放送 の社会的,経 済的分析 に関す る一考察
二 つの知的営為 の融合化 のために
荒 井 宏 祐
Comments
on the Analysis
of Broadcasting
—Combining
the Social
and Economic
Study
Hirosuke
Arai
Many changes have been taking place in the world of broadcasting , including a revolution in in-formation technology, deregulation, commercialization and internationalization . These changes have also affected the way that broadcasting is studied.
The introduction of a commercial broadcasting system for Europe in the 1980's and the inter-nationalization of the TV program market have both increased the economic and commercial value of broadcasting. This has generated a boom in the economic analysis of broadcasting and drawn criticisms of the increasing weight of economic factors in broadcasting, which some belive should be engaged in cultural activities.
This thesis is intended to examine major documents on this subject available in Japan as well as Europe and the United States ; to study the characteristic features of the trend , determine the pos-sibility of cooperation in the study of the two fields , and finally to point to the possiblity of writ-ing of a new report on the study of broadcastwrit-ing which considers both the economic and social functions of media. は じめ に 最 近 の放 送 分 野 に お け る変動 は これ まで 以 上 に激 しい ものが あ る。 この 変動 要 因 に は複 雑,多 岐 な ものが あ ろ うが,な かで も放 送 ・ 通 信 衛 星,光 フ ァイバ ーケ ー ブ ル等 新 しい情 報 技 術 の 革 新 が もた ら した影 響 は,独 の 公 法 学 者 で ハ ン ス ブ レ ドゥ放 送研 究 所 長 の ウ ォル フ ガ ン グ ・ホ フマ ンeリ ー ムが 指 摘 す る よ う に,「 西 欧 社 会 の経 済 的 構 造,政 治 的諸 変 化, 法 体 系」 な どの 分 野 に も広 くか つ 深 く及 ん で い る よ うで あ る(注1)。この い わ ゆ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン革命 は 同 時 に,ケ ネ ス ・ダ イ ソ ン (ブ ラ ッ ドフ ォー ド大 学 ヨー ロ ッパ研 究部 門 教 授)ら が のべ る ご と く(注2),ヨ ー ロ ッパ の 活 性 化 や 軍 事衛 星 等 国家 防衛 のた め の戦 略 的 資 源 とな った ほ か,コ ミュニ ケ ー シ ョン分 野 へ の 多 国 籍企 業 の進 出等,放 送 の市 場 を 国際 化 して投 資 や雇 用 機 会,税 収 等 を増 大 させ, 多 くの経 済 的利 益 を生 み 出 した 。 そ の た めそ れ まで相 対 的 に国 家 的 規 制 が 強 か った西 欧 諸 国 家 は,国 益 の増 大 を図 るた め こぞ って 規 制 緩 和 政 策 を打 ち 出 した の で あ った。 技 術 革 新,規 制緩 和,商 業 的 ・経 済 的 要 素 一51一
の 重視,市 場 の 国 際化 等 を 中心 とす る こ う し た 変 動 は,放 送 界 に,新 しい放 送 秩 序 を どの よ う に構 築 し,自 らの発 展 を確 保 す べ きか と い う課 題 を投 げ か け る に至 っ た。 表1に は 1950年 代 半 ばか ら35年 間 の,世 界 の放 送 界 の 主 な動 きが 示 され て い る。技 術 革 新,規 制 緩 和,商 業 化,国 際 化 にか か わ る 変化 の多 い こ とが うかが え よう。 と くに ヨー ロ ッパ 大 陸で 顕 著 な の は,'70年 代 以 降 急 速 に 高 ま る商 業 的 ・経 済的 要 素 の重 視 で あ り,典 型 的 に は そ れ まで の公 共放 送 独 占体 制 か ら公 共 ・民 間併 存 体 制 へ の 転換 とな っ て あ らわれ て きて い る 。 イ タ リ アの 公 共放 送独 占 違 憲 判 決('74),仏 の 民 放 漸 進 導 入放 送 法 の 制 定('82),西 独 の 商 業 放 送 導 入 放 送 法 の 合 憲 判 決('86),仏 の 公 共 テ レ ビ(TF1)の 民 営 化('87)等 が こ れ で あ る。また,こ の ほ どす で に'50年 代 か ら 併 存 体 制 を とった 英 で も商業 放 送 の拡 充 等 を め ざす 改 革 法 案 が 議 会 を通過,成 立 した。 こ う した放 送 にお け る商 業 的 ・経 済 的要 素 の重 視 は,放 送 研 究 の 分 野 に も新 た な影 響 を もた ら して い る。 即 ち経 済 学 者 に は放 送 の か か え る 諸 問 題 に対 す る経 済 学 的 接 近 へ の 関心 を い っ そ う促 し,社 会 学 者 や マ ス コ ミ ュニ ケ ー シ ョン研 究者 等 非 経 済 学 の分 野 の 学 者 に は放 送 の社 会 的,文 化 的要 素 に及 ぼす イ ンパ ク トへ の 関 心 を改 め て 喚起 して,多 くの 文 献 が あ ら われ る と同 時 に,両 者 間 に は一 種 の論 争 もみ られ る よ う にな った 。 これ らに か か わ る主 な 動 向 に つ い て,筆 者 は'88年 に 一 度 と りあ げ て み た こ とが あ る (調 査 研 究 ノー ト 「経 済 学 は放 送 の 諸 問 題 を ど う扱 う こ とが で きるか 」 『放 送研 究 と調 査 』 '88 ,12日 本 放 送 出版 協 会 一 以 下 「前 著 」 とい う)。 そ の 後 こ う した 潮 流 は ます ます は っ き り した 形 を と って きて い る。 例 え ば放 送 の 経 済 的 要 素 に関 す る研 究 は,か つ て1950年 代 か ら'70年 代 にか け て は経 済 学 者 が も っぱ ら経 済 学 の 観 点 か らの 分析 で 一冊 の文 献 を う め る とい う形(モ ノ タ イ プ)の もの が多 か っ た。 しか し'80年 代 頃 か ら は コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン や社 会 学,政 治 経 済 学 等 の専 門家 な ど との 共 著 とい う形(マ ル チ タ イプ)を とる もの が 目 立 っ て きて い る(例 え ば 「放 送 に お け る 自 由」(注3),「テ レ ビ とそ の視 聴 者 」(注4),「規 制 緩 和 と商業 テ レ ビの将 来 」(注5)など)。 これ ら はい わ ば 同 一 の研 究 対 象 領 域 につ い て 経 済 学 と非 経 済 学 の両 分 野 が お互 い に接 近 し合 う学 際 的研 究 の あ らわ れ と も考 え られ,放 送 の転 換 期 の諸 問 題 をめ ぐる知 的 営 為 が 一 段 と熱 を お び て きて い る様 子 が うかが わ れ る。 非 経 済 学 者 の,こ の種 の新 しい 問題 に対 す る 関心 は 衰 え を見 せ ず,後 で と りあ げ る よ うに,J.G ブ ラ ム ラ ー(英 ・リ ーズ大 学 テ レ ビ研 究 セ ン ター 所 長,国 際 コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン 学 会 会 長)な ど も次 々 に新 著 をあ らわ して い る(後 述 の 「新 しい テ レ ビ市 場 にお け る公 共 政 策 の 役 割)の ほ か 「放 送 の財 源一 国 際 比 較 ハ ン ド ブ ック」 等 が 近刊 との こ と)。 経 済 学 の 分 野 とマ ス コ ミ論 等 の非 経 済 学 の 分 野 とは放 送研 究 に 関 して は 同 じ社 会 科 学 の 中で も従 来 学 際 的研 究 が濃 厚 で あ っ た とは い えず,い わ ば二 つ の 文化 体 系 が研 究 上 独 立 し て動 い て い た観 が 否 め なか った 。 この小 稿 で は前 著 に ひ きつ づ いて,新 秩 序構 築 に 向 う転 換 期 の 中 で,放 送 研 究 の新 しい 観 点 と して 登 場 した,放 送 の社 会 的 あ るい は経 済 的 要 素 を め ぐる経 済 学,非 経 済 学 双 方 の分 野 か らの 研 究 文 献 例 を吟 味 した さ さや か な結 果 を報 告 し, こ れか らの 放 送研 究 の 方 向 の一 つ を改 め て考 え る一 助 と したい 。 放 送 の社 会 的 ない し経 済 的分 析 の 問題 領 域 とそ の ア プ ロ ーチ の例 は こ こで と りあ げ る以 外 に も多 くの ものが あ る。 また こ こで扱 った 問 題 に つ い て も別 の接 近 方 法 が 可 能 で あ る。 これ らの 追跡 に は継 続 的 な研 究 が 必 要 で あ り, この 小稿 はそ の た め の さ さ やか な手 が か りに す ぎ ない 。 な お,本 稿 を ま とめ る に あ た り尾 上 久 雄 先 生(京 都 大学 名誉 教 授)を は じめ と す る放 送 社 会 経 済研 究 会 の方 々 の ご指 導 とこ 52一
