急速破壊 型股 関節症 の病 態 に関す る研 究
岡 山 大 学 医 学 部 整 形 外 科 学 教 室(指 導:井 上 一 教 授)
岩 崎 裕 光
(平 成8年6月21日 受 稿)
Key words: rapidly destructive coxopathy, osteoarthrosis, bone necrosis
緒 言
急 速 破 壊 型 股 関 節 症(RDC: rapidly destruc tive coxopathy)の 概 念 は, de Seze1)に 始 ま り, 1970年Postel2), Lequesne3)ら が44例 に つ い て報 告 し,高 齢 者 に 発 症 し て,短 期 間 の う ち に 股 関 節 の 高 度 な破 壊 を きた す 稀 な 疾 患 で あ る と した. 以 来,本 邦 で はRDCが 独 立 し た 疾 患 で あ る の か,あ る い は 変 形 性 股 関 節 症(OA)の 特 殊 型4)で あ り本 質 的 に はOAで あ る の か,ま た は,老 人 に 発 生 した 特 発 性 大 腿 骨 頭 壊 死 症(ANF)5)で あ るの か 諸 説 が 論 じら れ て き た.し か し,そ の 病 態 や 原 因 に つ い て は い ま だ 明 確 に され て い な い. 今 回,当 教 室 に お い て 末 期 股 関 節 症 で 人 工 股 関 節 置 換 術 を余 儀 な くさ れ た症 例 の 内,急 速 に 股 関 節 の 破 壊 を 来 た し た 症 例25例25股 に お け る 病 態 に つ い て,臨 床 的 に 追 跡 す る と と も に, X 線学 的,病 理 組 織 学 的 に検 討 し た. 対 象 1972年 か ら22年 間 に 岡 山 大 学 医 学 部 整 形 外 科 で, OAの 診 断 の も と に 全 人 工 股 関 節 置 換 術 (THR)を 施 行 した 症 例446例 を対 象 と し た.こ の 内,疼 痛 発 現 か ら手 術 ま で の 罹 病 期 間 が3年 以 内 で 急 速 に 股 間 節 の 破 壊 が 進 行 し た もの を RDCと 定 義 した.副 腎 皮 質 ホ ル モ ン使 用 歴,ア ル コー ル 愛 飲 歴 の あ る症 例 は 除 外 し,こ のRDC に 相 当 す る症 例 は25例25股 で,男 性2例,女 性 23例 で あ っ た.全 例 片 側 性(右17股,左8股)に 発 生 し,手 術 施 行 時 の 年 齢 は57歳 ∼80歳(平 均 68.6歳)で あ っ た(表1). 表1 研 究 対 象 研 究 方 法 1. 臨 床 評 価 (1) 臨 床 症 状 術 前 の 臨 床 症 状 を 日本 整 形 外 科 学 会 変 形 性 股 関 節 症 判 定 基 準(JOA score;疼 痛40点,可 動 性 20点,歩 行 能 力20点,日 常 動 作20点,合 計100 点)6)を 用 い て 評 価 し た.そ の 中 で 特 に 関 節 可 動 域(屈 曲,外 転)と 疼 痛 に 関 し て検 討 し た. (2) 血 液 検 査 血 算,血 清 生 化 学 的 検 査 の 肝 機 能,腎 機 能 と の 関 係,ま た,炎 症 反 応 と し てCRP,赤 沈 値 に つ い て 罹 病 期 間 と比 較 検 討 し た. (3) 合 併 症 高 血 圧,糖 尿 病 な どの 内 科 的 疾 患 の 合 併 症 に つ い て 調 査 し た. 2. X線 学 的 評 価 (1) 骨 萎 縮 度 椎 体 の 骨 梁 の 状 態 は 慈 大 式 骨 萎 縮 度 分 類(初 期 ∼3度)7)を 用 い,又,健 側 大 腿 骨 頸 部 の 骨 梁 の 状 態 はSinghと 分 類8) (Grade 6∼1)を 用 い て 骨 粗 鬆 の程 度 と罹 病 期 間 の 関 係 を調 査 した. (2) X線 学 的 経 過 初 診 時 か ら 手 術 時 ま で の 関 節 裂 隙 の 変 化,骨 破 壊 の 進 行 な どX線 学 的 変 化 を経 時 的 に観 察 し, 333
334 岩 崎 裕 光 ま た,終 末 像 をRosenbergら の 方 法9)に従 い分
類 し た(図1). (3) 臼 蓋 被 覆 率
