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日本西蔵学会々報 (31) 004西田 龍雄「『蔵漢対照拉薩口語詞典』(于道泉主編 民族出版社 北京1983刊)について」・大会記事

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全文

(1)

対 照

拉 薩

語 詞 典 』

于 道 泉

編 民族 出版 社 北 京

1983

に つ い て 西

 

  龍   雄i

1

 中国で は近年少数 悦 族 言 語の研 究が益 々 盛ん に な り, 各 言 語 の 辞 書の編 纂にも大 きい努 力 が 払われてい る。 チベ ッ ト語の辞 書 もすでに 多 種 類 が 刊 行 され

格 西 曲札 『蔵文辞典 』の 訳 木 (1981

2

次 印 刷

北京 民 族 出版 社 〔格 西 〕と略 称 )は じめ, 『蔵 漢 詞 典』西 北 民 族 学 院 蔵 文 教研 組編 (蘭州

甘粛人 民 出 版社 1979 〔甘 粛〕と略 称 )

,r

蔵 漢対 照常用 詞彙』西蔵民 族 学 院預科蔵 文 教 組 編 (成都

四川 民 族 出版 社

1980

〔四川〕と略称) とい っ た代 表 的な辞 書は多くのチベ ヅ ト語 研 究 者に愛 用 され, 大い に役 立っ て いる。  ま た 五 万語 以上を収録する大 型の双解辞典

r

蔵 漢 大 辞 典』の編 纂が鋭 意 進め られて い る ことも周 知の事 実で あ る

その 辞 典の 「征 求 意 見 稿 」はすでに書 物の形をとっ てい て

筆 者 も大 型 本置冊か ら な る実物を 中央 民 族 学 院 の図 書 館は じめ数ケ所で見かけたこと がある。 「征 求 意 見 稿 」とは

言 うま でもな く研究 者の意 見を広い範囲で 聞 き

必要な修正 を行うた めの稿本 である。 整っ た印 刷 本ではあるが 内部資料で

お そ らく国外に は

本 も出さ れて いない と思わ れる。 こ の大 辞 典の刊 行に は よ ほ ど慎 重を期 してい るのか

征求意見稿が

1979

年に世に 出て か らすで に

6

年を経て い るが

ま だ 正式 出版が な されて い ない。 主 編 者で あっ た 張怡藤教 授は1928年にその編纂を 志 され

血を そ そがれたが

,一

昨 年 (1983) 成 都で病 を得て逝 去 さ れ た と 聞い て い る。 副主編 者の祝 維 翰 先 生 もすで に世 を 去 られ, 協 力 されたチベ ッ ト の学 者 羅 桑 圖 班

羅 桑 多吉 両 先 生 も60年か 70年 代に物 故し て お られ る。  『蔵漢大辞典』 は

チベ ッ ト語 辞 典と して

古 籍 中の 文 語 語 彙や解放後の新 造 術 語な どのほ か

とくに実 地 調 査に よっ て集めた蔵 族 民 間の農 牧 業 手工業 な ど生 産 技 術 と生 活 習 俗に関 する語 彙を豊 富に盛 り込ん だ だ けで はな く

事 典と し て

い わ ば 「チ ベ ッ ト小百科 事 典 」と して 役立つ よう意 図され たもの と伝 え られる。 その完 成は チ ベ ッ ト研 究に大 き く貢 献 するに違いない

2.

 こ こに紹介 する 『拉薩口語詞典 』 (「口語 」と略称) は

その表 題が示 す ように

純 然たる口語 辞 典とし て企 画された もの で

ラ サ の話し言 菓 を核に し て収録した有 用な現代語辞典で ある。 し か し

あ とで述ぺ る ように

た ぶん 口語と は認め に くい小 事 典 的 な 項 目 もな ぜ か少な か らず 含 まれる。 や はり上述の

r

蔵 漢 大 辞典』の存在を 意識 した た め で あ ろ う か

  昨 年3月, 筆 者が北 京 を 訪 れた折, 本 書は刊行さ れ た ば か りの 様 子で

主編者の千 道 泉教授か ら

本を頂 戴し た

い ま まで に ない画 期 的なチ ベ ッ ト語辞典である

も し 日木で チベ 語 辞る と

ど う し て も本 書を基 本としなけ れば な らない であろ う。 む し ろ その編纂に先立っ て

まずこ の辞典の 日本 語 版を作 成 す る こと を望み たい。   し か しこ の辞 書 も簡 単に でき上 がっ たわ けで は ない。 何度 も改訂 増 加を重ね て来てい る

