海外市場参入行動研究の展望 : 新興市場参入行動の分析にむけて
22
0
0
全文
(2) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 「なぜ海外直接投資が行われるのか」,. 「なぜ多. 弘安). (103). 103. 資,輸出,技術供与の選択条件を説明するとい. 国籍企業という経済主体が現れるのか」という. う目的に転換したものであるということができ. 素朴な問題意識にこたえることを目的とした一. る.. 連の研究成果である.. の要因それぞれにふくまれる下位の要因を明ら. 海外直接投資の経済理論は,直接投資を企業. MFME選択モデルの研究は,これら3つ. かにし,それぞれが選択にあたえる影響の内容. がとりうる選択肢の1つと見なし,輸出や技術. を命題として提示し,検証することを主目的と. 供与を代替案としている.うえの問題意識は,. している2.. 輸出や技術供与ではなく,直接投資を選択する. これらMFME選択モデルでは,参入形態が. のはなぜかという問題意識に置換される.そこ から直接投資の選択条件を明らかにするという. 図1のように統制力と資源投入量という2つの. 作業が輸出・技術供与が選択される条件を明ら かにすることと同じになるのである.. MFME. 概念的次元から類型化される.. まず,最初に前提とされていることは,参入 形態が当該参入企業による現地事業活動の統制. 選択モデルが海外直接投資の経済理論を源流と. 力(control)の大きさを表わすというものであ. する理由がここにある.海外直接投資の経済理. る.この統制力は,輸出や技術供与と比較して. 論にかんしては,すでに多くの優れた展望研究. 直接投資が大きいとされる.それは株式所有こ. が存在することから,以下ではそこまでさかの. そが意思決定にかかわる権限確保の拠所である. ぼることはしない].. という考えにもとづく(woodcocketal.. Ⅱ-1.基本的視角. したがって,この考えから株式所有の比率(出 資比率)におうじて,さらに統制力の大きさが. [1994]).. MFME選択モデルは,海外直接投資の経済 [1979/ 理論のなかで,ダニング(Dunning. 現れることになる.すなわち,少数所有,折半. 1981])の折衷フレームに依拠している.ダニ. なり,直接投資という1カテゴリーのなかに,. ングによる折衷フレームは,. 3つの要因から直 3つの 接投資がなされる条件を示そうとする.. さらにいくつかのタイプが参入形態として識別. 要因とは,企業特殊的要因,立地特殊的要因,. 略の遂行・変更を円滑にするだけでなく,利潤. 内部化要因である.. の分配でのシェアを大きくするための拠り所に. MFME選択モデルは,直. 接投資を説明するための折衷フレームを直接投 図1. 所有,多数所有,完全所有の順に統制力が高く. されるのである.この統制力は活動の調整や戦. なると考えられている(Anderson. MFME選択モデルでの参入形態概念. l. ー. 参入形態. -. GatignoⅢ.
(3) 104. (104). ',. [1986]. 横浜経営研究. Kim. -. Hwang. [1992]).. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). Ⅱ-2.実証分析. この統制力の対概念が資源投入量(resource. うえのような基本的視角のもと,これまでに. commitment)である.輸出や技術供与と比較 すれば,直接投資は統制力が大きいと同時に資. 多様な影響要因の識別と参入形態との関連が検. 源投入量も大きい.また,総出資額を所与とす. グ(Livtak-Banting. れば直接投資のなかでも株式所有比率が高いほ. ⅢaIIZ [1972])の研究に見 ハンツ(Goodnow られるように,立地特殊的要因という特定要因. ど,資源投入量が大きいことを意味する.した. がって,直接投資のなかでも完全所有は,ほか. 討されてきた.当初はリブタック-バンティン. [1968]),グッドナウ-. の所有方式にたいして統制力・資源投入量がも. に限定した分析がなされており,ダニングのよ うな折衷フレームにもとづいた分析がなされる. っとも大きな形態として特徴づけられる.この. ようになったのは比較的最近のことである.. ように定式化される資源投入量は,資源のなか でも財務的資源に着日したものである.換言す れば,資本投下量の大きさとして言及されたも. そのダニングによれば,直接投資が選択され るのは,以下の3つの条件がすべて成立したと きである(Dunning. [1981]).. のである.そして,この資源投入量がリスクの 大きさと関連すると見なされる.. □条件1. :企業は特定市場において他国の企. 業にたいして所有の優位性をもっ. このように,参入形態は統制力と資源投入量 の大きさという次元で定式化され,統制力を高 めるためには資源投入量を増加させる,換言す. ている.それは少なくとも一定期 間それを所有する企業に排他的・. れば資源投入量を増加させれば統制力を強める. 固有な無形資産の保持という形態. ことができるという関係を主張する.現実の参. をとる.. 入形態は,このような視点から分類される.衣. □条件2. 1は,先行研究でとりあげられた参入形態を統 制力と資源投入量から分類したものである. こうした関係を想定したうえで,影響要因と. って外国企業に売却・賃貸するよ りは内部化したほうが有利である. ロ条件3. 形態選択の相互関連性を分析の焦点としてきた のである.. 表1 続制力/資源投入量(高). :所有の優位性を技術供与などによ. :少なくともある投入要素について は母国以外で優位性を活用したほ うが利益があがらねばならない.. MFME選択モデルにおける参入形態 完全所有子会社(100%株式所有) 多数所有(合弁子会社). 統制力/資源投入量(中). 過半数所有(合弁子会社) 折半所有(合弁子会社). 統制力/資源投入量(低). 少数所有(合弁子会社) 契約型合弁 技術供与 排他的流通契約(独立流通業者を利用した販売;間接輸出) 開放的流通契約(独立流通業者を利用した販売;間凄輸出). ※流通契約では排他的な方が開放的よりも統制力が高いと想定される. Anderson. -. GatignonをはじめMFME選択モデルの研究より作成..
(4) (105). 弘安). 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 105. いして,. 択されずに輸出や技術供与が選択されるのは,. POIモデルはそれを拠所とせず,主と して海外市場参入にかかわる意思決定者の行動. 本命題の対偶として,うえの3つのいずれか1. をベースとし,特定市場における参入形態の時. つの条件でも成立しないときである.ダニング は,それを表2のようにまとめている.. 系列的な推移を説明することを目的としている.. このような本命題からすると,直接投資が選. 3つの要因が各形態の選択をうながす条件を. しかし,. MFME選択モデルに比較して,この. poIモデルが海外市場参入行動モデルとして大. みたすとき,それらは所有の(企業特殊的)倭. きくとりあげられ,検討されることはこれまで. 位性,立地特殊的優位性,内部化優位性と呼ば. にほとんどなかった.そこで,以下では. れる.しかし,これらはさらに数多くの下位要. MFME選択モデルよりもくわしく見ることに. 因群をゆうしており,複合的な構成概念である.. しよう.. また,参入形態には多様なものがあるが,ダニ ングの研究では直接投資と輸出,技術供与の3. Ⅲ-1.初期の研究:北欧企業の事例観察 poIモデルに包括される一連の研究は,スウ. つしか対象とされておらず,直接投資を構成す る株式所有率にもとづく参入形態の存在は考慮. ェーデンやノルウェーといった北欧諸国の研究. されていない.. 者によって行われてきた.北欧系企業を時系列 で観察し,その結果から行動原則を導きだそう. 折衷フレームにもとづくMFME選択モデル は,このダニングの見解をベースにして,より 多様な参入形態を対象として立地特殊的要因, 企業特殊的要因,内部化要因を構成する下位要 因群との関係を分析してきたのである.表3は,. 研究は,. 4社ないし5社,多くとも10社程度. の観察にもとづいている.のちに,こうした少 数企業の事例観察から導かれた説明の妥当性を, より大量の標本を用いて検証するという作業が 行われている.. これまでのMFME選択モデル研究でとりあげ られてきた要因群をまとめたものである.. 研究の端緒は,ヨハンソン-ヴイ-デルシュ. MFME選択モデルにかんする仮説と実証結果. イム・ポール(Johanson. は,表の右二欄に示したとおりである. Ⅲ.. とするものである.とくに,初期のPOIモデル. -. Wiedersheim-Paul. [1975])によるスウェーデン企業4社の事例観. pOlモデル. 察であった. 企業の事例観察から導き出した考え方はつぎ. MFME選択モデルとならんで,企業の海外. 市場参入行動を説明しようとする研究潮流とし. のようなものである. すなわち,企業の海外進出にあたって障害と. て,国際化プロセス(POI)モデルがある. poIモデルは,とくに北欧諸国の研究者によっ. なるのは資源と知識の欠如である.この要因は,. て展開されてきた.. 海外進出先と参入形態の双方に影響をおよぼす. MFME選択モデルが,港. 外直接投資の経済理論を基盤としているのにた. ことになる.知識や資源が欠如しているという ことは,担当管理者が不確実な状況で意思決定. 表2. ダニングによる参入形態選択条件 企業特殊. 立地特殊. 的優位性. 的優位性. を行うことを意味する.この不確実性を削減す. 内部化優位性. 参入の形態は,資源投入量と情報(知識の源泉). 輸出. ○. ×. ×. 技術供与. ○. ○. )<. 直接投資. ○. ○. ○. ※ Du皿ing【1981】,p. 32を出所・. るための対応次元が進出先と形態と考えられる.. という視点から3つのものがとりあげられる. 独立の貿易業者を利用した輸出,販売子会社を 利用した輸出,生産子会社である.資源投入量 は生産子会社で最大となる.また,情報にかん.
