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有明海・八代海の生物棲息環境の評価・保全・再生 [平成19年度]

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熊本大学学術リポジトリ

有明海・八代海の生物棲息環境の評価・保全・再生 [平成19年度]

著者 内野, 明徳, 逸見, 泰久, 畑中, 寛, 福田, 靖, 上 村, 彰, 中熊, 健二

雑誌名 熊本大学政策創造研究センタープロジェクト研究報

告書

巻 平成19年度

ページ 71‑104

発行年 2008‑06‑01

URL http://hdl.handle.net/2298/8347

(2)

有明海・八代海の生物棲息環境の 評価・保全・再生

内野 明徳

1

・逸見 泰久

2

・畑中 寛

3

・福田 靖

4

・上村 彰

5

・中熊 健二

6

1研究代表者 熊本大学大学院自然科学研究科教授(沿岸域環境科学教育研究センター長)

2学内共同研究者 熊本大学沿岸域環境科学教育研究センター教授 3学内共同研究者 熊本大学政策創造研究教育センターコーディネーター

4学外共同研究者 九州ルーテル学院大学人文学部教授 5学外共同研究者 熊本県環境生活部自然保護課課長補佐

6学外共同研究者 熊本市経済振興局農林水産振興部水産振興課主任技師

生 物 棲 息 環 境 の 評 価 ・ 保 全 ・ 再 生 と モ ニ タ リ ン グ の 実 施 を 通 し て ,( 1 )生 物 多 様 性 保 全 の た め の 生 物 棲 息 環 境 の 把 握 と 評 価 ,( 2 )水 産 資 源 の 持 続 的 利 用 の た め の 管 理 技 術 の 確 立 ,( 3 )環 境 と 調 和 し た 防 災 と 開 発 ( ミ チ ゲ ー シ ョ ン 技 術 の 確 立 ) の 3 つ の 課 題 に 取 り 組 み , 政 策 提 言 を 行 っ た .

生 物 多 様 性 保 全 の た め の 生 物 棲 息 環 境 の 把 握 と 評 価 で は , 九 州 各 地 の 潮 間 帯 で 底 生 生 物 相 の 調 査 を 行 い , 多 様 な 棲 息 環 境 を 維 持 ・ 保 全 す る た め の 技 術 開 発 と 提 言 を 行 っ た .

水 産 資 源 の 持 続 的 利 用 の た め の 管 理 技 術 の 確 立 で は , ハ マ グ リ M e r e t r i x l u s o r i a の 厳 格 な 資 源 管 理 が 行 わ れ て い る 加 布 里 湾 ( 福 岡 県 ) と ほ と ん ど 資 源 管 理 が 行 わ れ て い な い 白 川 河 口 ( 熊 本 市 ) で 比 較 調 査 を 行 い , 資 源 管 理 と ブ ラ ン ド 化 に 関 す る 技 術 開 発 と 提 言 を 行 っ た .

ミ チ ゲ ー シ ョ ン*技 術 の 確 立 で は , 護 岸 堤 防 に よ っ て 消 滅 す る 塩 性 湿 地 の 植 物 の 移 植 と モ ニ タ リ ン グ を 行 い , 台 風 や 高 潮 な ど に 強 い 移 植 先 の 選 定 が 重 要 で あ る こ と を 明 ら か に し た . ま た , そ れ ら の 結 果 を 元 に , 熊 本 市 塩 屋 海 岸 に お け る 塩 性 湿 地 の 創 生 計 画 を 事 業 主 体 の 熊 本 県 に 対 し て 提 言 し た .

( * ミ チ ゲ ー シ ョ ン に つ い て は 巻 末 参 照 )

1 . は じ め に

現 在 , 有 明 海 ・ 八 代 海 の 水 産 資 源 は 環 境 悪 化 や 乱 獲 に よ り 衰 退 の 一 途 に あ る . ま た , 両 海 域 の 生 物 多 様 性 は 減 少 し , 特 徴 的 で 学 術 的 に も 貴 重 な 種 が 急 速 に 失 わ れ つ つ あ る . ま た , 外 来 種 の 侵 入 や 遺 伝 子 汚 染 の 問 題 も 顕 在 化 し て き た . さ ら に , 環 境 へ の 配 慮 に 欠 け る 防 災 工 事 や 埋 立 な ど の 開 発 事 業 が 継 続 さ れ , 生 物 棲 息 環 境 の 悪 化 に 拍 車 を か け

(3)

て い る .

今 後 , 現 状 に 則 し た 水 産 資 源 の 新 た な 管 理 と 生 物 多 様 性 保 全 技 術 の 開 発 が 急 務 で あ る . ま た , 環 境 と 調 和 し た 防 災 工 事 の 実 施 や , 開 発 事 業 に 対 す る 規 制 ・ 事 業 変 更 の 判 断 基 準 の 確 立 も 不 可 欠 で あ る . し か し , 沿 岸 域 の 環 境 は 陸 域 ・ 海 域 の 影 響 を 強 く 受 け る た め に , 変 動 が 激 し い こ と に 加 え て , 独 立 し た 小 面 積 の 地 域 と し て 把 握 す る こ と が 難 し い . そ の た め , 河 川 や 里 山 と い っ た 環 境 に 比 べ て , 管 理 技 術 の 確 立 が 遅 れ て い る . 実 効 性 と 持 続 性 の あ る 技 術 の 開 発 に は , 対 象 地 域 の 生 物 相 の 把 握 と 評 価 , ひ い て は 生 態 系 全 体 の 理 解 が 不 可 欠 で あ り , そ れ に は 緻 密 な 現 地 調 査 と 高 度 な 環 境 評 価 能 力 を 要 す る . さ ら に , 水 産 資 源 の 管 理 や 環 境 と 調 和 し た 防 災 事 業 に は , 漁 業 者 や 地 域 住 民 の 合 意 形 成 も 必 要 と な る .

本 プ ロ ジ ェ ク ト 研 究 は , 生 物 多 様 性 の 保 全 ・ 水 産 資 源 の 持 続 的 利 用 ・ 環 境 に 調 和 し た 防 災 と 開 発 事 業 と い う 3 つ の 柱 を 持 つ . 生 物 多 様 性 の 保 全 で は , 有 明 海 ・ 八 代 海 各 地 の 潮 間 帯 で 底 生 生 物 相 の 調 査 を 行 い , 生 物 棲 息 環 境 の 評 価 と 多 様 性 の 維 持 ・ 保 全 の た め の 技 術 開 発 と 提 言 を 行 っ た . 水 産 資 源 の 持 続 的 利 用 で は , ハ マ グ リ

M e r e t r i x

l u s o r i a

の 厳 格 な 資 源 管 理 が 行 わ れ て い る 加 布 里 湾 ( 福 岡 県 ) と ほ と ん ど 資 源 管 理 が

行 わ れ て い な い 白 川 河 口 ( 熊 本 市 ) で 比 較 調 査 を 行 い , ハ マ グ リ を モ デ ル と し た 資 源 管 理 技 術 と ブ ラ ン ド 化 に 関 す る 研 究 ・ 提 言 を 行 っ た . 環 境 に 調 和 し た 防 災 と 開 発 事 業 で は , 護 岸 堤 防 や 埋 立 の 際 の ミ チ ゲ ー シ ョ ン 技 術 の 開 発 を 行 い , そ れ ら の 結 果 を 元 に , 熊 本 市 塩 屋 海 岸 に お け る 塩 性 湿 地 の 創 生 計 画 を 事 業 主 体 で あ る 熊 本 県 に 対 し て 提 言 し た . な お , こ れ ら の 課 題 は 単 独 の も の で は な く , そ れ ぞ れ 有 機 的 に 結 合 す べ き 課 題 で あ る . そ の た め , 政 策 提 言 も , 個 別 の 事 項 に 留 ま る の で は な く , 広 い 視 野 で 複 合 的 に 行 う よ う に 留 意 し た .

2 . 生 物 多 様 性 保 全 の た め の 生 物 棲 息 環 境 の 把 握 と 評 価

( 1 ) は じ め に

沿 岸 域 の 生 物 多 様 性 保 全 の た め に は , そ の 地 域 の 生 物 相 を 正 確 に 把 握 し

,

そ れ を 元 に 生 物 棲 息 環 境 の 解 析 と 評 価 を 行 う 必 要 が あ る . 生 物 相 調 査 自 体 は 非 常 に オ ー ソ ド ッ ク ス な 手 法 で あ る が , 特 定 の 地 域 の 棲 息 環 境 を 保 全 ・ 再 生 す る に は 不 可 欠 な 調 査 で あ り , ア セ ス メ ン ト や モ ニ タ リ ン グ の 基 礎 と な る も の で あ る .

本 研 究 で は , 環 境 省 の 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 ( 浅 海 域 生 態 系 調 査 ) 等 の 結 果 を 分 析 し た . 浅 海 域 生 態 系 調 査 ( 環 境 省

, 2 0 0 7) は , 2 0 0 2

4

月 か ら

2 0 0 4

9 月 に か け

て , 北 海 道 か ら 沖 縄 ま で 全 国

1 5 7

カ 所 の 干 潟 で 行 わ れ た 底 生 生 物 調 査 で , 調 査 地 は ,

「 日 本 の 重 要 湿 地

5 0 0

」 ( 環 境 省

, 2 0 0 1

) の 干 潟 を 中 心 に 選 ば れ た . 九 州 地 区 は , 逸 見 と 佐 藤 正 典 ( 鹿 児 島 大 ) が 中 心 に な っ て 計

3 8

カ 所 ( そ の う ち , 有 明 海 は

1 3

カ 所 , 八 代 海 は

2

カ 所 ) で 行 っ た ( 図- 1) .

な お , 調 査 は 各 干 潟 に

3

本 の ラ イ ン を 設 定 し , そ の ラ イ ン 上 で 最 も 陸 寄 り ・ 最 も 汀 線 寄 り ・ 中 間 の

3

地 点 に

5 m

四 方 の 調 査 区 を 設 定 し , そ の 中 で

1 0

分 間 底 生 動 物 を 採 集 し た . ま た , 各 干 潟 で

1

カ 所 の 塩 性 湿 地 を 選 定 し , そ こ で

2 0

分 間 底 生 動 物 を 採 集 し た .

(4)

そ の 後 , 採 集 し た 生 物 は 可 能 な 限 り 種 ま で 同 定 し , 不 明 種 に つ い て は 各 分 類 群 の 専 門 家 に 同 定 を 依 頼 し た .

