1
短 期 的価 格下 限 と固定費補償
河 野 二 男
1 皿 皿 W
問 題 提 起
目 次
価格下限の概念一 短期的価格下限 と長期的価格下限
価格下 限問題 の一 元的処理
シュル ツ理論 の概要 とそ の検討 (1)実 際 的価格下限 の改 良処理
1)
と再操費 の導入 2)
3) 4)
差 別的価格下 限.
シュル ツ理論 の評価
実際的価格下限の決定に際 しての固定費の除去可能性の考慮
実際的価格下限の決定に際 しての再操費問題 時間的要素 と実際的価格下限の算定
生産数量の販売可能性に基づいた実際的価格下限の算定
(2) (3)
V企 業 清 算 と生 産 転 換(代 替 案 の 選 択)一 シ ュ ミ ッ ト理 論 の 概 要 とそ の 検 討
1問 題 提 起
限界 原価 計 算 は そ の生成 の当 初 よ り特 に短 期 利 益 計 画 に そ の機 能 の優位 が ..∴..
あ る と認 識 され て きた 。 この場 合,そ の機 能 は あ くまで も短 期 的 な もの で あ
る とい うのが 一 般 的 見解 で あ る。 この限界 原価 計 算 の短 期 的 機 能 を決 して 否 定 しよ うとす る もの で は な いが,こ の計 算 方式 の利 用 に際 しては,固 定費 補 償 を通 じての企 業 資 本 の 維持 が 果 され るか ど うか とい う点 が 問 題 で あ る。 と
い うの は,限 界 原価 の概 念 お よび限界 原 価計 算 の 方法 は不 況 の子 で あ って, 不 足 操業 を前提 と し,固 定 費 の一 時 的 ・短期 的 回収 を断 念 す る こ とに よって 対 処 しよ うとす る もの で あ る。 したが っ て,こ の計 算 方法 の 利 用 に 際 して
2 商 学 討 究 第19巻 第2号
は,将 来 の操業 発 展 の 仮定 が 潜 在 して い る こ とを 等 閑す べ きで は な い。 す な わ ち,将 来 の市 場 の 好 転 を 予測 して,好 況 時 に,不 足 操業 時 に お け る利 益 喪 失 分 と固定 費 の未 補 償 額 とを取 り戻 そ うとい う思 考 に立 脚 して い る こ とを 見逃 す べ きで ない し,操 業 発 展 の予 測 の正確 性 が 保証 され てい なけ れ ば な ら ない とい う大 前提 に 立 脚 して の み形 成 され る計 算 方 法 で あ る点 に 留 意す べ き
で あ る。
したが って,こ の計 算 方 法 の思 考 を具 体 的 な問 題 に 適用 す れ ば,販 売 価 格 決 定 の問 題,と くに,臨 時 の注 文 に 対 して特 別 な価 格 を 決 定す る場 合,差 別 価 格 の決 定 とか,不 況 時 の最 低 補 償 価格 の 決定,あ るい は また,各 製 品 の利 益 率 を基 と して品 種 選 択 を行 な う場 合 に,限 界 原価 計 算 に よっ て算 出 され る 限界 原価 あ るい は 限界 利 益 が,短 期 的 観 点 か ら,た とえそ の計 算 目的 を果 す
もの で あ る と して も,企 業 資本 の維 持 とい う長 期 的観 点か らみ た短期 的処 理 と して の計 算 者 の 目的配 慮 が十 分 で あ るか ど うか は な お問 題 で あ る。
さ らに,販 売 価 格 決 定 に つ い て限 界 原 価 計 算 を利用 す る こ とに よっ て,限 界 原 価 を価 格 下 限 と して計 算 の 基 礎 に し うる と考 え る な らぽ,長 期 的観 点 か
ら十 分 な 固 定 費補 償 が な され ない虞 が あ り,ひ い ては企 業 資 本 維持 を侵 害 す る こ とに な る。 そ こで,西 独 に おい て,か か る企 業 の終 局 目的 に対 処 し うる た め に,ま た原 価計 算 の市 場 変 動 へ の弾 力性 を うるた めに,計 算方 法 の改 善 が提 起 され て い る こ とは 周知 の とお りで あ る。 と くに,ア クテ の段 階 的 固 定
こり
費 回収 計 算 に おい て は,固 定 費 を5グ ル ー プに 区 分 し,限 界 利 益 と しての補 償 貢 献 額 か ら順 次段 階 的に 回収 す る シス テ ィムを と り,さ らに 固定 費 をそ の 支 出作用 性 に よ って 区分 す る こ とに よって,価 格 下 限 を3段 階 で把 握 して価 格 決 定 問題 に 弾 力 的に 対 処 し うる よ うに 改善 してい る。 この方 法 は と くに 品 種 選 択 に おい て,従 来 の限 界 利 益 あ るい は 限界 利 益 率 に 基 づ い た 比較 方 法 に
(1)KlausAgthe,StufenweiseFixkostendeckungimSys七emdesDirectCos‑
ting,ZfB・29Jahr・Nr・7・1959・SS・404‑418・ 拙 稿,限 界 原 価 計 算 に お け る 固
定 費 補 償,商 経 学 叢32号 。
'
短期的価格下限 と固定費補償(河 野) 3
比 して,各 製 品 の 固定 費 強 度 を顧 慮 した 点 に実 際 的 に 合 目的 で あ り,か つ ま た正 確 性 の上 か ら も優 れ てい る とい え る。 けれ ど も,ア クテの 段階 的 固定 費 回 収計 算 は,あ くまで も限界 原 価 計 算 シ ス テ ィムの枠 内に お い て展 開 され て お り,そ れ な りの意 義 は 認 め られ るが,3段 階 の価 格 下 限 は補 償 貢献 額 を基 礎 とす る,す なわ ち限界 原価 を基 と してそ れ に マ ー ク ・ア ップ して い るに過 ぎな い。 そ れ は 長期 的価 格 下 限 の一 連 と して 算定 され た短 期 的 価格 下 限 で あ る とは い え な い。 長 期 的 観 点 か らみ た短 期 的 問 題 処理 と して十 分 で あ るか ど うか とい う点 に疑 点 が あ る。 い い か えれ ば,限 界 原価 計 算 シス テ ィムの枠 内
つ の
に おけ る限界 原価 を基 と し,相 対 的価 格 下 限 の理 念 に 立脚 す るか ら,前 述 の
ロ コ の ロ
操 業 発 展 を前提 と してい る とい え る。 そ のた め に,計 算理 論 的 に も実 際 的 に
コ コ ロ
もそ の シ ス テ ィム の 限 界 が あ る と理 解 す る。 長 期 的 観 点 に 立 脚 す る な らぽ,
り り の り コ コ リ ロ り り
そ の価格下限は絶対 的価格下限 の理念に基 づ く短期的価格下 限でなければ な
らな い。
原 価 計 算 の 機能 をそ の発 展過 程 か らみ る と き,そ の機 能 の拡 大 が な され て きた し,そ の 計 算方 法 も改 善 され て きた。 価 格 下 限 決 定 が い か な る種 類 の 原 価 を基 に して な され るか につ い ては,限 界 原 価 計 算 思 考 を基 盤 に して展 開す る こ と も接 近 方 法 の一 つ で あ るが,他 方,全 部 原 価 計算 の観 点に 立 脚 して価 格 下 限 決 定 問 題 を再 吟 味す る こ とも可 能 な接 近 方 法 で あ る と理 解 す る。前 者
く ラ
の 立 場 か ら,ア ク テ,リ ー ベ ル,メ ン ネ ル,ザ イ ヒ ト,キ ル ガ,ヴ ェ ー ム ・
(2)PaulRiebel,DasRechnenmitEinzelkostenundDeckungsbeitrtigen, zfhwF.11Jahr,Heft2.1959.ss.213‑238.DiePreiskalkulationaufGrundlage von》Selbstkosten《odervonrelativenEinzelkostenundDeckungsbeitragen,
zfbF.16Jahr,Heftlo/11.1964.sS.549‑612.