(5) 106. (106). 横浜経営研究 表3. MFME選択モデルにおける影響要因. 影響要因. カントリーリスク. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). 先行研究. 仮説. Goodnow-Hanz[1972];Agarwal[1990];Kin-Hwang[1992]. 実証結果. (⊃. Anderson-Gatignon[1986]. n,a.. 政府の関連規制. Goodnow-Hanz[1972];Agarwa1[1990];Anderson-Coughlan[1987]. 現地国の精通性. Kim-Hwang[1992]. 現地/本国の社会/文化的距離. Goodnow-Hanz[1972];Anderson-Gatignon[1986];. n.a.. 外資企業社会の大きさ. Anderson-Gatignon[1986]. n.a.. 需要の不確実性. Kim-Hwang[1992]. 市場規模. Goodnow-Hanz[1972];Agarwal[1990]. +. ○. 市場の成長性. Goodnow-Hanz[1972];Agarwa1[1990]. +. ○. 競争の激しさ. Kim-Hwang[1992]. 競合企業の形態(高統制). Amderson-Cougblan[1987]. +. E3. 資源既存度. Agarwa1[1990]. +. ○. 資産の優位性. Agarwal[1990]. 十. ○. 取引の優位性. Agarwa1[1990]. 十. ○. 企業特殊的ノウハウの価値. Kim-Hwang[1992]. +. ×. ○ ○. ○ +. ○. ×. ×. ノウハウの暗黙性. Kim-Hwang[1992]. +. 知識の消散リスク. Agarwal[1990]. +. ノウハウ保護規制. Anderson-Coughlan[1987]. 契約作成/執行費用. Agarwal[1990]. +. ○. サービスの専門性. Agarwa1[1990];Anderson-Coughlan[1987]. +. ○×. 銘柄資産. Anderson-Gatignon[1986];Anderson-Coughlan[11987]. +. n.a.. ×. 岳岳担.;要害_J. ≡喜≡=亨 n.a.. ・L.-.....-...I. グローバル集中度. Kim-Hwang[1992]. +. ○. グローバル.シナジー. Kin-Hwang[1992]. +. ○. グローバルな戦略動機. Kim-Hwang[1992]. +. ○. ※仮説は高統制(高資源投入量)にたいする作用を示す. ※実証結果は○が仮説支持,. ×が不支持,. n.a.が実証作業なしを示す.. しては,販売子会社を利用した輸出や生産子会 社では情報の経路を統制することが可能となる. いう形態で参入することになるという.さらに, 形態にかんしては,資源投入量をおさえるとい. と考えられている.そして,進出先について担. う目的から最初は独立の貿易業者を利用するこ. 当管理者は,近隣諸国や事業慣行といった点で,. とになるという.. 本国と比較的類似した市場にたいして,翰出と. このように企業は当初,資源と知識の欠如と.
(6) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 弘安). (107). いう制約条件のもとで不確実性をおさえること. 次に資源投入量の大きなものへと推移していく. を第一の目的とした行動を展開する.しかし,. こと,この2つが柱になっている.後者につい. のちにこれら障害は,実際の事業活動をつうじ た経験の蓄積や学習にともない削減されていく.. ては段階的(stepwise)市場参入という概念が. 107. 提起されている.. そして,販売における統制の必要性が増大した. ノルウェー企業12社の英国市場参入を観察. り,需要獲得の必要性が増大してくるにあわせ. した結果,この段階的市場参入は支持される.. て,より多くの資源投入量が必要となる形態に 転換されることになる.つまり,最初の貿易業. すなわち,企業はまず独立の貿易業者をつうじ. 者をつうじた輸出から販売子会社,さらに生産. た輸出から着手し,つぎに販売子会社を現地に 設立して輸出を行う形態に推移する.国内需要. 子会社へと推移していく.. 規模がひきつづき大きなこと,輸出にともなう. かれらの研究は,企業の海外市場参入にかん. 本国から英国までの輸送費用という点で現地生. 1つは,特定 して2つの次元を包含している. 国市場における参入形態の推移という視点であ. 産が有利であることが判明し,さらに競争への. る.もう1つは,多様な対象国のなかからの参. あると認識された場合に生産子会社の設立がな. 対応として迅速な製品供給体制の構築が重要で. 入市場の選択という視点である.この次元は,. されると指摘する.また,現地子会社を設立し. 当該企業が海外という国内以外の市場に,はじ. た場合は,英国市場にかんする情報だけではな. めて進出するという局面を対象に現れている.. く,旧植民地市場など,ロンドンにおける事業. かれらが示した資源投入量と情報は,不確実性 削減という概念に連結され,意思決定の次元と. ネットワークを利用した第三国市場にかんする 情報を収集し,本国に伝達したり,実際に受注. して参入先と形態の2つが導かれている.われ. を確保するといった重要な役割がうまれてくる. われの研究対象からすれば,注目しなければな. ことが明らかになっている.かれらはこのよう. らないのは特定市場における参入形態の推移と. な役割を橋渡(bridging)機能と呼んだ・. いう次元である.かれらが強調しているのは, 特定国にたいする企業の参入形態は資源投入量. Ⅲ-2.事例観察の解釈と検証. の少ないものから多いもの-と時系列的に変転 していることである.これをかれらは展開連銭. -Vahlne ヨハンソン-ヴアールン(Jobanson [1977]),エラミリーニラオ(Erramilli=Rao. (establish chain)と呼んだ. 同じ北欧企業でも,ノルウェー企業を対象に. [1990])の研究は,こうした事例観察にもとづ. 同様の分析を行ったのがジュール-ウオルター [1987])であった.かれら ズ(Juul-Walters. 広範な妥当性を追求しようと試みたものである.. はヨハンソン-ヴイ-デルシエイムーポールの. を依拠しており,しかもそれは参入形態の推移. 研究に全面的に依拠している.基本的な考えか. たは,海外市場参入行動を知識・資源の欠如,. の事実を明らかにしたものであるが,なぜその ような推移がなされることになるのかという点. その蓄積にともなう不確実性削減として説明す. の説明は不十分であると思われる.資源投入量. ることができるというものである.参入行動は 参入先と形態という2つの次元からとらえられ,. や情報,不確実性といった概念が,はたして説 明の鍵となっているのかどうかは,いまだ十分. 不確実性を削減するために管理者に馴染みのあ. に明らかにされていない.この点の説明を試み. る市場,情報の収集と解釈が容易な市場から最 初の海外事業に着手すること,特定市場への参. たのがヨハンソン-ヴアールンである3.. 入形態は経験によって知識を蓄積することで順. 信頼しうる情報が欠如した状況でなされるとこ. く考察結果をより理論的に説明し,さらにより. 以上に見た2つの代表的研究は観察結果に多く. かれらによれば,海外市場参入の意思決定は,.
