は じ め に 老年期になると,身体機能の低下に伴い移動能力も 低下し,社会参加が減少しやすくなる.そのため,高齢 者がこれまで行っていた社会参加活動を継続するため には,自らの意思で移動できる手段を確保することが 求められる. 高齢者が利用する移動手段の一つとして,電動カー トがある.電動カートとは,高齢者向けに作られた,三 輪または四輪の一人乗り電動車両で,ハンドル型電動 車いすとも呼ばれる.電動カートは,道路交通法上で は歩行者とされており,歩道を走行する.運転免許は 不要であり,最高速度は時速6 km(成人の速歩き程度) までと定められている.電動カートは,他の様々な車 いすと同様に介護保険サービスでのレンタル対象の 福祉用具である.介護保険を利用してレンタルする場 合,原則,要介護2~5の方が対象となるが,主治医の意 見書やサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネ ジメントにより電動カートが必要と判断された場合は 例外給付としてレンタルすることも可能である. 電動カート(ハンドル形電動車椅子,シニアカー,電 動三・四輪車を含む)に関する先行研究では,システム 設計[1-3]や操作性[4-6]に関する工学系の研究が多く 行われている.福祉の視点から行われた研究では,在 宅ケアに関わる医療職・介護職の7割が電動カートを 「危ない」と認識し,外出を支援するよりも安全面を重 視していたという調査結果や[7],高齢者に電動カート を実験的に使ってもらい活動推進に有効であったこと を検証した介入結果[8-10]が報告されているが,移動 手段として日常的に電動カートを使用している高齢者 [報 告]
地域の高齢者が移動手段として電動カートを選択する目的と日常生活の変化
貞光 里穂
1,宇田 日向子
2,清永 麻子
3*,矢田 浩紀
3 1山口大学医学部附属病院 看護部
2医療法人沖縄徳洲会 高砂西部病院 看護部
3山口大学大学院医学系研究科 保健学専攻
要 旨:高齢者の社会参加活動の継続を支援するには,自らの意志で移動できる手段を確保・整備することが求 められ,その一つに電動カートが挙げられる.本研究は,地域で生活する高齢者が,電動カートを移動手段として活 用するに至った経緯や電動カートを使ってどのような生活を送っているのかを明らかにすることを目的とした.研 究方法として半構成的面接を行い,得られたデータを質的記述的に分析した.電動カートを移動手段の一つとして 活用した経緯として,≪自動車運転免許の返納≫,≪下肢の障害による移動手段の喪失≫,≪電動カートへの興味と 他者からの勧め≫,≪家族の協力状況≫の4サブカテゴリを含む【移動手段の確保】,電動カートを活用した日常生活 の実際として,≪簡単な運転操作と安全装備≫,≪危険予測時の対応≫,≪危険のない現状≫,≪電動カート使用継続 の意思≫の4つのサブカテゴリから構成された【安全な利用】と,≪行動範囲の維持・拡大≫,≪他者との交流≫,≪自 分で買い物をする楽しみ≫の3つのサブカテゴリを含む【活動と参加】のカテゴリが抽出された.電動カートの活用 がその人らしい生活に繋がっている一方で,事故が起こらないような取り組みを行う必要性が示唆された. キーワード:地域高齢者,移動手段,電動カート. (2020年8月11日 受付, 2020年12月21日 受理) *対応著者:清永 麻子,山口大学大学院医学系研究科 保健学専攻,〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1,Tel: 22-2831,Fax: 0836-22-2831,E-mail: [email protected]を対象とした報告は見当たらなかった. そこで本研究では,移動手段として日常的に電動 カートを使用し,地域で生活する高齢者が,電動カート を移動手段として活用するに至った経緯や電動カート を使ってどのような生活を送っているのかを明らか にした.本研究の結果は,移動手段の一つとして電動 カートの普及を促すための一助になると考えられる. 研 究 方 法 1.研究対象者 A市およびその近郊に在住する電動カートを日常の 移動手段として半年以上使用している65歳以上の高 齢者4名とした. 2.調査方法 インタビューガイドを作成し約30分間の半構成的 面接を実施した.インタビュー内容として,電動カー トの使用を検討したきっかけと選択した理由,電動 カートの使用頻度や使用場面,日常生活の変化,電動 カートの操作性,使用して良かった点・不自由に感じる 点,電動カート以外の移動手段について質問し,対象者 の許可を得てICレコーダーに録音した. 3.分析方法 本研究では,対象者ごとに逐語録を作成し,質的記述 的に分析を実施した.