B6hm‑Wille,DeckungsbeitragsrechnungundOptimierung,1967.
WolfgangKilger,FlexiblePlankostenrechnung,Dri七te,erweiterteAuflage, 1967.
GerhardSeicht,DiestufenweiseGrenzkostenrechnung,EinBeitragzur weiterentwick】ungderDeckungsbeitragsrechnung,zfB、33Jahr.Nr.12.1963.
SS.693‑709.
WolfgangMnnnel,KanndieVollkostenrechnungdurchdenAusweise ,,gesonderterFixkostenbeitrnge"gerettetwerden?ZtB.1967.S.759ff.
一4一 商 学 討 究 第19巻 第2号
(3)
ヴ ィレ,シ ュバ ル ト等 が,後 者 の 立場 か ら,ム ソチ ェル,ヘ ソチ ェル,ヘ ッ カ ー等 が 論 究 して い る。 いず れ に して も,短 期 的価 格 下 限 決 定 問題 は長 期 的 観 点 に 立 脚 した企 業 資 本 維持 を果 し うる値 の検 討 で な け れ ぽ な らな い。
価 格 下 限 と固定 費 補 償 の 問題 を考 察 す るに 際 して,上 記 の 各論 者 の よ うに 原価 計算 シス テ ィムに 関 連 して 論究 す る場 合 と,他 方,価 格 下 限 論 あ るいは 固定 費 補 償 論 と して経 営 費用 理 論 の立 場 か ら独 自に 論 究す る場 合 とが あ る。
こ こで は西 独 に おけ る経 営経 済学 文 献 あ るい は 論 文 に つ い て,ま ず,後 者 の 範 囲 に お い て学 説 史 的 に 検 討す る こ とに よっ て,限 界 原価 を価 格 下 限 と考 え
る見 解 は決 して 支配 的 で ない とい うこ とを明 確 に 立証 した い と考 え る。
皿 価 格 下 限 の概 念 短期 的価格下限 と長期 的価格下限
シ ユ ル ツ(C.E.Schulz)は,「 価 格 下 限 と は 製 品 の 価 格 を,そ れ ま で 下 げ
ごり
うる 限 界 で あ る」 と述 べ,さ らに,「 価 格 下 限 の 概 念 の 中 に,そ れ が 役 立 つ
べ き 目的 規 定 を 損 な うこ とを注 意 すべ きで あ る」 と強 調 して い る。 この シ ュル ツの 定 義 に対 しては,「 価 格 下 限 の研 究 に 関 連 した 問 題 の多 様性 を十 分 に
ゆ
考 慮 して い な い 」 とい うモ ル(J.Moll)の 批 判 も あ る 。 しか し,問 題 が 多 様 で あ れ ぽ,概 念 規 定 は 包 括 的 に 行 な わ ね ぽ な ら な い 。 ま た,ヘ ラ ウ ア ー(J.
Hellauer)は,「 価 格 下 限 とは,も しそ れ に 達 しな い 場 合 に,当 該 の 仕 事 を す
くハ
るか または 経営 を 継続す ることが 不経済で ある 価格であ る」 と述べ てい る が,経 済性 を価 格下限決定 に際 しての決定的 な標 識にす るために,価 格下限
(3)GerhardMunzel,DiefixenKosteninderKostentragerrechnung,Be七riebs‑
wirtschaft】icherVerlagDr.Th.Gabler,Wiesbaden.1966.
FritzHenzel,VollkostenrechnungmitgesondertenFixkostenbeitr自gen, ZfB.1967。S.485ff.
(4)SchulzCarlErnst,DasProblemderPreisuntergrenzeundihreArten。
in:AnnalenderBetriebswirtschaf七,1.Bd.,1927.S.359.
(5)SchulzCarlErnst,a.a.0.,S.359.
(6)MollJosef,Kosten‑KategorienundKostengesetz.stu七 七gart.1934.s.124.
(7)HellauerJosef,Kalkula七ioninHandelundIndustrie.Berlin‑Wien.1931.
S.128.
短期的価格下限 と固定費補償(河 野) 5
概 念 を 狭 く して い る 。 また,ハ ッ ク ス(K.Hax)は,経 営 の 支 払 能 力 を 重 視
く ラ
して価 格 下 限 の定 義 を 流 動 性 の観 点 か ら 行 な って い る。 しか し,ヘ ラ ウア ー,ハ ックス の定 義 は,い ず れ も一 元 的 な定 義 で あ るか ら,こ こでは,シ ュ ル ツの 包 括 的 な定 義 に 基 づ い て展 開す る こ とが 妥 当 で あ る と考 え る。
価 格 引下 げは経 営 の 目標 設 定 に よ って規 定 され,短 期 的価 格 下 限 の決 定 に 際 して も企 業 の 長期 的 目標 設 定 を基 礎 に お くべ きで,こ れ は経 済 酌取 引 の決
コ ロ コ コ る
定 的規 定 要 因 で あ り,長 期 的経 済 成 果 が 改 善 され る場 合 に は 目標 設 定 の 一時 的侵 害 は 是 認 され ね ぽ な らな い。
の の り の り の り の り の ロ の
した が っ で,価 格 下 限 とは,給 付 の販 売 が経 営 目標 の長 期 的 達成 を侵 害 し ない 限 り,少 な くど も 目指 さね ぽ な らな い と ころ の価 格 で あ る と理 解 す る。
この こ とは,価 格 下 限 以下 の各販 売 は 営利 経 済 原 則 の長期 的実 現 に結 び つか ない こ とを意 味 す る。 ヘ ラ ウア ーの定 義 と異 な る点 は,価 格 下 限 の一 般 的概 念 が特 定 の経 営 目標 に 規定 されず に,経 営 目標 設定 の長 期 的実 現 を強 調 して 用 い られ る とい う点 で あ る。 それ ゆ え,価 格 下 限概 念 は 目的的 性 格 を 有す る か ら,基 本 的 な価 格 下 限 問題 の論 究 は 営 利経 済 原則 に反 す る(経 営 者 の)態 度 が本 質 的 に排 除 され る場 合 に のみ 可 能 で あ る。
この よ うに経 営 目標 との関 連 に おい て価 格下 限 問題 を 把 握 す る場 合 に,一 ・ 般 に価 格 下 限 を 短 期 的価 格 下 限 と 長 期 的価 格 下 限 とに 区 分す る こ とが 出来
る。従 来 の価 格下 限 問題 に 関 す る論文 で は,こ の2区 分 の基 準 に つ い て は特 別 な顧 慮 が 払 わ れ て い な い。 ただ,各 見解 の 一般 に共 通 した 点 は,長 期 的価
コ ロ コ ロ
格 下 限 は 総単 位 製 品 原 価 に 一 致 し当 該製 品 の 全部 原価 補 償 を可 能 にす るが, 他 方,短 期 的価 格 下 限 の高 さは 総単 位 製 品 原 価 よ り低 い値 で 決定 され,時 折
の財 の部 分 原価 補 償 をす るにす ぎ ない とい うこ とで あ る。
ハ ソス ・ラブ ェ(HansRaff6e)は ,こ の点 を さ らに展 開 して この 区分 の 本 質 的基 準 と して資 本維 持 を あ げ て い る。 彼 は,「 短 期 的価 格 下 限 の 特 色 は
(8)HaxKarl,BetriebswirtschaftlichenErfolgundWirtschaftlichkeitsme‑
ssung.in:Diewirtschaftsprαfung.J9.1.1948.Heft1.s.7f.
