アルミニウムとアルミニウム基合金の
高温高圧下での水素化反応
斎藤寛之1・町田晃彦
1・片山芳則1・青木勝敏
2 1日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門 〒679
・5148
兵庫県佐用郡佐用町光都1
-
1
-
1
2東北大学金属材料研究所 干980-8577
宮城県仙台市青葉区片平2
圃1
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Hiroyuki SAITOH
Akihiko MACHIDAl
,
l
Yoshinori KATAYAMAl and Katsutoshi AOK
,
J2lJapan Atomic Energy Agency
1
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Kouto
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Sayo
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1
.
緒 言 著者らは高温高圧下で 軽量で、小型かっ安全な水素貯蔵法を実現することを目 的として、水素吸蔵合金の研究開発が進められている。 アルミニウム水素化物仏lH3)は軽量かっ高体積密度でフk
素を貯蔵し、比較的低温(以ト1
5
0
0C
程度)でフk
素を放出で、 きるため、有望な水素貯蔵材料の一つで、ある [1,
2
1
0
AlHS は1
9
7
0
年代にイオン交換反応による合成法が報告され ている[
3
]
0
しかし水素放出反応後に生成される純アルミ ニウムをエネルギー効率よく再水素化する方法が現時点 でも開発されていないことが、この材料を実用化する上 での大きな課題となっている。効率的にA1H3を合成で、き る化学反応プロセスの開発が不可欠と考えられており、 その実現を目的とした研究がアメリカを中心に精力的に 行われている[1]。 し仏、直接水素化反応によつて必H
昆3の合成することを試み た。この研究で、は最も単純なAlHSの合成方法で、ある水素 化反応を実現すること、および、その反応過程を調べるこ とを目的とした。また得られた知見をもとにアルミニウ ム基合金水素化物の実現可能性を調べている。 この様な研究アプローチは世界的に見ても例の少ない ものである。また著者らが高温高圧発生に用いているキ ューピックマルチアンピル装置による高圧研究は日本が 非常に先行している分野でもある。この装置を有効に活 用し、かっ他の研究グループ。とは異なるアプローチでア ルミニウム系材料の水素化物研究を行うことで、国際的 競争力を有する特色のある研究が展開できると考えてい る。本稿の前半ではキューピ、ックマルチアンビル装置を 用いたアルミニウム水素化反応に関する研究について、水素エネルギーシステムVo1.37,No.4(2012) 後半で、はアルミニウム基合金の水素化反応探索について のこれまでの研究成果を紹介する。
2
.
純アルミニウム水素化反応の放射光その場観察 一般に金属の水素化反応M+
;
H
2
→M H
x
(1) において、反応の平衡温度と圧力の関係はファントホッ フの式によって記述で、きる。この関係式によると金属の 水素化反応の平衡温度T
と圧力P
の関係は t1H t1S InP= ~':: -"::__~ RT R(
2
)
と表される。ここで必fは金属水素化物の標準生成エンタ ルビー、R
は気体定数、 &sは水素化反応時のエントロビ ー変化である。この式から金属水素化反応の平衡圧力の 自然対数は、標準生成エンタルビーを傾きとして温度の 逆数と直線関係となることが分かる。標準生成エンタル ヒ。ーが負の場合は金属水素化反応の平衡温度は圧力に対 して単調増加する。標準生成エンタルビーが負の金属水 素化物は圧力を加えることで、より高温まで安定に存在 できるようになる。このことから常圧近傍では不安定な 金属水素化物も高温高圧下で、は直接反応により合成でき るようになると期待できる。 イオン交換反応により合成されたAlH.3から実験的に 求められた標準生成エンタルビーの値とファントホッフ の式から、 AlH.3は常温常圧下で、は熱力学的に不安定で、あ 趨獲製ピストン 特 集 り、約0
.
7GPa
まで加圧すると室温で安定になると予想 される包]。熱力学的には0
.
