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JP1-1 1 A case of anal canal duplication 571 JP1-2 1 A case of anal canal duplication complicated with abscess formation g 4

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Poster Session (May 24)

JP1-1 肛門管重複症の 1 例 A case of anal canal duplication

独立行政法人国立病院機構静岡医療センター小児外科 小池能宣 【はじめに】肛門管重複症(以下本症)は肛門管に発 生するまれな消化管重複症である.今回本症と診断し 手術を行った症例を経験したので報告する. 【症例】患者:7 歳,男児.主訴:肛門部 6 時の皮膚 洞. 既 往 歴:39 週 3 日,4070g 帝 王 切 開 で 出 生.4 歳より喘息で加療中.家族歴:父 40 歳,母 40 歳, 姉 10 歳(喘息),弟 4 歳(喘息).現病歴:急性胃腸 炎で近医受診時に主訴を認め当科に紹介.これまで に便秘や肛門痛,soiling を自覚したことはない.現 症:肛門の背側 6mm に皮膚洞あり.明らかな神経 学的異常なし.瘻管造影:洞の深さは 2cm で盲端. CT&MRI:S1-2 の潜在性二分脊椎あり.仙骨前腫瘤 なし.本症と診断し瘻管切除術を施行.病理所見:瘻 管は扁平上皮で裏打ちされ,壁には肛門腺の導管と思 われる小さな環状構造と平滑筋と考えられる筋原成分 を認め,本症と診断された.手術の翌日に退院.創の 上皮下は良好で再発はみられない. 【考案】肛門管重複症は本邦では 1978 年に秦らによっ て初めて報告され,本症例を含め現在までに 31 例 (男児 3 例,女児 28 例)の報告がある.本症の形態 的特徴は肛門の背側に開口し肛門管と交通のない管腔 構造であり,病理学的特徴は,瘻管の尾側末端は扁平 上皮で頭側末端は移行または円柱上皮で覆われ,周囲 に肛門腺があり,壁は平滑筋細胞からなるとされてい る.また Carpentier らは 47 例中 38.3%に仙骨奇形, 二分脊椎,仙骨前腫瘍などの合併奇形を伴っていたと 報告している.本症は無症状であることが多いが,感 染の危険性があることや他の消化管重複症に悪性化の 可能性があることから摘出術が勧められる. 【まとめ】まれな肛門管重複症の 1 例を経験した.重 篤な合併奇形のない本症例は経肛門的摘出で予後は良 好であった. JP1-2 膿瘍形成した肛門管重複症の 1 例

A case of anal canal duplication complicated with abscess formation 北海道大学大学院医学研究科外科学講座消化器外科学 分野Ⅰ 本多昌平,宮城久之,湊 雅嗣,奥村一慶,河北一誠, 武冨紹信 【はじめに】肛門管重複症は消化管重複症全体の 5% 以下と比較的稀な疾患であり,肛門背側部に開口部を 有する場合が多い.今回われわれは重複腸管内に膿瘍 を形成した稀な症例を経験したので,文献的検討を加 えて報告する. 【症例】14 歳の女児で,1 歳頃から肛門背側の瘻孔開 口部に気付いていたが経過観察していた.瘻孔からの 分泌液は認めなかった.14 歳時に肛門周囲痛および 発熱を発症し,造影 CT にて直腸背側に隔壁を有する 最大径 6cm の low density mass を認め,周囲に造影効 果がみられ膿瘍形成と診断された.ドレナージなど の外科的処置を要せず,抗生剤投与にて感染のコン トロールは可能であった.精査加療目的に当科紹介 され,炎症が落ち着いた時点で MRI 検査,瘻孔造影 検査,および下部消化管内視鏡検査を施行した.MRI 上下部直腸背側に小さな嚢胞状構造の連続を認めた が,明らかな腫瘤性病変は指摘されなかった.MRI にて重複腸管の最深部まで 7cm 程度と診断されたが, 造影上瘻孔は約 3cm で盲端となっており,明らかな 直腸との交通を認めなかった.超音波内視鏡(EUS) を併施したが重複腸管は炎症によって狭細化したため か壁構造の描出は不良であった.感染の再発を認め ず,近日中に根治術を予定している. 【まとめ】肛門近傍に開口部を有する管腔構造を認め た場合には,重複腸管の診断が必要であり,本症例の ように稀ではあるが膿瘍形成を発症する危険性を考慮 して,早期の根治術が薦められる.術式決定には重複 腸管の形状を評価する必要があり,直接瘻孔造影に加 えて EUS を含めた内視鏡検査が有用である.

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幼児期以降の痔瘻は稀ではあるが,保存的加療に抵抗 性で手術を要することがある.小児痔瘻の治療に対し ては,肛門の変形を最小限にし,排便機能を損なわな いよう,細心の注意が必要となる.今回,基礎疾患を 有さない難治性の痔瘻 2 例に対し,再発率が低く,括 約筋の損傷が最小限となる coring+seton 法にて根治 術を行った症例を経験したので報告する.症例 1 5 才 男児.叔父がクローン病.3 才 2ヶ月にて肛門周 囲膿瘍を発症.十全大補湯にて加療も,増悪傾向で あった.クローン病を疑い,大腸内視鏡検査施行した が,否定された.その後,排膿散及湯内服にて加療を 続け,症状は小康状態となった.4 才 7ヶ月時には 2 時と 10 時に痔瘻を認めた.4 時,8 時にも硬結が残っ た.保存的加療続行も 瘻管部よりの散発的な排膿は 継続.発症後 2 年目に手術を行った.2 時,10 時の低 位筋間(皮下)痔瘻に対し,coring+seton 法による 根治術を施行した.術後,3-4 週毎にゴムを締縮し, 3ヶ月前後で,2 カ所共脱落,治療は終了した.術後 5ヶ月現在,瘢痕は最低限で,肛門機能に異常は認め ていない.症例 2 12 才 男児.11 才 5ヶ月より肛門 痛が出現.抗生剤にて治療も改善せず,当科紹介され た.初診時 11 時に膿瘍後の瘢痕を,1 時方向に 2 次 口と思われる白色隆起を認めた.排膿散及湯にて経過 観察も排膿 自然軽快を繰り返した.12 歳時の MRI では 1 時 4 時に瘻管を認めた.難治のため,12 才 2ヶ月齢 1 時,4 時の低位筋間痔瘻に対し,coring+ seton法による根治術を施行した.術後 3 日目に退院. 現在外来にて観察しつつ締縮を進めている.  幼児期以降の小児痔瘻では,大人と同様の病態を呈 し,保存的加療に抵抗性であれば,手術が考慮される. 術後治癒までに時間を要するも,術後感染及び再発が 少なく,肛門括約筋の損傷を最小限とすることで肛門 機能を温存できる coring+seton 法は,成人の痔瘻に て推奨されており,小児にとっても有益と思われた. JP1-4 coring+seton 法による根治術を施行した難 治性小児痔瘻の 2 例

The experience of fistulotomy with seton placement in children with fistula-in-ano -two case

report-独立行政法人国立病院機構福山医療センター小児外科1) 独立行政法人国立病院機構福山医療センター大腸肛門 外科2) 黒田征加1),岩川和秀2),正畠和典1),長谷川利路1) 症例は 2 歳 4 か月男児.生下時より右臀部皮膚陥凹 に気づかれていた.2 歳 3 か月時に同部に硬結と発赤 を認め,前医を受診した.排膿と抗生剤治療で臀部 膿瘍は軽快した.先天性皮膚陥凹の精査目的に施行 された MRI で仙骨前に T1 low,T2 High intensity な 径 2cm の表面平滑で内部均一な嚢胞性腫瘤を認め, 精査加療目的に当科紹介となった.下肢の運動障害 や排便・排尿障害は認めなかった.血清 AFP 値は 3.9 ng/mlと正常範囲内だった.瘻孔造影では腫瘤との連 続性を認めず,注腸検査では直腸壁はスムーズで壁外 性の圧排を認めた.仙尾部奇形腫の鑑別も踏まえて手 術適応と判断した.全身麻酔下にジャックナイフ位で 陥凹から色素を注入した.仙骨端から 3cm 正中切開 し,腫瘤を求めるも色素による染色を認めなかった. 尾骨を含め一塊に腫瘤を切除した.腫瘤との連続性は 確認できず瘻孔切除を行った.腫瘤内容は灰白色の粥 腫で毛髪等は認めなかった.術後合併症なく外来経過 観察している.病理診断で腫瘤壁は角化扁平上皮層に 被覆され,皮膚付属器を認めることから dermoid cyst と考えられた.presacral space は発生過程で 3 胚葉が 関与し,様々な先天性腫瘍の発生母地となる.小児外 科領域では奇形腫の好発部位として知られるが,奇 形腫,重複腸管,リンパ管腫なども鑑別に上がる. 胎生期の developmental error で生じる仙骨部嚢胞を developmental cystと定義し組織学的に dermoid cyst, epidermoid cyst,tailgut cyst に分類することが提唱さ れている.本邦における developmental cyst の報告で は小児例はわずかに自験例を含め 3 例で,成人でも 50例に満たない.成人例で悪性の報告もあり,先天 性陥凹との関係性も踏まえて文献的考察を報告する. JP1-3 臀部膿瘍を契機に発見された presacral cyst の 1 例