図 - 1 九 州 地 区 の 底 生 生 物 調 査 地 点

( 2 )有 明 海 の 底 生 動 物 相

九 州 西 岸 に 位 置 す る 有 明 海 は , 閉 鎖 性 が 強 く 浅 い 内 湾 で あ る . 有 明 海 の 奥 部 に お け る 潮 差 は 日 本 最 大 で あ り , ま た 九 州 最 大 河 川 で あ る 筑 後 川 な ど が 流 入 し て い る . こ れ ら の 諸 条 件 に よ っ て , 有 明 海 に は , 日 本 の 全 干 潟 面 積 の 約

4

割 に 相 当 す る 広 大 な 干 潟 が 発 達 し て お り , そ こ に は , 日 本 国 内 で の 分 布 が 有 明 海 だ け に 限 ら れ る 「 特 産 種 」 や 有 明 海 以 外 で は ま れ な 「 準 特 産 種 」 が 多 数 棲 息 し て い る . こ の よ う な 特 異 な 環 境 や 生 物 相 , ま た 高 い 漁 業 生 産 力 を 有 す る と い う 点 に お い て , 有 明 海 は 特 筆 す べ き 海 域 で あ る .

有 明 海 で の 調 査 地 点 は , 全 部 で

1 3

カ 所 で あ っ た . す べ て の 地 点 で

5 0

種 以 上 の 動 物 が 採 集 さ れ る な ど (

6

カ 所 で

9 0

種 以 上 を 記 録 . 最 大 種 数 は , 永 浦 島 の

1 4 6

種 ) , 全 般 的 に 干 潟 生 物 の 種 多 様 性 が 高 か っ た . 有 明 海 固 有 の 巻 貝 で あ る ア ズ キ カ ワ ザ ン シ ョ ウ (

1 3

地 点 中

8

地 点 ) を は じ め 多 く の 特 産 種 や 準 特 産 種 , あ る い は 全 国 的 に 個 体 数 が 減 少 し て い る 希 少 種 が 多 数 確 認 さ れ た . た と え ば , 腕 足 類 で は ミ ド リ シ ャ ミ セ ン ガ イ (

7

地 点 ) , 貝 類 で は ウ ミ マ イ マ イ (

4

地 点 ) ・ ヤ ベ ガ ワ モ チ (

2

地 点 ) ・ セ ン ベ イ ア ワ モ チ (

3

地 点 ) ・ キ ヌ カ ツ ギ ハ マ シ イ ノ ミ (

2

地 点 ) ・ オ オ ク リ イ ロ カ ワ ザ ン シ ョ ウ (

2

地 点 ) ・ マ ル テ ン ス マ ツ ム シ (

6

地 点 ) ・ ウ ネ ハ ナ ム シ ロ (

2

地 点 ) ・ ヒ ロ オ ビ ヨ フ バ イ (

1

地 点 ) ・ ハ イ ガ イ (3 地 点 ) ・ ハ マ グ リ (

7

地 点 ) , 多 毛 類 で は ア リ ア ケ カ ワ ゴ カ イ (

6

地 点 ) , カ ニ 類 で は ヒ メ ケ フ サ イ ソ ガ ニ (

4

地 点 ) ・ ハ ラ グ ク レ チ ゴ ガ ニ (

6

地 点 ) ・ シ オ マ ネ キ (

5

地 点 ) ・ ア リ ア ケ ガ ニ (

9

地 点 ) ・ ム ツ ハ ア リ ア ケ ガ ニ (

6

地 点 ) な ど で あ る . こ の よ う に , 有 明 海 は , 大 規 模 な 干 潟 面 積 を 有 す る だ け で な く , 底 質 や 塩 分 に 関 し て 多 様 な 環 境 を 有 し , 固 有 性 の 高 い 種 か ら 分 布 域 の 広 い

(5)

「 普 通 種 」 ま で 多 く の 種 を 育 む 「 干 潟 生 物 の 宝 庫 」 と も い う べ き 貴 重 な 海 域 で あ る . し か も , そ こ は , 現 在 , 多 く の 絶 滅 危 惧 種 に と っ て 日 本 に 残 さ れ た 数 少 な い 棲 息 地 に な っ て い る と 思 わ れ る .

し か し , 本 調 査 で 確 認 さ れ た 多 様 性 も , 本 来 の 状 態 か ら は 相 当 に 劣 化 し た も の で あ る 可 能 性 が あ る . た と え ば , シ マ ヘ ナ タ リ と ク ロ ヘ ナ タ リ は , 有 明 海 を 代 表 す る 巻 貝 で あ っ た が 近 年 激 減 し , 今 回 の 調 査 で 両 種 の 棲 息 が 確 認 さ れ た の は , 佐 賀 県 の 3 カ 所 ( 田 古 里 川 河 口 , 塩 田 川 河 口 , 六 角 川 河 口 ) と 熊 本 県 の 1 カ 所 ( 菊 池 川 河 口 ) だ け で あ っ た . タ マ ガ イ 科 巻 貝 の ゴ マ フ ダ マ も 近 年 激 減 し , 日 本 国 内 で 生 貝 が 得 ら れ る の は 有 明 海 の 一 部 の み で , 今 回 の 調 査 で 棲 息 が 確 認 さ れ た の は , 熊 本 市 塩 屋 海 岸 の

1

カ 所 だ け で あ っ た . 二 枚 貝 の ハ イ ガ イ や ア ゲ マ キ も 近 年 に 激 減 し , 今 回 の 調 査 で も , ハ イ ガ イ は 佐 賀 県 の 塩 田 川 河 口 の 他 , 福 岡 県 の 沖 端 川 河 口 と 熊 本 市 塩 屋 海 岸 か ら 記 録 さ れ た が , ア ゲ マ キ は 全 く 採 集 さ れ な か っ た . 腕 足 類 の オ オ シ ャ ミ セ ン ガ イ は 有 明 海 特 産 生 物 と し て 有 名 で ,

1 9 8 0

年 ま で は , 諫 早 湾 , 有 明 海 奥 部 を 中 心 に , 湾 中 央 部 ( 熊 本 県 河 内 町 ) や 湾 口 部 ( 天 草 松 島 町 ) も 含 め て , 多 く の 地 点 で 採 集 記 録 が あ る . し か し , そ れ 以 降 は ,

1 9 8 9

6

月 荒 尾 市 の 干 潟 ,

1 9 9 2

8

月 柳 川 市 沖 端 ,

2 0 0 5

6

月 と

8

月 三 池 港 沖 の 水 深 約

3 0 m

の 浅 海 で の 採 集 記 録 が あ る の み で あ る . 今 回 の 調 査 で は , オ オ シ ャ ミ セ ン ガ イ は 全 く 採 集 で き な か っ た . 熊 本 市 塩 屋 海 岸 に つ い て は ,

1 9 9 8 - 1 9 9 9

年 の 調 査 に よ っ て

2 8

種 の 貝 類 が 記 録 さ れ て い る ( 山 下

1 9 9 9

) . 今 回 の 調 査 で は , そ れ を 上 回 る

3 2

種 の 貝 類 が 記 録 さ れ た が , 山 下 (

1 9 9 9

) が 注 目 す べ き 希 少 種 と し て 記 録 し た シ マ ヘ ナ タ リ ・ ワ カ ウ ラ ツ ボ ・ カ ハ タ レ カ ワ ザ ン シ ョ ウ ・ セ ン ベ イ ア ワ モ チ ・ シ イ ノ ミ ミ ミ ガ イ は , い ず れ も 確 認 さ れ な か っ た .

国 外 か ら 持 ち 込 ま れ 定 着 し た と 考 え ら れ て い る 外 来 種 が 今 回 多 く の 地 点 で 確 認 さ れ た こ と も 注 目 す べ き こ と で あ る . そ れ は 以 下 の 7 種 の 貝 類 で あ る . カ ラ ム シ ロ (

4

地 点 ) ・ ト ラ イ ミ ズ ゴ マ ツ ボ (

4地 点 ) ・ シ マ メ ノ ウ フ ネ ガ イ ( 7地 点 ) ・ ム ラ サ キ イ ガ

イ (

1

地 点 ) ・ コ ウ ロ エ ン カ ワ ヒ バ リ ガ イ (

6

地 点 ) ・ ヒ ラ タ ヌ マ コ ダ キ ガ イ (

3

地 点 ) ・ タ イ ワ ン シ ジ ミ (

3

地 点 ) . こ の う ち , カ ラ ム シ ロ と ト ラ イ ミ ズ ゴ マ ツ ボ は

2 0 0 1

年 に , ヒ ラ タ ヌ マ コ ダ キ ガ イ は

1 9 9 2

年 に , 有 明 海 奥 部 で 初 め て 確 認 さ れ た も の

で あ り , ご く 最 近 , 有 明 海 に 定 着 し た 種 と 考 え ら れ て い る . こ れ ら の 外 来 種 の 分 布 の 拡 大 は , 近 年 の 有 明 海 の 環 境 悪 化 と も 連 動 し て い る 可 能 性 が あ り , 懸 念 さ れ る 問 題 で あ る .

( 3 ) 八 代 海 の 底 生 動 物 相

八 代 海 は , 有 明 海 の ほ ぼ 南 に 位 置 す る 面 積 約

1 2

h a

の 閉 鎖 性 の 強 い 内 湾 で あ る . 現 存 す る 干 潟 は 約

4 , 5 0 0 h a

で , 球 磨 川 河 口 以 北 の 東 岸 に そ の

9 0 %

以 上 が 集 中 し て い る . 八 代 海 の 干 潟 面 積 は , 隣 接 す る 有 明 海 ( 約

2

h a

) の 半 分 に も 満 た な い が , 有 明 海 同 様 , 強 内 湾 性 底 生 動 物 が 豊 富 な 種 多 様 性 の 高 い 海 域 で あ る . 八 代 海 湾 奥 部 ( 北 部 ) は 内 湾 性 が 強 く , 主 と し て 泥 質 や 砂 泥 質 の 干 潟 が 発 達 し て い る . こ こ は , 大 野 川 , 氷 川 , 球 磨 川 な ど の 河 川 が 流 入 す る 陸 水 の 影 響 が 強 い 海 域 で あ る . ま た , 河 岸 や 海 岸 の 一 部 に は 塩 性 湿 地 が 発 達 し , 生 物 の 重 要 な 棲 息 地 と な っ て い る . 一 方 , 湾 中 央 か ら 以 南 は 徐 々 に 外 洋 性 を 帯 び , 砂 質 の 干 潟 や 岩 礁 ・ 転 石 が 多 く な る . 干 潟 面 積 は 小 さ い が , 外 洋 性 ・ 南 方 系 の 底 生 動 物 の 割 合 が 高 い .