表1世 界 の 放 送 年 表(1954∼1989) 1954(米)NBC,CBS,カ ラ ー テ レ ビ 放 送 開 始 (NTSC方 式) ユ ー ロ ジ ビ ョ ン発 足 (英)商 業 テ レビ導 入 の テ レ ビ ジ ョン法 制 定, ITA(IndependentTelevisionAuthority)設 立 1955(英)商 業 テ レビ,ロ ン ド冫で 放 送 開 始 (北 朝 鮮)朝 鮮 中 央 放 送 委 員 会,ラ ジ オ放 送 開始 (タ イ)テ レビ放 送 開 始 1956(米)ア ンペ ック ス社,VTRを 開発 (豪)テ レビ本 放 送 開 始 1957(英)テ レビ学 校 放 送 開 始 第1回 ア ジ ア 地 域 放 送 会 議 開 催(7月,東 京) 1958(中)北 京 テ レ ビ局,本 放 送 開 始 (米)通 信 実 験 衛 星 ス コ ア打 ち 上 げ (独)FMス テ レオ 実験 放 送 開始 1960ロ ーマ オ リン ピ ック実 況 をユ ー ロ ビ ジ ョ ンで 中継 (米)大 統 領 選 で ケ ネ デ ィ と ニ ク ソ ン,テ レ ビ討 論 1961(韓)KBS,テ レ ビ放 送 開始 1962(ソ)受 信 料 制 度 廃 止 (米)テ ル ス タ ー1号 通 信 衛 星 に よ り初 の 米 欧 間 テ レ ビ 中継 1963(西 独)第2ド イ ツ ・テ レ ビ ジ ョ ン協 会,放 送 開 始 1964(仏)新 放 送 法 施 行,1945年 か らの 国営 放 送 RTFは 公 共企 業 体ORTFに 改 組 ア ジ ア放 送 連 合(ABU)設 立(現 ア ジ ア 太 平 洋 放 送 連 合) 1965ヨ ー ロ ッパ 会 議(7か 国)で 海 賊 放 送 禁 止 法 制 定 を決 議 (米)レ イ ン ジ ャ ー9号,月 面 の テ レ ビ 中 継 成 功 (米)初 の 商 業 通 信 衛 星 イ ンテ ル サ ッ ト1号 打 ち 上 げ (ソ)通 信衛 星 モ ル ニ ア1号 打 ち上 げ (英)商 業 テ レ ビ,紙 巻 きた ば この 広 告 を 中 止 1966(カ ンボ ジ ア),(南 ベ トナ ム)テ レ ビ本 放 送 開始 (加)カ ラ ーテ レ ビ本放 送 開始(NTSC方 式) 19675大 陸14か 国 を4衛 星 で 結 ぶ 「わ れ ら の 世 界 」 世 界 同 時 中継 に成 功(24か 国 で 放 送) (英),(西 独)カ ラ ー テ レ ビ 本 放 送 開 始 (PAL方 式) (ソ),(仏)カ ラー テ レ ビ 本 放 送 開 始 (SECAM方 式) 1968ユ ー ロ ビ ジ ョン,ニ ュ ース 素 材 の 交換 開 始 (米)CPB(CorporationforPublic Broadcasting)設 立 (米)FCC,有 料 テ レ ビ放 送 の 実験 を認 可 1969(米)ア ポ ロ11号,月 面 か ら宇 宙 中継(7月 21日) (米)PublicBroadcastingの テ レ ビ全 国 ネ ッ トワ ー クPBS設 立(「 セ サ ミス ト リー ト」 放 送 開 始) 1970(米)FCC,国 内 通 信 衛 星 シ ス テ ム の建 設 決 定 1971(米)紙 巻 きた ば こ の 広 告 放 送,法 律 で 全 面 禁 止 (英)公 開 大 学,BBCの ラ ジ オ ・テ レ ビで 授 業 開 始 (英)BBCとITA,そ れ ぞ れ 番 組 苦 情処 理 委 員 会 を設 置 1972(中)ニ ク ソ ン米 大 統 領 の 中 国 訪 問 を衛 星 中 継 (英)商 業 ロ ー カ ル ラ ジ オ 導 入 の た め の ラ ジ オ 法 施 行,ITAはIBA(lndependentBroad-castingAuthotity)に 改 組 (加)国 内通 信 衛 星 アニ ク1号 打 ち 上 げ 1973石 油 シ ョ ック に よ るエ ネル ギ ー危 機 で 世 界 各 国 で放 送 時 間 の短 縮 ・削 減 続 く (韓)新 放 送 法 に よ り国 営 放 送 は公 共 企 業体 の韓 国放 送 公 社(KBS)に 改 組 1974(伊)憲 法 裁 判 所,イ タ リア放 送 協 会(RAI) の放 送 独 占 は違 憲 と判 決 (仏)新 放 送 法 施 行,ORTFは7事 業 体 に分 割(75年1月 発 足) (豪)政 府,ABCの 受 信 許 可料 制 度廃 止 長 波 ・中波 放 送 に関 す る国 際 会 議(∼1975) で 中波 チ ャ ン ネル 間 隔 を9kHzに 統 一 (仏 ・西 独)両 国 共 同 開 発 の実 験 通 信 衛 星 シ ンフ ォニ ー打 ち 上 げ(12A) 1975(豪)カ ラ ーテ レ ビ本 放 送 開 始(PAL方 式) (米)3大 ネ ッ トワー ク,フ ァ ミ リ ー ア ワ ー 制 定 (暴力 ・性 描 写 の 自粛) 1976(印)イ ン ド国 営 テ レ ビ(DDI)発 足(4月) (イ ン ドネ シ ア)国 内 通信 衛 星 パ ラパ1号 打 一53
ち上 げ(7月) (ソ)極 北 ・シベ リ ア 向 けDBSサ ー ビス 用 エ ク ラ ン衛 星 打 ち 上 げ(10月) (英)テ レテ キ ス ト(シ ー フ ァク ス)本 放 送 開始(11A) 1977放 送 衛 星 に 関 す る 国 際 会 議(WARC-BS) で放 送 衛 星 の 業 務 運 営 ・周 波 数割 り当 て決 定 (日 本 に8チ ャ ンネ ル 割 り当 て) 1978第20回 ユ ネ ス コ総 会(パ リ),「 マ ス メ デ ィア 宣 言 」 採 択(10月) 1979(中)「 テ レビ大 学 」 放 送 開 始(2月) 1980コ ミュ ニ ケ ー シ ョン問 題研 究 国 際委 員会(マ ク ブ ラ イ ド委 員 会),最 終 報 告 書 をユ ネ ス コ へ 提 出(2月) (西 独)テ レテ キ ス ト全 国 向 け サ ー ビ ス 実験 お よ び ビ デ オ テ ッ ク ス 実 験 開 始(と も に6 月) (米)ケ ー ブ ル ・ニ ュ ー ス ・ネ ッ ト ワ ー ク (CNN)サ ー ビス 開始(6月) (韓)新 聞 ・通 信 社,放 送 機 関 の 再 編 成 に よ り,KBS,MBC,CBS,の 三 つ に 整 理 統 合 (12月) 1981(仏)非 合 法 「自 由 ラ ジ オ」 を私 営 ロ ー カル ラ ジ オ と して 認 め る法 律 を施 行(11月) 1982(仏)新 放 送 法 制 定(7月),公 共 放 送 独 占 を 廃 し,漸 進 的 に民 放 導 入へ (英)民 放 テ レ ビ 「チ ャ ン ネ ル4」 が 放 送 開 始(11月) 1983(イ ン ドネ シ ア)国 内 通 信 衛 星 パ ラ パB1打 ち 上 げ(6月) ユ ー テ ル サ ッ ト,欧 州 通 信 衛 星ECS1打 ち 上 げ(6月) (印)多 目的 実 用 衛 星 イ ンサ ッ ト1B打 ち上 げ(8月) 1984(西 独)都 市 型CATV実 験 開 始,同 時 に 西独 初 の民 放 発 足(1月) (中)実 験 用 国 内通 信 衛 星 打 ち上 げ(4月) (英)ケ ー ブ ル ・放 送 法 成 立(7月26日), ケ ー ブ ル ・オ ー ソ リテ ィを設 立(・=.日) (伊)ベ ル ル ス コー 二,3大 民 間 テ レビ 系 列 を傘 下 に 収 め る(8月) (仏)国 内通 信 衛 星 テ レ コ ム1打 ち 上 げ(8 月) (仏)欧 州 初 の 地 上 系 有 料 テ レ ビ 「カ ナ ル ・ プ ラス 」 発 足(11月) (西 独)西 ドイ ッ各 州 で 新 放 送 法 ・メ デ ィ ア 法 成 立(一一一1985) 1985ア ラ ブ衛 星 通 信機 構 の 地 域 通信 衛 星 ア ラ ブサ ッ ト打 ち 上 げ(2月) ブ ラ ジル 国 内 通 信 衛 星 ブ ラジ ル サ ッ ト打 ち上 げ(2月) (米)放 送 企 業 の 大 型 買 収 相 次 ぐ (豪)多 目的 通 信 衛 星 オ ーサ ッ ト1号(8月 28日),2号(11月27日)打 ち上 げ 1986(仏)初 の 商 業 テ レ ビ 「ラ ・サ ン ク 」 とTV 6(現 在 のM6)放 送 開 始(2月 ∼3.月) (仏)新 放 送 法 成 立(9月),放 送 行 政 の管 理 機 関CNCL設 置(11月)な どの改 革 実 施 (中)「 衛 星 教 育 テ レビ」 開始(10月1日) (独)連 邦 憲 法 裁 判 所,民 間 放 送 導 入 を合 憲 と裁 定(11月6日) (英)衛 星 放 送 の 免 許 はBSB(BritishSatel-liteBroadcasting)社 が 取 得(12月11日) 1987(ベ ル ギ ー)オ ラ ン ダ語 と仏 語 の 両 地 域 に 各 1系 統 の 商 業 テ レ ビ を認 め る 法律 が 成 立(1 月) (独)民 間 放 送 の導 入 な ど を定 め た 放 送 制 度 の 再 編 成 に関 す る州 間協 定 成 立(3月12日) (12月1日 発 効) (仏)公 共 テ レ ビTF1を 民 営 化(4月) (独)放 送 衛 星TV-SAT打 ち 上 げ(11A20 日),故 障 の ため 放 棄 1988(仏)TDF1衛 星 打 ち上 げ成 功(10A) (英)政 府,放 送 白書 を発 表(11月) (ル)申 出 力 放 送 衛 星 ア ス トラ打 ち 上 げ(12 月) 1989(仏)新 放 送 法 公 布,放 送 に 関 す る 新 行 政 機 関CSA発 足(1月) ア ス トラ衛 星,欧 州 初 の衛 星 放 送 開 始(2 月)ヨ ー ロ ッパ 会 議,国 境 を越 え る テ レ ビ放 送 に 関 す る協 約 を採 択(3月) ヨー ロ ッパ の4放 送 衛 星(Tele-X一 ス ウ ェ ーデ ン,オ リ ンパ ス ーESA,TV-SAT2一 西 ドイ ツ,BSBマ ル コ ポ ー ロ ー イ ギ リス) 打 ち 上 げ(4月 ∼8月) 国 境 を越 え るテ レ ビでECが 指 令 を採 択(10 月) (英)政 府,新 放 送 法 案 を提 出(12月) 「デ ー タ ブ ッ ク 世 界 の 放 送1990」NHK編 '90 .9か ら 一54一