質的記述的研究のデータ分析に ならい[11],まず逐語録を繰り返し読み,全体を把握し た.語りのなかから,質問項目の電動カートを移動手 段として活用するに至った経緯,電動カートを使って どのような生活を送っているのかについて着目した. その着目したある箇所の意味が読み取れる最小単位の まとまりを要約してコードを生成した.複数のコード 同士を比較して意味内容の類似性をもつものを集約 し,サブカテゴリを生成した. 次に,サブカテゴリ間 の意味内容や関係を考慮し,抽象度を上げカテゴリを 生成した.分析には,結果の真実性・厳密性の確保のた め,意見の一致をみるまで研究者間で協議した. 倫 理 的 配 慮 本研究では,山口大学大学院医学系研究科保健学科 専攻医学系研究倫理審査委員会の承認を得た後(管理 番号570),訪問看護ステーションおよび地域包括支援 センターへ対象者の紹介を依頼した. 対象者に対し, プライバシーの保護,研究の協力を拒否しても不利益 が生じないこと,面接はいつでも中止できること,イン タビュー内容を録音することなどを口頭と文書で説明 し,書面での同意を得た. 結 果 1.対象者の概要 対象者の内訳は男性1名,女性3名,平均年齢86歳で あった. 要介護認定区分は,要支援2が1名,要支援1 が2名,介護保険無しが1名であった.また電動カート の使用については,介護保険利用でのレンタルが2名, 購入が2名,使用年数は2年から9年であった.研究参 加者の概要をTable 1に示す. 2.インタビューの結果 電動カートを移動手段の一つとして活用するに至っ た経緯やどのような生活を送っているかについて,40 のコードが抽出され,それらを意味の類似性によって 分類・整理した結果,11のサブカテゴリと3つのカテゴ リに分類された.(Table 2) 以下,カテゴリを【 】,サブカテゴリを≪ ≫,コードを < >とし,カテゴリごとの概要を示す.「 」は語りの内 容,データ中の( )は文脈を明らかにするための補足 とする. 1) 電動カートを移動手段として活用するに至った経緯 【移動手段の確保】は,電動カートの使用に至った経緯 を示している. 電動カートの利用者は,≪自動車運転 免許の返納≫,≪下肢の障害による移動手段の喪失≫, ≪電動カートへの興味と他者からの勧め≫,≪家族の 協力状況≫から,移動手段として電動カートを選択し ていた. (1) ≪自動車運転免許の返納≫ ≪自動車運転免許の返納≫では,対象者自身が高齢 となり,身体機能の低下を自覚し,「自動車の免許証を 返納しましたのでね,事故のないうちにと思って…」 と,<高齢になり自動車で事故を起こす前にと考え(免 Table 1. 対象者の概要 対象者 性別 年齢 要介護認定 区分 使用年数 使用形態 A 女性 84 なし 9 購入 B 女性 80 要支援 1 2 購入 C 男性 90 要支援 2 5 レンタル D 女性 90 要支援 1 5 レンタル
許を返納し)>,自動車運転免許の返納に至っていた. そして,自動車免許を返納したことにより,これまでの ように自由に移動できる手段の確保ができなくなり, 「その時に移動手段がないので,今の自動自転車といい ますか…カートをね,買いました」と,新たな移動手段 として電動カートを選択していた. (2) ≪下肢の障害による移動手段の喪失≫ 「膝を手術してね,自転車に乗れなくなったから.自 転車漕げないんですよね,膝が曲がらないから」との語 りから,対象者は,<手術により膝が曲がらなくな(り 自転車に乗ることができなくなった)>ったり,<交通 事故により歩行障害が残った>り,下肢の障害のため, Table 2. 電動カート利用経緯と活用状況 カテゴリ サブカテゴリ コード 移動手段の確保 自動車運転免許の返納 高齢になり自動車で事故を起こす前にと考え免許を返納した 自動車は免許を返納した時に手放した 下肢の障害による移動手段の喪失 手術により膝が曲がらなくなり自転車に乗ることができなくなった 交通事故により歩行障害が残った 電動カートへの興味と他者からの勧め 家族に勧められた 電動アシスト自転車を検討していたが漕がずに移動できるため買う ことにした 通所リハビリに古い電動カートがあり興味を持った 医療機関の医師やリハビリスタッフからの勧めがあった 家族の協力状況 同居する家族は寝たきりで入退院を繰り返している 家族は遠方に住んでおり頻繁に来ることができない 自動車を持っている家族は就業しており日常的に協力が望めない 安全な利用 簡単な運転操作と安全装備 自動車の運転よりも操作は簡単である 右手だけでアクセルとブレーキが操作できる 時速 6㎞のゆっくりした速度しか出ない 乗り始めたころは速度が遅く感じて物足りないと思っていた 速度が出ないことで周囲を見ることができる 