7
GPa
_
C
_
J
上の高圧下で、アルミニ ウムが水素化すると考えられ、いくつかの高圧研究が著 者らの研究以前にも報告されていた[
4
,
5
]
。これらの研究 では必 胞をe出発物質として、 一度制斗を加熱により分解 させアルミニウムを得たあとに再水素化がで、きることを 報告している。しかし、純アルミニウムを出発物質とし た場合には表面酸化膜の影響でフk
素化反応が実現しなか ったことが報告されている。 ここで、著者らは従来の報告で、実験がなされた数GPa
の 圧力領域よりさらに高い圧力下で、アルミニウム水素化反 応の実現を試みた[
6
]
。圧力を上げることで上述のファン トホッフの式からAlH.3がより高温まで安定に存在でき るようになる。高温高圧下で、は水素流体の化学ポテンシ ヤルが急激に増加し[寸その反応性が上昇し、また温度の 効果により反応速度も上昇すると予想された。これらの 理由からアルミニウム水素化反応が実現しやすくなると 考えた。 高温高圧発生はキューピックマルチアンビル装置を用 いて行った[8]。この装置の模式図を図lJこ示す。立方体 形状の圧力媒体を6
個の超硬製のピストンで等方的に圧 縮することによって、試料イ立置に最大10GPa
の超高圧を 発生させることが可能である。また上下のピストンと圧 力媒体中に組み込まれた智亙を通して圧力媒体内部のヒ ータに電力を供給することで、試料を高圧下で加熱する ことができる。金属水素化用のセルで、は約α
1
泊。C
程度、 図1.キュービ、ックマルチアンビルフ。レスを用いた高温高圧金属水素化実』験および放射光その場観察の概念図。上 部および手前のピストンは省略しである。6
ω
。C
の水素流体中に保持し、水素化反応過程を放射光 その場観察した結果を図2Jこ示す。図の横軸は回折角6
に固定してエネルギー分散型検出器で、測定した回折芯線 のエネルギーを示しているO 実験室系の角度分散型の粉 末芯線回折測定と同様にブラッグピークのエネルギーか ら格子面間隔を計算することができる。試料を1
0GP
,
a
ぼ泊。C
まで、加熱した直後はアルミニウム金属と試料容器 の材料である窒化ホウ素からの回折線が観察された(図2. 下段)。この段階で、はアルミニウムと水素は未反応で、あっ た。 試料を側。Cの水素流体中に保持すると約2時間経過後 からAlHSで、指数付けが可能な新しいピークが観察され た。さらに保持を続けると必H3
で の強度が増大したO 水素化反応が徐々に進行しているこ とを示すものである。8時間経過後の粉末回折フ。ロファイ ルを図2.の上段に示す。灰色で色付けしたピークがAlHS からのブラッグピークである。水素流体中の保持で、アル ミニウムと水素の直接反応によりM
胞が生成すること が確認された。図2
上段の回折プロファイルにおいて、 40--伺keVの聞に強度の弱い複数のピークが現れている が、これらは内部水素源からの副生成物から生じたもの である。 圧力を変えてアルミニウム水素化反応および生成した AlHSの分解反応が起きる温度を決定することで、Al-
H
系 の温度圧力反応図を決定した。得られた反応図を図3
J
こ 示す。黒丸が加熱によって高温高圧下で、生成しt~の 分解が観察された温度圧力条件、白丸がA1HS5鴻卒後のア ルミニウムが冷却により再水素化した条件をそれぞ、れ示 その他の合成実験では2
5
∞℃程度までの加熱が可能で ある。 高温高圧下で、の金属の水素化は深井らによって開発さ れた方法を用いた[
9
]
。この手法により多くのマルチアン ビ、ルブ。レスを用いた高温高圧下での金属水素化物研究が 報告されている[1ひ12]。この手法では高温高圧下で水素 を封じ込めるためにN
a
α
で、作製した水素封止カフ。セル を用いる。この水素封止カフ。セル中l
こ言式料とともに内部 水素源をセットする。内部水素源は高圧下で加熱される と水素を放出する。放出された水素は水素封止カフ。セル 中に閉じ込められ試料と水素の直接反応が実現する。試 料は水素のみを透過する窒化ホウ素製のカフ。セルに封じ る。これにより内部水素源が水素を放出した後に残る副 生成物と試料は欄虫せず、実験上好ましくない反応を抑 制することができる。本研究では内部水素源としてはNaB
H4
とC
a
(
O
lli)の混合粉末を用いた。この内部水素源 を用いた場合は約4OO0C
の加熱でフk
素が放出される。 大型放射光施設S
出ng-8
BL14BH
こ設置された高温高 圧発生装置を用いて、試料の水素化反応の様子をその場 観察した。この装置では放射光白色芯線を入射X
線として ピストンの隙聞を通して試料に照射し、入射X
線に対し て反対側のピストンの隙聞から出てきた回折X
線をエネ ルギ一分散型検出器で測定することで(図1.)粉末Z
線回折 プロファイルを得ることができる。本測定では水素に関 する情報を直接得ることはできないが、水素化反応によ って生じる金属格子の構造変化や体積膨張を観察するこ とでフk
素化反応の有無を調べることができる。 純アルミニウムを室温で1
0GPa
まで加圧した後に-F
。
,
4 0 A O- / 〆 。
, F-〆
0•
d ' ノ a F /, ,
, ,
〆, ,
J ] o n v 詰問縞 (A) 2.01.8 1.6 1.4
1
.
