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ベトナム -- サッカーと「民と官」 (特集 途上国・新興国のスポーツ)

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Academic year: 2021

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ベトナム -- サッカーと「民と官」 (特集 途上国

・新興国のスポーツ)

著者

今井 淳一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

237

ページ

14-15

発行年

2015-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003182

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アジ研ワールド・トレンド No.237(2015. 7)  

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  ベトナムではサッカーが人気の スポーツ。ハノイの街中にもサッ カー場、フットサルコートがあち こ ち に あ り、 「 ボ ン ダ ー( サ ッ カー)カフェ」と呼ばれるカフェ では地元の人が試合を観ながら大 いに盛り上がる。特に欧州リーグ はイングランド・プレミアリーグ をはじめ、独、伊、仏、スペイン、 最近は米メジャーリーグサッカー も放映され、その充実ぶりは日本 にいるよりも世界のサッカーが断 然身近に感じられるほどだ。   ただ肝心の国内リーグといえば、 人気はあまり振るわない。多くの ベトナム人が「サッカーは大好き、 でもVリーグ(国内リーグ)は観 ないよ」と答えるのが悲しい現状 だ。国内リーグが盛り上がらない なか、代表チームの成績も振るわ ず、さらにはサッカー賭博や八百

 

ベトナム

 

今井

  淳一

❖特集❖

途上国・新興国のスポーツ

長問題も頻繁に発覚する始末。   そんなベトナムサッカーの世界 だが、民間実業家の関与、干渉、 そして貢献度が、その未来を大き く 左 右 し て い る。 ベ ト ナ ム サ ッ カ ー に お け る「 民 と 官 」、 そ し て 変化の兆しを紹介したい。   ベトナムでもかつては国防省な どの官のチームが人気と実力を博 し て い た 時 期 が あ る が、 今 で は リーグの各クラブとも大企業のス ポンサー支援を支えに経営してい る。その意味で民間経済がベトナ ムサッカーを支えている面は否定 で き な い が、 長 期 的 視 点 の な い サッカーへの投資が、選手と、そ して何よりサポーターを置き去り にしてしまっている面は否めない。   例えばホーチミン市のチームで あ っ た Xuân Thành Sài Gòn 。 二 〇一三年シーズン最終盤、ベスト メンバー規定に反し経験の浅い選 手ばかりを出場させ、試合でも無 気力なプレーを行ったとしてVF F(ベトナムサッカー連盟)から 勝ち点四点没収という処罰を受け た。 こ れ に 不 服 の Xuan Thanh グループのオーナーは、何と最終 戦を待たずにVリーグを脱退して し ま っ た の だ 。 ベ ト ナ ム 最 大 の 経済都市、ホーチミン市のチーム があっけなく消滅してしまった。   さらに首都ハノイのクラブであ るハノイT&Tは、多様な業種に 事業を展開する投資会社のT&T グ ル ー プ が メ イ ン ス ポ ン サ ー と なっている。同社会長兼CEOの ド ー・ ク ア ン・ ヒ エ ン 氏 は 大 の サッカー好きで知られているが、 実は同氏はサイゴンハノイバンク ( S H B ) の 会 長 で も あ り、 し か も そ の S H B が ダ ナ ン 市 に あ る 「 S H B ダ ナ ン 」 を 所 有 し て い る ことから事情は複雑になる。この 「 一 人 の オ ー ナ ー、 二 つ の ク ラ ブ」問題は、日本でならばありえ ない話だが、本人は二〇一二年の インタビューで「二つの異なる会 社がそれぞれを経営している、問 題ない」と意に介さずの姿勢だ。   Vリーグの各クラブは地域のク ラブというより、企業のクラブと いう色彩が強く、企業名を冠しな いクラブは少数派だ。そのためス ポンサー、オーナーの意向や、ク ラ ブ の 経 営 不 振 な ど で チ ー ム が あっさり解散してしまう。その度 に地元サポーターは落胆し、選手 は 路 頭 に 迷 う。 一 昨 年 日 本 の J リーグ、コンサドーレ札幌に移籍 し て「 東 南 ア ジ ア 初 の J リ ー ガー」と注目を集めた「ベトナム の英雄」レ・コン・ビンも被害者 の一人。二◯一二年に所属してい た ハ ノ イ F C が、 メ イ ン ス ポ ン サーである銀行の経営者逮捕(こ れ自体もベトナム政争に巻き込ま れたという見方もあるが……)に より解散、所属先を失う憂き目に あったのだ。もちろん彼ほどの実 力と知名度があれば拾ってくれる チームもあるが、大抵の選手はそ うはいかない。選手もサポーター も振り回されるばかりだ。

