社 会 系 教 科 教 育 学 会 『 社 会 系 教 科 教 育 学 研 究 』 第 8 号 1996 (pp.23-28)
「 分 業 」 を 視 点 と し た 社 会 科 教 科 内 容 の 検 討 と 授 業 設 計
一小学校第5学年「 日本の農業問題」を事例として−
A Study on The Content of Social Studies and Construction of Lesson Plan
-m the Case of f Agriculture Problem in Jap
an J
in 5 t
h Grade ―
I は じ め に 1989 年 の 小 学 校 社 会 科 学 習 指 導 要 領 第 5 学 年 の 改 訂 内 容 の 一 つ と し て , 厂我 が 国 の 産 業 の 発 展 に 関 心 を もっ よ う に す る 。(゜)」 こ と が 新 た に 加 え ら れ て い る 。 特 に 農 業 学 習 に お い て は 厂国 民 の 食 料 確 保 の 上 で , 我 が 国 の 農 業 の 果 た し て い る 役 割 を 理 解 さ せ , こ れ か ら の 農 業 の 在 り 方 に も 関 心 を も た せ る よ う に す る 。(゜D. P。44)」 と 示 さ れ て い る 。 こ の 「 こ れ か ら の 農 業 の 在 り 方 に も 関 心 を も た せ る 」 と い う こ と を , 本 稿 で は , 今 後 の 日 本 農 業 の 未 来 予 測 を す る こ と と 捉 え た い 。 こ れ は , 具 体 的 に は , 私 た ち の 食 料 を , 今 後 ,F  ̄だ れ が , ど こ で , ど の よ う に 生 産 し て い く の か 。」 と い う こ と を 予 測 し て い く こ と で あ る 。 し か し, 現 在 ま で こ れ ら の 内 容 が 充 分 学 習 さ れ て き た と は い い が た い 。 こ れ ら の こ と を 学 習 さ せ る た め に は , 農 業 学 習 の 中 に 未 来 予 測 の 学 習 を 取 り 入 れ て い く こ と が 必 要 と な っ て く る 。 こ の 日 本 農 業 の 未 来 予 測 の 学 習 は , そ の 前 提 と し て , 現 在 の 農 業 問 題 に 関 す る 事 実 を 分 析 的 に 検 討 す る こ と に よ り , よ り 科 学 的 な も の と な っ て こ よ う 。 ま た , 現 在; 日 本 農 業 を と り ま く 状 況 は , 刻 々 と 変 化 し て い る が , 農 業 学 習 に お い て は , そ の 変 化 の 現 象 面 に だ け 振 り 回 さ れ る こ と な く , そ の 本 質 を 学 習 さ せ る こ と が 重 要 で あ る 。 日 本 農 業 の 本 質 を 学 習 さ せ る た め に は , 国 際 的 視 野 が 不 可 欠 で あ る 。 な ぜ な ら , 今 後 も い っ そ う 農 産 物 貿 易 の 自 由 化 は 進 み, 国 内 に お け る 農 業 は 新 た な 再 編 が 必 要 と な っ て く る と 予 測 さ れ る か ら で あ る 。 本 稿 で は こ れ ら の こ と に 関 し て , 稲 作 を 中 心 に 以 下 の 手 順 で 考 察 し て い く 。 ま ず , 日 本 の 稲 作 農 業 の 未 来 予 測 を 行 う た め に は 国 際 的 視 野 か ら の 検 討 が 必 要 で あ る こ と, 次 に , こ の 未 来 予 測 を 科 学 的 な も の と す る た め に は 厂分 業」の 視 点 が 有 効 で あ る こ と を 述 べ る 。 最 後 に 匚分 業 」 の 視 点 を 取 り 入 れ た 授 業 モ デ ル を 構 想 す る 。 前 重 幸 美 ( 広 島 市 立 中 島 小 学 校) 11 日 本 の 稲 作 農 業 の 現 状 分 析 (1) 国 際 的 視 野 か ら捉 え た 日 本 の 稲 作 農 業 米 の貿 易 自 由 化 問 題 に関 す る 論 議 に お い て は, 自 由 化 賛 成 の根 拠 と し て , 一 般 に 次 のよ う な こ と が述 べ ら れ た。 「 国 内 産 米 の 価 格 は , 諸 外国 と 比 較 し て 高 い O そ こ で, 安 い 外 国 産米 を 輸 入 し た 方 が , 消 費 者 に と っ て 得 に な る 。 さ ら に, 国 内 の稲 作 農 業 が 産業 と し て 自 立 し, 国 際 競 争 力 を つ け て い く た め に も, 市 場 原 理 を 導 入 し, 自 由 化 し た 方 が よ い。S」 こ の米 の 内 外 価 格 差 が 発 生 す る原 因 の一 つ に, 米 生 産 国 間 の生 産 性 格 差 , つ ま り 各 国 間 の 生 産 性 にお け る 絶 対 優 位 , 劣 位 と比 較 優 位, 劣 位 の 問 題 が あ る。 