本 書の跋に よる と, 第

次 油 印本 (騰 写 版)が 『蔵 漢 拉薩口語詞彙』(蔵 漢 対 照

ラ サ ロ語 音に よ り排 列 )と して,

1954

9

月に発 表 (1万 1千 語 ほ ど 収 録)

第二 次油 印本は

『蔵 漢口語 詞 彙』(拉 薩 方 言 ) (蔵 漢 対 照

チ ベ ッ ト文字順 に 排 列) とし て 1957年

6

月に (

1

2

千語ほ ど収録)

第三次 油 印本は

『蔵漢口語 詞 典』(蔵 漢 対照

ラ サ ロ語音とチベ ッ ト文字順を お り交ぜ て排 列 ) とし て

1960年2月に (1万 5千 語ほ ど収録)刊 行さ れ た ら しい (いずれも内 部 資 料で宋 見 )。 編 集に協 力したのは格桑 居冕

洛 桑 群 覚

旦増 晋 美

徐 盛

周 季 文の諸 氏と中央 民 族 学 院 民 語 系 蔵 語 教研組の同志で ある

1978年6月に

停 頓し て い た編集が 再開され

大幅に改訂 増 補 されて, 本 書 が 完 成 した。   凡 例に よ ると

蔵 文正字を見 出し に した が

冂語を反 映 した綴 字 も使っ て

は じめ て文 字を知っ た蔵 族の読 者 が

口語か らも蔵 文正字を 知 り得る よ う配慮し

ま た 正 字のない 口語 形 式に も, チ ベ ッ ト文 字に よ る書き方を考 えてみ た とある

口語の文 字 化につ め て いること が わ か る。 3

  まず

筆 者が気 付いた 本 辞 典の特 微を ま とめ て例 挙 する。 1) ラ サ ロ語の発 音に対して新しい ラテン字併 音法 が 考  案さ れ

各語 彙 項目に声 調 表 記を含め た ラサ ロ語形 が  的確に示さ れてい る。

14

(2)

2) 収 録語彙数 が2万 9f

語に及び

他の辞 典にはない   新しい項 日が多量に含まれて いる。 3)  単 語だ けではな く

単 独に は使わ ない文 法 形 態 素 も  収 録さ れ

必要な文 法情報が え ら れて い る

4) 各項目の意 味の説 明 が

r

寧で

具体的 な指示 が あ   るc5 ) 固 有名 詞 (人物名

地名

 寺名 な ど)が 多 く収 録 さ   れ

正 確な読み方が わ かる

6

) 占い 時 代の制 度

風 俗

轡 慣を代 表する語 藁も収 録  され

,一

k説 明がつ い。 7) 諺 も収め ら れて い る0

4.

 まず, ラサ ロ語音につ いて述べ てみ よ う

凡 例に よ ると

ラサ の 常用音を主 体と し

そ れ 以 外の発 音は括 孤 に 入れて示 し た と ある

た と えば spras 装飾は [

p

ε :51 とも 発 音 する し

[tpε:5]

j

前 者 が 常 る か ら

baeh

 zhaeh の よ うに示 される

(綴 字の ロ

字転筆 者の方 法に よ る

以 下 同じ。)   この ラ サ音 表示に使われる 「拉丁注 音 」は多少 厄 介で あるが

避 け るこ とが で ぎ ない の で

簡単に説 明し て お きたい。 基 本 的に は漢 語 (普通話)の 「併 音 方案」を基 に して作 られて い る

欝 斈

発 音

鼕 斈

発 音

璽 畢

発 音 bD

zc1ll  1 *hyW [

P

ユ 〔P「 [ts] [ts [ml [1] [

9

] [w ] 1 ( tzhchn #lhf ヤ

{t [t

團 [tgtF [11 田 倒 [

jl

9k

°

亅 q り 11         i  

s [k] [k「 [t司 [t [司 固 [s ひ 印は漢 語併 音 方 案には 欠 ける もの。)