6
商 学 討 究 第19巻 第2号
そ の 適用 が つね に限 られ た期 間 に対 して のみ 可 能 で あ る。 なぜ な ら,他 の場 合 には,企 業 資本 が完 全 に侵害 され るか らで あ る。 そ れ に 対 して,長 期 的価 格 下 限 は他 の事情 が 等 しい限 り資本 維 持 を侵 害 す る こ とな しに 無制 限 の期 間
く ラ
に 対 し て 適 用 さ れ る 」 と い う 。 し た が っ て,ハ ソ ス ・ ラ フ ェ に よ れ ぽ,短 期
コ コ コ
的価 格 下 限 は企 業 資本 維 持 を侵 害 す る こ とに よ って特 色づ け られ る とい う見
ロ
解 に 立 脚 す る。
価 格 政 策 の 本 質 的 原 理 は,つ ね に 営 利 経 済 原 則 に よ っ て つ らぬ か れ た 経 営 目標 に 基 づ か ね ぽ な らな い と理 解 す る か ら,長 期 的 価 格 下 限 の そ の 値 は,総 単 位 製 品 原 価 に 等 し くな け れ ぽ な ら な い し,そ れ が 等 し くな る こ と に よ っ て,は じめ て 全 部 原 価 補 償 が 可 能 と な り,資 本 維 持 が 保 証 さ れ る。 した が っ て,長 期 的 価 格 下 限 が 総 単 位 製 品 原 価 で あ る とい う点 は 従 来 の 見 解 に 一 致 す る 。
こ こ で 特 に 問 題 と な る の は 短 期 的 価 格 下 限 に つ い て で あ る。 こ の 問 題 の 第 1点 は,短 期 的 価 格 下 限 は 総 単 位 製 品 原 価 以 下 で あ る と い う従 来 の 見 解 に つ い て,第2点 は,ハ ソス ・ラ フ ェの い う短 期 的 価 格 下 限 の 値 は 企 業 資 本 維 持 を 侵 害 す る とい う見 解 に つ い て 再 検 討 す べ き で あ る。
まず 第1点 に つ い て は,全 部 原 価 補 償 か 部 分 原 価 補 償 か の 問 題 に 関 連 す る 。 長 期 的 に は 全 部 原 価 補 償 が 達 成 され ね ぽ な ら な い こ とは 自 明 で あ る 。 短 期 的 価 格 下 限 が 総 単 位 原 価 以 下 で あ っ て よい とい う こ と は,部 分 原 価 補 償 を 許 容 す る こ と を 意 味 す る。 しか し,長 期 的 経 済 成 果 が 改 善 され る 場 合 に は 目 標 設 定 の 一 時 的 侵 害 は 是 認 さ れ うる が,そ れ は 決 して 長 期 的 経 営 目標 の 達 成
を 侵 害 す べ き で な い と考 え る。 した が っ て,こ こで,目 標 設 定 の 一 時 的侵 害 の 是 認 とは,決 して 従 来 の 見 解 の よ うに 短 期 的価 格 下 限 が つ ね に 総 単 位 製 品 原 価 以 下 で あ っ て よい とい う こ と に は な ら な い 。 換 言 す れ ぽ,短 期 的 価 格 下 限 が つ ね に 相 対 的 価 格 下 限 で あ っ て よ い と い うこ と に は な ら な い。 す な わ
(g)HansRaff6e,KurzfristigePreisuntergrenzcnalsbetriebswirtschaftliches
Problem.WestdeutscherVerlag.K6]nundOpladen.1961.S,37,
短 期的価格下 限 と固定費 補償(河 野)‑7‑
ち,短 期 的価 格 下 限 は 原 則 と して 総単 位 製 品 原 価 に 等 し くな けれ ぽ な らな い。 ゆ えに,こ の短 期 的価 格下 限 の 内容 を なす もの は 絶対 的価 格 下 限 で あ る べ きで あ る。
こ こに,「 原 則 と して」 とい うの は,次 の よ うな例 外 が 考 え られ るか らで
あ る。 す なわ ち,ヘ ニ ッヒ ・ラ ンゲ』ン(Henig,Langen)の 論文 「動 態 的価 格 下 限 」(DynamischePreisuntergrenzen)の 中 で差 別 的価 格下 限 を例 に と
り,こ の場 合,2つ の状 態 が 区 別 され る。 まず 追 加 注文 の価 格 と残 りの注 文 (ObrigenAuftragen)の 価 格 とに 関 係 が な い場 合 に は,限 界 原価 が価 格 下 限 を表 わす とい う。 した が っ て,も し価 格 が 限 界 原価 以上 で あ れぽ,そ れ は 積 極 的成 果 を もた らす か ら追 加 注文 を 引受 け,他 方,限 界 原 価 よ り低 い価 格 の 場 合 に は,追 加 注 文 は拒 絶す べ きで あ る とい う結 果 に な るが,こ れ は ラ ソゲ ンに よれ ば 静 的 モデ ル の解 答 で あ る とい う。 しか し,私 見 に よれ ぽ,上 述 の 理 由か ら限 界 原価 を 基 準 に した価 格 下 限 の 理 解 を と らな い。 しか し,こ こで 問題 とす べ きは,追 加 注文 の価 格 と残 りの 注文 の価 格 とに 関 係が あ る場 合 で あ る。 す なわ ち,も し追 加注 文 の価 格 が 総 単 位 製 品原 価 以下,す なわ ち,こ こで い う限 界 原価 を基 準 に して,さ らに そ れ 以下 で あ る場 合,当 該注 文 者 の 未 来 の注 文 が あ るか とい うこ とで あ る。 両老 に 関係 が あれ ば,た とえ,価 格 が 限界 原 価 さえ も補 償 しえ な い と して も,顧 客 を将 来 の継 続 的 顧客 とす るた め に当 該 注 文 者 の追 加 注 文 を受 け る とい うこ とに な る。
これ は 新 製 品 の採 用 に際 して しほ しぽ と られ る方 法 で あ り,一 般 的 に い え ば,当 該 製 品 を まず よ り低 い価 格 で販 売 し,後 にそ の犠 牲 分 を十 分 補 償 す る に足 る価 格 で 将 来 の 顧客 を獲 得 し うる とい う予測 が あ る場 合 で あ る。 ラ ソゲ ソは これ を 動態 的評 価 に よ る問 題 解 決 で あ る と称 して い る。短 期 的価 格 下 限 が総 単 位 製 品 原価 以下 で あ っ て よい 場 合,換 言す れ ば,目 標 設 定 の一 時 的侵 害 が 許 され るのは 後 者 の場 合 で あ る。 した が って,短 期 的価 格 下 限 は 原則 と
(10)H.Langen,DynamischePreisuntergrenzen.ZfbF.1966.S.650ff.