方向指示器やライトが付いている 車体が傾くと警報が鳴るようになっている 乗り始めは家族と練習を行った 入院中のリハビリで練習を行い操作を獲得した 危険予測時の対応 屋根がないため雨の日には出かけない 雨の日の雨衣は周囲がよく見えないため危険である 自動車が近づいてきたときには停止するようにしている バックミラーなどを確認をして自動車には注意している ライトはあるが夜間に乗ることはない 危険のない現状 これまで転倒や転倒しそうになったことはない 下り坂は速度を落として下りるが危ないと思ったことはない これまで事故は一切起こしていない 電動カート使用継続の意思 今後も使用し続けようと思っている 元気な間は使用し続けたい 活動と参加 行動範囲の維持・拡大 医療機関や通所リハビリテーション,買い物,郵便局,役場に行く ほぼ毎日使っている スーパーに乗り入れるために許可を得た 他者との交流 友人宅へ出かける 学校帰りの子供たちと話しながら移動することが楽しみである 電動カートを使用しているからこその出会いや楽しみがある 自分で買い物をする楽しみ スーパーへ行き自分の目で見て買い物ができることがいい 日用品,雑貨,食料品を自分自身で選んで買う 欲しいものを自分で買いに行くことができる 自分の目で見て手で触れて買うのが一番いい
今まで使用していた自転車の使用や長距離の歩行が困 難となってしまった.そのため,新たな移動手段が必 要となっていた. (3) ≪電動カートへの興味と他者からの勧め≫ 電動カートを選択した理由として,<家族に勧めら れた>,<電動アシスト自転車を検討していたが漕が ずに移動できるため買うことにした>,<通所リハビ リに古い電動カートがあり興味を持った>,<医療機 関の医師やリハビリスタッフからの勧めがあった>こ とが語られた. (4) ≪家族の協力状況≫ 対象者の<同居する家族は寝たきりで入退院を繰り 返してい(る)>たり,<自動車を持っている家族は就 業しており日常的に協力が望めない>など,家族の協 力を得ることが難しい状況が語られていた. 2) 電動カートを活用した日常生活 本研究の対象者は,電動カートの【安全な利用】を行 いながら,日常生活において【活動と参加】を楽しんで いた. 【安全な利用】では,≪簡単な運転操作と安全装備≫, ≪危険予測時の対応≫,≪危険のない現状≫,≪電動 カート使用継続の意思≫の4つのサブカテゴリから構 成され,地域で生活する高齢者の電動カートの使用感 や安全性,使用者の危機管理意識を示していた. (1) ≪簡単な運転操作と安全装備≫ 電動カートは,<自動車の運転よりも操作は簡単(で ある)>,<右手だけでアクセルとブレーキが操作でき る>というように操作は簡単で,すぐに覚えられると 語られていた. また,最大時速6㎞と速歩き程の速度 であることから,<乗り始めたころは速度が遅く感じ て物足りないと思っていた>が,<速度が出ないこと で周囲を見ることができる>ため,危険のない速度で あるとも感じていた.装備については,ライトや方向 指示器,警報装置等の様々な装備があることで安全に 使用することができていた.また,電動カートの使用 を始めるにあたり,<乗り始めは家族と練習を行った >り,「一番初めは,病院からここ(自宅)までリハビリ の先生と練習したんですよ」と<入院中のリハビリで 練習を行い操作を獲得した>り,周囲の協力を得て運 転操作の獲得を行っていた. (2) ≪危険予測時の対応≫ 対象者は,「気を付けなければいけないことがたくさ んあるんです.とにかく車が前から来たときはね,先 に止まって,前にミラーがついていますので,後ろから 来る車が見えるんですよ.ミラーを見て,後ろから来 るなあって思ったら,止まって待っとく.車を通して それから走るんです」と語っていた.電動カート使用 時には,<自動車が近づいてきたときには停止する(よ うにしている)>,<バックミラーなどを確認して自動 車には注意している>,また,<ライトはあるが夜間に 乗ることはない>など危険を回避するための行動を 取っていた. (3) ≪危険のない現状≫ 対象者は,<これまで転倒や転倒しそうになったこ とはない>,<下り坂は速度を落として下りるが危な いと思ったことはない>と,使用中の転倒や交通事故 はなく危険に感じたことはないと語っていた. (4) ≪電動カート使用継続の意思≫ 対象者は,「そうですね,ずっと乗りますね,元気なう ちは.ここで一人,生活できるうちは…」と,<元気な 間(は使用し続けたい)>は電動カートを継続して使用 したいと考えていた. 