ま た , 米 自 由 化 反 対 の 根 拠 と し て は, 次 のよ う な こ と が 述 べ ら れ た。 「 現 在, 日 本 は 世 界 最 大 の 農 産 物 輸 入 国 で あ り , 食 料 自 給 率 は主 要 先 進 国 中 , 最 も低 い 。 そ こ で , せ め て 現 在 自 給 を 維 持 し て い る米 く ら い は, 今 後 も自 給 を 維 持 し て い く べ きで あ る。 さ ら に, 食 料 の安 定 的 な 供 給を 保 障 す る た め に は, 食 料 自 給 率 の 維 持 , 向 上 が 必 要 で あ る の で , こ れ以 上 の農 産 物 貿 易 自 由 化 はす べ き で な い。S」 こ れ ら の こ と は, 各 国 の農 業 保 護 政 策 と も か か わ っ て , 食 料 安 全 保 障 論 と し て 様 々 に 述 べ ら れて い る 。 し か し, 現 実 に は1995 年 か ら米 輸 入 の 段 階 的 自 由 化 が 始 ま っ た こ とか ら も, 農 産 物 貿 易 自 由 化 が 確 実 に 進 ん で い る と い う 現 状 は 認 め な け れ ば な らな い。 米 の輸 入 自 由 化 が 開 始 さ れ た原 因を 明 らか に し, さ ら に , 今 後 の 日 本 の 稲 作 農業 の ゆ く え を 予 測 し て い く に は, 新 た な 視点 か ら 日 本 の 農 業 問 題 を 捉 え 直 し て み る こ と が 必 要 で あ る 。 な ぜ な ら, 米 自 由 化 問 題 に 代 表 さ れ る 日 本 の農 業 問 題 は, 国 内 問 題 と し て 捉 え て い る だ け で は , 解 決 の 方 向 を 探 る こ と もで き な い し , 将来 の展 望 を 述 べ る こ と もで きないか らで あ る。 社 会 の変 化 に対 応 し て , 食 料 生 産 の意 義 や そ の生 産 の 方 法 も変 化してい く。 つ まり, 国 際 的 視 野 で, そ の 意義 や 生 産
-23-の仕組み
を捉
え直
していくことが
必要
となってきたの
である。
(2
)
「分
業」の視
点
日本農業の未来予測を行
うために
,
「分業」の視
点
を設定
した
。世界の農産物貿易量は拡
大
してき
てお
り,
米貿易量も
,近年
,確実に増加
している。今後,さら
に米貿易自由化か進
むと予測
され
る状況において
,日
本の稲作農
業が国際競争の中で生き残るためには
,貿
易
を基礎
とする世界分
業体制の
中で
,米生産の意義や
仕組み
を捉
え直
していくことが必要である
。
この
「分
業
」について最初に理論化
したのが,A.
ス
ミス
(゜
)
である
。そ
して,彼の提示
した
多くの基礎
的概念
を精緻化
したのが
,D.リカー
ド
(Sである
O
そこで本稿
では
,ス
ミス
や
リカー
ド等の分
業理論
を整
理
して,
「分
業」を次の
ように定義す
る。
「分
業」とは
,個
人
(または集
団)が,ある製品
(または部
品)の生産に専従
し
,その後でその製
品
(部
品)
を交換あるいは結合して必要を充足す
ることで
ある。
この匚
分
業」は
,厂
企業内分業」
,厂
企業間分業」
,
匚
国際分業」の三つに分
けられ
る。
生産工程
を多くの
段階に分
け
,労働者がそれ
ぞれの
作
業工程
を分担
して生産するな
らば
,生産性
を高める
ことができる
。これ
が
「 ̄
企
業内分業」である。
また
,生産工程
をそれぞれの
企業が分担
して生産す
るならば。生産性を高めることができる
。これが
「企
業間分業」である。
さらに
,国際的に
「分
業」が行われ
る
と,一国が相
対的に効率
よく生産
できる産業が拡大
し
,非効率的に
しか生産できない産
業が縮小す
る
。他方
,他
国で
対照
的な産
業の拡大
,縮
小が生
じる。その結
果,世界全体
としての
生産効率が高まると同時に
国際的に産
業が再
編成
される
こととなる
。これ
が
「国際分業」である・
。
(3)匚
分業
」の視
点か
ら捉
え直
した
日本の稲作農業
現在
,日本の
米自由化問題にかかわ
っているの
は
,
主にア
メリカ合衆国とタイである
。そこで,これ
らの
国
を取
り上げて比較検討
していく。
まず
,
「企
業内,企業間分
業」の視点から日本の稲
作農業をみ
てい
く
。はた
して,日本の
稲作農
業におい
て生産性
向上のために
「企業内
,企
業間分
業」を取
り
入れ
ていくことは
可能なの
であろうか。
日本の稲作農
業の特徴は
,まずその耕作規模が零細
であるとい
うこと
,さらに耕作規模の拡
大が困難であ
るということが
あげ
られ
る
。農
業は
,製造
業ほど細か
く分
業が行われ
ていない
。
1年中
,同
じ仕事
をや
って
いるわ
難
しい。つま
けではな
り
「企業内,企
いし
,仕事
をはっき
業間分
り分離することが
業」
しに
くい産
業
゛24
であるということが
,農業の合理化
を妨げている要因
の一つである
。
しか
し
,一部の
地域
では
,営農集
団を組織
して生産
効率
を上げている地域
もある
(秋
田県仙北町)