一8
商 学 討 究 第19巻 第2号
して総 単 位 製 品原 価 に 等 し くな け れ ば な らな い。
ゆ えに,ム ソチ ェル(GerhardMunzel)の 指 摘 す る よ うに,短 期 的価 格 下 限 と長 期 的価 格下 限 の 関 係は,各 短 期 的価 格 下 限 の 合 計は 長期 的価 格 下 限 に 一 致す る とい う等 式 が成 立す る。
次 に,短 期 的価 格 下 限 問題 の第2点 と して のハ ンス ・ラ フ ェ(HansRaff6e) の い う短 期 的価 格 下 限 のそ の値 は企 業 資本 維 持 を侵 害 す る とい う見解 に つ い て は,短 期 的価 格 下 限 の 内容 を なす ものは 原 則 と して相 対 的価 格 下 限 で は な い と理 解 し,そ れ は 総 単 位製 品 原価 以下 で あ る と考 えな い。 換 言 す れ ぽ,短 期 的価 格 下 限 も長期 的 観 点 の も とに絶 対 的価 格 下 限,す なわ ち総 単 位 製 品 原 価 で な けれ ぽ な らない とい う原 則 に 立 脚 す る。
した が って,こ の立 場 を と る短 期 的価 格 下 限 は企 業 資本 維 持 を侵 害 す る も ので ない し,裏 返 えせ ぽ企 業 資 本 維持 を侵 害 す る よ うな短 期 的価 格 下 限 で あ って は な らな い。
皿 価 格 下 限 問題 の一 元 的処 理
経 営 経 済学 文 献 の 中 に み られ る価 格 下 限 問題 に つ い て の見解 は,大 別 して ー元 的 観 点 か らの 論究 と多 元 的観 点 か らのそ れ に 区分 し うるロ リ。価 格下 限 問 題
の一 元 論 は,唯 一 の観 点 か ら価 格 下 限 を顧 慮す る場 合 を さ し,専 ら唯 一 の経 営 経 済 的 な局 面(た とえ ぽ,原 価 または 流動 性)の 顧慮 に 限 定 され て い る。
そ れ に対 して,価 格 下 限 問題 の多 元 論 は,若 干 の観 点か ら(た とえぽ,原 価 と流 動 性 の観 点)顧 慮 され る場 合 を さす。 まず,以 下,1930年 頃 まで に み られ る価 格下 限 の一 元 的見解 に つ い て検 討 す る。
価 格 下 限 問 題 に 関 して1930年 頃 まで に 共 通 して い る点 は,短 期 的価 格 下 限 を比 例 的単 位 製 品 原価 な い し変 動 的 単位 製 品 原価 とみ る こ とで あ る。 しか
(11)HansRaff6e,1(urzfristigePreisuntergrenzenalsbetriebswirtschaftliches Problem.WestdeutscherVerlag.K61nundOp]aden.1961.S.59.
短 期的価格下 限 と固定費補償(河 野)‑9‑
(12)
も,ワ ル プ,シ ュマ ー レ ン1㍉ ハ,レ ー マ ソ,ベ ス テ 等 の 代 表 的 陳 述 は,い ず れ も ミク ロ経 済 学 約 な 概 念 に 基 づ い て い る。 ワル プ(E.Walb)は1926年
「私 経 営 と公 経 営 の 成 果 計 算 」 と 題 して,そ の 中 で 「も し,経 営 が 注 文 を 引 受 け るべ きで な い か,ま た は,か か る 注 文 を 生 産 費 以 下 で 引 受 け るか の 問 題
(13)
が 生ず るな らぽ,暫 時,固 定 費 を補 償 しな い価 格 で売 却す る こ とが 出来 る」
と述 べ てい る。 彼 の 見解 に よれ ば,経 営 に と って 固定 費 は 「先 天 的損 失 」 で あ って,い ず れ にせ よ発 生す るか ら企 業 が価 格 に よる補 償 を一 時 的に 断 念 し
うる原価 で あ る。 価 格 設 定 に対 す る最 小限 界 は 比 例 費 で あ り,そ れ よ り高 い
ロ の コ ロ ロ の
収 益 を も た ら す 販 売 は 固 定 費 の 補 償 を 絶 対 的 に で な く 相 対 的 に 補 償 す る か ら 有 利 で あ る と い う 。
こ の よ う な 見 解 は 不 足 操 業 の 場 合 に,当 時,実 践 に お い て 普 及 し て い た 全
部 原 価 計 算 へ の 慣 習 へ の 反 動 と し て 理 解 す べ き で あ る が,原 価 経 済 的 に 決 定 さ れ る 唯 一 の 価 格 下 限 の み を 考 慮 す る こ と は 一一 面 的 で あ り,決 定 的 に 重 要 な 流 動 性 観 点 が 顧 慮 さ れ て い な い 。 し か も,こ の 財 務 経 済 的 考 察 を 行 な っ て い な い と い う 点 を 別 に し て も,価 格 下 限 と 変 動 的 単 位 製 品 原 価 と を 同 一 視 す る こ と は,ラ フ ェ に よ れ ば,経 営 経 済 的 現 実 に 相 応 し な い と い え る 。
そ こ で,ワ ル プ 等 の 見 解 に 対 し て は 具 体 的 に 次 の 諸 問 題 点 を 指 摘 し う る 。 1.単 種 製 品 生 産 企 業 を 考 察 の 中 心 に し て お り,多 種 製 品 生 産 企 業 に 対 し
て は,個 々 の 製 品 種 類 の 孤 立 し た 吟 味 が 可 能 で あ る 場 合 の み 普 遍 妥 当 性 が あ る 。
(12)walbErnst,DieErfolgsrechnungPrivaterund6ffentlicherBe七riebe.
Berlin‑Wien.1926.S.424.
SchmalenbachEugen,GrundlagenderSelbstkostenrechnungundPreis‑
politik2.Aufl.Leipzig.1925.S.47‑5L
LehmannM.R.,DieindustrielleKalkulation.Berlin‑Wien.1925.S.11f.
undUberBegriffundAusgabenderPreiskalkulation,in:Betriebswirtsch‑
aftlicheRundschau.3J9.1926.s.21‑23.
BesteTheodor,DieVerrechnungspreiseinderSelbstkostenrechnung
industriellerBetriebe.BもtriebswirtschaftlicheZeitfragen,herausgegebenvon derGesellschaftfUrwirtschaftlicheAusbildung.Hef七5.Berlinl924,S.64.
㈹WalfErnst,a.a.0.,S.26.
一10一 商 学 討 究 第19巻 第2号
2.価 格 下 限 の決 定 に 際 しての販 売 経 済 的活 動 とそ の成 果 が考 慮 され てい ない 。
3.将 来 の給 付 生 産 に 対 して の み価 格 下 限 の決定 が行 なわ れ,現 有 の在 庫 に つ い て の吟 味 が行 なわ れ て い な い。
4.き わ め て短 期 的考 察 で あ る。
5.偶 発 的再 操 費 と休 止 費 が 考 慮 され て い ない 。
した が って,変 動 的単 位 製 品 原 価 を価 格 下 限 と して一元 的 に 決定 す る こ と は,企 業 の 財 務状 態 が安 全 で あ り上記5前 提 が み た され る場 合 の み 妥当 性 を 有 す る。価 格 下 限 問題 の一 般 的解 決 は 一元 的処 理 に よって は可 能 で な い。 そ こで,こ の よ うな諸 問題 を解 決 し,経 営 経 済 的実 践 に 相 応 した価 格 下 限 問 題 の処 理 を提 案 した の は シ ュル ッ(C.E.Schulz)で あ る。
Wシ ュ ル ッ理 論 の概 要 と そ の 検 討
シ ユ ル ツ(Schulz・CarlErnst)は,1927年 に 「価 格 下 限 の 問 題 と そ の 種
く の
類 」(DasProblemderPreisuntergrenzeun4ihreArten)と 題 して 価 格 下 限 問 題 の 満 足 な 解 決 に 対 す る決 定 的 方 法 を う ち だ した 。 従 来,専 ら一 種 類 の 価 格 下 限 に 関 す る考 察 に す ぎ な か っ た 諸 見 解 とは 異 な っ て,シ ュル ッ が 価 格 下 限 を 若 干 の 種 類 に 区 別 し経 営 経 済 的 実 践 に 適 応 し うる よ うに した こ とは 新 しい 手 始 め と して 注 目に 値 す る し,そ の 後 の 価 格 下 限 に 関 す る 研 究 は す べ て シ ュル ツ理 論 を 背 景 に して 展 開 され て い る。
シ ュル ツは,価 格 下 限 は 全 く異 な る 目的 に 役 立 つ 相 対 的 概 念 で あ る とい う 立 場 か ら,「 価 格 下 限 に と っ て 重 要 で あ る特 定 目 的 は 形 容 詞 に よ っ て 表 現 さ
くゆ
れ る」 と して,い わゆ る6種 類 の価格下限をあげてい る。
(19SchulzCarlErnst,DasProblemderPreisuntergrenzeundihreArten.
