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地域学研究 第 28 号 2015 図 1. ファーン川流域の概要と水質調査地点 Figure 1. Topography and distribution of check points for water quality in the Fang river basin. 32

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北タイ・ファーン川流域における河川水質とその形成プロセス

田 中   靖*・高 木 正 博*・佐 藤 哲 夫*・

駒澤大学北タイゼミ本調査参加学生**

1. はじめに ファーン川は,タイ北部を流れるメコン川の 支流の一つである。源流部の一部であるヴィア ンパー山(1820 m)付近には現在でも豊かな森 林が広がっており,ほぼ自然状態の河川がその まま残っている。川は,その後ファーン盆地内 の農耕地帯やチャイプラカン,ファーンなど の市街地を通り,盆地内の各支流を集めなが ら,タートンの南東約3 kmの地点でコック川 に合流する。コック川に合流する地点までが, ファーン川流域となる。 ファーン川流域では,1980年頃以降から, 大規模な森林伐採と農地の開発が行われた。そ の中でも,1997年頃から急速に拡大しはじめ た大企業アグリビジネスによるミカン農園の開 発は,農薬による水質の汚濁,保全林の破壊, そして大気汚染などの形で周辺地域の環境の悪 化を引き起こした(JVCタイ・チェンマイ事務 所 2003)。このような中で,地域住民の河川水 質への関心が高まり,タイの大学や政府関係機 関もファーン盆地内での水質調査を行ってきた ようである(地元の農民等に対する聞き取り調 査による)。 ところがこれらの調査結果は,利害関係も あってか,地域住民に詳しい説明はなされず, 少なくとも定量的な水質データとしての公開は 行われていない。また北部タイでは,住民参加 型の環境保全のための調査も行われている(た とえば,財団法人地球環境センター 2004)も のの,現在の水質やその時空間変化,そして形 成機構といった基本的な地理データはまだまだ 不足しているのが現状である。 以上の問題意識のもとに駒澤大学応用地理研 究所では,研究所のプロジェクト研究「北タイ 山村住民の環境保全活動の支援に関する研究」 の一部として,2009年からこの地域で継続的 に水質調査を行ってきた。本論文ではその結果 の一部を示し,周辺の地質や土地利用との関係 について議論する。 2. ファーン川流域の地勢 ファーン川はファーン盆地の中央部を北に流 れる(図1)。本流の流路長は約121 km,流域 面積は約1914 km2である。流域を囲う山の稜線 は相対的に西側で高く,その一部はミャンマー との国境となっている。また,ファーン川流域 の南側はチャオプラヤ水系に属し,タイの二大 水系の境界となっている。ファーン盆地内の平 野部の海抜標高は約600 mで,ファーン川本流 沿いの平均河床勾配は1/500∼1/600である。 流域内の地質(図2)は,砂や礫を主体とす る古生代・中生代の堆積岩を主体とするが,流 域東部には中生代の深成岩,流域北西部には古 * 駒澤大学地理学教室 ** 駒澤大学北タイゼミ(柳場さつき・豊倉志保里・石川美風香・清田朋子・井関 真大)

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図2.  ファーン川流域地質図.1 : 250,000 Geological map(Federal Institute for Geosciences and Natural Resources, Germany, 1976)をもとに作成.

Figure 2.  Geological map of the Fang river basin. Compiled from Federal Institute for Geosciences and Natural Resources, Germany, 1976.