協 力 を得 た こ と に感 謝 した い。 1放 送 の社 会 的,経 済 的 分 析 に か か わ る研 究 の 促 進 要 因 本 論 に入 る前 に,何 故 現 在 放 送 の社 会 的 あ る い は経 済 的要 素 をめ ぐる研 究 が 促 進 されつ つ あ るの か,密 接 な 関連 が あ る と思 わ れ る要 因 を,経 済 学 的分 析 と非 経 済 学 的 分析 の 二つ に分 けて 整 理 して お きた い。 (1)放 送 の経 済 学 的分 析 の 促 進 要 因 さ ま ざ まな要 因 が多 様 な形 で 結 合 し,複 合 的 な もの と思 わ れ るが,前 著 で は作 業 的 な試 み と して次 の よ うに大 き く2分 して み た 。 こ の分 類 は今 で も有 効 の よう に考 え られ る 。 ① 内発 的(理 論 的)要 因 他 の 産業 に な い放 送 産 業 の 特徴 な ど,経 済 学 者 の理 論 的 関心 を喚 起 す る要 因 ② 外 発 的(現 在 的)要 因 「は じめ に」 で のべ た よ うな 現代 的状 況 の 変化 か ら くる要 因 以 下前 著 で の分 析 要 旨 とそ の 後 の主 な動 向 をあ わせ て ま とめ てみ る と次 の よ うに な る。 ① 内発 的(理 論 的)要 因 放 送 に 関す る諸 問題 を経 済 学 の立 場 か ら研 究 し よ う とす る動 きは実 は今 に始 まっ た こ と で は な い。 例 え ば1950年 に は,現 在 シ カ ゴ大 学 の 経 済 学 者 と して 著 名 なR.Hコ ース 教 授 (当 時 ロ ン ドン大 学 経 済 学 助教 授)が あ らわ した 「イ ギ リス の放 送 一 独 占の研 究」 な どが 有 名 で あ る。 ま た ア メ リカ で は と く に,'50 ∼'70年代 に か けて 活発 な展 開が み られ る(注6) 。 前 著 で紹 介 した ベ イ ツ は,放 送 の 問題 に何 故 経 済学 者 が 注 目す る の か そ の理 由 を,放 送 の 公 共性 か ら由来 す る政 府 等 の規 制 を土 地 の借 用 に か か わ る地 代 の 問題 に なぞ らえ て次 の よ う に い っ て い る。 「第1に 放 送 が き び しい規 制産 業 で あ るが故 に,規 制 に起 因 す る特 殊 な 地代 の 問題,つ ま り番 組 編 成 に関 す る公 共 財 と して の 規 制 に 伴 う社 会 厚 生 上 の 意 味 を含 む」 か らで あ る 。 ま た第 二 に放 送 が 「二 重 の 財 」 を含 む か らで あ る。 放 送 産 業 は 「番 組 編 成 とい う一 つ の有 形 な生 産 物 を生 産す る。 次 にそ れ は1分 当 りの視 聴 者 の ア クセ ス とい う も う一 つ の無 形 の生 産 物 と交換 され る。 つ い で 収 入 を生 み 出す ため に,こ の視 聴 者 に対 す るア クセ ス が売 りに 出 され る。腆(注6)」 こ う した指 摘 は研 究 対 象 の きわ だ っ た特 徴 が 学 問 的 関心 を ひ き 出 した例 とみ られ,内 発 的,理 論 的要 因 とよべ るで あ ろ う。 ベ イ ツの 論 文 は'87年 に発 表 され た が,こ う した 理 論 的 関 心 は そ の後 一 面 で は放 送 を もっ ぱ ら文 化 的 問 題 と して扱 う とい う ア プ ロー チへ の,経 済学 者 か らの批 判 とい う形 で もあ らわれ る よ うに な った。 例 え ば次 章 で 紹介 す る 「テ レビ の 経 済 学 一 イギ リス の 事 例 」(1988)の 著 者 らは,こ れ まで イギ リス で と られ て きた,主 と して文 化 主 義 的 立場 か らの み放 送 を扱 う と い う ア プ ロ ー チ を 「文 化 主 義 者 の 偏 向 」 (culturalistbias)と 批 判 し,次 の よ う に 述 べ て い る。 「文 化 的 エ リー トは …… 放 送 政 策 を経 済 分 析 の俗 物 的 な影 響 か らは 自由 な もの とみ る こ とを 自己 の 職務 と考 え てい る。 しか し,す べ て の文 化 的 生 産 と消 費 はか な りな 程 度 希 少 資 源 の配 分 と利 用 に依 存 し,そ れ に よ っ て規 定 さ れ る。経 済学 の専 門家 が 自 ら に問 う もの こ そ,こ の 資 源 は い か な る過 程 で 配 分 さ れ るべ きか とい う問題 で あ る。」(注7) ② 外 発 的(現 代 的)要 因 こ れ に もさ ま ざ まな もの が考 え られ るが例 示 す れ ば次 の よ う にな る。 ア 技 術 的要 因… …放 送 の経 済 学 的研 究 に 直 接 与 え た 影 響 と して は,英 のBBC(公 共 放 送)の 財 源 方 策 を検 討 した ピー コ ック リ ポ ー ト(1986(注8))に あ らわ れ て い る よ う に, 放 送 サ ー ビス の供 給 者 と消 費者 を直 結 せ しめ て 「視 聴 者 主 権 に よ る市 場 原理 」 を 「は じめ て放 送 の世 界 で も成 立 させ た 唯一 の契 機 」 で 55
あ る光 フ ァイ バ ー ネ ッ トワ ー ク技術 実用 化 の 例 が あ げ られ る 。 こ う した放 送 サ ー ビス の需 給 関係 を 直結 で きる技 術 は光 フ ァイ バ ー の み な らず,例 え ば ス ク ラ ンブ ル方 式(テ レ ビ映 像 の 同期 信 号 な どを くず して,そ れ を回復 す る装 置 が な け れ ば正 常 な番 組 を視 聴 で きな く す る技 術)を 利 用 して,日 本 で も近 く本 格 的 サ ー ビス が 始 ま る有 料 契 約 放 送(「 日本 衛 星 放 送 一JSB」 や 「衛 星 デ ジ タ ル音 楽 放 送 一 SDAB」 な ど に よ る)な ど が あ げ られ る。 番 組 あ た り,チ ャ ンネ ルあ た りの 有料 視 聴 を可 能 にす る新 技 術 の展 開 は,こ の種 の技 術 的要 因 の強 化 を予 想 させ る もの で あ ろ う。 イ 経 済 的要 因… …技 術 的要 因 と も関連 が 深 い 。 「放 送 の 経 済 的拡 大 の 推 進 力 は技 術 革 新 へ の 投 資 に熱 心 な経 済 的 関 心 で あ る」(ホ フマ ン=リ ー ム,出 典(注1))とい う言 葉 の 通 り, 新 技 術 実 用 化 へ の投 資 効果 を最 大 にす る た め, 市 場 分 析 な ど の経 済 学 的 な ア プ ロ ーチ が 進 め られ るの は よ くみ られ る所 で あ る。 こ う した 動 向 は ま た一 国の 経 済 活動 の重 点 が しだ い に 第 三 次 産 業 へ の傾 斜 を深 く して い くマ ク ロ な 産 業 構 造 の変 動 と もか か わ って い よ う。 経 済 の ソ フ ト化 ・サ ー ビス化,情 報 化 の動 きは当 然 なが ら市 場 競 争 原 理 に基 づ い て展 開 さ れて い る。 情 報 産 業 の 有 力 な分 野 の一 つ と して の 放 送 産 業 もこ う した 流 れ の 中 に組 み 込 ま れつ つ あ る もの と み る こ とが で き よ う。 ウ 政 治 的 要 因… … ピー コ ック リポ ー トに つ い て は 「報 告 が 主 張 す る市 場 原 理 は,民 間 資 金 の 活 用 や 公 共 事 業 の民 営 化 を主 張 す るサ ッチ ャ ー政 権 の政 治姿 勢 と基 本 的 に合 致 す る 思 想 で あ る」 と の 指 摘 が あ る(西 谷 茂 一 NHK放 送 文 化 調 査 研 究 年 報No.32)。 こ う し た 指 摘 はい わ ば放 送政 策 が 産 業 政 策 の 一 環 と し位 置 づ け られ つ つ あ る こ とを示 唆 して い よ う。 この よ う な政 治 的要 因 は前 述 した よ う な 市場 の 国 際 化 の動 きな ど と も結 びつ き,さ ら に力 を増 して い る よ うで あ る。 工 制 度 的 要 因 … …放 送 政 策 を産 業 政 策 と して と らえ 直 す こ とは制 度 的 要 因の 形 成 につ なが る面 もあ る 。 ホ フマ ン=リ ー ム は,経 済 的 関 心 が 「伝 統 的 な公 共 放 送 独 占体 制 を打 破 したい とい う欲 望 を政 治 的 に刺 激 す る とい う 目標 を追 加 す る こ とが あ る」(購 注i)との べ て い る。 ピー コ ック リポ ー トの よ う な財 政 学 者 に よ る経 済 学 的分 析 が 求 め られ た の も こ う し た 背 景 に よる所 が大 きい と思 われ る。 また 制 度 的 に西側 諸 国 が規 制 緩 和 政 策 を打 ち 出 した の も,ダ イ ソ ン らの指 摘 の よ う に国益 の 増 大 とい う産 業振 興 の 目的 の ため とみ られ て い る。 オ 社 会 的要 因 … …放 送 に対 す る根 強 い批 判 の 一 つ は,放 送 局 と視 聴 者 の 間 の つ なが り が 一 方 的 で,後 者 の意 向 が 前 者 に十 分 反 映 さ れ な い とい う もの で あ っ た。1977年 に イギ リ ス の 放 送 制度 改 革 案 を提 起 した アナ ン委 員 会 は 「パ ブ リ ック ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ」(視 聴 者 に放 送 局 が 自己 の行 動 を説 明 す る責 務)を 強 調 し,放 送 世 論 調 査 委 員 会 等 の 設 置 を勧 告 した(村 井 仁NHK放 送 文 化 調 査 研 究 年 報 No.24)。 この い わ ば サ ー ビス の 需 給 間 の 不 均 衡 とい う問題 は,昔 か ら経 済 学 が得 意 な領 域 の 一 つ で あ っ た。 そ の ため こ う した 放 送 局 の 活動 と視 聴 者 の意 向,評 価 との 関係 にか か わ る問 題 は経 済学 的分 析 に も っ と も よ く適 合 す る もの の一 つ で あ り,事 実 後 述 の英 ・IBA の テ レ ビ放 送 の費 用 便 益 分 析 な ど多 くの研 究 が み られ る 。 以 上 前 著 で も指 摘 した これ ら5要 因 の ほか に,新 た に次 の 二つ の要 因 を追 加 す る こ とが で き る。 力 文化 的要 因 … … ピ ー コ ック委 員 会 な ど で 放 送 の財 源 政 策 に か か わ る検 討 が 進 む 中で, 財 源 と放 送 の社 会 性,文 化 性 とか か わ る番 組 編 成 や個 別番 組 の 品質 との関 連 が 注 目 を集 め る こ とに な っ た 。 ロ ン ドンス ク ール オ ブエ コ ノ ミク ス(LSE)の ノ シ ター は 「混 合 経 済 と し て の イ ギ リス の テ レ ビ」 とい う報 告 書 を ピー コ ッ ク委 員 会 に送 り,そ の 中 でBBCに お け る財 政 上 の 変 化 が 番 組 の 種 類(又 は 範 56