(6)

調 査 は , 大 野 川 河 口 と 氷 川 河 口 の

2

地 点 で 行 っ た . 大 野 川 は 八 代 海 の 最 奥 部 に 流 入 す る 小 河 川 で , 感 潮 域 に は ヨ シ ・ フ ク ド ・ ナ ガ ミ ノ オ ニ シ バ な ど か ら な る 塩 性 湿 地 が 発 達 し て い る . 調 査 で は

7 9

種 が 出 現 し , 塩 性 湿 地 で は シ マ ヘ ナ タ リ ・ ク ロ ヘ ナ タ リ ・ ア ズ キ カ ワ ザ ン シ ョ ウ ・ ワ カ ウ ラ ツ ボ ・ ヤ ベ ガ ワ モ チ ・ オ カ ミ ミ ガ イ な ど , 泥 質 干 潟 で は ウ ミ マ イ マ イ ・ ハ イ ガ イ な ど , 他 の 海 域 で は 絶 滅 あ る い は 激 減 し て い る 底 生 動 物 が 多 く 見 つ か っ た . な お , 今 回 の 調 査 で は 確 認 で き な か っ た が ,

2 0 0 5

年 に は 当 海 域 の 八 代 海 北 岸 で , 絶 滅 し た と 考 え ら れ て い た ア ゲ マ キ が 1 個 体 見 つ か っ て い る . 一 方 , 氷 川 は 不 知 火 干 拓 を は さ ん で 大 野 川 の 南 に 位 置 す る 小 河 川 で , 河 口 域 に は 沖 合

3 k m

に も 達 す る 広 大 な 干 潟 が 広 が っ て い る . 調 査 で は

7 1

種 が 出 現 し , 塩 性 湿 地 で は

シ マ ヘ ナ タ リ ・ ク ロ ヘ ナ タ リ ・ ア ズ キ カ ワ ザ ン シ ョ ウ ・ オ カ ミ ミ ガ イ ・ ヤ ベ ガ ワ モ チ ・ ア リ ア ケ ガ ニ な ど , 泥 質 干 潟 で は ミ ド リ シ ャ ミ セ ン ガ イ ・ ハ イ ガ イ ・ ア リ ア ケ ヤ ワ ラ ガ ニ な ど , 大 野 川 同 様 , 他 の 海 域 で は 絶 滅 あ る い は 激 減 し て い る 底 生 動 物 が 多 く 見 つ か っ た .

八 代 海 の 調 査 地 点 は , 大 野 川 河 口 ・ 氷 川 河 口 の

2

地 点 だ け で あ っ た が , 他 に も 球 磨 川 河 口 や 八 代 海 西 岸 の 樋 島 周 辺 ( 龍 ヶ 岳 町 ) に 底 生 生 物 の 豊 富 な 干 潟 が 広 が っ て い る . 球 磨 川 は 急 流 の た め , 感 潮 域 上 流 部 に は 砂 礫 地 が 多 い . 河 口 部 の 干 潟 は 砂 礫 か ら 泥 質 と 多 様 で , 河 岸 に は ヨ シ を 主 体 と す る 塩 性 湿 地 が 発 達 し て い る . 和 田 (

2 0 0 5

) は , 球 磨 川 河 口 域 で

9 4

種 類 の 底 生 動 物 を 確 認 し て い る が , そ の 中 に は , タ ケ ノ コ カ ワ ニ ナ ・ シ マ ヘ ナ タ リ ・ ク ロ ヘ ナ タ リ ・ ム シ ヤ ド リ カ ワ ザ ン シ ョ ウ ・ ヒ メ ケ フ サ イ ソ ガ ニ な ど の 希 少 種 も 含 ま れ て い る . 一 方 , 樋 島 周 辺 の 砂 質 干 潟 は , 面 積 は 小 さ い も の の 底 生 生 物 の 種 多 様 性 が 高 い . 干 潟 下 部 に は コ ア マ モ や ア マ モ が 密 生 し , ニ ン ジ ン イ ソ ギ ン チ ャ ク ・ ウ ミ サ ボ テ ン ・ ミ ド リ シ ャ ミ セ ン ガ イ ・ キ ヌ タ ア ゲ マ キ ・ ワ ダ ツ ミ ギ ボ シ ム シ ・ ナ メ ク ジ ウ オ な ど が 確 認 さ れ て い る ( 逸 見

, 2 0 0 4

) .

こ の よ う に 八 代 海 の 底 生 動 物 は 有 明 海 と 類 似 性 が 強 い の が 特 徴 で あ る . 有 明 海 特 産 種 の う ち , ア ズ キ カ ワ ザ ン シ ョ ウ ・ ヤ ベ ガ ワ モ チ ・ ウ ミ マ イ マ イ ・ ア リ ア ケ ヤ ワ ラ ガ ニ ・ ム ツ ゴ ロ ウ は 八 代 海 で も 見 つ か っ て お り , 種 類 に よ っ て は 有 明 海 よ り も 豊 富 に 棲 息 し て い る . ま た , 有 明 海 準 特 産 種 の シ マ ヘ ナ タ リ ・ ハ イ ガ イ ・ シ オ マ ネ キ ・ ム ツ バ ア リ ア ケ ガ ニ ・ ミ ド リ シ ャ ミ セ ン ガ イ も 八 代 海 に 棲 息 し て い る . 一 方 , サ ル ボ ウ と コ ケ ガ ラ ス は 有 明 海 で は 豊 富 に 見 ら れ る が , 八 代 海 で は ほ と ん ど 確 認 さ れ て い な い . な お , 今 回 の 調 査 で 確 認 さ れ た 外 来 種 は , コ ウ ロ エ ン カ ワ ヒ バ リ ガ イ ( 大 野 川 ) と シ マ メ ノ ウ フ ネ ガ イ ( 氷 川 ) の 2 種 で あ っ た .

( 4 ) ま と め

浅 海 域 生 態 系 調 査 で は , 全 国 で

1 4

動 物 門

1 6 6 7

種 の 底 生 生 物 が 確 認 さ れ た . 内 訳 は , 海 綿 動 物 門

1 3

種 , 刺 胞 動 物 門

6 1

種 , 扁 形 動 物 門

2 6

種 , 紐 形 動 物 門

2 8

種 , 軟 体 動 物 門

5 7 6

種 , 環 形 動 物 門

2 8 8

種 , ユ ム シ 動 物 門

7

種 , 星 口 動 物 門

1 6

種 , 節 足 動 物 門

4 7 7

種 , 触 手 動 物 門

4

種 , 毛 顎 動 物 門

2

種 , 半 索 動 物 門

1 1種 , 棘 皮 動 物 門 5 5

種 , 脊 索 動 物 門

1 0 3

種 で あ っ た . 地 域 別 の 出 現 種 数 が 最 も 多 か っ た の は 九 州 で ,

7 0 0

種 に 達 し た . 以 下 , 沖 縄 で

6 3 0

種 , 中 国 四 国 で

4 5 4

種 , 近 畿 で

3 8 0種 が 出 現 し , 日 本 列 島 の 西 南 部 で 特 に 多

く の 種 が 出 現 し た .

(7)

九 州 の 中 で も , 有 明 海 は 出 現 種 数 が 多 く , 平 均

8 8種 が 出 現 し た ( 図 - 2

) . そ の 他 の 地 域 で 平 均 出 現 種 数 が 多 か っ た の は , 奄 美 大 島 の

8 6

種 , 八 代 海 の

7 5種 , 九 州 東 北 部 の 7 0

種 , 玄 界 灘 の

5 8

種 で あ っ た . こ の よ う に 有 明 海 ・ 八 代 海 は 底 生 動 物 の 種 の 多 様 性 が 高 く , 彼 ら の 重 要 な 棲 息 地 で あ る こ と が わ か る . ち な み に 有 明 海 ・ 八 代 海 の 中 で 出 現 種 数 が 最 も 多 か っ た の は 松 島 ( 永 浦 島 ) の

1 4 8

種 で , 次 い で 田 古 里 川

1 2 7

種 , 塩 屋 海

1 2 0

種 , 緑 川

1 0 7

種 の 順 で あ っ た . な お , こ れ ら の 地 点 で 出 現 種 数 が 多 か っ た 理 由

に つ い て は 不 明 確 な 点 も 多 い が , 環 境 の 多 様 性 が 強 く 影 響 し て い る こ と は 間 違 い な い . 例 え ば , 松 島 は 干 潟 の 底 質 が 砂 質 か ら 泥 質 と 多 様 な だ け で な く , 干 潟 内 に 転 石 地 や 岩 礁 が 存 在 し て い る . お そ ら く , こ れ ら の 多 様 な 環 境 は , 様 々 な 生 物 に 多 様 な 棲 息 地 を 提 供 し て い る に 違 い な い .

図 - 2 九 州 の 各 調 査 地 域 に お け る 出 現 種 数

干 潟 お よ び 塩 性 湿 地 の 生 物 多 様 性 を 保 全 す る た め は , こ れ 以 上 の 埋 立 ・ 護 岸 を 避 け , 埋 立 ・ 護 岸 が や む を 得 な い 場 合 に お い て も 事 前 に 適 切 な ア セ ス メ ン ト を 実 施 し , 生 物 多 様 性 保 全 の 観 点 か ら 充 分 に 配 慮 を 行 う こ と で あ る . 今 回 の 調 査 で も , 埋 立 ・ 護 岸 の 影 響 に よ り , 底 生 生 物 の 棲 息 地 が 消 失 ・ 悪 化 し , 種 多 様 性 が 大 き く 低 下 し た 地 点 も 少 な く な か っ た ( 例 え ば , 塩 屋 海 岸 ) . 今 後 の 埋 立 ・ 護 岸 に 際 し て は , 対 象 地 域 の 環 境 と 生 物 相 の 調 査 と 評 価 を 十 分 に 行 い , 埋 立 ・ 護 岸 の 中 止 も 含 め た 何 ら か の ミ チ ゲ ー シ ョ ン を 行 う べ き で あ ろ う .