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生代の火山岩も分布している。また,上流部の 左岸側には古生代後期の石灰岩が広く分布し, カルスト地形となっている。盆地底の平野部に は砂礫質の第四紀層が薄く堆積しており,平野 部より数十m高い丘状の地形をなすのは鮮新 世の堆積岩類で,その層厚は2000 m程度と見 積もられている。 ファーン川本流に沿うように国道107号線が 通っており,この地域の幹線道路として機能し ている。この道沿いにある代表的な市街地は チャイプラカン,ファーン,メーアイで,これ ら三郡が流域をカバーする。2010年のタイの 人口センサスによれば,流域人口は約25万6千 人と見積もられる。 ファーン盆地内の土地利用は,田畑と果樹園 の占める割合が高い。田畑は水利条件に応じ て,二毛作や二期作・三期作が行われている。 果樹園は,ミカンとロンガン(竜眼)の栽培が 主体となっている(McQuistan 2004)。 3. 水質調査概要 前述のように,この地域における水質調査 を2009年から継続的に行ってきたが,本論文 ではファーン川流域全体の水質の形成プロセス を系統的に明らかにするために2011年12月と 2012年8月に実施した採水調査のデータ(表1) を使用する。 分析サンプルの採水は,流域内の12 ヶ所の 河川水を対象に実施した。現地では河川水を 採取すると同時に,水温・電気伝導度(EC)・ pH計(TOA-DKK社製WM-22EP)で水温,EC, pHを計測し,パックテスト(共立理化学研究 所製)により化学的酸素要求量(COD)を測 定した。 採水した試料は,駒澤大学地理学科の実験 室で主要溶存成分の分析を行った。陽イオン Cl, NO2, Ca, Br, NO3, SO4)については,イオ ン ク ロ マ ト グ ラ フ ィ(TOA-DKK社 製IA-200 お よ びIA-300) に よ り 測 定 し た。HCO3は, アルカリ度滴定法による測定である。硬度 (Hardness)は,イオンクロマトグラフィでの CaとMgの計測結果から,山田(2009)などを 参考に,アメリカ式の簡易式

Hardness of water(mg⁄L)= Ca(mg⁄L)×2.5 +Mg(mg⁄L)×4.1 で算出した。 ファーン盆地周辺地域は,12月は乾季,8月 は雨季にあたる。しかし,今回の二回の調査時 においては,現地での観察レベルにおいて水 位に大きな違いはなかった。流域内に設置し ている雨量計のデータでは,採水日前一週間 の総雨量は,2011年12月は0 mm (Tanaka et al. 2013),2012年8月は12 mm(柳場 2014)である。 4. ファーン川本流沿いの水質の空間変化 図3は,表1の結果をもとにファーン川の水 質が流路に沿ってどのように変化するかをまと めたものである。 まず図3(a)より,溶存成分量と明瞭な相 関関係をもつECは,最上流域では5∼7mS/m 程度の小さな値を示すが,地点②を過ぎたあた りから急激に上昇し,地点⑦のウドンパン橋周 辺で最大の40mS/mを超える値となり,これよ り下流では徐々に低下していく傾向が明らかと なった。 2009年以降この流域の最上流域で行ってき た水質調査の結果から,この地域のECの値は 流域南西部に分布している石灰岩地域から流 れ出すカルシウムイオンCa2+やマグネシウム イオンMg2+に富む水の影響が大きいことが分 かっている。そこで,石灰岩起源のこれらのイ オンの総合指標である硬度と比較すると,流路

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― ― 致している。したがって,ファーン川流域に おけるECの値は,ファーン川最上流域と同様 に,大まかには石灰岩地域から流出するCa2+ やMg2+の水質への影響を反映しており,農薬 や生活排水などの人為的な汚染の影響はそれほ ど大きくはない。実際,Ca2+やMg2+の濃度は 他のイオンに比べて1∼2桁大きいことが表1か らわかる。 また,図3(a)の中には,流域南西部の石 灰岩地域(limestone area)から流れ出す支流の 表1. ファーン川流域の水質分析結果一覧 Table 1. Results of water quality in the Fang river basin