【活動と参加】では,電動カートを使用することの目 的とそれにより生まれる付随的な状況を示しており, ≪行動範囲の維持・拡大≫,≪他者との交流≫,≪自分 で買い物をする楽しみ≫の3つのサブカテゴリから構 成されていた. (1) ≪行動範囲の維持・拡大≫ 電動カートを新たな移動手段として乗り始めたこ とで,通院,通所リハビリテーション,買い物,郵便局, 役場,散髪屋などに一人で出かけることが可能となり, 利用者は,電動カートを<ほぼ毎日使ってい(る)>た. また,電動カートを使用することで疲労を感じること なく行動範囲の拡大ができていた. さらに,対象者は <スーパーに乗り入れるために許可を得(た)>て,スー パーの中でも不自由なく移動が可能となっていた. (2) ≪他者との交流≫ 対象者は,電動カートで<友人宅へ出かけ(る)>た り,<学校帰りの子供たちと話しながら移動する(こと が楽しみである)>といった<電動カートを使用して いるからこその出会いや楽しみ(がある)>を感じてい た.また,「(お店では)店員さんに商品を取ってもらっ たり,(中略)レジ行けばレジの人が皆,レジから出て, 袋に入れてくれて(電動カートのカゴに)乗せてくれま す」と,他者と関わりながら買い物をしていた. (3) ≪自分で買い物をする楽しみ≫ 電動カートを使用することで対象者は,自分自身で スーパー等に行き,買い物をすることができる.「私が 自分で(買い物に)行った時には好きなものを自分の目 で見て選んで.それが一番いいんですよね.自分の目 で見て買ったのが」と語られていた.対象者は,自分自
身で買い物に行き,商品を手に取り,自分の目で見て選 び,手に入れるという一連の買い物活動を行うことで, 自分の望むものを手に入れる満足感だけでなく,買い 物自体の楽しさも感じていた. 考 察 近年,高齢者の自動車運転事故が大きな話題となっ ている[12].高齢者が自動車の運転を継続する理由は さまざまで,買い物や通院に必要な者もいれば,ドライ ブで気分転換をするために運転する者もいる.車の運 転を生きがいと言い,運転そのものを楽しむ高齢者も いるとの報告もある[13].これら個人的理由だけでな く,運転の継続には居住環境の問題も関係する.住民 の多い地域に住んでいれば,電車やバス,タクシーなど の公共交通機関が発達しているため,自動車を運転す る必要性を感じることなく暮らすことができる.しか し,過疎の村やバスが1日に数本の運行があるだけと いうような地域に暮らす高齢者にとって,自動車は不 可欠な移動手段であることも多い. そのような地域 で,都会に働きに出ている子どもたちと離れて夫婦の み,あるいは一人で暮らしている高齢者が自動車の運 転をやめることは,生活をやめることに等しいといえ るのかもしれない.そのようななか,本研究の対象者 は,電動カートという代替の移動手段を確保し,行動範 囲を維持したり,拡大したりすることができ,活動や参 加の機会を失わずにすんでいた.移動手段が自動車や 自転車から電動カートに変わっても,日常生活に大き な変化が起こらないことは,その人らしい生活を維持 する一つの手段ではないかと考えられる. 溝上らは, 研究実証フィールドごとに2か月間電動カートのモン パルを貸与し,貸与前後のQOLと生活活動度を評価し た研究を行った[10].その結果,電動カートの活用が 生活活動範囲を広げること,生活活動範囲の広がりが 日常役割機能だけではなく,全体的健康感や活力など のQOLの向上にも資する傾向があることを報告した. 今後,本研究の対象者のように,日常的に電動カートを 使用している高齢者を対象にQOLの指標や尺度を用 いて評価すれば,QOL向上に対する電動カートの長期 的な効果を確認することが可能となると考えられる. 対象者は,電動カートで移動手段を確保したことに より,友人宅へ出かけることや,近所の子供たちとの交 流ができ,他者との交流により楽しみや,買い物をする 楽しみが得られていることが示された. この結果は, 企業が行った「高齢者の買い物意識実態調査」において [14],70~80代の女性の9割以上が,買い物は「自分の 目で選び」「自分で行きたい」と回答したこととも一致 し,高齢者の自己決定を支援していると考えられた. 近年,高齢者の買い物が問題となっており,本研究の対 象者のように自動車運転免許の返納や身体機能の低下 などにより移動手段がなくなった高齢者は,買い物弱 者と呼ばれる状況になってしまう[15].その解決の取 り組みとして,宅配サービスや移動販売などがあげら れ[16],買い物支援サービスは整備されつつあるが,本 研究の対象者は,電動カートを利用することによって, 自分自身のタイミングでお店に行き,自分の目で見て 選び,手に入れるという一連の買い物をすることが可 能となり,楽しみを維持することができていた. しかしながら,電動カートを含めた電動車椅子の事 故件数に関する警察庁の報告によると[17],平成25年 は191件(死亡者数5件,以下死亡者数),平成26年は 182件(6件),平成27年は179件(7件),平成28年は155 件(9件)と,事故件数は減少傾向であるものの,死亡者 数は微増傾向にあり,安全に使用できている者がいる 一方で,死亡に繋がる重大な事故も起こっていること がわかっている.