現 存 す る 干 潟 ・ 塩 性 湿 地 の 保 全 に 加 え , 場 合 に よ っ て は 消 失 し た 干 潟 ・ 塩 性 湿 地 を 再 生 ・ 創 生 す る 試 み も 必 要 で あ る . 特 に 熊 本 県 で は , 多 く の 塩 性 湿 地 や 干 潟 最 上 部 が 埋 立 ・ 護 岸 に よ っ て 消 失 し て い る の で , 人 工 的 に そ れ ら の 環 境 を 再 生 ・ 創 生 す る こ と は 有 意 義 で あ る . た だ し , 人 工 干 潟 に つ い て は 砂 泥 が 流 失 す る な ど の 失 敗 例 も 多 い の で 慎 重 に 行 う べ き で あ る . 一 方 , 人 工 潟 湖 に つ い て は , 砂 泥 が 流 失 す る 可 能 性 も 低

(8)

く , 内 部 に 塩 性 湿 地 が で き る な ど , 比 較 的 容 易 に 生 物 多 様 性 の 高 い 地 域 を 再 生 ・ 創 生 で き る の で , 有 効 な ミ チ ゲ ー シ ョ ン で あ る 場 合 が 多 い . 我 々 は , 熊 本 市 塩 屋 海 岸 な ど を 対 象 に 塩 性 湿 地 の 再 生 ・ 創 生 に 取 り 組 ん で い る の で , 干 潟 ・ 塩 性 湿 地 の 再 生 ・ 創 生 に つ い て は , 第

4

章 で さ ら に 詳 し く 検 討 す る .

干 潟 の 機 能 と 生 物 多 様 性 に 関 す る 普 及 教 育 活 動 も 重 要 で あ る . 干 潟 生 態 系 の 機 能 や 生 物 多 様 性 の 意 義 を よ く 理 解 し て い な か っ た た め に , 塩 性 湿 地 や 干 潟 が 何 の 配 慮 も な く 消 失 し た 例 は 少 な く な い . 今 後 も , 地 元 住 民 ・ 漁 業 者 ・ 地 方 自 治 体 の 担 当 者 を 対 象 に 講 演 会 や 観 察 会 な ど の 普 及 活 動 を 行 う こ と は 重 要 で あ る . ま た , 一 般 向 け の 書 籍 ・ 新 聞 ・ テ レ ビ ・ イ ン タ ー ネ ッ ト 等 あ ら ゆ る メ デ ィ ア を 用 い て , 環 境 問 題 に 関 心 が 低 い 人 々 に も 重 要 性 が 広 く 浸 透 す る よ う な 活 動 も 必 要 で あ る .

3 . 水 産 資 源 の 持 続 的 利 用 の た め の 管 理 技 術 の 確 立

( 1 )

は じ め に

移 動 能 力 の 乏 し い 水 産 資 源 ( 例 え ば 貝 類 な ど ) は , 厳 格 な 管 理 を 行 う こ と で 持 続 的 な 漁 獲 が 可 能 と な り , 漁 獲 総 量 も 増 加 す る こ と が 見 込 ま れ る . 例 え ば , 熊 本 県 緑 川 河 口 で は

1 0

年 ほ ど 前 か ら ア サ リ の 漁 獲 制 限 が 行 わ れ る よ う に な り , 最 近 に な っ て や っ と 資 源 量 の 増 加 が 観 察 さ れ る よ う に な っ た ( 中 原 ・ 那 須

2 0 0 2

) .

し か し , こ の よ う な 管 理 漁 業 が 行 わ れ て い る の は , 熊 本 県 で は 一 部 の 魚 貝 類 で あ り , 地 域 も 限 ら れ て い る . 近 年 の 漁 具 漁 法 の 性 能 向 上 と 流 通 の 近 代 化 に よ り , 「 根 こ そ ぎ 採 り , 遠 隔 地 に 高 く 売 る 漁 業 」 が 行 わ れ て い る 漁 場 が 少 な く な い . そ の よ う な 場 所 で は 漁 業 資 源 が 枯 渇 す る の は 当 然 で あ る が , 同 時 に 周 辺 の 漁 場 の 資 源 量 に も 悪 影 響 を 及 ぼ し て い る .

本 研 究 で は , ハ マ グ リ

M e r e t r i x l u s o r i a

を モ デ ル に , 資 源 管 理 の 確 立 と ブ ラ ン ド 化 に よ る 価 値 の 付 加 を 目 指 し た . ハ マ グ リ は , 縄 文 時 代 の 貝 塚 か ら 最 も 普 通 に 産 出 す る 貝 類 で , 最 近 ま で は 全 国 の 砂 質 干 潟 に お い て シ オ フ キ と 共 に 優 占 種 で あ っ た ( 写 真

- 1

) . し か し ,

1 9 8 0

年 頃 よ り 多 く の 地 域 で 漁 獲 量 が 激 減 し , 多 く の 県 で は 絶 滅 危 惧 種 に さ え 指 定 さ れ て い る . ハ マ グ リ は 砂 質 干 潟 の 食 物 連 鎖 の 基 盤 と な る 種 で あ り , ま た , 生 物 撹 乱 に よ り 底 質 改 善 を 行 う 種 で あ る こ と か ら , 資 源 量 の 回 復 は , 単 に 水 産 上 の 意 義 だ け で な く , 生 物 多 様 性 や 干 潟 環 境 を 改 善 す る 上 で も 意 義 が あ る .

熊 本 県 は ハ マ グ リ 生 産 量 日 本 一 の 県 で あ り , 緑 川 ・ 白 川 の 個 体 は 殻 の 模 様 が 美 し い た め , 京 阪 神 な ど に 高 値 で 出 荷 さ れ て い る ( 図

- 3

) . し か し , こ の こ と は 地 元 ( 熊 本 市 な ど ) に お い て も あ ま り 知 ら れ て い な い . ま た , 県 内 い ず れ の 漁 場 に お い て も ハ マ グ リ は 乱 獲 状 態 で あ り , 絶 滅 が 危 惧 さ れ る ほ ど 資 源 量 が 減 少 し て い る 地 域 も あ る . さ ら に , ブ ラ ン ド 化 や 地 産 地 消 な ど , ハ マ グ リ を 高 く 売 る 努 力 が ほ と ん ど 行 わ れ て い な い た め , 焼 き 蛤 で 有 名 な 三 重 県 桑 名 市 な ど で は 熊 本 産 の ハ マ グ リ が 地 元 ハ マ グ リ の 代 用 品 と し て 売 ら れ て い る ほ ど で あ る . 今 後 , 正 確 な 基 礎 デ ー タ と モ ニ タ リ ン グ に 基 づ い た 資 源 管 理 を 進 め る 必 要 が あ る が , そ れ に は 漁 業 者 間 の 合 意 形 成 が 不 可 欠 で あ る .

(9)

写 真 - 1 ハ マ グ リ 類 3 種

本 研 究 で は , 厳 密 な 漁 獲 管 理 が 行 わ れ て い る 加 布 里 湾 ( 福 岡 県 前 原 市 ) と 漁 獲 管 理 が 行 わ れ て い な い 白 川 河 口 ( 熊 本 市 ) に お い て , ハ マ グ リ の 稚 貝 加 入 ・ 成 長 ・ 生 残 な ど を 比 較 し , そ の デ ー タ を 元 に , 熊 本 県 に お け る ハ マ グ リ の 漁 獲 管 理 案 を 作 成 し た . ま た , ハ マ グ リ の ブ ラ ン ド 化 の 可 能 性 に つ い て も 考 察 し た .

図 - 3 ハ マ グ リ

M e r e t r i x l u s o r i a

の 漁 獲 量 の 年 変 動 グ ラ フ 漁 業 ・ 養 殖 業 生 産 統 計 年 報 ( 農 林 水 産 省 ) を 集 計 し 、 加 工

( 2 )

ハ マ グ リ の 生 物 学 的 特 性

ハ マ グ リ の 資 源 管 理 の 技 術 を 確 立 す る た め に , ハ マ グ リ の 厳 格 な 資 源 管 理 が 行 わ れ て い る 加 布 里 湾 ( 福 岡 県 前 原 市 ) と , 乱 獲 に 近 い 形 で ハ マ グ リ が 漁 獲 さ れ て い る 白 川 河 口 ( 熊 本 市 ) で , ハ マ グ リ の 棲 息 状 況 や 漁 獲 状 況 を 比 較 し た ( 内 野 ほ か

2 0 0 6 , 2 0 0 7

を 参 照 ) .

加 布 里 湾 は , 福 岡 県 糸 島 半 島 西 部 に あ る 玄 界 灘 に 面 し た 湾 で あ る . 小 河 川 の 泉 川

( 雷 山 川 と も い う ) が 流 入 し , 湾 奥 部 に は 泥 質 な い し 砂 質 の 干 潟 が 発 達 し て い る . 海 岸 部 に は 糸 島 漁 協 の 漁 業 権 が あ る た め , 地 元 の 加 布 里 支 所 の 組 合 員 に よ っ て の み ハ マ グ リ が 採 ら れ て い る が , 漁 業 権 の な い 河 川 内 で は 市 民 に よ る 採 集 も 日 常 的 に 行 わ れ て い る ( 図

- 4

) . な お , 糸 島 漁 協 で は ハ マ グ リ の 厳 格 な 資 源 管 理 を 行 っ て お り ( 殻 長 制

(10)

限 :

5 0 m m

以 上 , 漁 期 :

1 1

月 〜 翌 年

3

月 , 採 捕 量 の 制 限 :

1

1

1 0 k g

以 内 , 漁 業 区 の み で の 採 貝 , 操 業 日 の 設 定 ) , 密 漁 や 違 反 が な い よ う に 厳 し く 監 視 し て い る .

ハ マ グ リ の 現 地 調 査 は , 漁 業 権 の あ る 地 域 で 行 っ た (

3 3 º 3 3 ’ N

1 3 0 º 1 0 ’ E

) . 河 川

( 地 点

H

I

) ・ 海 域 ( 地 点

J

K

L

) に そ れ ぞ れ

5 0 c m

四 方 の 方 形 区 を

1 0

カ 所 設 置 し ,

1 m m

目 の 篩 で 深 さ

5 c m

ま で の 砂 泥 を ふ る っ て , そ の 中 か ら ハ マ グ リ を 選 別 し た . ま た ,

深 さ

5 c m

以 深 に つ い て は 手 探 り で ハ マ グ リ を 採 集 し , 取 り 残 し が な い よ う に し た . 採

集 し た ハ マ グ リ は 研 究 室 に 持 ち 帰 り , 方 形 区 毎 に 殻 長 等 を 測 定 す る と 共 に , 密 度 を 算 出 し た . な お , 採 集 は

2 0 0 6

1

月 〜

2 0 0 8

1

月 に 行 っ た . た だ し ,

2 0 0 6

8

月 と

2 0 0 7

9

月 に つ い て は , 漁 業 権 の な い 地 域 ( 地 点G) で も 採 集 を 行 っ た .