A case of childhood presacral developmental cyst 自治医科大学附属さいたま医療センター周産期科 益子貴行,池田太郎,門脇加奈子,高木健次郎

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Poster Session (May 24)

【背景】Fanconi 貧血は,骨髄造血幹細胞の遺伝学的な 機能欠損によって汎血球減少をきたす先天性造血不全 症候群で,低身長や小頭症,心奇形,腎低形成,網状 色素沈着など多様な合併奇形を呈することが知られて いる.今回私達は,Fanconi 症候群を合併した直腸肛 門奇形(直腸尿道瘻)の一例を経験したので文献的考 察を加えて報告する. 【症例】本例は在胎 34 週 0 日,体重 1,568 g で出生 し,低身長,心奇形,鎖肛,尿道下裂,停留精巣を 認めたため当院 NICU に搬送された.血液検査で白 血球 5040/μl,赤血球 192 万/μl,ヘモグロビン 8.4 g/ dl,血小板 5 万 /μl 等と汎血球減少を指摘され,染色 体断裂試験での脆弱性陽性所見より Fanconi 症候群と 診断された.日齢 2 に人工肛門を造設し,血球減少に 対して週 1∼2 回の輸血治療を継続しながら生後 3ヵ 月にて一旦退院とし,外来通院にて定期的輸血療法 を施行,生後 8ヵ月(体重 5.56 kg)にて鎖肛根治手 術(PSARP; posterior sagittal anorectoplasty) を 施 行 した.術前・術後の輸血療法により,出血・感染性 合併症を起こすことなく順調に回復した.同様に術 前準備を進めて生後 11ヵ月で人工肛門閉鎖術を施行 したが,術後に創傷治癒遅延と感染徴候(MRSA, Candida albicans検出)を認め,G-CSF 製剤および抗 菌剤(MEPM,TEIC,MCFG)の投与を要した.鎖 肛根治術後の排便機能が安定したことを確認した後, 1歳 7ヵ月で小児血液疾患専門施設にて非血縁ドナー からの同種骨髄移植術を受けた.術後経過は順調で, 三血球系統(白血球,赤血球,血小板)はいずれも正 常域を維持しており,3 歳 3ヵ月の現在,排便機能は 良好で,便秘や失禁なく,毎日 2 回程度自力で有形便 を認めている. 【考察】本症例では,出生直後より新生児科,小児外 科,小児血液疾患専門医が各担当疾患の治療至適時期 に関する情報を相互提供しながら診療計画を立案し た.その際,鎖肛に対する人工肛門造設状態での骨髄 幹細胞移植術ならびに心奇形根治術の回避が合併症を 未然に防止する上でのキープロセスとなった. JP1-6 Fanconi 貧血を合併した直腸肛門奇形患児に 対する造血幹細胞移植の至適時期について

Optimal timing of bone-marrow transplantation for Fanconi anemia with anorectal malformation

石川県立中央病院いしかわ総合母子医療センター小児外科 廣谷太一,吉村隆宏,松井亮太,下竹孝志 はじめに:便秘は小児の日常診療において頻度の高い 疾患であるが,器質的な原因を認めることは多くな い.一方,「便秘」を主訴に受診をする症例の中に, 便秘の定義に当てはまらない症例も存在する.我々 は,便性が正常であっても排便時に強い努責を伴う排 便困難症例に着目した.これらの症例では,注腸検査 で直腸上部が仙骨から前方に大きく離れて落ち込んで いる所見が見られることがあり,これを直腸の仙骨へ の固定不良と判定しており,これが排便困難の原因の ひとつと考えている.今回,固定不良が認められる排 便困難の症例 3 例に対し,腹腔鏡下直腸固定術を施行 し,全例で排便状態の改善がみられたので報告する. 症例 1:初診時に 4 歳男児.主訴は便秘で,便性はブ リストルスケールの 4 番程度と正常であるが,排便 時に非常に強くいきみ時間がかかり,痔核があり出血 を伴うとのことであった.痔核に対しては軟膏を使用 し,Mg 製剤で便を柔らかくし,座薬を使用し排便時 にいきまないよう指導したが,便性が柔らかくなって もいきみは続き,痔核も改善が見られなかった.注腸 造影検査で,直腸の固定不良を認めた.それ以外の明 らかな異常は認めなかった.19ヶ月間の保存的治療後 も症状が改善しないため,6 歳時に直腸脱に対する腹 腔鏡下直腸固定術に準じて手術を施行した.術後,努 責をかけずに排便可能となり,排便時間も短縮し,痔 核も消失した. 症例 2,3:初診時 3 歳男児,5 歳男児で,症例 1 と同 様に便性は通常だが,排便時に非常に強くいきみ痔核 を伴う.注腸造影検査で同様に直腸の固定不良を認め た.それぞれ 37ヶ月,10ヶ月の保存的治療でも改善 が見られないため,腹腔鏡下直腸固定術を施行し,改 善がみられた. 考察:直腸の仙骨面への固定不良は,排便困難の原因 となる可能性がある.直腸の固定不良があり保存的治 療が無効な症例に対しては,腹腔鏡下直腸固定術を考 慮すべきである. JP1-5 直腸の仙骨面への固定不良をともなう排便困 難に直腸固定術が有効であった 3 例

Three Cases of Effective Rectopexy for Defecation Disorder with Insufficient Fixation of the Rectum あいち小児保健医療総合センター小児外科 住田 亙,小野靖之,高須英見

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【はじめに】鎖肛治療の最終目標は,術後排便機能を 最良に保つことである.我々は排便機能再建の観点 から,瘻孔のある低位鎖肛症例に対し全例で ASARP (anterior sagittal anorectoplasty)術式を選択している.

今回,我々が行った ASARP 施行症例について検討した. 【症例】対象は過去 4 年間(2012 年以降)に ASARP を施行した瘻孔のある低位鎖肛症例全 12 例(男児 5 例,女児 7 例)で,ASARP 手術時平均月齢は 6.6± 4.9ヶ月(4d-19m)であった.肛門部に接して副陰嚢 や脂肪腫があった anocutaneous fistula の 3 例に対して は,新生児期に cutback 手術を行った後 ASARP を施 行した.術後合併症は軽度の創離開が 2 例でみられた が,いずれも処置なく自然に改善した.術後狭窄は全 例でみられなかった. 【考察】正常な排便のためには,直腸∼肛門が括約 筋の中心に存在することが重要である.このため ASARPによる再建において外括約筋背側係蹄の十分 な開排をした後,直腸を外括約筋が直腸全周を覆う位 置に配置する必要がある.また会陰腱中心と外括約筋 の形成不全を再建することも,術後排便機能を保つた めに留意しなければならない.加えて女児では腟,男 児では尿道に近接して直腸が前方へと屈曲・走行して おり,この形態が排便障害の原因となるため,腟や尿 道との間を十分に剥離したのち,屈曲を修復すること も重要となる.以上の観点から,各筋群を直視下に確 認・修復できる ASARP は,機能的・解剖学的な再建 を行う上で有用な術式と考えられる.今回検討した症 例は全例幼少であるため,術後の排便機能評価はまだ 十分でない.このため本術式による術後排便機能対す る正確な評価は今後の課題である. JP1-8 低位鎖肛に対する機能的・解剖学的な再建に 留意した ASARP 手術の検討

Review of anterior sagittal anorectoplasty for lower anorectal malformations in our 12 cases