囲)と 質 に 与 え る影 響 を論 じて い る(注9)。ま た,イ ギ リス商 業 放 送 改 革 法 の 中 で も商業 放 送 と,割 り当 て衛 星 放 送 電 波 の免 許 に さい し, 番 組 の 質 の審 査 が 重 視 され て い る 。 さ らに番 組 の 国 際貿 易 の展 開 につ れ て,輸 入番 組 に含 まれ る番 組 制 作 国の 価 値 観 の他 国へ の影 響 と 経 済 的利 益 との対 立,即 ち 文化 と経 済 の か か わ りを論 じる研 究 もあ らわ れ て い る(次 章 コ リンズ らの論 文 参 照)。 キ 国 際 的要 因 …… 衛 星 等 番 組伝 搬 技 術 の 発 達 の た め に放 送 が ます ます 国境 を こえ て い る。ECは1984年 に グ リー ンペ ーパ ー 「国境 の な い テ レ ビ ジ ョ ン」 を採 択 し,そ の 中 で 「放 送 は主 と して経 済 活 動 で あ る」 旨 をの べ て い る。 放 送 市場 の 国際 化 は後 述 の とお り, さま ざ まな 経 済学 的接 近 を よ んで い る(次 章 ワ ィル ドマ ン らの論 文 等 参 照)。 放 送 の 経 済 学 的分 析 を促 進 す る要 因 と して は ほか に もさ ま ざ まな ものが 考 え られ よ う。 また内 発 的 要 因 と外 発 的要 因 の 問の 関 連 も指 摘 で きよ う。 規 制 緩和,市 場 競 争 原 理 重 視 等 の 国際 的 動 向 は経 済 学 説 史研 究 の観 点 か ら は, い わ ば新 古 典 派 経 済 学 理論 の台 頭 とみ る こ と もで きるで あ ろ う。 と もあ れ こ う した現 代 的, 外 発 的要 因 と理 論 的,内 発 的要 因 とが 相 互 に か らみ合 い なが ら放 送 の経 済学 的分 析 を進 行 させ て い る の で あ ろ う。 この こ とは,次 に の べ る非 経 済 学 的 な分 野 か らの研 究 促 進 要 因 に つ い て もあ て は まるの で はあ る まい か 。 (2)放 送 の経 済 的要 素 に かか わ る 非 経 済 学 の 分 野 か らの研 究促 進 要 因 こ こで も内 発 的,外 発 的,二 つ の 要 因 が 区 別 で きそ うで あ る。即 ち 内発 的 要 因 と して は, こ れ まで の文 献 の あ らわ れ方 の 中 に は,経 済 学 の立 場 か らの ア プ ロー チ に触 発 され る とい う形 の理 論 的要 因 を うか が わせ る ものが あ る 。 例 え ば前 出 の ピ ー コ ック委 員 会('85年 設 置) は視 聴 者 主 権 に基 づ く高 度 に発 達 した市 場 原 理 で運 営 され る放 送 シ ステ ム の実 現 を構 想 し た。 しか しそ の検 討 過 程 で は,J.Gブ ラ ム ラ ー らは,厂 公 共放 送 の 必 須 の 機 能 は市 場 原 理 が 要 請 す る視 聴 者 を極 大 化 す る よ う な戦 略 に は完 全 に依存 すべ きで は な い」 とす る意 見 を'86年 に 出 して い る(注io)。さ ら に ア メ リ カ で は ピ ー コ ック リポ ー トに先 立 つ'82年 に, 前 連 邦 通 信 委 員 会(FCC)フ ア ウ ラ ー委 員 長 らは,周 波 数 帯 の 自由 な譲 渡制 な ど放 送 事 業 に大 幅 な 自 由市 場 原 理 を導 入 すべ きだ とす る 論 文 を発 表 した(注11)。この 主 張 に対 して は 日 本 の放 送 問題 総 合研 究 会 が 「市 場 機 構 が 果 た して 国民 の知 る権 利 を十分 保 障 し うる もので あ る か 否 か,最 大 の 問 題 点 は こ こ に あ る」 (同 研 究 会 報 告 書)と 批 判 を 加 え て い る ('88年)。 も う一 つ の外 発 的 要 因 につ い て は,放 送 の 経 済 的,商 業 的要 素 の重 視 とい う現 代 的状 況 の 変 化 そ の もの に注 目 した もの が あ る。 い わ ば現 代 的 要 因 で,例 え ば前 出の 公法 学 者 ホ フ マ ン=リ ー ム の論 文 が あ げ られ る。彼 は 「法, 政 治 とニ ュー メ デ ィアー 放 送 規 制 の 諸傾 向」 とい う論 文('86年)の 中 で,民 放 方 式 の採 用 や ヨー ロ ッパ 共 通 市 場 の 実 現 を め ざすEC 法 制 の動 きな どか ら,放 送 政 策 と法 規 の枠 組 に経 済 第 一 主 義 に基 づ く転 換 の徴 候 が み られ る こ とを批 判 的 に指 摘 して い る。 そ の 主 な例 は次 の通 りで あ る。 ⑧ 「信 託 モ デ ル」(放 送 は社 会 の信 託 を受 け て社 会 的利 益 の す べ て を考 慮 に入 れ,調 和 あ る番 組 編 成 を行 な うべ きだ とす る政 策 モ デ ル)か ら 「市 場 モ デ ル 」(番 組 は利 潤 最 大 化 の た め に編 成 され,何 が 満 され るべ きニ ーズ か は市場 の力 が 決 定 す る とす る政 策 モ デ ル) へ の 転換 ⑤ 放 送 シ ス テ ム の 「文 化 的 法 制化 」 政策 (放 送 の 政 治 的,文 化 的意 義 を第1に 考 え る 政 策)か ら 「経 済 的法 制 化 」 政 策(放 送 の も た らす 経 済 的利 益 を 第1に 考 え る政 策)へ の 転 換 ◎ 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 自 由 」 政 策 57
(自 由 に コ ミュ ニ ケ ー トす る権 利 を何 よ り も 尊 重 す る 政 策)か ら 「放 送 企 業 家 精 神 の 自 由」 政 策(経 済 的 自 由の権 利 と して の商 業 的 コ ミュニ ケ ー シ ョン ビ ジ ネス の 自由 を第1に 尊 重 す る政 策)へ の 転換 以上 の例 に はい ず れ も,放 送 にお け る商 業 的 要素 の拡 大 な どの状 況 変 化 に対 す る,非 経 済学 者 の多 分 に批 判 的 な 関心 が うか が わ れ よ う。 2放 送 の社 会 的,経 済 的 分 析 に関 す る 文 献 の 事例 研 究 前 著 で は収 集 論 文 の 中か ら主 要 な もの を次 の4項 目に分 け て紹 介,分 析 を試 み た 。 (1)理 論 モ デ ル に よ る経 済 的 分析 … …ベ イ ツ の 「放 送 経 済 学 にお け る理 論 の役 割 一 概 観 と展 望 」(出典註6) (2)放 送 の 規 制 に 関 す る研 究 … … フ ァ ウ ラ ー らの 「放 送 規 制 へ の 市場 ア プ ロ ーチ 」佩 注11) (3)公 共 放 送 サ ー ビ ス を め ぐ る 問 題 … … 上 記 フ ァ ウ ラ ー ら の 論 文 の ほ か ブ ラ ム ラ ー ら の 「放 送 の 財 源 と 番 組 の 質 一 国 際 比 較 に よ る検 討 」(同註1°),オ ー ウ ェ ン ら の 厂番 組 選 択 の 諸 理 論 」(注12) (4)放 送 に 関 す る 経 済 的 評 価 の 問 題 … … オ ー ウ ェ ン ら の 「公 共 テ レ ビ ジ ョ ン」(注13), ベ ー ゼ ン ら 「テ レ ビ ネ ッ トワ ー ク の 構 造 と行 動 に 関 す る 規 制 の 評 価 基 準 」(注14),CSPイ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル 研 究 報 告 書(注15) 今 回 は そ の 後 の 収 集 論 文 の 中 か ら重 要 な も の を 次 の4つ に 分 け て 紹 介,分 析 し て み た い 。 (1)放 送 の 経 済 学 的 ア プ ロ ー チ に つ い て (2)テ レ ビ 放 送 の 費 用 便 益 分 析 (3)放 送 番 組 市 場 の 国 際 貿 易 に 関 す る 研 究 (4)経 済 的 要 素 拡 大 下 に お け る テ レ ビ の た め の 公 共 政 策 研 究 (1)放 送 の経 済 学 的 ア プ ロー チ に つ い て ① 放 送サ ー ビスの 経 済 的特 質 の分 析 1988年 に 出 た 「テ レビの 経 済学 一 イ ギ リス の 事 例 」(共 著 者 は ロ ン ドン理 工 科 大 学 メ デ ィア研 究 室 上 級 講 師 のR.コ リ ンズ,コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン と情 報 研 究 セ ン ター所 長 のN . ガ ー ナ ム,同 セ ン タ ー経 済 学 研 究 助 教 授 の G.ロ ック ス リ ィ)に,「 放 送」 の経 済 学 的 な 扱 い方 の一 例 が の べ られ て い る。 まず 著 者 が 注 目す る の は放 送 サ ー ビス に含 まれ る経 済 的 特 質 で,放 送 番 組 の 「非 物 質性 」(放 送 の 価 値 は 電 波 やVCRな どの 物 質 的 な手 段(メ デ ィア)に あ るの で は な くて,そ れ が 運 ぶ 非 物 質 的 な 番 組 内容 に あ る)と 「新 規 性 」(し か もそ の価 値 は内容(メ ッセ ー ジ)の 新 しさ に あ る),そ れ に 「公 共 財性 」(1人 の 番 組 視 聴 は他 の 人 の視 聴 と非 競 合 的,非 排 除 的(共 同 消 費 的)で あ る)の 三 つ を あげ て い る。 