(7) 108. (108). 横浜経営研究. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). 「ビジネスマン. ろに特徴があり,かつその意思決定は投資にか. このような特性が生ずるのは,. んするものであるという.情報が欠如している というのは,とくにこれまで当該企業ないし管. の経験のほとんどは,特定の状況に密接に関連. 理者が従事してきた国とは異なった環境での事. なためである(p.53)」.かれらは,海外事業と. 業にかかわるということである.環境が異なる というのは,現地の文化や社会,言語などの違. いう局面では,この経験的知識が決め手になる と考える.すなわち,特定国での事業活動にさ. いにより,管理者への情報のながれが阻害され たり,あるいは収集・解釈が困難であることと. いして重要となるのは,市場特定的知識 (market specific knowledge)であり,その国で. とらえられる.そして,このような不確実な状. 実際に事業活動に従事することによってしか獲. 況で意思決定をするということは,結果,すな. 得することができないものであるということで. わち投下した資本の回収や純正味利潤の獲得が. ある.そこで,このような知識に欠如している. 不確実であり,損失が発生する可能性に直面し. 企業ないし管理者は,まず最初に外部の個人や. ていることを意味する.このような状況では, まず意思決定者は投資規模をおさえることが対. 企業組織との協働というかたちをとって知識の. 応方法であると認識する.そして,そのような. 貿易業者をつうじた輸出形態が最初にとられる. 方法のもとで事業活動を行い,知識を蓄積して. ことを説明する.. いくことが不確実性削減をめぐる第2の対応方 法となる.この2つの対応方法は代替的な関係. 来の研究では資源にかんして,その投入量のみ. にあるものとされ,知識の蓄積をつうじて不確. が考慮されていた.しかし,かれらはそれにく. 実性を削減し,資源投入量の拡大をはかってい. わえて資源の性格という視点に注目し,投入さ. くことになると想定される.これが特定国にお. れた資源の用途的な代替性を考える.投入資源. ける参入形態が時系列的に変転することを説明. の用途代替性とは,それをほかの市場でも利用. するものであるという.. することができるか,あるいは当該国でしか利. しかし,以上の説明はヨハンソン-ヴイ-チ ルシュイムーポール,ジュール-ウオルターズ の説明を大きく超えるものではない.. POIモデ. したものであり,その個人と分離するのが困難. 獲得・補充につとめることになる.これが独立. つぎに,かれらは資源の性格に注目する.従. 用できないのかという問題である.これは資源 投入量とならんで不確実性下における意思決定. に影響をおよぼすものと考えられる.すなわち,. ルをめぐるヨハンソン-ヴアールンの貢献は,. 生産子会社の設立は用途代替性の低い投資であ. 従来から重要となってきた資源や知識という概. ると想定され,不確実な状況で意思決定を行う. 念を詳細に検討し,それぞれの性格を明らかに. とき,意思決定者は資源投入量を抑制するとと. することをつうじて,参入が段階的に行われる. もに,用途代替性が限定されるような投資はひ. 理由を示したところにある.. かえることになると考えるのである.. かれらは,企業成長にかんするペンローズ. 以上のような,知識と資源の性格を考慮した. (penrose [1959])の考えを用いて,知識を客. 場合,初期参入形態として貿易業者を利用した. 観的知識と経験的知識の2つにわけている.こ. 輸出が選択されることになり,知識の蓄積をつ. の2つは知識の移転可能性によって区分される.. うじた不確実性の削減にともない投入資源量が. 客観的知識とは,異なる人間の間での移転が. 多く,またその用途代替性が低いような形態と. 容易ないし可能であり,それをつうじて内容が. して順次,販売子会社,生産子会社へと形態の. 変化する可能性が低い知識である.経験的知識. 転換がなされていくと説明される.. とは,個人の経験をつうじて獲得される知識で あり,ほかの個人への移転が困難なものである.. さて,こうした考えかたを米国サービス企業 の海外市場参入を対象に検証したのがエラミリ.
(8) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. -ニラオである.ただし,その検討の方法は北 欧研究者がしたような特定企業の特定市場にお ける参入形態の推移を時系列で観察していくと. まず,. 弘安). (109). 109. MFME選択モデルとpoIモデルは,. いずれも企業の海外市場参入行動を説明するこ とに大きな目的がある.ただし各研究は,より. いうものではなかった.かれらは,サービス企 業を対象にして,その市場戦略を2つに大別す. 下位のレベルで目的面での相違があると考えて. る.標的とする顧客によって,海外市場に進出. る.. する国内市場の既存顧客を対象とする顧客追随. いる.それを明示しているのはpoIモデルであ. poIモデルは,. MFME選択モデルの基本認識. 壁,現地の顧客を新規に開拓することを目的と. を批判することに端を発している.. する市場探索型の2つである.この戦略タイプ. 択モデルは,海外直接投資の経済理論のながれ. は,. をくんでいるが,そこでは実証的な研究を中心. poIモデルにそくして,つぎのように解釈. MFME選. される.すなわち,顧客追随型は,すでに取引. にして,しばしば総資産額や従業員数,売上高. 関係をもつ国内顧客を対象とする点で,現地顧 客を新規に開拓する市場探索型と比較して,よ. によって示される企業の規模が直接投資に正の 影響をおよぼすことが主張されてきた. MFME. り多くの知識が蓄積されており,意思決定の不. 選択モデルは投下資本の調達面での有利性や国. 確実性は相対的に小さくなる.それゆえ,市場. 内市場における競争優位性,ダニング流にいえ. 探索型に比較すれば顧客追随型のほうが資源投. ば企業特殊的優位性を企業の大規模性という特. 入量の大きな参入形態が選択されることになり,. 徴にむすびつけている.. 市場探索型の場合では現地の個人や企業組織と. 協働することで欠如した知識を補充し,資源投 入量が少ない参入形態が選択されることになる. poIモデルは,規模と直接投資の関係におけ る説明を批判する.. 第1に,このような説明では直接投資をうな. と予想する.. がす企業特殊的要因(優位性)がなぜ形成され. この研究は,企業の海外市場参入形態の推移 を説明するというよりも,異なるタイプの企業. るのかがわからないという.第2に,より重要. を比較することをつうじて,ヨハンソン-ヴア. 直前に,しかも国内市場においてすでに形成さ. ールンなどによる参入形態推移の説明様式を検 証しようとする代替的なアプローチである.質. れているものであるのかに疑問があるという.. 問票形式で収集した米国におけるサービス企業. 直接投資以前の,ほかの形態による事業活動を. 175社628の参入データは,かれらが提示した. つうじた知識も,直接投資をうながす要因とし て考慮すべきではないかということである.. 仮説を支持している4.. このように現状のPOIモデルでは市場特定的 (経験的)知識,資源の投入量・用途代替性,. な点として企業特殊的優位性は直接投資を行う. それは前節での展望で明らかになったように,. poIモデルの研究は事例観察にもとづいてこの 点を検討しているが,参入形態が時間的に変化. それらを包括する不確実性によって参入形態の. していくという基本的な視角は,まさにそこか. 推移が説明されているのである.. らうまれることになる. しかし,. Ⅳ.研究潮流の比較. 前節では,海外市場参入行動モデルとして. MFME選択モデルの結果をあらた. めて現実にあてはめるならば,参入形態の変転 は影響要因という変数の値の偏差,あるいはパ. MFME選択モデルとpoIモデルを展望した.. ラメーターのシフトによって説明されることに. まずは,この2つの研究潮流を相互にどのよう. なると考えられる.実際,少ないながらも個別. に位置づけ,評価すればよいのか,この点を検. 企業の参入形態の時間的推移を見るという発想. 討してみたい.. で実証的・理論的検討を行っている研究がある..