Point # Name Lat. Lon. Distance [km] Date Temp. [°C] pH EC [mS/m] COD [mg/L] TH [mg/L] ① Mae Fang Luang 19.597 99.184 12.4 2011/12/25 17.0 7.5 5.9 6.0 34.4 ② Huai Pong 19.616 99.513 17.2 2011/12/25 18.1 7.8 6.7 6.5 38.1 ③ Ngaen Ngum 19.649 99.152 28.0 2011/12/25 19.3 7.9 13.9 8.0 81.1 ④ Ai 19.681 99.150 32.4 2012/8/9 25.2 7.8 25.7 2.0 149.3 t1 Sai Khao (Huai Sai) 19.684 99.154 33.3 2012/8/9 25.1 7.8 17.8 13.0 108.0 ⑤ Ban Ai Dam 19.687 99.153 33.4 2012/8/9 25.8 7.8 26.9 5.0 156.2 ⑥ Si Dong Yen 19.706 99.147 35.9 2012/8/9 26.1 8.2 36.5 7.0 238.4 ⑦ Huai Phai 19.734 99.143 39.6 2011/12/27 19.7 8.3 40.1 6.5 249.5 t2 Tha (Nam Mae Thalop) 19.736 99.149 40.8 2012/8/9 26.3 7.9 23.3 13.0 — ⑧ San Sai 19.909 99.220 76.6 2011/12/27 19.5 8.2 29.2 8.5 168.8 t3 Pong Nam Ron (Nam Mae Chai) 19.946 99.165 77.9 2012/8/9 25.5 8.1 5.5 15.0 26.0 ⑨ Tha Mai Liam 20.021 99.354 112.5 2012/8/9 27.4 7.9 15.1 13.0 78.1 unit: mg/L Point # Li+ NaNH 4 + KMg2+ Ca2+ PO 4 3− FClNO 2 − BrNO 3 − SO 4 2− HCO 3 − ① 0.001 1.88 0.00 1.50 3.07 8.73 0.00 0.00 0.69 0.00 0.00 0.00 3.96 26 ② 0.002 2.52 0.00 1.45 3.39 9.69 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 3.09 34 ③ 0.003 2.48 0.00 1.43 5.40 23.60 0.00 0.00 0.55 0.00 0.00 0.00 4.38 68 ④ 0.000 2.54 0.00 1.99 6.85 48.50 0.00 0.00 2.58 0.00 0.00 2.73 5.70 128 t1 0.000 2.85 0.04 2.49 5.98 33.40 0.00 0.00 1.69 0.00 0.00 0.94 4.46 96 ⑤ 0.005 2.44 0.00 1.81 7.24 50.60 0.00 0.00 2.64 0.00 0.00 2.73 5.63 136 ⑥ 0.010 3.42 0.00 2.32 11.80 76.00 0.00 0.00 3.98 0.00 0.00 4.42 7.80 188 ⑦ 0.014 1.97 0.00 1.54 13.10 78.30 0.00 0.00 2.91 0.00 0.00 5.43 4.07 220 t2 — — — — — — — — — — — — — — ⑧ 0.014 3.56 0.00 2.99 8.79 53.10 0.00 0.00 4.23 0.00 0.00 3.93 5.16 144 t3 0.004 3.13 0.00 1.94 1.53 8.56 0.00 0.30 0.77 0.00 0.00 0.75 2.34 28 ⑨ 0.000 4.34 0.00 4.31 4.59 23.70 0.00 0.01 4.66 0.00 0.00 2.83 3.35 68 unit: meq/L Point # Li+ NaNH 4 + KMg2+ Ca2+ PO 4 3− FClNO 2 − BrNO 3 − SO 4 2− HCO 3 − ① 0.00 0.08 0.00 0.04 0.25 0.44 0.00 0.00 0.02 0.00 0.00 0.00 0.08 0.52 ② 0.00 0.11 0.00 0.04 0.28 0.48 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.06 0.68 ③ 0.00 0.11 0.00 0.04 0.44 1.18 0.00 0.00 0.02 0.00 0.00 0.00 0.09 1.36 ④ 0.00 0.11 0.00 0.05 0.56 2.42 0.00 0.00 0.07 0.00 0.00 0.04 0.12 2.56 t1 0.00 0.12 0.00 0.06 0.49 1.67 0.00 0.00 0.05 0.00 0.00 0.02 0.09 1.92 ⑤ 0.00 0.11 0.00 0.05 0.60 2.52 0.00 0.00 0.07 0.00 0.00 0.04 0.12 2.72 ⑥ 0.00 0.15 0.00 0.06 0.97 3.79 0.00 0.00 0.11 0.00 0.00 0.07 0.16 3.76 ⑦ 0.00 0.09 0.00 0.04 1.08 3.91 0.00 0.00 0.08 0.00 0.00 0.09 0.08 4.40 t2 — — — — — — — — — — — — — — ⑧ 0.00 0.15 0.00 0.08 0.72 2.65 0.00 0.00 0.12 0.00 0.00 0.06 0.11 2.88 t3 0.00 0.14 0.00 0.05 0.13 0.43 0.00 0.02 0.02 0.00 0.00 0.01 0.05 0.56 ⑨ 0.00 0.19 0.00 0.11 0.38 1.18 0.00 0.00 0.13 0.00 0.00 0.05 0.07 1.36