。この
組織では
,共同で作業を
した
り,機械や施設の共同所
有
した
りしている
。また
,ヘリコプター
やラジコンの
小型機
械を使って直播きの稲作が試み
られ
ている地域
もある
(千葉県印旛
沼周辺)
。
さらに,
1995
年から施行された新食糧法
(主要食
糧の需給及び価格の
安定に関する法律)は
,
「企業内,
企業間分
業」を流通面から促進
していく動きであると
捉
える
ことができる。
次に
「国際分業
」の視
点か
ら,日本の稲作農業をみ
ていく
。タイやア
メリカ合衆国と比較
して,日本の
稲
作農業は比較優位産
業とい
えるのであろうか
。
日本農
業は土地生産性の
向上によ
って労働生産性を
高め
てきた
。 1980
年において日本の土地生産性はア
メ
リカ合衆国の10
倍
を超
える
。
しか
し,アメリカ合
衆国の
土地装備率は
日本の100
倍
を超えるため
,日本
の農
業労働生産性はアメリカ合衆国の約1
/10
であ
る
(゜
。
)
さらに,アメ
リカ合衆国では
,米生産の
工程
を
受け持つ企業が存在
し
,米は産
業と
して
「企業内,企
業間分
業」が進んでいる。
タイにおいては
,米は
自由主義市
場を基本と
し国内
の取引も貿易も
自由化され
ている
。さらに,米の生産
費は
,
日本の約1 /13,
アメ
リカ合衆国の
約
2/
3で
あり
,3国中最も低い。さらに,日本への
輸出向けの
米生産も開始している。
(゜
)
この
ような生産費構造
(゜
)
の相違がある現状におい
て
,ア
メリカ合衆国やタイと比較
して
日本の稲作農
業
が比較優位産
業となる
ことは困難で
ある
。つま
り,比
較生産費説にもとづいて
自由貿易が
望ま
しいという観
点から米貿
易
自由化問題
を捉えると。
「農業に比較優位
を持たない日本は
,米を中心によ
り一層の農産物の
自由化が望ま
しい
。
゜」
ということがいえる。
以上の
ことから
,今後米貿易自由化が進めば
,日本
の
稲作農
業は
国際競争
力を失
って衰退
していくことが
予測され
る
。この
ような
中で
日本
の稲
作農
業が生
き残
っ
ていくためには
,耕作規模拡大の問題,また耕作規模
の拡
大によ
り農業生産の
合理化は図れ
ても
日本の
米生
産に
おける優位はほとんど望めないの
で
,農業保護政
策の
あり方が
問題
となってくるであろう。
Ⅲ
「分
業
」
を視
点
と
した
授
業設
計
(1
)
日本の
「分
業
稲作
」
を視
農
業の未
点
と
した
来
予測
農
業
を行
学習
うと
の
知識
い
う
の
ことは
構
造
,事
実 関 係 的 知 識 に 基 づ い て 価 値 判 断 を 行 う と い う こ と で あ る 。 こ の 価 値 判 断 を 行 う 際 に は, と く に 事 実 分 析 の 科学 性 と 情 報 の 豊 か さ が 重 要 と な る。(S) そ し て , こ の 知 識 は, 教 師 が い か に そ の 教 科 内 容 を 認 識 し て い る か に か か わ っ て く る 。 そ こ で, こ こで 構 造 化 す る 知 識 は, 小 学 校 第 5学 年 を 対 象 と す る 知 識 だ け で な く, 教 師 が 把 握 し て お く べ き 知 識を 対象 とす る。 こ の教 科 内 容 と し て の 知 識 の構 造 図 を 次 に示 す。 ⇔ 111 −11111111111111 図 1【「 分業 」 を 視点 と し た 農業 学 習 の知 識 の構 造 図 】 本 稿 にお い て は, 上 記 の 知 識 の中 か ら, 次 の知 識 の 習 得 を めざ し て 授業 設 計 を 行 っ た。(OJ A-1・2 そ れ ぞ れ の 国 が , 相対 的 に 安 く生 産 で き る も の を 貿 易 す れば , お 互 い の利 益 が 増 す の で 貿 易 が 行 わ れ る。( 国 際 分 業 ) A-3 農 業 は 生 物 的 な生 産 過 程 で あ り 自 然 条 件 に 左 右 さ れ る の で, 農 産 物 輸 出 国 の地 域 が 特 化 さ れ た り , 供 給 量 が 不 安 定 と な っ た り す る 。 C-1 生 産 工 程 を 多 く の段 階 に 分 け , 労 働 者 が そ れ ぞ れ の 作業 工 程 を 分 担 し て 生 産 す る と , 牛 産性 が高 ま る。 ( 企 業 内 分業 ) C-2 生 産 工 程 を そ れ ぞ れ の企 業 が 分 担 して 牛 産す る と, 生 産 性 が 高 ま る 。( 企 業 間 分業 ) D 市 場 原 理 に 任 せ て お く と 農 業 は 衰 退 す る場 合 が あ るO こ の た め 農業 の存 在 に よ っ て 国 民 全 体 と し て の 満 足 を 得 ら れ る な ら保 護 し て い こ う と す る 。 ・ 国 内 の食 料 自 給 率 の維 持, 向 上 は食 料 の 安 全 保 障 の 前 提 条 件 で あ る 。 従 っ て, 食 料 は国 内 で 自 給 す る必 要 が あ る 。 ・ 様 々 な も の を 輸 入 に 依 存 し て い る わ が 国 にお い て, 食 料 の 自 給 だ け を い っ て も無 意 味 で あ る。 ・ 水田 の機能 は公共財 的側面 として重要であ り, 保護す るメリ ット があ る。 ・ 農村 には, 社会的環境 の維持,伝 統・文化 の継 承など の役 目があ る。 そこで, そ れを守 る人 の生 活 を保障 する産業 が必要 である。 ・ 公共 財的 側面を 認め保護 していく にはコストが かかり, 国民 の合意が必要 である。 E 今後, 日本の稲作農業 は アメリカ合衆国等 と比べ て優位 となること はほとんど望 めない。 もし米 の輸 大 自由化が進 んだ ら, 日本 の稲作農業 は一 部 の大規 模農家を除い てほとん どが衰退してい くであろ う。 E-1 それぞ れの国 が相対的 に安 くできる ものを 貿易す ればお 互いの国 の利益 が増 すので, 米 の輸入 自由化 を進 め稲 作農業を保 護して いく必 要はない。 E-2 稲作農業 は維持 して いく メリット のある産業 なの で, 衰退 していく と予想 されるな ら維持してい くた めの保護政策 が必 要 とな る。 (2) 小単元「日 本の農業問題」 の授業 モデル ア 小 単元の指導計 画(全17 時間) 本授業 モデ ル設計 は, 岩田一彦氏 の授業設 計論 に即 して行 った。(匐 第1次 米づ くりのさ かんな庄内平 野 ・ 世界 の米 の産地(日本, タイ, アメリカ合衆国) ● ●・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・● ■・・ ・ ・ ・● ●・ ・僖・■ ●・ ・・ ・・●●●●・・ 2 ○ 日 本 の 米 づ く り 一 庄 内 平 野 の米 づ く り を 中 心 に し て ー ・ 耕 地 整 備 , 機 械 化 等 と 農 作 業 の時 間 の 変 化 … 2 ・ 品 種 改 良 , 肥 料 ・ 農 薬 等 と 米 の生 産 高 の変 化 … … … 2 ・ 日 本 の農 業 問 題 ( 兼 業 化 , 農業 就業 人 口 の変化 等 ) … … … 2 ・ 企 業 内 分業 ( 日 本 の 営 農 集 団 と ア メ リ カ合 衆 国 の稲 作 農 家 ) と企 業 間 分 業 ( 日 本 の稲 作 農 業 と ア メ リ カ合 衆 国 の米 産業 ) 第2次 米 の輸入 自由化問 題と日本 の稲作農業 の未 来 予測 ● ●・ ・● ● ●・■・・ ● ・ ・ ・ ・ ・● ● ● ● ● ●・ ・ ・ ・ ・ ・ ・● ● ● S 7 イ 小 単 元 の学 習 過 程 まず , 第 1 次F  ̄米 づ くり のさ か ん な 庄 内 平 野」 に お け る 兼 業 化 , 農 業 就 業 人 口 の減 少 等 の 農 業 問 題 の 学 習 過 程 か ら, 厂今 後 , 日 本 の 稲 作 農業 は 産 業 と し て 生 き 残 っ て い く こ と が で き る の だ ろ う か 。」 と い う 問 題 が 出 て く る 。 こ れを 第 2 次 匚米 の 輸 入 自 由化 問 題 と こ れ か ら の 日 本 稲 作 農 業 」 の学 習 過 程を 貫 く問 い と す る 。 こ の 第 2 次 の学 習 過 程 に お い て は, ま ず 国 内 で 実 際 に論 議 さ れ た 匚米 自 由 化 問 題」に か か わ る 事 実 の分 析 検 討 を 行 う 。 次 に, 米 を 自 由 化 し て い く利 点 , 日 本 の 稲 作 農 業 を 保 護 し て い く利 点 , 食 料 危 機 に 際 し て の有 ― 25 ―
効 性 に つ い て の 分 析 検 討 を す る 。 こ れ ら の問 題を 「 国 際 分 業 」 の 視点 か ら分 析 検 討 す るO こ の視 点 を 取 り 入 れ る こ と に よ り , 日 本 の 稲 作 農 業 に つ い て の 未 来 予 測 が 科 学 的 な も の と な る。 こ こ で は,「 国 際 分 業 」 を 推 進 し て い く 面 か ら 「 生 産 性 の向 上 を 図 る , 消 費 者 のニ ー ズに あ っ た 商 品 と し て の米 作り を す る 」 な ど と い う市 場 原 理 の導 入 を 進 め る 方 向 と, も う 一 方 で , そ の国 際 分業 を 制 限 し て い く 面 か ら 「 市 場 原 理 を 導 入 す れば 日 本 の稲 作 農業 は 衰 退 し て い く と 予 測 さ れ る ので , 農 業 の 公 共 財 的 側 面 を 認 め保 護 す る メ リ ット が あ る な ら 保 護 し て い く 」 と い う 方 向 と の, 両 面 か ら の 認 識 を 持 た せ た い 。 ま た, 学 習 過 程 の 最 後 で , 論 争 問 題 と し て 「 日 本 の 稲 作 農業 を 生 き残 ら せ る べ き か ど う・か。」 を 設 定 し , 価 値判 断 を 行 わせ る。 こ こで は, そ れ ま で の 学 習 の成 果 を 総 合 し て 価 値 論 争 を 行 う。 