讐 甼

gy

 

l

{: ’ky   [⊂

1

σ

OjO [ X 】 」 [ r  ラ サ方音の子音を29単 位と認め

漢 語 耕 音 方案には な

い ky

綴字の khy

gy

etc

に あ た る)

  gy

ky

dgy・

etc

にあたる)

ny

(ny

−,

 my

−,

 gny

etc

に あた る)

ng

dng一

刊9

mng

etc

にあた る)

 

lh−

lh一

に)

 

hy−

hy一

に)鰰 蔭

っ てい る

 (金鵬 『蔵 語 簡 志 』な ど では fは認め られて い

漢 語か らの借 用 語のみにあ らわれる

f・

h

ph を ヒ 下に組み 合せ て衷 記 する) 張 現や

Goldstein

記 で は,

k

は [c], q は [k]を代 表 する か ら

この衷 記法 とは逆さにな り まぎら わ しい が

漢 語を学 習し て い る者 に は

こ の方が記 憶し易い。  母音は11母 音 と考え, ii[i:】ee [e:]aa [a:]acc [o :

l

oo[o:uu u :

1

  ae ε :】oe 【φ:ue

y

亅 と ict:uo u: で表記 す る。 [e;}を acc: とする奇抜な方 法が採 用されて い る。 こ の中, 短 母 音となる の は i[i]e 【e]a [a]ac [noOLlUの 6母音と し

  iUiUeu

eltaCU [

IU a〔}aoと Llaua eieiioioの 7複 母 音 を 認 め る。

ae [ε :】は綴 字

al

ahi

ad

as に あた り

,−

oe [朔 は

ohi

,−

ol

,・

od

.一

・s に

,−

uc y

uhi 厂 u1

ud

・−

us に

,−

uc

1

ab

abs 該 当 す

 ic1:」 と

UO u二

2音 節

ba が第

音節と合

した結 果

出て くる形である。 た とえば lji

−ba

jiew

重い

 phyi

ba/ qieh お そい

 

du−ba

/tuow 煙の よ うに (斜 線よ り右 側の

形はラ サ 音 表記 を あ ら わ す

音節 末 尾の

uai

−Jl−

w は声 調表示〉。  声 調は上掲 例か らわ か る ように音 節の 最 後に

f

 v

h, rv (いずれ もイ タ リッ ク体)をつ けて示 して い る。 基 本 的には /高平調とw 低 昇 調対 立

綴 字に

g

−d

b

s と 再 添 後 字

s が あ る 場 合

高 平 調は高 降調 (h) に

低 昇 調は低 昇 降 調 (τVに なる と解 釈 する

声 調 型 調 調 調 調 平 降 昇 降 声       昇 軽     低 低 〜 充 7 測

鱒 茄 5113 ユ

32

近似する       例 語の声 調 陰平

 

   

rta/

daf    .

k

    stag

dah

   上 声   

10

/IOX

   年

一一

 

1

9

luzc

, 綿 羊 軽 声   2音 節 単 語に適 用されるつ の よ う な変 調 規 則 も指 摘 されて い る

1)  2音 節単語で は, 第

音 節にある高 降 調 (Jt)は

 

平 調 (

f

)に

低 昇 降 調 (w )は低 昇調 (t

)になる。

   stag  tshang /

dagf

 cangf 虎の 穴

   

lug

 sha  

lugw

 xac   羊の 肉

2) 

2

帝 節 単 詒では

第2音 節に ある低 昇 調 (

のは 高

{z 調(!)に

低昇降調 (w )は高 降 調 (ゐ〉に変る

  rdo  zam

do・

vsamf

石 橋    zla 

hod

 

daw

 oeh  

l1

 し たがっ て

1の規 則 と 2の 規則に よっ て, ラサ方 言 の 2音 節 単 語の 声 調は 4通りの み 合せ に限 定される こ とになる。  

CVC

(1

CVC

2) 規 則1  Ji−

fw

−→

v 嗣

礁 諏

 子音音素の変 音に は

をあげてい る。 1) 低 調の蹴気 音は

2

音 節で は無 気 音 となる

。bu

 PUZI子 供 ma  

bu

/macw  

buf

母 子

(3)