国立成育医療研究センター臓器・運動器病態外科部外科 田原和典,矢野圭輔,小川雄大,朝長高太郎, 竹添豊志子,大野通暢,渡邉稔彦,渕本康史, 金森 豊 【はじめに】直腸肛門奇形患者に脊髄病変が合併する 確率は高い.スクリーニング検査を適切に行い,脊髄 係留症候群が有症状となる前に早期治療することは大 変有用である. 【対象・方法】2011 年 8 月から 2015 年 12 月までの 4 年 5 カ月に,当センターで直腸肛門奇形の治療を行っ た 27 症例のうち 10 例に対し,脊髄病変のスクリー ニングとして小児放射線科医による脊髄超音波検査を 施行した.検査施行時期は,生後 0 日∼274 日(中央 値 :5.5 日,平均値 : 54.6 日),直腸肛門奇形の病型診 断は,高位 3 例,中間位 3 例,低位 2 例,総排泄腔型 2例であった. 【結果】脊髄超音波検査を行った 10 例中,高位 1 例と 中間位 1 例(20%)に脊髄病変を認めた.高位症例は, 終糸脂肪腫と脊髄空洞症と診断され,MRI 検査で確 認後,小児脳神経外科医により脂肪腫摘出術を施行さ れた.中間位症例は,硬膜嚢内病変の可能性を指摘さ れたため,MRI 検査を行い脊髄空洞症と診断して経 過観察中である. 【考察】低位脊髄円錐(第二腰椎下縁より低位)・脊髄 脂肪腫・終糸脂肪腫などの脊髄病変は,直腸肛門奇形 の 30% 以上に合併するとされる.低位鎖肛であって も稀ではないため,基本的に直腸肛門奇形全例に脊髄 病変のスクリーニングを行うべきと考える.脊髄超音 波検査は,鎮静が不要で簡便に施行可能である.しか し,椎弓棘突起の癒合・骨化が進行する生後 3∼4 か 月以降での評価は困難となるため,至適時期を逃さず 検査することが重要である.そして,超音波検査で境 界域の評価であった場合や,スクリーニング未実施の 年長児においては,積極的に脊髄 MRI 検査を実施す べきである. JP1-7 直腸肛門奇形症例に対する脊髄病変スクリー ニング:脊髄超音波検査の経験

Screening of spinal lesions with anorectal malformation by ultrasonography

あいち小児保健医療総合センター小児外科1) あいち小児保健医療総合センター放射線科2) 高須英見1),小野康之1),住田 亙1),金川公夫2)

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Poster Session (May 24)

【背景】28 年前,筆者は後腸形成不全の 1 症例を経験 した.出生直後に人工肛門,膀胱瘻を造設したが,泌 尿器科で間欠的導尿ができる膀胱皮膚瘻を再造設し, 小児外科は浣腸時にのみ排便する経腹直筋的単口式人 工肛門を考案し,造設した.整容性を主目的に手術創 の形成術および外陰部形成術を行った.筆者はこれ らの手術で患児の QOL は改善したと考え,種々の学 会・研究会で報告した.しかし,母親はこれらの手術 には関心を示さず,将来,患児は結婚できるか,子ど もが産めるか,幸せになれるかと筆者に聞いた.質問 に答えられなかった筆者は,目に見える病気を治すこ とと患児を幸せにすることは全く別であること,手術 で治せる病気が患児の人生の中のどこに位置している かを知らないと患児を幸せにすることはできないこと を学んだ. 【方法】同じ病気を持つ子の親を紹介して欲しいとい う母親の希望を受けて永久ストーマをもつオストメイ トの会(たんぽぽの会)を立ち上げた(1993 年).こ れに先立って,近畿小児ストーマ研究会を創設(1990 年)し,小児のストーマ専門外来を開設(1992 年) した.また,オストメイトを参加させるために難病の 子ども支援全国ネットワークが主催するサマーキャン プやそらぷちキッズキャンプなどの立ち上げに参加し た. 【結果】たんぽぽの会は設立 20 周年を迎え,記念誌を 発行した.その中で,トランジション世代を迎えたオ ストメイトは,サマーキャンプは一緒に遊び,風呂に 入り,料理を作り,跡形付けを通して同じ悩みを生き る友だちを作り,生きる価値を再発見する場を与える ことができ,自分の人生になくてはならない場所だと 書いている 【考察】サマーキャンプの対象者には,いわゆる難病, 肢体不自由児,知的障害児,小児がん患者あるいはオ ストメイトなどが含まれるが,求めるものはそれぞれ 全く異なっており,キャンプのあり方もそれに合わせ て多様でなければならない. JP1-10  重 症 直 腸 肛 門 奇 形 の ト ラ ン ジ シ ョ ン と Narrative Based Medicine (NBM) ∼オストメイトと

サマーキャンプ考∼

Transition of Inoperable Imperforate Anus and Narrative Based Medicine ~ Summer Camp for Ostomates~ 和歌山県立医科大学第 2 外科 窪田昭男,三谷泰之,渡邉高士,瀧藤克也,山上裕機 【背景/目的】鎖肛根治術後の巨大直腸症(以下,本 症)は,便秘や便失禁の原因となる.緩下剤,浣腸に よる排便管理が無効なら外科的治療の適応となるが, 標準術式は確立していない.本症に対して拡張近位 部を切除し遠位部をテーパリングする(resection and tapering,以下 RT)術式を 2 例に施行したので,文献 的考察を加えて報告する. 【症例】症例 1:男児,直腸尿道瘻.39 週,2700g に て出生.日令 1 に人工肛門造設,6ヶ月時に PSARP, 1才時に人工肛門閉鎖を行った.1 才 6ヶ月から 4 才 まで外来通院が中断し,本症を呈すようになった.ブ ジー,緩下剤,摘便,洗腸を徹底したが,改善しな かったので,8 才時に RT を行った.現在術後 7 年が 経過し,緩下剤なく自然排便がある.症例 2:女児, 肛門膣前庭部瘻.37 週,2556g にて出生.日令 1 に cutback術,6ヶ月時に Potts 術を施行した.術後排便 困難があり瘻孔も再燃したため,9ヶ月時に人工肛門 を造設した.その後瘻孔が自然閉鎖したので,1 才時 に人工肛門を閉鎖したが,排便困難は続き次第に本症 を呈するようになった.週一回の洗腸を要するほど 排便管理は困難であったので,2 才 3ヶ月時に RT を 行った.術後,排便は良好である. 【考察】本症では拡張部に便塊が貯留するため,保 存的治療の効果は乏しい.巨大直腸症に対する術式 として Pena らの resection and end-end anastomosis, Gladman らの vertical reduction rectoplasy などが有効 な術式として報告されている.自験例では,RT を行 い症状は改善した.RT も簡便で有効な術式と考える. 【結語】RT を行った本症 2 例を報告した.本症の症 状緩和には早期の拡張部切除が必要であり,RT も術 式の選択肢であると考える. JP1-9 鎖肛根治術後の巨大直腸症:2 手術症例の経験 Megarectum after Anorectal Malformation Repair: Report of Two Cases

沖縄県立中部病院小児外科 福里吉充

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【目的】鈍的外傷による肝損傷では,遅発性の仮性動 脈瘤形成とその破裂が起こることが知られている. この遅発性の仮性動脈瘤形成の有無を評価に,多く の施設では,造影 CT が用いられている.ヨーロッパ 超音波ガイドラインではその有用性から外傷の初期 およびフォローアップにおける造影超音波(Contrast Enhanced Ultrasound : CEUS)が推奨されている.我々 は,2013 年 10 月より肝損傷後のフォローアップの評 価に造影超音波を導入した.同日に撮影した造影 CT と造影超音波の画像所見を対比し,正確な画像評価が 行えているかを検討したので,報告する. 【方法】2013 年 10 月からの現在までの約 2 年間に経 験した 5 例の小児の外傷性肝損傷症例を対象とした. 損傷程度は,Ib が 1 例,IIIa が 1 例,IIIb が 3 例であっ た.平均年齢は 9.4 歳(8∼11 歳),性別は女児が 2 例で男児が 3 例であった.初回は通常通り造影 CT で 活動性出血の有無を評価した(1 例で活動性出血を認 め,経皮血管的動脈塞栓術を施行).当院では,受傷 7日目に造影 CT を施行しているが,同日にソナゾイ ドを用いた造影超音波検査を併せて施行した. 【結果】受傷後 7 日後の造影超音波では,非造影超音 波と比べ,損傷部を明瞭に観察することが可能であっ た.同日に撮影された造影 CT における損傷形態や血 管構造などの評価,造影超音波検査でも同様のものを 得ることが可能であった.造影超音波検査では,同時 に観察しうる範囲が限られるため,損傷部位が明瞭で ないと評価できない可能性が示唆された. 【考察】造影超音波を肝損傷に対する亜急性期の合併 症の検索手段として用いた.今回経験した 5 例には, 血管損傷を伴い症例であったが,損傷部は明瞭であ り,血管構造は容易に同定できたため,遅発性の仮性 動脈瘤形成の評価に有用であると考えた.今後症例を 重ねて,血管損傷がどのように検出されるかを検証す る必要がある. 【結論】造影超音波によって損傷部が明瞭になり,損 傷の局在が明らかであれば血管損傷が指摘できる. JP1-12 小児肝外傷における造影超音波検査の有用 性∼第 2 報∼