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水や地下水が,本流に流れ込むおおよその範 囲(地点④∼⑦にかけての地域)を示している が,この範囲とEC・硬度が上昇する範囲は一 致している。さらに,地点⑤から地点⑥までの 間に注目すると,硬度の上昇率はECの上昇率 よりも明らかに高いことが読み取れる。 図3(a)の中のt1, t2, t3は,石灰岩地域以外 から流出する支流の水質をプロットしたもので も低く,本流の水を希釈する働きをしているこ とがわかる。 2012年8月の調査において,本流沿いに水の 流れを踏査した結果,地点⑤の下流側(図3中 に縦線で示した位置)に農業用水を取得するた めのダム(図4)があり,流量が少ない時には 本流の水の流れはここで一旦寸断されているこ とがわかった。 図3. ファーン川本流沿いの水質の変化

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― ― 果から,ファーン川本流沿いの水質の変化は, 以下のようにまとめることができる。 ヴィアンパー山付近から流れ出すファーン川 は,フアファイ盆地を抜ける20 km地点周辺ま では溶存イオンの少ない清流として流れてい る。そこから,ファーン川左岸側に広がる石灰 岩地域から流出する硬度の高い水が合流し, 汚濁されているわけではないがCa2+とMg2+ 分に富んだECの高い水質に急激に変化してい く。33 km地点のダム地点で水の流れが寸断さ れることにより,本流の水質は流量が特に大き な時以外にはリセットされる。ダムのすぐ下 流側から40 km地点(⑦ウドンパン橋)の間で は,石灰岩地域から流出する水が主体となって 本流の河川水質が形成されることになるため, この辺りでファーン川の水の硬度は最大とな る。 40 km地点を過ぎると,石灰岩地域からの支 流の流入がなくなり,石灰岩の影響を受けてい ない支流の水が多く流入することで本流の水は 希釈され,硬度,ECとも下がっていき,地点 ⑨に至る。ダムを境とする水質の断絶は,Ca2+ とMg2+以外のイオン濃度変化を示した図3 (b)からも読み取ることができる。 5. 人間活動による水質への影響の検討 図3(b)から,Ca2+とMg2+以外のイオン濃 度は,ダム付近でも値の乱れはあるものの,全 体的にみれば,僅かにではあるが下流にいくに したがってイオン濃度が高くなっていくことが 読み取れる。これは,自然河川においても普通 に見られる変化であるが,人為的な影響の有無 を検討するために,鈴木ほか(2011)を参考に 各地点のナトリウムイオンNa+と塩化物イオン Cl−の比(Na/Cl比)をプロットしてみる(図 5)。 まず,本流の上流3地点(①, ②, ③)や支 流 の2地 点(t1, t2) のNa/Cl比 は,1 : 1の ラ イ ンや海水比と比べてNa+に富む傾向が読み取れ る。これから,これら5地点のNa+とClは, 人間活動によって排出されるNaCl起源や降水 起源ではなく,大部分は岩石由来(斜長石)の Naであると予想される。 次に地点④を過ぎた辺りから,Na/Cl比は海 水比に近づいている。さらに,地点⑦以外は, その比を保ちつつ下流にいくにしたがってNa+ とCl−の濃度は上昇している。したがって,こ れが人為起源の水質への負荷をあらわしている と解釈できる。しかし,濃度そのものはそれほ ど高いものではなく,人の生活に負の影響を与 えるほどのものではない。 他のイオン濃度,たとえば肥料や糞尿の指標 となる硝酸イオンNO3−なども,最下流部でも 僅かに検出される程度で,日本の値と比べても それほど大きな値ではない。使用されている肥 料の量などが比較的少ないか,水田等による脱 窒効果が原因であると考えられる。 6. ま と め 本論文では,ファーン川本流沿いの水質の変 図4.  ファーン川本流,Ai村(地点⑤)の農業 用ダム