最 後 の 「公 共 財 性 」 が あ るが 故 に,電 波 の カ バ レー ジ 内 で は顧 客(視 聴 者)が1人 追 加 され て も生 産(番 組 制 作)費 用 は増 加 しな い とい う,い わ ゆ る 「規 模 の経 済 」 が 働 くこ と。 ま た通 常 で は番 組 視 聴 が 直 接 の 支 払 い 行 為 と結 びつ かず,従 って市 場 メ カニ ズ ム が 十 分機 能 しな い こ とを指 摘 して,そ こ に政府 が 介 入 す る根 拠 を認 め て い る。 さ ら に放 送 産 業 の 文化 産業 と して の特 質 を論 じて,こ の 規模 の経 済 が働 くこ とで,放 送 産 業 は顧 客1人 あ た りの 費 用 の低 下 分 を供 給 費 用 の 引 き下 げ に結 び つ け て市 場 規 模 の拡 大 を図 り,そ れ に よ って好 ま しい需 要 と供 給 増 加 の 良 循 環 が期 待 で きる 。 こ れ は 出版 な ど文 化 産 業 一 般 が もつ特 質 で あ るが,放 送 産 業 に は この特 質 が特 に 目立 つ と 指 摘 して い る。 また1人 あ た りの番 組 視 聴 コ ス トが 極 端 に低 い こ と もあ って,放 送 産業 は 番 組 の 「新 規 性 」 な ど価格 以外 の所 で競 争 せ ざ る を え ない 「非 価格 競 争 」 の形 を とる,そ して 絶 え ざ る新 規 番 組 の制 作 費 の ほ か に広 告 や 顧 客 サ ー ビス な どの 費用 等 が伴 うの で,放 送 産 業 は常 に コス ト上 昇圧 力 を 内部 に包 含 す 一58
る こ と に な る。 と ものべ てい る。 また 著 者 は 非 文 化 産 業 と は異 な り,放 送 産 業 で 生 産 と よ び うる もの は この番 組 の新 規 性 を生 み 出 す 活 動 即 ち 「研 究 開発 」 で あ る こ と。 そ して 顧 客 か らの新 しい需 要 に常 に反 応 せ ざ る を え ない た め,供 給 製 品(番 組)が う ま く需 要 に適 合 す る か ど うか絶 えず 不確 実 な状 況 に おか れて い るの で,放 送 産 業 の 分析 に は む しろ不 確 実 性 の経 済学 で扱 わ れ るモ デ ル が よ り よ く適 合 す る こ と。 また そ の ため 放送 産業 は,い わ ゆ る番 組 の 総 合編 成 の名 の も と に,さ ま ざ まな 種 目の 番 組 を供 給 して そ の問 の 内 部相 互補 助 効 果 を狙 う,「範 囲 の 経 済」 を追 求 す る必 要 にせ ま られ る と して い る 。(蹠 注7等) ② 放 送 サ ー ビス の経 済 的特 質 と規 制 根拠 以 上 が コ リ ンズ らの論 文 の骨 子 で あ るが, これ らの論 点 の うち には,こ れ ま で放 送 研 究 が扱 って きた論 点 と重 要 な か か わ りを もつ と 思 わ れ る ものが 含 まれ て い る 。 な か で も大 き い の が放 送 の公 共 性 の 論 拠 をめ ぐる 問題 で あ る。 具体 例 で考 え てみ る と前 著 で も指 摘 して お い た が,通 常 の電 波 にス ク ラ ンブ ル をか け た有料 テ レ ビサ ー ビスの よ う に,技 術 的 に非 排 除 性 を解 消 した放 送 サ ー ビス で も公 共 財 と して の 性格 が 残 るか ど うか とい う問 題 が あ げ られ る。 ス タ ン フ ォー ド大 学 の オ ー ウ ェ ンら は非 競 合 性(共 同 消 費性)が 残 る限 り 「番 組 は依 然 と して 公 共 財 で あ る 」。 同 一 カ バ レー ジ 内 で は無 料 で あ るの に も しそ れが 有 料 テ レ ビ方 式 で送 られ,追 加 的 に課 金 す る こ とで, あ る 人 々 を排 除す る と した ら 「社 会 は費 用 の か か らな い あ る便 益 を失 った こ と にな る」(蹠 注12)との べ て い る。 つ ま りオ ー ウ ェ ン らは技 術 的 に非 排 除 性 が な くな っ て も,公 共 財 の も う一 つ の 特 徴 で あ る共 同消 費 性(非 競 合 性) が 番 組 に残 る 限 り,そ の サ ー ビス は公 共 財 と して の性 格 を失 わ ない と主張 して い る の で あ る。 事 実 連 邦 通 信 委 員 会(FCC)で も'75年 か ら'87年 まで は 地 上 の テ レ ビ局 に よ る有 料 サ ー ビ ス を,「 使 用 す る技 術 に 関 係 な く,マ ス オ ーデ ィエ ンス に ア ッピ ール す る よ う企 画, 制作 され た テ レ ビ番 組 の送 信 」 が 「公 衆 に よ って 直接 に 受信 され る こ と を意 図 」 して い る とい う,い わ ば 「番 組 内容 に基 礎 をお くアプ ロー チ 」 に よ って 「放 送 」 と して 認 可 して き た。 しか し'87年 に至 ってFCCは これ を否定 し,有 料 テ レビ はス ク ラ ンブ ル な ど 「非 加 入 者 に よる利 用 を阻 止 す るた め の通 信 技術 を使 って い る」 ので 「公 衆 に よ って直 接 受 信 され る こ とを 意 図 して い な い 」 と して,「 放 送 」 か ら 除 外 す る 「技 術 に基 礎 を お くア プ ロ ー チ」 に 変 更 す る 判 断 を示 した 。 つ ま りFCC は'75年 の 判 断 と は逆 に,い わ ば 放 送 の 「非 競合 性 」 の 有 無 か ら 「非 排 除 性 」 の 有無 に, その サ ー ビス が 「放 送 」 か 否 か の 判 断 の 重点 を移 行 させ た とみ る こ とが で きる。(注16) こ の判 断 に は市 民 グ ル ー プ な どか ら訴 訟 が お き た が,コ ロ ン ビ ア特 別 区 連 邦 裁 判 所 は '88年6月 こ の 判 断 を支 持 す る判 決 を下 し, つづ い て最 高 裁 判 所 も原告 側 の,「 知 る権 利 」 を侵 す違 憲 判 決 で は ない か との上 告 を し りぞ け,FCCの 判 断 は通 信 法 の 恣 意 的 な 解 釈 で はな い とす る判 断 を示 した と伝 え られ る。 最 高裁 が 違 憲 か ど うか の判 断 を さけ た こ とか ら, 放 送 界,市 民側 で は議 員 立 法 そ の他 に よる対 抗措 置 を講 じ よ う とす る動 きが あ り,事 態 は なお 流 動 的 で あ る とい う。 多 種 多 様 な放 送 メ デ ィア の特 性 と規制 の濃 淡 とのか か わ りにつ い て は,日 本 で も1987年 の郵 政 省 放 送 政 策 懇 談 会 の報 告 以 来,文 字放 送 につ い て規 制 の 弾 力 化 が 図 られ る な ど両 者 を関 連 づ け る政 策 が 推 進 され る よ うに な っ た。 また1990年2月 の郵 政 省 「放 送 の公 共 性 に 関 す る調査 研 究 会議 報 告 」 で も 「多様 な メ デ ィ アが 出現 して い る現 下 の状 況 に鑑 み る と,こ の視 点 か らの 規律 の在 り方 の 検 討 が 必 要 で あ る」 とさ れて お り,今 後 もさ ま ざ まな 形 で メ デ ィア特 性 と規 制 の 関連 につ い て 検 討 が 進 む こ とが予 想 さ れ る。放 送 の経 済 学 的研 究 の 分 一59
野 に も,ア メ リカ に お け る よ う な 「放 送」 概 念 の再 定 義 と関連 して,も と もと共 同 消 費性, 非排 除性 を有 す る放 送 サ ー ビス が特 別 に有 料 化 され る こ とな どに よ って 生 じる社 会厚 生 上 の 問題 等 につ い て,厚 生 経 済 学 等 の立 場 か ら さ らに突 っ込 ん だ研 究 を進 め て い く必 要 が生 じつ つ あ る もの と思 われ る。 ③ 厂番 組 重複 」 の社 会 的費 用 も う一 つ 触 れて お きた い の が放 送 サ ー ビス に お け る 「市 場 メ カニ ズ ム の 失敗 」 とか か わ る問 題 で あ る。 この 「失敗 」 とは公 衆 に供 給 さ れ るべ き番 組 を市 場 に全 面 的 に委 ね た場 合 に は,教 育,教 養 番 組 な どあ る種 の番 組 の過 少 供 給 と同 時 に,娯 楽 番組 等大 多 数 の視 聴 者 が 好 む番 組 につ い て の 過大 供 給 が起 こ りう る こ とを意 味 して い よ う。 す で に ホ テ リン グ は その 古 典 的 論 文(1929)に お い て,少 数 の 企 業 が 一 つ 以 上 の 次 元 に お い て互 い に相 違 す る あ る財 な い しサ ー ビス の供 給 に 関 して 競 争 す る場 合 に は,そ の財 の属 性 につ い ての 過 度 の 密 集 な い し重 複 が 生 じる だ ろ う とい うい わ ゆ る 「最 小 差 別 化 の 原 理 」 を主 張 して い た(注17)。 前 記 の オ ー ウ ェ ン ら も この よう な番 組 重 複 は 社 会 に と っ て の 資 源 の 浪 費 で あ り,一 種 の 「社 会 的 費 用 」 とみ て い る(出典 注12)。 放 送 メ デ ィア の多 様 化 が 進 ん で も,同 時 に放 送 の 商 業化,寡 占化 が深 まれ ば,現 在 以 上 に番 組重 複 が 激 し くな る に ち が い な い。 重 複 に伴 う社 会 的 費用 の 定 量 的測 定 手 法 の 開発 が 必 要 とな るゆ え ん で あ る 。 な お,番 組 の過 少供 給,過 大 供 給 問 題 を回 避 す る に は,放 送 法 が定 め た報 道,教 育,教 養,娯 楽,各 番 組 の調 和 あ る編 成 原 則 の 規定 が役 立つ とみ られ,市 場 の失 敗 へ の 具体 的 な 政府 介 入 と考 え る こ とがで きる。 しか しこの 規 定 は先 年 の 法 改正 に よっ て民 放 の 中波 放 送, 超 短波 放 送 に は適 用 さ れ な くな っ た。 