(9) 110. (110). 横浜経営研究. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). 源流となる海外直接投資の経済理論では,ラグ. ても説明することは可能であり,またMFME. マンが技術の専有性をライフサイクルとむすび [1981]).そこ つけて説明している(Rugman. 選択モデルにたいする批判点が分析にいかされ. では,ライフサイクルが初期の場合は当該技術. 見いだすことはできないことになるのである.. が企業の競争優位の源泉であり,それが他者の 手にわたることでさらされる消散リスクが高い. つぎに,海外市場参入行動がどのようなもの と考えられてきたのかという点であるが,いず. ことから内部化優位がはたらき直接投資が選択. れのモデルでも海外市場参入行動は参入形態の. されるが,ライフサイクルが成熟期にむかい,. 選択と考えられており,共通である.この参入. 技術の専有性が低くなると費用最小化原理のも. 形態には,概念的な規定と現実的な規定という. とで技術供与が選択されるという結論がえられ. 2つの設定様式があり,この点でも両者は共通 2つのモデル している.概念的な規定として,. ている.. くわえて,. ておらず,したがって両者の問に明確な差異を. POIモデルは意思決定者が当初は 知識に欠如しており,予期せぬ事態が生じて発. はともに資源投入量をかかげている.そして, 資源投入量が統制力と正に関連すると想定され. 生する最大損失を低くするために資源投入量の. ている点も同じである.. 少ない形態を採用し,その形態のもとで知識を. このような概念的な規定にもとづいて,実際. 蓄積するようになると資源投入量の大きな形態. の参入形態が分類される.この点,. へと推移していくとする.しかしながら,この. は,. ような考えかたはpoIモデルに固有のものでは ない. MFME選択モデルでも立地特殊的要因. MFME選択モデルでは,技術供与にくわえ, 株式所有比率によって,さらに多様な形態が挙. として現地市場にかんする精通性がとりあげら. げられている.しかしながら,. れており,それら要因は資源投入量,統制力と. デルの研究個々が,これら多様な形態のすべて. の間で正に関連していると考えられている.し たがって,要因と参入形態の選択(結果)との. をとりあげてきたわけではない.とくに,実証. 的分析をともなう研究では,特定の形態がとり. 間の関係そのものでは両者間に差異はない.. あげられているだけである.分析対象の選択に. しかも,規模(企業特殊的要因)と海外直接 投資との間の関係を批判対象としているものの,. ち,確たる基準が設定されているわけではなく, 個々の研究者の裁量にゆだねられている.より. 実際にはpoIモデルの研究にこの点を直接対象. 多くの形態を包括的にとりあげるのは実証的な. とした分析がない.むしろ,この点にかんして. 分析をともなわない展望研究,あるいは仮説導. 両者に共通して指摘されるべきなのは,はたし. 出を目的とする研究である.この点は,とりわ. て規模が直接投資にむすびつくのか,あるいは 直接投資が大規模性という企業の特徴にむすび. けMFME選択モデルの根本的な問題点として. ついたのかという疑問であって(Grubaugh [1987]),両者ともにこの疑問にたいして正面. るように,ここに参入形態にかんする概念規定. から答えていない.. poIモデル. 3つという少数の形態を対象としている.. MFME選択モ. 明記しておくことが必要である.のちに指摘す. -の疑問が反映されているからである. POIモデルでは,. MFME選択モデルが対象と する形態のなかで技術供与をはじめ,株式所有. MFME選択モデルとpoIモデルとの間には,. 一見すると個別企業の参入案件を対象としつつ, それをどのような時間的なスパンでとらえるか. 比率にもとづく各種の合弁所有方式や完全所有. という点で相違があるように思われるが,. その点では,概念的な規定にもとづく参入形態. POI. モデルが強調するような参入形態の時間的変転 という現象はMFME選択モデルの結果を用い. 方式といった形態区分が対象とされていない. の選択を説明し切ったものと見るわけにはいか ない.この点は,. poIモデルの研究者たち自身.
(10) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. (111). 弘安). 111. も意識していることである.それでも,かれら. 資源投入量という概念から参入形態が識別され. がこのモデルの妥当性を信じ,さらなる経験的 検証を推奨しているのは,現実的な規定にもと. てきた.しかしながら,統制力,資源投入量と. づく形態というよりは,むしろ概念的な規定に. いう概念では,輸出という形態を識別すること ができない.輸出にも貿易専門業者をつうじた. もとづく参入形態の時間的推移を明らかにする. 場合と,現地に販売子会社を設立する場合があ. ことに最大の貢献を認識しているためであると 考えられる.それは,形態が時間的に推移する. が行われることを意味するものである.この分. ということではなく,その推移に一定の順序が. 類は,とくにPOIモデルにおいて一貫している.. る.販売子会社の設立とは,すなわち直接投資. ある点と思われる.. MFME選択モデルはそれ. 第1に,この販売子会社と生産子会社という. を明示していない.. MFME選択モデルは,き. 直接投資の違いをどのように区別するのか.統. わめて多様な影響要因を挙げ,一定の条件が成. 制力ではそれを明確にしえない.第2に,技術. り立てば参入初期でも,そののちでも特定形態. 供与と直接投資をともなわない輸出,すなわち. が選択されることになるという発想をもつモデ. poIモデルでいうところの貿易専門業者をつう じた輸出との関係を統制力や資源投入量という. ルであるといえる.. poIモデルは形態に順序性. があることを出発点に,それがなぜなのかを説. 明しようとする.しかしながらすでに述べたよ. 既存概念では分類できない. 一見すれば,さまざまな参入形態は統制力,. うに, pOIモデルがとりあげた影響要因は. 資源投入量でリニア一に分類することができる. MFME選択モデルでもとりあげられ,その要. ように思われ,実際に先行研究はそれにしたが. 因に対象を限定すれば同様の結論を導くことは. ってきた.しかしながら,これでは参入形態を. 理論上可能となっている.一方,. 分類することはできない.この問題点は,とく. MFME選択. モデルの考えにもとづけば,さきのラグマンが. 示したような別の形態推移パスも想定されるこ. に実証作業を行う先行研究で対象とされた形態 が部分的で,研究問でも一貫していないという. とになり,この点ではpoIモデルが認識した形. 慈恵性に現れていると考えられるのである.. 態推移順序は多様なパスの1つとして包含され,. ところで,これらの概念を用いた分類とは別. それがくわしく説明されたものということにな. の角度から直接投資,輸出,技術供与という基 本形を分類するという方法がバックレ--パ. るのである.. 谷川[1989]といった少数の研究者によってな. ルには差異がないと考えることができる.そこ. されている.それを示したのが表4である.. で以下では,. 2つの研究潮流がともに形態を対. 象としている点を考慮して「参入形態モデル」. ス-プレスコット(Buckleyetal.. [1990])や長. かくして,このような先行研究の現状だけか ら判断すれば, poIモデルとMFME選択モデ. かれらの分類は生産活動の立地と遂行主体に. と総称することにしよう.われわれは,参入形. 2国間を想 もとづく.ここで立地という場合, 定しており,企業の本社が所在する国(本国). 態モデルには問題の設定方法や認識という,よ. と参入対象となっている特定の外国があり,い. り根本的なところに問題があると考えている.. ずれで生産活動を行うのかという基準がある.. 次節で検討しよう. 表4. Ⅴ.参入形態モデルの問題点 V-1.理論的問題:問題構成の誤謬. 参入形態の識別問題 すでに述べたように,先行研究では統制力や. 生産の立地と主体による参入形態分類.