図 - 4 加 布 里 調 査 地

地 点 G よ り 上 流 部 に は 漁 業 権 が な い た め 市 民 が 自 由 に ハ マ グ リ を 採 集 し て い る

一 方 , 白 川 は , 熊 本 市 に あ る 有 明 海 に 注 ぐ 河 川 で あ る ( 図

- 5

) . 河 口 域 に は , 緑 川 河 口 か ら 坪 井 川 河 口 ま で 連 な る 泥 質 あ る い は 砂 質 の 広 大 な 干 潟 が 発 達 し て い る . 河 口 域 で は , 川 口 漁 協 ・ 沖 新 漁 協 ・ 小 島 漁 協 な ど に よ り ア サ リ ・ ハ マ グ リ な ど の 二 枚 貝 が 漁 獲 さ れ て い る . ア サ リ は 共 販 を 中 心 と し た 資 源 管 理 が 行 わ れ て い る が ( 殻 幅 制 限

1 2 . 9

1 3 . 5 m m

, 殻 長 制 限

3 5 m m

, 採 捕 量 の 制 限 , 操 業 日 の 設 定 な ど ) , ハ マ グ リ に つ い て は 殻 長

3 0 m m

の 制 限 し か な い .

調 査 は , 加 布 里 と 同 様 の 方 法 で 行 っ た . 河 川 ・ 海 域 に そ れ ぞ れ

5 0 c m

四 方 の 方 形 区 を

2 0

3 0

カ 所 設 置 し (3 2 º 4 7 ’ N,

1 3 0 º 3 6 ’ E

) , 深 さ

5 c m

ま で の 砂 泥 を

1 m m

目 の 篩 で ふ る っ て , そ の 中 か ら ハ マ グ リ を 選 別 し た . ま た , 深 さ

5 c m

以 深 に つ い て は 手 探 り で ハ マ グ リ を 採 集 し , 取 り 残 し が な い よ う に し た . 採 集 し た ハ マ グ リ は 研 究 室 に 持 ち 帰 り , 方 形 区 毎 に 殻 長 等 を 測 定 す る と 共 に , 密 度 を 算 出 し た . な お , 採 集 は 地 点

J

で は

2 0 0 6

3

月 〜

2 0 0 8

1

月 に 月

1

2

回 の 頻 度 で 行 い , 地 点

D

H

K

で は

2 0 0 7

年 の 春 と 秋 に 各

1

回 行 っ た .

(11)

ま た ,

2 0 0 6

9

月 か ら

2 0 0 7

1 1

月 に は , 加 布 里 ・ 白 川 の 各 地 点 (

A

L

) で , 表 層

2 c m

の 砂 泥 を 各

1 0

カ 所 採 泥 し , 篩 で ふ る わ ず に 稚 貝 の 棲 息 状 況 を 調 査 し た . ま た ,

2 0 0 7

8

月 〜

2 0 0 8

1

月 に は , 加 布 里 の

K

地 点 , 白 川 の

J

地 点 に

4 0 c m

四 方 , 高 さ

3 0 c m

, 目 合 い

5 m m

の ケ ー ジ を 各

3

個 設 置 し , そ れ ぞ れ に ハ マ グ リ を 投 入 し て , 成 長 ・ 生 残 を 追 跡 し た .

図 - 5 白 川 調 査 地

河 川 内 ( A 〜 D ) に は 漁 業 権 が 設 定 さ れ て い な い

- 6

に 加 布 里 に お け る

2 0 0 6

年 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 を 示 す ( 他 の 月 は 省 略 ) . こ の よ う に 加 布 里 で は , 最 大

4

つ の 年 級 群 (

2 0 0 2

2 0 0 3

2 0 0 5 , 2 0 0 6

年 生 ま れ ) が グ ラ フ 上 で 区 別 で き た . し か し ,

2 0 0 4

年 年 級 群 は 確 認 で き な か っ た . こ れ は , 原 因 不 明 で あ る が ,

2 0 0 4

年 生 ま れ の ハ マ グ リ の 生 残 が 非 常 に 悪 か っ た た め と 考 え ら れ る . 図

- 7

に 加 布 里 に お け る

2 0 0 6

7

月 と

2 0 0 7

7

月 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 を 示 す . グ ラ フ の 比 較 よ り ,

2 0 0 6

7

月 に は 殻 長

2 8 m m

程 度 で あ っ た

2 0 0 3

年 年 級 群 が ,

1

年 後 に は 殻 長

3 8 m m

程 度 に 成 長 し た こ と ,

2 0 0 4

年 年 級 群 同 様 に

2 0 0 6

年 年 級 群 が 少 な い こ と な ど が わ か る . 図

- 8

に 白 川 に お け る2 0 0 7年

3

1 1

月 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 を 示 す ( 他 の 月 は 省 略 ) . 白 川 で は 大 型 の ハ マ グ リ ( 特 に 殻 長

4 0 m m

以 上 ) が 少 な く , 年 級 群 も 最 大

2

つ し か 区 別 で き な か っ た . な お ,

2 0 0 7

年 は

6

月 よ り 稚 貝 の 着 底 が 見 ら れ ,

1 1

月 に は 殻 長

1 0 m m

未 満 の 個 体 に 限 っ て も ,

1

平 方 メ ー ト ル あ た り 平 均

3 4 7

個 体 と い う 多 量 の ハ マ グ リ が 見 ら れ た .

(12)

図 - 6 加 布 里 に お け る ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 ( 2 0 0 6 年 )

図 - 7 2 0 0 6 年 7 月 と 2 0 0 7 年 7 月 の 加 布 里 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 の 比 較

- 2

に 加 布 里 と 白 川 の 殻 長 別 の 密 度 を 示 す . こ の よ う に 白 川 で は

2 0 0 7

年 後 半 に 多 量 の 稚 貝 が 加 入 し た . 一 方 ,

2 0 0 7

年 の 稚 貝 加 入 は 加 布 里 で は 少 な か っ た . た だ し , い ず れ の 年 に お い て も 殻 長

4 0 m m

以 上 の 大 型 ハ マ グ リ は 加 布 里 の 方 が ず っ と 多 か っ た . 図

- 9

に 殻 長 組 成 の 季 節 変 動 か ら 推 定 さ れ た ハ マ グ リ の 成 長 曲 線 を 示 す . 加 布 里 で は , 初 年 度 の 成 長 は 悪 く ,

1

年 経 っ て も 殻 長

5 m m

程 度 に し か な ら な か っ た が , そ の 後 は , 殻 長 で 年 約

1 0 m m

の 速 度 で 成 長 し た . 一 方 , 白 川 で は , 大 型 の ハ マ グ リ が 少 な い た め ,

殻 長

3 0 m m

以 上 に つ い て は 成 長 を 推 定 す る こ と が で き な か っ た が , 小 型 個 体 の 成 長 は

加 布 里 よ り 若 干 早 か っ た .

(13)

2007-D 2007-J 2007-H 2007-K 2006-J 2006 2007

5 mm 未満 4.8 0.0 30.3 38.9 20.0 55.5 32.2

5 - 10 mm 12.8 2.0 8.5 9.2 21.0 4.3 38.4

10 - 20 mm 13.2 25.3 20.3 15.5 16.8 13.4 44.8

20 - 30 mm 5.1 22.3 13.2 13.2 6.0 16.6 6.9

30 - 40 mm 1.1 4.7 2.5 3.7 7.8 6.5 13.7

40 mm 以上 0.1 0.3 0.9 0.1 0.2 10.2 18.1

合計 37.1 54.6 75.7 80.7 71.8 106.5 154.0

白   川 加布里

図 - 8 白 川 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 ( 2 0 0 7 年 3 〜 1 1 月 )

表 - 1 加 布 里 と 白 川 の 殻 長 別 個 体 密 度 ( 1 平 方 メ ー ト ル あ た り の 個 体 数 : 左 5 月 , 右 9 月 )

2007-D 2007-J 2007-H 2007-K 2006-J 2006 2007

5 mm 未満 76.0 117.1 730.3 848.1 0.0 2.8 0.6

5 - 10 mm 121.7 0.9 85.1 341.7 16.0 94.8 7.8

10 - 20 mm 37.5 4.8 10.8 17.6 38.9 42.4 28.0

20 - 30 mm 8.5 10.9 9.1 8.4 21.5 9.9 21.6

30 - 40 mm 2.0 12.3 4.8 4.5 2.9 16.2 10.8

40 mm 以上 0.0 4.7 1.3 0.9 1.2 14.7 20.6

合計 245.7 150.7 841.3 1221.3 80.5 180.9 89.3

白   川 加布里

図 - 9 ハ マ グ リ の 成 長 曲 線

- 1 0

に ケ ー ジ 飼 育 に お け る 各 個 体 の 成 長 量 を 示 す . こ の よ う に

8

1 0

月 に お け る ハ

マ グ リ の 成 長 は よ く , 中 に は 殻 長 で

1 0 m m

以 上 も 成 長 し た 個 体 も あ っ た . ま た , 一 般 に 成 長 は 小 型 個 体 の 方 が よ か っ た . な お , ケ ー ジ 飼 育 に お け る 生 存 率 は 非 常 に 高 く ,

殻 長

2 0 m m

以 上 の ハ マ グ リ の

2 0 0 8

2

月 ま で の 半 年 に お け る 死 亡 個 体 は , 加 布 里 で は

5 1

個 体 中

3

個 体 ( 死 亡 率

5 . 9 %

) , 白 川 で は

4 1

個 体 中

1

個 体 ( 同

2 . 4 %

) に 過 ぎ な か っ た .

(14)

図 - 1 0 ケ ー ジ に お け る 飼 育 個 体 の ハ マ グ リ の 成 長

( 3 )

ハ マ グ リ の 資 源 管 理 の 推 進

有 明 海 に 面 し た 熊 本 市 沿 岸 域 を 中 心 と し た ハ マ グ リ の 漁 場 で は , 旧 来 か ら 大 き な 干 満 の 差 を 利 用 し て 大 潮 の 干 潮 時 に 直 接 人 力 に よ っ て 採 貝 漁 業 が 営 ま れ て い る . こ の 変 わ ら ぬ 漁 法 に よ っ て 熊 本 県 で は 昭 和

4 9

年 の ピ ー ク 時 に は

5 , 8 5 5 t

の ハ マ グ リ が 水 揚 げ さ れ て い た が , そ の 後 は 減 少 の 一 途 を た ど り , 近 年 で は 数 十 ト ン ~ 百 数 十 ト ン の 間 で 水 揚 げ が 推 移 し て い る . そ れ に も か か わ ら ず , ハ マ グ リ の 資 源 維 持 や 増 殖 の た め の 方 策 は 何 も と ら れ る こ と な く 現 在 に 至 っ て お り , 熊 本 県 の 「 レ ッ ド リ ス ト く ま も と

2 0 0 4

」 に お い て 絶 滅 危 惧 Ⅰ

B

類 に 分 類 さ れ る ほ ど 資 源 量 が 減 少 し て い る ( 熊 本 県

,

2 0 0 4

) . こ れ は , 同 様 の 減 少 を た ど っ た ア サ リ が 資 源 管 理 に よ っ て あ る 程 度 の 回 復 傾

向 を 見 せ 始 め て い る の と 対 照 的 で あ る . 今 後 , ア サ リ と 同 様 に 資 源 管 理 に 取 り 組 み , ハ マ グ リ の 資 源 を 維 持 し て い く こ と が 不 可 欠 か つ 急 務 で あ る こ と を 示 唆 し て い る .