The Utilitty of Contrast Enhanced Ultrasound in Pediatric Hepatic Injuries

聖マリアンナ医科大学小児外科1) 聖マリアンナ医科大学放射線科2) 聖マリアンナ医科大学救急医学3) 島 秀樹1),藤川あつ子2),長江秀樹1),脇坂宗親1) 宮川天志2),齋藤祐貴2),松本純一3),中島康雄2) 平 泰彦3),北川博昭1) 【はじめに】総排泄腔奇形(以下,本症)では,症例 ごと骨盤内臓器の解剖学的なバリエーションが豊富で あり,また併存する合併奇形も様々である.そのため 手術時期や術式の決定に迷うことも少なくない.今回 われわれは,当院における本症の治療成績を検討し, 治療戦略につき考察した. 【方法】 2006 年から 2015 年の間に当院で本症に対 する根治術を行った症例を,後方視的に検討した. 当院では原則的に,肛門形成と同時に膣形成を行っ ている.肛門形成に関しては全例 posterior sagittal approachで,必要に応じて腹部操作も行う.共通管の 長さにより total urogenital mobilization (TUM)や腸管 間置による造膣術を選択している.手術時期,術式お よび術後の排便・排尿機能を検討した.また他の合併 奇形とその治療についても検討した. 【結果】上記期間内に本症 10 例に対し根治術を行っ た.手術時期は 6 か月から 2 歳 4 か月(平均 12.8 か 月)であった.術式は TUM が 4 例,腸管間置が 5 例, 膣形成が 1 例で,開腹または腹腔鏡による腹部操作を 9例に必要とした.Mitrofanoff による腹壁導尿路を 2 例に作成した.術後のフォローアップ期間は平均 61.2 か月であった.排便管理では浣腸が必要なのは 6 例, テレミン座薬 1 例,ラキソベロン 1 例,下剤不要が 1 例と不明 1 例であった.排尿機能では自排尿が 5 例, CIC 4例(内 2 例は腹壁導尿路),バルーン留置が 1 例であった.合併奇形では 5 例に心室中隔欠損があ り,そのうち 1 例で手術を必要とした.脊髄係留症候 群に対する係留解離術を 2 例に行った. 【まとめ】本症に対する手術だけでなく,他の合併奇 形に対する治療も考慮し,個々の症例に応じた手術時 期や術式を計画する必要がある.また術後は長期的観 点からフォローを行う必要がある. JP1-11 総排泄腔奇形の治療戦略

Strategy for treatment of cloacal malformation あいち小児保健医療総合センター小児外科1) あいち小児保健医療総合センター泌尿器科2) 小野靖之1),高須英見1),住田 亙1),吉野 薫2) 久松英治2)

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Poster Session (May 24)

【はじめに】小児の外傷性膵損傷に対する治療方針は 標準的治療が確立されていないのが現状である.特に 膵管損傷を伴う外傷性膵損傷は緊急 ERP を施行する ことが推奨されているものの,小児では手技的に困難 であることも多く,積極的に施行されていない. 当院では外傷性膵損傷は保存加療を原則とし,また 超音波および CT 検査で主膵管損傷が疑われた場合に は,早期 ERP を施行し,膵管損傷の診断およびステ ント留置による経乳頭ドレナージを施行してきた. 【対象】当センターにおいて 2010 年 4 月から 2015 年 12月までに診断された外傷性膵損傷例 8 例を対象と した.これらの治療経過,成績を検討した. 【結果】発症年齢は 4 歳 10ヶ月∼11 歳 2ヶ月(中央値 9歳 10ヶ月),全例男児であった.膵損傷分類はⅠ型 4例,Ⅲa 型 1 例,Ⅲb 型 3 例.Ⅰ型に関しては全 例保存的に経過観察を行い,入院期間は平均 16.8 日 であった.主膵管損傷が疑われた 4 症例に対しては 全例に ERP を行い,3/4 例で主膵管断裂の所見であっ た.主膵管断裂症例の 1 例に尾側膵管までのステント 留置,2 例に経乳頭的ドレナージを行った.仮性膵嚢 胞形成は 4 症例に認め(Ⅰ型 1 例,Ⅲb 型 3 例,嚢胞 最大径は 28∼192mm),経過観察の末,1 例は自然退 縮,1 例はステント留置後に消退した.増大を認めた 2例は共に膵管断裂例であり,これらに対しては胃膵 嚢胞吻合術を行った. 【結語】外傷性膵損傷の急性期治療は全例保存的加療 が可能であった.膵管断裂が疑われる症例では,早期 ERPを施行し,膵管断裂を認める場合には,膵管ス テント留置,経乳頭的ドレナージにより,保存的治療 が完遂できた.膵管断裂が疑われる症例では,小児患 児においても,早期 ERP の施行を積極的に行うこと は有用と考えられた. JP1-14 当科における外傷性膵損傷に対する治療戦

The management of blunt pancreatic trauma 東京都立小児総合医療センター外科 加藤源俊,小森広嗣,春松敏夫,馬場優治,山本裕輝, 廣部誠一 【はじめに】ダメージコントロール手術(DCS)とは, 外傷死 3 徴(代謝性アシドーシス,血液凝固異常,低 体温)が存在するときに呼吸循環動態安定のための行 われる手術で,根治術は二期的に行なわれる.今回, DCSにより救命が可能であった小児外傷性肝損傷症 例を経験したので報告する. 【症例】8 歳女児.雪塊を滑って遊んでいるときに 間違って道路に飛び出し,自家用車に上腹部を轢か れる.近医搬送時,顔面蒼白.脈拍 157 bpm,血圧 109/71 mmHg,GCS15,Hb10.8 g/dl,腹部造影 CT で 肝損傷 IIIB であった.輸血が開始され 3 次救急施 設へ搬送されたが,TAE 施行医不在のため当院へ 搬送となる.受傷後 4 時間以上経過して到着.到着 時 GCS は 15,34.6 ℃の低体温,血小板減少(1.7× 104 /μl),凝固時間の延長(% プロトロンビン時間 19%),アシドーシス(pH 7.131,BE -15.08 mmol/l, Lactate 7.2 mmol/l)を認めた.また,腹部の緊満が顕 著で下肢の循環不全を認める Abdominal compartment syndromeを呈し,DCS の方針とした.腹部正中切開 にて Intra-aortic balloon occlusion を併用し,肝下面か らの出血に対してパッキングを行い,腹部は閉創せ ずビニール布で被覆した.手術時間 1 時間 31 分,出 血量 1500 ml,輸血量 1920 ml.その後の TAE にて内 側区域枝の末梢枝と後区域枝から造影剤の血管外漏 出を認めこれらを塞栓.ICU にて全身管理を継続し, 第 2 病日肝壊死が明らかとなり,全身状態が安定した ため,肝拡大後区域切除を実施した.手術時間 4 時間 11分,出血量 240 ml,輸血量 520 ml.第 10 病日 ICU を退室し一般病棟へ移動.経過概ね良好にて第 41 病 日に近医転院となった. 【結語】本例では,循環動態不安定な肝損傷 IIIB で あったが DCS を施行することで,低侵襲な TAE が可 能となり,待機的肝切除を安全に施行することができ た.小児肝損傷に対しても,DCS に基づく治療は有 用と考えられた. JP1-13 ダメージコントロール手術にて救命し得た 鈍的肝外傷の 1 例

Damage control surgery for blunt hepatic injury in a pediatric patient

新潟大学大学院医歯学総合研究科小児外科学分野1) 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科2) 小林 隆1),窪田正幸1),荒井勇樹1),大山俊之1) 横田直樹1),三浦宏平2),坂田 純2),若井俊文2)