(11) (112). 112. 横浜経営研究. 生産活動の主体については,生産活動を当該企 業自身が行うのか,あるいは,ほかの企業が行 うのかという基準がある.これら2つの基準を. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). ると,輸出では製品が本国といった所与の生産 活動拠点から国境を越えて参入対象国の最終需 要者まで流通されることになる.しかし,直接. くみあわせることにより,表に示すような4つ. 投資や技術供与では当該国に生産活動拠点があ. の概念形態が導きだされることになる.このう ちの3つが直接投資,輸出,技術供与に対応す. るため,そこから最終需要者まで製品が流通さ れる.直接投資と技術供与の違いについていえ. ることになるというのである.. ば,それは生産活動主体の違いにもとづくもの. しかしながら,これでも問題がある.まず, この分・類が生産活動に焦点をあわせているとい うことの当然の帰結として,直接投資という場 令,それは生産投資をさしている.この方法に. したがうときに問題となるのは第1に,翰出と. と考えてよい.. そこで,当該企業の最終製品を対象にし,か つ輸出形態を基本に,輸出元の国の生産拠点か. ら輸出仕向国までの製品流通を「国間製品流通」, 輸出仕向国の内部での最終需要者までの製品流. いう形態のあつかいである.ここでは輸出が立 地-本国,主体-自社として判別されているが,. 通を「国内製品流通」と呼んで区別すれば,輸. これでは貿易専門業者をつうじた輸出か販売子 会社をつうじた輸出かを区別することができな. され,直接投資・技術供与では国内製品流通か らのみ構成されることになる.参入形態モデル. い.結局は生産活動だけを対象とし,販売活動 を持外においていることになる.第2に,もと. では,生産活動拠点立地の差異が製品流通チャ. もと3つの基本形を分類するものであり,直接. ると解釈してきたと思われるが,このようなチ. 投資における株式所有比率にもとづく形態の違. ャネル認識に問題がある.. いを明らかにすることもできない.. 以上に見るように,先行研究は参入形態を分. 出形態は国問製品流通と国内製品流通から構成. ネル・タイプの違いとしてとらえることができ. 第1に,ここで国間製品流通と国内製品流通. という課業遂行主体にかんする意思決定を認識. 析の対象とするも,その分類という基本的な側. すると,従来のような輸出形態下で,さらにチ. 面において問題点をかかえている.これを先行. ャネル・タイプが認識されることになる.それ. 研究の理論的な問題の第1点として参入形態の. は国間製品流通についてであり,国間製品流通. 識別問題と呼ぶことにしよう.. という課業を当該の製造企業自身が行うか,あ るいはほかの経済主体が行うかという2つのタ. 参入国内チャネルの認識問題. イプが導かれる.国問製品流通を当該製造企業. 先行研究には参入形態の識別問題がある.に. 自身が行うことは「直接輸出」,ほかの経済主. もかかわらず,先行研究がその点を十分に検討. 体が行うことは「間接輸出」と呼んで区別され. しないまま選択条件の解明にすすんだというこ. (たとえば,角桧[1983]. とは,明示的にせよ暗黙的にせよ,これまでの. 行研究でも認識されていた.. ; Root. [1982]),先. 研究が生産活動のみならず,販売活動にかんす. 問題は,この直接輸出が,より具体的にどう. る問題までも,モデルが解決可能であると想定 してきたことを意味する5.これは先行研究の. いうものであるのかを考えることで提起される. すなわち,従来の見解によれば,直接輸出では. 問題の設定にまでさかのぼらねばならない誤謬. 参入対象国に子会社や支店といった当該製造企. であると思われる.. 業直営の販売拠点が設置される.これら拠点は,. 先行研究の想定は,つぎのように解釈するこ とができる.まず,輸出と直接投資,技術供与 という代替的形態を製品のフローとしてながめ. 本国から送られてきた製品を荷うけし,現地で の販売活動に従事する.すでに述べたように, 直接輸出では海外市場にたいして直接投資が行.
(12) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 弘安). (113). 113. われている.ただし,それは生産活動ではなく. と海外直接投資/技術供与の選択という問題を. 販売活動を目的とする直接投資である.したが. 示している.領域1では,直接輸出の場合には. って,直接投資,輸出,技術供与を選択代案と. 子会社や支店が海外市場に設立される,つまり. するMFME選択モデルでは国間製品流通にお. 販売活動を目的とする直接投資が行われること. けるチャネル・タイプ選択の問題が認識されて. になる.領域2では輸出にたいして生産目的の. いないことになる.これはすでに説明した.. 海外直接投資/技術供与という代案が位置づけ. より重要なのは2つめである.それは国内製. られる.ところが,たとえ生産目的の直接投資. 品流通についての問題認識の欠如であり,先行. が行われるとしても,企業は販売目的の直接投. 研究に経じてあてはまるものである.従来のモ. 資を同時に行う可能性がある.このとき,領域. デルでは,輸出の場合と同じく,生産目的の直 接投資がなされる場合,技術供与の場合いずれ. チャネルの問題は,領域2と重複するとともに. についても国内製品流通についての問題を持外. 領域1の問題とも重複領域をもつことになる.. においてきたといえる.国問製品流通の問題を ふくめて,この点を明らかにするために製品流. ここから,従来のモデルのように,輸出と直 接投資という形態から単純にチャネルを認識す. 通を図2のように示すことにしよう.図を見る. るのは無理であることが確認される.また,技. と,チャネルにかんする問題領域が垂直的な連. 術供与にかんしては,販売の問題はまったく考. 鎖にしたがって2つ,さらに参入形態について. 慮されていない.というのは,海外市場参入と. 3の問題,すなわち参入する国の内部における. 1つ,あわせて3つの領域が現れてくることが. いう文脈において,技術供与では製品の販売が. わかる.. 供与先企業にゆだねられることが形態としての. 領域1は,国問製品流通をめぐるものであり,. 特徴ないし前提とされてきたためである(Root. 輸出形態に特有で間接輸出を行うか直接輸出を. [1982]).したがって,製品流通チャネルとし. 行うかを決定するものである.領域2は,輸出. て見れば,技術供与は間接輸出チャネルから,. 図2. 参入形態別に見た製品流通経路 国境. 国間製品流通. 国内製品流通.