コ リ ン ズ らの立 場 か らす れ ば,視 聴 者 利益 を考 えた 政府 規 制 か ら市 場 的利 益 を考 え た 自由 放任 へ の政 策転 換 とみ られ な く もあ る まい 。 この 問 題 は,メ デ ィ アの商 業 的特 性 と規 律 根 拠 た る 社 会 的 影 響 力 の濃 淡 との 関連 を含 む とい う意 味 で,法,制 度 面 か らの ア プ ロ ーチ と経 済 学 か らの ア プ ロー チ が交 錯 す る研 究 領 域 に属 す る問 題 と も思 わ れ る。 ア メ リカで は この よ う な 厂法 律 学 と経 済 学 の 学 際 的 領 域 」 を扱 う 「LawandEconomics」(法 と経 済 学)研 究 が 進 んで い る と き くが(注18),日本 に も こ う し た研 究 が放 送 の分 野 で も進 展 す る こ と を期待 した い 。 (2)テ レ ビ放 送 の 費 用 便 益 分 析 〈費 用 便 益 分 析 の考 え方 〉 経 済学 に は周 知 の とお り,人 々が お 金 を払 って まで商 品 やサ ー ビス を入 手 しよ う とす る の は,そ こに一 定 の効 用 を認 め て い るか らだ とす る学 説(限 界 効 用 学 派)が あ る。 効用 と は簡 単 に い っ て満 足 の 程 度 の こ とで,こ の 学 派 で は 「消 費 者 主 権 」 の立 場 に立 って社 会全 体 の効 用 は,社 会 を構 成 す る各 個 人 の 効用 の 合 計 で あ らわ さ れ る と考 えて い る。 この効 用 の大 きさ を測 定 す るの に 「消 費者 余 剰 」 とい う考 え方 が あ る。 これ は 消 費者 が 商 品 やサ ー ビス な ど を 「な しで す ます よ りは, む しろ 支 払 う こ と を辞 さ な い と考 え る価 格 (こ れ を 支 払 容 認 価 格 ∼WillingnesstoPay ∼WTPと い う)が ,実 際 の 支 払 価 格(費 用)を 超 え る 超 過 額 」 で 示 さ れ る (marshall,A.PrinciplesofEconomicslst ed1890chVI)。 つ ま り人 々 が 商 品 や サ ー ビ ス か ら得 る 純 効 用(「 消 費 者 の 余 剰 満 足 」 と もい う)を,こ の 支 払 容 認 価 格(WTP)で 測 定 した満 足 の程 度 か ら費 用 を さ しひい た 分 で あ らわす とい うわ けで あ る。 また ピ ックス は こ のWTPの 求 め方 とは 別 に,厂 す で に 入 手 中 の サ ー ビス な どが,価 格 上 昇,経 済 統 制 その 他 の 理 由で 入 手 で きな く な る ので あ れ ば,い く らお 金 を払 って も らわ ね ば な らな い と思 うか 」 な ど と尋 ね る 方 法 を ・1
提 起 し た(Hicks,J.R.,ValueandCapital 1939chlI-CompensatingVariation)。 一 方20 世 紀 初 頭 ア メ リ カ で は 水 路 改 良 等 の 公 共 投 資 評 価 手 法 と し て コ ス ト ・ベ ネ フ ィ ッ ト分 析 (CBA)が 生 ま れ た 。 こ こ に 「消 費 者 余 剰 」 概 念 が と り入 れ ら れ,具 体 的 な 測 定 方 法 の 開 発 が 進 ん だ 。 こ こ で は コ ス トは 原 理 的 に は い わ ゆ る 機 会 費 用 の 考 え 方 で 当 該 事 業 の 実 施 が な け れ ば,そ の 利 用 資 源 を使 っ て 得 ら れ た で あ ろ う よ う な 便 益 の 大 き さ に よ っ て 測 定 す る 。 し か し こ れ を 実 際 に 計 算 す る の は 困 難 な の で, 効 用 学 派 が 当 初 効 用 測 定 の 尺 度 と し た 支 払 い 貨 幣 額 等 そ の 事 業 に 関 す る 直 接 間 接 の 費 用 を 計 算 す る こ と で 示 す こ と が あ る 。 ① イ ギ リス に お け る放 送 の 費用 便 益 分 析 こ う した 費用 便 益 分 析 の 考 え方 を放 送 に あ て は め て分 析 を試 み たの が 経 済学 者 の プ ラ ッ ラ ン とワ イ ル ズ で あ る。 ワ イル ズ は放 送 番 組 の 多様 性 と異 な る番 組 編 成 行動 を とる 四つ の 放 送 機 関 との最 適 な 関係 を,番 組WTPと 視 聴 率 に仮 の値 を入 れ て両 者 の積 を と り,そ の 合 計 を比 較 す る こ とで 求 め よ う と した(注19)。 ま た プ ラ ッテ ンは 一 番 組 あ た りの平 均WTP の仮 定値 と現 実 の視 聴 率 調 査 結 果 の積 か ら, 英 の テ レ ビ放 送 の年 間便 益 を試 算 して い る(注 2°)。 さ ら に最 近 で は英 ・内務 省 の委 託 を受 け たCSPイ ン タ ー ナ シ ョナ ル(コ ンサ ル タ ン ト会社)が,費 用便 益 分 析 の考 え方 と方 法 は 「視 聴 者 が 放 送 か ら引 き出す 満 足 を評価 す る こ とが 中 心 で,放 送 が文 化 的 同一 性 の 維 持 や 政 治 的 参 加 に 占め る役 割 … な どの評 価 は補足 的 に しか 把 握 で き な い な どの 限 界 が あ る。」 しか し 「す べ て を考 慮 した結 果,我 々 は厚 生 経 済 学 が テ レビの 財 源 調 達方 法 の変 更 に 関す る賛 否 両 論 を比 較 衡 量 す るた め の最 も満 足 い く定 量 的 技 術 を提 供 す る と信 じる」 と評 価 し, 採 用 して い る(鵬 注15)。便 益 推 計 の 基 礎 と な るWTPに は,所 得 水準 の差 を反 映 す る よ う に 構 成 さ れ た84人 の 回 答 者 に よ るBBCと ITV(民 放)に 対 す るWTP評 価 調 査(サ ン プル 数 が 僅 か だ が,こ れ は 「統 計 的 な信 頼 性 を得 るた め で な く,消 費者 の選 好 に関 す る深 い洞 察 を得 るた め,と され て い る)結 果 な ど い くつ か の 資 料 を利 用 して い る 。CSPで は これ ら の 数 字 を使 って 人 々がBBC第1テ レ ビの番 組 か ら受 け る便 益 を,ま た費 用 につ い て は 「BBC第1テ レ ビの 家 計 あ た りの費 用 」 を受 信 許 可 料 の45%に あ た る約23ポ ン ド と し て計 算 して い る。 そ して 人 々 がBBC第1テ レ ビか ら得 る純 便 益 を,ひ とまず 上 記 の 便 益 額 か ら費 用 をマ イナ ス し,さ らに その 残 額 か ら,一 部 の人 々が 示 した 費用(約23ポ ン ド) 以下 のWTP額 の合 計 を さ し引 い た額 で 示 し て い る。 今 回新 た に得 た資 料 に よ る と,IBA(イ ン デペ ンデ ン ト放 送 協 会)の ウ ーバ ー博 士 は, 英 の テ レ ビ放 送 の 主 要 な番 組 タイ プ(ニ ュ ー ス,軽 娯 楽,ス ポ ー ッ,ド ラマ な ど七 つ)が そ れ ぞ れ代 表 され る と思 わ れ る番 組(BBC, ITV,CH4)を 計38番 組 選 び,BARB(放 送 視聴 者 調 査 会 社)の 調 査 シス テ ム を利 用 して 「も し こ うい った番 組 を な しで す ます と した ら,い く ら払 っ て も ら わ ね ば な ら な い か」 (前記 ヒ ッ クス の考 え方 に よ って い る)を 尋 ね,延 べ 約5,600人 の 成 人 か ら回 答 を 得 た (1985)。 この 調 査 結 果 を分 析 して 同博 士 は 次 の よ う にのべ て い る。 ◎ 各 番 組 の値 段 を タイ プ別 に平均 した価 格 と,別 に調べ た 上記 の番 組 タ イ プ別 の 週 間 視 聴 回数 をか け る と,1人 あ た りの 週平 均 視 聴 価 格 は8.82ポ ン ド,年 間458ポ ン ド,1世 帯 あ た り1,000ポ ン ド以 下 にな る 。 ⑤ こ の研 究 は視 聴 価 格 の精 密 な合 計 額 を 求 め る こ とが 目的 で はな い,し か し人 々 が 認 め て い る テ レ ビの 視 聴価 格 は,年 額58ポ ン ド の受 信 許 可 料 の何 倍 に も及 んで い る とい う疑 い の な い事 実 が 明 らか にな った。 ◎ 上 記 の結 果 は受信 許可 料 が 人 々 の 享 受 して い る効 用 価 値 よ りも非 常 に安 い もの と評 一61
価 され て い る こ と を示 して い る(注21)。 ⑦ テ レ ビ放 送 の便 益 費 用 比 率 の 試 算 ウ ーバ ー博 士 は こ うのべ て い るが,調 査 し た 番 組 に は 民 放 のITVな どの 番 組 も入 って い るの で,費 用 との対 比 で は受 信 許 可料 以外 に テ レ ビ広 告料(民 放 に関 す る消 費 者=視 聴 者 の負 担)や 番 組 受 信 に要 す る費 用(受 信 機 購 入 な ど)を 含 め る必 要 が あ る もの と思 わ れ る。 こ れ ら を合 計 した費 用 額 と同博 士 が得 た 年 間1人458ポ ン ドを平 均 世 帯 構 成 人 員2.9人 (た だ し,1987年 の数 値)に か け た便 益 額 と を比 べ たの が表2で あ る。 そ の便 益 費用 比 率 は10.2で,英 の視 聴 者 は年 間 で み る と世 帯 平 均 で 費 用 の10倍 強 の 便 益(効 用,即 ち満 足) を得 て い る こ とに な る。 ④ 公 共 放 送(BBC)と 民 間放 送(ITVと CH4)の 便 益 費用 比率 の試 算 ウ ーバ ー博 士 に調査 の対 象 とな っ た34番 組 につ い て 公 共 放 送 と民 間放 送 の 区別 を尋 ねて み た とこ ろ,公 共 放 送(BBC)が7,民 間放 送(ITV,CH4)が15,両 方 か ら放 送 され て い る もの,あ るい は 放送 され うる もの が 計 12番 組 で あ っ た。 そ こで この12番 組 の評 価 額 の1/2を 公 共 放 送 と民 間 放 送 の 固有 の 評 価 値 に加 え,そ れぞ れ の 合 計 を公 共放 送 と民 間放 送 の便 益 と した。 