初 診 時 単 純X線 像 で,骨 頭 に 対 す る 臼 蓋 の 被 覆 率 の 指 標10)と してcenter-edge angle (CE 角)11), acetabular head index (AHI)12)を 計 測
した.骨 頭,臼 蓋 に破 壊 が な く測 定 可 能 で あ っ た 症 例 は 患 側 で,破 壊 の た め 測 定 不 能 な 症 例 は 健 側 で 測 定 し た. 3. 病 理 組 織 学 的 評 価 (1) 残 存 骨 頭 像 手 術 時 摘 出 し た大 腿 骨 頭 を 前 額 面 で 二 分 割 し た 後,約5mmの 厚 さ の 骨 切 片 を作 り, 10%ホ ル マ リ ン 固 定 と中 性EDTAに よ る脱 灰 操 作 を加 え た 後, 5μmの 厚 さ の 標 本 を作 り, H. E.染 色, Safranin-O染 色, Masson-Trichrome染 色 を 行 い,光 顕 的 に 軟 骨 の 変 性,骨 梁 の 肥 厚 の 程 度 及 びANFに 認 め ら れ る分 界 層 の 有 無 に つ い て 観 察 した. (2) 滑 膜 組 織 像 手 術 時 採 取 した 滑 膜 組 織 の 一 部 を10%中 性 燐 酸 緩 衡 ホ ル マ リン で 固 定 後,パ ラ フ ィ ン包 埋 し て5μmの 切 片 を 作 成 し, H. E.染 色 を施 し た. Peltonenの 評 価13)を用 い, 1)フ ィ ブ リ ン 沈 着, 2)滑 膜 表 層 増 生, 3)炎 症 細 胞 浸 潤, 4)血 管 炎, 5)絨 毛 状 増 生 の 各 項 目 ご とに病 変 の程 度 に応 じ て 点 数(0-3)を 出 し,そ の 合 計 を 炎 症 点 数 と し,そ れ を罹 病 期 間 と比 較 し た. 結 果 1. 臨 床 計 画 1) JOA score 術 前 の 総 合 点 数 は,最 低17点,最 高72点 で 平 均41.3点 で あ り,疼 痛 は 平 均13.0点(0点 ∼40 点),股 関 節 の 屈 曲 は 平 均9.4点(0点 ∼12点), 外 転 は 平 均4.0点(0点 ∼8点)で,疼 痛 が 強 い わ りに は 関 節 可 動 域,特 に 屈 曲 が よ く保 た れ て い た(表2). 2) 血 液 検 査 Type 1 (flat type) N=11 (58%) Type 2 (eccentric depression type)
N=8 (42%) 図1 終 末期X線 像 表2 術 前JOA score 平 均41.3点 表3 炎 症 反 応 と罹病 期 間
表4 血液検査 異常
一 般 検 査 で 貧 血 は24%(25例 中6例)に み ら れ, CRP陽 性 が33% (21例 中7例)血 沈 亢 進(30mm/1 hr以 上)が52.3% (21例 中11例)で 約 半 数 に何 らか の 炎 症 反 応 あ る い は 合 併 症(貧 血 あ るい は 腎 機 能 障 害 な ど)に よ る 異 常 が み られ た.ま た,炎 症 反 応 の 有 無 に よ り罹 病 期 間 を比 較 す る と, CRP急 速破 壊型 股 関節 症 の病 態
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陽 性 群 で は12.8ヵ 月,陰 性 群 で は19.2ヵ 月 で あ っ た.血 沈 亢 進 群 で は10.3ヵ 月,正 常 群 で は20.8 ヵ 月 で あ り,い ず れ も 炎 症 反 応 陽 性 群 が 罹病 期 間 が 短 い 傾 向 で あ っ た(表3).腎 機 能 低 下 40.0%,中 性 脂 肪 異 常12.0%,肝 機 能 低 下4.0%, Ca異 常16.0%, ALP異 常16.0%で あ っ た(表 4). 3) 合 併 症 高 血 圧11例,肝 硬 変1例,腎 炎1例,胆 石1例, 慢 性 肝 炎1例,胃 潰 瘍1例 で あ っ た(表5). 2. X線 学 的 評 価 1) 骨 萎 縮 度 腰 椎 側 面 の 骨 萎 縮 度 は,慈 大 式 分 類 で 初 期 は 0%, 1度 は9%, 2度 は43%, 3度 は48%と 進 行 した 骨 粗 鬆 を 認 め た.