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【症例】4 か月 男児 【現病歴】3 か月時に前医で皮膚黄染,眼球結膜黄染 を指摘されていた.4 か月時不機嫌が継続するため前 医受診した.黄疸が遷延しているため血液検査を施行 され,肝酵素の著明な上昇と凝固異常を認めたため当 院へ紹介となった. 【経過】入院時血液検査は T.Bil/ D.Bil 4.8/4.0 mg/dl, ALT/AST 752/616 IU/L,PT% 9.5%,PT-INR 4.66 また CMV,EBV を含めたウイルス肝炎検査は陰性であっ た.腹部 US で胆嚢を認めたものの,十二指腸液検査 で胆汁排泄は明らかではなかった.肝・胆道シンチで 胆嚢の描出があるものの,腸管の描出なくⅠ型(総胆 管閉塞)胆道閉鎖を完全に否定できない所見であっ た.そのため MRCP を施行した.胆嚢とともに正常 な胆道が描出され,胆道閉鎖症は否定された.胆汁 うっ滞性疾患鑑別のため単孔式腹腔鏡下肝生検を施行 した.腹腔内所見は肝臓に胆汁うっ滞所見を認めた が,胆嚢・総胆管は正常所見であった(胆道造影は施 行せず).組織標本は BSEP 免疫染色で BSEP の発現 が消失しており PFIC2 と考えられた.また PFIC2 の 原因遺伝子 ABCB11 において変異が確認できた(変 異の詳細は精査中).患児は現在 10 か月であるが,胆 汁うっ滞と肝逸脱酵素の高値は持続している.掻痒感 はコレスチミドでコントロール可能な状態である.今 後肝移植等の施行時期が問題となる. 【まとめ】PFIC は比較的稀な病態で,乳児期に発症し 胆汁うっ滞性肝硬変に進行する,常染色体劣性の慢性 肝内胆汁うっ滞症である.胆道閉鎖症との鑑別が重要 で確定診断には,胆道造影や肝生検が必要となる.本 症例では MRCP で正常な胆嚢・胆道が描出されたた め,胆道造影は回避可能であった.胆汁うっ滞性疾患 の鑑別における MRI の役割を若干の文献的考察を加 え報告するとともに,今後の肝移植等の治療方針につ いて検討したい. JP2-2 胆道閉鎖症との鑑別を要した進行性家族性肝 内胆汁うっ滞症 2 型の 1 例

A case of Progressive familial intrahepatic cholestasis type2 (PFIC2) 山口大学医学部附属病院第一外科1) 山口大学大学院医学系研究科小児科学分野2) 桂 春作1),濱野公一1),東 良紘2),橘高節明2) 水谷 誠2),大賀正一2) 胎児期に肝門部嚢胞性病変を指摘された場合,先天性 胆道拡張症 (CBD)と胆道閉鎖症 (BA)が鑑別に挙げ られるが,出生後の精査によっても確定診断が困難な ことが少なくない.今回,CBD との鑑別が困難であっ た BA の 1 例を経験したので報告する.症例は,在胎 20週で肝門部に嚢胞を指摘され,在胎 39 週 4 日,出 生体重 2796g で出生した女児.出生後の腹部超音波 検査では総胆管は嚢胞状に拡張し最大径は 1.5cm で あり,戸谷Ⅰa 型の CBD が疑われた.待機手術とし て経過観察されていたが,直接ビリルビンの上昇,灰 白色便および肝機能障害の増悪が見られたため,日齢 22で開腹手術を施行した.肝表面は凹凸不整で,胆 汁うっ滞肝の様相を呈していた.術中胆道造影検査で は胆嚢と連続して嚢胞状に拡張した総胆管が造影され るのみで,三管合流部より肝側の肝管や肛門側の胆管 は造影されず,膵管や十二指腸も造影されなかった. 手術所見によりⅢ-d-ν 型の BA の診断で,肝門部空腸 吻合術を施行した.術後の減黄は順調であり,肝機能 障害の増悪も認められず,日齢 50 で退院となった. 病理組織所見では,胆嚢および嚢胞状の胆管壁が高度 のうっ血ならびに線維性肥厚を呈し,肝門部結合織内 の微小胆管径は約 100μm であった.本症例は,総胆 管の拡張により CBD との鑑別が困難であったが,肝 機能障害の増悪により新生児期に手術となり,術中所 見から BA の診断となった比較的まれな 1 例である. BAは生後 1ヶ月以降に診断され,生後 2∼3ヶ月で手 術となる例が多く,新生児期に手術に至る症例は日本 胆道閉鎖症研究会における全国集計でも全体の約 6% と少ない.本症例のように,CBD が疑われている症 例においても,肝機能障害の増悪や黄疸の進行を来し た場合は,BA を念頭に置いて経過観察をすべきであ ると考えられた. JP2-1 先天性胆道拡張症と鑑別が困難であった胆道 閉鎖症の 1 例

A case of Biliary Atresia which was difficult to distinguish from Congenital Biliary Dilation

弘前大学医学部附属病院小児外科

木村俊郎,須貝道博,石戸圭之輔,小林 完, 斎藤 傑,袴田健一

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Poster Session (May 24)

Liver hanging maneuver (以下 LH) は,安全で正確な 肝切除を行うための手段として,成人外科領域では多 くの施設が取り入れ適応が拡大している.一方,小児 外科が扱う固形腫瘍の中でも肝芽腫は,外科手術によ る腫瘍完全摘出の有無により予後が大きく分かれるた め,手術の安全性はもちろんのこと切離線の正確さが 要求される.肝芽腫はその特徴から発見時には巨大腫 瘍であることが多く,肝脱転操作に伴う出血,腫瘍破 裂,循環動態の変動をきたすリスクが高い.当科では 成人の肝切除術を非常に多く経験しており,肝胆膵高 度技能医とともに小児の拡大肝切除術も積極的に行っ ている.当科における LH を用いた小児肝切除症例を 供覧し報告する. 症例 1 は生後 3 か月の女児.2 か月時に腹部腫瘤にて 発症,AFP130610ng/ml,腹部 CT で肝右葉に最大径 14cmの腫瘍を認めた.生検後,肝芽腫(stage Ⅱ)の 診断で術前化学療法を 4 クール施行し,腫瘍径は 6cm に縮小するも中肝静脈と接していたため同静脈も含 め,LH を用いた拡大右葉切除術を生後 5 か月時に施 行した.症例 2 は 1 歳 2 か月の男児.経口摂取不良と 腹部膨満で発症し,精査で AFP33961ng/ml,腹部 CT で肝右葉に最大径 13cm の腫瘍を認めた.生検で肝芽 腫(stage Ⅰ)の診断で術前化学療法 2 クール後,腫 瘍は 7 ㎝に縮小し,1 歳 5 か月時に LH を用いた右葉 切除術を施行した.2 例とも術後経過良好である. 肝切除術におけるデバイスや技術の進歩により,小児 における肝芽腫に対する外科的治療は幅が広がり,成 人外科と同様の器具でストレスなく完遂することが可 能である.LH により下大静脈前面にテーピングをす ることで肝切離の方向がわかりやすく,切離面からの 出血を減らせることから,小児における肝切除術でも 安全性と正確さを高める事ができ,LH は非常に有効 である. JP2-4 小児外科領域で hanging maneuver を用いた 肝切除術の経験

Hepatectomy of experience with hanging maneuver in pediatric surgery 岩手医科大学外科学講座 小林めぐみ,水野 大 【はじめに】乳児胆汁うっ滞(以下,本症)において, 確実に除外診断を行わねばならない疾患は胆道閉鎖症 (以下,BA)である.しかし BA の除外診断において, 感度・特異度ともに優れた検査については議論の余地 がある.つまり,各種検査を総合的に判断しても BA が否定できない場合は,術中胆道造影による確定診断 が必要である.今回,当院にて経験した本症 7 例につ いて,若干の文献的考察を加えて報告する. 【対象と方法】2011 年から 2015 年の 5 年間で,当院 へ精査・加療目的に紹介のあった本症 7 例を対象と し,後方視的に検討を行った.紹介時日齢,紹介時の 便色カラー,採血結果,腹部エコー,肝胆道排泄シン チグラフィ−(以下,胆道シンチ)などについて検討 を行った. 【結果】対象は男児 4 例,女児 3 例であり,紹介時日 齢の中央値は 59 日(35∼75 日)で,灰白色便や閉塞 性黄疸が主訴であったが,1 例のみ急性硬膜下血腫の 診断で ICU への緊急入院であった.全症例において, 便色カラー,採血および腹部エコーが施行され,7 例 中 4 例に胆道シンチが施行された.これらの検査と臨 床経過にて BA が否定できなかった 2 例に対し,術中 胆道造影を施行し BA と確定診断,葛西手術を施行し た.今回,最終診断が BA ではない症例に対し術中胆 道造影を施行することはなかった.便色カラー,腹部 エコーおよび胆道シンチの各検査における,BA 診断 に対する感度と特異度は,それぞれ 100% と 40%, 100%と 60%および 100% と 67%であった.最終診断 は,BA2 例,サイトメガロウィルス肝炎 2 例,アラ ジール症候群疑い 1 例および新生児肝炎 2 例であっ た. 【まとめ】当院で経験した本症 7 例について検討した. 本症の鑑別診断において,胆道シンチが,BA 診断に 対する感度と特異度に若干優れているような傾向が認 められたが,検査手技の簡便さ,患児への侵襲などを 加味すると,決して第一選択となりうる検査ではない と思われた.従って,便色カラー,採血結果および腹 部エコーを総合的に判断した後,胆道シンチ施行の適 応を検討することが妥当と思われた. JP2-3 当院における乳児胆汁うっ滞 7 例の検討 Seven patients’ study of infantile cholestasis 近江八幡市立総合医療センター小児外科1) 京都府立医科大学小児外科2)