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  アジ研ワールド・トレンド No.237(2015. 7)   これら民間経営者がやりたい放 題になってしまう背景には、リー グを律するはずのVFFに対する 不信感も原因として挙げられる。   VFFの官体質は代表チケット 販売に非常によく現れている。二 ○一四年一一月、フル代表が久々 に勝ち進んでのスズキカップ(東 南 ア ジ ア の ワ ー ル ド カ ッ プ 的 大 会 )。 ハ ノ イ で 開 催 さ れ る 試 合 は 「 公 式 文 書 」 提 出 団 体 経 由 で の 販 売が総チケット数の四〇%。つま り政府機関や各種公的団体からの レターで半分近くのチケットが配 られてしまっていた。これでは、 久々の躍進を地元で観たいと思っ ていた一般市民は軽視されている といわざるをえない。昨年九月、 これまた躍進著しい一九歳以下代 表(U― 19、後述)出場のハノイ での大会では、チケットを買えな いサポーターが怒りのあまり暴徒 化し、VFFの壁や門が破壊され る騒ぎとなった。これなども、単 にチケットが買えないというだけ で な く、 「 V F F に 不 当 に 取 り 扱 われている」と感じる一般サポー ターの怒りが根底にあるだろう。   飛び抜けた民間資本が大きく影 響力を持つと同時に、こうした官 優 位 の 発 想 も 根 強 い、 ベ ト ナ ム サッカー界の現状は現在のベトナ ム社会を象徴しているようだ。   そういった官と民の対立関係の なか、代表チームを作ってしまっ た( !?)事業家もいる。ホアンア ンザライグループ(以下HAGL と 略 ) の 会 長 ド ア ン・ グ エ ン・ ドュック氏だ。彼はベトナム有数 の資産家。昨年末段階の株式長者 番付ではベトナムで第二位の約三 億五〇〇〇万ドルの株式資産を誇 る。ベトナム国内サッカーに対し て強い関心と情熱を持つドュック 氏は、ザライ省プレイク市に二〇 〇七年にサッカーアカデミーを設 立、イングランド名門アーセナル と提携して選手を育成している。 ベトナム中から将来性のある子ど もを集め、寄宿制学校も完備、す べての時間をサッカーに費やすこ とができる環境を作った。学費、 生活費などのほとんどが補助され るということで数多くの応募者が あるなか、ベトナム人コーチを選 手選抜に全く干渉させず、外国人 コーチなどの意見で選抜するとい う、ベトナムでありがちな金・コ ネ合格を避ける厳格ぶりだ。   その成果は現れ始めた。HAG Lアカデミーの一期生などを中心 とした一九歳以下代表、U― 19が 東南アジアで、そしてアジアの舞 台 で も 勝 ち 始 め た の だ。 技 術 の しっかりとした彼らのサッカーは、 ベトナム国内サッカーファンも魅 了 し、 フ ル 代 表 を 凌 ぐ 人 気 者 と なった。ドュック氏のビジョンが 国の代表チームを作ってしまった といっても過言ではない。   このHAGLが育てたU― 19世 代 が い よ い よ V リ ー グ 各 ク ラ ブ ( と い っ て も、 主 に は 同 じ く V リーグのHAGLクラブ)に加入 したことから、Vリーグをみる観 客にも変化が現れ始めた。HAG LはVリーグで初めてシーズンチ ケットを販売、好調な売れ行きを みせた。シーズンチケット購入者 にはチームユニフォームがついて くるなど、経営としても単なるス ポンサーからの資本注入だけでな い、観戦してくれるサポーターか らの収入を生む体制を築きつつあ る。リーグの冠スポンサーにもト ヨタが名乗りを上げ、リーグの注 目度が高まったことを印象づける。   また、JFA(日本サッカー協 会)とVFFの提携に基づき、二 ◯一四年五月にベトナム代表監督 にJリーグで監督を務めた三浦俊 也氏が就任して以降、ベトナム代 表 チ ー ム も 好 調 な こ と が サ ポ ー ターの期待をさらに膨らませる。 フ ル 代 表 は ス ズ キ カ ッ プ で 決 勝 トーナメント進出、前記U― 19の ホープも参加して編成された五輪 代表(U― 23)も、二◯一五年三 月の五輪予選を兼ねたAFC、U ― 23選手権一次予選で強豪日本と 同 組 な が ら も 二 位 を 確 保 し、 カ タールで行われる本選出場(リオ 五輪最終予選)を決めた。   企業スポンサー優位という現状 には変わりがないが、民間経営者 の先見の明から生まれた若い力と、 日本との交流がきっかけとなって できた新風で、ベトナムサッカー 人気に追い風が来ていることは確 かだ。海外サッカーばかりでなく、 国内サッカーにも注目しようとも う 一 度 目 を 向 け て く れ て い る サ ポーターに、これからは国内リー グの各チームがどれだけ応えられ るだろうか。 ( い ま い   じ ゅ ん い ち / J I C A 専門家)

参照

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