Figure 4.  Agricultural Dam at Ban Ai (point ⑤), main stream of the Fang river.

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化について,2011∼2012年の採水調査の結果 にもとづいて整理した。さらにその変化の要因 について,周辺の地質や土地利用などの視点か ら説明を試みた。 まず,水質の総合的な指標としてのECは, フアファイ盆地を抜ける20 km付近までは小さ く,その後急激に上昇してウドンパン橋付近で 最大となり,ここより下流では徐々に値を下げ ながらコック川との合流点に至ることが示され た。ECは一般的に,地質等一定の条件下であ れば,下流にいくほど大きくなる。しかしこの 地域では,流域南西部に分布する石灰岩地帯か らの流出にともない,ECが高くなる。さらに, 33 km地点に建設されているダムにより,流量 の少ないときにはダムの下流側と水の流れが断 絶されているので,ダムのすぐ下流側では石灰 岩地域から流出した水がそのまま本流の水質を 形成している状況になるため,ウドンパン橋付 近でECが最大値となる。ウドンパン橋より下 なくなるため,水質はECの低い支流の水に希 釈されながら流れている。 次に,上述の石灰岩由来のイオン濃度以外の データから,水質に対する人為的な影響の検出 を試みた。具体的には,各地点のナトリウムイ オンと塩化物イオンの比(Na/Cl比)をプロッ トした図5から,人間活動に伴う塩化ナトリウ ムの検出を試みた。その結果,フアファイ盆地 をぬける地点付近まではその影響はほとんど見 られないものの,ファーン盆地に入ると若干で はあるが,人間活動起源のNaClと思われる水 質の変化が検出された。しかし,濃度そのもの はそれほど高いものではなく,人の生活に負の 影響を与えるほどのものではない。 以上を総合的に判断すると,ファーン川の水 質はおおむね良好であり,ECが高い場所でも その原因は石灰岩起源の硬水であるため,汚濁 されているわけではないことが分かる。人為的 な影響も,検出はされたがその濃度は高くな 図5. ファーン川流域における塩化物イオン濃度とナトリウムイオン濃度の関係 Figure 5. Relationship between sodium and chloride concentrations in the Fang river basin.