こ の場 面 で は , 自 分 の 習 得 し た 知 識 を 総 合 し て ど の よ う な 根 拠 ( 事 実 関 係 的 知 識) に 基 づ い て 価 値 判 断 す る か は 自 由 で あ る , 学 級 で 結論 を だ す こ と は し な い 。 本 稿 の 授 業 モ デ ル 〈 表 1〉 は, こ の小 単 元 のう ち 第 2 次 の 部 分 で あ る。 IV お わ り に 本 稿 で は, 稲 作 を 中 心 に, 現 在 進 行 中 の米 輸 入 自 由 化 問 題 等 の 事 例 を 分 析 検 討 す る こ とを 通 し て , 日 本 農 業 の未 来 予 測 を 行 う授 業 設 計 を 試 み た 。 そ の 際 の 視 点 と し て 設 定 し た も の が 「 分 業 」 の 視点 で あ る。「 分 業 」 の具 体 的 視点 と し て , 厂企 業 内, 企 業 間 分 業 」,「 国 際 分業 」 の 視点 を 設 定 し, こ の視 点 か ら 日 本 の 稲 作 農 業 の未 来 予 測を 行 っ た。 「 分業 」 の視 点 か ら, 日 本 の 農 業 問 題 を 研 究 す る こ とに よ っ て, 子 ど も が 日 本 農 業 の 科 学 的 な 未来 予 測 を 行 う こ と が で き る よ う に な る 。 こ れ か ら の 国 際 社 会 に 生 き る子 ど も に と っ て, 国 際 的 視 野 に 立 ち, 社 会 を 見 る 目 を 養 う こ と が重 要 で あ る。 こ の時 の一 つ の 視 点 と し て ,「 分 業 」 の視 点 が 役立 っ で あ ろ う 。 し か し 本 稿 は, 日 本 農 業 の総 合 的 な 未来 予 測 を 行 う こ とを 目 指 し た も の で は ない 。 農 産 物 貿 易 の自 由 化 の 拡 大 に 伴 い,’国 際 分業 体 制 の な か で , 今 後 の日 本 農 業 が ど のよ う に あ れ ば よ い かを , 未 来 予 測を 行 う こ と が 目 的 で あ っ た。 今 後 は, ま た 新 た な 視 点 を 設 定 す る こ と に よ り, 別 の 視 点 か ら の 日 本 農 業 の 未来 予 測 も可 能 で あ ろ う。 表 1 匚第 2 次 一米 の 輸 入 自 由 化 問 題 と こ れ か ら の日 本 農業 ]( 全 7時 間) の主 な 問 い と 目 標 時 雌 主 な 問 い 目 標 と な る 知 識 資 料 1 概 念 探 究 過 程 ↓ 事 実 の 分 析 的 検 討 ↓ (1) 現 在 の 日 本 の農 業 に は ど ん な 問 題 か お る か。 ・ 後 継 者 問 題 , 農 薬 問 題, 米 の 輸入 自 由 化 問 題 等 が あ る 。 今 後 , 日 本 の稲 作 農 業 は 産業 と し て 生 き残 っ て い く こ と が で き る だ ろ う か。 (2) 米 の 輸 入 自 由 化 が 進 め ば , 今 後, 日 本 の 稲 作 農 業 は 産業 とし て生 き 残 る こ と が で き るだ ろ う か 。 ・ 消 費 者 のニ ー ズ に あ っ た 商 品 と し て の米 作 り を し て い け ば, 生 き 残 る こ と が で き る で あ ろ う。 ・ 外 国 の 安 い 米 と 競争 で き る 価 格 の米 作 り が で き れ ば 生 き残 る こ と がで き る で あ ろ う。 ・ 外 国 の 安 い 米 と 競 争 にな れ ば, 稲 作 農業 は生 き残 る こ と は で きな い で あ ろ う 。 ・ 日 本 は , 野 菜, 果 樹 , 草 花等 の 厂園 芸 作 物 」 や , 養 鶏 , 養 豚 な ど の施 設 利 用 型 の 農 産 物 な ど に 特 化 し て い く で あ ろ う 。 ・ 農業 保 護 政 策 を と れば , 米 等 の 農 地 利 用 型 の農 産 物 も生 き 残 る こ と が で き るで あ ろ う 。 2 3 4 資 料 a b C 問 い I 国 内 で, 米 の 輸入 自 由 化 問 題 が さ か ん に論 議 さ れ た の は, な ぜ か。 出 な ぜ , 米 の 輸 入 が 始 ま っ た の か。 (2) な ぜ 匚平 成 米 騒 動 」 が 起 こ っ た の か 。 (3) 米 輸 入 自 由 化 に対 す る 国 内 の 意 見 に は ど の よ う な も の が あ る か。 ・ 1993 年 の ウ ル グ ア イ ラ ウ ンド 農 業 合 意 に よ り, 1995 年 か ら米 の一 部 輸 入 自 由 化 が 始 ま っ た。 ・ 平 成 5年 の 異 常 気 象 の た め , 米 の 作 柄 が 戦 後 最 低 と な っ た の で, 平 成 6年(1994 年 ) の初 め に 米 が 不 足 し た 。 ・ 政 府 が 緊急 輸 入 し た 外 国 産 米 の 供 給 が 遅 れ た り, 消 費 者 の国 内 産 米 志 向 が 強 か っ た り し た ので , 消 費 者 へ の円 滑 な 販売 に支 障を き た し た。 ・ 日 本 の 食 料 自 給 率 は 低 下 し て き て い る。 そ の 中 で 米 は現 在 自 給 を 維 持 し て い る 。 せ め て 米 は今 後 も 自 給 を 維 持 し て い き たい の で, 自 由 化 に は 反 対 で あ る 。 ・ タ イ ヤ ア メ リ カ 合 衆 国 の米 は安 い ので , 自 由 化 さ れ る と 消 費 者 は国 内 で安 い 米 を 選 ん で買 え る よ う にな る ので , 自 由 化 に は 賛 成 で あ る。 ・ タ イ や ア メ リ カ 合 衆 国 の米 は安 い 。 自 由 化 さ れ る と 日 本 の 小 規 模 の 稲 作 農 業 は打 撃 を 受 け る の で, 自 由 化 に は 反 対 で あ る。