Berlin‑Wien.Leipzig1928.TeilI‑IVabgedruck'inAnna】en.S.347‑377.
TeilVinBwR4Jg.1927.s.205‑208.
(1$SchulzCarlErnst,a.a.0.,S.359f,
短 期 的 価 格 下 限 と 固 定 費 補 償(河 野)‑11‑.
くゆ
Lい わ ゆ る 実 際 的 価 格 下 限(effektivePreisuntergrenzen)に つ い て;
これ は 生 産 を 行 な う こ とが 経 済 的 で な くな る時 点 を 示 す こ とを 目的 とす る。
した が っ て,「 い か な る価 格 以 下 で は 経 営 を 休 止 す る こ とが よ り経 済 的 で あ る か 」 の 質 問 に 答 え る もの で あ る と して,シ ュル ツ は,実 際 的 価 格 下 限 を 最
も重 要 な 価 格 下 限 と呼 び,そ の 処 理 に 最 大 の 注 意 を 払 っ て い る。
2.実 際 的 価 格 下 限 と並 ん で 「経 営 の 流 動 性 の 維 持 の た め の 価 格 下 限 」 に つ い て 論 述 して い る 。 こ の 価 格 下 限 は,シ ュル ツ に よれ ば,「 経 営 資 本 の 流 動 性 が 危 険 に な る の は い か な る価 格 以 下 で あ るか 」 の 質 問 に 答 え る 目的 を も
っ て い る 。 シ ュル ッ の 論 文 で は,実 際 的 価 格 下 限 の 基 礎 とな っ て い る 原 価 経 済 的 考 慮 が,財 務 経 済 的 観 点 の 導 入 に よ っ て 完 全 に され て い る が,そ の 財 務 経 済 的 価 格 下 限 に つ い て の 詳 論 は,ハ ン ス ・ラ フ ェの 文 献 に ま た ね ば な ら な
い0
3.そ の ほ か に,実 際 的 価 格 下 限 と 流 動 性 志 向 の 価 格 下 限 と 並 ん で,投 機 的 価 格 下 限(spekulativePreisuntergrenze)が あ げ ら れ る 。 投 機 的 価 格 下 限 は 一 一 シ ュ ル ツ に よ れ ば 一 積 極 的 価 格 政 策 に 対 す る 可 能 性 と 用 意 と が 与 え ら れ て い る 場 合 に 妥 当 性 を も つ と い う 。 企 業 は 当 面 の 不 足 操 業 の 段 階 に お い て は,実 際 的 価 格 下 限 を 基 礎 に し て 価 格 を 設 定 し な い 。 む し ろ,販 売 拡 張 へ の 投 機 を す る た め に 価 格 引 下 げ を す る 。 シ ュ ル ツ は,こ の 価 格 引 下 げ は 経 営 最 適 の 操 業 の 達 成 を 可 能 に す る と 考 え て い る 。 こ の 際,投 機 的 価 格 下 限 は 経 営 最 適 に お け る 回 避 可 能 費(dievermeidbarenKosten)を 基 礎 に す る 。 し た が っ て,経 営 最 適 が 実 際 に 実 現 さ れ る な ら ば,投 機 的 価 格 下 限 が 実 際 的 価 格 下 限 に な る 。
4.差 別 的 価 格 下 限(differentiellePreisuntergrenze)は 操 業 の 改 善 に 役 立 つ 追 加 注 文 に 対 し 決 定 的 に 適 用 さ れ る 。
⑯SchulzCarlErnst,a.a・O.,S・360.「effektivePreisuntergrenze」 と い う用 語 は 「将 来 の 生 産 の た め の 原 価 経 済 的 休 業 一 価 格 下 限 」(Kostenwirtschaftlichen Stillegungs‑PreisuntergrenzeftirdiezukUnftigeProduktion)と し・うほ うが そ の 現 象 の 本 質 を 十 分 に 表 現 す る と い う意 味 で よ り適 切 で あ る 。
一12一
商 学 討 究 第19巻 第2号
5.計 画 的 価 格 下 限(planmaigenPreisuntergrenze)は 全 部 原 価 補 償 を 達 成 す る よ う な 価 格 を 下 限 と す る こ と を 表 す 。 し た が っ て,シ ュ ル ッ に よ れ ば,計 画 的 価 格 下 限 は 長 期 的 価 格 下 限(dielangfristigePreisuntergrenze)
と み ら れ る 。
6.さ ら に,シ ュ ル ッ は 逓 増 地 帯 の 価 格 下 限 に つ い て 述 べ て い る 。 逓 増 地
o
帯 の価 格 下 限 を 原 価 志 向 的 に 決 定 す る 限 り,当 然,相 対 的 価 格 下 限 と して の 短 期 的 価 格 下 限 は 問 題 で な い 。 した が っ て,短 期 的 価 格 下 限 の 分 類 の 基 準 が 企 業 の時 折 の 操 業 状 態 に 基 づ くの は 妥 当 で な い とい うラ フ ェの 批 判 が あ る 。 以 上 の よ うに,価 格 下 限 の 相 対 性 を 示 し,価 格 下 限 を 異 な る 種 類 に 区 別 し て い る こ と は シ ュル ッの 大 き な 功 績 で あ る 。 そ れ に よ っ て 全 体 の 問 題 領 域 が 拡 大 され た 。 一 般 的 に 短 期 的 価 格 下 限 の 種 類 を,財 務 経 済 的 価 格 下 限 と給 付 経 済 的 価 格 下 限(leistungswirtschaftlichePreisuntergrenzen)と に 区 分 す れ ば,財 務 的 局 面 は 流 動 性 志 向 の 価 格 下 限 に よ ヴ て 把 握 され,給 付 経 済 的 価 格 下 限 は,シ ュル ッの 場 合 に は 実 際 的 価 格 下 限,差 別 的 価 格 下 限 と投 機 的価 格 下 限 の形 態 に お い て 考 慮 され て い る。 こ の 際,シ ュル ツは 給 付 経 済 的 短 期 的 価 格 下 限(dieleistungswirtschaftlichenkurzfristigenPreisuntergrenzen)
を 一 面 的 に 原 価 観 点 か ら考 察 し て い る。 販 売 経 済 的 吟 味 は 一 原 価 経 済 的 観 点 の 必 要 な 補 充 と して一 た だ 投 機 的 価 格 下 限 の 形 態 の 中 で 簡 単 に 論 述 し て い る に す ぎ な い が,シ ュル ツは 給 付 経 済 的 価 格 下 限 の 原 価 経 済 的 側 面 を 本 質 的 に 改 良 した 。
(1)実 際 的価 格 下 限 の 改 良 処 理
1)実 際 的 価 格 下 限 の 決 定 に 際 して の 固 定 費 の 除 去 可 能 性 の 考 慮 と再 操 費 の 導 入
シ ュル ツは 前 記 の6種 類 の 価 格 下 限 の うち で,実 際 的 価 格 下 限 を 最 も重 要 視 し,そ の 実 際 的 価 格 下 限 を 算 定 す る際 に,固 定 費 の 除 去 可 能 性 と再 操 費 の 問 題 と を 考 慮 し て い る 。
シ ュル ツ に よれ ば,実 際 的 価 格 下 限 の 決 定 に 際 して,価 格 下 落 に よ っ て 継
短期的価格下限 と固定費補償(河 野) 一13一
続経 営 が 一時 的休 止 よ り損 失 が多 い場 合 に は,専 ら変動 費 のみ が継 続 経 営 の 追 加 的 原価 で は な い。 同 じ く経 営 の休 止 に 際 して発 生 す る原 価 は 固 定 費 に 一・
致 しな い。 特 に長期 にわ た って経 営 が 休 止す る場 合 には 固 定 費 の一 部 が 除去 され る こ とを計 慮 す べ きで あ る。 た とえ ば,事 情 に よっ ては,給 料 が 固定 費 で あ る部 門管理 者 や主 任 を解 雇 す る ことが可 能 で あ る。 した が って,い わ ゆ
コ
る 固 定 費 の み で な く 原 価 の 回 避 可 能 性(VermeidbarkeitderKosten)が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い と 主 張 す る 。
そ れ ゆ え に,価 格 に よ っ て 経 営 休 止 に よ る 回 避 可 能 変 動 費(dievermeid‑
barenvariableKosten)を 補 償 す る と と も に,経 営 休 止 に よ る 回 避 可 能 固 定 費(dievermeidbarenfixenKosten)を も 補 償 す べ き で あ る 。 こ の 関 係
(17)
を公 式 で 表 わ せ ば 次 の よ うで あ る。
P・‑v+塾 許
V;変 動 的 単 位 製 品 原 価 FT;期 間 当 り 固 定 費
FE;期 間 当 り 絶 対 的 固 定 費
FT‑一 ・FE;期 間 当 り 回 避 可 能 固 定 費 X;期 間 当 り 製 品 数 量
こ の 公 式 の 意 味 は,短 期 的 価 格 下 限 は 単 に 限 界 原 価 で は な く て,変 動 的 単 位 製 品 原 価+回 避 可 能 固 定 費 で あ る こ と を 表 わ す 。
さ ら に,除 去 さ る べ き 固 定 費 と 並 ん で シ ュ ル ツ が 確 信 を も っ て 強 調 し て い る が 生 産 の 再 操(WiederaufnahmederProduktion)に 際 し て 発 生
㈲ こ れ に つ い て シ ュ ル ツ 以 前 に]MaletzとRummelと が そ れ ぞ れ 指 摘 し て い る 。 SchulzCarlErnst,a.a.O.,S.358f.
