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ドセタキセル・シスプラチン併用化学療法を施行した肺扁平上皮癌の一例 利用統計を見る

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平成10年9月1日

ドセタキセル・シスプラチン併用化学療法を施行した肺扁平上皮癌の一例

市立甲府病院 内科 大木善之助 小澤克良 川口哲男 同 外科 金子和彦 【要旨】 St age lllb進行肺扁平上皮癌に対し、日本初のタキソイド系の抗癌剤であるドセタキセルと シスプラチンの併用化学療法を3コース施行しPRを得た。3コースともに1000/mm3前後の好中球減 少が出現したが、(…トCSF投与にて速やかに回復した。ドセタキセルに特徴的な副作用である体液貯留 が認められたが自然経過にて消失した。ドセタキセル・シスプラチン併用化学療法は、一般臨床の場に おいて十分安全に行い得ると思われ、今後進行非小細胞肺癌に対する治療法の一選択肢となリ得ると思 われた。 Key words:ドセタキセル,肺癌化学療法,ドセタキセル・シスプラチン併用化学療法 【はじめに】ドセタキセルは、日本初のタキソイド系の抗癌剤であり、比較的既存抗癌剤との交叉耐性 が少なく、単剤による非小細胞肺癌に対する奏功率は22.4%であリ1)、シスプラチンとの併用化学 療法が多く試みられ、第ll相臨床試験中間報告によればその奏功率は47.6%と比較的優れた成績であ る。 臨床検査値異常では、白血球減少、好中球減少が高頻度に見られ、好中球減少は本剤のDLFであリ、 特徴的な副作用には発現頻度は少ないものの過敏反応、体液貯留がある。2) (表1)  今回我々は、このような特徴を有する抗癌剤であるドセタキセルとシスプラチンとの併用化学療法 をStage ll1 bの肺扁平上皮癌に対し試みたので報告する。 【症例】症例は54歳男性。主訴は乾性咳轍。喫煙歴は1日30本、30年間。現病歴は、平成9年12月上 旬よリ乾性咳噺出現し近医受診。胸部レントゲン、erにて異常陰影を指摘され精査目的にて当院に入 院となった。入院時現症では、右鎖骨上窩に可動性不良なリンパ節を数個触知した以外異常所見は認め ず、入院時検査成績では血算、生化に異常を認めず、Ccrも77.7ml/minと正常範囲内であった。腫瘍 マーカーでは(主Aが33.3ngl mlと高値を示していた。入院時胸部レントゲン写真(図1)では、肺野に 明らかな腫瘤は認められず、右肺門部のリンパ節腫大、右気管気管支リンパ節及び右傍気管リンパ節の 腫大を認めた。入院時の胸部or(図2)では、原発巣は右S5に1.5cm大の腫瘤として認め(図2上)、 気管分岐部でスライスされた縦隔条件(図2下)では、気管分岐部リンパ節、右気管気管支リンパ節の 腫大を認めた。気管支鏡検査では、右中葉支の狭窄と底幹との分岐角の鈍化を認め、同分岐部からの生 検組織像(図3)における細胞質内のケラチン様物質の存在、細胞間橋の存在よリ低分化型扁平上皮癌 と診断した。遠隔転移はなく病期はTlN3MO Stage ll1 bであった。 【経過】患者本人よりインフォームド・コンセントを得、約4週毎にドセタキセル・シスプラチンの併 用化学療法を計3コース施行した。投与スケジュール(図4)は、第1相臨床試験により至適スケジュー ルが決定されており、ドセタキセル60mg/m2を1時間かけて点滴静注しその3時間後にシスプラチン 80mg/m2を2時間かけて点滴静注した。これを1コースとして実施した。臨床経過(図5)では、副作 用として認められた自覚症状は全身倦怠感と全身性の浮腫であリ3コースともに認められた。全身倦怠 感は投与直後よリ認め4∼5日の経過で消失し、浮腫は投与後約2週間より認められたが利尿剤等使用 せず7∼10日後に消失し次コースの化学療法に支障をきたさなかった。過敏症状はいずれのコースに おいても発現しなかった。臨床検査上の副作用は、白血球、好中球減少であリ、好中球数はいずれのコー スでも投与後約1週間で1000/mm3前後となり約5日間のG−CSF投与にて速やかに回復した。(EAは ・順調に低下し、3コース終了時には5.Ong/mlとほぼ正常域となった。他に認められた副作用は、脱毛、 シスプラチンによると思われる嘔気であった。 一63一

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められたリンパ節腫大は治療後(図7下)にはほぼ消失した。なお、治療前に認められた気管分岐部よ り上のリンパ節腫大もほぼ消失しており、右鎖骨下に触知したリンパ節腫大も消失した。治療前後の気 管支鏡検査(図8)では、治療前(図8上)にみられた中間気管支幹の発赤、腫脹、中葉支の狭窄、中 葉支と底幹分岐部の鈍化は治療後(図8下)にはほぼ正常化しており、治療開始前に生検で陽性であっ た中葉支分岐部の生検では腫瘍細胞は認められなかった。3コース終了後2ケ月の時点で悪化所見はな く、画像所見及び気管支鏡所見よリ、原発病巣のみがわずかに残存しておリPRと判定した。 【考察】今回我々は、進行肺扁平上皮癌に対しドセタキセル・シスプラチンの併用化学療法を3コース 施行しPRを得た。3コースとも1000/mm3前後の好中球減少が出現したが、 G−CSF投与にて速やか に回復した。Nadi rまでの期間は、3コースともに一定であり十分に予想でき、本剤による外来化学療 法の可能性も示唆された。また本症例で認められた自覚症状に軽度の全身倦怠感、全身性の浮腫があっ たが、自然経過にて消失しており治療前の腎機能を含めたPSの状態把握により最小限に抑えられると 思われた。以上よリ、今後ドセタキセル・シスプラチンの併用化学療法は進行非小細胞肺癌に対する治 療法の一つの選択肢となり得ると思われた。 【参考文献】

1)工藤翔二他:癌と化学療法,21(15),2617,1994

2)横山 晶 他:癌と化学療法,21(15) 2609,1994 一64一

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平成10年9月1日 表1

ドセタキセルの特徴

1,日本初のタキソイド(タキサン)系抗悪性腫瘍剤である。 2.新規の作用機序を有する。 3.既存抗癌剤との交叉耐性が少ない。 4.ドセタキセル単剤による非小細胞肺癌に対する奏効率は  22.4%であった。 5.シスプラチンとの併用化学療法による非小細胞肺癌に対  する奏効率は、中間解析時点で47.6%であった。 6,最も高頻度に認められる臨床検査値異常は、白血球減少・  好中球減少であり、好中球減少は本剤のDLFである。 7,本剤に特徴的な副作用には、過敏反応、体液貯留があるが  発現頻度は少ない。主に脱毛、食欲不振、全身倦怠感、悪  心、発熱などの副作用がみとめられる。 図1 図2 一65一

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       図3        投与スケジュール

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  補助療法   1.G−CSFの投与 G3の白血球、好中球減少時より投与可   2.制吐剤の投与:予防投与可(グラニセトロンなど)        図4 図5 一66一

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平成10年9月1日

図6 図7

 図8

参照

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