ア サ リ 採 貝 漁 業 は ハ マ グ リ と 同 様 の 漁 法 に よ っ て 営 ま れ て い る が , 漁 獲 が 皆 無 に 近 い 状 況 を 経 験 し た こ と を 踏 ま え て , 漁 協 に お い て , 採 貝 サ イ ズ , 採 捕 量 , 漁 期 が 定 め ら れ , こ れ に 基 づ い て 採 貝 が 進 め ら れ て い る . し か し , ハ マ グ リ に 関 し て は 漁 場 を 管 理 し て る 漁 協 に よ っ て 漁 期 の み が ア サ リ の 採 貝 と 同 日 程 で 定 め ら れ て い る が , サ イ ズ に 関 し て は 熊 本 県 漁 業 調 整 規 則 に よ り 殻 長

3 0 m m

以 下 の 採 捕 が 禁 止 さ れ て い る も の の , そ の 取 締 り に 関 し て は 不 十 分 な 状 況 で あ る . さ ら に , そ の 採 捕 量 に 関 し て は な ん ら 制 限 が な く , 無 計 画 に 進 め ら れ て い る の が 現 状 で あ る .

こ れ に 対 し て

3 - ( 2 )

で 述 べ た よ う に , 福 岡 県 加 布 里 で は 殻 長

5 0 m m

以 上 ,

1

日 採 貝

1 0 k g /

人 , 採 貝 期 間 は

1 1

月 ~ 翌 年

3

月 ま で , 対 象 漁 場 は 年 毎 の 輪 採 制 , と 厳 し く

定 め ら れ て お り , 安 定 的 な 生 産 が 進 め ら れ て い る . そ の た め , 熊 本 に お け る 管 理 は 非 常 に 緩 め の 規 制 と 言 わ ざ る を 得 な い . 規 制 な し で も 安 定 的 に 水 揚 げ さ れ る の で あ れ ば 問 題 は な い が , 乱 獲 に 近 い 生 産 と 種 々 の 環 境 変 化 等 の 影 響 を 受 け て , 現 在 の 資 源 量 は ピ ー ク 時 の

1 0

分 の

1

以 下 に 落 ち 込 ん で い る と 推 定 さ る . 今 後 , 無 策 の ま ま 生 産 を 続 け た 場 合 , 種 の 保 存 限 界 を 超 え て 絶 滅 の 道 を た ど る 可 能 性 も 考 え ら れ る .

ハ マ グ リ の 資 源 管 理 を 進 め て い く こ と は , 全 国 的 に み て も 絶 滅 傾 向 に あ る ハ マ グ リ の 種 保 存 上 の 意 味 だ け で は な く , 資 源 の 増 殖 と 維 持 に よ る 安 定 供 給 に よ っ て 漁 家 収 益 の 向 上 と 安 定 を 図 る 意 味 を 有 し て い る . ま ず 具 体 的 に 取 り 組 む べ き 課 題 は , 採 貝 サ イ

(15)

ズ を 現 行 の 殻 長

3 0 m m

( 殻 幅

1 6 . 5 m m

) か ら 段 階 的 に 殻 長

3 5 m m

( 殻 幅

1 8 m m

) , 殻

4 0 m m

( 殻 幅

1 9 . 5 m m

) に 引 き 上 げ て い く こ と に よ っ て 漁 場 内 で の 棲 息 期 間 を 1 年

間 程 延 ば し て や る こ と で あ る . こ れ に は , 単 に 生 産 サ イ ズ の 大 型 化 に 伴 う 単 価 向 上 の み な ら ず , 産 卵 す る 機 会 と 産 卵 数 を 引 上 げ る 効 果 も 含 ま れ て い る . ハ マ グ リ が 産 卵 可 能 な い わ ゆ る 成 熟 サ イ ズ は 殻 長

3 0

4 0 m m

と 言 わ れ て お り , 現 行 の 規 制 サ イ ズ で あ る

殻 長

3 0 m m

で 順 次 採 捕 し て い っ た 場 合 , 産 卵 期 と 推 定 さ れ る

8

月 期 よ り 前 に 採 捕 さ れ

た 個 体 は 一 度 も 産 卵 せ ず に 採 ら れ て い る 可 能 性 が あ る . 採 捕 サ イ ズ を 上 げ る こ と は 産 卵 可 能 と な る

3 0 m m

以 上 に な っ た 後 , 最 低 で も

1

回 は 産 卵 期 を 過 ご す こ と に な る と 同 時 に , 産 卵 す る 各 個 体 の サ イ ズ が 大 き く な る た め 産 卵 数 が 多 く な る こ と を 意 味 す る . ハ マ グ リ の 産 卵 数 に 関 す る 知 見 は 乏 し い が , ア サ リ の 場 合 , 殻 長

2 5 m m

個 体 の 産 卵 数

1 5 0~ 2 0 0

万 個 で あ る の に 対 し て 殻 長

3 5 m m

個 体 の 産 卵 数 は

5 0 0

~6 0 0 万 個 と い わ

れ て お り , 殻 長 が

1 0 m m

大 き く な る と 個 体 の 産 卵 数 は

3

倍 程 度 に な る こ と が 知 ら れ て い る . こ の こ と か ら 推 察 す る と , ハ マ グ リ に お い て も 産 卵 個 体 を 大 型 化 す る こ と で , 少 な く と も 現 在 の 数 倍 の 産 卵 数 と な る こ と が 予 測 さ れ る . 今 後 , サ イ ズ 毎 の 産 卵 数 に つ い て の 知 見 を 得 る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る .

次 に 採 る べ き 措 置 と し て は , 産 卵 期 で あ る と と も に 単 価 の 安 い 時 期 で あ る 「 夏 季 」 を 中 心 と し た 期 間 の 採 貝 量 制 限 強 化 で あ ろ う . こ れ は 産 卵 期 の 保 護 と 漁 家 収 益 率 向 上 の 観 点 か ら 重 要 で あ る . 図

- 1 0

に 熊 本 県 緑 川 河 口 に 位 置 す る 川 口 漁 協 に お け る 平 成

1 7

1

月 か ら 平 成

2 0

1

月 ま で の ハ マ グ リ の 単 価 変 動 と 生 産 量 の 推 移 を 示 す .

2,865 2,735

1,440 2,855

2,330 3,168

0 5 10 15 20 25 30 35

2005/1 2005/7 2006/1 2006/7 2007/1 2007/7 2008/1 t

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 円/kg

(中)漁獲量 (大)漁獲量 (中)単価 (大)単価

図 - 1 1 川 口 漁 協 に お け る ハ マ グ リ の 単 価 変 動 と 生 産 量 推 移 中 ・ 大 は ハ マ グ リ の サ イ ズ を 示 す

ハ マ グ リ の 単 価 は 関 西 の 相 場 の 影 響 を 強 く 受 け て お り , 概 ね

1 0

月 期 か ら 上 昇 し ,

「 ひ な 祭 り 」 前 の

2

月 期 に ピ ー ク を 迎 え る の が 例 年 の 価 格 変 動 で あ る . 特 に 産 卵 期 で あ る 夏 季 を 含 む

3

月 か ら

1 0

月 ま で の 単 価 は

1

月 期 ・

2

月 期 の

3

分 の

1

程 度 に ま で 落 ち 込 ん で し ま う . そ れ に も か か わ ら ず , 生 産 は 無 計 画 に 行 わ れ て お り , 単 価 の 高 い 時

(16)

期 直 前 の 価 格 上 昇 期 に 乱 獲 さ れ , そ の 後 の 単 価 の ピ ー ク を 迎 え る 時 期 に は 生 産 量 が 落 ち 込 ん で し ま っ て い る .

特 に 産 卵 期 と 推 定 さ れ て い る

8

月 期 位 か ら 極 端 に 漁 獲 圧 が 高 ま っ て お り , 現 況 の ま ま 無 計 画 に 採 り 続 け た 場 合 , 資 源 の 再 生 産 に か な り の 影 響 を 与 え る こ と が 予 測 さ れ る . 少 な く と も

3

1 0

月 期 ま で の 生 産 は 抑 制 し , 産 卵 後 の 単 価 が 高 く な る

1 1~ 2

月 期 に 生 産 を 集 約 す る こ と で 資 源 の 保 護 と 収 益 率 の 向 上 を 図 る べ き で あ る .

こ れ ら の 資 源 増 殖 を 図 る こ と は , 単 に 棲 息 個 体 数 を 増 大 さ せ る の み で は な く , 別 の 二 枚 貝 で あ る ア サ リ の 資 源 管 理 に も 寄 与 す る も の と 推 察 さ れ る . 現 時 点 で 理 想 と 考 え ら れ る ハ マ グ リ ・ ア サ リ の 操 業 イ メ ー ジ を 図

- 1 1

に 示 す .

図 - 1 2 ハ マ グ リ ・ ア サ リ の 操 業 イ メ ー ジ

こ の よ う に , ハ マ グ リ に 関 し て は 産 卵 期 で あ る 夏 場 を 中 心 と し た 単 価 の 低 い 期 間 の 採 捕 を 制 限 し ,

1 1

月 下 旬 か ら の 単 価 が 高 い 期 間 に 集 約 し て 生 産 を 行 う こ と で , 資 源 の 増 殖 効 果 と 効 率 的 な 資 源 利 用 に よ る 漁 家 収 入 向 上 を 図 る . 逆 に ア サ リ に 関 し て は 春 と 秋 に 産 卵 期 を 有 し て い る が , 近 年 , 特 に 秋 季 産 卵 群 の 加 入 が 次 年 以 降 の 生 産 を 左 右 す る 傾 向 が 強 い こ と か ら , こ れ ら 秋 仔 の 着 底 ~ 生 育 期 間 で あ る 冬 場 に 漁 獲 制 限 を 行 い , 増 殖 を 図 り , ハ マ グ リ と は 逆 の 期 間 に 集 中 し て 生 産 を 進 め て い く こ と で 安 定 的 な 生 産 を 確 保 す る . こ の よ う な 二 毛 作 的 な 管 理 を 進 め て い く こ と で , ハ マ グ リ と ア サ リ の 資 源 維 持 と 安 定 生 産 を 進 め て い く こ と が 現 段 階 で の 理 想 形 で あ る と 考 え ら れ る .