RummelKur七,Erh6hungderWirtschaftlichkei七indentechnischen Be七riebenderGro2eisenindustrie.Dttsseldorf1926.S.56.
Male七zJosef,Kostenauf16sung.in:zfhF.20J9.1926.s.31.
SeidelKarl,SelbstkostenrechnungundPreisgestaltung.in:Annalender BetrieiDswirtschaft.1Bd.1927.S.218f.
冒
一14一 商 学 討 究 第19巻 第2号
・ 。 ・(18)
す る再 操 費(Anlaufkosten)を も考 慮 す べ き で あ る 。 経 営 の 休 止 に よ っ て 回 避 可 能 固 定 費 が 回 避 され,補 償 さ るべ き も の と し て変 動 費 に 追 加 せ ね ぽ な ら な い が,し か し一 方,再 操 費 の 場 合 に 継 続 生 産 に よ っ て 避 け られ る か か る原 価 が 問 題 と な る 。 した が っ て,そ の 再 操 費 は 価 格 下 限 の 計 算 を す る際 に 差 し 引 くべ き で あ るか ら次 の 等 式 で 表 わ され る 。
(FT‑FE)‑A
Pu=V十X
A;再 操 費
そ れ ゆ え に,再 操 費 を 顧 慮 した 場 合 の 短 期 的 価 格 下 限 の 値 と して,変 動 的 単 位 製 品 原 価 に 加 え な け れ ぽ な らな い の は 単 位 製 品 当 りの 回 避 可 能 固 定 費 に 再 操 費 を 負 担 させ た 値 で あ る。
さ らに,シ ュル ツは 経 営 の 休 止 に 際 して 追 加 的 に 発 生 す る 原 価,す な わ ち 休 止 費(Stillegungskosten)を 顧 慮 す べ き で あ と主 張 す る 。 した が っ て,価 格 下 限 は 単 位 製 品 当 りの 全 体 固 定 費 と 単 位 製 品 当 りの 全 体 休 止 費 の 差 で 修 正 す る 変 動 的 単 位 製 品 原 価 か らな る。 こ の 際,全 体 休 止 費(diegesamten Stillstandskosten)Stは 除 去 不 能 固 定 費(FE),休 止 費(St)と 再 操 費(A) か ら な る 。
Pu・‑V+聖 長St
St=FE十A十Stl
コ
こ の 公 式 か ら明 らか な よ うに,原 価 的 価 格 下 限 は 特 別 な 場 合 に の み 変 動 的 単 位 製 品 原 価 に 等 しい 。 実 際 的 価 格 下 限 が 変 動 的 単 位 製 品 原 価 以 上 とな る の は,こ と に 長 期 的 休 止 に 際 して,き わ め て 少 額 の 休 止 費,再 操 費 と除 去 不 能 固 定 費 が 発 生 す る場 合 で あ る。 逆 に 実 際 的 価 格 下 限 が 変 動 的 単 位 製 品 原 価 以 下 で あ る の は,た と え ぽ 市 場 か らの 一 時 的 遊 離 に よ っ て 後 に 宣 伝 費 の 形 で よ
㈹ 再操費 は技術 的再操費 と経済 的再操費 とに 区分 され る。前 者に属す るものは鋳 鉱 炉の開始 後,直 接 に銑鉄 生産につ い て発生 す るdieKostenderFehlproduk‑
tionで あ る。 経済的 再操費(市 場 的再操費)は た とえば 追加宣伝費 の形 で 発生
す る。且axKar1,Betriebsunterbrechnungsversicherung・S・57‑6L
短期的価格下限と固定費補償(河 野) 一15一
り高 い再 操 費 が発 生す るか,経 営 休 止 が多 額 の追 加 的 休 止費 を伴 な う場 合 で あ る。 しか し この場 合 は きわ め て稀 で あ る と考 え られ るか ら,実 際 的価 格 下
の コ の
限(原 価 的価 格下 限)は つね に変 動 的単 位 製 品原価 以 上 で あ る とい え る。
2)実 際 的価 格 下 限 の決 定 に 際 して の再 操 費 問 題
シユル ツは 再操 費 を よ り詳 細 に把 握 す る こ とに よっ て実 際 的価 格 下 限 の公
く の
式 を改 良 しよ うと した 。再 操 費 を 次 の よ うに表 わ して い る。
A=・a十a'm
a;1ヵ 月 の 経 営 休 止 後 の 再 操 費 a';そ れ 以 上 の 月 に 対 す る 増 加 額 m;休 止 月 数
テ ィ ビ ィ(Tibi,Erich)に よ れ ば,こ の 再 操 費 の 公 式 は,A・ ・a+a'(m‑1)
く の
と表 わ さ ね ば な らな い が,ラ フ ェに よれ ぽ,そ の 点 を 度 外 視 して も,余 り意
ロ リ
味 が ない とい う。 なぜ な ら,再 操費 は一 定 の基 本 額 と時 間比 例 の増 加 量 とに 分 解 す るには余 りに も不 特定 量 で あ る。 シ ュル ッに よれ ぽ,再 操 費 は事 情 に よ っては 時 間経 過 と共 に飛 躍 的 に増 加 す る可 能 性 が あ る と指 摘 す るが,ハ ソ ス ・ラ フ ェの 見解 に よれ ば,再 操 費 は 休 止期 間 に よっ て増 減 す る とは 限 らな い。 市 場 的再 操 費 は,長 期 の休 止 期 間 後 の再 操費 が短 期 の休 止期 間 の それ よ り少 な い こ とが あ りうる。 なぜ な ら,企 業 の販 売 状 態 が景 気発 展 の ご とき外 部 的 要 因 に作 用 され るか ら,時 間 的経 過 に よっ て増 加す る量 で あ る とは い え
な い と言 う。
モル(Moll,Joself)に よれ ば,再 操 費 の 見積 困難 性 のた め に,実 際 的価 格
くゆ
下 限 の 算 定 に 際 し て そ れ を 等 閑 視 す べ き で あ る と い う 。 つ ま り,再 操 費 を 顧 慮 し な け れ ぽ 価 格 下 限 を 正 確 に 算 定 し う る が,再 操 費 を 包 含 す れ ぽ 不 確 実 性 要 因 の た め に 価 格 下 限 算 定 が 不 可 能 に な る 。 モ ル は,価 格 下 限 と し て の 比 例
⑲SchulzCarlErnst,a.a.0.,S.362.