(13) 114. (114). 横浜経営研究. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). さらに国聞流通チャネルをのぞいたもの,ある. さらに国内製品流通の垂直的連鎖が存在してお. いは直接投資において販売にかんするものをと. り,そこで再びチャネルの問題がのこされてい. りのぞいたものと同じと見なされることになる.. そうなると,やはり輸出と直接投資と同じよう. る.したがって,かれらは当該企業(本国親会 社)の被統制主体,国内製品流通のチャネル構. な問題領域の重複が生じることになる.. 成主体であると同時に,国内製品流通チャネル. つぎに,先行研究がチャネルとのかかわりに. おいて直接投資をどのようにとらえてきたかと. の統制主体という役割をもゆうしているのであ る.. 生産目的の海外直接投資が並行してなされて. いう点に疑問がある.販売目的の直接投資は, 海外市場における販売子会社や支店の設立と同. いる場合は,当該国の子会社は,生産・販売機. じ意味をもつ.しかし,ここでいう販売子会社. 能をもつことになる.これら組織は,われわれ. や支店を国内マーケテイング組織で見られるも. が国内において通常見るように,当該国内の製. のと,まったく同じように解釈することには問 題がある.つまり,国内販売子会社は,程度が. 造企業と販売子会社の関係と同じである場合も. あるにしても当該企業の資本的所有下にあり,. 製品流通の構築と統制を行うこともある.つま. 製造企業の製品を専門的に品揃えして,小売業. り販売子会社は,たんに国聞流通における一方. 者やほかの卸売業者,製造企業などに販売する. 支店は製造企業の内部組織単位として販売活動. の末端組織であるだけではなく,国内流通の管 理的業務を遂行する本部的役割をもっている場. を行う.海外の販売子会社や支店も,輸出の場. 合や,本国国内のように選択された国内製品流. 合には本国あるいは第三国の生産活動拠点から. 通の構成員として販売業務を遂行する拠点とし. 製品をうけいれ,それを当該国内の流通業者や 最終需要者に販売する.また,生産目的の直接. ての役割をもつことになる. 従来の研究を整理したときに,問題の重複が. 投資が並行的に行われている場合は,主として. 発生したり,チャネルの認識に不明瞭な点が現. 現地生産拠点で生産された製品を参入国の流通. れるのは,チャネルあるいは販売をめぐる構成. 業者や最終需要者に販売するという役割をゆう. 員と,その位置づけに誤謬があることに由来す. している.. 問題は,従来の研究が国内製品流通の構成員. るものである.先行研究は,直接投資によって 創設される販売担当組織を形態選択の枠に押し. として海外販売子会社や支店を認識する一方,. こめており,それが直面する問題を検討領域と. 結果的には,これら内部組織の構成員をもつチ. して分離捨象していることになる.チャネル・. ャネルそのものを1つのタイプと認識してしま. フローから見ると,国内製品流通チャネルの始. ったことにある.つまり,国内の場合,販売子. 点部分ないし水際に対象が限定されている.換. 会社は製造企業の資本的所有関係のもとにあり,. 言すれば,海外市場への参入意思決定の範囲,. それを根拠とした製造企業の統制のもとで販売. ならびにそれにもとづく行動を遂行する主体の. 活動に従事する.ところが海外版売子会社につ. 画定という,問題構成の段階で誤謬があったの. いては輸出という形態をとる場合,販売子会社 が本国親会社の資本的所有関係のもとで統制を うけつつも,さらに当該所在国内におけるチャ. である.製品流通にかんする認識の欠如は,港. ネル構築・管理課業に従事することになる.つ. である.. まり,販売子会社や支店はチャネル構成員であ って,当該企業の被統制主体であるが,そこか ら最終需要者にまで製品が到達するまでには,. あれば,製販一体の企業体として,さらに国内. 外市場参入に従事する企業をどのような分析単 位でとらえるのかという問題を惹起しているの このように,先行研究が画定してきた参入形 態の分類方法は,重大な問題点をかかえている.. 端的にいえば,それは生産・販売という異なる.
(14) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 弘安). (115). 115. 活動を考慮せずに参入形態を認識し,その選択. な輸出活動を継続的に行うことは困難であった. として問題を設定したことにある.それが統制. といえる.そのうえでの投資ドライブをきかせ. 力や資源投入量という単一次元,あるいは生産. た政策転換であることを考えれば,形態選択は. の主体・立地という次元での不十分な形態分類. もとより,情報・ノウハウ蓄積やチャネル形成. として露呈しているのである.. にあわせた段階的な参入という考えかたをこれ らの国に適用することは不適切であると考えら. Ⅴ-2.甥実的問題. 参入形態モデルには,以上で見たような理論. れるのである.. 第2に,これまで見てきたように,先行研究. 的な問題だけでなく,現実認識という点から見. は参入形態の選択に焦点をあててきたもので,. てもズレがある.これは新興市場を対象とする. とくにチャネルの認識では参入対象となる国内. 場合に強く意識されるものである.. におけるチャネルの問題が看過されている.さ. 第1に,参入形態を規定するとしてあげられ. らにいえば,こうしたチャネル局面だけではな. てきた多様な要因群のなかには特定の形態を不 可避的に決めてしまったり,あるいは選択対象. く,先行研究では参入形態以外の問題,すなわ ち市場参入マーケテイング行動がまったくとい. とする形態代案を制約するものがある.それは. ってよいほど考慮されていない.その意味では,. 輸入制限/禁止,外資制限といった政府による. 現地でのオペレーション展開にたいしてのイン. 規制である.輸入制限/禁止措置は輸出にたい. プリケーションがとぼしく,限定された意思決. する(生産)直接投資や技術供与の有利性を増. 定局面を説明するだけにとどまっているのであ. 加させる.外資制限は逆に直接投資にたいする. る.. 輸出や技術供与の有利性を増加させたり,完全. 以上の問題点からすると,とりわけ新興市場. 所有方式での直接投資を不可能にし,合弁方式. を対象とした分析を展開するにあたり,参入形. の直接投資を余儀なくさせたりする.これらの 施策は特定参入形態の有利性を増加させるとい. 態モデルには大きく依拠することができないと. うよりは,その選択を強制するといったほうが 適切である.そして,中国やインドといった新 興市場諸国を見ると,そこでの販売を目的とす る場合は直接投資,なかでも合弁型投資を誘導 するような政策が採られていることがわかる6. この事実は,従来の研究自体の実質的な重要. いうのが,展望作業と現実との対照を行ったわ れわれの結論である.新興市場への参入をめぐ る問題は,形態の選択や推移という点ではなく, 事業活動経験が蓄積されていない新規市場を対 象に初期時点から生産直接投資を行うという状 況を想定したうえ,マーケテイング行動を包含 するものとして生起されるべきであると考えら. 性が事業対象国によって異なること,とくに新. れる.ただし,海外市場参入という文脈で,参. 興市場を対象とする場合は選択問題の実質的な. 入形態の変転を現地でのマーケテイング行動か. 重要性に疑問が投げかけられることを示唆する. ら説明しようとした研究を少ないながら見るこ. ものである.. とができる.それが日本の研究者を中心とする. くわえて,新興市場を対象とする場合に考慮. 日本企業・米国市場参入分析である.. しておくべきは,これら国が比較的最近まで閉. 鎖的な対外経済政策をとり,ようやく開放政策. Ⅵ.日本企業の米国市場参入行動分析. へと転換したという点である.こうした国にた. 参入形態を対象としながらも,それだけでは. いしては,もともとスポット的な輸出や低額度. なくマーケテイング局面をも射程におさめた分. の交易会といった販売形態があったとしても,. 析を行っている研究が少数ながら存在している.. 間接・直接いずれにしても比較的ロットの大き. それらはおもにわが国の研究者の手によるもの.