2
8002
.
5
3.5 3.0 r唱。
AIHa 理牛レい分
素
の
水
ヘ の
A
A
・
04
6
a
カ
(GPa) 図3. 放射光その場観察によって得られたAl田H系の反応 図。点線は実蜘古果から予想、される水素化反応の平衡条 件。 108
。
AI+3/2Hz2
600トp
長
4
0
0
ト剰
200ト 50 60 70 80 90 殴折X線のエネルギー(keV) 図2. 放射光その場観察によって得られたアルミニウム 水素化反応過程の粉末滋泉回折フ。ロファイル 10GPa, 6∞℃ 8時期後 10GPa.6000C 加熱蜜後 〈 100 。 判 明 サ O F4
0
制 細 部G
援 X 謀関 30水素エネルギーシステムVo1.37,No.4(2012) している。圧力が低くなるとともに、 必
l
l
i
の分解温度と アルミニウムの水素化温度の差が大きくなる傾向が見ら れたが、これは低温で、アルミニウムの水素化反応速度が 遅くなったためと考えられた。得られた放射光その場観 察の実i聯吉果から予想されるアルミニウム水素化反応の 平衡条件を図3
.
中に点線で示した。この結果は過去の AlHaを出発物質として調べられたAl-
H
系の相図や、AlHa の標準生成エンタルヒ。ーとファントホッフの式から予想 される平衡条件と良く一致した。 ここまで紹介してきた放射光その場観察実験によって 得られたデータをもとにアルミニウム水素化反応機構を 詳細に調べた。本稿では説明は省略するが、これらの研 究の結果、アルミニウム金属表面の自然酸イ悶莫が水素化 反応を抑制していること、および高温高圧水素流体中で、 の保持でこの酸化膜の影響を抑制し、より低し、圧力保低 4Gp
a)で、アルミニウムが水素化で、きることが分かつた[
1
3
]
。自然酸化膜以外にもアルミニウムと水素の接触面 で反応の初期段階で生成したAlH3が未反応のアルミニ ウム内部への水素の侵入を妨げていることも明らかにさ れた。また新たに開発した角度分散法による放射光その 場観察により、アルミニウム金属が水素化反応に先立ち 一度微細化し、その後水素化反応が進行することを報告 した[
1
4
]
。以上の様にこれまで実現されていなかったア ルミニウムの水素化反応過程について多くの新たな知見 が得られた。ここで研究の次のステッフ。として、アルミ ニウム水素化反応を実現するために熱力学的に要求され る0
.
7GPa
という圧力条件をどのようにして下げていく ことが可能か検討した。o
A
I
~機 M
o H
図4. 合成研究の対象とするアルミニウム基合金水素化 物 特 集 3. アルミニウム基合金の水素化反応 アルミニウムの軽量性を活用し、かつ純アルミニウム の水素化に必要な0
.
7GPa
以下で、水素貯蔵が可能な材料 を実現させるための方針として、新規アルミニウム基合 金水素化物を探索するというアフ。ローチが考えられた。 吸蔵水素と合金構成元素の原子数比但品。が大きく、常圧 近傍で、の水素化が可能な合金水素化物が実現されれば、 軽量で、高体積密度の水素貯蔵材料実現へとつながる可能 性がある。しかしながらアルミニウム基合金水素化物は これまで、8
r.必オ1
2
[
1
5
]
、B
仏 旧[
5
1
6
]
などわずかな例が報告 されているのみである。これはアルミニウムの水素親和 性の低さだけでは無く、アルミニウム基合金の表面に形 成される化学的に安定な表面酸化膜が純アルミニウムの 場合と同様に、合金の水素化反応を妨げているためと推 察される。純アルミニウムの水素化を実現した著者らの 高温高圧法により新規アルミニウム基合金水素化物が実 現できる可能性がある。現時点では常温常圧下で安定な 新規アルミニウム基合金水素化物の実現には至っていな いが、いくつかの予備的な成果がで、ているので本稿で紹 介する。 著者らはアルミニウム基合金の水素化物を探索する上 で、その対象を大きく訴重類に分類した:(1)AlHa2
同じ結 晶構造を有するAll-xMxHs7.k素化物(図4.(a))、(2)AlHaと異 なる結晶構造を有するAll-xMxHy,水素化物(図4.(b))で、ある。 AlI-MxHa7.k素化物の探索で、は、 AlHS中のアルミニウム の一部を異種金属Mで置換することでAlHSの熱力学的安 定性をコントロールすることを目指している。同様の試 みは過去にも行われているが成功の報告は無い[1寸。著 者らもAl-M
伽市住,8~1
¥
G
a
,