津田知樹1),髙山勝平1),井岡笑子1),田中智子2) 青井重善2)

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胆道閉鎖症(以下 BA)においては早期に治療を行う 事が大切で,近年は生後 30 日以内に治療された症例 の成績が良好との報告がなされている.BA の診断に 腹部超音波検査(以下 US)は有用であるが,TC sign は肝繊維化がある程度進行しないと陽性を示さないと されている.今回,当院で葛西手術を施行した BA 症 例について,手術日齢と TC sign 陽性率との関係,お よび TC sign 陽性 / 陰性と治療成績との関係について 調べ,TC sign が早期症例でも有用な所見となるかに ついて検討した.  2005 年から 2014 年までに当院で葛西手術を施行し た BA 症例のうち,Ⅰ -cyst 型を除いた 31 例を対象 とした.術前腹部 US において,TC sign は 21/31 例 (67.7%)で陽性であった.手術時期によって E 群(日 齢∼60 日),L 群(日齢 61 日∼)に分けたところ, 腹部 US での TC sign 陽性率は,E 群:72.7%(8/11), L群:65%(13/20)と両群間で有意差を認めなかった (p=1.00).続いて TC sign 陽性症例(TCP 群)と TC sign陰性症例(TCN 群)に分けたところ,術後 3ヶ 月時の黄疸消失率は TCP 群:50%(9/18),TCN 群: 30%(3/10)で有意差なく(p=0.43),術後 1 年自己 肝生存率も TCP 群:73.7%(14/19),TCN 群:77.8% (7/9)と有意差を認めなかった(p=1.00). 【結語】TC sign の陽性率は手術日齢で変わらず,TC sign陽性症例の治療成績は TC sign 陰性症例と同等で あった.TC sign は早期症例でも有用と思われた.た だし,今回の検討で生後 30 日以前の手術症例は 1 例 のみであった.より早期の診断における有用性は今後 検討を要する. JP2-6 胆道閉鎖症早期手術症例における術前腹部超 音波の TC sign の有用性についての検討

Is the TC sign of abdominal US useful for the diagnosis of early-detected biliary atresia?

兵庫県立こども病院小児外科1) 兵庫県立こども病院放射線科2) 兵庫県立こども病院病理診断科3) 遠藤耕介1),三島泰彦1),玉城昭彦1),森田圭一1) 大片祐一1),久松千恵子1),福澤宏明1),横井暁子1) 赤坂好宣2),吉田牧子3),前田貢作1) (目的)胆道閉鎖症(以下 BA)の早期治療を目指し て,便色カラーカードなどが導入されている.当科外 来に BA 疑いにて受診した最近 10 年間の症例につい て検討し,早期発見,早期手術の方策について考察し た.また BA 症例の予後などについて検討したので報 告する. (対象・方法)2006 年 10 月 1 日から 2015 年 11 月 30 日までの 10 年 2ヶ月間に遷延性黄疸,便色異常,肝 機能異常,尿中硫酸抱合型胆汁酸(以下 USBA)高値 を主訴に当科受診した症例.初診日齢・便色・USBA・ 千葉のスコアー・超音波検査・最終診断について,後 方視的に検討した. (結果)症例は 52 例(男児 35 例女児 17 例)初診時日 齢:生後 4 日∼120 日(中央値 45 日),便色カード記 載 11/19(57.9%),USBA (14 例):13.17∼755.86μmol/g Cr( 中 央 値 99.16,BA は 全 例 55μmol/g Cr 以 上), 最終診断:新生児肝炎 19 例,BA 15 例,新生児黄 疸 12 例,新生児仮死後胆汁うっ滞 2 例,Niman Pick C型 1 例,アラジール症候群 1 例,ロタウイルス感 染 1 例,筋ジストロフィー 1 例であった.診断:超 音波検査(①空腹時胆嚢長径 20mm 以下あるいは内 腔径 3mm 以下②空腹時と哺乳後で胆嚢径の変化③ Triangular cord sign 有の 3 項目の 2 つ以上を BA とし た)Specificity97.2% Sensitivity87.5% Accuracy 94.2%, 千葉のスコアー(測定された項目のみで計算)Specificity 89.7% Sensitivity91.7% Accuracy 90.2%であった.BA 症例の減黄率(T.Bil 1.2mg/dl 以下)全体で 80%(手 術日齢:生後 100 日未満 91.7%,生後 100 日以上 33.3%) (考察)初診時日齢は中央値で 45 日と 60 日以内であ るが,生後 120 日と極端に遅い症例(便色 3∼4)が 存在する.極端に遅い症例をなくすためには,BA 症 例は USBA が高値であり,便色正常(便色 5∼7)以 外の症例では USBA を測定することも侵襲がなくス クリーニングを 1 歩進める意味でも有用と考える.ま たわれわれの結果では超音波検査と肝機能(千葉のス コアーも含めて)の組み合わせで,False positive も, False negativeもなかった.超音波検査と肝機能検査 組み合わせて,繰り返し施行することが診断には有用 である. JP2-5 最近 10 年間に胆道閉鎖症が疑われた症例の 検討

Infants suspected of Biliary atresia : 10 years experience 広島市立広島市民病院小児外科1)

NPO法人中国四国小児外科支援機構2)

秋山卓士1,2),三宅知世1),上野 悠1),向井 亘1,2) 佐伯 勇1),今治玲助1)

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Poster Session (May 24)

目的:胆道閉鎖症の病理所見と予後の報告の結果は 様々である.今回我々は肝の線維化と門脈域内胆管数 に注目して検討した. 方法:1976 年から 2009 年までの 33 年間に当院で葛 西手術を施行し,同時に肝生検が行われた胆道閉鎖症 32例を対象とした.術後肝移植あるいは死亡群を A 群,自己肝生存群を B 群とした.初回手術時の肝生 検組織評価と術後 1 年 (A1 群 vs B1 群),3 年 (A3 群 vs B3群) および 9 年 (A9 群 vs B9 群) の時点での自 己肝生存率との関連性を検討した.肝生検組織は肝線 維化の程度,Portal-central vein bridging (P-C bridging) の有無,および門脈域内胆管数と門脈域面積比 (Bile duct in portal canal / Area of portal canal ; BDP ratio) を 評 価 し た. 肝 線 維 化 は Portal-portal bridging (P-P bridging) < 50% を Grade 1,> 50%を Grade 2,偽小 葉化がみられるのを Grade 3 とした.統計学的解析は Mann-Whitney U test,Student T test および Cochran-Armitage trend testを行い,有意差を P < 0.05 とした. 結 果 : A1 群 は 9 例,B1 群 は 23 例,A3 群 は 14 例, B3群は 18 例,A9 群は 15 例,B9 群は 15 例であった. 平均手術日数は 83.0 ± 27.3 日で,手術日齢が 90 日 を超えたのは 31.3%に認めた.観察から脱落した症例 は術後 4 年で 1 例,術後 7 年で 1 例であった.A1 群 vs B1群 = 2.4 ± 1.5 vs 4.6 ± 2.4 (P = 0.01),A3 群 vs B3群 = 2.6 ± 1.4 vs 5.1 ± 2.5 (P < 0.01),A9 群 vs B9群 = 3.0 ± 2.2 vs 4.9 ± 2.5 (P < 0.05)とすべての 群で有意差を認めた.肝の線維化および P-C bridging の有無では差を認めなかった.もっとも差を認めたの は術後 3 年の BDP ratio で ROC 曲線を作成すると, カットオフ値は 3.0 であった.初回手術日齢は BDP ratio < 3.0 で 82.5 ± 28.6 日,>3.0 で 83.7 ± 28.2 日 と差はなかった. 結語:肝線維化よりも BDP ratio は胆道閉鎖症の予後 と相関した.BDP ratio は手術日齢によらず,胆道閉 鎖症初回手術時に評価することが予後判定に有用であ る可能性を認めた. JP2-8 胆道閉鎖症肝組織の門脈域内胆管数は自己肝 生存率に関与するか?