(15) 116. (116). 横浜経営研究. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). であり,主体として日本の製造企業,客体とし. イなどをつうじた市場調査があるが,主旨を拡. て米国市場をとりあげている.. 張解釈すれば,輸出をつうじた実際の販売活動. こうした研究は,参入形態の変転に関心をよ. をつうじてえられる情報が非常に重要であると. せており,その点ではpoIモデルと共通してい. いう考えに立っているといえる.これはpoIモ. る.それゆえ,そのような研究についても,す. デルに類似した見解である.. でにわれわれが指摘したような問題点が,ひと. 2つめに,チャネル形成と生産能力形成との. しくあてはまることになる.しかし,先行研究. 間の時間的な速度差である.このような見解は. と異なるのは形態変転を対象とするも,その理. 衣笠[1979]による日本企業の米国市場参入分. 由をマーケテイング局面での問題にもとめてい. 析で提起されている.かれもまた,日本企業が. るという点である.この意味では,参入形態と. 欧米市場にたいして輸出を先行させ,その段階. マーケテイング行動との関連性を分析対象とし ている稀少な研究ということにもなる.われわ. でチャネルを中核とする現地マーケテイング・. れはそこを重視して以下で概観することにした. 動拠点の設立を行ってきたことを出発点に,こ. い.. の動向はつぎのように説明する.そのまま引用 しよう. 「自主的なマーケテイング・システムを有効. Ⅵ-1.先駆的研究. まず,竹田[1985]は日本の製造企業による 米国市場参入の系譜を1次的・. システムを確立しておき,のちになって生産活. 2次的データか. に作動させるためには多大な時間と金がかかる が,このシステムの設営と生産拠点の設営を同. ら整理し,生産活動拠点を米国に設立している. 時的に遂行しようとする場合,巨額な資金の投. 対象企業のすべてが,それ以前に対米輸出を行. 入が必要である.同時に,生産拠点から製品が. ってきたことを指摘した.対米生産投資を行っ. 産出される一方,マーケテイング・システムが. ている企業は,最初の販売活動拠点設立から生. 有効に作動しないといった事態もしばしば生じ. 産投資まで平均して10年の時間が経過してい. がちである.マーケテイング・システムの設営. る.参入形態からすれば,これは直接輸出から 生産投資までの時間を意味しており,それ以前. 開始から完全な作動までにかかる時間は生産シ ステムのそれに比較してはるかに大きいのが通. に貿易専門業者をつうじた間接輸出形態が採用. 例であり,それ故に,現地生産システムと現地. されていたことを考慮すれば,新規に米国市場. マーケテイング・システムの作動のタイミング. での販売事業に着手してから生産投資にまでい たった時間は,さらに多くなることになる.. を合わせることがきわめて重要な課題となる. さて,このような過程をたどった理由は大き く2つにもとめられることになる.. (160-161ページ)」. 生産に比較して,マーケテイング関連投資の 効果現出が遅れる傾向にあることから,そうし. 1つに,チャネルをつうじた現地流通・需要 情報の収集・蓄積,それにもとづく現地市場向. た投資は生産投資にたいして時間的に先行して. け製品の開発・確定である.生産活動拠点を現. また,輸出を先行させずに最初から生産直接投. 地に設立するとしても,具体的にどのような製. 資を行うことは,生産・販売にたいする投資が. 品を生産対象とするのか,これをあらかじめ明. 同時に行われることを意味しており,そのよう. らかにしておかねばならないが,それは輸出に. な資金的負担の大きさも輸出先行をうながすこ. よるチャネル形成と,それをつうじて流入する. とになるという説明である.. 情報に依存することになるというのが主旨であ る.そうした情報収集としては,ほかにサーベ. なされる必要があることを衣笠は指摘している.. たんに情報や資金的な負担ということでいえ ば,それは参入形態モデルの知識・不確実性,.
(16) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 弘安). (117). 117. 資源投入量やそれと相関するリスク概念と同義. ち,マーケテイング行動として,日本企業と米. であることになる.しかし,これらの研究では. 国企業がそれぞれ標的とする顧客層,需要特性,. 生産と販売という企業の主活動が明確に意識さ. 製品特性の共通性によって分類されるのである.. れているところに大きな意義がある,その点は,. 同じく字義から理解されるように,対決戦略の. のちの研究において強調されることになる7.. 前段階となっている参入・浸透戦略段階では, 日本企業は米国企業とは異なる標的市場に製品. Ⅵ-2.チャネル先行形成の重要性 さて,おもに日本の研究者が展開してきた分 析は,生産活動拠点設立をともなわない状況,. を投入してきたとする.この基本的な基準によ る分類のもと,各段階での行動が記述される. 参入段階は,まさに米国市場にたいして,は. すなわち輸出形態でのチャネル形成がはたす役. じめて製品を投入するときにはじまるが,われ. 割という視点から生産直接投資の後行,換言す. われがこれまでに見てきた先行研究からすれば,. れば形態変転が見られる理由を説明しようとす. 米国市場参入形態は輸出である.. る.竹田[1992]は欧米研究者によってなされ. 参入段階の製品戦略では,綿密な調査にもと. てきた国際マーケテイング研究を批判の対象と することで,このような見解をさらに強調して. づき,米国需要にあわせた製品が投入されるが,. いる.. 対象としていない細分市場が標的とされている. 竹田の批判は,米国の国際マーケテイング研. それは当時において競合相手となる米国企業が. 究者が,かねてから製品戦略の側面に強調点を. という. 参入段階の価格戦略としては,競合する米国. 置いてきたことにむけられる.とくに,米国国. 企業より低めの価格が設定される.市場浸透価. 際マーケテイング研究で代表者に挙げられるキ. 格戦略と呼ばれ,新規参入者たる日本企業が米. ーガン(Keegan. [1974])が,製品戦略を国際. 国市場での占有率拡大をはかることを目的とし. マーケテイング戦略の中心に位置づけ,ほかの 戦略次元を製品戦略に従属ないし規定されるが. たものであるという.ロットが比較的に小さい. ごとき見解を提示したことを批判し,むしろチ. たらすことになる.しかし,かれらによれば,. ャネル戦略が重要で,国際マーケテイングでは. 日本企業は当初の低収益を長期的な視野に立っ. 先行的な位置づけをゆうすることをとなえたの. た投資とみなしていたという.相対的な低価格. である.しかし,. で参入することは,たしかに初期時点で損失を もたらすが,同時にそれは高価格な米国企業製. Keeganなど,おもにテキス. ト・レベルの範噂では議論があまりに抽象的に. 当初から浸透価格を採用することは低収益をも. すぎるきらいがあることから,かれは日本企業. 品からの需要吸引をもたらすことになる.つま. の米国市場参入行動を対象とした分析を行って. り,ロットが次第に増加することになるのであ. いる欧米の研究を直接の批判対象とした.その et al. 対象がコトラ-らによる研究(Kotler. り,それが量産効果をうみだしコストを低下さ せる.長期的に見れば収益は回復・向上すると. [1985])であった.. いうのである8.. コトラ-たちは,日本の製造企業による米国. 流通チャネル戦略においては,第1に参入形. 市場での戦略が,過去4つの段階に分けられる. 態とのかかわりで貿易専門業者をつうじた輸出. とした.. から販売子会社の設立をともなう直接輸出への. 4つとは,参入戦略,浸透戦略,対決 戦略,維持戦略の4段階である.この4段階の. 転換が見られる.第2に,地理的な次元にかん. うち,対決戦略という段階があることからわか. しては地域限定的なチャネル展開という特徴が. るように,かれらによる段階分類の基本的基準. 指摘される.すなわち,地理的に広大な米国の. は,現地米国企業との競争関係にある.すなわ. 全土を販売対象とするのではなく,まずはカリ.
