対する内容が提供されている。このような目的で設定されて いるコースであることから、授業においては大学等の学びの中で必要となる専門用語やアカデ ミックな学習に繋げられるような英語のスキルを身につけていくようになっている。このコース を修了すると、TAFE Queensland で提供しているどの専門分野においても直接専門コースを履修 することができ、履修の段階から IELTS 5.5を求められる Diploma を取得するコースへの挑戦を することができる。このコースに関する内容でインタビューの中で得られたことは、まず授業は General English 同様、市販のテキストに沿って授業が進められるということと、週2時間程度の ICT 機器を使用して行われる授業があるということである。他の英語コースと異なる点として挙 げられた点は、学習の中にオンラインのコンテンツを利用するという点であるということであっ た。さらに、毎週実施される理解度を測るテストにおいては、4技能を網羅するものであるとい うことから、この部分においても他コースと異なる特徴があるということがわかった。  このように、TAFE Queensland では、留学生を中心とした英語を母語としない英語学習者のた めに、目的別の英語コースを設け、TAFE の中心的役割の一つとして据えている職業教育訓練 コースや高等教育セクターへの橋渡しの一端を担っていることがわかる(15)

(7)

職業教育訓練機関 TAFE における学びと英語教育

4.日本の英語教育からの接続

 これまで、オーストラリアの職業教育訓練機関である TAFE について、その役割と学びの分 野、また、英語を母語としない英語学習者に対して開講している英語コースについてまとめてき た。本稿では、TAFE Queensland を訪問したことから、TAFE Queensland で開講されている英語 コースに焦点を絞ってきたが、現在、開講されている英語コースはいずれもオーストラリアで継 続的に学修を目指す学生をターゲットにしたコース内容となっていることがわかった。General English のコースに関しては、所謂、語学留学のような機会においても利用可能なコースである と思われるが、Listening や Speaking だけでなく、Reading や Writing もコースカリキュラムの中 に位置付けられている点や理解度を測るためのテスト等も毎週実施されていることから、4技能 をバランス良く、且つ、英語の正しい知識を身に付けられるように設定されているということが 窺える。先述の通り、TAFE Queensland ではいずれのコースを履修しても、基本的に IELTS 5.5 を修了時の目安としているということであったが、これは TAFE Queensland で開講している専門 コースへ進むための基準となっているレベルとなっている。それでは、オーストラリアの職業教 育訓練機関における専門コース入学の基準となる IELTS 5.5とはどれくらいの英語力を指すのであ ろうか。TAFE Queensland が発行している English Language Equivalencies によると IELTS 5.5は以 下 の よ う な 位 置 付 け と な っ て い る。 表 4 は、TAFE Queensland 発 行 の English Language Equivalencies を抜粋して筆者らが表にまとめたものである(表4)。

表4  English Language Equivalencies by TAFE Queensland(抜粋)

IELTS TOEFL PBT TOEFL iBT 英検

Overall Individual Overall R/L/S Writing

5.0 4.5 447 53 13 15 2級 5.5 5.0 506 62 14 16 準1級 6.0 5.5 534 73 17 19 1級 6.0 6.0 (writing) 534 78 17 22 1級 6.5 6.0 565 85 20 22 1級  それぞれの英語の資格検定試験のスコア換算に関しては、換算表を作成する機関により多少の 誤差はあるが、今回は上記の TAFE Queensland が作成している換算表を基準としていく。表4を 見ると、TAFE Queensland が英語コース修了時の目安としている IELTS 5.5というレベルは、他 の資格検定試験と比較するとかなり高い英語力を指すレベルであることがわかる。日本における 英検と比較すると、英検準1級レベルと同等であると示されている。日本英語検定協会による と、英検準1級のレベルは、大学中級程度とされ、「実際に使える英語力」の証明として高く評 価されるものとしている。英検準1級の試験内容は、筆記・リスニング・面接で、二次試験では 2分間のスピーチと、その内容への質問がされることから、リスニング・リーディングのみなら ず、ライティングとスピーキングによるアウトプットスキルにおいても高いレベルが設定されて いることが示されている。