Relation between amount of bile ducts in portal canal and outcomes in biliary atresia

聖マリアンナ医科大学外科学小児外科1) 聖マリアンナ医科大学病理学2) 大林樹真1),田中邦英1),眞鍋周太郎1),大山 慧1) 長江秀樹1),島 秀樹1),佐藤英章1),古田繁行1) 脇坂宗親1),小池淳樹2),高木正之2),北川博昭1) 【目的】胆道閉鎖症(以下,BA)では早期手術が重要 で,そのためには適切な術前診断法の選択が求めら れる.日本胆道閉鎖症研究会の集計では,全国で採 用されている主な術前検査法は,超音波検査(以下, US),十二指腸液検査(以下,DFS),肝胆道シンチ グラム(以下,HBS),MRI,CT,ERCP などである が,実際に組み合わされる検査法は施設ごとにまちま ちであった.今回これらの中でとくに採用頻度の高 かった US,DFS,HBS について,システマティック レビューとメタ解析を行い,BA を疑われた患児に対 するこれらの術前検査法の精度を検討した. 【方法】US,DTT,HC について PubMed・医中誌を 2015年 6 月までそれぞれ系統的文献検索を行い,感 度(SN),特異度(SP),陽性的中率,陰性的中率 を計算可能な観察研究を検索した.Meta-analysis of diagnostic accuracyを用いた bivariate model でランダ ム効果モデルによる HSROC 解析を行った.なお,統 計ソフトは R 3.2.3 を使用した. 【結果】系統的文献検索の結果,関連する論文は,US 404件,DFS 25 件,HBS 135 件で,これらのうち解 析可能な観察研究は,US 25 件,DFS 3 件,HBS 18 件であった.US は,AUC 0.958,SN 0.760 (95% 信頼 区 0.619-0.861),false positive rate (FPR) 0.045 (95% 信頼区間 0.024-0.081).DFS は,AUC 0.98,SN 0.952 (95% 信頼区間 0.857-0.985),FPR 0.055 (95% 信頼区 間 0.021-0.133).HBS は,AUC 0.914,SN 0.916 (95% 信 頼 区 間 0.874-0.944),FPR 0.327 (95% 信 頼 区 間 0.244-0.423). 【結論】US,DFS,HBS の AUC いずれも高値であり, 各検査法は有用であった.これらを組み合わせて行う ことにより,さらに BA の診断精度が向上する可能性 があるものと思われた. JP2-7 胆道閉鎖症に対する術前検査法の検討:シス テマティックレビューとメタ解析

Preoperative examination in biliary atresia: a systematic review and meta-analysis

東北大学病院小児外科1) 久留米大学病院病理診断科・病理部2) 国立成育医療研究センター肝臓内科3) 東京都立小児総合医療センター外科4) 埼玉県立小児医療センター外科5) 田中 拡1),佐々木英之1),谷川 健2),工藤豊一郎3) 伊藤玲子3),小森広嗣4),岩中 督5),仁尾正記1)

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【 目 的】 当 院 で の 葛 西 術 30 例 の 成 績 は, 減 黄 率 87%,自己肝生存 86%で,肝門部脱転,結合織牽引 の視野で,拡大郭清した結合織の辺縁に腸粘膜が密着 するよう細かく縫合糸をかける術式(以下本法)が有 用と考えており,その成績を検討した. 【対象・方法】2004 年から 2015 年まで胆道閉鎖症に て根治術を行った症例は 33 例(男 10 例,女 23 例). I型 5 例,III 型 28 例.30 例で葛西術(本法)を施行, 3例で肝管空腸吻合を施行した.本法を行った 30 例 を対象に手術関連合併症,減黄率,胆管炎合併率につ いて検討した. 【結果】手術時日齢は平均 62 日(29-179 日).手術時 間平均 386 分,出血量平均 127ml,手術侵襲マーカー ( 術 後 ピ ー ク 値): 平 均 WBC 14015/μl,CRP5.11mg/ dl,T-B/D-B 16.4/11.8 mg/dl,AST/ALT 2170/687 IU/L. AST/ALTは術後数日でピークアウトした.手術関連 合併症は後出血 1 例,腸閉塞 1 例であった. 初回減黄率 87%(26/30 例),減黄(T-Bil<2mg/dl)ま での期間は平均 56 日(14-157 日).減黄不良例に再 手術は施行していない.フォローアップ期間は平均 4 年(0-11 年)で,術後胆管炎は 27%(8/30 例)に発 症し,胆管炎発症 8 例のうち 1 歳以内発症が 6/8 例, 1歳以降 5/8 例であった.いずれも抗生剤治療にて軽 快した.自己肝生存 86%(肝移植は 4 例で施行). 【結語】肝門部脱転での拡大郭清でも周術期に大きな 合併症は認めず安全に施行できた.結合織辺縁,特に 左右辺縁で吻合を細かいバイトで密に行うことで,瘢 痕化が少なく微細胆管粘膜と腸粘膜の上皮結合が高ま り,安定した減黄率につながると考えられた. JP2-10 当院における胆道閉鎖症の治療成績 - 肝門部 脱転での細かい肝門部空腸吻合術は自己肝生存率を高 めるか

?-Outcome of Kasai Portoenterostomy with meticulous sutures under hepatic mobilization

東京都立小児総合医療センター外科 小森広嗣,春松敏夫,馬場優治,加藤源俊,山本裕輝, 廣部誠一 【背景と目的】胆道閉鎖症(以下本症)に対しては葛 西手術を施行し,減黄不良例に対して肝移植を行う治 療戦略が一般的となっている.葛西手術後に早期予後 を予測することは,術後の経過観察,移植のタイミン グを考えるうえで重要である.今回,我々は自験例を もとに自己肝生存率に関連する予後因子を検討した. 【対象と方法】1984 年 4 月 1 日より 2015 年 3 月 31 日 までに当科で経験した胆道閉鎖症初診症例 82 例を対 象として患者背景,術前生化学検査,手術日齢,ステ ロイドの初回投与量について自己肝生存症例(Native Liver Survival群;NLS 群)と死亡または肝移植症例 (非 NLS 群)で比較検討した. 【結果】自己肝生存率は術後 1 年で約 75%,術後 10 年 で 約 60%, 術 後 20 年 で 約 50%, 術 後 25 年 で 約 30%となった.男女比は NLS 群で M:F=18:27,非 NLS群で M:F=15:22 で有意差は認めなかった.初 回 手 術 日 齢 は NLS 群:60.4±16.3 日, 非 NLS 群: 73.1±29.5 日で有意に NLS 群において手術時期が早 かった.術前 AST,ALT,γGTP 値において各群に有 意差は認めなかった.術前 T-bil 値は NLS 群:9.26± 3.68㎎/dl,非 NLS 群:12.7±5.5 ㎎/dl,D-bil 値 NLS 群: 6.31±2.01 ㎎/dl, 非 NLS 群:8.75±4.17 ㎎/dl で あ り 有意に NLS 群において T-bil,D-bil 値は低値であった. 初回ステロイド投与量は NLS 群:3.13±1.53 ㎎/㎏, 非 NLS 群:2.35±1.77 ㎎/㎏で有意に NLS 群に初回投 与量が多かった. 【結語】本症において自己肝生存を予測する因子とし て手術日齢,術前ビリルビン値の重要性と初回高用量 ステロイドの必要性が示唆された. JP2-9 当科における胆道閉鎖術後自己肝生存率に対 する予後因子の検討

Predictors of outcome in patients with biliary atresia after Kasai procedure

鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系小児外科学分野 中目和彦,川野孝文,大西 峻,山田耕嗣,山田和歌, 向井 基,加治 建,家入里志

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Poster Session (May 24)

【はじめに】胆道閉鎖症に対する肝移植術の普及によ り,葛西術後の減黄不良例の予後は著明に改善した. 一方,一度減黄が得られても門脈圧亢進や胆管炎など により成長してから肝移植が必要となる症例があり, それらの病態は徐々に進行するため,その適応と時期 の判断は難しい.我々は脾容積の観点から胆道閉鎖症 をはじめとする胆汁うっ滞性肝疾患の長期経過を検討 し,肝移植の適応とその時期について考察した. 【対象と方法】当施設において 2006 年 1 月から 2016 年 1 月に小児に対して行われた生体肝移植例のうち 肝移植術時 2 歳以上の 21 例(胆道閉鎖症 11 例,ア ラジール症候群 1 例,PSC2 例,劇症肝炎 3 例,肝芽 腫 4 例),当施設通院中の 6 歳以上の胆道閉鎖症自己 肝生存例のうち脾摘例を除く 16 例を対象とした.CT より算出した脾容積(SV)と年齢より算出した標準 脾容積(SSV)の比(SV/SSV)を肝移植例と胆道閉 鎖症自己肝生存例について経時的に検討した. 【結果】肝移植例について胆汁うっ滞性肝疾患(胆道 閉鎖症,アラジール症候群,PSC),劇症肝炎,肝芽 腫の 3 群に分け肝移植時の SV/SSV を検討すると胆汁 うっ滞性肝疾患では年齢と相関して SV/SSV の増加を 認めた(r=0.63).それらの症例につき経時的な変化 を検討すると,幼児期より著明な脾腫を認めていた. 一方,胆道閉鎖症自己肝生存例では肝移植待機例を除 き,SV/SSV は低値で経過していた. 【考察】減黄した胆道閉鎖症自己肝生存例の長期予後 は決して良好ではなく,緩徐に肝硬変が進行する例 や,胆管炎や消化管出血により QOL が低下する例を 認める.また青年期以降の肝移植はドナーへの負担が 大きく手術手技も困難であり,幼小児期の肝移植に比 し予後不良である.今回の検討では幼児期の脾容積か ら肝移植適応を予測できる可能性が示唆され,脾腫を きたす症例では早期より肝移植を見据えた管理が重要 である. JP2-12 脾容積からみた胆道閉鎖症肝移植適応と時 期の検討