これ らの便 益 費 用 比 率 を試 算 した のが 表3で あ る。 この表 の特 徴 は, ④ 公 共 放 送 の便 益 費 用 比率(13.2)が 民 間放 送(8.8)を 上 廻 っ て い る ⑤ 民 間 放 送 の便 益 費 用 比 率(8.8)は テ レビ放 送 全 体(10.2)を 下廻 って い る,な ど で あ る ③ 日本 につ い て の分 析 わが 国 で こ こ15年 来 テ レ ビ放 送 の費 用 便 益 分 析 を研 究 して い るの が,放 送 社 会 経 済 研 究 会(代 表 尾 上 久雄 京 都 大 学 名 誉 教 授)で あ る。 同研 究 会 で は ウーバ ー博 士 の調 査 と同年 の1985年 に,静 岡 市 民 を 対 象 に1週 間 の NHK総 合 と民 放 テ レ ビ4局 の個 別 番 組(15 分 以 上,全 日)に つ い て,前 記 の マ ー シ ャル の考 え方 に よ って,視 聴 した こ との あ る番 組 が ホ テ ル の コイ ンテ レ ビな どの よ う にお 金 を 払 わ な けれ ば見 られ な い と した ら,い く ら支 払 って も よい と思 うか」 と尋 ね る調 査 を行 っ た(15才 ∼69才 の800人 対 象,配 付 回 収 法, 表2イ ギ リスの テ レビ放 送 の便益 費用 比率(世 帯 平均 一原 則 と して1985年 値) ①年 間便益 ②年 間費用 ③ 便益費用比率 備 考 (o=o) 1,328。2ポ ン ド 129.8ポ ン ド 10.2 注11987/88の 平 均 世 帯 人 (1人458ポ ン ド×2.9人)注 ・ 次の費用 の合計額 ÷ 員 1,870万 世 帯 注2 注21984/85の テ レビ受 信 ⑦テ レビ広告費 契約数 13億7,600万 ポ ン ド注3 注31985の 値 で 「広 告 統 計 ⑦受信許可料収入の うち 年 鑑 一1988」 英 広 告 協 のテレビ相 当分 会 」 に よ る 5億5,550万 ポ ン ド 注4Socialtrends19一 英 ㊥受信費用 国中 央統 計 事 務 所 発 4億9,590万 ポ ン ド注4 行 一の1985年 度 の 「テ 合 計 レ ビ,ビ デ オ な ど の家 24億2,740万 ポ ン ド 庭支出額」に よる 一62
有 効 回 答 率78.0%)。 この 評 価 値 と同 時 に調 査 した番 組 の視 聴 回数 を か けて,週 間 の視 聴 者1人 あ た りの 平 均 便 益 は2,348.2円,年 間 12.2万 円,世 帯 あ た り(7才 以 上2.90人)で は年 間35.5万 円 とい う結 果 を得 た。 この便 益 値 と費 用 に関 す る 資料 に よ っ て,全 国 の テ レ ビ放 送 お よび公 共 放送 と民 間放 送 の便 益 費用 比 率 の試 算 を試 み た 。 この概 要 は表4,5の 通 りで, ④ 全 国の テ レ ビ放 送 で は費 用 の 約7倍 の 便 益(効 用)と な って い る ⑤ 公 共 放 送 で は費 用 の11倍 強,民 間 放 送 で は約6倍 の便 益(効 用)と な っ て い る(注22)。 な お,同 研 究 会 で は1977年 に も 同 じ静 岡 市 で,同 一 の 調 査 方 法 に よ り調 査 して い る 。 こ の 時 も,テ レ ビ 放 送 全 体 の 便 益 費 用 比 率 は 8.5,NHK11.2,民 放7.5と'85年 調 査 と 似 た 傾 向 が 示 さ れ た 。 ④ 日 ・英 両 国 の分 析 の比 較 日本 と イギ リス で は,上 記 の よ う に質 問 の 形 式 な ど調査 方 法 に違 いが あ る に もか か わ ら ず,こ れ まで の所 で は 同 じ よ うな傾 向 が み ら れ る。 即 ちテ レ ビ放 送 全 体 の便 益 費 用 比 率 は い ず れ もか な り高 く(ほ ぼ10倍 と7倍),ま た どち ら も公 共 放送 が民 間放 送 を上 廻 って い 表3イ ギ リスの テ レ ビ放送 に お け る公 共放 送 と民間放 送の 便益 費用比 率の 比較 0 年 間 の 費 用 ③便益費用比率 区 分 ①年 間の便益 制 作 ・放 送 費 用 番組 受信 費用 (10=00> 105億1,845万 ポ ン ド 公共放送 7億9,403万 5億5,550万 2億3,853万 週 間1人 平 均3.73ポ ン ド× 13.2 (BBC) ポ ン ド ポ ン ド ポ ン ド 52週 ×2.9人 ×1,870万 世 帯 143億5,360万 ポ ン ド 民 間放 送 16億3,337万 13億7,600万 2億5,737万 1週 間1人 平 均5.09ポ ン ド×1 8.8 (11'V,CH4) ポ ン ド ポ ン ド ポ ン ド X52週 ×2.9人 ×1,870万 世 帯 ノ 24億2,740万 19億3,150万 4億9,590万 合 計 248億7,205万 ポ ン ド 10.2 ポ ン ド ポ ン ド ポ ン ド 注1公 共 放 送 と民 間 放 送 別 の週 間1人 平 均 の視 聴 価 値 を試 算 す る に は ウ ーバ ー博 士 が した よ うに そ れ ぞ れ の週 平 均 視 聴 回 数 が い くつ か を調 べ る必 要 が あ る。 しか し同 博 士 は そ れ を調 査 して い ない 。 調査 の対 象 とな っ た34 番 組 の 値 段 を単 純 に合 計 す る と9.75ポ ン ド とな り,ウ ー バ ー博 士 が視 聴 回数 とか けて 得 た8.82ポ ン ド と0.93 ポ ン ドの 差 が 生 じる 。 この ま まで は,博 士 の 計 算 と違 い が 生 じる こ とに な る。 そ の た め,次 の様 な 調整 を行 って 公 共 放 送 の1人 週 平 均 の 視 聴価 値 を3.73ポ ン ド,民 間 放 送 を5.09と 設 定(計8.82ポ ン ド)し て 便益 計 算 の 基 礎 と した 。 ① 単 純 合 計 額 の9.75ポ ン ドの 公 共 放 送 と民 間放 送 の 内 訳 を計 算 す る(4.12ポ ン ドと5.63ポ ン ド)。 ② こ の内 訳 の比 率 は42%と58%で あ る の で,そ れ を9.75ポ ン ドと8.82ポ ン ドの差0.93ポ ン ドにか けて,公 共放 送 分 の差 と民 間放 送 分 の 差 と した(0.39ポ ン ドと0.54ポ ン ド)。 ③ そ れ ぞ れ の値 を① の 公 共 放 送 と民 間 放 送 の 内 訳(4.12ポ ン ドと5.63ポ ン ド)か ら ひ くと,残 りが3.73ポ ン ド と5.09ポ ン ドと な る。 注2番 組 受 信 費 用 は公 共 放 送 と 民 間 放 送 の視 聴 比 率48.1%と51.9%(Broadcast誌 に よ る1985年 の4月 ∼9月 の 平 均)に よ っ て配 分 した。 一63一
る。 さ ら に民 間放 送 はテ レ ビ放 送 全 体 を下 廻 って い る な ど,日 ・英 と も同一 の傾 向 を示 し て い る こ とが 注 目 され よ う。 なお,日 本 の公 共放 送 と民 間放 送 の費 用 便 益 分析 の研 究 例 と して は,他 に慶 応 大 学 の 丸 尾 直美 教 授 を 中心 とす る研 究 が あ り,そ こで は分 析 の 枠 組 を整 理 す る と と も に(厂 公 共 放 送 の 財 政 基 盤 」一 現 代 経 済研 究 セ ン ター1984 年),両 者 の便 益 比 較 につ い て 次 の よ うに 分 析 して い る(注23)。 「1983年時 点 でNHKの 平 均 視 聴 率 は 民 放 の 平 均 視 聴 率 の46.2%で あ る の に 対 し て NHKが 国 民 か ら徴 収 して い る受 信 料 は民 放 の 広 告 費 の30.9%で あ る事 か ら,NHKの 放 送1単 位 当 りの純 ベ ネ フ ィ ッ トが民 放 と同 じ で あ る とす る と,NHKの 方 が 国 民 の 負 担 当 りの ベ ネ フ ィ ッ トは 大 きい と い う事 が い え る 。」 表4日 本の テ レ ビ放送 の便益 費 用比率(1985) 区 分 ① 年間の便益 ② 年 間 の 費 用 ③便益費用比率 (O=0) 制 作 ・放 送 費 用 番組受信費用 全 国 13.5兆 円 1.97兆 円 1兆2,525億 円 7,175億 円 6.9 注1 注2 注3 備考 静 岡 市 民 の 評価 値 が全 国民 の評 価 値 と差 が な け れ ば とい う仮 定 の も とに 試 算(NHK教 育 テ レビ と民 放CMを の ぞ く,以 下 同 じ) 便 益 は 上述 の 世 帯 あ た りの評 価 値 ×37,980千 世 帯('85年 国勢 調 査 値) 費 用 はNHKの 昭和60年 度 受 信 料 収 入 決算 額 の60%(テ レ ビ費 用 の 相 当 額)と 民 放 の テ レ ビ広 告 収 入 の全 額 の 合 計(制 作 ・放 送 費 用)。 番 組 受 信 費用 は 「家 計 調 査 年 報 」 「電 力 需 給 の 概 要 」 な どか ら世 帯 あ た りの テ レ ビ購 入,修 理,電 気代 を も とに試 算 有 効 回 答者 に次 を質 問 して い る 。 ① 番 組 の値 段 を 考 え た こ とが あ る か 「考 え た こ とが あ る 」+「 考 え た こ とは な いが 考 え方 は よ く分 か る」 が47.3% ② 何 を 参考 に して 考 え た か(複 数 回答)の 上 位4位 1位 厂㎜ の 受 信 料 」29.8% 2位 「ホ テ ル の コ イ ンテ レ ビの値 段 」20.8% 3位 「週 刊 誌 や 本 の値 段 」17.2% 4位 「新 聞 の 値 段 」 と 「映 画館 や 劇場 の入 場 料 」16.7% 表5全 国 の公 共放送 と民間放 送の 便益 費用比 率 の比較(1985) 区 分 ① 年間の便益 ② 年 間 の 費 用 ③便益 費用比率 (O=0) 制 作 ・放 送 費 用 番組受信費用 全 国 公共放送 3兆9,015億 円 4,390億 円 2,022億 円 2,368億 円 8.9 民間放送 9兆5,985億 円 1兆5,310億 円 1兆503億 円 4,807億 円 6.3 合 計 13.5兆 円 1.97兆 円 1兆2,525兆 円 7,175億 円 6.9 注1 注2 便 益 は週 間便 益 に 占 め る公 共 放 送 の便 益 の割 合 い(28.9%)と 民 間 放 送 の 割 合 い(71。1%)で 全 便 益 を配 分 費 用 の うち番 組 受信 費用 は総 視 聴 時 間 に 占 め る公 共 放 送 と民 間 放 送 の 視 聴 時 間 の 割 合 い('85年11月 のNHK 視 聴 率 調 査 に よ る33%と67%)で 配 分 。 制 作 ・放 送 費 用 は表3と 同 じ考 え方 で 試 算 。 た だ し民 間放 送 の制 作 ・放 送 費 は電 通 「日本 の広 告 費 」 に よ る。 一64