2 0 0 7

7

2 5

日 に 熊 本 市 漁 業 振 興 協 議 会 主 催 で 実 施 さ れ た 「 未 来 に つ な げ よ う 肥

後 ハ マ グ リ 」 に お い て , 我 々 は ハ マ グ リ の 成 長 や 生 残 に 関 す る 情 報 , そ の 希 少 性 , さ ら に 資 源 管 理 の 進 め 方 に つ い て 講 演 を 行 っ た . そ の 結 果 , 白 川 河 口 域 に 漁 場 を 有 す る 小 島 漁 協 で は , 護 岸 か ら

6 0 0 m

ま で の 区 域 を 保 護 区 と し て 翌 年

2

月 期 ま で 禁 漁 に す る と と も に , 組 合 の 行 使 規 則 に よ っ て 採 貝 サ イ ズ 規 制 を

6 . 0

分 以 上 ( 殻 長

3 5 m m

) に 引 き 上 げ た . こ の よ う に 単 協 に よ る 取 り 組 み は 進 ん で き て い る が , 二 枚 貝 類 の 受 精 卵 は 一 定 期 間 潮 流 に の っ て 浮 遊 し 移 動 す る こ と か ら , 最 低 で も 同 一 河 口 単 位 で の 資 源 管 理 が 望 ま れ る . 特 に , 資 源 の 再 生 産 , 増 殖 に 関 し て は , 受 精 卵 の 浮 遊 範 囲 が 定 か で は な い こ と か ら ,

A

地 先 で 生 ま れ た 卵 が

A

地 先 に 着 底 す る と は 限 ら な い し , 場 合 に よ っ て は

A

B, C

の 地 先 間 で 循 環 し て い る 可 能 性 も あ る , こ れ ら の こ と を 考 慮 す る と , 母 貝 群 及 び 産 卵 数 の 確 保 は 単 協 地 先 の み で 取 り 組 む べ き 問 題 で は な く , 少 な く と も 河 川 単 位 で 複 数 個 所 に 産 卵 母 体 と な る 個 体 群 を 保 護 す る 区 域 を 設 け , 広 域 的 に 資 源 の 増 殖

(17)

を 図 っ て い く こ と が 肝 要 で あ る .

ま た , 前 述 し た サ イ ズ 規 制 に つ い て は 漁 協 や 漁 民 の み の 問 題 で は な く , 県 全 体 で 棲 息 域 の 全 て に お い て 取 り 組 む べ き 事 項 で あ る . そ の た め , 熊 本 県 漁 業 調 整 規 則 の 見 直 し を 進 め , ハ マ グ リ 稚 貝 の 棲 息 場 所 で あ る 河 川 河 口 ( 漁 業 権 区 域 外 ) に お け る 採 捕 制 限 を 厳 し く し , 小 型 個 体 群 の 保 護 に つ い て も 更 な る 取 り 組 み を 進 め て い く べ き で あ る .

( 4 )

ハ マ グ リ の ブ ラ ン ド 化

a .

地 域 に お け る ブ ラ ン ド 化 の 動 向

近 年 , 特 色 あ る 地 域 づ く り の 一 環 と し て , 特 産 品 等 を 他 地 域 と 差 別 化 す る た め の 地 域 ブ ラ ン ド づ く り が 全 国 的 に 盛 ん に な っ て い る . こ の よ う な 中 , 地 域 ブ ラ ン ド を 適 切 に 保 護 す る こ と で , 事 業 者 の 信 用 を 維 持 し , 地 域 経 済 の 発 展 を 支 援 す る こ と を 目 的 に , 特 許 庁 が 「 地 域 団 体 商 標 制 度 ( 地 域 ブ ラ ン ド ) 」 を

2 0 0 5

4

月 に 制 度 化 し た . こ れ に よ り , 地 域 の 事 業 者 が 協 力 し て , 業 者 間 で 統 一 し た ブ ラ ン ド を 用 い , 地 域 の 自 然 的 , 歴 史 的 , 風 土 的 , 文 化 的 , 社 会 的 等 何 ら か の 関 連 性 を 持 つ 商 品 の 生 産 ま た は サ ー ビ ス を 提 供 す る 商 標 登 録 が , こ れ ま で よ り 容 易 に 出 願 で き る よ う に な っ た . 具 体 的 に は ,

「 地 域 名 + 商 品 ( サ ー ビ ス ) 名 」 で 農 協 , 漁 協 な ど の 組 合 ・ 団 体 が 商 標 を 出 願 し 登 録 す る も の で ,

2 0 0 8

2

2 9

日 時 点 で 全 国 か ら

8 0 1

件 が 出 願 さ れ て い る . 出 願 時 の 産 品 別 構 成 比 を み る と , 農 水 産 一 次 産 品 が

3 7 6

件 で

4 6 . 9

% を 占 め , 以 下 工 業 製 品 が

2 0 8

件 で

2 6 . 0% , 加 工 食 品 が 9 5

件 で

1 1 . 9

% な ど と な っ て お り , 出 願 件 数 の 多 い 都 道 府 県

の 上 位 は , 京 都 府 が

1 3 7

件 で 最 も 多 く , 次 い で 兵 庫 県 が

4 6

件 , 岐 阜 県 が

3 7

件 , 北 海 道 が

3 6

件 , 沖 縄 県 が

3 4

件 な ど と な っ て い る . こ れ を 九 州 に つ い て み る と ,

7

県 の 出 願 件 数 が 合 計

7 6

件 , 登 録 件 数 が 合 計

4 3

件 と な っ て お り , 登 録 件 数 上 位 3 県 は , 鹿 児 島 県 が

9

件 ( 出 願

1 5

件 ) で 最 も 多 く , 次 い で 福 岡 県 が

8

件 ( 出 願

1 5

件 ) , 熊 本 県 と 大 分 県 が

7

件 ( 出 願

8

件 ) と な っ て い る ( 表

- 2

) .

表 - 2 地 域 団 体 商 標 制 度 へ の 九 州 7 県 の 出 願 , 登 録 数 と 登 録 商 標 名 県 名 出 願 件 数 登 録 件 数 登 録 商 標 名

福 岡 県 1 5 8 博 多 人 形 , 小 石 原 焼 , 博 多 織 , 合 馬 た け の こ , 上 野 焼 , 八 女 提 灯 , 八 女 茶 , 福 岡 の 八 女 茶

佐 賀 県 9 5 神 崎 そ う め ん , 佐 賀 の り , 伊 万 里 梨 , 佐 賀 産 和 牛 , 小 城 羊 羹 長 崎 県 1 0 3 長 崎 カ ス テ ラ , 五 島 う ど ん , 五 島 手 延 う ど ん

熊 本 県 8 7 球 磨 焼 酎 , 黒 川 温 泉*, 阿 蘇 た か な 漬 , 熊 本 名 産 か ら し 蓮 根 , 天 草 黒 牛 , 黒 川 温 泉*, 小 国 杉

大 分 県 8 7 関 あ じ , 関 さ ば , 大 分 麦 焼 酎 , 大 分 む ぎ 焼 酎 , 豊 後 別 府 湾 ち り め ん , 豊 後 牛 , 日 田 梨

宮 崎 県 1 1 4 宮 崎 牛 , 宮 崎 ハ ー ブ 牛 , 宮 崎 の 本 格 焼 酎 , 北 浦 灘 ア ジ 鹿 児 島 県 1 5 9 か ご し ま 知 覧 茶 , 知 覧 茶 , 本 場 奄 美 大 島 紬 , 薩 摩 焼 ,

本 場 大 島 紬 , 川 辺 仏 壇 , 知 覧 紅 , か け ろ ま き び 酢 , 鹿 児 島 黒 牛 合 計 7 6 4 3 * 「 黒 川 温 泉 」 は 宿 泊 施 設 と 温 泉 施 設 の 2 区 分 で 商 標 登 録 特 許 庁 商 標 資 料 よ り 作 成 ( 2 0 0 8 年 2 月 2 9 日 時 点 )

ま た , 国 と 地 方 に お け る 様 々 な 組 織 や 団 体 で も 地 域 ブ ラ ン ド の 認 定 制 度 が 広 が っ て い る . 国 の 省 庁 で は , 農 林 水 産 省 と 財 団 法 人 食 品 産 業 セ ン タ ー が 製 造 者 の 原 料 と 製 法

(18)

へ の こ だ わ り の 証 と な る 地 域 食 品 ブ ラ ン ド の 表 示 基 準 「 本 場 の 本 物 」 を 制 度 化 し ,

「 沖 縄 黒 糖 」 「 鹿 児 島 の 壷 造 り 黒 酢 」 「 小 豆 島 佃 煮 」 「 足 柄 茶 」 「 草 加 せ ん べ い 」

「 奥 久 慈 凍 み こ ん に ゃ く 」 「 大 豊 の 碁 石 茶 」 「 小 豆 島 樋 ( こ が ) 仕 込 醤 油 」 「 船 橋 三 番 瀬 海 苔 」 の

9

品 を 認 定 し て い る . 一 方 , 都 道 府 県 で も 農 林 水 産 品 を 中 心 に ブ ラ ン ド 認 定 の 動 き が あ り , 九 州 に お い て は , 長 崎 県 で 「 ブ ラ ン ド な が さ き 」 総 合 プ ロ デ ュ ー ス 事 業 , 熊 本 県 で 熊 本 型 特 別 栽 培 農 産 物 「 有 作 く ん 」 , 大 分 県 で 「

T h e

・ お お い た 」 ブ ラ ン ド , 宮 崎 県 で 「 宮 崎 県 水 産 物 ブ ラ ン ド 品 認 証 事 業 ( 宮 崎 の さ か な ) 」 , 鹿 児 島 県 で 「 か ご し ま の さ か な 」 ブ ラ ン ド 認 定 制 度 な ど が 制 度 化 さ れ て い る . さ ら に , 地 域 単 位 で ブ ラ ン ド 化 を 進 め る 動 き も あ り , 天 草 市 の 本 渡 商 工 会 議 所 で は 「 天 草 謹 製 」 と い う ブ ラ ン ド 名 で , 「 天 草 か ま ぼ こ 天 領 」 を は じ め , デ ザ ー ト や 珍 味 , ア ク セ サ リ ー な ど

1 1

品 を 認 定 し て お り , 玉 名 商 工 会 議 所 で は 「 た ま な ブ ラ ン ド 協 議 会 」 を 立 ち 上 げ ,

「 長 者 饅 頭 」 を は じ め

6

品 を 玉 名 ブ ラ ン ド と し て 認 定 し て い る .