ま た,健 側 の 股 関 節 の骨 萎 縮 度 はSinghの 分 類 で わけ る とGrade 1 は0%, Grade 2は38%, Grade 3は53%, Grade 4は9%, Grade 5, 6は0%でGrade3以 上 が90%と 進 行 した骨 粗 鬆 を認 め た(表6). 骨 萎 縮 の程 度 に よ っ て 罹 病 期 間 を 見 る と,慈 大 式分 類 で は Ⅱ度 で14.0ヵ 月, Ⅲ 度 で10.7ヵ 月 で あ っ た. Singhの 分 類 で はGrade 3で13.1ヵ 月, Grade 2で11.4ヵ 月 で あ り,ど ち らの 分 類 で も 骨粗 鬆 の進 行 して い る方 が 罹 病 期 間 が 短 い傾 向 に あ っ た(表7). 表5 合 併 症 表6 骨 萎縮 度 2) X線 学 的 経 過 12股 の 症 例 で初 期 に 荷 重 部 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 が 起 こ り,次 に 関 節 裂 隙 が 消 失 し た 後 に,大 腿 骨 頭 側 の 破 壊 や 臼 蓋 側 の 破 壊 が 進 行 し た.し か し, 2症 例 で 初 期 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 前 に 拡 大 を 認 め た. X線 の 終 末 像 は 大 き く2つ のtypeに わ け る こ とが で き た.す な わ ち,骨 頭 が そ ぎ 取 ら れ 外 上 方 へ 亜 脱 臼 す るtype 1 (flat type)と,破 壊 が 進 行 して も亜 脱 臼 せ ず 求 心 位 に とど ま るtype 2 (eccentric depression type)と に わ け る こ と が で きた. flat typeは11例, eccentric depression typeは8例 で 残 りの6例 は 破 壊 が ひ ど くdebris 様 陰 影 が 増 強 し タ イ プ 別 は 困 難 で あ っ た. 3) 臼 蓋 被 覆 率 患 側 で 測 定 可 能 で あ っ た 症 例 は11例 で, CE角 は 平 均28.2° (17°∼39°), AHIは 平 均74.3% (64.9%∼86.9%)で あ っ た.健 側 で 測 定 した14 例 で は, CE角28.3° (22°∼38°), AHI 78.3% (68.8%∼87.2%)で あ っ た.全 体 で は, CE角 は,平 均28.3°, AHIは 平 均76.6%で い ず れ も正 常 範 囲 内 で あ っ た(表8). 3. 病 理 組 織 学 的 評 価 1) 残 存 骨 頭 像 骨 頭 の破 壊 は 著 明 で あ る が,そ の 中 で も比 較 的 骨 頭 の 原 型 を と ど め た標 本 を主 に 検 討 し た. 表7 骨 萎縮 度 と罹病 期 間 表8 臼 蓋 被 覆率
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い ず れ の 骨 頭 も扁 平 化 を きた して お り,一 般 の 骨 頭 壊 死 で み られ る様 な 明 瞭 な 分 界 層 は 観 察 さ れ ず,軟 骨 は荷 重 部 位 で 削 り取 ら れ て お り, 象 牙 化 骨 の 露 出 と 肉芽 組 織 に よ る 被 覆 像 を 認 め た(図2-A).残 存 軟 骨 に は 空 洞 化 を 認 め,表 層 の 骨 梁 は 一 部 肥 厚 して い る と こ ろ も あ る が, 程 度 は さ ま ざ ま で 骨 新 生 も認 め た(図2-B, C, D).骨 頭 内 にX線 像 で は 判 定 で き な い 嚢 胞 形 成 が36%に 認 め ら れ た が,骨 堤 形 成 な ど の 増 殖 性 変 化 は 乏 しか っ た(表9). 2) 滑 膜 組 織 像 滑 膜 所 見 は,表 層 で は 絨 毛 の 増 生 と滑 膜 細 胞 の 増 殖 を認 め,下 層 で は 進 行 したOAで よ くみ られ る 骨,軟 骨 の 遊 離 構 成 成 分 を認 め,い わ ゆ る 非 特 異 的 炎 症 像 で あ っ た(図3-A, B).リ ン パ 球 の 集 団 も時 に 見 られ る が,一 次 濾 胞 の 小 型 で リ ンパ 濾 胞 様 細 胞 集 団 は7例 に 認 め た(症 例2参 照). 炎 症 点 数 の 平 均 は,フ ィ ブ リ ン 沈 着2.60点, 滑 膜 表 層 細 胞 増 生1.25点,炎 症 細 胞 浸 潤1.45点, 血 管 炎1.30点,絨 毛 状 増 生1.35点 で 総 平 均7.95 点 で あ っ た(表10). Peltonenの 評 価 を 用 い た 炎 症 点 数 と 罹 病 期 間 との 間 に は 関 連 は 認 め られ な か っ た(図4). 症 例 提 示表9 骨頭の病理学的所見