未 来 予 測 ↓ 価 値 判 断 (4) 世 界 の米 貿 易 は ど のよ う に な っ て い る か。 (5) な ぜ, 日 本 と タ イ と ア メ リ カ 合 衆 国 の 米 の 価 格 は違 う の か。 ・ 日 本 の米 は 保 護 さ れて い る 。 今 後 は 市 場 原 理 を 導 入 し て 国 際 的 に も 競 争 力 を っ け て い く こ と が 必 要 で あ る の で, 自 由化 に 賛 成 で あ る。 日 本 の貿 易 摩 擦 問 題 を 緩 和 す る た め に も, 米 市 場 を 開 放 し た ほ う が よ い ので , 自 由 化 に賛 成 で あ るo ・ ア メ リ カ合 衆 国 は , 日 本 の 米 市 場 開 放 を 要 求 し て き た。 ・ 世 界 の米 貿 易 量 は年 々 増 加 し て い る。 日 本 へ の 輸 出 用 の 米 作 り を 始 め た 国 も あ るo ・ タ イや ア メ リ カ 合 衆 国 は, 米 の輸 出 国 で あ る 。 ・ タ イや ア メ リ カ 合 衆 国 の米 生 産 費 は 日 本 よ り 低 い の で, 生 産 者 価 格差 が 生 ま れ る 。 d e f g h ! J k 5 6 資 料 1 m n 0 p q 問 い n こ の ま ま 米 の輸 入 自 由 化 が 進 む と, 日 本 の 稲 作 農 業 は ど う な る だ ろ う か 。 剛 米 輸入 自 由 化 か 進 む と, 日 本 の 稲 作 農 業 は ど う な る か。 (2) 米 自 由 化 の利 点 は 何 か 。 (3) 日 本 の 稲 作 農 業 を 保 護 し て い く 利 点 は 何 か。 (4) 食 料 危 機 に 際 し て は, 自 由 化 を 進 め た 場 合 と 自 給を 維 持 し て い た 場 合 と で は , ど ち ら が 有 効 か。 (5) こ の ま ま 米 の輸 入 自 由 化 が 進 む と 今 後 , 日 本 の稲 作 農業 はど う な る だ ろ う か。 ・ 外 国 か ら安 い米 が 輸 入 さ れ る と , 国 内 の 米 が 売 れ な く な り, 日 本 の 稲 作 農 業 は衰 退 す るで あ ろ う 。 ・ 大 規 模 農 家 だ け が 生 き残 る こ と が で き る で あ ろ う。 ・ そ れ ぞ れ の国 が 相 対 的 に安 く生 産 で き る も のを 貿 易 す れ ば お 互 い に利 益 が 増 す。 ・ 米 の 自 由 化 が進 め ば, 稲 作 農 業 は 国 内 に も 国 際 的 に も 競 争 力 が つ い て く る。 : 耕 作面 積 や 経 営 規 模 の拡 大 を 図 り 匚企 業 内 分 業 , 企 業 間 分業 」 を し て生 産 工 程 の 合 理 化 を 図 れ ば , 国 際 競 争 力 が つ き, 米 作 り を 維 持 す る こ と が で き る。 ・ 稲 作を 保 護 して い け は , 米 作 り を 維 持 で き る 。 ・ 稲 作 は 保 護 す る メ リ ッ ト が あ る。 そ こで , 保 護 政 策 のあ り 方 が 問 題 と な る 。 :価 格 に 反 映 さ せ る, 経 営 を 企 業 化 し て い く な ど の市場 原 理 を 導 入 す る た め の保 護 政 策 を と る。 : 農 業 に は 公 共 財 的 側 面 が あ り 保 護 す る メ リ ッ ト が あ る 。 そ こ で 保 護 して い く た め に は 国民 は そ の コ スト を 負 担 し な け れ ば な らない こ と認 識 し, 日 本型 デ カ ッ ブ リ ン ク政 策 等 の保 護政 策 を と る。 ・ 食 料 も 自 由 貿 易 に従 っ て 国 際 分 業 を 進 め た 方 が, 世 界 の 国 々 に と っ て 利 益 か お る。 世 界 的 緊 張 緩 和 が進 む 現在 で は , 食 料安 保 論 は そ の 根 拠 が 薄 く な っ て き て い る。 ・ 食 料 確 保 は そ の 国 の安 全 保 障 の 前 提 条 件 で あ る の で 米 は今 後 も自 給 を 維 持 し て い く こ とが 有 効 で あ る。 ・ 米 飯 自 給 的 農 家 と 大 規 模 経 営 農 家 と に 分 化 し て い く で あ ろ う 。 ・ 国 際 競 争 力 をっ け れ ば , 日 本 の 稲 作 農 業 は生 き残 る こ と が で きる で あ ろ う 。, ・ 今 後 , 日 本 の稲 作 農 業 は ア メ リ カ 合 衆 国 等 と 比 べ て 比 較 優 位 と な る こ と は ほ と ん ど望 め な い の で, 米 の輸 入 自 由化 が 進 ん だ ら 日 本 の稲 作 農業 は 衰 退 し て い くで あ ろ う。 7 論 争 問 題 日 本 の稲 作 農業 を 生 き残 らせ る べ き か , ど う か。 (1) 今 後 , 日 本 の稲 作 農業 は 生 き残 る こ とが で き る だ ろ う か。 (2) 日 本 の稲 作 農業 が 生 き残 る こ とが で き な い とし た ら, 保 護 し て も生 き 残 ら せ る べ き か, ど う か。 (3) こ れ か ら の日 本 の 稲 作 農 業 の 動 き を 匚分 業 」 の視 点 か ら 自 分 な り に 捉 え て い こ う 。 ・ 耕 作 面 積 の 拡 大 や生 産 工 程 の合 理 化 を 図 る な ど し て 「 企 業 内 分 業 や, 企業 間 分 業 」 を 進 め る な ら ば , 日 本 の稲 作 農 業 は 国 際 競 争 力 を つ け る こ と が で き, 生 き 残 る こ とが で き る で あ ろ う。 ・ 耕 作 面 積 の 拡 大 や生 産工 程 の合 理 化 を 図 る な ど し て 匚企 業 内 分 業 や, 企業 間 分 業 」 を 進 め る こ と は, 日 本 の 稲 作 農 業 に お い て は 困難 で あ る。 今 後 , 自 由 化 が 進 め ば, タ イ や ア メ リ カ合 衆 国 と 比 較 し て , 日 本 の 稲 作 農業 は優 位 と な る こ と は ほ と ん ど望 め な い ので , 生 き 残 る こ と が で き な い で あ ろ う 。 ・ そ れ ぞ れ の 国 が 相 対 的 に 安 く生 産 で き る も のを 貿 易 す れ ば お 互 い に利 益 が 増 す の で , 米 の 輸 入 自 由 化 を 進 め 稲 作 農 業 を 保 護 す る 必 要 は な い 。 ・ 稲 作 農 業 は, 維 持 し て い く メ リ ット の あ る 産 業 な の で , 衰 退 し て い く と 予 測 さ れ る な ら維 持 し て い く た め の 保 護 政 策 が 必 要 と な るo ― 27 ―
a b c d e f g h i j k l m 料 資 n o p q に つ い て, お う ち の 人 に聞 い て みよ う」 説 農 業 白 書 平 成 6年 度」, 農 業 統 計 協 会, 1995 年 5月 ,p.118. 説 農 業 白 書 平 成 6年 度 』/ 農 業 統 計 協 会, 1995 年 5月 ,p.117. 米重 量)」, 矢 野 恒 太 記 念 会 編 ,「'95/96 日本 国 勢 図 会」, 国 勢 社, 1995 年 6月 ,p.190. 1995年 6月, p.188. 勢 社, 1995 年 6月, p.270. 1995 年 6 月, p.264. はこ う 変 わ る』, 東 洋経 済 新報 社 ,1995 年 1 月, p.153 う な る」 , 朝 日 新 聞 社, 1988 年11 月, p.245. 「 ぶ っ か る自 由 化 −A P E C の 現 場 −」, 経 済10 版, 朝 日 新 聞, 1995 年10 月 5 日 南。 厂貿 易」 の ワ ー ク シ ー ト 匚見 直 さ れ る農 業 の 法人 化」, AERA, 朝 日 新 聞, 1996 年 1月29 日,Na4 ,pp.50 ∼51. 「水 田 の機 能」 ,『 い の ち の ふ る さ と 水 田 稲 作 』, ジ ャパ ン・ フ ォト レ ス, 1991 年12 月, p.15. 「遊 水 池」 ,『 い の ち の ふ る さ と 水 田 稲 作 』,p.21. 「空 気 を き れ い に す る イ ネ の はた ら き」,『 い の ち のふ るさ と 水田 稲 作』> pp.16 ∼17. 「 食料 安 全 保 障 論」, 古 沢 広 祐,『 農 業 大 論 争 一食 糧 安 保 論 争 を 徹底 検 証 す る ー』, 宝 島 社, 1991 年12 月 ,pp.66∼82 速 水 祐治 郎 ,『 農業 経 済 論 』, 岩 波 書 店 ,1986 年 1 月, pp.227 ∼239. 大 内力 ,『 農業 の 基 本 的 価 値 』, 家 の 光 協 会, 1990 年10 月 ,pp.26 ∼46. 〈 注 及 び 引 用 文 献 〉 ① 文 部 省 ,「 小 学 校 指 導 書 社 会 編」, 1989 年 6 月 , p.40. ② ③ 以 下 の 文 献 等 を も と に し て , 筆 者 な り に 整 理 し た も の で あ る 。 石赭 二編』 損 鴆1 前 麟 大鮃! 』,宝龍,1 刪 年12月。 酬 泓「 該 ブックレットk349 バ 膸 〉顫」, 岩館 店, 1994年 砠 梶觴, 『岩波 ジュニア 新韵4, 日本麟 のゆくえ』,岩波書£, 1994年8 月。 