.

地 域 ブ ラ ン ド の 条 件

全 国 的 に 著 名 な 食 ブ ラ ン ド で あ る 「 夕 張 メ ロ ン 」 「 関 あ じ , 関 さ ば 」 「 吉 野 本 葛 」

「 紀 州 備 長 炭 」 「 三 輪 素 麺 」 を 事 例 に ブ ラ ン ド 化 の 条 件 を み る と , 他 で は 真 似 が で き な い 歴 史 が あ り , 明 確 な 商 品 基 準 や 特 性 を 有 し て い る こ と が わ か る . ま た , 全 国 的 ブ ラ ン ド と な る こ と で , 市 場 価 格 も 一 般 品 の 数 倍 と , 高 い 付 加 価 値 を 生 ん で い る ( 表

- 3

) . こ の こ と か ら , 地 域 ブ ラ ン ド の 条 件 と し て は , 商 品 の 地 域 と の 関 わ り と な る

「 地 域 ら し さ 」 と 「 歴 史 ・ 物 語 」 と い う 要 素 で 地 域 イ メ ー ジ を 明 確 に し , 「 こ だ わ り 」 と 「 品 質 」 で 商 品 や サ ー ビ ス 本 来 の 特 性 を 打 ち 出 す こ と が 必 用 と 考 え ら れ る .

ま た , ブ ラ ン ド 化 の プ ロ セ ス を 「 夕 張 メ ロ ン 」 と 「 関 あ じ , 関 さ ば 」 に つ い て 整 理 す る と , 商 品 本 来 の 特 性 に よ る 「 ブ ラ ン ド 生 成 」 を 起 点 に , 生 産 者 や 組 合 等 が こ だ わ り を 持 っ て 取 り 組 む 「 ブ ラ ン ド 形 成 」 を 経 て , 組 合 等 に よ る 商 標 登 録 や 識 別 シ ー ル 取 得 で あ る 「 ブ ラ ン ド 確 立 」 と い う 3 段 階 で 地 域 ブ ラ ン ド が 形 成 ・ 確 立 さ れ る こ と が わ か る ( 表

- 4

) .

表 - 3 食 に 関 す る ブ ラ ン ド の 事 例

品名 歴史 商品の特性 価格

夕張メロン

大正12~13年頃から栽培。現在の 品種(夕張メロン)の作出以降も40 年以上の歴史。

ネット系メロンであり、果肉食はサーモン ピンク。香り、甘さ、舌触りの官能的な特 性は秀逸とされる。

875円/kg

<一般品の約2.2倍>

関あじ 関さば

佐賀関産の魚は、「関もの」として 高く取り引きされ、昭和63年以降 佐賀関漁協のPRにより、「関あじ」

「関さば」ブランドを確立。

種類はマアジ・マサバであり、胴体は金 色味を帯び、相対的に頭が小さく、引き 締まった肉質で、年間を通して適度な 脂肪があり、食味が良く、鮮度が長持ち し、刺身で食べられる。

2,000円/kg(卸値)

3,000円/kg(卸値)

<一般品の4.3~6.3倍>

吉野本葛 江戸時代以来約400年の歴史。 乾燥品は純白であり、水で戻した際の コシ、粘り、透明感が高い。

540~620円/100g(小売)

<一般品の約1.2倍>

紀州備長

元禄年間に紀州田辺城下の木炭 問屋が江戸に売り出す際に備長炭 と命名して以降著名化。

樹齢30年以上のウバメガシから製造さ れ、火持ちがよく、火加減の調整が容 易。特に調理用燃料として高い評価が ある。

6,500~7,000円/箱(15kg)

<一般品の約1.9~2.0倍

三輪素麺

享保2年(1717年)にそうめん座が 開かれ、嘉永3年(1850年)には三 輪素麺の製造業者が存在。

歯触りや喉ごしの良さを生む麺の細さ、

コシの強さを有する。刃物を使わずに 手延べにより麺を細くする独特の製麺 方法。

9,800円/箱(18kg)

<一般品の約1.2倍>

資料:農林水産省食品産業企画課まとめ(2004年)

(19)

な お , 熊 本 産 ハ マ グ リ は , 日 本 に 古 く か ら 生 息 し , 日 本 人 が 親 し ん で き た ハ マ グ リ の 生 産 量 が 日 本 一 と い う , 先 の 分 類 で は 「 ブ ラ ン ド 生 成 」 の 段 階 に あ り , 本 格 的 な ブ ラ ン ド 化 に 向 け て は 数 段 階 の プ ロ セ ス を 経 る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る .

表 - 4 ブ ラ ン ド 化 の プ ロ セ ス

ブランド生成 ブランド形成 ブランド確立

夕張メロン

スパイシー・カンタローブ種(赤 肉)とアールス・フェボリット種(マ スクメロン)の交配による独自の品 種の栽培・管理。

○品質管理の徹底  ・JAによる品質管理  ・栽培方法の統一管理

・「夕張メロン」の商標取得

・ラベル、箱の統一

関あじ 関さば

豊後水道で漁獲された肉質の良 いアジ・サバの活用。

○生産・出荷方法の統一  ・一本釣りの後活けすへ   (魚体を傷めない)

 ・販売時の活けじめ   (鮮度を落とさない)

 ・徹底したサイズ管理

・「関あじ」「関さば」の商標取得

・タッグシールによる識別

ブランド化

の流れ

.

ハ マ グ リ 類 の ブ ラ ン ド 化 事 例

ハ マ グ リ 類 は 太 平 洋 岸 で は 北 海 道 以 南 の 各 地 , 四 国 , 九 州 に 分 布 し , 日 本 海 側 で は 朝 鮮 半 島 , 中 国 大 陸 に 分 布 し て い る が , 国 内 に お け る ハ マ グ リ 類 の 産 地 は , 熊 本 , 桑 名 ( 三 重 県 ) , 鹿 島 灘 ( 茨 城 県 ) , 九 十 九 里 浜 ( 千 葉 県 ) , 宮 崎 , 大 分 な ど に 限 ら れ て い る . こ こ で は , 桑 名 と 鹿 島 の 事 例 を も と に , ハ マ グ リ 類 の 資 源 管 理 と ブ ラ ン ド 化 の 取 り 組 み を 紹 介 す る .

・ 桑 名 ( 三 重 県 )

古 く は 東 海 道 膝 栗 毛 で も 紹 介 さ れ , 「 桑 名 の 焼 き 蛤 」 と し て 全 国 的 に 有 名 な 桑 名 産 ハ マ グ リ で あ る が , ハ マ グ リ の 身 を た ま り 醤 油 で 煮 た 「 し ぐ れ 煮 」 は 三 重 県 の 特 産 品 で , 関 が 原 の 合 戦 時 , 徳 川 家 康 に 献 上 さ れ た 歴 史 を 持 つ . 木 曽 三 川 河 口 域 に は 広 大 な デ ル タ 地 帯 が 拡 が り , 嘗 て は 日 本 一 の 生 産 量 を 誇 っ た ハ マ グ リ は 殻 が 大 き く 肉 が 充 実 し 淡 美 な 味 わ い を 特 色 と し , 色 彩 の 美 麗 な 殻 は 桑 名 産 を も っ て 第 一 と 賞 さ れ , 貝 合 ・ 貝 絵 ・ 膏 薬 の 容 器 に 加 工 さ れ て い た . ま た , 桑 名 に は ハ マ グ リ 料 理 を 提 供 す る 料 亭 や 料 理 旅 館 も 多 く 存 在 す る . こ の よ う に , 「 桑 名 の ハ マ グ リ 」 は 一 漁 獲 種 と し て ば か り で な く , 桑 名 の 伝 統 文 化 の 一 端 を 形 成 し て い る と い え る .

こ の よ う な 歴 史 と 文 化 を 併 せ 持 つ 桑 名 の ハ マ グ リ は , 最 盛 期 に は 年 間

3 , 0 0 0

ト ン も 漁 獲 さ れ , 日 本 一 を 誇 っ た が , 干 潟 の 減 少 や 環 境 の 悪 化 な ど が 原 因 で

1 9 7 5

年 頃 か ら 急 激 に 減 少 し , 絶 滅 の 危 機 に 瀕 し た . こ の た め , 地 元 の 赤 須 賀 漁 協 が

1 9 7 6

年 頃 か ら ハ マ グ リ の 放 流 用 種 苗 の 研 究 を 開 始 し , 全 国 で 始 め て 種 苗 生 産 技 術 を 確 立 , 現 在 は 種 苗 生 産 を 拡 大 し な が ら , 稚 貝 の 放 流 を 続 け て い る .

・ 鹿 島 ( 茨 城 県 )

鹿 島 灘 で 採 れ る ハ マ グ リ 類 は 標 準 和 名 「 チ ョ ウ セ ン ハ マ グ リ 」 で , 地 元 で は 「 地

図 - 6   加 布 里 に お け る ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 ( 2 0 0 6 年 )   図 - 7   2 0 0 6 年 7 月 と 2 0 0 7 年 7 月 の 加 布 里 の ハ マ グ リ の 殻 長 組 成 の 比 較   表 - 2 に 加 布 里 と 白 川 の 殻 長 別 の 密 度 を 示 す . こ の よ う に 白 川 で は 2 0 0 7 年 後 半 に 多 量 の 稚 貝 が 加 入 し た . 一 方 , 2 0 0 7 年 の 稚 貝 加 入 は
図 - 1 0   ケ ー ジ に お け る 飼 育 個 体 の ハ マ グ リ の 成 長   ( 3 ) ハ マ グ リ の 資 源 管 理 の 推 進   有 明 海 に 面 し た 熊 本 市 沿 岸 域 を 中 心 と し た ハ マ グ リ の 漁 場 で は , 旧 来 か ら 大 き な 干 満 の 差 を 利 用 し て 大 潮 の 干 潮 時 に 直 接 人 力 に よ っ て 採 貝 漁 業 が 営 ま れ て い る . こ の 変 わ ら ぬ 漁 法 に よ っ て 熊 本 県

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