Zr,pd)系において、異種元 素Mを 2~3at.% を含むアルミニウム基固溶体合金の水素 化を試みたが、水素化物が生成した場合でも部分置換は 達成されず、いずれも系酔平な泊 施が生成された。 AlHa中のAl-
H
聞の結合は、共有結合的性質を有するこ とが実験的明らかにされている[
1
8
]
。同様の結合様式を もち水素が6配イ立した8面体構造をとることができる金属 元素を見いだせれば、AlHS中のアルミニウムの部分置換 が実現できるかも知れない。残念ながら現時点では有望 な金属種は特定できていないが、金属-水素間の結合様式 は圧力によって変化する可能性もあるため、引き続き高 温高圧下での探索を進める予定である。 必l
l
i
と異なる結晶構造を有するAll-xMxH.y水素化物の探丸で示す。比較のため、試料を水素流体なしの状態で測 定した結果を白丸で示す。制斗を水素流体中に保持し加 熱した場合、約6300 Cまでは格子の一様な膨張が観察さ れた。これは格子の熱膨張によるものである。約邸O~
6
5
0
0C
の温度領域で熱膨張の傾向から外れて、格子の不 連続な膨張が観察された。 6500 C以上では再び熱膨張に よる一様な格子膨張が観察された。この不連続な格子膨 張は試料を水素流体なしの条件で加熱した場合には観察 されず、AhTiが水素化したことによるものと結論づけら れた。AhTiの水素化反応は鉛P,
a
7'∞。Cの温度圧力条件 下でも観察された。 生成した水素化物は脱圧過程でフk
素を放出し、常圧下 には回収で、きなかったO このため水素量の測定は行って いない。AhTiの格子体積の変化量と遷移金属の水素化反 応時の水素量と格子嗣責の関係から水素量を粗く見積も ると、E
路1
-
-
D
.
1
程度と算出された。 以上の様に新規アルミニウム基合金水素化物を探索す る上での予備的な結果として、高圧下でのみ安定ではあ るが、侵入型のアルミニウム基合金水素化物の実現に成 功した。しかしその水素量はE弧1,..Q.1程度と少ないことも 明らかになった。面心立方格子を有するアルミニウムが 水素をその格子中にほとんど固溶しないこととAhTi水素 化物の結果を併せて考えると、面心立方構造と類似の構 造を有するアルミニウム基合金の水素化物は常圧近傍で、 の安定性は低く、水素量も多くはならない可能性がある。 従って常圧近傍で、安定な新規アルミニウム合金水素化物 の探索を行う上では面心立方構造とは異なる結晶構造を 有する合金を出発物質とすることが有効であると考えら れる。水素貯蔵材料としての利用の可能性も考慮すると、 索では、おもにアルミニウムと第3周期遷移金属からなる 金属間化合物を出発物質として実験を進めている。ここ ではアルミニウム基合金の侵入型水素化物の実現の可能 性を調べている。アルミニウム基合金の水素化物は、前 述のようにそもそも報告例が少ないが、遷移金属、希土 類およびそれらの合金で報告されているような侵入型水 素化物の報告が無いためである。高温高圧下でAh官合金 の水素化に成功したので、この結果について紹介する[叫O A13百合金は安定な金属間化合物で、面心立方格子を基 礎とするD勉型長周期構造を有している(図4.(b)で水素原 子を取り除いた構~。アルミニウムは著者らが一連の研 究を行っている10GPa以下の圧力領域で、は面心立方構 造をとる。アルミニウムは水素化反応によってAlH3を生 成する温度圧力条件で、も水素をほとんど固溶しない。類 似の構造を有する合金で、水素化物が生成するのか、生成 する場合はその安定性はどのようになっているのかを明 らかにすることを目的として、Ah引合金の水素化完験を 千子った。 Ah引合金を室温で10GPaまで、加圧した後に加熱した 際の粉末野泉回折プロファイルを図5に示す。約4OuOC
で 内部水素源から水素が放出され、試料が水素流体中に保 持された。 10GP,
a
3∞。Cで測定されたブラッグピークは DU22構造の必却および試料カフ。セルで、あるBNで全て指 数付けができた。図5.に示された通り、加熱過程におい ても試料の構造相転移などは観察されなかった。 得られた粉末X
線回折プロファイルからD
脳 髄 の 格 子体積を算出し温度に対してフ。ロットしたものを図6.黒 T E 人 V E i T t A V -T A Y 晶 T E O I 曲 玖 符 47
0
i
'
水素中 。水素なし•
10 GPa 122 ~ 121 叫撃
120P
ト
器
1191
.