(8)

語力向上を目指し、計画的に改善を行うということが示されており、改革の基本的な考え方にお ける第二期教育振興基本計画中の達成目標として、高校卒業段階に英検準2級から2級程度のレ ベル以上を50%達成することを掲げている。では、実際はどの程度の英語力が身についているの であろうか。文部科学省の調査では、実際の生徒の英語力について、高校3年生では、CEFR:A1 の上位(英検3級程度)∼A2(英検準2級程度)の下位レベルが多いという結果が示されており、 特に「話す」「書く」の言語活動に課題が多いという指摘がなされている(16)。この結果から、文 部科学省が目標とするレベルには遠く及ばないということがわかる。また、TOEIC の2017年度 新入社員 TOEIC Listening & Reading 最新データによると、新入社員の平均スコアは485点である。 新入社員の平均スコアを分野別に見ると、最もスコアが高い分野である文系(教育、美術、言 語、文学、音楽、心理学)でも平均スコアは542点にとどまっている。これらのスコアは英検で 表すと準2級から2級程度を指し、上記の文部科学省が行った調査結果とほぼ同様の結果である と言える。従って、現在の日本人英語学習者の英語力は大学卒業段階であっても、英検準2級か ら2級程度レベルにとどまっているという状況であると言えるのではないだろうか。このレベル を先ほどの TAFE Queensland における English Language Equiva lencies に当てはめると、IELTS 5.0 かそれ以下のランクの位置付けとなることがわかる。この結果からわかることは、大学卒業の時 点においても英語を駆使して海外で仕事をするというレベルには到底届いていないということで ある。TAFE Queensland が出している職業教育訓練の専門コースを履修するために必要な IELTS 5.5というレベルは、訓練のための専門コースを履修するためのレベルであって、職業に就くこ とができるレベルではない。そのため、英語を使いながら海外で仕事を得ようとするのであれば、 より高い英語力が求められるということである。TAFE のような、専門的な知識をつける職業と 密接に関連した就業という観点から英語の運用能力を考えると、専門的な知識をつける段階で、 英語力が足りないことを意味する。上述した「生徒の英語力向上推進プラン」では、第二期教育 振興基本計画において、高校卒業程度の英語力を英検準2級程度∼2級以上を50%にする目標 が掲げられたが、次の段階としては、英検準1級レベルまで英語力を向上させる必要があり、就 業との専門的な学びを含めた新しいカリキュラムが必要となるのではないだろうか。 5.まとめ  本稿では、オーストラリアにおける教育制度、特に中等教育以降における教育について述べて きた。また、中でも職業教育訓練機関である TAFE に焦点を当て、オーストラリア国内における 役割と提供している教育分野についてまとめた。さらに、日本の英語教育との比較という観点か ら、TAFE Queensland で開講されている英語を母語としない学習者を対象とした英語コースを取 り上げ、海外で専門分野を学ぶために必要とされる英語力について検討した。  現在、日本においては様々な段階において英語教育改革がなされている。国からも日本人が身 につける英語力の達成目標が示され、それに沿う形でカリキュラム等が組まれ、それぞれの教育

(9)

職業教育訓練機関 TAFE における学びと英語教育 機関において取り組みが行われている。しかしながら、日本人英語学習者の英語力は、海外で専 門分野を学習したり、英語を駆使して働いたりというところまでは、スコア上からすると、現在 のところ至っていないということが明らかとなった。海外での学びや就業のために必要とされる 英語力の向上を目指して、どのような技能に重点を置いていくのかということについては今後も 引き続き検討していく必要があると考える。 注 ⑴ 外務省 HP「オーストラリア基礎データ」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/Australia/data.html ⑵ 国立教育政策研究所・JICA「第7章オーストラリアの教育課程」『グローバル時代の国際教育の あり方国際比較調査第一分冊』p. 7‒1 ⑶ 外 務 省 HP「 諸 外 国・ 地 域 の 学 校 情 報 」http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/02pacific/ infoC20100.html の情報を基に筆者らがまとめたものである。 ⑷ 前掲⑵ p. 7‒1 ⑸ 前掲⑵ p. 7‒3 ⑹ 前掲⑵ p. 7‒3 ⑺ 中村雅美(2016)「オーストラリア職業教育訓練教員の資格要件─専門技術継続教育機関(TAFE) の高等教育段階に着目して─」『産業教育学研究』46巻1号 p. 16 ⑻ 同上 p. 17 ⑼ 同上 p. 17