図2 症 例1の 骨 頭 A:骨 頭 全 体像 B:残 存 関 節軟 骨 には 軟 骨小 腔 の空 洞化 がみ られ る(×400倍) C:象 牙 骨 化 した部 分 の 骨梁 の肥 厚(×100倍) D:骨 梁 の付 加 骨 新 生(×400倍) 症 例1:手 術 時 年 齢76歳,女 性, type分 類 不 能.最 初 に 右 股 関 節 痛 が 出 現 し た 時 のX線 で, 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 を 認 め た. 10ヵ 月 後 に は す で急速破 壊 型股 関節 症 の病 態
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に 骨 頭 と臼 蓋 と もに 破 壊 され 骨 硬 化 を認 め た(図 5).手 術 時 摘 出 し た 骨 頭 は,扁 平 化 し軟 骨 は 荷 重 部 で 削 り取 られ て い た. 図3 症例1の 滑 膜 A:滑 膜 縅毛 の増 生(×100倍) B:遊 離 小 骨片 の 埋 入(×100倍) 表10 滑 膜 組織 所 見 及 び炎 症 点 数 図4 炎 症 点 数 と罹病 期 間 図5 症 例1 A:初 診 時 B: 10ヵ 月 後 図6 症 例2 A:初 診 時 B: 4ヵ 月 後 C: 7ヵ 月 後 症 例2:手 術 時 年 齢75歳,女 性, type分 類 不 能.最 初 に 右 股 関 節 痛 が 出 現 し た時 のX線 で 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 を認 め た(図6-A). 4ヵ 月 後,338
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骨 頭 は 扁 平 化 の 傾 向 を 呈 して い た.そ の 後3ヵ 月 のX線 で は,骨 頭 と臼 蓋 の 破 壊 は さ ほ ど進 行 し て い な い が,関 節 腔 内 のdebris様 陰 影 は 増 強 し て い た(図6-B, C). 残 存 骨 頭 の 組 織 学 的 所 見 は,骨 頭 軟 骨 は 削 り 取 ら れ て 象 牙 化 骨 が 露 出 し,表 面 に は 肥 厚 した 骨 梁 を 認 め た(図7-A). 滑 膜 所 見 は,表 層 で は 絨 毛 の 増 生 と細 胞 の 増 殖 を認 め,下 層 で は 骨 の 遊 離 体 や 一 次 性 リンパ 嚢 胞 形 成 を認 め た(図7-B). 症 例3:手 術 時 年 齢79歳,女 性, type 1.初 診 時 の右 股 関 節 痛 が 出 現 し た 時 のX線 で,こ の 時 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 は 認 め ず,逆 に 関 節 裂 隙 の 拡 大 を認 め た(図8-A). CE角33°, AHI 83.1%と,臼 蓋 の 被 覆 状 態 は 良 好 で,頸 体 角138° と正 常 範 囲 内 で あ っ た.と こ ろ が4ヵ 月 後 のX線 で は 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 を認 め(図8-B),そ の9ヵ 月 時X線 で は,骨 頭 と臼 蓋 は 破 壊 さ れ,骨 頭 は 亜 脱 臼 位 を呈 し,と もに 骨 硬 化 は 著 明 で あ っ た (図8-C). 症 例4:手 術 時 年 齢69歳,女 性, type 2.右
股 関節 痛 の 出現後7ヵ 月のX線 で,関 節裂 隙の
狭 小化 を認め た(図9-A).