2

) 第2音 節の

ba

音 節に語末子音が な い

 合

と きに

waf と読むほ か は

つねに先 行尾 子   音と 同化さ れ る。

 

dang−

po/tangw  9〔ゾ第

  zer

−ba

/soe η raf 鎌

3

hy− hr− lh一

は第 2音 節で は有 声 音 化して

  y

r

− 1一

 と な る。 hyang

hyang/hyangf  yangf 軽や か で活発

hrang.

hrang

/sha   ∫ra  ノ 単 独で

4) 否 定 詞 ma

は 高 平 調 出気 音の 前で

いつ も無

 化し mhaf [rpa 55] とな

  ma  phyin/mha (]

f

 qinh 行か なか っ た

 こ の 現 象

以 前筆 者も Tsultim 氏の チベ ト語を  観 察して いて気付いた が

こ の 辞 典で は 各 形 式 に  mhac 甲 9

甲 aの表 記が与 え られて い る。 5 brngosfngoeh 十分にめ た(過 去形〉を ラ サ人で  nghoeh [

g

Φ

51

と読む人がい る。 これは [0¢

51

       

 

s  の誤 植で あろ う

Goldstein は /066 /と して 有 声

 瞿靄堂氏の 『阿里蔵 語』 に記される ラサ 音でも [ηガ  53】とする (現 [405S 】

命 [ηげ

53

])。 金 鵬氏の 『蔵

 

語簡志』では

過 去 [n¢ 531

現 [10581

命 [ηげ 53]  (p

186)でいず れ も有 声 鼻 音である

瞿 氏 と金 鵬 氏は

 綴 字

〇s にあたる形を声 門 閉 鎖を と も なっ た

〆 で   表 記 するのは

こ の辞 典の形 式 と

致せず 気になる

6) 綴 字の g

j

d

− b−

dz

を無 声 無 気 音に 発 音 す るラ  サ人 もい る。  こ の ロ t …

V 字 表 記 法 さ れ ていて

今後の中 国の 版物

とくに中 央 民 族 学 院 関 係の出 版 物で使わ れ る と思 え る か ら

日本の研 究 者 も習 得しておく必 要があ る

すで に簡 便な 入門書 『蔵 文 垪音教 材 (拉 薩音)』

(Bod yig

gi sgra  sbyor  slob  

deb

lhasahi

 skad )中 央 民 族 学 院少 数民 族 語 言 文 字 系 蔵 語 文 教 研 究 室 編 民 族 出 版 社 北 京 1983)が 刊 行 さ れ て お り

十 九 課に分けて

正字 法とラ サ音の対 応を詳しく説 明 し てい る

 声調 を ロ

で音 節末尾につ ける方法は

ほ かの 少 数民 族 言 語に対 して も 適 用さ れて い る が

慣れ る まで大 へ わ し

ま た併 音 法の約 束 を十 分 知 らない人が声 調 符 号まで ロ

通 りん で し ま う恐 れが あ る た め

必ずしも賢 明 な方 法とは言 えない。 5

辞 書を編 纂 するに あた っ て重 要な視 点は いろい ろ と あるけれ ど も

まず 単 語の続を どの囲ま で項 目とし て取 り上げる か

そして全体を体系化された語 彙の合 と考え る とき

単 語 相互の関 係 をどの程 度に示 すか は

最 も基 本的な問題と な ろ う。  ごく簡 単な例で こ の問 題を見てみよ う。 チベ ッ ト につ ぎの諺がある

(これは本 辞 典に は収 録さ れて いないが

『蔵族諺 語』 (成 都 1980)から とっ た)

  drang

−po

 bshad

na  mi  mi  dgah

 

rgyug

pa 

khyer−

na khyi mi  dgah

 本当の ところを 言 うと人は喜 ぽ ず

 棍棒を と る と犬は喜ばず

 