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― ― は問題となるような値は検出されなかった。 しかしこの結果は,ファーン川流域の水は安 全であるということではない。例えば,問題と なるような水質の変化は,地域の農業の作業過 程の中で一時的に大きく変化するものである可 能性が高い。また,健康被害等を引き起こす農 薬被害について検討するためには,ターゲット となる成分物質を定めた上で,本研究で扱った ような一般的な測定項目を超えた水質調査を行 う必要があるであろう。このような詳細な水質 調査を行うためには,地域住民による継続的な 水質調査の取り組みが必要となる。本報告は, その際の基礎データとして有用であろう。 謝  辞 本研究での現地調査およびデータの蓄積の ために,木村茂氏をはじめとするNGO Linkの 方々,また,サハチャート校長先生をはじめと するフアファイ学校の先生方には大変お世話 なった。記して感謝申し上げます。本研究は, 駒澤大学応用地理研究所のプロジェクト研究 「北タイ山村住民の環境保全活動の支援に関す る研究」(2008∼2013)の一部として実施した。 引 用 文 献 JVCタイ・チェンマイ事務所編 2003.『3NGO 合同「ファーン川流域活動報告会」報告書』 29 pp.JVCタイ・チェンマイ事務所. 財団法人地球環境センター 2004.『河川を中 心とした環境保全活動のためのマニュアル 第2版タイ・ランプーン市における環境保全 に向けた住民参加型実線活動モデル事業』60 pp.(財)地球環境センター. 鈴 木 秀 和・ 宮 下 雄 次・ 高 橋  浩・ 安 原 正 也 2011.箱根外輪山斜面に分布する湧水の 水質および同位体組成.神奈川県温泉地学研 究所報告,43: 29–38. 山田一裕 2009.『水しらべの基礎知識 ―環境 学習から浄化の実践まで―』176 pp.オーム 社. 柳場さつき 2014.タイ北部ファーン盆地周辺 地域における降水特性.駒澤大学大学院人文 科学研究科修士論文.

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Watershed in Chiang Mai and Chiang Rai Prov-inces. 33 pp, Regional Environmental Technical

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Geographical data book of the Fang River Basin 2011. 13 pp, Department of Geography and

Insti-tute for Applied Geography, Komazawa Univer-sity.

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Surface Water Quality and its Formation Processes in the Fang River Basin, Northern Thailand

Yasushi TANAKA*, Masahiro TAKAGI*, Tetsuo SATOH*, Survey Participants of Northern Thai Seminar, Komazawa University**

We measured the surface water quality in the basin of the Fang River, which is one of the upper tributaries of the Mekong River in northern Thailand, and discussed its formation processes from the viewpoints of geology, current landuse and human impacts.

The water quality along the main stream of the Fang River changes as follows: 1) At the farthest upstream segment (ca. 0 – 20 km from the headwaters area near Doi Wiang Pha), the river is a clear stream containing few dissolved ions. 2) In the segment from ca. 20 km to agricultural Dam point (ca. 33 km), hard water which includes rich calcium and magnesium ions flows into the main stream of the Fang River, bringing about the effect of limestone. Paleozoic limestone is widely overlaid on the left (west) side of the upstream of Fang River, and it is found that this is one of the keys to understanding the formation process of water quality in the watershed. The hard water has an effect on Elec-trical Conductivity (EC) as the value of EC suddenly grows in this segment. But this does not mean that the water is polluted. 3) At the agricultural Dam point, most of the main stream water is diverted, and therefore it resets the water quality of the main stream except the rainy season. 4) Between the downstream of the Dam point and Huai Phai point (ca. 40 km), almost all main stream water is formed by the runoff water from the neighboring limestone areas. As a result, EC and Total Hardness (TH) indicate the maximum value in this segment. 5) At the downstream from the ca. 40 km point, the main stream water is diluted by tributary flows that do not run through limestone areas. Therefore EC and TH values decrease as far as Tha Mai Liam point (ca. 100 km).

Next, we examined human impacts on the water quality by use of relationship between sodium and chlorine ion concentrations. We detected a weak human signal between Ai point (ca. 32 km) and Tha Mai Liam point (ca. 100 km). But since its absolute values are not so large compared with ordinary river water quality of urban/suburban area, we estimated it will not have a bad influence on human life.

Figure 2.   Geological map of the Fang river basin. Compiled from Federal Institute for Geosciences and  Natural Resources, Germany, 1976.
Table 1. Results of water quality in the Fang river basin
Figure 3. Change of water quality along main stream of the Fang river.
Figure 4.   Agricultural Dam at Ban Ai (point ⑤),  用ダム main stream of the Fang river.
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