図7 症例2の 骨 頭 と滑膜 A:全 体 像 B:一 次 性 リンパ 濾 胞(×100倍) 1年 後,骨 頭 と 臼 蓋 は 破 壊 され, cystも 認 め ら れ た(図9-B).そ の 後4ヵ 月 後 の 術 前 のX 線 で は,骨 頭 と臼 蓋 は と も に 骨 硬 化 が 著 明 で, 関 節 腔 内 のdebris様 陰 影 も増 強 して い た(図9 -C) . 考 察 図8 症 例3 A:初 診 時 B: 4ヵ 月 後 C: 13ヵ 月 後 RDC発 症 の 基 盤 と して 骨 粗 鬆 症 が あ る こ とは 一 般 的 に 認 め られ て い る.そ して,急 速 な 骨 軟 骨 の 破 壊 の 機 序 に つ いて は免 疫 学 的14,15),酵素 学急速 破壊 型 股関 節症 の病 態
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的4,16),力学 的 な要 因 が 推 測 さ れ て い る が,未 だ 結 論 は で て い な い.本 研 究 で は, RDCの 臨 床 像, X線 像,病 理 像 を検 討 し,そ の 病 態 に つ い て 考 察 した. 図9 症 例4 A:初 診 時 B: 12ヵ 月 後 C: 16ヵ 月 後 発 症 年 齢 は 本 研 究 で は68.6歳 で,他 の 報 告 と 同様 に 高 齢 者 に 好 発 して い た.ま た 男 女 比 は2: 23と 大 多数 が 女 性 で あ っ た.術 前 の 臨 床 評 価 は, 疼 痛 が 平 均13点/40点 と 強 い割 りに,関 節 可 動 域 特 に屈 曲 は平 均9.4点/12点 と通 常 のOAに 比 較 し良 好 で あ っ た,こ れ は 関 節 内 に 骨 や 軟 骨 の debrisが あ る も の の,骨 頭 と 臼蓋 の 破 壊 が 強 い ため に 増 骨 性 の変 化 が 少 な く,か え っ て 可 動 域 が 制 限 さ れ な い た め と考 え られ た. 血 液 検 査 で は,血 沈 亢 進 が52.3%, CRP陽 性 が33.0%と 炎 症 反 応 が 高 率 に 認 め ら れ た.こ の 検 査 結 果 はRDC末 期 の もの で あ る が, RDCの 進 行 に 炎 症 が 関 与 して い る こ と が 推 察 で き る. 合 併 症 で は 高 血 圧 症 が 最 も 多 く44%の 患 者 に 認 め ら れ た.こ れ は1986年 の “わ が 国 の 年 代 別 高 血 圧 患 者 の 頻 度17)”の60歳 代15%, 70歳 代25%と 比 較 し て 高 率 で あ っ た.本 態 性 高 血 圧 患 者 で は, 食 塩 摂 取 に よ り尿 中 カ ル シ ウ ム 排 泄 が 正 常 血 圧 者 よ り増 加 し,尿 路 結 石 の 合 併 が 多 い こ とが 知 ら れ て い る.ま た,森 本18)ら は 高 血 圧 高 齢 女 性 群 は 正 常 血 圧 高 齢 女 性 群 に 比 べ, Dual-Photon Absorptiometryに よ り計 測 した 第 Ⅱ∼ Ⅲ 腰 椎 骨 塩 量 は 有 意 に 低 下 して い る こ と を示 し た19).これ ら の 報 告 か ら考 え る と,高 血 圧 症 の合 併 は, RDC の 患 者 の 骨 粗 鬆 を強 め て い る1つ の 要 因 と考 え ら れ た. X線 像 で の 骨 粗 鬆 症 は 全 例 に 認 め られ,諸 家 の 報 告 と同 様 に骨 粗 鬆 症 はRDC発 症 の 基 盤 と し て 存 在 して い た20).