〔四川 〕に は dra 

po 誠 実

老実は項 目 と して 選ば

れて いるが

drang−

po 

bshad・

na はない。 〔格 西 〕に もそ

の 形は ないが

drang−

por smra

ba

老 実 説

商 説

不欺 詐は ある、 後 者は かな り文 語 的 な 表 現であるためか 〔口

語 〕に は入っ て いない

しか し

〔口語〕に は

dran9−

po

bshad

老 実 説と drang

po bshad

na 老実説

平 心 而論

共に独立の 目 と して収め られて いる。 利 用 者に 対して

非常に親 切である

 筆 者の手 許に西蔵 自治区の全 日制 初 級 中 学 校で漢 語 を 学習する た めに使われて い る教 科 書

r

漢 語 文』 (拉 薩 1984)がある

内 容の

部に漢語と蔵 語の 対 照 が あ る が, その第二冊に (p

23)

漢 語の

方 面

……

 

方 面

に チ ベ ッ ト語の gcig

nas

……

gnyis

nas があた るこ と が 例 示 さ れて い る。 その項 目は

〔格西〕に も

〔甘粛〕に

も 〔四 川 〕に も ない が

こ の 〔口語 〕に はある。 しか

,一

方で

同 じ教科 書に p

31)怎祥 (才能 )

……

昵 ?

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

があっ て 「どうす れぽ小 学 教育の質を向上 させ得る

だろ うか」にあた るチ ベ ッ b文は

gang

− bdra

 

byas・

na

……

red

・dam

? となっ て いる。 〔口語 〕を み ると

 gang

hdra

kacnv

 zhaeh 怎 様

什 麼

如 何は独立項目とする

gang

−hdra

 byas

nu まで は採用 していない。 これは

辞典の規模と関連す る問 題である。 具 体 的 な例 を も う

加 してみよ う。

  「山頂に近づぽ近づ く程

気 候は 寒 くな り

空気 も 稀 薄になっ て

呼 吸 も ます ます 困 難になる」 越 近 山 頂

気 候 越 冷

空気 越 稀 薄

呼 吸 越 困 難 に チベ ヅ ト文

ri

rtse 

dang

 イ5α 規 gyis thag

nye  ru 

bgro

 skabs

de

tsam  gyis gnam

gshis grang

ba・

dang

/de

tsant

gyis ahng  rlung  nyung

−ba

de−

tsam

gyis 

dbugs−

rngub  gtong

khag

pa bcas yQd

pa

red

が対 照さ れ る(p

43) これは

か な り書 き言 葉 的 表 現と思 える が

た とえば 〔甘 粛 〕に

ji

tsam 〔副 〕 1

如 何;怎様 2

若干;多少と

de−

tsam

〔副〕僅 那些

僅那 様の項 目は あるけ れども

こ の よ う な文 中で相 照応する語 句の使い方はどの辞 書にも示 され て いない

6

. 一

方こ の 〔口語 〕に は, 話し言 葉に見 られ る文法的 な形 態 素の用法 がか な り多 く取 り上 げ られて いる

 kag

右 肩 , 単 独で は使 え ない形 態素を指す)/ gah 文 中で 2つ の 自主 動 詞 (制 御 可能動詞)* の 間に使 う

「先 行 する 動 詞の表 現 する動 作があとの動 詞の 目的 で あることを 示 す」。

kag

に先行する動詞は必 ず 自 主

16

(4)

動詞の 現 在 形で ある こ と。 例

kho

 

dpe−

cha  nyo

kag

phyin

song 彼は本を買い に出掛 けて いっ た

  kag.

byedv

/gah qew

 

khag・

byed

と も

現 在形 と自 由に結 合で き

自主 動詞 につ

む り

の意味を

不自主動 詞 (制 御不能 動 詞 )に結 合 する と

の ふ りをする

の意 味をあ ら わ す」例

na

kag

byed 病 気の ふ り をする。 shod

−kag−byed

む りに話 を す

のふ りをする」には 別 の 項 目に

tshu1

byedV/

cuef  qew が ある これは動 詞 現 在 形のあと}こつ

smyo

tshul

−hyas

狂 気を装う

dpe

cha lta

tshul

−byas

を読ん でいる ふ りを す る。 「む りに

」に は

la

 ma ▽/

lamav (maf )がある

伺じ自主 動詞現在形 を

la・

ma の

前と後に置 く

gzhas gtong la

ma  gtong し ぶ し ぶ

歌う yi

ge 

hbri−

la

ma  

hbr

三 しぶ し ぶ書 く

もし同じ不

自主動詞 を前と後に置 くと

半 分

でない

の 意味

を もつ

shes

la

ma

shes

わ か

たよ うで わか らな

mgo

tshod

−la・

ma  tshod

し た よ うで 理解で きな

 ▽

印の つ いた形 態 素の 面 白い使がいろい ろ と示 さ

れて いる

 