⑳TibiErich,KostenentwicklungundPreispolitik.Berlin.1937.S.60.
⑳HansRaff6e,a.a.0.,S.69,
働MollJoself,Kosten‑KategorienundKosten‑Gesetz,stuttgart.1934.s.131.
一16一 商 学 討 究 第19巻 第2号
く
率(ProPortionalenSatzes)が 最 も普 遍 妥 当 性 が あ る と主 張 す る。 モ ル は, 比 例 率 とは 単 位 製 品 当 りの 限 界 原 価(Bruttogrenzkosten)で あ る と 理 解 し て い る 。 そ の た め に,短 期 的 価 格 下 限 と して 限 界 原 価 の 妥 当 性 を 侵 害 す る再 操 費 は 計 算 か ら除 外 して い る。 さ らに 注 意 す べ き は,モ ル は,再 操 費 の み な らず 偶 発 的 追 加 的 休 止 費 を も顧 慮 せ ず,短 期 的 価 格 下 限 の 計 算 か ら除 外 して い る こ とで あ る。 こ の 点,ホ ラ ゼ ク は,限 界 原 価(モ ル の 意 味 で の 比 例 率) を 短 期 的 価 格 下 限 とす る こ との 矛 盾 を 指 摘 し,限 界 原 価 を 絶 対 的 限 界 と しえ
ラ
な い と主 張 す る。 しか も再 操 費 の数 量 化 の 困難 性 を理 由 にそ れ を 無 視す る こ とに異 議 を 唱 えた 。 モル は一 般 に正 確 な価 格 下 限算 定 の可 能 性 に つ い て誤 っ た 観念 を も って い る と指 摘 す る。 いず れ に せ よ,再 操 費 が 考 慮 され な い場 合 に は短 期 的価 格 下 限 を 決定 しえ ない とい うの が 一般 的 見解 で あ る。
3)時 間 的要 素 と実 際 的価 格 下 限 の算 定
損失 価 格 で の継続 経 営 が一 時 的休 止 か の 代 替案 決定 の基 礎 には,不 利 な収 益 状 態 の期 間 の前 提 が あ る。 企 業 家 は経 済 的事 実 に基 づ い て価 格下 落 の期 間 を 予測 しよ うとす る。 再 操 費 が無 視 され る場 合 に,価 格 下 落 の期 間 に つ い て の 異 な る前 提 が価 格 下 限 の高 さ に影 響す る こ とは 明 白で あ る。 予測 され た価 格 下 落 の期 間 に応 じて 固定 費 の除 去 は 異 な る大 きさを とる こ とに基 づ く。 す な わ ち,一 時 的 休 止 に 際 して 除去 す べ き固定 費 が多 け れ ば,短 期 的価 格 下 限 の値 が よ り高 くな るが,し か し,こ の際,実 際 的価 格 下 限 算 定 の正 確 性 が時 間 的要 素 の誤 った 見積 に よっ て妨 げ られ るか ど うか が 問 題 で あ る◎
この点 を数 字例 で 明 らか に す れ ば,再 操 費 を 無視 す る と して,Pu・=V+
(FT‑FE
X)‑S報 お い て,Vは 平 均 的変 動 費1D鴫 朗 当 り全 体 固定 費
320000DM,FEは 月 当 り 除 去 不 能 固 定 費118000DM,休 止 期 間5ヵ 月,St、
は 休 止 に 際 し て 発 生 す る す べ て の 期 間 非 依 存 の 休 止 費 で,そ の 額 は135000 DMと す る 。 し た が っ て,月 当 り27000DMと な る 。Xは 月 当 り 生 産 数 量 で
㈱MollJoself,a.a.o.,s.137.
⑫のHoracekMax,DerkalkulatorischeAusgleich.Wien.1950.S.77,
ラ
50000で あ る 。
短期的価格下限と固定費補償(河 野)
320000‑118000‑27000Pu
=1十
50000
一17一
==4.50DM
そ の結 果4.50DMは,生 産 した50000単 位 の 販 売 に あた って 少 な くとも 達 成 され ね ぽ な らな い価 格下 限 で あ る。 そ れ が4.50DMに 達 しない場 合 に は 一時 的休 止 が 有 利 とな る こ とを 意 味 す る。
この計 算 に よって推 論 され る こ とは,価 格 下 落期 間 の誤 った評 価 は確 か に 価 格 下 限 の 妥当 性 に 影 響 す る。 これ は専 ら 期 間 非依 存 の休 止 費135000DM が 一一一5ヵ 月が 誤 った評 価 で あ る限 り一 月数 評 価 の多 少 に よって 異 な る配 分 を うけ る こ とに な る。 しか し,一 般 に多 くの場 合 に,期 間 非 依 存 の 休 止費 は発 生 しな いか,ま た は発 生 して も相 対 的 に微 々た る もので あ るか ら,期 間 要 素 に つ い て の評 価 困難 性 は実 際 には 問 題 で な い。 こ とに変 動 費 並 び に 除去 可 能 固定 費 は 十 分 正 確 に 算定 し うる。 しか し,か か る思 考 には 次 の よ うな 決 定 的前 提 が あ る こ とに 留意 す べ きで あ る。
4)生 産数 量 の販 売 可 能性 に基 づ いた 実 際 的価 格 下 限 の算 定
実 際 的価 格 下 限は,再 操 費 と期 間非 依 存 の休 止 費 を 無視 す れ ぽ,生 産数 量 と販 売数 量 とが少 な くと も平 行 的 に変 動 す る場 合 に 明確 に算 定 され る。 とい うのは,実 際 的価 格 下 限 を 算定 す るに際 して,生 産数 量 が 少 な くと も算 定 し た 下 限 に 達す る価 格 で 販 売 され うる とい う期 待 の もとで の生 産 数 量 がそ の計 算 の基礎 に な る。 か か る販売 可 能 性 が なけ れ ば,全 く新 しい 問題 と して,在 庫,在 庫 費 の 問題,ま た は期 待 に反 して減 少 した販 売 数 量 へ の生 産 数 量 の 適 応 の問 題 が生 ず る。 これ ら各場 合 に,異 な る原価 状 態 が生 じ,異 な る価 格 下 限 の値 を と る。 た とえぽ,市 場 の 有効 需 要 が 過 大 評価 され た た め に計 画 生 産 量 が 減 少 す るな らば,除 去可 能 固定 費 は本 来評 価 され た数 量 以下 の数 量 に割 当 て られ るか ら,実 際 的価 格下 限 は高 い値 を と る ことに な る。
⑳ZahleninAnlehnunganTibiEricha.a.0.,S.61f.