本研究においては,対象者は転倒や 交通事故を起こすことなく,運転中に危険を感じるこ ともなかった.また,運転操作についても適切な操作 や危険予測時の対応も十分にできていると語られてお り,電動カートの利用にネガティブなイメージは全く 持っていないことがわかった.しかし,事故を体験し たことがない高齢者に対してこそ,油断のないよう教 育的なかかわりを行っていく必要があると考える. 現在,新型コロナウイルスの感染が拡大している. 本研究においては電動カートを使用することによる 個人的な喜びに焦点が当たる結果が得られたが,電動 カートは他者と接触せずに移動できる手段でもあり, 感染を防止しながら活動と参加に寄与できることか ら,一層の普及が期待される. 結 論 電動カートを移動手段の一つとして活用した経緯と して,≪自動車運転免許の返納≫,≪下肢の障害による 移動手段の喪失≫,≪電動カートへの興味と他者から の勧め≫,≪家族の協力状況≫の4サブカテゴリを含 む【移動手段の確保】,電動カートを活用した日常生活 の実際として,≪簡単な運転操作と安全装備≫,≪危険 予測時の対応≫,≪危険のない現状≫,≪電動カート使 用継続の意思≫の4つのサブカテゴリから構成された 【安全な利用】と,≪行動範囲の維持・拡大≫,≪他者と の交流≫,≪自分で買い物をする楽しみ≫の3つのサ
ブカテゴリを含む【活動と参加】のカテゴリが抽出され た.電動カートの活用がその人らしい生活に繋がって いる一方で,事故が起こらないような取り組みを行っ ていく必要性が示唆された. 謝 辞 本研究を遂行するにあたり,ご協力をいただきまし た地域の高齢者の方,訪問看護師および介護支援専門 員の皆様に心より感謝いたします. 利 益 相 反 なし. 引 用 文 献 1 . 大山恭弘,余錦華,小林裕之,苗村潔(2006): 運動 能力を維持・増進する電動カートの開発 Part1.電 動カートシステムの設計.電気学会論文誌D(産 業応用部門誌) 126 (2): 174-179 2 . 黒住亮太,山本透(2006): 強化学習による電動車 椅子の障害物回避補助システムの構築.システム 制御情報学会論文誌 19(1): 7-14 3 . 木曽淳,村上博紀,関弘和(2012): 走行危険度を考 慮した電動車いすのファジイ推論型障害物回避 制御.電気学会論文誌C 132(6): 952-959 4 . 柴田論,山本智規(2010): 微速モードに基づく電 動カートの操作支援に関する研究.ライフサポー ト 22(2): 41-46 5 . 百生登,大島徹,池田都砂子(2004): 乗り心地を考 慮した電動車いすの制御.日本機械学会論文集 (C編). 70(689): 207-212 6 . 小宮加容子,中島康博,橋場参生,景川耕宇,黒須 亜顕二(2003): 狭い空間における音声指令による 電動車いす走行テスト.日本機械学会論文集(C 編) 66 (688): 3350-3357 7 . 高井逸史,山﨑暁子,工藤節美(2018): 福祉の現場か ら 在宅医療・介護職を対象とした歩行支援用具 に関する意識調査.地域ケアリング 20(6): 82-84 8 . 永田千鶴,松本佳代(2017): 電動カートを活用し た高齢者のグループ活動の実践と評価.老年看護 学21(2): 75-82
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Purpose of Using Mobility Scooters as Transportation Devices for Community-dwelling Elderly People
and Changes in Their Daily Life
Riho Sadamitsu
1, Hinako Uda
2, Asako Kiyonaga
3and Hironori Yada
3 1 Nursing Department, Yamaguchi University Hospital, Ube 755-0046, Japan 2 Nursing Department, Takasago Seibu Hospital, Takasago 676-0812, Japan3 Faculty of Health Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, Ube 755-8505, Japan