(17) 118. (118). 横浜経営研究. 第ⅠⅩ巻 第1号(1998). まず,参入段階において日本企業が詳細な. フォルニアといった西部での販売からはじめ,. 次第に東部にむけて対象地域を拡大させていく ネル構造にかんしては,最終販売段階まで統合. (feasibility study)を行い,それにもとづい て製品を開発・投入したというコトラ-らの主 張を事実誤認であるとし,当時の輸出製品を見. するようなことはせず,米国の独立流通業者を. たかぎり,米国市場への輸出(参入)は,米国. 用い,数的に限定していたという.ただし,限. からの偶然のひきあいによるものであって,日. 定された流通業者には販売力のある業者を採用. 本国内の市場向け製品を電圧や工業所有権とい. することに注力してきたという.これらの特徴 は総じて知識の欠如によるものと解釈される.. った条件に対応させただけのものであるとした. また,日本企業が当初から浸透価格戦略を採用. 米国にかんする知識を十分にもたない段階での. したことについて,その事実は承認するも,む. 販売子会社の設立や広域販路拡大は投資規模を. しろ米国企業にたいする日本企業の当時におけ. 肥大化させることになる.それよりも資源投入. る競争地位の脆弱性を考えれば,そうした行動. をおさえ,最終顧客や流通にかんする知識を獲. をとらざるをえなかったことによるとした.コ. 得したうえで自社販売拠点の展開,空間的販路. トラ-らの見解が,価格設定にかんする裁量性 を確保した状態で,あえて浸透価格戦略を採用. という方法をとってきたという.第3に,チャ. 拡張を進めていくという方法をとったというの. FS. である.第3の行動については,知識を欠いて. したという,もっともらしい戦略的意図として. いる段階では,まず外部の流通業者を利用する. 説明されたことに異議をとなえたのである.. 以上の2つは,参入段階における戦略の内容,. ことでオペレーションを精査する.そして,知 識を獲得し,自社で行えるようになったと見て,. およびそうした内容の戦略が採用された理由に. 自社販売組織の展開に着手する.一方で,たん. かんする事実認識にたいする批判である.しか. に少数の外部流通業者にゆだねるだけでは,販. しながら,かれはこうした認識にたいする批判. 売量は拡大しない.そのトレードオフを解消す. を一歩すすめ,より一般的な議論としてコトラ. るために,商圏の大きな大規模小売業者・卸売 業者を取引先にえらんだというのである9.. -らの見解の問題を指摘し,それをもって参入 行動の問題を定式化しようとした.われわれは. 最後に,販売促進戦略では,広告戦略にかん して,サービス拠点と同様に投資にたいする積. こちらのほうを重視する. かれによれば,コトラ-たちの記述内容から,. 極性が指摘される.それは最終顧客による銘柄. はたしてそうした戦略によって米国市場に適合. の諺知,選好形成,すなわち指名買いをうみだ. した製品を開発・投入することができるのかに. し,取引流通業者の支援をはかるというところ. 疑問があるという.というのは,コトラ-たち. に目的があるとされる.. は参入段階から浸透段階への移行を新製品の開. かれらは日本企業の米国市場での成功につい. 発,価格競争から非価格競争への移行として述. て,いくつかの側面での鍵を指摘していくが,. べているが,そのような戦略上のシフトは「顧. とくに参入段階で異なった標的市場を識別し,. 客への接近」によって可能となると竹田が考え. 米国市場での地位を確保したうえで,のちに米. るからである.この「顧客への接近」というの. 国企業と直接対決するというパスを経た点を強. が現地における流通チャネルである.すなわち,. 調している.つまり,かれらは参入戦略の巧赦. 竹田はまず,製品開発のための継続的な情報収. が,米国市場における長期的な競争の勝敗を左. 集メディアとしてチャネルをとらえている.つ. 右することをとなえたのである.. ぎに,チャネルの形成を自社銘柄での取引,ほ. さて,これにたいする竹田の批判点を要約す れば以下のようになる.. かの行動次元との連携によるマーケテイング効 果拡大の前提と見なしているのである.そして,.
(18) 海外市場参入行動研究の展望(谷地. 弘安). (119). このような理由から,国際マーケテイング行動,. 有力流通業者-の取引集約化へとすすむことを. とくに参入段階におけるチャネル行動の重要. 指摘する.しかしながら,こうした問題は最終. 性・先行性を強調し,米国研究者による製品戦. 顧客への販売段階にまで統合がすすまないかぎ. 略重視の姿勢を批判するのである.そのような. り,つねに生起されるチャネル論の基本的な問. 発想は,国際マーケテイングというものが,当. 題なのである.. 119. 該企業にとってまったくの新規市場で,しかも. また,米国のように広大な国土で市場が形成. すでに形成されたチャネルをゆうする国内と異. されているのであれば,卸売・小売段階いずれ. なり,いわばゼロの状態から販売活動をスター. にしても拠点の分散化が必要になる.そのなか. トさせるという状況から認識されるという言明 で鮮明に現れることになる.かれは,これを国. で流通段階を内部化することは多大な投資をと もなうことになる.むしろ,そうした資本的統. 際マーケテイングの1つの特徴と考えるが,段. 合を行わず,流通業者の独立性を確保したまま,. 階論からすれば,海外市場参入における状況と. なおかつかれらの販売促進意欲や市場情報の供. 見なせるだろう.批判対象という点ではなく,. 給源としての位置づけを維持するなど,当該製. その見解は結局のところ,かれが最初に識別し. 造企業のマーケテイング政策に適合させるか,. た輸出先行・生産投資後行という形態変転を, チャネル次元から再度説明したものと解釈する. チャネル研究ではこのような視点から問題が認 識され,検討されてきたのである(高嶋. ことができる.. [1994]).. とはいえ,問題となるのはチャネルの位置づ. くわえて,情報収集や伝達,さらにその分析. けを行ったものの,いずれの研究者もそれ以上. から計画にいたるまでには外部の流通業者との. の検討までにはいたっていない点である. まず,情報収集のメディアとしてチャネルが. 関係のみならず,当該企業自身の社内の体制を 構築しなければならない.これは,とりわけ先. 位置づけられるとして,どのようなかたちで情. 行研究が認識したゼロからの出発という参入に. 報を収集し,ひいては製品開発にまでむすびつ. おいて重要になってくるが,ここまで立ち入っ. けるのか.現地でのチャネル形成が単純に情報. た検討がなされていない.これは外国の研究に. 収集メディアの獲得につながるわけではない.. も総じてあてはまるものである.たとえば,. とくに,卸売段階であれ,小売段階であれ,独. poIモデルでは市場にかんする知識の獲得・蓄. 立の流通業者をつかっていたとすれば,かれら. 積がたんに時間の経過に還元されてしまってお. はほかの企業の製品をあつかうことができる.. り,それがどのように行われているのかまでは. すなわち,当該企業の製品は流通業者の品揃え. 明らかにされていない.だが,これでは特定市. の一部を形成するにすぎず,かれらによる取引. 場における企業間での参入の成果を説明するこ. の代替可能性の問題に直面することになる.ま. とはできないのではないかと思われるのである.. してコトラ-らの見解にしたがい,日本企業の 当初の取引先が大規模小売・卸売業者に依存し. ギャップにかんする見解は,参入行動の説明に. ていたならば,このような問題は深刻になる.. おいてきわめて重要な論点を提供してくれてい. これをいかにして解決し,有用で信頼に足る,. るが,それがかならず輸出先行を導くと一般的. しかも迅速な情報の収集経路とすることができ. に結論づけるには慎重を要する.すでに述べた. るのか.この点,コトラ-らは日本企業がのち. ように,このような段階的な参入を新興市場に. に販.売会社といった自社販売組織の形成にすす. たいして適用することはむずかしいと思われる. むことを指摘しているし,竹田も顧客-の接近. からである.かれらの分析は日本企業の米国市. として自社販売組織の形成や数的に限定された. 場,ひいてはヨーロッパをふくむ先進国市場へ. つぎに,生産能力とチャネル形成のペース・.
関連したドキュメント
プログラムに参加したどの生徒も週末になると大
この調査は、健全な証券投資の促進と証券市場のさらなる発展のため、わが国における個人の証券
は、これには該当せず、事前調査を行う必要があること。 ウ
議論を深めるための参 考値を踏まえて、参考 値を実現するための各 電源の課題が克服さ れた場合のシナリオ
共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果
福岡市新青果市場は九州の青果物流拠点を期待されている.図 4
界のキャップ&トレード制度の最新動 向や国際炭素市場の今後の展望につい て、加盟メンバーや国内外の専門家と 議論しました。また、2011
支援活動を行った学生に対し何らかの支援を行ったか(問 2-2)を尋ねた(図 8 参照)ところ, 「ボランティア保険への加入」が 42.3 % と最も多く,