Assessment of indication and timing for liver transplantation based on splenic volume

慶應義塾大学医学部小児外科1) 慶應義塾大学医学部一般・消化器外科2) 高橋信博1),山田洋平1),星野 健1),森禎三郎1) 阿部陽友1),清水隆弘1),石濱秀雄1),藤村 匠1) 下島直樹1),藤野明浩1),阿部雄太2),日比泰造2) 板野 理2),篠田昌宏2),尾原秀明2),北川雄光2) 黒田達夫1) 【はじめに】胆道閉鎖症術後の胆管炎は通常の胆道系 感染症と異なった部分が多く,第 1 選択抗菌薬や投与 期間についてコンセンサスは得られていない. 【対象および方法】2010 年 1 月から 2015 年 12 月まで に葛西手術を行った 13 人を対象とし,胆管炎に対し て使用された抗菌薬の種類や投与期間と治療効果の関 係を,診療録を用いて後方視的に調査した.胆管炎は 38℃以上の発熱と血液検査で炎症反応所見および肝 機能検査異常を認めるものを「確診」と定義し,すべ てを満たさないものを「疑診」とした.また,抗菌薬 終了後 30 日以内に胆管炎を発症したものを「再燃」 とし,31 日以上経ったものは「初発」とした. 【結果】13 人中 10 人(21 例)が胆管炎を発症し,「確 診」は 11 例であった.血液培養陽性例は 14 例中 3 例 (21%)であった(腸球菌属 2 例,緑膿菌 1 例).第 1 選択薬として最も使用されていたのは TAZ/PIPC で, その投与量は 112.5mg/kg/ 回×3 であった.治療効果 不十分として抗菌薬が変更された症例は 2 例あり, 2例とも第一選択薬は TAZ/PIPC で第 2 選択薬には MEPMが使用されていた.「初発」18 例中「再燃」を 起こした症例(再燃群)は 4 例で,「再燃」を起こし ていない症例(非再燃群)は 14 例だった.その経静 脈的抗菌薬投与期間は再燃群で 5.3±2.1 日に対し,非 再燃群は 8.1±4.4 日と再燃群の方が短い傾向であっ た. 【考察】胆道閉鎖術後の胆管炎は典型的な臨床像を呈 さないことが多く,多くの症例が除外診断で胆管炎 と診断されていた.「再燃」を起こした場合,その後 短期間で胆管炎を繰り返している傾向があり,「初発」 時の抗菌薬治療が重要と考えられる.血液培養の結果 から,全身状態不良な症例では腸球菌や緑膿菌をカ バーする抗菌薬を選択する必要があると考えられる. 【結語】「初発」時の経静脈的抗菌薬治療が重要であ り,腸内細菌に抗菌力のある抗菌薬を 7 日以上経静脈 的に投与するのが望ましい. JP2-11 胆道閉鎖術後の胆管炎に対する最適な抗菌 薬および投与期間の検討

The ideal antibiotic use for cholangitis after kasai portoenterostomy in biliary atresia patients

長野県立こども病院外科

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【背景】Small-for-size-syndrome:SFSS とはグラフト がレシピエントの機能的な需要に満たない場合に発症 するとされ,門脈過還流が主な原因と考えられる. Graft Weight/Body Weight:GW/BW<0.7-0.8 がそのリ スクとされているが,特に成長期における慢性肝疾患 のレシピエントは著明な脾腫を認めることが多く,脾 臓のボリュームを考慮に入れた解析が必要である. 【対象】当施設において 2013 年以降の移植適応症例

の う ち, 術 前 予 測 GW/BW <1.0,Graft-to-Recipient Spleen Size Ratio:GRSSR<0.6 を対象とした.年齢は 12歳から 17 歳の成長期,原疾患として自己免疫性肝 炎 1 例と胆道閉鎖症術後肝硬変 3 例について検討し た. 【結果】4 症例の予測 GW/BW=0.71-0.93(平均 0.815), GRSSR=0.215-0.442(平均 0.309)であった.症例 1 は GW/BW=0.93,GRSSR=0.310 であり,1 カ月以上 続く難治性腹水・黄疸遷延を認め,37POD に脾動脈 塞栓術を施行し,腹水量の著明な改善が得られた.症 例 2 は GW/BW=0.76,GRSSR=0.442 であり,移植後 小腸出血に対して,側副血行路塞栓術を施行した際に 測定した門脈圧は 23(塞栓前)>33mmHg(塞栓後) と上昇し,腹水貯留の増悪,黄疸の遷延を認めた為 に,37POD に脾動脈塞栓術を施行し,門脈血流の減 少(45cm/s>27cm/s)腹水量,黄疸の改善を認めた. 症 例 3 で は GRBW=0.71,GRSSR=0.215 で あ り, 再 灌流直後の門脈圧は 28mmHg と高値であったため, 門注カテーテルからの PGE1 注入を行い,経時的に門 脈圧の減少(1 週後 24mmHg,2 週後 22mmHg)を認 めた.腹水貯留は遷延,腎機能悪化などを認めたもの の,利尿剤にて腹水量は減少し,黄疸も改善し保存的 に軽快した.症例 4 は GWBW=0.86,GRSSR=0.267 であり,術中の門脈圧測定を行い,脾・門脈血流に対 する介入を検討する予定である. 【考察】 小児から成人への移行期の肝移植症例では GRSSRが移植後の門脈血流の重要な規定因子であり, GW/BWに加えて,SFSS 発症を予測する有益かつ簡 便な因子であると考えられた.血流調節への介入は移 植時の門脈圧の測定を行い,個々の症例に応じて決定 すべきと考えられる.

JP2-14 当院が経験した Small for size Syndrome: SFSS の 4 症例

Our hospital experienced Small for size syndrome: SFSS of four cases 慶應義塾大学医学部小児外科1) 慶應義塾大学医学部一般外科2) 阿部陽友1),山田洋平1),森禎三郎1),高橋信博1) 清水隆弘1),石濱秀雄1),藤村 匠1),下島直樹1) 藤野明浩1),篠田昌宏2),星野 健1),北川雄光2) 黒田達夫1) 【はじめに】 肝移植周術期における血中乳酸値の変動 はグラフト門脈灌流および術後早期のグラフト機能を 反映する可能性が考えられる. 【方法】 当科における生体肝移植症例 86 例のうち呼 吸不全や劇症肝炎など乳酸異常高値例を除外し後方 視的解析が可能であった 55 例について検討した.グ ラフト重量あたり門脈血流量(PVF/GV:(ml/min/100g liver))について,低灌流症例(PVF/GV≦100):A 群 (n=16),中等灌流症例(100<PVF/GV≦250):B 群 (n=18),高灌流症例(250<PVF/GV):C 群(n=21) に分類した.動脈血乳酸値は,手術開始前(L0),無 肝期終了後(L1),再灌流後手術終了時(L2),術後 3日目(L3)を測定し,再灌流後乳酸値変化率 ΔL= (L2-L1)/L1 を計測した. 【結果】 各群における L0 中央値は A 群 /B 群 /C 群: 10.3/13.8/10.5(mg/dl),L1 中 央 値 は 47.6/43.8/41.7 (mg/dl)といずれも有意差は認めなかったが,再灌流 後の L2 中央値(22.8/22.0/38.9),術後 3 日目の L3 中 央値(8.4/8.9/16.3)ではいずれも有意に C 群で乳酸 高値が持続していた.再灌流前後の乳酸値変動率 ΔL は A 群:-56.9%,B 群:-43.6% に 対 し C 群 は -5.4% と有意に低い減少率(p<0.001)に留まっていた.ま た,門脈血流量以外に周術期乳酸値に影響を与える因 子として温虚血時間が挙げられた. 【まとめ】 周術期における高乳酸血症の遷延はグラフ ト門脈高灌流症例に有意に多く過小グラフト症候群の 発症に留意すべきである. JP2-13 生体肝移植におけるグラフト血流と周術期 乳酸値の変動

Perioperative lactate level associated with graft perfusion in living donor liver transplantation

九州大学医学部小児外科

松浦俊治,高橋良彰,吉丸耕一朗,柳 佑典, 田口智章

参照

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