一18一
商 学 討 究 第19巻 第2号
販 売 数 量 に 関す る不 確 実 な予 測 と並 ん で,さ らに,実 際 的価 格下 限 は価 格
下 落 が た だ一 時 的現 象 で あ る とい う 重 要 な 前 提 に 基 づ い て い る。 した が っ
り
て,こ の 前 提 の た め に 企 業 の 清 算(Liquidation)に 関 す る 吟 味 が 除 外 さ れ て い る 。
(2)差 別 的 価 格 下 限(DiedifferentiellePreisuntergrenze)
差 別 的 価 格 下 限 は,シ ュ ル ッ に よ れ ば,操 業 の 増 加 に 役 立 つ 追 加 注 文 に 対
り く ラ
す る価 格 下 限で あ る。 それ は増 分 原価 総 額 を追 加 給付 単 位 で割 る こ とに よっ て算 定 され る。 この場 合 に,差 別 的価 格 下 限 に対 して も,実 際 的価 格 下 限 の 場 合 と同 じ計算 原則 を適 用 してい る。 す なわ ち,追 加生 産 は追 加注 文 を前 提 に し在庫 問題 を 除 外す る。 さ らに価 格 差 別化 の前提 の も とに,差 別 的価 格 下 限 をNetto‑Grenzkostenと 同一 視 し,し か も 販 売経 済 的要 因 の作 用 を無 視 してい る。 した が って,も し従 来 の製 品 の価 格 と追 加 製 品 の価 格 との間 の差 別 化 が 行 なわ れ な けれ ぽ,「 追 加 注文 の価 格 は限界 原 価 の み な らず,従 来 の
の コ
注 文 に対 す る価 格下 落 に よって もた らされ る売 上 高 減 少 を も補 償 す べ きで あ
り
る」 こ と を 注 意 す べ き で あ る。 そ れ に も拘 わ らず,シ ュル ッの 場 合 に は,差 別 的 価 格 下 限 が 純 粋 に 原 価 的 に 規 定 され て い る。
企 業 が 生 産 量 をX2か らX3に 増 加 す る と仮 定 す る。 操 業 は た だ 上 昇 し, そ れ に 応 じて 価 格 が 下 落 す る。
追 加 操 業X3‑X、 の 場 合 に,X31単 位 の 価 格 が 全 部 原 価 を補 償 す る必 要 は な い 。 下 図 に 仮 定 され た 直 線 的 費 用 経 過Kが 販 売 曲線U1に 比 較 され る。
これ は,価 格 が 全 生 産 単 位 に 対 し 製 品 単 位 当 りtgα が 妥 当 す る 場 合 で あ る。 しか し追 加 生 産 量X3‑X2を 売 却 す るた め に は 追 加 単 位 に 対 す る価 格 は tgα か らtgβ に 下 げ られ る 。tgβ の 価 格 の 場 合 に は 変 動 費 が 補 償 され る 。 販 売 曲 線 はEが 折 目 とな り,Uz・tg/3が 価 格 下 限 と な る 。X3の 場 合 の利 益 は 価 格 下 限 で 計 算 す れ ぽ 生 産 量 及 び 販 売 量X2の 場 合 の 利 益 に 等 しい 。
㈱SchulzCarlErnst,a.a.O.,S.370f.undS,64.
L)ntGutenbergErich,DerAbsatz.S.299.
短期的価格下限 と固定費補償(河 野) 一19一
K U
U1/Du・ 、
ρ9 9 9'ρ."
!/1
//暑 /ン!IBK
,'.'o
,』"βE
…
o
;
= lA
1 ,
…
し
塁
=
α
…
OX1
X
X3 X
tgα とtgβ の間 の追 加 生 産単 位 に対 す る各 価 格 が この利 益 を高 め る。 しか るに,固 定 費 飛 躍 を 有す る原 価 曲線 を問題 とす べ きな らば,そ の固定 費飛 躍 が価 格 下 限 の算 定 にお い て考 慮 され ね ぽ な らない 。 この際,操 業 増 加 の 領 域 内 で 固定 費 飛 躍 が 発 生す る場 合 に は,変 動 費 プラス 区 間 固定 費 が補 償 され ね ぽ な らな い。 した が っ て,固 定 費飛 躍 を伴 な う操 業増 加 の際 の価 格 下 限 は, 固 定 費飛 躍 な しの操 業 増 加 に 際 して の価 格 下 限 よ り高 くな る。 差別 的価 格 下
限 の場 合 に は,通 常,休 止 費 及 び再 操 費 を度 外視 して計 算 の 簡単 化 を狙 らっ て い るた め に,変 動 費,ま た は 変 動 費+区 間 固定 費 が価 格 下 限 と して把 握 さ れ る。 しか し,か か る追 加注 文 に対 す る価 格 下 限 の算 定 に際 して も,厳 密 に
は再 操 費 及 び 休 止 費 を も計 算 の対 象 とす べ きで あ る。
差別 的価 格 下 限 の特 性 は価 格 下 限 の特 別 形 態 と して み られ る こ とに あ る。
元 来,差 別 的価 格 下 限 は 操業 の 改善 を 目的 とす るた め に 部分 原 価 補 償 の態 度 を と る。 しか し,そ れ に は近 い将 来,操 業発 展 が必 ず あ る とい う確 実 な期 待 と,さ らに,そ の操 業 発 展 が 達成 され た際 に は 以前 に失 なわれ た 固定 費 補 償
一20一 商 学 討 究 第19巻 第2号
額 と利 益 とが 回収 され るので なけれ ば な らない 。 そ の意 味 で,差 別 的価 格 下 限 は,全 部原 価 補 償 の理 念 に 立 脚す る限 り,短 期 的価 格 下 限 と して も原 則 的 思 考 に 立 った算 定 方 法 で は な い とい え る。
(3)シ ュル ツ理 論 の評 価
シ ュル ツ理 論 の 貢献 は 価 格 下 限 の二 元 的 な論 究 を行 な って い る点 に あ る。
改 良 され た 原価 顧 慮 と時 間 要 素 とを価 格 下 限 の算 定 に 導 入 し,ま た部 分 的 に で は あ るが財 務 経 済 的 局面 を考 慮 した こ とで あ る。 しか も,価 格 下 限 を6種 類 に 区分 した こ とは,実 際 的価 格 下 限 の 論 述 を除 い て他 の種 類 の価格 下 限 に 対 す る詳 細 な検 討 が行 なわ れ なか った とは い え,価 格 下 限 問 題 のそ の包 括 的 接 近 方 法 は そ の後 の研 究 に多 くの 問題 点 を指 摘 して い る と ころに 高 く評 価 さ れ るゆ え んが あ る。 と りわ げ,シ ュル ツ理 論 に対 して,次 の4点 が 問題 点 と
して あげ られ る。
1.シ ユル ツ理 論 は単 種 製 品 生 産企 業,な い し個 々の販 売 負担 者 の 独 立 し た考 慮 に 対 して の み普 遍 妥当 性 を もつ 。
2.著 る し く原価 志 向 的で あ り,販 売経 済 的吟 味 は きわ め て制 限 的 に の み 考 慮 され て い る。
3.し たが って,在 庫 と販 売 の 問題 が 言及 され て い ない 。
4.シ ュル ツは,実 際 的価 格 下 限 の 枠 内 に おけ る 一 時 的休 止 の み を考 慮 し,最 終 的休 止 す なわ ち企 業 清算 や 生 産転 換 の 問題 に ふれ てい ない。
そ こで,単 種 製 品 生産 企 業 の価格 下 限研 究 か ら,多 種 製 品 生 産企 業 のそ の
く ラ
研 究 へ の 接 近 展 開 を 企 図 した の は ヘ ラ ウア ーt(Hellauer,Josef)で あ り,一 時 的 休 止 の 問 題 の み で な く企 業 清 算 と生 産 転 換 と の 問 題 を 検 討 した の は シ ュ
く の
ミ ッ ト(Schmidt,Fritz)で あ る 。 価 格 下 限 論 を 歴 史 的 に み れ ば,ま ず こ の 両 者 が シ ュル ツ理 論 の 一 層 の 展 開 を企 図 した とみ る こ とが で き る。
㈱HellauerJosef,KalkulationinHandelundIndustrie.Berlin‑Wien.1931.
㈲SchmidtFritz,KalkulationundPreispolitik.Berlin‑Wien.1930.