nyes

shorV /

nyeh  xo ( 現在び つ い

すべ でない こ とをし て し まっ た

し まっ た。

の意

味を あ らわす

,lto

 chas  de za

nyes

shor song

ん なもんを食うて しもうた

え らい こっ ちゃ’

 

pq

川 〕に よると

da

には

1

現在

,2.

強 調をあ ら わす 語 気 助詞 とあ る

こ の 強調とは 何の強 調 なの か全 く 指 示が ない

〔口語〕を みる と

da

D

/tav 現 在   ▽da 当 然 (もち ろ ん)の訳がつ い て い る

まず   の意 味 と  の意 味は発 音が同

t

でない ことがわ か る。 後 者の 意 味 は, 同じ動 詞 (現 在形)を

da

の前 後に置い て 作 ら れ る

例,

hgro

 da hgro もち ろ ん行 くさ

 y三n da y三n も ち ろ ん そ うだ。 その ほ か に  の用法 もあがっ て い る

da…

命 令の あ とにつけ る

 

ltOS

 

da

l

 

nyon

da

聴け !

 そ れぞれの文 法 形 式に動 詞の どの形 式 (過去 現在な

ど)が使わ れ るかを 指 示 し た 文 法情報は

重要で ある。

7

 さきにあげた第 2の 問 題 語 彙の階 層の指 示は かな

り困難な作業がつ ま とう

た とえば pho

rog gis m 三g

rko 「か らすが 目をつ つ く」 い う諺がある。 こ の pho

ro9 烏は 〔口語 〕で は

b

(ゾ roh (〔’

f

 roh )鳥鴉

大 老 鵠 と訳さ れ て い る。 する と 同 じ烏の

khwa −

ta とどの よ うに違 うの か

後 者は /

kaf

 

daf

鳥 鴉

, 老鵠と

訳 される

〔格 西 〕 をみ ると

pho

rog

=bya−

rog 烏 鴉

大 鴉 (bya

rog の形は 〔口語 〕に はない)とあり

 

khwa −

ta に は

bya

rog  chung

ba

鴉, 小鳥鴉の訳 語がつ い て

い る

こ の段 階で

khwa−

ta が小さいで,  pho

rog は

大 きい 烏である こ とが わか る

念の た め 青 海の 『新 編

文 字 典』(1979 青 海 民 族 出 版 社 〉pho

rog の 目を

み る と, mdo  

dbus

 mtho  sga  

na  yod

pahi 

bya

 nag

po 地wa

ta

las c

ρa zhig

gi ming

ste 

bya−

rog  

kyang

 zer

とあっ た (下 線は筆 者 〉

 

khwa −

taよ り

少しぽか り大 きい のが pho

rog で あっ て

さ ぎに 見た 両者の係はこ の記 述か ら支持さ れ る。 幸い

こ の 2種 の烏の動 物上の 違い は

r

青蔵 高原薬物圖 鑑』 第三冊 (青 海 省 生 物 研 究 所

同仁 県 隆 務 衛生 所 編, 青 海 人 民 出 版 社 西 寧 1975)に よっ て詳しく知るこ とが で きた

khwa

ta は

大嘴 烏 鴉 (学 名 略 ) 別 名  烏鴉

老 鴉

bya・

rog は渡 鴉 (学 名 略 ) 別 名 老 鵠とある か ら

各 辞 典い ず れ もこの訳語に改め た方がよ さそ うである

両 者 を 大小の 違い で と ら え るのは簡便な 目安にす ぎない こ と がは っ きりする。 図解辞典は有難い もので

詳しい記 述 の ほ か に

図が 入っ て い ると何と な く わ か った よ う な 気 がする

薬 とて はいず れ も肉の部 分 を 使い

精 神病の 治 療に 効用 があるらしい

た だ し前 者は 「常用 中品 」 に

後者は 「少用下 品 」に ラ ンキ ソグさ れて い る

8.