ま た,今 回 の 結 果 か ら そ の 程 度 が 罹 病 期 間 に 関 与 して い る と考 え ら れ た. X線 経 過 に つ い て は,一 般 的 に 正 常 股 関 節 の 関 節 裂 隙 の 狭 小 化 か ら発 症 す る と言 わ れ てお り2), 何 らか の 原 因 に よ る 炎 症 が 発 症 初 期 に 存 在 す る と推 察 され て い る.吉 岡15)ら,緒 方14),東4)ら は, 免 疫 学 的 機 序 の 関 与 を述 べ て い るが,発 症 初 期 に 股 関 節 に 炎 症 が 存 在 す る こ と を立 証 す る直 接 的 な事 実 は 明 確 に さ れ て い な い.今 回 の 調 査 で も全 例 にchondrolysisに よ る と考 え られ る関 節 裂 隙 の 狭 小 化 が 見 られ た.し か し, 2症 例 で は 症 例3の 様 に 関 節 裂 隙 が 狭 小 化 す る 前 に 拡 大 し て い た.こ れ は ペ ル テ ス 病 の 時 のWaldenstrom sign21)と 同 様 の 所 見 と考 え られ,股 関 節 内 に 炎 症 が 存 在 して い る こ と を 示 して い る.従 っ て,こ の 所 見 はRDCの 初 期 に 関 節 内 に 炎 症 が 存 在 す る1つ の 証 拠 と考 え られ た.関 節 裂 隙 の 拡 大 が 多 数 例 に確 認 で き な か っ た の は,ペ ル テ ス病 で は 親 が 発 症 初 期 の 段 階 で 子 ど も を病 院 に 連 れ て く る の と違 い,老 人 の 場 合 は か な り病 状 が 進 行 し て か ら来 院 す る た め 発 症 初 期 のX線 写 真 が 得 られ に くい た め で は な い か と思 わ れ た. 成 人 の 臼 蓋 形 成 不 全 に 関 してX線 上 明 確 な 定340 岩 崎 裕 光 義 は な い22,23)が,最近 の 日本 人 の デー タ で あ る 吉 田24)の正 常 股 関 節 形 態 分 析 の 結 果 を参 考 に す れ ば, 60歳 代 のCE角 は31.5°, AHIは83.5%で あ る.こ れ と比 較 す れ ば,今 回 正 常 と思 わ れ た 股 関 節 もCE角 及 びAHIと も に65%が 平 均 値 以 下 で あ り,軽 度 の 臼蓋 形 成 不 全 が あ る と考 え られ る.臼 蓋 形 成 不 全 に よ る荷 重 部 へ の ス トレ ス の 増 大 は,股 関 節 が 急 速 に 破 壊 し て い く過 程 で の1つ の 力 学 的 要 素 と考 え ら れ た.ま た,高 齢 者 で あ れ ば 腰 椎 の 変 形 に よ る骨 盤 の 後 方 へ の 傾 斜 が 存 在 す る症 例 も 多 い と思 わ れ る.骨 盤 の 後 傾 が あれ ば 貞松25)や岩 原26)が脂 摘 して い る よ う に,臼 蓋 被 覆 度 が 減 少 し,筋 緊 張 の た め に 股 関 節 に 作 用 す る合 力 が 増 大 す る.こ れ も急 速 破 壊 の 力 学 的 要 素 の1つ と思 わ れ た. 