⑽ Australian Qualifications Framework HP “The AQF Second Edition January 2013” の “Location of AQF qualification types in the levels structure” p. 18を筆者らが表としてまとめたものである。

⑾ 児美川孝一郎(2010)「オーストラリアにおける若者の「学校から仕事への移行」支援の現状と 課題⑷─職業教育訓練における TAFE の役割─」『生涯学習とキャリアデザイン』p. 39

⑿ 前掲⑺ p. 17 ⒀ 前掲⑾ p. 40 ⒁ 前掲⑾ p. 41

⒂ TAFE Queensland で は、 事 前 の 英 語 プ レ イ ス メ ン ト テ ス ト と し て、Prelim Placement Test に Grammar/Vocab/Reading があり、First Day Placement Test として、Grammar/Vocab/Reading/Speaking /Listening が行われる。 ⒃ 文部科学省 HP「作業部会における検証状況について」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/03/25/1356067_02.pdf 引用・参考文献 児美川孝一郎(2010)「オーストラリアにおける若者の「学校から仕事への移行」支援の現状と課題⑷ ─職業教育訓練における TAFE の役割─」『生涯学習とキャリアデザイン』 中村雅美(2016)「オーストラリア職業教育訓練教員の資格要件─専門技術継続教育機関(TAFE)の 高等教育段階に着目して─」『産業教育学研究』46巻1号 山中冴子(2015)「オーストラリアにおけるインクルーシブ・カリキュラムに関する動向─ニューサ ウスウェールズ州を中心に─」『埼玉大学紀要教育学部』64(1) 国立教育政策研究所・JICA「第7章 オーストラリアの教育課程」『グローバル時代の国際教育のあ り方国際比較調査第一分冊』

(10)

外務省 HP「諸外国・地域の学校情報」http://www.mofa.go.jp/mofaj/ toko/world_school/02pacific/infoC 20100.html(情報取得日2018/01/06)

文部科学省HP 「作業部会における検証状況について」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/03/25/1356067_02.pdf(情報取得日2018/01/06)

Australian Qualifications Framework Council HP “The Australian Qualifications Framework Second Edition January 2013” https://www.aqf.edu.au(情報取得日2018/01/06)

TAFE Queensland HP http://tafeqld.edu.au/(情報取得日2018/01/06)

Benesse Gobal Learning Center HP https://www.benesse-glc.com/(情報取得日2018/01/06)

参照

関連したドキュメント

日本語教育に携わる中で、日本語学習者(以下、学習者)から「 A と B

高等教育機関の日本語教育に関しては、まず、その代表となる「ドイツ語圏大学日本語 教育研究会( Japanisch an Hochschulen :以下 JaH ) 」 2 を紹介する。

以上のような点から,〈読む〉 ことは今後も日本におけるドイツ語教育の目  

 日本語教育現場における音声教育が困難な原因は、いつ、何を、どのように指

確かな学力と自立を育む教育の充実 豊かな心と健やかな体を育む教育の充実 学びのセーフティーネットの構築 学校のガバナンスと

かであろう。まさに UMIZ の活動がそれを担ってい るのである(幼児保育教育の “UMIZ for KIDS” による 3

ところが,ろう教育の大きな目標は,聴覚口話

「職業指導(キャリアガイダンス)」を適切に大学の教育活動に位置づける