驤 賤光,「 鉢 主靭 再定義」, 岩館 店, 1995年1呪 等 ④ A ・ ス ミ ス , 大 河 内 一 男 監 訳 , 『 国 富 論 I 』, 中 公 文 庫, 1978 年 4 月 , pp.9 ∼38. ⑤ リ カ ー ド ゥ , 羽 島 卓 也 , 吉 澤 芳 樹 訳 ,「 経 済 学 お よ び 課 税 の 原 理 上 巻」 , 岩 波 文 庫, 1987 年 5 月 , pp.183 ∼210. 国 際 的 に 厂分 業」 が 行 わ れ る 理 由 , つ ま り 貿 易 が な ぜ 行 わ れ る か と い う こ と を 理 論 的 に 明 ら か に し た の が リ カ ー ド で あ る 。 こ の 理 論 は「 比 較 生 産 費 説」 と 呼 ば れ , 各 国 が 比 較 優 位 に あ る 産 業 に 特 化 す れ ば 国 際 的 レ ベ ル で の 生 産 量 が 増 加 す る こ と を 明 ら か に し た も の で あ る 。 ⑥ 速 水 祐 治 郎 ,『 農 業 経 済 論 』, 有 斐 閣, 1985 年 1 月 , pp.74 ∼77. 土 地 装 備 率 と は A / L の こ と で あ る 。
(Y: 麟 哺 鮭,L: 綫 膸A: 顏 垉蹣, 黷 撻 性:Y/Lコニ 耻 雌:Y/A,)
⑦ こ れ ら の 数 値 は , 次 の 資 料 に も と づ い て い る 。 表 2 白 米 1 ト ン の 生 産 費( 辻井博・ 京大助教授の試算による) タ イ アメリカ(カリフォルニ 頂 日 本 肥 料 費 農 薬 費 農 機 具 費 畜 力 費 労働費( 自家と雇用) 資 本 利 子 地 代 そ の 他 36 1,109 493 3,688 10,723 3,281 4,846 2,847 3,201 1,758 5,016 0 2,393 1,528 9,115 16,525 22,149 14,496 84,750 0 110,191 15,379 63,135 43,690 計 27,023 39,536 353,790 〈注〉 単 位は 円。 日米 は84年産 , タイ は84/85年 産。1 パーツ= 6円, 1 りレ=155 円で換気 ( 朝 日 新 聞 学 芸 部 ,『 お 米 は ど う な る 』バ988 年11 月, p.245.) ⑧ 生 産 費 構 造 と は , X の 生 産 費 と Y の 生 産 費 の 比 率 の こ と で あ る 。 ( 日本経済新聞社編,『 ゼミナール 日本経済入門』, 1985年2 儿p.304 ) ⑨ 植 田 和 男 , 貿 易 摩 擦 と コ メ 問 題 , 吉 川 弘 之 編 ,『 東 京 大 学 公 開 講 座61 コ メ 』, 東 京 大 学 出 版 会, 1995 年10 月, p.189. ⑩ 未 来 予 測 学 習 と 価 値 判 断 過 程 と を か か わ ら せ る 意 義 に つ い て は , 岩 田 一 彦 著 『 小 学 校 社 会 科 の 授 業 分 析 』, 東 京 書 籍, 1993 年 4 月, pp.96 ∼99. に 詳 し い 。 ⑥ 本 授 業 モ デ ル の 対 象 は 小 学 校 第 5学 年 で あ る の で , 図 1 中 の 知 識 B の 習 得 は 目 指 し て い な い 。 知 識 B は, 今 後 , 中 学 , 高 校 と 進 む な か で 習 得 を 目 指 す 方 が 適 切 で あ る 。 な お , こ の 知 識 B を 以 下 に 示 し て お く 。 「B-1 農 業 は , 国 内 に お い て は 工 業 と の 比 較 優 位 ・ 劣 位 の 関 係 か ら 生 じ る 農 業 ・ 非 農 業 間 の 所 得 格 差 を 和 ら げ る た め , ま ず 保 護 の 対 象 に な る 。 こ れ は , 農 業 の 比 較 生 産 性 が , 開 発 途 上 段 階 ( 先 進 国 の 工 業 技 術 を 急 速 に 導 入 す る 段 階 ) に お い て 比 較 劣 位 化 す る か ら で あ る 。( 国 内 保 護 政 策 ) B-2 先 進 国 段 階 に お い て も 農 業 は 保 護 の 対 象 に な っ て い る 。 こ れ は , 先 進 国 で は 食 料 供 給 が 飽 和 点 に 近 づ き 需 要 が 低 下 し , 農 業 が 相 対 的 に 縮 小 す る か ら で あ る 。( 国 境 調 整 措 置 )」 A ∼ E の 知 識 の 内 容 の 詳 細 に つ い て は , 拙 稿 「 分 業 」 を 視 点 と し た 社 会 科 教 科 内 容 の 検 討 と 授 業 設 計 1995 年 兵 庫 教 育 大 学 修 士 論 文 , pp.107 ∼115 を 参 照 さ れ た い 。 ⑩ 授 業 設 計 に お い て 知 識 分 析 論 を 組 み 込 ん で い く こ と の 重 要 性 や , 問 い と 知 識 の 構 造 を 授 業 設 計 を 結 合 さ せ て い く た め の 方 法 論 に つ い て の 詳 細 は , 岩 田 一 彦 編 著 『 小 学 校 社 会 科 の 授 業 設 計 』 を 参 照 さ れ た い 。