手 術 時 摘 出 し た大 腿 骨 頭 の 病 理 組 織 像 で は, ほ ぼ す べ て の 標 本 で 骨 頭 は 扁 平 化 し て お り,そ の 表 層 は荷 重 部 で 軟 骨 が 欠 損 し て,骨 修 復 像 は 認 め るが さ ほ ど旺 盛 で は な く,一 部 肥 厚 し た 骨 梁 を 認 め るの み で あ っ た.ま た,一 般 の 骨 頭 壊 死 に 見 ら れ る様 な 無 反 応 性 壊 死 層 や 分 界 層 は 認 め ら れ ず 明 らか にANFの 病 理 組 織 像 とは 異 な っ て い た. 以 上 の こ とか らRDCの 病 態 を考 察 す る と, 骨 粗 鬆 症 と軽 度 の 臼 蓋 形 成 不 全 が あ る股 関 節 に, 関 節 軟 骨 に 対 す る 免 疫 反 応 な ど何 ら か の 原 因 に よ る 炎 症 が 関 節 内 に 発 生 し,本 症 に進 展 す る も の と考 え ら れ た. X線 的 に は 関 節 裂 隙 が 一 時 拡 大 した 後,軟 骨 融 解 に よ り狭 小 化 す る.そ の 後 は 炎 症 に よ っ て 放 出 さ れ た 各 種 サ イ トカ イ ン に よ り関 節 破 壊 は 進 行 し,他 方 骨 粗 鬆 の あ る 臼 蓋 と骨 頭 が ます ます 脆 弱 化 して い くも の と考 え ら れ る.そ の 上,軽 度 の 臼 蓋 形 成 不 全 や 骨 盤 の 後 斜 に よ る 臼 蓋 被 覆 度 の 減 少 に よ って 脆 弱 化 し た 骨 頭 に か か る ス ト レ ス が 増 大 し,骨 頭 が 急 速 に 破 壊 す る と と もに 臼 蓋 も破 壊 し て い く と推 察 さ れ た. 結 語 1. 急 速 破 壊 型 股 関 節 症 と思 わ れ る25例25関 節 の 臨 床 像, X線 像,病 理 像,を 調 査 し,そ の 病 態 に つ い て 検 討 し た. 2. 高 血 圧 症 は 患 者 の44%に 合 併 し て お り,骨 粗 鬆 症 の 程 度 を強 め る 一 つ の 要 因 と考 え られ た. 3. CE角 ・AHIは65%が 平 均 値 以 下 で あ り, 軽 度 の 股 関 節 形 成 不 全 が 急 速 な 関 節 破 壊 の 力 学 的 要 因 に 成 っ て い る と考 え られ た. 4. 発 症 初 期 に 関 節 裂 隙 の 拡 大 が 確 認 さ れ た 症 例 が 有 り,発 症 初 期 に何 らか の 炎 症 の 存 在 が 示 唆 さ れ た. 5. RDCの 病 態 と し て は,骨 粗 鬆 症 の 程 度 の 強 い 高 齢 者 の股 関 節 に 何 らか の 原 因 に よ る炎 症 が 起 こ り,そ の た め に 骨 頭 と 臼 蓋 は 脆 弱 化 し, 軽 度 の 股 関 節 形 成 不 全 や 骨 盤 の 後 傾 な ど の 力 学 的 要 素 と相 俟 っ て 急 速 に 関 節 が 破 壊 し て い く もの と考 え られ た. 稿 を終 える に あ た り御 指 導,御 校 閲 を賜 わ りま し た 岡 山大 学医 学 部 整 形 外科 学 教 室 井 上 一 教 授 に深 謝 します.ま た,岡 山市 民 病 院 整形 外 科 の 小 浦 宏 先生 には 終始 懇切 な る御 指 導 と御 助 言 をい た だ き感 謝 い た し ます. 文 献
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急速 破壊 型 股 関節症 の病 態
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