⑤ 世 論 調 査 方 式 に よ るWTP測 定 ア プ ロ ー チ の 特 質 と 課 題 以 上 見 た 通 り,日 英 両 国 で テ レ ビ放 送 の 支 払 容 認 価 格(WTP)を 世 論 調 査 方 式 で 求 め よ う と す る 研 究 が 進 ん で い る 。 つ い 最 近 で も 英 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 者 と し て 知 ら れ る エ ー レ ン バ ー グ ら が 前 記CSPの 受 託 研 究 に つ づ き,現 行 受 信 許 可 料 額 を も と に し た WTP調 査 を 行 っ て,BBCテ レ ビ の 有 料 方 式 化 に 関 す る 諸 条 件 を 分 析 し て い る(Andrew Ehrenberg&PamMillsViewers'Willingness toPayInternationalThamsonBusinessPub-lishing,.1990)0 さ て こ の よ う な,世 論 調 査 方 式 に よ っ て テ レ ビ サ ー ビ ス に 対 す るWTPを 求 め る 方 法 に は ど の よ う な特 質 と課 題 が 認 め ら れ る で あ ろ う か 。 a)特 質 図1は,放 送 社 会 経 済 研 究 会 が 行 っ た3回 のWTP調 査(う ち1回 は'86年 富 山 市 で 午 後6時 以 降 の 番 組 に つ い て 静 岡 市 の 調 査 と 同 様 の 方 法 で 行 わ れ た)結 果 を12の 番 組 種 目別 に 整 理 し た も の で あ る(蹠 注22)。こ こ で 特 徴 的 な こ と は, ⑦ 劇 場 用 映 画 な ど 視 聴 率 もWTPも 高 い 種 目 も あ る 。 し か し芸 能 番 組 な ど の 高 視 聴 率 番 組 と 教 育 教 養 番 組 な ど の 低 視 聴 率 番 組 の WTPを 比 べ る と,前 者 よ り も後 者 の 方 が 高 い こ とが3回 の調 査 を通 じて み られ る。 こ う した 点 か らす る と,WTPを 世 論 調 査 方 式 で と ら え る方 法 に は,通 常 の 視 聴 率 調 査 で は と らえ が た い視 聴 者 の 反 応 をつ か み うる可 能 性 が あ る とい え よ う。 ⑦WTP調 査 の さい の 質 問 文 は前 記 の と お り,「 も しお 金 を払 わ な けれ ば見 られ な い と した ら,い くら支 払 って も よい と思 うか 」 とい う仮 定 の 表現 を と って い る。 通 常,世 論 調 査 で の仮 定 の 質 問 は,そ の時 期,内 容 に よ っ て 人 々 の回 答 が変 化 しやす い こ とが 知 られ て い る。 しか し,図1を み る とこれ まで の3 回 の 調 査 で み る限 りは い つ れ もそ れ ぞ れ の WTPの カ ー ブ は,お 互 い に交 差 した りデ コ ボ コ に な らず,ほ ぼ 同 じ型 を作 って 上 下 して お り,視 聴者 の反 応 が わ りに安 定 して い る様 子 が うか が わ れ よ う。 これ は多分,質 問 は仮 定 の 形 を と って い る が,質 問 の対 象 が テ レ ビ番 組 とい う きわ め て 身 近 か に親 しんで い る もの で あ る こ と。 ま た 表4の 「備 考」 に示 した 通 り,WTPの 金 額 の 決 定 に あ た って,映 画 館 の入 場 料 な ど 日常 にあ る現 実 の情 報 価 格 を参 考 に して い る ため と も考 え られ る。 ◎WTPを 世 論 調 査 方 式 に の せ て み る こ との ひ とつ の 利 点 は,WTPの ほ か に 回 答 者 の 年齢,性 別,学 歴 等 の属 性 の み な らず,学 習意 欲,テ レビ に対 す る一般 的 な意 向等 さ ま ざ まな 質 問 を一 緒 に尋 ね て み られ る こ とで あ る。 これ らの 結 果 に ク ロス 集計,相 関分 析, 数量 化 理 論 等 の 多 次 元 解析 な どを加 え る こ と に よ り,WTP評 価 の特 質 をや や 構 造 的 に と らえ て み る こ とが 可 能 とな る 。 表6は その 一例 で,富 山市 の調 査 を も と に WTP評 価(こ こで は個 人 別 で 月 間 の値)と 属 性,テ レビ視聴 行 動 ・態 度 ・評 価,家 計支 出 ・自由時 間 等 の 経 済,生 活 特 性,学 習 意欲 な ど との関 連 を分 析 した もので あ る(踉 注22)。 夕 方6時 以 降 の 「一 般番 組」(NHK総 合 と 65
民 放 テ レ ビ)のWTP評 価 と関 連 が 薄 い の が, 学 歴,職 業,家 計 支 出 な どで あ る。 一 方 関 連 が 深 い の が,視 聴 時 間,自 由 時 間,そ れ に テ レ ビ を他 の こ とをあ と まわ しに して も優 先 的 に見 る態 度,テ レビが た め にな る,あ る い は こ の 先 も テ レ ビ は 自分 に必 要 だ と い う評 価 (必 要 性),さ ら に学 習 意 欲 や 自動 車 免 許 な どの資 格 保 持 等 で あ る。 こ う した 結 果 を み る と,人 々 の テ レ ビ番 組 に 対 す る 価 値 づ け(WTP)は,学 歴,職 業 な どの 「獲 得 的(業 績 的)地 位 」 や 経 済特 性 な ど,い わ ば個 人 の社 会 的条 件 に強 くか か わ る とい う よ り もむ しろ,自 由時 間や 視 聴 時 間 等 の ライ フ ス タイ ル に,さ らに は テ レビの 視 聴 態 度 や 評 価,そ れ に学 習 へ の意 欲,資 格 保 持 な どの,い わば 自己 向 上心 とで もい え る よ う な心 理 的,内 面 的 諸 条件 に,よ り深 くかか わ って い る とい う特 質 が うか が え よ う。職 業 や 学 歴 な ど と関連 が 薄 い の は,テ レ ビが こ う した 「地 位 」 とは無 関係 に誰 で も手 の届 くメ デ ィアで あ る とい う実 態 が 反 映 され て い る の で あ ろ う。 また テ レ ビの 評 価 な ど とか か わ り が 深 い の は,WTPも ま た 「意 識 さ れ た貨 幣 価 値 」 とい う尺度 に よる番 組 評 価 の 性 質 を含 む もの だ か らで あ ろ う。 な お,テ レ ビ評価 の 中 の 「必 要 性 」 との 密 接 な 関 連 は,WTP評 価 が 現 在 の テ レ ビ の 「楽 し さ」,「 有 用性 」 の み な らず 将 来 に わ た る効 用 認 知 を含 んだ もの で あ る とい う意 味 で 注 目 され て よ い。 b)課 題 世 論 調 査 方 式 に よるWTP値 の入 手 につ い て の第1の 問 題点 は,番 組 ご と に設 定 す る価 格 を変 え る と,WTPの 総 合 計 が 変 わ って く る の で は な い か とい う懸 念 が あ る こ とで あ る。 これ を 明 らか にす る た め に は,例 え ば映 画 館 の 入場 料 や 新 聞代 な どの 日常 的 な情 報 価 格 に 準 拠 して 設 定 した 質 問 と,そ れ か ら著 し く離 れ た 質 問 とで は回 答 の 出 方 に どの程 度 差 が で て くるか な ど,実 験 計 画 法 の手 法 な どで吟 味 表6個 人別 月間WTPの 関連要 因 一 般 番組 (夜6時 以 後) 教 育 テ レ ビ 属性 性 別 年齢 学歴 職 業 経 済特性 テ レビ台数 ビデオ所有 家計支出 自由時間 情報行動 テ レビ視聴時 間 NHK志 向 優 先視聴 楽 しむ ため 次 々見 る 専念視聴 他の人 と 評価 楽 しさ 有用性 必要性 満足度 学習 意欲 資格所持 一1-( (一) 0 十 〇 〇 十 十 十 十 〇 十 十 〇 -f-十 〇 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 (十) 十 十 ? 0 0 (十) 0 0 十 十 〇 〇 〇 〇 0 -}-0 十十 十十 注)十 十 、 十 プ ラス の 相 関 一 一、 一 マ イナ ス の 相 関 (十)プ ラス の 関 係(有 意 で は な い) )、(曲 線 相 関 2変 数 間 の 関 連 の 指 標 はkendal1のTbで 有 意 性 は 危 険 率5% 第3回WTP調 査C86.8)結 果 に よ る を深 め て い く必 要 が あ ろ う。 さ ら に回 答 者 の所 得 水 準 に よ ってWTPの 実 質 的 な 価 値 づ け が 異 な る(所 得 効 果 が あ る)と い う問 題 が あ る。 個 々 の テ レ ビの 番 組 のWTPの 場 合 は,所 得 効 果 が著 し く出 る よ うな大 き な金 額 で 尋 ね て み る こ とは常 識 外 と もい え よ うが,よ り厳 密 に は所 得 水 準 に よっ て ウ ェ イ トをつ け る こ と も必 要 で あ ろ う。 も う一 つ の 大 きな 問 題 点 は,WTPを 世 論 調 査 方 式 で求 め る方 法 か ら得 られ る もの は, 個 別 番 組 か ら各 個 人 が 入 手 す る 直 接 の 効 用 (満足 感)が 中心 で あ って,放 送 が 政 治 的, 社 会 的 態 度 の形 成 や文 化 的 同一 性 の 維 持 な ど に果 た す,よ り累積 的 で長 期 的 な効 用 全 体 が と ら え に くい とい う こ とで あ る。 こ れ は暴 力 番 組 の青 少 年 に与 え る悪 影 響 な ど,い わ ば放 ・・