 以 前 多 田 等観 先 生から伺っ た話であるが

昔チベ ッ トの 高 僧が

H

本に 来 られた 折

ぐる りで 「チ ビン」 「チ ャ ビ ン」と お 呼 び し ていたが

高 僧は自 分の こ と を 指 し て い ると気 付か れ た

先 生はその理 由 を 尋 ねた とこ ろ

「チベ ッ hで 「チ ャビ ン」 は 茶 瓶 で 禿 頭の こ とだ が

わしの頭 をい っ とる の じゃろ」と言わ れ た ら しい。 この単 語がラ サ ロ語である の か と 〔ロ語 〕で調べたが 見 当ら ない

その替 り 「ヤ カン 頭 」はあっ た。

 zang  

khog

/sangw  

koh

銅 罐

銅 鍋

 

zang  

khog

 mgo /sangv  

koh

 gov 禿 頂1 禿 頭

禿子

    (蔑 称 } これは言 うまで もな く頭の 形 か ら薬 罐を類 推した換 喩で ある。 〔四 川〕に は両方 あがっ てい るが

〔格西 〕〔甘 粛〕 に は双方共にない

やはり口語の形 なのだ ろ う。 〔口語 〕 のみ にあって

ほ かの 辞霽;こは見 当 らない単 語は

新 造 語 も 含め てなくない

 

gdan

so/

daenf

 sof 永久歯 ten

tsi pho/

denf

 zif  p(ゾ 正電子

陽 電 子 ten

tsi mo /denf  zif  mov 電子, 陰

電 子

あとの 二 つ 漢 語

電 子の借 用 形に陽

pho ;陰

皿 o を結び付け た形である

〔Eコ語 〕

lto

 

byed

d

〔ゾ qe測 吃 飯は 〔四川 〕に Ito

byas−

pa (他 ) 吃 飯 と し て収録 さ れる が, 日本 語の 「は らご しら え」に相 応して

造 語 法 が面白い

9

 つ に 〔ロ語 〕に与え られた説 明に よ っ て

単語の 意 味 がよく理 解できる例をあ げてみよ う

(5)

 〔格西〕 〔甘粛〕に は ないが

〔四川 〕に は

kha・

hdres−

pa 接 触 (する) (多 くは共 同に食器を使 うこ とを指 す ) がある、 こ の 説 明のみで は実際の意味は把 握 し難い e こ の 口語 〕 をみ る と

kaf

 zhew 〈不 自主 〉 食 器を混 用 するこ と (蔵 族に は

御 飯 を 食べ る とき酥 湘 茶 を 飲 むと きに は

必ず自分 特 定の食 器を使っ て

(他人と)互 用 ま たは共 用してはな らない 習 慣がある)。 こ の解説に よっ て

単 語の意 味はよく了 解で きる

 ま た zhag に は 〔四 川〕で浮油の訳 がある。 こ の訳 語 だ けで は

浮いた 油 と しか とれ ない 〔口語 〕で は,/xaw 浮 油 (酥油 茶の 上に浮いた油)とあ り

は しめ てその 体が理 解で きる

その油 を 「す くい上げる」の は1zhog

len/xaw  lenv 浮 油 油 茶の よ うに

  len

を 使 うこ とも別 項 目で示されてい る。  tshe 

lhag

に は 〔四川 〕で残 年

〔甘 粛 〕で は 残 年

余 生と訳 さ れ る が

〔口語〕で /cef  

lah

余 寿 (子 供 が早死 にする と

(その子が)生きた時間 は

その 人が 前 世で残し て来た寿 命であっ た と迷 信 する)と解説 さ れ て いるのを 知っ て

は じめて他の辞 典で残 年, 余生 とい っ て い る本 当の意 味が了 解で きるの である。

10.