2
1 ,4 面開隅 (A)2
β
,18 1
,6
2
.
5
3.5 3.0M m
惣
G
援 X 単組 118l
O
C
5
0
6
0
7
0
8
0
9
0
回折X線のエネルギー
(keV) 40 306
0
0
7
0
0
温度(
O
c
)
図6
.
Ah官合金を水素流体中および水素流体なしの条 件下で加熱した際の格子術責の面支変化8
0
0
5
∞
図5.Ah官合金を水素流体中で、加熱した際の粉末芯線 回折プロファイルの温度変化水素エネルギーシステム Vo1.37,No.4 (2012) アルミニウムと比較的軽量な第3周期遷移金属からなる アルミニウム基合金が対象となり、この様な物質系につ いて現在研究を進めている最中である。
4
.
結 語 本稿で、は高温高圧下で、アルミニウムの水素化反応を実 現しその反応過程を調べ、得られた知見をもとにアルミ ニウム基合金水素化物の探索を行っている著者らの一連 の研究について紹介した。常温常圧下に回収可能な安定 なアルミニウム基合金水素化物の実現にはまだ、至ってい ないが、高温高圧法によりこれまで、報告の無かった侵入 型のアルミニウム基合金水素化物が実現で、きることを明 らかにした。本稿で述べた通り、面心立方構造とは異な る構造を有する金属間化合物の水素化反応を今後も引き 続き進める予定である。この研究により新規アルミニウ ム基合金水素化物が実現できれば、貯蔵材料開発のみな らず基礎物理的にも重要な情報が得られるようになると 期待される。まア池田3のアルミニウムの部分置換は依然 として非常に困難な目標であるが、理論計算による予測 をもとに高温高圧下での探索研究を続ける予定である。 謝 辞 本研究は「水素貯蔵材料先端基盤研究事業」のもと、 新エネルギー産業技術総合開発機構 (NEDO)の委託を受 けて行われたものです。 参考文献1. J. Grae,ztJ. J.Re迎ぁV.AYl紅伽,J.P.乱1:aehle,nB.M B叫ychev, V.E.An1xmov
,
B. P. Tar羽 田IVand 1.E.Gabお;J.Al1oysα
mpd:度 版
3
,8517-8528包011)2. S.ωTInO, Y.N北 出nura,T.Ka白"C.Brown and C.M. JenseTh Appl Phys.A:A必胞r. 記 fux日現:83, 5・8 (2側~. 3. FM. Brower, N.E.Matze,kP.F.Re単er,H.W. Rinn,
c
.
B
.
Ro1凶 s, R.D.剖mrid,tJA Snover, K Terada;J.Am• αθm.&: 錦, Mめ2453(1976). 4. S. K Konovalov and B.M B吐ychev;Inorg.α
θ
m.: 34, 172・175(1ω5)5.Mτka,czS.日lipekand B. B町anowskL昂u.J.α'em.:57,
651・653(1鉛3) 6.H.制的h,A抽出血,Y. Katayama and K AokLAppl Phys.・ Lett.:93, 151918(2
α
賠) 特 集 7.H.Sugimom and Y.Ft武司;ActaMe臼D.1lゐt
e
r. 40, 2327-おお(1ω12) 8. W. U匂四国,K Funak<並立Y.Katayama, ]¥征Yamanaka, T. Okada and 0.鉛:imomura;J.Phys.Condens.1l伽胞:: 14,
10497-10剛 仰12)9.Y.Ft北坦 andN. Okuma;みlI1.J.Appl PhJ召l,Pmt 2沼,
L1256-L1259(1993)
10.A Kam句aw
,
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Y.Go句,R.Ka句oka, H.Takamura and M Oka也;Renem必leEn.er
g
y
.
33,
221・225(2α
渇)11.D.Kyo~ E.Ronnebro, N.Ki句mura, A Ueda, M 1m, S. Ka包uyamaandT.品kai,;J.A均mαmpd:担)1,252・ぉ6(2∞3) 12. N.T:北e11め~ J. Yan, X yl誼Ig, K sl首白, H.Tanaka, T.
Kiyoba:戸shi,N. Kuriyama and T. S北白;J.Power島 町 民 話210, 158・162ω12)
13.H.臼i加入AMa出i仇Y.Katayama and K Ao
k
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