 また 旧い風 俗 習慣に 関 し て

今の段階で は他の 辞 書に は全 く見ら れ ない有用 な情報をこの 〔口語 〕は提 供 してい る。  ○ 大 会 記事 第32回大 会は

昭和59年11月17日(土)

i

大 正 大学巣鴨校 舎で開催され

次の研 究発表が行な わ

i

れ た。     福 田 洋

(東 京 大 学 )  意 識と存 在の問 題 事 象へ の

 

試 論 …

 

大 村 誠 司 (駒沢 大学 )

 

チベ ッ ト佛教に お け るPra

    m 吾りav 瓢 tika現 量 章にする解釈

   原田 覚 (東方学院 )  Lam  rim  chen  mo の中 観 …    帰謬派 思 想    長 野 泰彦 (国立民 族 学 博物館 )  嘉 戊語の格 性

金子英

(大正大 学) サム エ 哩

 

大会の当日 の総 会に お い て次の事 項が承認決定 され

i

た。  

1

) 日本 学術 会 議の第13期の会員の推薦に当た る推薦

i

人 と し て

当 学会から北 村 甫 氏 (第 1候 補 )

長 尾

i

雅 人 氏 (第 2候 補 ) を届 け 出る。

i2

) 「日本西 蔵学 会 鱒 」の 「役則 の欄を 「役 員

i

鬪 と し浸 員 伊 騾 舐 (酬 大 学) を (成 則 仏

i

敦 研 究所 ) に変更

新た に戸 崎宏 正 氏 (九 州 大学 )に  委員を委 嘱 する。

i3

) 鑼 、、号の 織 委 員 を北 舗 (言 語 ),山。黼 櫪

 

bkra

shis  sgQr

mo /zhacf

xih  goov  m (ゾ 炸 果 子 (油

で揚 げた果 物 ) (酥 油 (乳 油)で揚 げた食 物で

旧チ ベ

ッ ト政 府が慶 祝 典 礼を行う際

官職の位に応じて達っ た

数 (の 炸 果 子 ) を 僧 俗 官 吏

b

えた)

 brgyad

 gtor/gyaev  

dorf

傑朶 (毎 年 蔵 暦二 月八口 に

旧チベ

ッ ト政 府の役 人は夏の 服装に着 換 える が, あわせ て宗 教 活 動を行い

供 物を供え て 四方の 護 法 神 を 祭っ       ヰ S

その活 動を 傑 朶 と言 う)

 

thon 

ja

 gtong /toenf 

jaf

 

dangf

dQngf

) 〈動 〉 卒 業

(茶会)に接 待 する (旧チベ ッ ト社会で学 生 が卒 業 す る 時

茶 会を催 し

老 師と級 友を招 待し て

その 上老 師

班 長, 先 輩に お金 を 送るこ とを 指 す )  以上少 数の例 を紹 介 するに とどまr・た が

こ の

r

拉薩 口語 詞 典 』に は, 尽 きない 面自味が 含ま れて い る

* 金鵬は 『蔵 語 簡 志』の中で

自主動詞 と不 自主 動 詞  の違いを

行 為 を 主 観で決 定で きるか否か に置いてい  る

ta 53

  tshε 55

探 す’ は 自主動詞 で

thong  55

え る

,  nip 53

見つ か る

は不自主動 詞 とする (p

.34

)。 不自孟 動 詞 ‘ 落ち る

と自主 動 詞 ‘ 降りる’ の対立 を考える と

両 者の違い は 理 解 し易  いu 史 )

袴谷 憲 昭 (宗 教 )の 三 氏に依 頼 する。 4) 会報31号は, 第

32

回大会の発表 者5氏の 上 記 発 表 の要 旨と

西 田 龍雄氏の于道 泉 主編 「蔵 波 対 照 拉 薩口 語 詞 典 」 (1983>の書 評 を掲 載 する。 5) 会 報31号から, 大会記 事に総会で承 認 され た 当 該

年度の会計 報 告 を 掲 載 する。 6)

 

昭 和60 年度大 会 (第33回) を 名 古 屋 大 学で開 催す

る07 > 昭 和58 年度会計報告   収入 :     前 年 度 繰 越 金      256

711円     会 費      407,000    バ ク ナン バ

売上金      1

000    預 金 利息                  3

606                 合 計      668,317  支出 :     会 報30号 印 刷 費       155

000

円     同 発送 費     33,

960

   事務連絡費       54,860    事 務補助者謝金            

28

000

                合 言}

         271,820   昭 和59年 度へ 繰 越 金:     

396,

497

円 ’

一 18 一

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